説明

ブタにおける呼吸器疾患の治療のためのメロキシカムの使用

本発明は、ブタにおける呼吸器疾患の治療または予防のための医薬組成物を調製するための、メロキシカムまたは医薬的に許容されるその塩の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1. 技術分野
本発明は、ブタにおける呼吸器疾患の治療または予防のための医薬組成物を調製するための、メロキシカムまたは医薬的に許容されるその塩の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2. 背景情報
ブタにおける呼吸器疾患は、ブタ生産における最も重要な健康問題に属する。ブタ呼吸器疾患は主に感染性物質により引き起こされるが、環境要因が大きな影響を及ぼす。関連する病原体としては、マイコプラズマ、細菌およびウィルスが挙げられる(例えばChristensen, G., Sorensen, V., & Mousing, J. (1999). Diseases of the respiratory system. In Diseases of swine, eds. Straw, B. E., D'Allaire, S., Mengeling, W. L., & Taylor, D. J., pp. 913-940. アイオワ州立大学出版, アイオワ州Ames)。
ブタ呼吸器疾患を抑制するための最も重要な対策は、群れの管理および小屋の環境を改善し、ワクチン接種計画を導入することである。しかしながら、ブタが呼吸器疾患を患った場合はそれらを治療しなくてはならない。
ブタ呼吸器疾患の現在の治療としては、抗生物質による治療が挙げられる。β-ラクタム、キノロンおよびテトラサイクリンを含む様々な種類の抗生物質が有効にし得ることが説明されている(例えばLang, I., Rose, M., Thomas, E., & Zschiesche, E. (2002). A field study of cefquinome for the treatment of pigs with respiratory disease. Revue Med Vet 8-9, 575-580)。
【0003】
シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2)が、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)により引き起こされるブタ胸膜肺炎の病理生理に重要な役割を果たすことが知られている。単離ブタ肺胞マクロファージは、アクチノバチルス・プルロニューモニエに曝された後にそのCOX 2 活性を増加させる (Cho, W. S. & Chae, C. (2003b). In vitro effects of Actinobacillus pleuropneumoniae on inducible nitric oxide synthase and cyclooxygenase-2 in porcine alveolar macrophages. Am.J Vet Res. 64, 1514-1518)。さらには、in situハイブリダイゼーション(Cho, W. S. & Chae, C. (2003a). Expression of cyclooxygenase-2 in swine naturally infected with Actinobacillus pleuropneumoniae. Vet Pathol. 40, 25-31)および免疫組織化学(Cho, W. S. & Chae, C. (2002). Immunohistochemical detection of cyclooxygenase-2 in lungs of pigs naturally infected with Actinobacillus pleuropneumoniae. J Comp Pathol. 127, 274-279)は、自然でアクチノバチルス・プルロニューモニエに感染したブタの肺においてCOX-2の発現が上昇していることを示した。
【0004】
さらには、呼吸器疾患を患うブタの治療にアセチルサリチル酸(アスピリン)を使用し得ることがよく知られている。しかしながら、比較臨床試験についての情報に関してはわずかな情報しか入手できない。総論については、Laval, A. (1992). Utilisation des anti-inflammatoires chez le porc. Rec Med Vet 168 (8/9), 733-744を参照されたい。ケトプロフェンと、程度はそれより低いながらフルニキシンが、アクチノバチルス・プルロニューモニエによる実験的な感染により引き起こされる病気を軽減する (Swinkels, J. M., Pijpers, A., Vernooy, J. C., Van Nes, A., & Verheijden, J. H. (1994). Effects of ketoprofen and flunixin in pigs experimentally infected with Actinobacillus pleuropneumoniae. J Vet Pharmacol Ther 17, 299-303)。しかしながら、肺病変に対する効果は何も観察されなかった。ケトプロフェンはさらに、比較、盲検臨床野外試験において試験が行われた (De Jong, M. F., Sampimon, O., Arnaud, J. P., Theunissen, G., Groenland, G., & Werf, P. J. A clinical study with a non steroid antiinflammatory drug. 14, 659. 1996. IPVS)。この試験において、ケトプロフェンは、臨床スコア、再発性または治癒率に対する効果を示さなかった。
