説明

プラスチック眼鏡レンズ

【課題】ネオジム化合物の代わりに有機系色素を用いて、ネオジム化合物含有プラスチック眼鏡レンズとほぼ同等の光透過率のプラスチック眼鏡レンズを提供する。
【解決手段】ウレタン系熱硬化性樹脂、(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂又はポリアミド樹脂から形成したプラスチックレンズウエハーからなるプラスチック眼鏡レンズ、又は、前記プラスチックウェハーとこのプラスチックウェハーの少なくとも片面に形成された一層、又は、複数層の成分層とからなるプラスチック眼鏡レンズであって、前記プラスチック眼鏡レンズが所定の条件を満足する有機系色素を含有し、主吸収ピークが565nm〜605nmの間にある特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収性能を有するネオジム化合物の代わりに有機系色素を用いて、ネオジム化合物含有プラスチック眼鏡レンズと同等の光透過性を得ることのできるプラスチック眼鏡レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズの用途目的のひとつとして、可視光に対する眩しさと関連した不快感やコントラストの不鮮明感、視覚疲労、などを軽減することが挙げられ、その対処法のひとつとして眼鏡レンズにいわゆる防眩性機能を付与する処方が施されている。主たる処方として眩しさを与え易い波長帯をできるだけ選択的に遮光することであり、実際にも585nm付近の可視光を高度に波長選択的に吸収できるネオジム化合物を眼鏡レンズに含有させると効果的な防眩性が得られることから実用化されている。
【0003】
これは眼鏡レンズに適切な遮光性を付与させることに基づくものであり、他方では過度な、あるいは不適切な波長領域での遮光は眼鏡本来の目的である視認性を不必要なまでに低下させてしまうので、できるだけ満足な視認性を維持でき、同時に適切な遮光性を付与することが眼鏡レンズに要求されている。
【0004】
前記の如く防眩性付与やコントラスト増強の目的でレンズ材料に希土類金属化合物、特にネオジム化合物を配合させる方法が多用されているが、特に注目すべき点は、一般に希土類金属化合物の可視光線領域での吸収波長帯における吸光スペクトルのピーク形状が極めてシャープな点、すなわち吸収波長領域が狭くて波長選択的な点であり、例えばネオジム化合物の約585nm付近の吸収ピークも同様にシャープな特徴を有している。
吸収ピークがシャープなこの特性は、視認性に必要な波長帯では大きな透過率を有し、かつ眩しさに悪影響を与える波長帯を選択的に吸収するので、防眩性と視認性を兼備することになり、防眩性眼鏡レンズとしては極めて望ましい特性を有することになる。
【0005】
前記希土類金属化合物配合レンズは、例えば特許文献1に開示の如く主としてガラスレンズに希土類金属酸化物を配合させる方法が行われていたが、レンズ材料のプラスチック化の流れに伴い、プラスチックレンズ材料に特定の有機希土類金属錯体を配合させたレンズが開発されてきている。
しかるに上記プラスチックレンズ材料に特定の有機希土類金属錯体を配合させる方法には各種の不都合な問題をかかえている。第一にはレンズ材料によっては有機希土類金属錯体の有機性部分の選択が大幅に制限されるため高価な化合物に限定されることが多く、また例えばチオウレタンレンズ系では通常の有機希土類金属錯体は樹脂への溶解性や分散性あるいはレンズ樹脂との好ましくない反応性、更には環境下保存安定性などの点で適用し難く、特許文献2に例示の如く特殊な有機希土類金属錯体の事例があるのみで、その場合でも実用的には上記観点から解決を要する難点が多い。
第二には前記する波長域で要求される低光透過度(高光遮光性)を達成させるためには有機希土類金属錯体の配合量が通常5重量%程度も必要であり、高価な有機希土類金属錯体を多量に使用する不都合さだけでなくしばしばレンズの機械的物性の低下とのバランスを余儀なくされ、これらの点でも不満足であるのが現状である。
【0006】
前記背景に鑑み各種着色法を用いて、プラスチックレンズに対して特定波長帯でできるだけ選択的に遮光する機能を付与させる各種試みが開示されており、防眩性付与目的で特許文献3の如く成形後レンズを染料水溶液に浸漬して染色させる方法、あるいは特許文献4、特許文献5、また特許文献6に開示の如くコバルト化合物や特定の有機色素をモノマーに配合して硬化させるなどの方法が提案されている。
【0007】
しかし上記特許文献3〜特許文献5では色素に基づく吸収帯がネオジム化合物の波長帯とは異なる場合があるだけでなく、吸収帯幅が極度に幅広く、有効な防眩性を確保するには他の可視領域の透過度も必要以上に遮光せざるを得ず、視認性が大幅に犠牲となった。
また、特許文献6ではネオジム化合物使用の場合に対する比較例として染色法による染料の導入しで作成した約550〜630nm付近に最低透過率を有するレンズを示し、その際にはネオジム化合物使用に比べ明度が大幅に低下する欠点を指摘している。
【0008】
また、特許文献7は575nm付近に最大吸光係数を有しかつピーク幅が比較的シャープな特定の有機色素からなる防眩性眼鏡レンズを開示しており、吸収波長領域や前記領域幅の点で前記の特許文献3〜特許文献6に比べると大幅に改善されている。
しかるに目標レベルをネオジム化合物に設定した場合には特に吸収帯幅狭さの点で未だ不十分であり、単に明るさを兼備させる点で不足するだけでなく、後述するように、商品として常用されているグレーやブラウンなど各種色調を兼備させるために、通常採用されている手法である他色素を共存させて混色によって目的の色調を達成しようとする際に一定の制約を伴う問題点をかかえている。
【0009】
環境光からの眼の保護や不快感の緩和を目的とするサングラスあるいはカラー眼鏡レンズにおいて通常は、使用環境や使用者の個性に応じてさまざまな色調に設定されたものが使用されており、目的の色調にするには通常は複数の色素を組み合わせる混色の手法が採用されている。本発明の如く特定の可視光波長領域での選択的光吸収特性を保持しながら他色素を混色させて目的の色調にする場合には、必要な選択的光波長域以外の波長域での光吸収要因ができるだけ少ない方が、すなわち前記光吸収ピーク幅がよりシャープな方が、混色の組み合わせ法がよりシンプルとなるだけでなく、目的の色調範囲をより広くとれ、かつよりくすみの少ない色調を得やすいことになる。
【0010】
上記の点を勘案すると、プラスチックレンズをネオジムに代わる有機色素で着色する方法における従来までの不足点あるいは欠点として共通するのは吸収帯が極めて幅広い点である。そのため特に希土類金属に置き換えるに値する防眩性と視認性、更には良好な色調設定性を兼備させるには不十分であった。
【特許文献1】特許第3044017号公報
【特許文献2】国際公開WO96/00247号公報
【特許文献3】特公昭53−39910号公報
【特許文献4】特開平5−5860号公報
【特許文献5】特開平5−45610号公報
【特許文献6】特開平2−254401号公報
