説明

プライマー組成物

【課題】難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性に優れるプライマー組成物を提供する。
【解決手段】モノマー単位としてアクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルを有する数平均分子量15000以上のアクリル樹脂(A)と、トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)とを含有し、前記トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)100質量部に対して前記アクリル樹脂(A)が10〜175質量部含有されるプライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のボディと窓ガラスとの接着にはウインドウシーラントが使用されている。
しかしながら、ウインドウシーラントのみを使用した接着では十分な接着性が得られない場合が多い。
そのため、このようにシーラントや接着剤単独で十分な接着性が得られない場合には、接着面に予めプライマー組成物を塗布した後、その上に接着剤等を塗布して十分な接着性を確保することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、近年、自動車のボディにアクリルメラミン樹脂等を含む難接着性の塗装が施されることが増えており、このような難接着性塗板に対する接着では、プライマー組成物を用いた場合でも十分な接着性を確保できず、特に、初期の接着性や耐水接着性が劣るという問題があった。
【0004】
また、従来、接着性を向上させるためにプライマー組成物にカーボンブラックが配合されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、カーボンブラックが配合されている場合、プライマー組成物による汚れが目立つという問題があるため、カーボンブラックを含有しないでも難接着性塗板に対する接着性を確保できるプライマー組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−328670号公報
【特許文献2】特開平10−81867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、難接着性塗板に対する接着性、特に、初期接着性および耐水接着性に優れるプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェートを含むプライマー組成物に、モノマー単位としてアクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルを有する分子量15,000以上のアクリル樹脂を特定量添加すると、難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性に優れるプライマー組成物とすることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記(1)〜(6)を提供する。
【0008】
(1)モノマー単位としてアクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルを有する数平均分子量15000以上のアクリル樹脂(A)と、トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)とを含有し、
前記トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)100質量部に対して前記アクリル樹脂(A)が10〜175質量部含有されるプライマー組成物。
【0009】
(2)さらに、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート化合物(C)を含有し、
前記トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)100質量部に対して前記ポリイソシアネート化合物(C)が50〜200質量部含有される、上記(1)に記載のプライマー組成物。
【0010】
(3)さらに、硬化触媒(D)を含有し、
前記トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)100質量部に対して前記硬化触媒(D)が0.0001〜1.0質量部含有される、上記(1)または(2)に記載のプライマー組成物。
【0011】
(4)さらに、溶剤(E)を含有し、
前記溶剤(E)が全質量の60質量%以上である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のプライマー組成物。
【0012】
(5)前記溶剤(E)が酢酸エチルである、上記(4)に記載のプライマー組成物。
【0013】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のプライマー組成物を硬化させて得られるプライマー塗膜。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性に優れるプライマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。なお、本明細書においては、アクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルをまとめて(メタ)アクリル酸メチルと記載する場合がある。
【0016】
本発明のプライマー組成物は、モノマー単位としてアクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルを有する数平均分子量15000以上のアクリル樹脂(A)(以下「アクリル樹脂(A)」という。)と、トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)(以下「ポリイソシアネート化合物(B)」という。)とを含有し、前記ポリイソシアネート化合物(B)100質量部に対して前記アクリル樹脂(A)が10〜175質量部含有されるプライマー組成物である。
【0017】
以下、必須成分について説明する。
【0018】
<アクリル樹脂(A)>
上記アクリル樹脂(A)は、モノマー単位としてアクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルを有し、数平均分子量が15000以上であるものであれば特に限定されない。
