説明

プラスチゾル用接着性付与剤及びこれを用いたプラスチゾル

【課題】 塗装外観、耐チッピング性、耐温水性及び金属塗装面に対する密着性のいずれにも優れるプラスチゾルを得ることができる接着性付与剤を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で表される活性水素含有化合物(a1)及びブロック化剤(a2)を含有する活性水素成分(A)並びに有機ポリイソシアネート成分(B)を反応させて得られるブロック化ウレタンプレポリマー(C)を含有することを特徴とするプラスチゾルに用いる接着性付与剤用の主剤(M)。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチゾルに使用される接着性付与剤に関する。更に詳しくは、特に自動車の外板に塗装され、車体鋼板の腐食を防止するプラスチゾルの配合成分として使用される接着性付与剤及びそれを含むプラスチゾルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の塗装用プラスチゾルには、被塗物への接着性を向上させるために、通常接着性付与剤が配合されている。それらの内、自動車用鋼板に塗装されるプラスチゾル用の接着性付与剤は、基剤となる主剤と硬化剤を含有しており、主剤としては、ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのブロック化物(特許文献−1)が知られている。しかしながら、特許文献1記載の接着性付与剤を用いた場合、金属塗装面に対する塗装性(塗装外観)、耐チッピング性及び耐温水性は優れるものの、金属塗装面に対する密着性については充分満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平59−78279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、塗装外観、耐チッピング性、耐温水性及び金属塗装面に対する密着性のいずれにも優れるプラスチゾルを得ることができる接着性付与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、一般式(1)で表される活性水素含有化合物(a1)及びブロック化剤(a2)を含有する活性水素成分(A)並びに有機ポリイソシアネート成分(B)を反応させて得られるブロック化ウレタンプレポリマー(C)を含有することを特徴とするプラスチゾルに用いる接着性付与剤用の主剤(M);前記主剤(M)及び硬化剤(H)を含有してなるプラスチゾル用接着性付与剤;アクリル重合体又は塩化ビニル重合体と、前記接着性付与剤と、可塑剤とを含有してなるプラスチゾル;前記プラスチゾルの硬化物を鋼板表面の少なくとも一部に有するチッピング防止鋼板;である。
【0006】
【化1】

[一般式(1)中、X1はm価の活性水素含有化合物からc個の活性水素を除いた残基を表し;cは1≦c≦mを満たす整数を表し;mは1〜20の整数を表し;X2は活性水素含有化合物から1個の活性水素を除いた残基を表し、複数のX2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X2とX1はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基を表し、Yの芳香環は炭素原子から構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよいが少なくとも一つの炭素原子は置換基が結合しておらず;aは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表し、かつ、2≦a+b≦d−2を満たし;dは前記芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基を含む全ての置換基を水素原子に置換した場合の芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子の数、即ち芳香環上で置換可能な部位の数を表し;以下の(1)〜(4)の条件の内の少なくとも1つを満たす;(1)X1の価数mとcがm>cを満たす、(2)Yが活性水素を有する置換基で置換されている、(3)X2を構成する活性水素含有化合物が2価以上である、(4)bが1以上である。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の接着性付与剤を用いることにより、塗装外観、耐チッピング性、耐温水性及び金属塗装面に対する密着性のいずれにも優れるプラスチゾルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のプラスチゾル用接着性付与剤は、主剤(M)と硬化剤(H)とを構成成分として有し、主剤(M)が、一般式(1)で表される活性水素含有化合物(a1)及びブロック化剤(a2)を含有する活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られるブロック化ウレタンプレポリマー(C)を含有することを特徴とする。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(1)におけるX1は、m価の活性水素含有化合物からc個の活性水素を除いた残基を表す。
【0011】
活性水素含有化合物としては、水酸基含有化合物、アンモニア、アミノ基含有化合物及びチオール基含有化合物等が挙げられる。活性水素含有化合物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0012】
水酸基含有化合物としては、炭素数1〜20の1価のアルコール、炭素数2〜20の多価アルコール、フェノール類及びこれらのアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物等が挙げられる。
【0013】
炭素数1〜20の1価アルコールとしては、炭素数1〜20のアルカノール(メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数2〜20のアルケノール(オレイルアルコール及びリノリルアルコール等)及び炭素数7〜20の芳香脂肪族アルコール(ベンジルアルコール及びナフチルエタノール等)等が挙げられる。
【0014】
炭素数2〜20の多価アルコールとしては、炭素数2〜20の2価アルコール[脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−又は1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,10−デカンジオール等)、脂環式ジオール(シクロヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノール等)及び芳香脂肪族ジオール{1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等}等]、炭素数3〜20の3価アルコール[脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等]及び炭素数5〜20の4〜8価アルコール[脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等)及び糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)]等が挙げられる。