【特許文献7】特許第3718185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記背景技術に鑑みなされたものであり、有機希土類金属化合物を配合させたプラスチックレンズは防眩性と視認性のバランスと実用的な色調づけに優れた特性を有するにも拘わらず、配合させる目的のプラスチックレンズ材料の種類によっては樹脂への溶解性に難点があることも多い欠点、レンズ樹脂種によっては光、熱など環境下での安定性への課題、あるいは所望の程度の防眩性を付与させるには通常数%程度の多量の配合量が必要とされる欠点、また結果的には高価となる欠点や、高配合に由来するレンズの機械的物性への悪影響が生じやすいなど多くの問題点を有していた。本発明は前記有機希土類金属化合物が有する優れた防眩性と視認性のバランス、及び実用的な色調づけに優れた特徴を保持しつつ、さらにはより広い種類のプラスチックレンズ材料への適用が可能であり、また必要濃度レベルまでの溶解性が良好であり、更にその際の必要濃度レベルが極めて低く設定でき、結果として配合によるレンズの機械的物性への悪影響も発生しにくく、経済的にも有利である配合種と配合処方に基づいたプラスチック眼鏡レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、以下の手段により達成できる。すなわち、請求項1に記載するように、ウレタン系熱硬化性樹脂、(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂又はポリアミド樹脂から形成したプラスチックレンズウエハーからなるプラスチック眼鏡レンズ又は前記プラスチックウェハーとこのプラスチックウェハーの少なくとも片面に形成された一層又は複数層の成分層とからなるプラスチック眼鏡レンズであって、前記プラスチックウェハー及び前記成分層のうちの少なくとも一つが以下の条件(A)を満足する有機系色素を含有することを特徴とするプラスチック眼鏡レンズ。
条件(A):有機系色素のクロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm〜605nmの間に主吸収ピーク(P)を有し、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光係数が0.5×10(ml/g・cm)以上であり、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が50nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が30nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下の範囲にある。
上記条件(A)の有機系色素は、プラスチックレンズウエハーのみに含有させてもよいし、このプラスチックレンズウエハーの片面又は両面に形成されるハードコート層やプライマー層その他の成分層のみに含有させてもよい。
成分層が複数層ある場合は、このうちの少なくとも一層に有機系色素を含有させてもよい。また、プラスチックレンズウエハーと成分層の両方に有機系色素を含有させてもよい。
この場合、請求項2に記載するように、上記条件(A)の有機系色素は、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)が580nm〜590nmの間であるとよい。また、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が40nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が25nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下であってもよい。
また、請求項3に記載するように、前記レンズの透過率スペクトルにおける透過率極小値の波長位置が585nmを越え600nm以下の範囲であるのが好ましい。
【0013】
請求項4に記載するように、前記有機系色素が以下の式(1)で表されるテトラアザポルフィルン化合物であってもよい。
【化1】

[式(1)中、A〜A8は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。]
この場合、請求項5に記載するように、Mは2価の銅原子であってもよい。
【0014】
さらに、請求項6に記載するように、テトラアザポルフィリン化合物が式(2)で表されるテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・銅錯体であってもよい。
【化2】

[式(2)中、Cuは2価の銅を、t-C4H9はターシャリ−ブチル基を表し、その4個の置換基の置換位置は式(1)におけるそれぞれA1とA2、A3とA4、A5とA6及びA7とA8のいずれかひとつの位置に置換されていている位置異性体構造を表す。]
【0015】
請求項7に記載するように、有機系色素が前記プラスチックレンズウエハーに予め含有されていてもよく、請求項8に記載するように、有機系色素が前記プラスチックレンズウエハー内において実質的に全領域に分布して予め含有されており、前記有機系色素のプラスチックレンズウエハーに対する濃度が0.0002重量%〜0.05重量%の範囲であるようにしてもよい。さらに、請求項9に記載するように、有機系色素が前記レンズウエハー内の少なくとも片面表面から500μm以下の深さの範囲に局在しているものであってもよい。またさらに、請求項10に記載するように、単層又は多層積層で構成される成分層が前記プラスチックレンズウェハーの少なくとも片面に施されているとともに、前記成分層を構成する層のうちの少なくとも一層が前記有機系色素を含有しており、かつ、前記成分層が前記有機系色素の前記成分層に対する濃度が0.02重量%〜5重量%の範囲であるようにしてもよい。
前記ウレタン系熱硬化性樹脂は、請求項11に記載するように、ポリチオールをモノマー成分とするチオウレタン系熱硬化性樹脂やポリオールをモノマー成分とするウレタン系熱硬化性樹脂としてよい。
請求項12に記載するように、ポリカーボネート樹脂100重量部とポリアミド樹脂30〜0.5重量部とからなる熱可塑性樹脂を用いてもよい。
請求項1に記載した前記成分層は、請求項13に記載するように、少なくとも一層が有機樹脂コート剤から形成されていてもよい。この場合、請求項14に記載するように、前記有機樹脂コート剤が熱可塑性有機樹脂コート剤から形成されていてもよいし、前記有機樹脂コート剤が硬化性有機樹脂コート剤から形成されていてもよい。また、請求項15に記載するように、前記成分層を構成する層のうちの少なくとも一層がハードコート層であってもよく、請求項16に記載するように、前記成分層を構成する層のうちの少なくとも一層がハードコート層に接するプライマー層であってもよい。
【0016】
請求項17に記載の発明は、前記条件(A)の有機系色素以外の他の1種以上の有機系色素を用いて着色したものとしてある。着色の具体例としては、例えばブラウンやグレーを挙げることができる。
請求項18に記載の発明は、請求項11に記載の発明において、前記チオウレタン系熱硬化性樹脂が、ポリイソシアネート化合物、イソチオシアネート基を有するイソシアネート化合物、ポリイソチオシアネート化合物から選ばれる1種または2種以上のイソ(チオ)シアネート系化合物(B)と、活性水素化合物(C)を重合反応させて得られるチオウレタン系樹脂であり、前記活性水素化合物(C)が、ヒドロキシ基を有するチオール化合物、ポリチオール化合物から選ばれる1種または2種以上のチオール系活性水素化合物(C1)又はヒドロキシ基を有する水酸基系活性水素化合物(C2)のいずれかであるプラスチック眼鏡レンズである。
【0017】
この場合、請求項19に記載するように、イソ(チオ)シアネート系化合物(B)がジイソシアネート化合物であり活性水素化合物(C)がポリチオール化合物であってもよいし、請求項20に記載するように、イソ(チオ)シアネート系化合物(B)が2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、m−キシリレンジイソシアネートから選ばれる1種または2種以上のジイソシアネートであり、活性水素化合物(C)がペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタンから選ばれる1種または2種以上のポリチオール化合物であってもよい。
【0018】
