説明

フロート用カバー

【課題】仕切網を支持するフロートを経年劣化から保護し、美観が損なわれないようにする。
【解決手段】フィラメントワインディング法により製造された強化プラスチック製の筒状部材1と、その筒状部材1の筒軸方向端部を閉じる蓋体2とを備えたフロート用カバーを用い、浮子3を筒状部材1内に収容した状態でその筒軸方向両端部を蓋体2で閉じた仕切網支持用フロートとした。この構成によれば、浮子3がフロート用カバーによって覆われた状態で使用されるため、経年による浮子3の素材の変色、劣化や汚れが抑制され、美観を向上し得る。また、フィラメントワインディング法により製造された強化プラスチックは硬質であり、浮子3の素材に用いられる発泡スチロール等の発泡性樹脂やその他軽量な樹脂よりも、日光や水に対して相対的に劣化しにくく、また、その表面に汚れが付着しにくい。また、浮子3の交換のみ行えばフロート用カバーは継続して使用できるので経済的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、いけすや網場に用いられるフロートのカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海や湖等で魚類を養殖するために、また、漂流物等を捕捉するために、水中を仕切網で仕切るいけすや網場が利用される。これらのいけすや網場の仕切網は、水面に浮かぶ複数のフロートで支持される。また、その仕切網の底部には、その仕切網の形状を維持するために錘(おもり)等が取り付けられる。
【0003】
なお、水面に浮かぶフロートには、鋼製やFRP製の上部フレームが取付けられる場合が多い。仕切網の上端は、この上部フレームに固定されるか、又は、直接フロートに対して紐などで固定される(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、仕切網を支持するフロートとして、例えば、強化プラスチックやポリ塩化ビニル製の型枠内に、合成樹脂発泡体を充填したものがある(例えば、特許文献3,4参照)。
【0005】
しかし、型枠内への樹脂充填により、その型枠と樹脂とを一体化したフロートは高価であり、内部の樹脂が劣化すれば高価な型枠を含むフロート全体を交換する必要がある。このため、一般的には、フロートの素材として、発泡スチロール等の合成樹脂発泡体の単体や、その他水に対して浮力を生じさせる樹脂の単体からなるフロートが多用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−127723号公報
【特許文献2】特開2001−352857号公報
【特許文献3】実開昭51−128985号公報
【特許文献4】実開昭54−137584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の樹脂の単体からなるフロートは、その樹脂素材が外部に露出しているため、経年により素材が急速に劣化する。フロートは、下部が常時水に浸かっていることに加え、上部が日光に曝されるからである。
【0008】
フロートの素材が劣化すると、その素材の変色等により、美観が損なわれるという問題がある。特に、発泡スチロールを用いた場合は、その傾向が強い。例えば、白色や薄い色の発泡スチロールは、紫外線等の影響による変色や、藻の繁殖等により、比較的短期間で見た目が悪くなってしまうからである。また、フロートの素材が劣化すると、仕切網を係止している紐が緩むなど、その仕切網に対する支持力の減退も生じ得る。さらに、素材の劣化によりフロートが割れやすくなり、船舶等の衝突によって割れたフロートの破片が浮遊し漁業被害や環境破壊をもたらすという懸念もある。このため、フロートの交換は、定期的に行わなければならない。
【0009】
フロートの交換は、場合によっては、仕切網の使用を一旦中断して行う必要がある等、手間のかかる作業である。また、フロートに使用される発泡スチロール等の合成樹脂は、材質によっては環境保全上支障をきたす場合もあり、その廃棄処理に多大な手間を必要とする。
【0010】
そこで、本発明は、仕切網を支持するフロートを、経年劣化から保護するとともに、フロートの美観が損なわれないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、フィラメントワインディング法により製造された強化プラスチック製の筒状部材と、その筒状部材の筒軸方向端部を閉じる蓋体とを備えたフロート用カバーを用い、水に浮かぶことができる浮子を前記筒状部材内に収容した状態で前記筒状部材の筒軸方向端部を前記蓋体で閉じたことを特徴とする仕切網支持用フロートを採用した。
【0012】
また、上記の課題を解決するために、この発明は、前述の構成からなる仕切網支持用フロートに用いられるフロート用カバーであって、フィラメントワインディング法により製造された強化プラスチック製の筒状部材と、その筒状部材の筒軸方向端部を閉じる蓋体とを備え、水に浮かぶことができる浮子を前記筒状部材内に収容できることを特徴とするフロート用カバーを採用した。