【0015】
フェノール類としては、例えば1価のフェノール(フェノール、1−ヒドロキシナフタレン、アントロール及び1−ヒドロキシピレン等)及び多価フェノール[フロログルシン、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1,3,6,8−テトラヒドロキシナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロキシアントラセン、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)及び米国特許3265641号明細書に記載のポリフェノール等]が挙げられる。
【0016】
アミノ基含有化合物としては、炭素数1〜20のモノハイドロカルビルアミン[アルキルアミン(ブチルアミン等)、ベンジルアミン及びアニリン等]、炭素数2〜20の脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジエチレントリアミン等)、炭素数6〜20の脂環式ポリアミン(ジアミノシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数6〜20の芳香族ポリアミン(フェニレンジアミン、トリレンジアミン及びジフェニルメタンジアミン等)、炭素数2〜20の複素環式ポリアミン(ピペラジン及びN−アミノエチルピペラジン等)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)、ジカルボン酸と過剰のポリアミンとの縮合により得られるポリアミドポリアミン、ポリエーテルポリアミン、ヒドラジン(ヒドラジン及びモノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド(コハク酸ジヒドラジッド及びテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン(ブチルグアニジン及び1−シアノグアニジン等)及びジシアンジアミド等が挙げられる。
【0017】
チオール基含有化合物としては、炭素数1〜20の1価のチオール化合物(エタンチオール等のアルカンチオール、ベンゼンチオール及びフェニルメタンチオール)及び炭素数2〜20の多価のチオール化合物(1,2−エタンジチオール及び1,6−ヘキサンジチオール等)等が挙げられる。
【0018】
尚、活性水素含有化合物として、分子内に2種以上の活性水素含有官能基(水酸基、アミノ基及びチオール基等)を有する化合物も使用でき、更に前記活性水素含有化合物のAO付加物を使用することもできる。
【0019】
活性水素含有化合物に付加させるAOとしては、炭素数2〜4のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、1,2−プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−又は2,3−ブチレンオキサイド及びテトラヒドロフラン(以下、THFと略記)等が挙げられる。これらの内、耐チッピング性の観点からEO、PO及びTHFが好ましい。AOは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、AOを2種以上併用する場合の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0020】
AOの付加モル数は耐チッピング性の観点から、8〜100が好ましく、更に好ましくは10〜80である。また、AO付加物の水酸基価は18〜360mgKOH/gであることが好ましい。
尚、本発明において、水酸基価はJIS K 1557−1に準拠して測定される。
【0021】
活性水素含有化合物(a1)にX1を導入するための活性水素含有化合物として、耐チッピング性の観点から好ましいのは、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物及びこれらのAO付加物であり、更に好ましいのは、炭素数2〜20の多価アルコール、炭素数2〜20の多価アルコールにAOを付加したポリエーテルポリオール、炭素数2〜20の脂肪族ポリアミン及び炭素数2〜20の多価のチオール化合物、特に好ましいのは炭素数2〜20の多価アルコール及び炭素数2〜20の多価アルコールにAOを付加したポリエーテルポリオール、最も好ましいのは炭素数2〜20の多価アルコールにAOを付加したポリエーテルポリオールである。
【0022】
活性水素含有化合物の価数mは、耐チッピング性の観点から、通常1〜20であり、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは2である。
【0023】
一般式(1)におけるcは、1〜20でかつ1≦c≦mを満たす整数を表し、耐チッピング性の観点から、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは2である。
【0024】
一般式(1)におけるX2は、1〜20価の活性水素含有化合物から1個の活性水素を除いた残基を表し、複数のX2はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
2を構成するために用いられる活性水素含有化合物としては、上述のX1で示した活性水素含有化合物と同様の物が挙げられ、X2とX1はそれぞれ同一でも異なっていてもよいが、耐チッピング性の観点から、X1と少なくとも1つのX2とは異なる基であることが好ましい。
また、X2の価数は耐チッピング性の観点から、通常1〜20であり、好ましくは1〜8、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2、最も好ましくは2である。
【0025】
尚、後述のYを構成するために用いる3価以上のポリカルボン酸に前記活性水素含有化合物を反応させることによりX1及びX2を活性水素含有化合物(a1)に導入することができるが、X1及びX2が特に炭素数2〜4のジオール又は繰り返し単位の炭素数が2〜4のポリエーテルポリオールの場合、ポリカルボン酸のカルボキシル基に前記炭素数2〜4のAOを付加することによっても同等の化合物を得ることができる。
【0026】
一般式(1)におけるYは、3価以上の芳香族ポリカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基を表す。Yの芳香環は炭素原子から構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよいが、少なくとも一つの炭素原子は置換基が結合しておらず水素原子と結合している必要がある。
【0027】
カルボキシル基以外の置換基としては、アルキル基、ビニル基、アリル基、シクロアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアミノ基、ニトロ基、チオール基、アリール基及びシアノ基等が挙げられる。