請求項21に記載の発明は、(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂が、多官能性(メタ)アクリル酸エステル類(D)から選ばれる1種又は2種以上のモノマーが70〜100重量%、及び芳香族基と共役する単官能性又は多官能性ビニル化合物類(E−1)及び/又はカルボニル基と共役する単官能性ビニル化合物類(E−2)から選ばれる1種又は2種以上のモノマーが0〜30重量%からなる混合物を主成分とする(メタ)アクリル系モノマー組成物を重合反応させて得られる(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂であるものとしてある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウレタン系熱硬化性樹脂、(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂、
ポリカーボネート樹脂又はポリアミド樹脂からなるプラスチック眼鏡レンズにおいて、585nm付近に波長選択的にシャープな光吸収ピークを有する特定の有機系色素が前記眼鏡レンズに含有されており、同種のシャープな吸収ピークを有するネオジム化合物が有する優れた防眩性能とコントラスト増強効果を付与することができ、特定吸収ピークのシャープさに由来して585nm付近以外での光透過性が良好で明視野が確保できるため、防眩性と視認性のバランスが極めて良好であり、かつグレーやブラウンなどの各種の色調化が実現しやすく、更にはより広い種類のプラスチックレンズ材料への適用が可能であり、また使用濃度が極めて低く設定でき、結果として配合によるレンズの機械的物性への悪影響が発生しにくく、ネオジム代替として経済的にも有利な配合処方が可能であるプラスチック眼鏡レンズを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[熱硬化性樹脂]
本発明の実施に当たっては、目的のプラスチック眼鏡レンズを構成する熱硬化性プラスチックレンズウエハー材料部の重合成型を行う工程が含まれる。プラスチックレンズウエハー材料が熱硬化性樹脂である場合、通常は目的の重合体を形成させるモノマーを重合硬化させる方法が採用される。その重合方法は特に限定されるものではないが、通常、注型重合が採用される。
その際、熱硬化性樹脂配合物には、特定の有機系色素が配合されており、前記樹脂配合物をレンズ注型用鋳型に供給して重合反応を行い眼鏡レンズに成型する。上記レンズ注型用鋳型に供給する方法は特に限定されるものではないが、例えば前記樹脂配合物を細管を通すなどによって注入する方法が使用される。前記樹脂配合物は予め減圧等の方法で脱泡処理が施されてもよく、また空気環境因子が実質的に排除された状態で注型重合が行われてもよい。
【0021】
本発明におけるレンズ注型用鋳型は、ガスケットで保持された2個のモールドから構成されるものが一般的である。ガスケットの材質としては、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー、ポリウレタンエラストマー、フッ素ゴム、あるいはそれらにポリプロピレンをブレンドした軟質弾性樹脂類が用いられる。本発明において使用される有機色素が配合されている前記樹脂配合物に対して膨潤も溶出もしない材料が好ましい。モールドの材質としては、ガラス、金属などが挙げられ、通常はガラスが用いられる。モールドには、得られたレンズの離型性を向上するために離型剤を塗付してもよい。また、レンズ材料にハードコート性能を付与するためのコート液をモールドに塗付してもよい。
【0022】
以下にレンズ部材であるプラスチックレンズウエハーを形成する熱硬化性プラスチック種に応じて具体的に説明する。
本発明におけるプラスチックレンズウエハーを形成する熱硬化性プラスチック種が、ウレタン系熱硬化性樹脂のうち、ポリチオールをモノマー成分とする(Ia)チオウレタン系熱硬化性樹脂である場合には、イソ(チオ)シアネート系化合物(B)とチオール系活性水素化合物(C1)を重合反応させて得られるチオウレタン系樹脂に有機系色素が配合され、有機系色素を含有のチオウレタン系熱硬化性樹脂配合物が形成される。
【0023】
本発明において使用されるイソ(チオ)シアネート系化合物(B)とは、ポリイソシアネート化合物、イソチオシアネート基を有するイソシアネート化合物、ポリイソチオシアネート化合物から選ばれる1種または2種以上のイソ(チオ)シアネート系化合物(B)である。
【0024】
[ポリイソシアネート化合物]
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、リジントリイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)ナフタリン、メシチリレントリイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)スルフィド、ビス(イソシアネートエチル)スルフィド、ビス(イソシアネートメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアネートエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアネートメチルチオ)メタン、ビス(イソシアネートエチルチオ)メタン、ビス(イソシアネートエチルチオ)エタン、ビス(イソシアネートメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物及び、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、3,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアネートメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物及び、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物及び、2,5−ジイソシアネートチオフェン、2,5−ビス(イソシアネートメチル)チオフェン、2,5−ジイソシアネートテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアネート1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアネートメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアネート1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアネートメチル)−1,3−ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0025】
[イソチオシアネート基を有するイソシアネート化合物]
イソチオシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、例えば、上記に例示したポリイソシアネート化合物のイソシアナート基の一部をイソチオシアナート基に変えたものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
[ポリイソチオシアネート化合物]
ポリイソチオシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、リジンジイソチオシアネートメチルエステル、リジントリイソチオシアネート、m−キシリレンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアネートメチル)スルフィド、ビス(イソチオシアネートエチル)スルフィド、ビス(イソチオシアネートエチル)ジスルフィド等の脂肪族ポリイソチオシアネート化合物及び、イソホロンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソチオシアネート、シクロヘキサンジイソチオシアネート、メチルシクロヘキサンジイソチオシアネート、2,5−ビス(イソチオシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソチオシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、3,8−ビス(イソチオシアネートメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソチオシアネートメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソチオシアネートメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソチオシアネートメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソチオシアネート化合物及び、トリレンジイソチオシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソチオシアネート、ジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソチオシアネート等の芳香族ポリイソチオシアネート化合物及び、2,5−ジイソチオシアネートチオフェン、2,5−ビス(イソチオシアネートメチル)チオフェン、2,5−ジイソチオシアネートテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソチオシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソチオシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソチオシアネート1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソチオシアネートメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソチオシアネート1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソチオシアネートメチル)−1,3−ジチオラン等の含硫複素環ポリイソチオシアネート化合物を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0027】
さらに、これらイソ(チオ)シアネート系化合物(B)の塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用することができる。これらエステル化合物は単独でも、2種類以上を混合しても使用することができる。
【0028】
これらイソ(チオ)シアネート系化合物(B)のうち、入手の容易さ、価格、得られる樹脂の性能等から、ジイソシアネート化合物が好ましく使用される。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、m−キシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)−1,4−ジチアンが好ましく使用され、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、m−キシリレンジイソシアネートが特に好ましく使用される。
【0029】
本発明において使用される活性水素化合物(C)とは、ヒドロキシ基を有するチオール化合物、ポリチオール化合物から選ばれる1種または2種以上のチオール系活性水素化合物(C1)又はヒドロキシ基を有する水酸基系活性水素化合物(C2)である。
【0030】
チオール系活性水素化合物(C1)のうち、ヒドロキシ基を有するチオール化合物としては例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルセリンジ(メルカプトアセテート)、4−メルカプトフェノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0031】
チオール系活性水素化合物(C1)のうち、ポリチオール化合物としては、例えば、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2、5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2―メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3―メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアシクロヘキサン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物及び、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物及び、2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等の複素環チオール化合物を挙げることができるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0032】
さらにこれらチオール系活性水素化合物(C1)のオリゴマ−や塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体を使用しても良い。これら活性水素化合物は単独でも、2種類以上を混合しても使用することができる。
【0033】
これらチオール系活性水素化合物(C1)のうち、入手の容易さ、価格、得られる樹脂の性能等から、ポリチオール化合物が好ましく使用される。
例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタンが好ましく使用され、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタンが特に好ましく使用される。
【0034】
本発明におけるプラスチックレンズウエハーを形成する熱硬化性プラスチック種が、ウレタン系熱硬化性樹脂のうち、ポリオールをモノマー成分とする(Ib)ウレタン系熱硬化性樹脂である場合には、イソ(チオ)シアネート系化合物(B)と水酸基系活性水素化合物(C2)を重合反応させて得られるウレタン系樹脂に有機系色素が配合され、有機系色素を含有のウレタン系熱硬化性樹脂配合物が形成される。
【0035】
上記の水酸基系活性水素化合物(C2)は、ヒドロキシ基を有する化合物から選ばれる1種または2種以上の活性水素化合物である。
ヒドロキシ基を有する化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2−メチルグリコシッド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、ヘキサントリオール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌレート、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、ノルボルナンジオール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロ(5、2、1、02,6)ジオール、トリシクロ(5、2、1、02,6)ジメタノール、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、全水素化ビスフェノールA、全水素化ビスフェノールF、ビスフェノールAのプロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールエーテル、プロレングリコールエーテル、ジプロレングリコールエーテル、ポリプロレングリコールエーテル、ビスフェノールFのプロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールエーテル、プロレングリコールエーテル、ジプロレングリコールエーテル、ポリプロレングリコールエーテル、トリメチロールプロパンのグリコール酸エステル、2−ヒドロキシプロピオン酸エステル等2個以上の水酸基を有する化合物が挙げられる。
