説明

フープ部材への部分メッキ膜の形成方法

【課題】微細且つ複雑な形状に加工されたフープ部材の所望の位置に高精度にメッキ膜を形成する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】連続して送り出されるフープ状の導電性基材の表面に自己組織化膜を形成する自己組織化膜形成工程と、連続して送り出されるフープ状の導電性基材表面の前記自己組織化膜の所望の部分を除去する膜除去工程と、連続して送り出されるフープ状の導電性基材表面の前記自己組織化膜が除去された部分に電気メッキにより導電膜を形成するする電気メッキ工程とを備えるフープ部材への部分メッキ膜の形成方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フープ部材の導電性基材の表面に部分メッキ膜を形成するための部分メッキ膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からフープ部材に形成されたIC、LSIのリードフレーム等の半導体用リードフレームやコネクタ端子、リレー端子等の表面に、ハンダ作業の容易性、耐食性、耐摩耗性等を付与するためにメッキ膜を形成する方法が知られている。このようなメッキ膜の形成に用いられる金属源としては、金、銀、ロジウム、パラジウム、コバルト、白金のような貴金属が広く用いられている。このような貴金属メッキは高価であるためにメッキ面積を最小限に抑えることが好ましく、必要な部分のみにメッキ範囲を限定して部分的にメッキする部分メッキ法が広く用いられている(例えば、下記特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開昭53−97936号公報
【特許文献2】特開昭57−9894号公報
【特許文献3】特開2000−345385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フープ部材に部分メッキ膜を形成する場合、フープ部材自身が微細且つ複雑な形状に加工されているものであるために、所望の位置に正確にメッキ膜を形成することが困難であった。
【0004】
本発明は、連続して一方向に送り出されるフープ状の導電性基材に自己組織化膜を形成した後、電気メッキ膜を形成したい部分の自己組織化膜のみを除去し、その除去された部分のみに電気メッキを施すことにより、微細且つ複雑な形状に加工されたフープ部材の所望の位置のみに高精度にメッキ膜を形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフープ部材への部分メッキ膜の形成方法は、連続して送り出されるフープ状の導電性基材の表面に自己組織化膜を形成する自己組織化膜形成工程と、連続して送り出されるフープ状の導電性基材表面の前記自己組織化膜の所望の部分を除去する膜除去工程と、連続して送り出されるフープ状の導電性基材表面の前記自己組織化膜が除去された部分に電気メッキにより導電膜を形成する電気メッキ工程とを備えることを特徴とする。このような工程によれば、自己組織化膜を形成しうる有機分子が存在する液相又は気相の場に微細且つ複雑な形状に加工されたフープ部材を接触させるだけで自律的に均一な厚みの絶縁膜を形成することができる。そして、電気メッキ膜を形成したい部分の自己組織化膜のみを、レーザー加工等により容易に除去することができるために、その除去した部分のみに電気メッキを施すことにより、微細且つ複雑な形状に加工されたフープ部材の所望の位置に正確に導電膜を形成することができる。
【0006】
また、前記自己組織化膜形成工程が、前記自己組織化膜を形成しうる有機分子を溶媒に溶解させてなる化学吸着液に、前記導電性基材を浸漬した後引き上げる工程であることが、自己組織化膜を簡便な設備で形成することができる点から好ましい。
【0007】