【0028】
Yを構成するために用いられる3価以上の芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数9〜30の芳香族ポリカルボン酸、例えばトリメリット酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、トリメシン酸、ヘミリット酸、1,2,4−、1,3,6−又は2,3,6−ナフタレントリカルボン酸及び2,3,6−アントラセントリカルボン酸等のトリカルボン酸;ピロメリット酸、3,3’,4,4’−、2,2’,3,3’−又は2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−又は2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−オキシビスフタル酸、ジフェニルメタンテトラカルボン酸、1,4,5,8−、1,2,5,6−又は2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフタル酸等のテトラカルボン酸;等が挙げられる。芳香族ポリカルボン酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
尚、活性水素含有化合物(a1)の製造に当たっては、これらのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)及び酸ハライド(酸のクロライド等)]を用いることもできる。
【0029】
これらの芳香族ポリカルボン酸の内、耐チッピング性の観点から好ましいのは、前記芳香環を構成し置換基が結合していない炭素原子に隣接しかつ芳香環を形成する2個の炭素原子それぞれにカルボキシル基が結合した構造を有するものが好ましく、更に好ましいのは、前記カルボキシル基が結合した炭素原子に隣接する炭素原子の少なくとも一方に更に1個のカルボキシル基が結合した構造を有するものである。
【0030】
例えば、芳香族ポリカルボン酸の芳香環がベンゼン環の場合、1位と3位にカルボキシル基が結合した構造を有するものが好ましく、更に好ましいのは前記カルボキシル基が結合したベンゼン環の4位及び/又は6位に更にカルボキシル基が結合した構造を有するものである。
【0031】
プラスチゾルの強度の観点から、Yを構成するために用いる芳香族ポリカルボン酸として特に好ましいのは単環式化合物であり、最も好ましいのはトリメリット酸及びピロメリット酸である。
【0032】
一般式(1)におけるaは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表し、かつ、2≦a+b≦d−2を満たし、dは前記芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基を含む全ての置換基を水素原子に置換した場合の芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子の数、即ち芳香環上で置換可能な部位の数を表す。例えば、芳香環が炭素原子6個から構成されるベンゼン環の場合、dは6であり、a+bは2〜4の値を取り得、芳香環が炭素原子10個から構成されるナフタレン環の場合、dは8であり、a+bは2〜6の値を取り得る。芳香環が単環の芳香環の場合、プラスチゾルの強度の観点から、a+bは2又は3が好ましい。また、プラスチゾルの強度の観点から、bはaの1/2以下であることが好ましく、特に好ましいのは0である。
【0033】
本発明における活性水素含有化合物(a1)の水酸基価は、耐チッピング性の観点から、好ましくは70〜500mgKOH/g、更に好ましくは75〜350mgKOH/gである。水酸基価が70mgKOH/g未満ではプラスチゾルの伸びが低下する傾向にあり、500mgKOH/gを超えるとプラスチゾルの強度が低下する傾向にある。
【0034】
活性水素含有化合物(a1)におけるYの濃度は、活性水素含有化合物(a1)1g中の残基Yのミリモル数を意味し、耐チッピング性の観点から、好ましくは1.0〜3.5mmol/g、更に好ましくは1.1〜3.4mmol/g、特に好ましくは1.2〜3.3mmol/gである。Yの濃度が1.0mmol/g未満ではプラスチゾルの強度が低下する傾向にあり、3.5mmol/gを超えるとプラスチゾルの伸びが低下する傾向にある。
【0035】
活性水素含有化合物(a1)のカルボニル基濃度は、耐チッピング性の観点から、好ましくは3.0〜10.0mmol/g、更に好ましくは3.5〜9.7mmol/g、特にに好ましくは4.0〜9.5mmol/gである。カルボニル基濃度が3.0mmol/g未満ではプラスチゾルの強度が低下する傾向にあり、カルボニル基濃度が10.0mmol/gを超えるとプラスチゾルの伸びが低下する傾向にある。本発明におけるカルボニル基濃度におけるカルボニル基とは、一般式(1)におけるYに結合するカルボニル基、即ちYを導入するために用いられる3価以上の芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基並びにこれから誘導されるエステル基、チオエステル基及びアミド基等の官能基中のカルボニル基を意味する。
【0036】
活性水素含有化合物(a1)のモル平均官能基数は、プラスチゾルの金属塗装面に対する密着性の観点から、2〜8が好ましく、更に好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4ある。
本発明におけるモル平均官能基数は、組成物中の各成分の活性水素を有する官能基の数に各成分のモル数を乗じた値の総和を各成分のモル数の総和で除した値であり、各成分のモル数は各成分の重量を各成分の分子量で除した値である。計算に用いる分子量としては、低分子化合物の様に分子量に分布がない場合は化学式量を、分子量に分布がある場合は数平均分子量(以下、Mnと略記)を用いる。本発明におけるMnは、THFを溶剤として用い、ポリオキシプロピレングリコールを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される。
【0037】
活性水素含有化合物(a1)は、一般式(1)におけるX1、X2及びYの内の少なくとも1種が活性水素を有すること、即ち、以下の(1)〜(4)の条件の内の少なくとも1つを満たすことにより
少なくとも1つの活性水素を有する。
(1)X1の価数mとcがm>cを満たす。
(2)Yが活性水素を有する置換基(アミノ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアミノ基及びチオール基等)で置換されている。
(3)X2を構成する活性水素含有化合物が2価以上である。
(4)bが1以上である。
【0038】
ブロック化ウレタンプレポリマー(C)における活性水素含有化合物(a1)の使用量は、耐チッピング性の観点から、(C)の重量を基準として0.01〜60重量%であることが好ましい。
【0039】