【0013】
このとき、浮子の素材としては、それ自体がその使用場所の水に浮く素材、例えば、発泡スチロール等の合成樹脂発泡体の単体や、その他水よりも比重が小さい樹脂の単体からなるものを用いることができる。
【0014】
これらの構成によれば、仕切網を用いる海や湖等において、水に浮かぶ浮子がフロート用カバーによって覆われた状態で使用されるため、その浮子の素材が外部に露出しない。このため、経年による浮子の素材の変色、劣化や汚れが抑制され、フロートの美観を向上し得る。
また、フィラメントワインディング法により製造された強化プラスチックは硬質であり、浮子の素材に用いられる発泡スチロール等の発泡性樹脂やその他軽量な樹脂よりも、日光や水に対して相対的に劣化しにくく、また、その表面に汚れが付着しにくいといえる。
【0015】
また、浮子の素材が劣化した場合でも、浮子の交換のみ行えばフロート用カバーは継続して使用できるので経済的である。
【0016】
さらに、浮子の素材が劣化しないので、仕切網を係止している紐が緩むなど、その仕切網に対する支持力の減退も生じない。仕切網を係止する紐は、硬質のフロート用カバーに取付けることができる点も有効である。また、浮子が露出していないので、船舶等の衝突によって割れた浮子の破片が浮遊することもない。
【0017】
なお、フィラメントワインディング法とは、FRP(繊維強化プラスチック)の成形法の一つであり、樹脂を含浸させた強化繊維をマンドレル(断面円形の成形型)に巻き付けて成形し、それを加熱硬化炉で硬化させて完成品のパイプを得る方法である。
【0018】
このように、フィラメントワインディング法により製造された強化プラスチック製の筒状部材であれば、その長さを自由に設定できる。特に、フィラメントワインディング法の連続成形であれば、筒状部材を切り出す際の長さ設定の自由度がより高い。
また、フィラメントワインディング法により製造された強化プラスチック製の筒状部材であれば、巻き回数を適宜増減することによって、その厚みを自由に設定できる。このため、所望の強度を容易に確保できる。
【0019】
フロート用カバーの筒状部材内には、浮子を一つだけ収容することもできるし、二つ、三つ、あるいはそれ以上の個数を収容することもできる。このとき、浮子はフロート用カバー内で、不用意に動かないようになっていることが好ましい。
複数の浮子を一つのフロート用カバー内に収容するときは、浮力が筒軸方向に沿って均等に作用するように、浮子は、筒軸方向に沿って並列して収容することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、仕切網を支持するフロートを、経年劣化から保護するとともに、フロートの美観が損なわれないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態の仕切網支持用フロートを示し、(a)は全体斜視図、(b)は分解斜視図
【図2】同実施形態の仕切網支持用フロートの正面図
【図3】他の実施形態の仕切網支持用フロートの正面図
【図4】仕切網支持用フロートの使用状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図4は、この発明のフロート用カバー、仕切網支持用フロート10を用いた魚類養殖用いけすの要部の外観図である。
【0023】
魚類養殖用いけすの主たる構成は従来と同様であり、水面に浮かぶ仕切網支持用フロート10と、その仕切網支持用フロート10上に取付けられる上部フレーム11とを備える。水中に配置された仕切網12の上端は、上部フレーム11に固定されるか、又は、直接に仕切網支持用フロート10に対して紐13などで固定されている。また、その仕切網12の底部には、その仕切網12の形状を維持するために錘(図示せず)等が取り付けられる。なお、仕切網12としては、その形状は平面視矩形、円形のもの等公知のものが使用できる。仕切網12の底部の形状も自由である。
【0024】
仕切網支持用フロート10は、フィラメントワインディング法の連続成形により製造され、所定の長さに切り出された強化プラスチック製の筒状部材1と、樹脂製の蓋体2,2とを備えたフロート用カバーを用いている。蓋体2の素材も、筒状部材1と同様に強化プラスチックとしてもよい。
【0025】
このフロート用カバーの中に、水に浮かぶことができる浮子3を収容する。この浮子3の素材としては、それ自体がその使用場所の水に浮く素材であればよく、この実施形態では、発泡スチロール製のものを用いている。
【0026】