【0036】
また、本発明において使用されるイソ(チオ)シアネート系化合物(B)は、予め活性水素化合物(C)の一部を予備的に反応させたものでもよい。また、本発明において使用される活性水素化合物(C)は、予めイソ(チオ)シアネート系化合物(B)の一部を予備的に反応させたものでもよい。
【0037】
更にイソ(チオ)シアネート系化合物(B)及び活性水素化合物(C)に加えて、本発明の範囲を損なわない範囲で、屈折率、アッベ数、耐熱性、比重等の物性や耐衝撃性等の機械強度等を調整あるいは向上のために公知の樹脂改質剤、例えばヒドロキシ化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、有機酸及びその無水物、(メタ)アクリレート化合物等を含むオレフィン化合物等を併用してもよい。
また、チオウレタン系熱硬化性樹脂(Ia)を形成するイソ(チオ)シアネート系化合物(B)及びチオール系活性水素化合物(C1)に加えて、又は(Ib)ウレタン系熱硬化性樹脂を形成するイソ(チオ)シアネート系化合物(B)及び水酸基系活性水素化合物(C2)に加えて、本発明の範囲を損なわない範囲で、屈折率、アッベ数、耐熱性、比重等の物性や耐衝撃性等の機械強度等を調整あるいは向上のために公知の樹脂改質剤等を併用してもよい。この様な樹脂改質剤等の例としては、例えばヒドロキシ化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、有機酸及びその無水物、(メタ)アクリレート化合物等を含むオレフィン化合物等が挙げられる。
【0038】
本発明において使用されるイソ(チオ)シアネート系化合物(B)とチオール系活性水素化合物(C1)(改質剤であるヒドロキシ化合物も含む)、又はイソ(チオ)シアネート系化合物(B)と水酸基系活性水素化合物(C2)(改質剤であるチオール化合物も含む)の使用割合は、通常(NCO+NCS)/(SH+OH)の官能基モル比が、通常、0.8〜1.5の範囲、好ましくは、0.9〜1.2の範囲、さらに好ましくは1.0(当量)である。
【0039】
上記(B)イソ(チオ)シアネート系化合物と(C)チオール系活性水素化合物(C1)の混合物、又はイソ(チオ)シアネート系化合物(B)と水酸基系活性水素化合物(C2)の混合物は、本発明の有機系色素を後に示す方法にて含有させて使用されるが、重合に供するにあたってはその他に必要に応じ、公知の成形法における手法と同様に、ジブチル錫ジクロライドなどの触媒、紫外線吸収剤、酸性リン酸エステルなどの内部離型剤、光安定剤、酸化防止剤、ラジカル反応開始剤などの反応開始剤、鎖延長剤、架橋剤、充填剤などの物質を添加してもよい。
【0040】
上記重合に供するウレタン系熱硬化性樹脂配合物は例えばレンズ注型用鋳型に注入、内蔵させ、次いで前記レンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて数時間から数十時間かけて加熱して重合硬化反応を行い眼鏡レンズに成型する。
重合硬化の温度は、混合物の組成、触媒の種類、モールドの形状等によって条件が異なるため限定できないが、およそ、−50〜200℃の温度で1〜100時間かけて行われる。
通常、5℃から40℃の範囲の温度で開始し、その後徐々に80℃から130℃の範囲にまで昇温させ、その温度で1時間から4時間加熱するのが一般的である。硬化成形終了後、レンズ注型用鋳型から取り出すことで、本発明のウレタン系熱硬化性樹脂(Ia)又は(Ib)からなるプラスチック眼鏡レンズを得ることができる。
【0041】
本発明のプラスチックレンズは、重合による歪みを緩和することを目的として、離型したレンズを加熱してアニール処理を施すことが望ましい。アニール温度は通常80〜150℃の範囲、好ましくは100〜130℃の範囲、更に好ましくは110〜125℃の範囲である。アニール時間は、通常0.5〜5時間の範囲、好ましくは1〜3時間の範囲である。
【0042】
本発明におけるプラスチックレンズウエハーを形成する熱硬化性プラスチック種が、(II)(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂である場合には、多官能性(メタ)アクリル酸エステル類(D)モノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーが70〜100重量%、及び芳香族基と共役する単官能性又は多官能性ビニル化合物類(E−1)及び/又はカルボニル基と共役する単官能性ビニル化合物類(E−2)から選ばれる1種又は2種以上のモノマーが0〜30重量%からなる混合物を主成分とする(メタ)アクリル系モノマー組成物を重合反応させて得られる(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂に有機系色素が配合され、有機系色素を含有の(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂配合物が形成される。上記(E−1)及び(E−2)成分は必要に応じて含有される。
なお、本発明のおける「(メタ)アクリル酸」は「メタクリル酸又はアクリル酸」を、「(メタ)アクリレート」は「メタアクリレート又はアクリレート」を略記して示すものである。
【0043】
本発明において使用される多官能性(メタ)アクリル酸エステル類(D)はポリオール(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類などが含まれ、本発明のプラスチックレンズウエハーを形成する(メタ)アクリル系樹脂はポリオール(メタ)アクリレート類を主成分として、必要に応じてウレタン(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類なども配合されて使用できる。
【0044】
本発明における多官能性(メタ)アクリル酸エステル類(D)であるポリオール(メタ)アクリレート類としては例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ジプロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリプロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ポリプロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の脂肪族型ジ(メタ)アクリレート、あるいは2、2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル] プロパン、2、2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル] プロパン、2、2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル] プロパン、2、2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシプロピルオキシフェニル] プロパン、2、2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジプロピルオキシフェニル] プロパン、2、2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル] プロパン、2、2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピルオキシフェニル] プロパン、2、2−ビス[4 −(メタ)アクリロイルオキシ(2’−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]プロパン、等の芳香族含有型ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)クリレート、等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート誘導体やジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基が4個以上置換された多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート類はポリイソシアネート類と水酸基を有するン(メタ)アクリル酸エステル類の付加反応物であり、ポリイソシアネート類としては例えば、トリレン−2、4−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネー、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類としては例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フエノキシプロピル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、市販品としては「NKオリゴU系品」(新中村化学工業株式会社製)あるいは「アロニックスM系品」(東亞合成株式会社製)などを例示できる。
【0046】
本発明におけるエポキシ(メタ)アクリレート類は、ポリエポキシ系化合物類に(メタ)アクリル酸を付加させた構造のもので、ポリエポキシ系化合物類としては例えば、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン反応物型、フェノールノボラック−エピクロルヒドリン反応物型、などが挙げられ、市販品としては「NKオリゴEMA系品、あるいはEA系品」(新中村化学工業株式会社製)などを例示できる。
【0047】
本発明において使用される芳香族基と共役する単官能性又は多官能性ビニル化合物類(E−1)モノマーとしては例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、p−クロルメチルスチレン等の核置換スチレンやα−メチルスチレン等の単官能性ビニル化合物類、あるいはジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等の多官能性ビニル化合物類等が挙げられる。
【0048】
本発明において使用されるカルボニル基と共役する単官能性ビニル化合物類(E−2)モノマーとしては例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンシル等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フエノキシプロピル、3 −アクリロイルオキシグリセリンモノメタクリレ−ト、(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリル酸アミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリル酸アミド、N−イソプロピル(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0049】
また、前記例示の多官能性(メタ)アクリル酸エステル類(D)、芳香族基と共役する単官能性又は多官能性ビニル化合物類(E−1)、カルボニル基と共役する単官能性ビニル化合物類(E−2)のラジカル重合性モノマーが部分的に重合したオリゴマーも重合性成分として例示することができる。
【0050】
本発明における(メタ)アクリル系樹脂組成物を重合反応させる際に用いられる重合開始剤としてはアゾ系重合開始剤または有機過酸化物を使用することができ、それらは単独若しくは混合物として使用することができる。
アゾ系重合開始剤としては例えば、2、2′−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2′−アゾビスイソブチロニトリル、2、2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1、1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル(2、2′−アゾビスイソブチレ−ト)等が挙げられる。
有機過酸化物としては例えば、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパ−オキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパ−オキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1、1−ビス(t−ブチルパ−オキシ)−3、3、5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
本発明においては、有機系色素を含有するモノマー混合物を重合させるので、重合開始剤に由来する有機系色素の劣化などをできるだけ抑制するために、重合開始剤としては有機過酸化物よりは、アゾ系重合開始剤を好ましく使用する場合もある。重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系モノマー組成物に対して、0.001〜5重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜4重量%の範囲である。
【0051】
上記重合開始剤を含む(メタ)アクリル系モノマー混合物は、本発明の有機系色素を後に示す方法にて含有させて使用されるが、重合に供するにあたってはその他に必要に応じ、公知の成形法における手法と同様に、熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、離型剤、帯電防止剤、充填剤等を添加することもできる。
【0052】
上記重合に供する(メタ)アクリル系樹脂配合物は例えばレンズ注型用鋳型に注入、内蔵させ、次いで前記レンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて加熱して重合硬化される。加熱温度と時間は用いる開始剤により大きく異なるが、通常は20〜130℃の温度範囲で、5〜48時間をかけて重合反応が行われる。
前記加熱硬化後離型された成型物には内部歪みが存在するので、アニ−リング処理を行なうのが望ましい。その際の処理温度は、好ましくは100〜140℃、さらに好ましくは110〜130℃であり、処理時間は、好ましくは30分以上6時間未満、さらに好ましくは1時間以上4時間以下である。
【0053】
[熱可塑性樹脂]
プラスチックレンズウエハー材料として熱可塑性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアミド樹脂を用いることができる。これらは単体で用いてもよいし、混合したものを用いてもよい。例えば、ポリカーボネート樹脂100重量部にポリアミド樹脂を30〜0.5重量部、好ましくは20〜1重量部、更に好ましくは15〜2重量部混合した熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0054】
[ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂(III)は、主たる方法としてジヒドロキシジアリール化合物類とホスゲンを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物類とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステル類とを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり代表的なものとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0055】