また、前記自己組織化膜形成工程が、前記化学吸着液に前記導電性基材を浸漬した後前記化学吸着液から引き上げる単位操作を複数回繰り返す工程を備えることが好ましい。このような工程によれば、例えば、10〜50分子層が累積されたような厚膜の自己組織化膜を形成することができる。このような、厚膜の自己組織化膜によれば、ピンホールに起因する絶縁不良、トンネル効果による絶縁不良、高電圧に対する絶縁破壊などを抑制することができ、それにより充分な絶縁性を維持することができ、正確に部分メッキ膜を形成することができる。なお、前記単位操作においては、導電性基材を引き上げた後、その表面に電子線やX線などのエネルギー線を照射したり、過マンガン酸カリウム水溶液に浸漬したり、プラズマ処理する等の方法により表面活性化処理を施すことがさらに好ましい。このような表面活性化処理により、累積される分子層同士を化学結合させやすくすることができる。また、前記単位操作の繰り返し毎に、異なる種類の自己組織化膜を形成しうる有機分子が溶解された化学吸着液に浸漬することがさらに好ましい。このように異なる種類の有機分子を用いて自己組織化膜を形成することにより、自己組織化膜の表面特性、具体的には、例えば、親水性、撥水性、親油性、撥油性、潤滑性、絶縁性等を高精度に制御することができる。特に、形成される自己組織化膜の表面に疎水性基が存在する場合には、防汚特性に優れたフープ部材を形成することができる。
【0008】
また、前記自己組織化膜形成工程が、前記自己組織化膜を形成しうる有機分子を気化させてなる蒸気に、前記導電性基材を接触させる工程であることがより緻密な自己組織化膜を形成できる点から好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微細且つ複雑な形状に加工されたフープ部材の所望の位置に正確にメッキ膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の部分メッキ膜の形成方法を説明するためのプロセス図、図2は、本実施形態における自己組織化膜形成工程を説明するための模式説明図、図3は、本実施形態におけるレーザー除去加工工程を説明するための模式説明図、図4は、本実施形態における電気メッキ工程を説明するための模式説明図である。
【0012】
本実施形態において部分メッキ膜が形成されるフープ部材A(以下、単に基材とも呼ぶ)は、図5に示すように高精細な加工が施されて成形された櫛歯状部分a,…aを備える。また、フープ部材Aは導電性を備える。そして、本実施形態においては、櫛歯状部分のA1に示した部分に部分メッキ膜が形成される。
【0013】
本実施形態においては、図1に示すように、はじめにフープ部材Aの表面の油分等を除去して清浄化するための前処理が行われる(S1〜S3)。具体的には、はじめに送り出しリール1に巻回されたフープ部材Aを連続的に送り出して、エタノール超音波処理槽2に浸漬することによりエタノール超音波洗浄処理(S1)を行い、次に、純水超音波処理槽3に浸漬することにより純水超音波洗浄処理(S2)を連続して行った後、乾燥炉4に送り出して乾燥する(S3)。
【0014】
次に、図1に示すように、乾燥工程(S3)に引き続き、フープ部材Aの全面に自己組織化膜Mを成膜する(S4)。
【0015】
本実施形態における自己組織化膜とは、基材表面に分子集合性を有する特定の有機分子を接触させたときに、該有機分子が基材表面に化学吸着して規則正しく配列して形成されるような有機分子薄膜である。具体的には基材表面に有機分子の一端が吸着して一並びだけ並んで形成されるような薄膜である単分子膜や、前記有機分子が複数分子累積して形成される薄膜(以下、累積膜ともいう)等が挙げられる。
【0016】
有機分子としては、一般的に、一方の末端に基材表面に化学吸着しやすい吸着性官能基を有し、その吸着性官能基に直鎖状又は環状の飽和又は不飽和の炭素鎖またはその置換体からなる特性官能基が結合されているような有機分子が用いられる。
【0017】
吸着性官能基としては、前述のように基材表面に化学吸着しやすい官能基であればとくに制限されず、好ましくは、基材表面のゼータ電位の極性と逆の極性を有する官能基を有する有機分子が好ましく選ばれる。このような官能基を有する有機分子によれば、正負が引き合うことにより有機分子の吸着率が高くなり、それにより膜形成速度が速くなって緻密な自己組織化膜を形成することができる。このような吸着性官能基の具体例としては、例えば、シリル基、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネートシリル基等の各種シリル基等が挙げられる。
【0018】