活性水素成分(A)が含有するブロック化剤(a2)としては、ラクタム(炭素数4〜10、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム及びγ−ブチロラクタム)、オキシム[炭素数3〜10、例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)及びメチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)]、アミン[炭素数2〜20の2級アミン、例えば脂肪族アミン(ジメチルアミン及びジイソピルアミン等)、脂環式アミン(メチルヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等)及び芳香族アミン(ジフェニルアミン等)]、アルキルフェノール[炭素数7〜20、例えばクレゾール、ノニルフェノール、キシレノール及びジ−t−ブチルフェノール]、特許公開2002−309217号公報及び特許公開2008−239890号公報に記載のブロック化剤、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの内、プラスチゾルの密着性の観点から好ましいものは、ラクタム、オキシム及びアミンである。
【0040】
活性水素成分(A)は、更に(a1)以外の水酸基価が20〜2000mgKOH/gのポリオール(a3)及び鎖伸長剤(a4)を含有することができる。
【0041】
(a1)以外の水酸基価が20〜2000mgKOH/gのポリオール(a3)としては、モル平均官能基数が2〜8である、前記炭素数2〜20の多価アルコール、前記炭素数2〜20の多価アルコールにAOを付加したポリエーテルポリオール、前記(a1)以外のポリエステルポリオール及びその他のポリオール等が挙げられる。
【0042】
ポリオール(a3)としてのポリエーテルポリオールの内、耐チッピング性の観点から好ましいのは、AOが、EO、PO、1,2−ブチレンオキサイド及び/又はTHFであるものである。
【0043】
ポリエステルポリオールとしては、前記炭素数2〜20の多価アルコール及び/又は前記ポリエーテルポリオールと2〜4価の芳香族ポリカルボン酸及び/又は脂肪族ポリカルボン酸、これらの無水物並びにこれらの低級アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4)エステル等のエステル形成性誘導体との縮合反応物であって、前記(a1)以外のもの;これらのAO付加物;ポリラクトンポリオール[例えば前記炭素数2〜20の多価アルコールを開始剤としてラクトン(ε−カプロラクトン等)を開環重合させることにより得られるもの];並びにポリカーボネートポリオール(例えば前記炭素数2〜20の多価アルコールとアルキレンカーボネートとの反応物);等が挙げられる。
【0044】
2〜4価の芳香族ポリカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−、1,8−、2,3−又は2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,3’−又は4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−又は4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸及び4,4’−ビナフチルジカルボン酸等の炭素数8〜30の芳香族ジカルボン酸並びに前記3価又は4価の芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。
【0045】
2〜4価の脂肪族ポリカルボン酸としては、例えばシュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリカルバリル酸及びヘキサントリカルボン酸等の炭素数2〜30の脂肪族ポリカルボン酸等が挙げられる。
【0046】
その他のポリオールとしては、単環多価フェノール(ピロガロール、ハイドロキノン及びフロログルシン等)又はビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)の水酸基にAOが水酸基1個当たり1モル付加したポリオール、シリコーンポリオール、重合体ポリオール、ポリジエンポリオール(ポリブタジエンポリオール等)、ポリジエンポリオールの水添物、アクリル系ポリオール、天然油系ポリオール(ヒマシ油等)及び天然油系ポリオールの変性物等が挙げられる。
【0047】
ポリオール(a3)の水酸基価は、耐チッピング性の観点から、通常20〜2000mgKOH/gであり、好ましくは25〜1950mgKOH/gである。水酸基価が20mgKOH/g未満ではプラスチゾルの強度が低下し、2000mgKOH/gを超えるとプラスチゾルの伸びが悪化する。
【0048】
ポリオール(a3)のモル平均官能基数は、プラスチゾルの伸びの観点から、2〜8が好ましく、更に好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4、最も好ましくは2である
【0049】
鎖伸長剤(a4)としては、水、炭素数2〜10のジアミン類(例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、トルエンジアミン及びピペラジン)、ポリアルキレンポリアミン類(例えばジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン)、ヒドラジン又はその誘導体(例えばアジピン酸ジヒドラジド等の二塩基酸ジヒドラジド)並びに炭素数2〜10のアミノアルコール類(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール及びトリエタノールアミン等)等が挙げられる。鎖伸長剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
尚、前記ポリオール(a3)における炭素数2〜20の多価アルコール等も鎖伸長剤として機能する。
【0050】
有機ポリイソシアネート成分(B)としては、一般にポリウレタン樹脂の製造に使用される有機ポリイソシアネートは全て使用でき、例えば芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基及びオキサゾリドン基含有変性物等)が挙げられる。有機ポリイソシアネート成分(B)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のポリイソシアネートも同様)が6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネート及びこれらのイソシアネートの粗製物等が挙げられる。具体例としては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート及びトリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネート(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等)等が挙げられる。
【0053】