上記ジヒドロキシジアリール化合物類としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジクロロフェニル)プロパンの如き(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの如き(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3、3’−ジメチルジフェニルエーテルの如きジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルフィドの如きジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4‘−ジヒドロキシ−3,3‘−ジメチルジフェニルスルホキシドの如きジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4‘−ジヒドロキシ−3,3‘−ジメチルジフェニルスルホンの如きジヒドロキシジアリールスルホン類などが挙げられる。
【0056】
これらは単独又は2種類以上から選択されて使用される。これらの他にピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4‘−ジヒドロキシジフェニル等と併用して使用してもよい。
【0057】
更に上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を併用してもよい。3価以上のフェノールとしては、フロログルシン、1、3、5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1、1、1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は通常10000〜100000、好ましくは10000〜400000である。
【0058】
[ポリアミド樹脂]
ポリアミド樹脂(IV)は、芳香族又は脂肪族基を含むジアミン化合物類と、芳香族又は脂肪族基を含むジカルボン酸化合物類との脱水重縮合物の構造を有する樹脂である。ここで脂肪族基は脂環式脂肪族基も含まれる。上記ジアミン化合物類とジカルボン酸化合物類との脱水重縮合物の構造を有する樹脂は必ずしも脱水重縮合反応から得られるものに限定はされず、例えば1種又は2種以上のラクタム化合物類の開環重合などからも得られることができる。
【0059】
上記ジアミン化合物類としては、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(アミノメチル)テトラヒドロジシクロペンタジエンなどが挙げられ、これらのジアミン化合物類から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0060】
上記ジカルボン酸化合物類としては、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビス(ヒドロキシカルボニルメチル)ノルボルナン、ビス(ヒドロキシカルボニルメチル)テトラヒドロジシクロペンタジエンなどが挙げられ、これらのジカルボン酸化合物類から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0061】
特に透明性の観点から非結晶性のポリアミド樹脂が好ましく、一般的には透明ナイロンと称され、例えばエムス社のグリルアミドTR−55、グリルアミドTR−90、グリルアミドTR−XE3805、あるいはヒュルス社のトロガミドCX−7323などを例示することができる。
【0062】
プラスチックレンズウエハー材料が熱可塑性樹脂である場合通常、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、圧縮射出成形法などの公知の方法が採用される。すなわち供給される該熱可塑性樹脂を溶融温度以上に加熱させ、これを目的のプラスチックレンズウエハーの形状を有する金型内に導入後、冷却固化させてプラスチックレンズウエハーを得る方法である。その際、偏光フィルムなど目的の機能を有するプラスチックフィルムを予め金型内に設置しておき、上記方法で成形されたプラスチックレンズウエハー内に該機能性のプラスチックフィルムを一体化させるいわゆるインサート法も本発明の範囲を超えるものではない。
【0063】
その際前記供給される熱可塑性樹脂には、予め1種又は2種以上の特定の有機系色素を配合させておく。該配合の方法としては特に制限はないが、例えば前記特定の有機系色素粉末と熱可塑性樹脂ペレットを、ペレットの溶融温度以下で機械的に混合させて前記特定の有機系色素粉末を該ペレット表面に保持させる方法、又別の方法としては、適切な混練機を用いて、前記特定の有機系色素粉末と熱可塑性樹脂ペレットを、ペレットの溶融温度以上で混練して該特定の有機系色素粉末を該熱可塑性樹脂ペレットに含有させることができる。
前記成形機への熱可塑性樹脂の供給にあたっては、該熱可塑性樹脂中に含有されている水分量を低減させるため必要に応じて予め公知の条件で乾燥処理を施してもよい。
【0064】
[有機系色素]
本発明の有機系色素は、油溶性の性質を有し、クロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm〜605nmの間に主吸収ピーク(P)を有し、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光係数が0.5×10(ml/g・cm)以上であり、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が50nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が30nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下の範囲にあることを要件とする。有機系色素は、熱硬化性又は熱可塑性プラスチックレンズウエハー内の少なくとも片面表面から500μm以下の深さの範囲に局在させるとよい。
【0065】
前記可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm〜605nmの間に存在する吸収ピーク(P)が実質的に副ピークを含まない単一ピークからなるスペクトルの場合には特に説明を加える必要はないが、前記スペクトルにおいてはしばしば副ピークが重なって観測される場合がある。その際には最初に前記565nm〜605nmの範囲に存在する主吸収ピーク(P)を特定し、主ピーク(P)に重なった副ピークに関する扱いとしては、ピーク分離解析等の処理は施さずに、副ピークを含む測定されたスペクトルそのものの主ピーク(P)について作図的にピーク幅を認定すればよい。
【0066】
この様な有機系色素としては例えば(1)の一般式で表されるテトラアザポルフィリン化合物があり、(1)式中、Mは2価の銅であることがより好ましい。具体例としては(2)式で表されるテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・銅錯体が挙げられ、PD−311S[三井化学(株)製]の品番名に相当する。
【化1】

[式(1)中、A〜A8は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。]
【0067】
【化2】


[式(2)中、Cuは2価の銅を、t-C4H9はターシャリーブチル基を表し、その4個の置換基の置換位置は式(1)におけるそれぞれA1とA2、A3とA4、A5とA6及びA7とA8のいずれかひとつの位置に置換されていている位置異性体構造を表す。]
【0068】
防眩性能、あるいは各種色調への混色への対応などの観点から、本発明の有機系色素が含有された眼鏡レンズの透過スペクトルにおいて、透過率極小値の波長位置は586nm〜600nmの間であることがより好ましい。
【0069】
[熱硬化性樹脂に対する有機系色素の混合]