前記ハロゲン化シリル基の具体例としては、例えば、モノクロロシリル基、ジクロロシリル基、トリクロロシリル基等が挙げられる。これらの中ではクロロシリル基が好ましい。また、前記アルコキシシリル基の具体例としては、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられ、好ましくは、メトキシシリル基、エトキシシリル基、ブトキシシリル基等が挙げられる。
【0019】
特に、各種シリル基を末端に有する有機分子は基材表面に存在する活性水素と共有結合を形成することができる。そしてこのような共有結合により自己組織化膜を強固に結合することができるために、耐久性に優れた自己組織化膜が形成される。
【0020】
一方、吸着性官能基に結合される特性官能基としては、直鎖状または環状の飽和又は不飽和の炭化水素基や、炭化水素基中の水素の一部または全部がハロゲン原子、水酸基、アルキニル基、カルボキシル基、エステル残基、芳香族基、またはこれらの誘導体基に置換されたような炭化水素基が挙げられる。
【0021】
上記有機分子の具体例としては、下記一般式:
H(CHSiR3−n ・・・(1)
CH=CH(CHSiR3−n ・・・(2)
OH(CHSiR3−n ・・・(3)
COOH(CHSiR3−n ・・・(4)
A(CHSiR3−n ・・・(5)
(一般式(1)〜(5)中、Rは炭素数1〜100のアルキル基、Xはハロゲン基,イソシアン基(CN)又は水酸基、Aは芳香族基,脂肪族エーテル残基,脂肪族カルボン酸エステル残基、又はシロキシル化アルキル残基,mは1〜15の整数、nは0〜3の整数、qは0〜15の整数)で表されるような有機分子またはその誘導体(ハロゲン置換体等)が挙げられる。
【0022】
前記一般式(1)〜(5)で表されるような有機分子の具体例としては、例えば、一般式(1)で示されるn-オクタデシルトリメトキシシランや、一般式(2)で示されるビニルトリエトキシシラン、一般式(5)で示されるp−アミノフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0023】
本実施形態においては、清浄化されたフープ部材Aを上述したような自己組織化膜を形成しうる有機分子を所定の溶媒に溶解させてなる化学吸着液に接触させることにより、その表面に自己組織化膜を形成する。具体的には、例えば、図2に示すように、送り出しリール1に巻回されたフープ部材Aを連続して送り出し、清浄化した後、送り出されたフープ部材Aを連続的に化学吸着液が収容された化学吸着液槽5に浸漬して、その表面に化学吸着液を付着させた後引き上げることにより、自己組織化膜Mを形成することができる。
【0024】
化学吸着液の調製に用いられる溶媒は、有機分子の種類に応じて適宜選択されるが、その具体例としては、例えば、ヘキサデカン、クロロホルム、四塩化炭素、シリコーンオイル、ヘキサン、トルエン等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
化学吸着液中に溶解される有機分子の濃度は、特に制限されないが、その具体例としては、例えば、1〜20体積%程度であることが好ましい。
【0026】
化学吸着液にフープ状の導電性基材を接触させるための接触方法は図2に示したような、方法の他、送り出しリール1に巻回されたフープ部材Aを連続して送り出し、送り出されたフープ部材Aの表面に化学吸着液をスプレー法やロールコート法を用いて塗布する方法等も用いられうる。
【0027】
フープ部材Aと化学吸着液との接触時間としては、例えば、1〜600分間、さらには10〜30分間であることが好ましい。また、化学吸着液の温度としては、例えば、10〜80℃、さらには20〜30℃の範囲であることが好ましい。
【0028】
なお、自己組織化膜Mとして、有機分子が複数分子累積して形成される累積膜を形成する場合には、化学吸着液にフープ部材Aを浸漬した後引き上げるという単位操作を複数回繰り返すことが好ましい。このように、複数回浸漬工程を繰り返すことにより徐々に有機分子が累積されて、例えば、10〜50分子層が累積されたような膜厚の自己組織化膜を形成することができる。このような化学吸着液にフープ部材Aを複数回浸漬する方法は、図6に示すように、フープ部材Aの進行方向に対して、長い形状を有する化学吸着液槽5aを用いて、ローラー5b,5b・・・によりフープ部材Aを化学吸着液に浸漬した後引き上げるという単位操作を繰り返すような方法により行うことができる。