図1(b)に示すように、この浮子3を筒状部材1内に収容し、その状態で、図1(a)に示すように、筒状部材1の筒軸方向両端部をそれぞれ蓋体2,2で閉じる。浮子3の断面(筒軸方向に直交する断面)は、筒状部材1内にぴったりと嵌る断面、あるいは、出し入れがしやすいように筒状部材1の内面との間にやや隙間を生じさせる断面となっていることが好ましい。また、浮子3の筒軸方向長さも、筒状部材1内にぴったりと収まる長さ、あるいは、蓋体2の取付けがしやすいようにその蓋体2の内面との間にやや隙間を生じさせる長さとなっている(図2参照)ことが好ましい。この構成により、浮子3はフロート用カバー内で不用意に動かないようになっている。
【0027】
そして、蓋体2を筒状部材1に対して固定手段4で固定する。固定手段4としては、ビス、ピン等を採用することができる。この実施形態では、固定手段4としてタッピングビスを使用し、接着剤を併用している。
【0028】
この仕切網支持用フロート10によれば、仕切網12を用いる海や湖等において、水に浮かぶ浮子3がフロート用カバーによって覆われた状態で使用されるため、その浮子3の素材が外部に露出しない。このため、経年による浮子3の素材の変色、劣化や汚れが抑制され、フロートの美観を向上し得る。
また、フィラメントワインディング法により製造された強化プラスチックは硬質であり、浮子3の素材に用いられる発泡スチロール等の発泡性樹脂やその他樹脂よりも、日光や水に対して相対的に劣化しにくく、また、その表面に汚れが付着しにくいといえる。さらに、その強化プラスチックの表面に塗装を施すことで、耐候性をさらに向上させることもできる。
【0029】
また、仕切網12を支持するための紐13は、筒状部材1の外周に巻回される。筒状部材1は硬質であるから、発泡スチロールに直接紐を巻回した際のように、紐13がフロートに食い込む現象を生じさせない。また、浮子3が露出していないので、船舶等の衝突によって割れた浮子3の破片が浮遊することもない。
【0030】
なお、筒状部材1の中には水が浸入しても差し支えないが、その筒状部材1と蓋体2との間をパッキン等により止水すれば、浮子3が水に触れることを完全に防止できる。このため、浮子3の素材の劣化をさらに確実に抑えることができる。
【0031】
また、浮子3の素材が劣化した場合でも、浮子3の交換のみ行えばフロート用カバーは継続して使用できるので経済的である。
【0032】
この実施形態では、フロート用カバーの筒状部材1内に浮子3を一つだけ収容したが、例えば、図3に示すように、一つの筒状部材1内に、二つの浮子3を収容することもできる。さらには、三つ以上の個数の浮子3を収容することもできる。
【0033】
複数の浮子3を一つのフロート用カバー内に収容するときは、浮力が筒軸方向に沿って均等に作用するように、浮子3は、図3に示すように、筒軸方向に沿って並列して収容することが望ましい。
【0034】
このとき、浮子3の断面(筒軸方向に直交する断面)は、筒状部材1内にぴったりと嵌る断面、あるいは、出し入れがしやすいように筒状部材1の内面との間にやや隙間を生じさせる断面となっていることが好ましい点は、前述の実施形態と同様である。また、浮子3の筒軸方向長さの合計も、筒状部材1内にぴったりと収まる長さ、あるいは、蓋体2の取付けがしやすいようにその蓋体2の内面との間にやや隙間を生じさせる長さとなっている(図3参照)ことが望ましい。この構成により、浮子3はフロート用カバー内で不用意に動かないようになっている。
【符号の説明】
【0035】
1 筒状部材
2 蓋体
3 浮子
4 固定手段
10 仕切網支持用フロート
11 上部フレーム
12 仕切網
13 紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントワインディング法により製造された強化プラスチック製の筒状部材(1)と、その筒状部材(1)の筒軸方向端部を閉じる蓋体(2)とを備えたフロート用カバーを用い、水に浮かぶことができる浮子(3)を前記筒状部材(1)内に収容した状態で前記筒状部材(1)の筒軸方向端部を前記蓋体(2)で閉じたことを特徴とする仕切網支持用フロート。
【請求項2】
請求項1に記載の仕切網支持用フロートに用いられるフロート用カバーであって、フィラメントワインディング法により製造された強化プラスチック製の筒状部材(1)と、その筒状部材(1)の筒軸方向端部を閉じる蓋体(2)とを備え、水に浮かぶことができる浮子(3)を前記筒状部材(1)内に収容できることを特徴とするフロート用カバー。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−94136(P2013−94136A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241257(P2011−241257)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載年月日 平成23年5月16日 掲載アドレス http://www.nishimura−oil.co.jp/jyushi/maguro/index.html
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】