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜16の脂環式ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等)等が挙げられる。
【0054】
芳香脂肪族イソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネート(キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等)等が挙げられる。
変性ポリイソシアネートの具体例としては、カルボジイミド変性MDI等が挙げられる。
【0055】
これらの中でプラスチゾルの強度の観点から好ましいのは、芳香族ポリイソシアネートであり、更に好ましいのは、TDI、粗製TDI、MDI、粗製MDI及びこれらのイソシアネートの変性物であり、特に好ましいのは、MDI、粗製MDI並びにこれらの変性物の合計含有量が10重量%以上(特に15〜80重量%)で、TDI、粗製TDI及びこれらの変成物(特にTDI)の含有量が90重量%以下(特に20〜85重量%)のものである。有機ポリイソシアネート成分(B)全体としてのイソシアネート基含有量(NCO%)は25〜45重量%が好ましい。
【0056】
本発明におけるブロック化ウレタンプレポリマー(C)は、一般式(1)で表される活性水素含有化合物(a1)及びブロック化剤(a2)を含有する活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート成分(B)とを反応させて得られ、通常のブロック化ウレタンプレポリマーと同様にして製造することができる。
【0057】
ブロック化剤(a2)は、ウレタンプレポリマー化反応の任意の段階で添加して反応させることができる。即ち、添加の方法には、(1)予め(A)に全量添加する方法、(2)ウレタンプレポリマー生成反応の初期に全量添加する方法、(3)ウレタンプレポリマー反応初期又は反応途中に一部添加し、反応終了時に残部を添加する方法、及び(4)末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造後に全量添加する方法が含まれる。これらの内、反応の再現性の観点から好ましいのは、(4)の方法である。
【0058】
(a2)の添加量は、(1)〜(3)の方法の場合は、プラスチゾルの貯蔵安定性の観点から原料有機ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基の当量数から(a2)以外の活性水素成分(A)の活性水素含有基当量数を差し引いたものとほぼ同じ当量使用するのが好ましく、(4)の方法の場合は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対して貯蔵安定性の観点から好ましくは1〜2当量、更に好ましくは1.05〜1.5当量である。
【0059】
前記(4)の方法における(A)と(a2)以外の(B)との反応で得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの製造に際しては、(a2)以外の(A)の活性水素含有基と(B)のイソシアネート基(NCO基)との反応における当量比(活性水素含有基/NCO基)は、接着性付与用主剤(M)の粘度の観点から好ましくは1/1.3〜1/3、更に好ましくは1/1.5〜1/2.2である。
【0060】
前記(1)〜(4)の方法における反応温度は、副反応抑制の観点から好ましくは20〜120℃、更に好ましくは60〜110℃である。反応時間は副反応抑制の観点から好ましくは3〜10時間、更に好ましくは5〜8時間である。
【0061】
前記反応を促進させるために公知のウレタン化触媒を使用することも可能である。ウレタン触媒としては、金属触媒[錫系(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート及びジブチルチンマレエート等)、鉛系(オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛及びオクテン酸鉛等)、コバルト系(ナフテン酸コバルト等)、ビスマス系{ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート等}及び水銀系(フェニル水銀プロピオン酸塩等)等]、アミン触媒[トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類{1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン}等;ジアルキルアミノアルキルアミン類{ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノオクチルアミン及びジプロピルアミノプロピルアミン等]又は複素環式アミノアルキルアミン類[2−(1−アジリジニル)エチルアミン及び4−(1−ピペリジニル)−2−ヘキシルアミン等]の炭酸塩又は有機酸塩(ギ酸塩等)等;N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン及びジメチルエタノールアミン等]、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0062】
ウレタン化触媒の使用量は、得られるウレタンプレポリマーの重量に基づいて、通常1%以下、好ましくは0.001〜0.1%である。
【0063】
前記方法(4)におけるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量[NCO%(固形分換算重量%)]は、プラスチゾルの密着性の観点から好ましくは1〜20%、更に好ましくは2〜15%である。NCO%は滴定法や赤外線吸収スペクトル法により測定できる。
【0064】
前記方法(4)におけるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのMnは、好ましくは500〜8,000、更に好ましくは700〜5,000である。Mnが500以上であると樹脂が軟らかく耐チッピング性に好ましい影響を与え、8,000以下であるとプラスチルゾルの塗装時の微粒子化(霧化)がより良好となり、塗膜外観(特に平滑性)がより良好となる。
【0065】
本発明の接着性付与剤用の主剤(M)は、その粘度調整を目的として、更に後述の可塑剤を含有することができる。
【0066】
本発明の接着性付与剤を構成する硬化剤(H)としては、公知のもの、例えば特開昭59−78279号公報に記載の窒素含有ポリオール、アミノアルコール、脂肪酸アルカノールアミド、活性アミノ基含有モノ又はポリアミド系化合物及びアミン類等、並びに特開2010−1321号公報に記載の1級アミノ基及び/若しくは2級アミノ基含有モノ又はポリアミド化合物等が使用できる。
【0067】
本発明の接着性付与剤におけるブロック化ウレタンプレポリマー(C)と硬化剤(H)の重量比率は、好ましくは20/80〜95/5、更に好ましくは25/75〜90/10である。
【0068】
本発明のプラスチゾルは、前記接着性付与剤と可塑剤と、アクリル重合体又は塩化ビニル重合体とを含有してなる。