【0029】
また、前記単位操作の繰り返しにおいては、フープ部材Aを引き上げた後、形成されている自己組織化膜の表面を活性化するための表面活性化処理を行うことが好ましい。このような表面活性化処理を施すことにより、自己組織化膜Mを構成する有機分子の吸着されていない側のフリーの末端基を反応活性化することができる。このような表面活性化処理としては、電子線やX線などのエネルギー線を照射する方法や、過マンガン酸カリウム水溶液に浸漬する処理、プラズマ処理する方法等が挙げられる。このような表面活性化処理により、前記フリーの末端に、水酸基やカルボキシル基等を導入することができる。そして、このようにして活性化された膜を有するフープ部材Aをさらに化学吸着液に浸漬するという工程を繰り返すことにより、累積される有機分子が化学結合したような、所望の累積層数の累積膜を有する導電性基材を形成することができる。このような表面活性化処理する方法は、図6に示すように、ローラー5b,5b・・・により引き上げられたフープ部材に所定の光照射装置5cを用いてエネルギー線を照射する方法等により行うことができる。
【0030】
また、前記単位操作の繰り返しにおいては、繰り返しの際に異なる種類の自己組織化膜を形成しうる有機分子が溶解された化学吸着液を用いることにより、形成される自己組織化膜の表面の特性、具体的には、例えば、親水性、撥水性、親油性、撥油性、潤滑性、絶縁性等を高精度に制御することもできる。特に、形成される自己組織化膜の表面にフッ素原子含有基等の疎水性基が存在する場合には、防汚特性に優れたフープ部材を形成することができる。このような異なる種類の自己組織化膜を形成しうる有機分子が溶解された化学吸着液に浸漬する方法は、図6に示すように、フープ部材の進行方向において長い化学吸着液槽5aを用いて、ローラー5b,5b・・・により浸漬した後引き上げるというような単位操作において、隔壁5dで区切られた室毎に異なる種類の有機分子を収容することにより行うことができる。
【0031】
また、フープ状の導電性基材に有機分子を接触させるための接触方法としては、上述したような化学吸着液を用いる方法の他、送り出しリール1に巻回されたフープ部材Aを連続して送り出し、送り出されたフープ部材Aの表面に、自己組織化膜を形成しうる有機分子を気化させてなる蒸気を接触させるような方法も用いられうる。
【0032】
このようにして形成される自己組織化膜は、図1及び図2に示すように、乾燥炉6により、さらに加熱してアニールすることにより、自己組織化をより進行させることができる(S5)。このようなアニールとしては、乾燥炉内において、例えば、温度50〜120℃、さらには60〜100℃の範囲で、30〜90分間程度処理することが好ましい。
【0033】
自己組織化膜の膜厚は、通常、単分子膜の膜厚は0.5〜2nm、さらには1〜2nm程度であり、また、累積膜の膜厚は4〜100nm、さらには10〜30nm程度であることが好ましい。また、累積膜の累積層数は、10〜50層、さらには40〜50層であることが好ましい。
【0034】
このようにして、自己組織化膜Mが形成されたフープ部材Aは巻き取りリール7により一旦巻き取られる。
【0035】
次に、フープ部材Aの表面に形成された自己組織化膜Mの所望の部分を除去する除去工程(S4)を図3を参照しながら説明する。
【0036】
フープ部材Aの表面に形成された自己組織化膜Mの所望の部分を除去する方法としては、例えば、図3に示すように連続して送り出されるフープ部材Aに形成された自己組織化膜Mの所望の部分をレーザー加工により除去するような方法が好ましく用いられる。
【0037】
レーザー加工の手段としては、SHG−YAGレーザー等のYAGレーザーが好ましく用いられる。本実施形態において形成される自己組織化膜Mは極めて薄い膜であるために、比較的低いパワーで容易に自己組織化膜を部分的に除去することができる。
【0038】
レーザー加工においては、図3に示すように自己組織化膜が形成されたフープ部材Aを連続して一方向に送り出し、レーザー加工装置Rの加工テーブルT上に案内し、その加工テーブルTの所定の位置にレーザーを照射することにより、電気メッキを形成したい部分の自己組織化膜のみを除去することができる。