上記アクリル樹脂(A)を含有することにより、難接着性メラミン塗板等の難接着性塗板に対する、本発明のプライマー組成物の耐水接着性が良好なものとなる。ここで、アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとの重合モル比は特に限定されない。
【0019】
本発明のプライマー組成物中の上記アクリル樹脂(A)の含有量は、下記ポリイソシアネート化合物(B)100質量部に対して、上記アクリル樹脂(A)の不揮発分(固形分)が10〜175質量部、好ましくは20〜145質量部、より好ましくは30〜135質量部である。アクリル樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)とをこの範囲内で含有すると、難接着性塗板に対する耐水接着性がより良好となる。
【0020】
上記アクリル樹脂(A)は市販品を使用することができる。
アクリル樹脂(A)の市販品としては、具体的には、例えば、デルパウダー 80N(旭化成工業社製、M=100000)、デルパウダー 720V(旭化成工業社製、M=65000)等を挙げることができる(Mは数平均分子量を表す。以下同じ。)。
【0021】
耐水接着性が良好なものとなるメカニズムは明らかではないが、本発明者は、(メタ)アクリル酸メチルモノマーの疎水性が寄与しているのではないかと考えている。ただし、このメカニズムに限定されないことはいうまでもない。
【0022】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
上記ポリイソシアネート化合物(B)は、下記式(1)で表される化合物である。
上記ポリイソシアネート化合物(B)を含有することにより、本発明のプライマー組成物の難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性が良好なものとなる。
【0023】
【化1】

【0024】
上記ポリイソシアネート化合物(B)は市販品を使用することができる。
ポリイソシアネート化合物(B)の市販品としては、これを含有する組成物を使用することができ、具体的には、例えば、デスモジュールRFE(住化バイエルウレタン社製、不揮発分=27質量%、NCO含有量=約7.2質量%)を挙げることができる。
なお、上記デスモジュールRFEのうち、不揮発分が上記ポリイソシアネート化合物(B)に相当する。
【0025】
以下、任意成分について説明する。
【0026】
<ポリイソシアネート化合物(C)>
本発明のプライマー組成物には、さらに、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート化合物(C)(以下「ポリイソシアネート化合物(C)」という。)を含有することが好ましい。ポリイソシアネート化合物(C)を上記ポリイソシアネート化合物(B)と組み合わせて用いると、難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性をいっそう向上することができる。
【0027】
上記ポリイソシアネート化合物(C)としては、ジイソシアネート化合物を三量化して得られる、ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を好適に用いることができる。
【0028】
上記ジイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI));MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI));1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;等を挙げることができる。
【0029】
これらのうち、トリレンジイソシアネート(TDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とのアダクトが、難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性がより良好となるという理由から好ましい。
【0030】
特に、ポリイソシアネート化合物(B)がトリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェートである場合に、ポリイソシアネート化合物(C)としてトリレンジイソシアネート(TDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とのアダクトを用いることが好ましい。これらを組み合わせて用いることにより難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性を大幅に向上できる。
【0031】
本発明のプライマー組成物中の上記ポリイソシアネート化合物(C)の含有量は、上記ポリイソシアネート化合物(B)の不揮発分(固形分)100質量部に対して、上記ポリイソシアネート化合物(C)の不揮発分(固形分)が好ましくは50〜200質量部、より好ましくは70〜170質量部、さらに好ましくは80〜140質量部である。上記ポリイソシアネート化合物(C)の含有量がこの範囲であると、難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性がさらに良好となる。
【0032】
上記ポリイソシアネート化合物(C)は市販品を使用することができる。
ポリイソシアネート化合物(C)の市販品としては、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とのアダクト(デスモジュールHL、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート化合物、住化バイエルウレタン社製)等を挙げることができる。
【0033】
また、本発明のプライマー組成物は、上記ポリイソシアネート化合物(B)および上記ポリイソシアネート化合物(C)以外の、イソシアネート基を1分子中に1つ以上有するイソシアネート化合物(以下「(ポリ)イソシアネート化合物」という。)を含有してもよい。
【0034】
上記(ポリ)イソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI));MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI));ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等を挙げることができる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明のプライマー組成物中の上記(ポリ)イソシアネート化合物の含有量は、特に限定されないが、上記ポリイソシアネート化合物(B)100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましい。上記(ポリ)イソシアネート化合物をこの範囲内で含有すると、初期接着性と耐水接着性のバランスが良好なものとなるからである。