【0069】
可塑剤としては、芳香族カルボン酸エステル[ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジラウリルフタレ−ト、ジステアリルフタレート及びジイソノニルフタレート(DINP)等のフタル酸エステル等]、脂肪族カルボン酸エステル[メチルアセチルリシノレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS)、アジピン酸−プロピレングリコールポリエステル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート等]、リン酸エステル[トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェート等]及びこれら2種以上の混合物が挙げられる。これらの内、(C)との相溶性の観点から好ましいのは芳香族カルボン酸エステル、更に好ましいのはDOP及びDINPである。
【0070】
アクリル重合体としては、プラスチゾルに通常用いられるものを使用することができ、例えば特開2007−39659号公報に記載のものが挙げられる。アクリル重合体の内、耐チッピング性の観点から好ましいものは(メタ)アクリル酸メチルの単独重合体及び(メタ)アクリル酸メチルとそれ以外のモノマーとの共重合体、更に好ましいものは(メタ)アクリル酸メチルの単独重合体及び(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体である。また、アクリル重合体は2種以上を併用することができる。
【0071】
アクリル重合体のMnは特に限定はないが、耐チッピング性の観点から好ましくは10万〜500万、更に好ましくは30万〜300万である。アクリル重合体の形態は、通常微粒子の粉体であり、この微粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.1〜50μm、更に好ましくは0.2〜10μmである。微粒子の体積平均粒径は、例えば、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置を用い動的光散乱法により測定できる。
【0072】
塩化ビニル重合体としては、プラスチゾルに通常用いられるものを使用することができ、例えば塩化ビニル単独重合体及び塩化ビニルモノマーと共重合し得る他のビニルモノマー(例えば酢酸ビニル、無水マレイン酸、マレイン酸エステル及びビニルエーテル等)との共重合体が挙げられる。塩化ビニル重合体の重合度は通常1000〜1700である。塩化ビニル重合体の市販品としては、「カネビニルPSL−10」、「カネビニルPSH−10」及び「カネビニルPCH−12」[以上(株)カネカ製]、「ゼオン121」及び「ゼオン135J」[以上日本ゼオン(株)製]、並びに「デンカビニルPA−100」及び「デンカビニルME−180」[以上電気化学工場(株)製]が挙げられる。これらは2種以上混合して使用することも可能である。
【0073】
本発明のプラスチゾルにおける接着性付与剤、可塑剤、アクリル重合体及び塩化ビニル重合の合計重量に基づく各成分の含有量は、特に制限されないが、処方の一例を示せば下記の通りである。接着性付与剤の含有量は、金属塗装面に対するプラスチゾルの密着性の観点から、好ましくは1〜40重量%、更に好ましくは2〜30重量%である。可塑剤の含有量は、耐チッピング性の観点から、好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは10〜45重量%である。アクリル重合体又は塩化ビニル重合体の含有量は、プラスチゾルの粘度の観点から、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは25〜60重量%である。
【0074】
プラスチゾルには、必要により本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の添加剤(充填剤、発泡剤、着色剤、安定剤及び希釈剤等)を配合することができる。その他の添加剤全体の添加量は、プラスチゾルの全重量に基づいて通常50重量%以下、好ましく1〜40重量%である。
【0075】
充填剤としては、無機充填剤(炭酸カルシウム、タルク、クレー、テイ藻土、けい酸、けい酸塩、カオリン、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルーン、カーボン繊維、金属繊維、セラミックウィスカ及びチタンウィスカ等)及び有機充填剤[セルロース粉、粉末ゴム、有機架橋微粒子(エポキシ及びウレタン等)及び尿素等]が挙げられる。充填剤の使用量は、プラスチゾルの全体量に基づいて、プラスチゾルの粘度の観点から通常5重量%以下、好ましくは0.1〜2重量%である。
【0076】
着色剤としては、無機顔料、有機顔料及び染料が挙げられる。無機顔料としては、白色顔料、コバルト化合物、鉄化合物(酸化鉄及び紺青等)、クロム化合物及び硫化物が挙げられる。有機顔料としては、アゾ顔料及び多環式顔料が挙げられる。染料としては、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、インジゴイド系化合物、硫化系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ピラゾロン系化合物、スチルベン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、キサンテン系化合物、アリザリン系化合物、アクリジン系化合物、キノンイミン系化合物、チアゾール系化合物、メチン系化合物、ニトロ系化合物、ニトロソ系化合物及びアニリン系化合物が挙げられる。着色剤の使用量は、プラスチゾルの全重量に基づいて通常5重量%以下、好ましくは0.1〜2重量%である。
【0077】
安定剤としては、金属石ケン(ステアリル酸カルシウム及びステアリル酸アルミニウム等)、無機酸塩(二塩基性亜リン酸塩及び二塩基硫酸塩等)及び有機金属化合物(ジブチルチンジラウリレート及びジブチルチンマレエート等)等が挙げられる。安定剤の使用量は、プラスチゾルの全重量に基づいて通常10重量%以下、好ましくは、0.2〜5重量%である。
【0078】
本発発明のプラスチゾルを各種金属(特に鋼材)面に塗装して熱処理することにより、塗装外観、耐チッピング性、耐温水性及び金属塗装面に対する密着性のいずれにも優れる硬化物を得ることができる。本発明のプラスチゾルは各種下塗り塗装面に適用できるが、プラスチゾルの密着性の観点から特にカチオン電着塗装面に有利に適用できる。
【0079】
プラスチゾルの塗布量は、耐チッピング性の観点から好ましくは500〜3,000g/m2、塗布膜厚は、耐チッピング性の観点から好ましくは0.5〜3mmである。塗布方法としては、刷毛塗り、ヘラ塗り、ローラーコート及びエアレススプレー塗装等が挙げられ、塗装効率及び高粘度塗料の塗装が可能という観点から好ましいのはエアレススプレー塗装である。また、塗布後熱処理されるが、熱処理温度はプラスチゾルの密着性及び硬化性の観点から好ましくは100〜180℃、更に好ましくは110〜160℃であり、熱処理時間は同様の観点から好ましくは10〜50分、更に好ましくは15〜40分である。