【0039】
また、レーザー加工の代わりに、荷電粒子ビーム加工(電子ビーム、イオンビーム)や、機械加工、所望のパターンが形成されたフォトマスクを介して露光する等の手段を用いて所望の部分のみを除去してもよい。
【0040】
次に、自己組織化膜が除去された部分に電気メッキにより導電膜を形成するための電気メッキ工程について、図1及び図4を参照しながら説明する。
【0041】
上述したように、電気メッキを形成したい部分の自己組織化膜が除去されたフープ部材Aは、図4に示すように、送り出しリール1から連続的に送り出してメッキ前処理槽8に浸漬することによりメッキ前処理(S7)が施される。次に、連続して電気メッキ槽9に浸漬することにより電気メッキ処理(S8)を行った後、さらに純水超音波洗浄処理(S9)を行った後、乾燥炉に送り出して乾燥される。
【0042】
メッキ前処理槽8は、例えば、脱脂槽8a、ソフトエッチング槽8b、酸洗槽8cに分割されており、これら各槽に自己組織化膜Mが形成されたフープ部材Aを順に浸漬することによりメッキ前処理が施される。
【0043】
そして、前処理された自己組織化膜が形成されたフープ部材Aは、次に、電気メッキ槽9に浸漬される。
【0044】
図7に電気メッキ槽9の模式拡大図を示す。図7に示すように、電気メッキ槽9には、プラス電位を印加される不溶解電極9aが備えられており、また、例えば、金メッキのための青化金溶液等の電気メッキ溶液9bが収納されている。また、フープ部材Aは電源装置9cの陰極側、不溶解電極9aは電源装置9cの陽極側にそれぞれ接続されている。
【0045】
そして、フープ部材Aはマイナス電位を印加されながら、例えば白抜矢印の方向に所定速度で電気メッキ槽9中を走行する。
【0046】
不溶解電極9aは、例えば、板状で、フープ部材Aからある程度の距離をおいてフープ部材Aと平行に配設される。そして、プラス電位を印加される不溶解電極9aとマイナス電位を印加されるフープ部材Aとの間に流れる電流により自己組織化膜が除去された部分のみにメッキ膜を付着させる。なお、自己組織化膜Mは絶縁層として機能するために、自己組織化膜が形成された部分には、電流が流れないためにメッキ膜が付着しない。
【0047】
メッキに用いられる金属としては、上述した金の他、銀、ロジウム、パラジウム、コバルト、白金、ニッケル、銀、銅、錫等、電気めっきに用いられうる各種金属を用いることができる。
【0048】
このような工程により、フープ部材A表面の自己組織化膜が除去された部分のみに導電膜であるメッキ膜が形成される。そして、フープ部材A表面はメッキ膜の形成後、純水槽10で洗浄される(S9)。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の方法によれば、薄く均一な厚みの絶縁層を容易に形成することができる自己組織化膜を絶縁層として用いるために、微細且つ複雑な形状を有するようなフープ部材Aの所望の部分のみに容易且つ正確に導電膜を形成することができる。
【0050】
以下、実施例により本発明の内容をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
図2に示すような構成の自己組織化膜形成プロセスを用いて、幅20mmの銅製のフープ部材Aを連続して送り出しリール1から送り出し、エタノール超音波処理槽2及び純水超音波処理槽3にそれぞれ60秒間ずつ浸漬することにより洗浄した後、150℃に設定した乾燥炉4を通過させて乾燥させた。引き続いて、乾燥させたフープ部材Aを、化学吸着液槽5に収容された室温のn-オクタデシルトリメトキシシラン(ODS)5質量%溶液に20秒間×10回浸漬させた後、120℃に設定した乾燥炉6で300秒間アニ―ル処理を行った。そして、アニール処理後、処理されたフープ部材Aを巻き取りリール7により巻き取った。
【0052】
次に、図3に示すような構成のレーザー加工プロセスを用いて、フープ部材Aを連続して送り出しリール1から送り出しながら、SHG−YAGレーザー装置12により、フープ部材A表面に形成された自己組織化膜を幅1mm分だけ除去したのち、処理されたフープ部材Aを巻き取りリール7により巻き取った。
【0053】