【0036】
本発明のプライマー組成物に含有される(ポリ)イソシアネート化合物の平均官能基数は、難接着性塗板に対する接着性に優れる理由から2.3以上であることが好ましい。ここで、「平均官能基数」は1分子中に存在するイソシアネート基の平均の個数である。
【0037】
<硬化触媒(D)>
本発明のプライマー組成物は、さらに、硬化触媒(D)を含有することが好ましい。
【0038】
本発明のプライマー組成物中の上記硬化触媒(D)の含有量は、上記ポリイソシアネート化合物(B)の不揮発分(固形分)100質量部に対して、上記硬化触媒(D)の不揮発分(固形分)が好ましくは0.0001〜1.0質量部、より好ましくは0.0005〜0.6質量部である。含有量がこの範囲であると、接着発現が早くなり、十分な接着性が得られる。
【0039】
上記硬化触媒(D)としては、例えば、金属系触媒、アミン系触媒等を挙げることができる。
【0040】
上記金属系触媒としては、具体的には、例えば、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ナフテン酸スズなどのスズカルボン酸塩類;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナートなどのキレート化合物類;オクタン酸鉛、オクタン酸ビスマスなどのオクタン酸金属塩等を挙げることができる。
【0041】
上記アミン系触媒としては、具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエチルモルホリン等の第三級アミンを挙げることができる。
【0042】
上記硬化触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
<溶剤(E)>
本発明のプライマー組成物は、さらに、溶剤(E)を含有してもよい。
特に、硬化前には、溶剤(E)を含有することが好ましい。
【0044】
本発明のプライマー組成物中の上記溶剤(E)の含有量は、本発明のプライマー組成物の全質量の好ましくは60質量%以上、より好ましくは70〜95質量%、さらに好ましくは75〜95質量%である。含有量がこの範囲であると、良好な塗工性を得ることができ、初期接着性および耐水接着性も良好なものとなる。
【0045】
上記溶剤(E)としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル等を挙げることができる。
【0046】
<その他含有してよい成分>
本発明のプライマー組成物は、塗布したことを確認し易くする観点から、上述した各成分以外に、更に顔料や染料を含有してもよい。
上記顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等を挙げることができる。
【0047】
また、本発明のプライマー組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、充填剤、紫外線吸収剤、分散剤、脱水剤、接着付与剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0048】
上記充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤を挙げることができる。
具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物等を挙げることができる。
【0049】
本発明のプライマー組成物には、アクリル樹脂以外の樹脂を含有してもよい。ただし、本発明においては、数平均分子量3000以上15000未満のポリエステル樹脂を含有しないことが好ましく、ポリエステル樹脂を含有しないことがより好ましい。
【0050】
本発明のプライマー組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記の各必須成分と任意成分とを密閉容器中で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混合する方法を用いることができる。
【0051】
得られた本発明のプライマー組成物を適用する被着体としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、金属、木材、プラスチックおよびこれらの表面に塗装が施されたもの等を挙げることができる。難接着性塗板としては、アクリル系塗板、エポキシ系塗板、シリコーン系塗板等を挙げることができる。
【0052】
また、本発明のプライマー組成物と共に用いる接着剤またはシーラントとしては、例えば、ウレタン系、ウレタンエポキシ系等が好適に挙げられる。
【0053】
上述した本発明のプライマー組成物は、難接着性塗板に対する接着性、特に、初期接着性および耐水接着性に優れる。更に、カーボンブラックを含んでいなくても難接着性塗板に対して優れた接着性を発揮できる。
本発明のプライマー組成物は、ウインドウシーラントと難接着性塗板との接着に用いられるプライマーとして特に有用である。
【0054】
本発明のプライマー組成物を用いたウインドウシーラントと難接着性塗板との接着方法について、以下に説明する。
被着体の一方は、自動車のボディ等に用いられる塗装鋼板、例えば、電着塗装鋼板等にアクリルメラミン塗料を焼付けた難接着性塗板等を挙げることができる。
【0055】
上記ウインドウシーラントは、自動車のボディと窓ガラスとを接着するためのもので、例えば、一般に用いられるポリウレタン系シーラント等を挙げることができる。ウインドウシーラントとしては、例えば、横浜ゴム社製のWS−70等の市販品を使用することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
<プライマー組成物>
下記第1表に示す組成(質量部)で撹拌機を用いて混合し、各プライマー組成物を得た。
【0058】
【表1】

【0059】
第1表に示す各成分は下記のとおりである。また、各成分の含有量は質量部単位で記載している。
・アクリル樹脂(a1):デルパウダー 80N(旭化成工業社製;M=100000)
・アクリル樹脂(a2):デルパウダー 720V(旭化成工業社製;M=65000)
・ポリイソシアネート(b1):デスモジュール RFE(住化バイエルウレタン社製;トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート;不揮発分(固形分)=27質量%、NCO%=7.2%)