【0080】
本発明のプラスチゾルを鋼板表面の少なくとも一部に塗布して、プラスチゾルを熱処理により硬化させたチッピング防止鋼板は、塗装外観、耐チッピング性、耐温水性及び金属塗装面に対する密着性のいずれにも優れるため、主に自動車のボディ下面、サイドシル及びタイヤハウス等のチッピングが生じやすい部分の鋼板として使用でき、チッピングによる発錆及び腐食を防ぐことが可能である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部を示す。
【0082】
製造例1 [活性水素含有化合物(a1−1)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、無水トリメリット酸192部及びベンジルアルコール108部を仕込み、窒素雰囲気下、0.20MPa、130±10℃で5時間反応させ酸無水物基部分のハーフエステル化を行い、無水トリメリット酸1モルにベンジルアルコール1モルが反応したエステル化物を得た。続いて、アルカリ触媒(N−エチルモルホリン)2.1部及び溶剤としてのTHF269部を仕込み、窒素雰囲気下、EO93部を100±10℃で、圧力が0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、100±10℃で1時間熟成して、80±10℃、10kPaで溶媒を留去することにより、前記エステル化物にEOが付加した活性水素含有化合物(a1−1)を得た。
【0083】
製造例2 [活性水素含有化合物(a1−2)の製造]
ベンジルアルコール108部をベンジルチオール124部に代える以外は製造例1と同様にして活性水素含有化合物(a1−2)を得た。
【0084】
製造例3 [活性水素含有化合物(a1−3)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、トリメリット酸210部、アルカリ触媒(N−エチルモルホリン)2.1部及び溶剤としてのTHFを313部仕込み、窒素雰囲気下、EO149部を100±10℃で、圧力が0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、100±10℃で1時間熟成して、80±10℃、10kPaで溶媒を留去することにより、トリメリット酸のカルボキシル基にEOが付加した活性水素含有化合物(a1−3)を得た。
【0085】
製造例4 [活性水素含有化合物(a1−4)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物(三洋化成工業株式会社製「サンニックスPL−910」;Mn900、水酸基価124.7)900部、無水トリメリット酸384部及びアルカリ触媒(N−エチルモルホリン)2部を仕込み、窒素雰囲気下、0.20MPa、130±10℃で5時間反応させ酸無水物基部分のハーフエステル化を行い、プロピレングリコールのPO/EOブロック付加物1モルに無水トリメリット酸が2モル反応したエステル化合物を得た。続いてEO198部を100±10℃で、圧力が0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、100±10℃で1時間熟成して、前記エステル化合物のカルボキシル基にEOが付加した活性水素含有化合物(a1−4)を得た。
【0086】
製造例5 [活性水素含有化合物(a1−5)の製造]
プロピレングリコールの1,2−PO/EOブロック付加物900部をポリオキシテトラメチレングリコール(三菱化学株式会社製「PTMG1000」;Mn1000、水酸基価112.2)1000部に変更する以外は製造例4と同様にして活性水素含有化合物(a1−5)を得た。
【0087】
製造例6 [活性水素含有化合物(a1−6)の製造]
プロピレングリコールの1,2−PO/EOブロック付加物900部をポリポリオキシプロピレントリオール(三洋化成工業株式会社製「サンニックスGP−1500」;Mn1500、水酸基価112.2)1500部に、無水トリメリット酸の仕込量を576部に、EOの仕込み量を297部に変更する以外は製造例4と同様にして活性水素含有化合物(a1−6)を得た。
【0088】
製造例7 [活性水素含有化合物(a1−7)の製造]
撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、エチレンジアミン60部、無水トリメリット酸384部、アルカリ触媒(N−エチルモルホリン)1.0部及び溶媒としてのTHF219部を仕込み、窒素雰囲気下、80±10℃で2時間反応させ酸無水物基部分のハーフアミド化を行い、エチレンジアミン1モルに無水トリメリット酸が2モル反応したアミド化合物を得た。続いてEO198部を80±10℃で、圧力が0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、80±10℃で1時間熟成し、80±10℃、10kPaで溶媒を留去することにより、前記アミド化合物のカルボキシル基にEOを付加させた活性水素含有化合物(a1−7)を得た。
【0089】
製造例8 [活性水素含有化合物(a1−8)の製造]
トリメリット酸210部をピロメリット酸254部に、EOの仕込量を176部に代える以外は製造例3と同様にしてピロメリット酸のカルボキシル基にEOが付加した化合物(a1−8)を得た。
【0090】
比較製造例1 [比較用の活性水素含有化合物(a1’−1)の製造]
プロピレングリコールの1,2−PO/EOブロック付加物900部をポリオキシプロピレントリオール(三洋化成工業株式会社製「サンニックスGP−3000」;Mn3200、水酸基価52.6)3200部に、無水トリメリット酸384部を無水フタル酸444部に、EOの仕込み量を149部に変更する以外は製造例4と同様にして比較用の活性水素含有化合物(a1’−1)を得た。
【0091】
製造例1〜8及び比較製造例1で得られた活性水素含有化合物の分析結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
<実施例1〜11及び比較例1>
撹拌機及び温度計を備えた反応容器に、表2に示す部数の活性水素成分(A)の内の活性水素含有化合物(a1)、(a3)、有機ポリイソシアネート成分(B)及び可塑剤を仕込み、乾燥窒素雰囲気下、80℃で5時間反応させて、その後、50℃でブロック化剤(a2)を仕込んで、2時間末端ブロック化反応を行い、本発明の主剤(M−1)〜(M−11)及び比較用の主剤(M’−1)を得た。
【0094】
【表2】

【0095】
<実施例12〜22及び比較例2>
実施例1〜11及び比較例1で得られた主剤100部と、硬化剤としてのポリアミド樹脂「ケミオックス KC−547」[三洋化成工業(株)製]13.2部との混合物に対して「ゼオンF−320」[日本ゼオン(株)製、メタクリル酸メチル重合体(Mn300万、体積平均粒径1μmのパウダー)]169部、「白艶華CC−R」[白石工業(株)製、表面処理極微細炭酸カルシウム(体積平均粒径0.08μm)]188部及びDINP189部を添加しディスパーで均一に混練して、本発明のプラスチゾル(P−1)〜(P−11)及び比較用のプラスチゾル(P’−1)を作製し、各プラスゾルについて、以下の評価方法により初期粘度、貯蔵後の粘度、貯蔵安定性、硬化性、密着性、耐温水性、耐チッピング性及び塗膜の強伸度を測定又は評価した結果を表3に示す。