次に、図4に示すような構成の電気めっきプロセスを用いて、レーザー加工プロセスによりメッキ膜を形成したい部分の自己組織化膜が除去されたフープ部材Aを連続して送り出しリール1から送り出しながら、脱脂槽8aに30秒間、ソフトエッチング槽8bに60秒間、酸洗槽8cに30秒間浸漬してメッキ前処理した後、電気メッキ槽9に30秒間浸漬することによりニッケルメッキの形成を行った。このときの電気メッキ槽9における電流密度は10A/dmであった。そして、メッキ形成後、引き続いて純水槽10で60秒間超音波洗浄を行い、処理されたフープ部材Aを巻き取りリール7により巻き取った。
【0054】
メッキ形成されたフープ部材Aの表面を光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察したところ、自己組織化膜を除去した部分のみに正確に約1μmの膜厚でニッケル導電膜が形成されており、自己組織化膜が形成された部分にはニッケル導電膜がまったく形成されていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、実施形態の部分メッキ膜の形成方法を説明するためのプロセス図である。
【図2】図2は、実施形態の自己組織化膜形成工程を説明するための模式説明図である。
【図3】図3は、実施形態のレーザー除去加工工程を説明するための模式説明図である。
【図4】図4は、実施形態の電気メッキ工程を説明するための模式説明図である。
【図5】図5は、実施形態のフープ部材Aの模式説明図である。
【図6】図6は、自己組織化膜形成工程の他の例を説明するための模式説明図である。
【図7】図7は、実施形態の電気メッキ工程を説明するための模式説明図である。
【符号の説明】
【0056】
A フープ部材
M 自己組織化膜
R レーザー加工装置
T 加工テーブル
a 櫛歯状部分
1 リール
2 エタノール超音波処理槽
3 純水超音波処理槽
4 乾燥炉
5,5a 化学吸着液槽
5b ローラー
5c 光照射装置
5d 隔壁
6 乾燥炉
7 リール
8 メッキ前処理槽
8a 脱脂槽
8b ソフトエッチング槽
8c 酸洗槽
9 電気メッキ槽
9a 不溶解電極
9b 電気めっき溶液
9c 電源装置
10 純水槽
12 レーザー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して送り出されるフープ状の導電性基材の表面に自己組織化膜を形成する自己組織化膜形成工程と、連続して送り出されるフープ状の導電性基材表面の前記自己組織化膜の所望の部分を除去する膜除去工程と、連続して送り出されるフープ状の導電性基材表面の前記自己組織化膜が除去された部分に電気メッキにより導電膜を形成するする電気メッキ工程とを備えることを特徴とするフープ部材への部分メッキ膜の形成方法。
【請求項2】
前記自己組織化膜形成工程が、前記自己組織化膜を形成しうる有機分子を溶媒に溶解させてなる化学吸着液に、前記導電性基材を接触させる工程である請求項1に記載の部分メッキ膜の形成方法。
【請求項3】
前記自己組織化膜形成工程が、前記化学吸着液に前記導電性基材を浸漬した後前記化学吸着液から引き上げる単位操作を複数回繰り返す工程を備える請求項2に記載の部分メッキ膜の形成方法。
【請求項4】
前記単位操作において、前記導電性基材を前記化学吸着液から引き上げた後、表面活性化処理を行う請求項3に記載の部分メッキ膜の形成方法。
【請求項5】
前記単位操作の繰り返し毎に、異なる種類の自己組織化膜を形成しうる物質が溶解された化学吸着液に浸漬する請求項3または4に記載の部分メッキ膜の形成方法。
【請求項6】
前記自己組織化膜形成工程が、前記自己組織化膜を形成しうる有機分子を気化させてなる蒸気に、前記導電性基材を接触させる工程である請求項1に記載の部分メッキ膜の形成方法。
【請求項7】
形成される自己組織化膜の表面に、疎水性基が存在する請求項1〜6の何れか1項に記載の部分メッキ膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−43292(P2010−43292A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205960(P2008−205960)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】