【0005】
インドメタシンは、ブタにおける実験的にエンドトキシン-誘導した呼吸器不全を軽減した(Olson, N. C., Brown, T. T., Anderson, J. R., & Anderson, D. L. (1985). Dexamethasone and indomethacin modify endotoxin-induced respiratory failure in pigs. J.Appl.Physiol. 58, 274-284)。
メロキシカムは、オキシカム類に属する非ステロイド性抗炎症化合物であり、強力な抗炎症、抗滲出および解熱作用を発揮する。ウシの呼吸器感染症の治療における、補助的療法としてのメロキシカムの有効性は広く実証されている。最近、メロキシカムがMMAの治療に有効であることが認められた(Hirsch, A. et al. (2003).J Vet Pharmacol Therap 26, 355-360) and locomotor disorders in pigs (Friton, G. et al. (2003) Berl Munch Tierarztl Wschr 116: 421-426)。
【0006】
ある総論(Lees, P. (1991). The pharmacokinetics of drugs used in the treatment of respiratory diseases in cattle and pigs. 67-74. Hatfield, U.K. Proc.Royal Vet.Coll.)は、ウシとブタにおける呼吸器疾患の治療に使用される薬物の薬物動態に主眼を置く。この刊行物の記載では、ブタについての非ステロイド性抗炎症薬のデータがほぼ全体的に欠落しており、ウシについてのデータを列挙しているに過ぎない(メロキシカムを含む)。
抗生物質と組み合わせたメロキシカムの、ウシ呼吸器疾患についての使用は十分に確立されており(Schmidt, H., Philipp, H., Salomon, E., & Okkinga, K. (2000). Effekte der zusatzlichen Gabe von Metacam (Meloxicam) auf den Krankheitsverlauf bei Rindern mit Atemwegserkrankungen. Der praktische Tierarzt 81, 240-244)、EUにおいて登録されている。しかしながら、現在まで、呼吸器疾患を患うブタにおけるメロキシカムの使用についてのいかなる情報も公には入手し得ない。
メロキシカムについては、ブタとウシの間の薬物動態が大きく異なるため(ウシにおける血漿半減期が26時間であるのに対して、ブタでは2.5時間である)、ウシにおけるメロキシカムの有効な使用が、ブタについても同様に有益であると期待することはできない。
さらには、ウシとブタの呼吸器疾患の原因病原体は大きく異なる。
本発明に内在する問題は、ブタ生産における最も大きな問題のひとつであるブタの呼吸器疾患を予防または治療するための医薬品を提供することであった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
驚いたことに、ブタにおける呼吸器疾患の治療または予防にメロキシカムを使用し得ることが発見された。
従って、本発明は、ブタにおける呼吸器疾患の治療または予防のための医薬組成物を調製するための、メロキシカムまたは医薬的に許容されるその塩の使用に関する。
さらには、本発明は、ブタにおける呼吸器疾患の治療または予防の方法に関し、前記方法は、効果的な量のメロキシカムを、それが必要なブタに投与することを含む。
さらには、本発明は、メロキシカムと、β-ラクタム、キノロン、テトラサイクリン、スルホンアミド、フェニコールおよびマクロライドからなる群より選択される少なくとも1つの抗生物質とを含む動物用調製物に関する。
【0008】
本発明の別の態様は、ブタにおける呼吸器疾患の治療のための即使用可能な(ready-to-use)2構成物システム(two-component system)であって、
(a)1つの構成物はメロキシカムおよび医薬的に許容される担体を含み; かつ、
(b)もう一方の構成物は、β-ラクタム、キノロン、テトラサイクリン、スルホンアミド、フェニコールおよびマクロライドからなる群より選択される少なくとも1つの抗生物質と、医薬的に許容される担体とを含む、システムである。
本発明のさらに別の態様は、包装材料およびラベルを有する製造物であって、前記包装材料は、メロキシカムおよび医薬的に許容される担体を含む組成物を収容し、前記ラベルは、前記組成物がブタにおける呼吸器疾患の治療または予防に使用し得ることを表示する、製造物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の詳細な説明
好ましくは、本発明は、ブタにおける呼吸器疾患の治療または予防のための全身投与または経口投与に適した剤形の医薬組成物を調製するための、メロキシカムまたは医薬的に許容されるその塩の使用に関する。
下記式のメロキシカム(4-ヒドロキシ-2-メチル-N-(5-メチル-2-チアゾリル)-2H-1,2-ベンゾチアジン-3-カルボキサミド-1,1-ジオキシド):