【0096】
[プラスチゾルの性能評価の試験方法]
(1)初期粘度
プラスチゾル作製直後の25℃での粘度をBH型粘度計[東京計器(株)製]を用いて測定する。
(2)貯蔵後の粘度
プラスチゾル作製直後に、内径約4cm、高さ約8cmのガラス製の密栓付き円筒容器にプラスチゾル90g入れて、35℃10日密閉保存後の粘度を前記(1)と同様に測定する。
(3)貯蔵安定性
プラスチゾル作製時の初期粘度に対する貯蔵後の粘度増加率(%)を下記式から算出する。値が小さい程、貯蔵安定性が良好であることを示す。
貯蔵後の粘度増加率(%)=(貯蔵後の粘度−初期粘度)/初期粘度×100
【0097】
(4)硬化性
エポキシ樹脂系カチオン型電着塗料[商品名:コナック/No.3500、日本油脂(株)製]が塗装された塗装鋼板(以下、電着塗装鋼板と略記)の塗装面に、内容績が50×20×1mmとなるように枠を取り付け、その中にプラスチゾルを膜厚が1mmとなるようにヘラ塗りして、130℃×20分熱処理後、指触により塗膜の硬化程度を下記基準で判定した。
◎:タックがなく、硬化性良好
○:ややタックがあるが実用上差し支えない程度の硬化性
△:タックがあり、硬化性不十分
×:全く硬化が認められない
【0098】
(5)密着性
縦100mm×横25mm×厚さ1mmの電着塗装鋼板の塗装面の端部(面積約2×2cm2)にプラスチゾルをヘラ塗りし、圧着後の膜厚が1mmとなるように、もう一枚の電着塗装鋼板の端部を圧着した。その状態で130℃×20分焼き付け熱処理した後、2枚の電着塗装鋼板の端部を引張速度50mm/分で引っ張り、その破壊状態から電着塗装鋼板の塗装面に対する剪断密着性を以下の判定基準に基づいて評価した。
○:凝集破壊
△:凝集破壊と界面剥離が共存
×:界面剥離
(6)耐温水性
前記(5)と同様に試験片を作製し、130℃で20分焼き付け処理後、40℃温水中に3日間浸漬した後の電着塗装鋼板の塗装面に対する剪断密着性を(5)と同様の基準で評価した。
【0099】
(7)耐チッピング性
縦100mm×横100mm×厚さ0.8mmの電着塗装鋼板の塗装面に膜厚が400μmになるようにプラスチゾルを塗布し、130℃×20分焼付け処理した試験片をナット落下装置に取り付け、JIS B 1181に規定する3種−M−4形状の真鍮六角ナットを2mの高さから管径20mmの筒を通してナットの落下方向に対して45°の角度を有する試験片上に落下させ、塗膜のキズが金属面に達するまでナットの落下操作を繰り返し、ナットの重量(単位:kg)に落下回数を乗じた数値を算出して耐チッピング性の尺度とした。この数値が大きい程、耐チッピング性に優れる。
(8)塗膜の強伸度
離型紙に縦100mm×横25mm×厚さ1mmになるようにプラスチゾルを塗布し、130℃で20分焼き付け処理後、離型紙から塗膜を剥がし、塗膜の破断伸び及び破断強度をJIS K 7311に準拠して測定した。
【0100】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の接着性付与剤を用いたプラスチゾルは、貯蔵安定性、硬化性及び金属塗装面に対する密着性が優れているため自動車用外板の製造に特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される活性水素含有化合物(a1)及びブロック化剤(a2)を含有する活性水素成分(A)並びに有機ポリイソシアネート成分(B)を反応させて得られるブロック化ウレタンプレポリマー(C)を含有することを特徴とするプラスチゾルに用いる接着性付与剤用の主剤(M)。
【化1】

[一般式(1)中、X1はm価の活性水素含有化合物からc個の活性水素を除いた残基を表し;cは1≦c≦mを満たす整数を表し;mは1〜20の整数を表し;X2は活性水素含有化合物から1個の活性水素を除いた残基を表し、複数のX2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、X2とX1はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;Yは3価以上の芳香族ポリカルボン酸から全てのカルボキシル基を除いた残基を表し、Yの芳香環は炭素原子から構成され、その炭素原子にはカルボキシル基以外の置換基及び/又はハロゲン原子が結合していてもよいが少なくとも一つの炭素原子は置換基が結合しておらず;aは1以上の整数を表し、bは0以上の整数を表し、かつ、2≦a+b≦d−2を満たし;dは前記芳香族ポリカルボン酸のカルボキシル基を含む全ての置換基を水素原子に置換した場合の芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子の数、即ち芳香環上で置換可能な部位の数を表し;以下の(1)〜(4)の条件の内の少なくとも1つを満たす;(1)X1の価数mとcがm>cを満たす、(2)Yが活性水素を有する置換基で置換されている、(3)X2を構成する活性水素含有化合物が2価以上である、(4)bが1以上である。]
【請求項2】
前記活性水素含有化合物(a1)の水酸基価が、70〜500mgKOH/gである請求項1記載の接着性付与剤用の主剤。
【請求項3】
前記活性水素含有化合物(a1)におけるYの濃度が、1.0〜3.5mmol/gである請求項1又は2記載の接着性付与剤用の主剤。
【請求項4】
前記活性水素含有化合物(a1)のカルボニル基濃度が3.0〜10.0mmol/gである請求項1〜3のいずれか記載の接着性付与剤用の主剤。
【請求項5】
前記3価以上の芳香族ポリカルボン酸が、前記芳香環を構成し置換基が結合していない炭素原子に隣接する2個の炭素原子にカルボキシル基が結合した構造を有する請求項1〜4のいずれか記載の接着性付与剤用の主剤。
【請求項6】
前記カルボキシル基が結合した炭素原子に隣接する炭素原子の少なくとも一方に更にカルボキシル基が結合した構造を有する請求項5記載の接着性付与剤用の主剤。
【請求項7】
前記活性水素含有化合物(a1)の含有量が、前記ブロック化ウレタンプレポリマー(C)の重量を基準として0.01〜60重量%である請求項1〜6のいずれか記載の接着性付与剤用の主剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか記載の主剤及び硬化剤(H)を含有してなるプラスチゾル用接着性付与剤。
【請求項9】
アクリル重合体又は塩化ビニル重合体と、請求項8記載の接着性付与剤と、可塑剤とを含有してなるプラスチゾル。
【請求項10】
請求項9記載のプラスチゾルの硬化物を鋼板表面の少なくとも一部に有するチッピング防止鋼板。

【公開番号】特開2013−82898(P2013−82898A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−205442(P2012−205442)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】