・ポリイソシアネート(c1):デスモジュール HL(住化バイエルウレタン社製;HDIとTDIとのアダクト;不揮発分(固形分)=60質量%、NCO%=5.4%)
・硬化触媒(d1):DABCO XDM(三共エアプロダクツ社製;N,N-ジメチル-4-モルホリンエタンアミン)
・硬化触媒(d2):ネオスタン U−810(日東化成社製;ジオクチルスズジラウレート)
・溶剤(e1):酢酸エチル
【0060】
<接着性試験>
得られたプライマー組成物をアクリル系塗板に塗布し、20℃で2分間放置した後、ウレタン系のウインドウシーラント(WS−202、横浜ゴム社製)を厚さ3mmとなるように塗布し、以下に示す硬化条件で硬化させて試験体とした。
【0061】
(硬化条件)
・初期接着性:20℃、65%RHの環境下で1週間放置
・耐水接着性(14日間):50℃の温水中で2週間放置
・耐水接着性(28日間):50℃の温水中で4週間放置
【0062】
(接着性評価方法)
得られた試験体のウインドウシーラントをナイフでカットし、カット部を手で摘んで引張り、その剥離状態を観察することで、接着性を評価した。接着性の評価は、接着面積に対するウインドウシーラントの凝集破壊(CF)面積の割合(%)により行い、CFの割合が高いほど接着性に優れると評価した。
なお、例えば、接着面の面積に対してウインドウシーラントの凝集破壊の面積の割合が80%であった場合を「CF80」と表記することとした。また、塗膜とプライマーとの界面剥離面積が100%であった場合を「AF100」と、それぞれ表記することとした。
【0063】
(実施例1〜6)
実施例1は、アクリル樹脂(A)(以下「(A)成分」という。)(デルパウダー 80N、不揮発分(固形分)=100質量%)1.50質量部と、トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)(以下「(B)成分」という。)(デスモジュールRFE、不揮発分(固形分)=27質量%)20質量部と、イソシアネート化合物(C)(以下「(C)成分」という。)(デスモジュールHL、不揮発分(固形分)=60質量%)と、硬化触媒(D)(以下「(D)成分」という。)0.03質量部と、を含有する実施例である。
すなわち、実施例1は、換算すれば、(B)成分の不揮発分(固形分)100質量部に対し、(A)成分28質量部、(C)成分111質量部および(D)成分0.56質量部を含有する実施例である。
実施例2は、(A)成分の含有量が、(B)成分の不揮発分(固形分)100質量部に対して65質量部であるほかは、実施例1と同一の組成の実施例である。
実施例3は、(A)成分の含有量が、(B)成分の不揮発分(固形分)100質量部に対して93質量部であるほかは、実施例1と同一の組成の実施例である。
実施例4〜6は、(A)成分として、デルパウダー 80Nに代えて、デルパウダー 720V(不揮発分(固形分)=100質量%)を使用したほかは、それぞれ、実施例1〜3と同一の組成の実施例である。
【0064】
(比較例1〜5)
比較例1は、(A)成分を含有しないほかは、実施例1と同一の組成の実施例である。
比較例2は、(A)成分の含有量が、(B)成分の不揮発分(固形分)100質量部に対して4質量部であるほかは、実施例1と同一の組成の実施例である。
比較例3は、(A)成分の含有量が、(B)成分の不揮発分(固形分)100質量部に対して185質量部であるほかは、実施例1と同一の組成の実施例である。
比較例4、5は、(A)成分として、デルパウダー 80Nに代えて、デルパウダー 720V(不揮発分(固形分)=100質量%)を使用したほかは、それぞれ、比較例2、3と同一の組成の実施例である。
(接着性試験結果)
実施例1〜6および比較例1〜5についての接着性試験結果を第1表に示す。
実施例1〜6のプライマー組成物は、優れた初期接着性および耐水接着性を有していた。
一方、(A)成分を含有しない比較例1のプライマー組成物および(A)成分を含有するが、含有量が少なすぎる比較例2、4のプライマー組成物は、初期接着性は良好であったが、耐水接着性が満足できるものではなかった。(A)成分が耐水接着性の向上に貢献することが理解できる。
また、(A)成分を含有するが、含有量が多すぎる比較例3、5のプライマー組成物は、初期接着性、耐水接着性ともに満足できるものではなかった。(A)成分を過剰に含有すると、初期接着性が低下し、それによって耐水接着性も発揮されなくなることが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー単位としてアクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルを有する数平均分子量15000以上のアクリル樹脂(A)と、トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)とを含有し、
前記トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)100質量部に対して前記アクリル樹脂(A)が10〜175質量部含有されるプライマー組成物。
【請求項2】
さらに、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート化合物(C)を含有し、
前記トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)100質量部に対して前記ポリイソシアネート化合物(C)が50〜200質量部含有される、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
さらに、硬化触媒(D)を含有し、
前記トリス(4−イソシアナトフェニル)チオホスフェート(B)100質量部に対して前記硬化触媒(D)が0.0001〜1.0質量部含有される、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
さらに、溶剤(E)を含有し、
前記溶剤(E)が全質量の60質量%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記溶剤(E)が酢酸エチルである、請求項4に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のプライマー組成物を硬化させて得られるプライマー塗膜。

【公開番号】特開2011−225774(P2011−225774A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98969(P2010−98969)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】