は、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)の群に属する活性物質である。メロキシカムおよびそのナトリウムおよびメグルミン塩(N-メチル-D-グルカミン塩)は、EP-A-0 002 482に説明される。
【0010】
メロキシカムは、本発明において、生理学的に許容される酸付加塩の形体で使用し得る。本発明において、生理学的に許容される酸付加塩とは、メグルミン、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩、好ましくはメロキシカムメグルミン塩を意味する。
さらに好ましい実施態様においては、医薬組成物が、0.01 mg/kg〜5.0 mg/kg、好ましくは0.1 mg/kg〜3.5 mg/kg、特に0.2〜2.0 mg/kgの範囲のメロキシカムの一日用量に対応して投与される。
医薬組成物は、好ましくは注射、特に筋肉注射に適した剤形、または、飲料水を介して、もしくは飼料へのトップドレッシング(top dressing)として投与するための水溶性顆粒剤の剤形で投与される。
【0011】
適切な注射用調製物は例えばEP-A-0 002 482の実施例25に開示されており、この文献を本明細書に援用する。
さらには、国際特許出願WO 01/97813(本明細書に援用する)の実施例1から5に開示されるように、そのような注射用溶液はさらに、クエン酸、レシチン、グルコン酸、酒石酸、リン酸およびEDTAまたはそれらの塩からなる群より選択される賦形剤を含んでもよい。
さらには、無針注射用のメロキシカムの注射用溶液が国際特許出願WO 03/049733に開示されており、この文献を本明細書に援用する。
飲用水を介して、または飼料へのトップドレッシングとしての投与するための水溶性顆粒剤が、例えば国際特許出願PCT/EP03/11802に開示され、この文献を本明細書に援用する。
【0012】
本発明の好ましい実施態様においては、メロキシカム顆粒剤は結合剤を含み、前記結合剤は、ヒドロキシプロピル-メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、スターチおよびポリエチレングリコールエーテル、好ましくはヒドロキシプロピル-メチルセルロース、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールエーテル、最も好ましくはヒドロキシプロピル-メチルセルロースおよびポリビニルピロリドンより選択し得る。
本発明の別の好ましい実施態様においては、メロキシカム顆粒剤は甘味剤を含み、前記甘味剤は、サッカリンナトリウム、アスパルテームおよびサネット(登録商標)、好ましくはサッカリンナトリウムまたはアスパルテームより選択し得る。
本発明において特に好ましいのは香味剤を含むメロキシカム顆粒剤であり、前記香味剤は、バニラ、ハチミツ香味剤、リンゴ香味剤およびコントラマルム(contramarum)、好ましくはハチミツ香味剤およびリンゴ香味剤より選択し得る。
同じく特に好ましいのは、担体が、ラクトース、グルコース、マンニトール、キシリトール、スクロースおよびソルビトール、好ましくはグルコース、ラクトースまたはソルビトール、より好ましくはグルコースまたはラクトース、最も好ましくはグルコースより選択されるメロキシカムである。
【0013】
最も好ましいのは、以下のメロキシカムの顆粒剤である:
実施例 A
0.6% メロキシカム顆粒剤
配合表:

実施例 B
1.2% メロキシカム顆粒剤

【0014】
実施例 C
0.6% メロキシカム顆粒剤

実施例 D
0.6% メロキシカム顆粒剤

【0015】
特に好ましいのは、メロキシカムの含有量が0.05 %〜4 %、好ましくは0.1〜2 %、好ましくは0.3 %〜1.8 %、より好ましくは 0.4 %〜1,5 %、最も好ましくは 1.2 %であるメロキシカム顆粒剤である。同じく特に好ましいのは、メグルミンとメロキシカムを約 9:8〜12:8、好ましくは10:8のモル比で含むメロキシカム顆粒剤である。
本発明において、メロキシカムはいかなる品種のブタの呼吸器疾患を治療または予防するために使用してもよい。好ましくは、以下のブタ品種より選択されるブタを本発明のメロキシカムで治療し得る:アメリカランドレース、アメリカヨークシャー、アンゲルンサドルバック(Angeln Saddleback)、アラパワ島種(Arapawa Island)、バー・シューイェン(Ba Xuyen)、バントゥー(Bantu)、バンザ(Bazna)、北京黒豚、ベラルーシ黒豚雑種(Belarus Black Pied)、ベルギーランドレース、ベントハイム黒豚雑種(Bentheim Black Pied)、バークシャー、スラボニア黒豚(Black Slavonian)、イギリスランドレース、イギリスロップ(British Lop)、ブルガリア白豚(Bulgarian White)、広東豚(Cantonese)、チェスターホワイト、チェコ改良白豚(Czech Improved White)、デンマークランドレース、ダーマンシ雑種(Dermantsi Pied)、デュロック、オランダランドレース、フェンジン(Fengjing)、フィンランドランドレース、フランスランドレース、ドイツランドレース、グロスターシャー・オールドスポット、ギニア豚、ハンプシャー、ヘレフォード、ホーツオ(Hezuo)、イベリア豚、イタリアランドレース、金華豚、ケレ(Kele)、クルスコポリエ(Krskopolje)、クネクネ(Kunekune)、ラコーム、ラージブラック、ラージブラック-ホワイト、ラージホワイト、リトアニア原産種(Lithuanian Native)、マンガリツァ(Mangalitsa)、メイシャン(Meishan)、ミドルホワイト、ミンジュ(Minzhu)、モンカイ、ムコタ(Mukota)、モーラ・ロマニョーラ(Mora Romagnola)、モウラ(Moura)、ミュールフット、ネイチャン(Neijiang)、ニンシャン(Ningxiang)、ノルウェーランドレース、オッサボー島種(Ossabaw Island)、オックスフォードサンディーアンドブラック(Oxford Sandy and Black)、フィリピン原産種、ピエトレン、ポーランド・チャイナ、レッドワトル(Red Wattle)、サドルバック、スポッツ(Spots)、スワビアンホール(Swabian-Hall)、スウェーデンランドレース、タムワース、ツオク・ニュー(Thuoc Nhieu)、チベット豚(Tibetan)、ツーロポリエ(Turopolje)、ベトナムポットベリー、ウェルシュ、およびウーチーシャン(Wuzhishan)、特にアメリカランドレースランドレース、ベルギーランドレース、イギリスランドレース、デンマークランドレース、オランダランドレース、フィンランドランドレース、フランスランドレース、ドイツランドレース、イタリアランドレースおよびピエトレン。
【0016】
さらに好ましいのは、抗生物質と組み合わせてのメロキシカムの投与であり、前記抗生物質は、好ましくはβ-ラクタム、キノロン、テトラサイクリン、スルホンアミド、フェニコール、およびマクロライドからなる群より選択される。
最も好ましいのは、アモキシシリン、オキシテトラサイクリン、フロルフェニコール、タイロシン、チルミコシンおよびスルファメタジンである。
抗生物質の投与量は本質的に重要ではなく、使用される抗生物質の異なる有効性に大きく依存する。概して、最大で150.0 mg/kg、好ましくは0.1 mg/kg〜120 mg/kg、特に10〜110 mg/kgの抗生物質がメロキシカムと一緒に共-投与される。
以下の投与量の範囲が最も好ましい:

【0017】
メロキシカムと抗生物質の使用の定義において使用される“共-投与”(または“と組み合わせて投与”)の語句は、それぞれの薬剤を、薬剤の組み合わせの有益な効果を奏するような投与計画において連続的な様式(sequential manner)で投与することを包含することを意図し、前記有益な効果とは例えば病気のブタの呼吸器疾患の症状の軽減である。前記の語句はまた、これらの薬剤を実質的に同時の様式で共-投与することを包含することをも意図し、これは例えば、これらの活性物質を定められた割合で含む単一のカプセルもしくは注射用溶液、または各薬剤について別個の複数のカプセルでの共-投与である。
従って、メロキシカムと抗生物質は、組み合わせた剤形、または別個に、または別個かつ連続して共-投与することが可能であり、ここで連続的な投与は好ましくは短い時間間隔で行われる。
【0018】
好ましくは、本発明の医薬品は、成育中または肥育中のブタにおけるブタ呼吸器症候群の予防または治療のため;あるいは、
マイコプラズマ(Mycoplasma)、特にマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、マイコプラズマ・ハイオライニス(Mycoplasma hyorhinis)により引き起こされるブタの呼吸器疾患の予防または治療のため、
細菌、特にアクチノバチルス亜種(Actinobacillus spp.)、特にアクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、アルカノバクテリウム・ピオゲネス(Arcanobacterium pyogenes)、ストレプトコッカス亜種(Streptococcus spp)およびスタフィロコッカス亜種(Staphylococcus spp.)により引き起こされるブタの呼吸器疾患の予防または治療のため、または、
ウィルス、特にブタインフルエンザウィルス、アウジェツキーウィルス(Aujetzky's Virus)、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、ブタサーコウィルス、並びに伝染性胃腸炎およびブタ呼吸器コロナウィルスにより引き起こされるブタの呼吸器疾患の予防または治療のために使用される。
【0019】
最も好ましくは、本発明の医薬品は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、アクチノバチルス・プルロニューモニエ、ボルデテラ・ブロンキセプチカ、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、ストレプトコッカス・スイス(Streptococcus suis)、ブタインフルエンザウィルス、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルスにより引き起こされるブタの呼吸器疾患の予防または治療に使用される。
以下の実施例は、本発明のメロキシカムの使用を説明するために利用される。それらは単に例として可能な手順とすることを目的とするものであり、その内容に本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0020】
実施例 1
実験的にアクチノバチルス・プルロニューモニエ感染させたブタに対するメロキシカムの有効性
この試験は、平行群デザインによる、実験条件下の、比較・無作為および盲検の調査試験であった。
生後約10週の異種交配したブタに、アクチノバチルス・プルロニューモニエを一回、鼻腔内接種した。翌日、以下の試験対象選抜基準を満たす場合に、そのブタを試験に含め、治療した:直腸温 ≧ 40 ℃ 、かつ、急性または準急性の感染性呼吸器疾患の臨床症状を示すこと。
24匹(12匹の去勢したオスと12匹のメス)のブタを試験対象として含め、各群8匹ずつの3つの治療群に無作為に配分した。治療群は以下のようであった。

【0021】
メロキシカムは0.5 % 溶液として3日間連続で毎日0.5 mg/Kgを、オキシテトラサイクリンは20 % 長時間作用性溶液 (オキシテット(Oxytet(登録商標))200)として、20 mg/Kg を単回注射で投与した。
有効性評価のための関連基準は、発症率、呼吸器疾患の臨床パラメーター、死亡数、および、最初の投与の10日後または自然死の後の検死における肺病変であった。影響された肺組織を肺葉ごとに計算し、肺全体について平均値をとった。
アクチノバチルス・プルロニューモニエによる接種は、12時間以内に深刻な胸膜肺炎を引き起こした。
最初の治療後の発症率(直腸温 ≧ 40.56 ℃)は、第 1 群(△)および第 2 群(○)よりも第 3 群(◆)が低かった (図1参照)。
臨床パラメーターにおける最良の治療応答は第3群において観察された。
最初の治療後3日以内に死亡したブタの数を以下に示す。

【0022】
第3群における肺病変の平均の範囲は、他の群と比較してより程度が低かった(以下を参照)。

メロキシカムは、抗生物質投与と合わせることにより、実験的にアクチノバチルス・プルロニューモニエ-感染させたブタにおける発症率、呼吸器疾患の臨床症状、死亡数、および肺病変の範囲を効果的に減少させた。
【0023】
実施例 2
実験的ブタインフルエンザウィルス感染に対する、飲用水中のメロキシカムの有効性
この試験の目的は、ブタインフルエンザウィルス(SIV)で実験的に感染させたブタにおける、飲用水中に溶解したメロキシカム顆粒剤の有効性を試験することであった。
この試験は、開放系(open)での、陰性対照を取った、無作為化の研究室試験であり、GCPに従って一箇所で実施された。
1gあたり6 mgのメロキシカムを含むメロキシカム顆粒剤を、治療群 (A+B)のブタに、飲料水を介して、飲用水1リットルあたり顆粒剤1gの濃度で、自由に7日間連続で与えた。これによって、実際のメロキシカムの摂取量は0.8 mg/kg体重・日となった。対照群(C)のブタは、自由に局地的な(municipal)飲用水を与えられた。
試験0日目に、30匹のブタをSIVで感染させた。3つの群 A、B、Cの各群に10匹のブタを配分した。治療(A群とB群)を、SIV 接種の後、同じ日に開始した。
試験動物を、試験0〜7日に毎日および14日目に臨床的に検査した。それらの体重を試験7 日目と14日目に測定した。A群のすべての動物とC群の5匹の動物を試験7日目、残りの試験動物(B群と、C群の5匹の動物)を試験14日目に安楽死させて検死した。
【0024】
この試験における大きな発見は、飲用水中で連続的に、およそ 0.8 mg/kg 体重の一日用量でメロキシカム顆粒剤を投与することにより、SIVによって実験的に感染させることにより引き起こした肺病変の進行を、接種後1週間の間、有意に緩和したことである。図2は、試験7日目および14日目の、肺葉ごとの肺病変の量を示す。
試験7日目には、SIV-関連病変に冒された肺組織の割合(中央(median)値)は、メロキシカムのA群で8.9 % であり、対照群(C群の試験動物5匹)では23.8 %であった。
さらには、メロキシカムで治療したブタは、非治療の対照と比較して、注射後2週間の期間中に体重が有意に増加した。試験 0〜7日の期間における1日あたりの平均体重増加は、メロキシカムの A 群では557g であり、対照群(C群の試験動物5匹)では257gであった。試験 0〜14 日の期間では、1日あたりの平均体重増加は、メロキシカムのB群では629g であり、対照群(C群の試験動物5匹)では486gであった。
試験0〜7日の間にわたる臨床指数スコア(CIS)の曲線の下側の面積、関連する臨床パラメーターの合計は、C群と比較してA群とB群において有意に小さかった。
このように、0.8 mg メロキシカム/kg体重・日の投与量での、7日間連続のメロキシカム顆粒剤による経口治療は、SIV 感染症に対して有効な治療であった。
【0025】
実施例 3
成育中/肥育中のブタにおけるブタ呼吸器症候群(PRDC)に対する、メロキシカムの効果に関する野外試験
材料および方法
ブタ呼吸器症候群(PRDC)の発生が繰り返された経歴のある中規模の飼育場(560匹のメスブタ)が選択された。PRDC臨床的兆候が見られる平均日齢90日の、選抜された162匹の成長段階の動物に対して二重盲検無作為化試験を実施した。等しい性別比、同じ小屋・給餌環境および遺伝的背景をもって、それらの動物を無作為に8の囲いに配分し、2つの治療群に分割した。第1群 (PC) には、8日連続にわたって飼料中に800 ppm のクロロテトラサイクリンを与えられ、またd0 (試験開始時, n = 82)にプラセボ(等張生理食塩水)を単回、筋肉注射した。第2群 (M) には、8日連続にわたって飼料中に 800 ppm のクロロテトラサイクリンを与えられ、またd0 (n = 80)に0.4 mg/Kg 体重のメロキシカム(メタカム(登録商標) 2%, ベーリンガー・インゲルハイムGmbH)を単回、筋肉注射した。
臨床パラメーターを、3点スコア (0 = 兆候なし、から、3 = 腹式呼吸および一般的体調障害)を使用する、連続8日間にわたる日ごとの呼吸器スコア(RS)、および必要とされた追加の注射治療(AIM)の合計数で評価した。各群の成長実績データは以下の治療期間における平均日体重増加(ADG)を含んだ: 日齢90〜117日、117〜170日(屠殺) および90〜170日。これらの期間について、死亡率も計算した。群ごとの屠殺場記録は、急性および準急性呼吸器病変に冒されたそれぞれの肺面積(LS)の割合を含んだ。
スチューデントのt-検定およびピアソンのカイ二乗検定を、試験群間の平均値および頻度の結果比較に使用した。
【0026】
結論および考察
メロキシカム群における呼吸器スコア(RS)と、必要とされた追加の注射治療(AIM)は、対照群と比較して有意に低かった(p < 0.05)。
急性病変に冒された肺表面(LS)についても同様であり(p < 0.01)、一方で、慢性のケースにおいては肺表面についての差は観察されなかった(表1)。
成長実績データの分析は、90〜117日において、群の間で有意な差を示した (p < 0.05, 表2)。
表 1 呼吸器スコア(RS)、肺表面(LS): 平均値(標準偏差); 必要とされた追加の注射治療(AIM)数値(%)

a,b 異なる上付き文字の行の値は有意に異なる

表 2 平均日体重増加(ADG): 平均値(標準偏差)


表 3 死亡率: 動物の数/群 (%)

a,b 異なる上付き文字の列の値は有意に異なる(p < 0.05; 表2、3)
【0027】
この試験の条件下において、呼吸器兆候の有病数の減少並びに必要な注射抗生物質治療の全体的な減少は、メロキシカムの抗炎症性作用の効能を示す。特に呼吸器疾患が飼料摂取の著しい減少に関連している場合には、後者は有用な補助的療法となり得る。成長実績および死亡率における初期の差は、メロキシカムは、適切な抗菌薬と組み合わせた場合、呼吸器炎症からのより迅速な回復および疾患動物の歪められた成長速度のより迅速な回復に寄与するという事実により説明できる。飼料摂取と、ブタ呼吸器症候群(PRDC)の繰り返し発生におけるメロキシカムの使用についてのさらなる研究が求められる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】オキシテトラサイクリンとメロキシカムで治療したブタの群 (◆)、オキシテトラサイクリンのみで治療したブタの群 (○)、および、非治療の対照 (△)における最初の治療後における発症率(%)(直腸温 ≧ 40.56 ℃)を示す。
【図2】試験7日目と14日目における、実験的なブタインフルエンザウィルス(SIV)感染により引き起こされた肺病変の減少に対する飲用水中のメロキシカムの有効性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタにおける呼吸器疾患の治療または予防のための医薬組成物を調製するための、メロキシカムまたは医薬的に許容されるその塩の使用。
【請求項2】
医薬組成物が、全身投与または経口投与に適した剤形にある、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
医薬組成物が0.01 mg/kg〜5.0 mg/kgの範囲の一日用量で投与される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
医薬組成物が、注射に適した剤形、または、飲料水を介して、もしくは飼料へのトップドレッシングとして投与するための水溶性顆粒剤の剤形にある、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
メロキシカムが抗生物質と組み合わせて投与される、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
メロキシカムが、β-ラクタム、キノロン、テトラサイクリン、スルホンアミド、フェニコールおよびマクロライドからなる群より選択される抗生物質と組み合わせて投与される、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
メロキシカムが、オキシテトラサイクリンまたはクロロテトラサイクリンと組み合わせて投与される、請求項1から6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
医薬品が、成育中または肥育中のブタにおけるブタ呼吸器症候群の予防または治療のために使用される、請求項1から7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
医薬品が、マイコプラズマ、細菌またはウィルスにより引き起こされるブタの呼吸器疾患の予防または治療に使用される、請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
医薬品が、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ、マイコプラズマ・ハイオライニス、アクチノバチルス亜種、特にアクチノバチルス・プルロニューモニエ、ボルデテラ・ブロンキセプチカ、パスツレラ・ムルトシダ、アルカノバクテリウム・ピオゲネス、ストレプトコッカス亜種およびスタフィロコッカス亜種、ブタインフルエンザウィルス、アウジェツキーウィルス、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス、ブタサーコウィルス、並びに伝染性胃腸炎およびブタ呼吸器コロナウィルスにより引き起こされるブタの呼吸器疾患の予防または治療に使用される、請求項1から9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
ブタにおける呼吸器疾患の治療または予防の方法であって、効果的な量のメロキシカムを、それが必要なブタに投与することを含む前記方法。
【請求項12】
ブタにおける呼吸器疾患の治療のための即使用可能な2構成物システムであって、
(a)1つの構成物はメロキシカムおよび医薬的に許容される担体を含み; かつ、
(b)もう一方の構成物は、β-ラクタム、キノロン、テトラサイクリン、スルホンアミド、フェニコールおよびマクロライドからなる群より選択される少なくとも1つの抗生物質と、医薬的に許容される担体とを含む、システム。
【請求項13】
包装材料およびラベルを有する製造物であって、前記包装材料は、メロキシカムおよび医薬的に許容される担体を含む組成物を収容し、前記ラベルは、前記組成物がブタにおける呼吸器疾患の治療または予防に使用し得ることを表示する、製造物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−523205(P2007−523205A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500103(P2007−500103)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001549
【国際公開番号】WO2005/079806
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(504225895)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (34)
【Fターム(参考)】