本発明の熱硬化性プラスチック眼鏡レンズにおけるプラスチックレンズウエハーに対する前記有機系色素の濃度は0.0002重量%〜0.05重量%、好ましくは0.0002重量%〜0.01重量%、更に好ましくは0.0004重量%〜0.01重量%の範囲であり、この濃度を設定するための前記熱硬化性樹脂組成物に対する前記有機系色素の配合量の設定は、前記プラスチックレンズウエハーに対する目的濃度と通常近似的同一であることを目安に実験的に容易に決定することができる。
また、前記熱硬化性樹脂組成物に前記有機系色素を配合させる方法について以下に具体的に説明する。重合硬化に供する前記熱硬化性樹脂組成物は大別すると、モノマー混合物、有機系色素、触媒、及びその他の添加剤(F)から構成される。
【0070】
本発明における有機系色素を混合するに当たっての混合対象成分が0℃以上で液状であればその選択には特に限定はなく、操作性、安全性、便宜性等を踏まえ、適宜選択される。例えばモノマー混合物を構成するモノマー群のいずれかに混合させた後にモノマー混合物とする方法、モノマー混合物及びその他の添加剤(F)からなる混合物に混合させた後触媒を加える方法、あるいはモノマー混合物、触媒、及びその他の添加剤(F)からなる混合物に混合させる方法などが挙げられる。
また有機系色素を混合するにあたっては、有機系色素を直接混合させる方法、あるいは予め有機系色素を低沸点の有機溶媒に溶解させ、前記有機溶媒溶液を上記混合対象成分に混合後、加熱及び/又は減圧等の条件下で前記有機溶媒を蒸発除去してもよい。その際使用される有機溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられるが、上記樹脂液に対して化学反応的に不活性で、かつ適度に低沸点のものであれば特に限定されるものではない。
【0071】
また、プラスチックレンズウエハーに必要とされる有機系色素の濃度に相当する量が樹脂組成物(熱硬化性樹脂組成物及び後述の熱可塑性樹脂組成物を含む)に含有されるように前記の方法で混合させてもよく、またモノマー混合物や前記樹脂組成物などいずれかの成分に目的濃度より高濃度で有機系色素を含有させたマスターバッチを調製しておき、必要に応じて配合すべき他成分を加えて希釈させて目的の濃度の有機系色素を含有させる方法等も挙げることができる。
また有機系色素の溶解にあたって、樹脂の劣化や可使時間などの点で実施上支障がない範囲で加温することもできる。有機系色素を混合させるにあたっては、例えば通常行われる攪拌、振とう、バブリングなどの方法が挙げられる。更に必要に応じて有機系色素の溶解後、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等での濾過処理等を行うことが好ましい場合が多い。
【0072】
[熱可塑性樹脂に対する有機系色素の混合]
本発明の熱可塑性プラスチック眼鏡レンズにおけるプラスチックレンズウエハーに対する前記有機系色素の濃度は0.0002重量%〜0.05重量%、好ましくは0.0002重量%〜0.01重量%、更に好ましくは0.0004重量%〜0.01重量%の範囲であり、この濃度にするための前記熱可塑性樹脂組成物に対する前記有機系色素の配合量の設定は、前記プラスチックレンズウエハーに対する目的濃度と通常近似的同一であることを目安にして容易に決定することができる。
【0073】
また、前記熱可塑性樹脂からなるプラスチックレンズウエハーに必要とされる有機系色素の濃度に相当する量を、前記の方法で供給される該熱可塑性樹脂中に配合させてもよく、また必要とされる有機系色素の1種又は2種以上を該熱可塑性樹脂中に目的量を超えて配合させた異種の配合熱可塑性樹脂を所定量混合させて供給し、最終的にプラスチックレンズウエハー中に目的濃度の有機系色素が含有される様に設定するいわゆるマスターバッチ法も採用できる。その際、希釈の目的で有機系色素非含有の熱可塑性樹脂を併用して供給してもよい。また、上記所定量混合させた該熱可塑性樹脂を予め溶融混練などの方法で混合し、必要に応じてペレット化などの処方を施した後、成形機に供給してもよい。
【0074】
本発明の熱硬化性又は熱可塑性のプラスチック眼鏡レンズにおいては、必要に応じてプラスチックレンズウェハーの少なくとも片面にレンズ部材として施された単層又は多層積層を構成する成分層の少なくとも1層に本発明の有機系色素を含有させて、目的の波長選択的光吸収性を有するプラスチックレンズとすることができる。
本発明の有機系色素の585nm付近(概ね585±2nm付近)での吸光係数はネオジム化合物に比べて大幅に大きく、薄いコート層に含有させても充分な程度の遮光効果が得られるからである。
【0075】
前記熱硬化性又は熱可塑性のプラスチックレンズウェハーの少なくとも片面に単層又は多層積層を形成させるにあたっては、シート層を貼り付けて形成させることもできるが通常は本発明の有機系色素を含有させた有機樹脂コート剤を塗布することで形成される。
有機樹脂コート剤としては(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、メラミン樹脂系などを例示することができ、あるいはそれら樹脂成分が混成されてブレンド又は共重合された樹脂なども挙げられる。樹脂は目的に応じて熱可塑タイプあるいは熱硬化性タイプのいずれかが採用される。
【0076】
前記プラスチックレンズウエハーへの塗布にあたっては前記有機樹脂を無溶剤下又は通常は溶剤に溶解して塗布液とする。溶剤としては、水、あるいはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、イソホロンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミルなどのエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール/エステル類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アミルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールなどのアルコール類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族類、シクロヘキサンなどの脂環族類などが例示でき、それらから選択された2種以上の溶剤を混合させた溶剤も使用することができる。これら溶剤の選択は、樹脂成分の溶解性、樹脂成分との反応性の程度、沸点、環境調和性、価格、など目的に応じた観点から決定される。
【0077】
前記塗布液の前記プラスチックレンズウエハーへの塗布にあたってはデイッピング法、スプレー法、スピンコート法、デイップスピンコート法、ロールコート法など一般に実施されている方法で行うことができる。必要に応じてレンズウエハーの塗布対象表面に予めプラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、シランカップリング剤や水酸化ナトリウムなどによる化学的処理などを施すこともできる。
また前記塗布液中にはシリコーン系あるいはフッ素系などのレベリング剤などを必要に応じて併用することができる。
【0078】
前記有機樹脂コート剤が熱可塑性樹脂系の場合は塗布後、溶剤を蒸発乾燥させることで本発明の有機系色素を含有させた熱可塑性樹脂系成分層を得ることができる。
【0079】
前記有機樹脂コート剤が熱硬化性樹脂系の場合は塗布後、溶剤を蒸発乾燥させた後、熱、紫外線、エレクトロンビームなどの手段を用いて硬化反応させることで本発明の有機系色素を含有させた熱硬化性樹脂系成分層を得ることができる。溶媒乾燥条件と硬化反応条件は同時に適用することもできる。
【0080】
前記形成された成分層の厚さは、0.05μm〜100μm、好ましくは0.1μm〜50μm、より好ましくは0.5μm〜30μm、特に好ましくは0.5μm〜10μmの範囲が適当である。前記成分層中に含有される本発明の有機系色素の濃度は0.02重量%〜5重量%、好ましくは0.05重量%〜3重量%、の範囲が適当である。
【0081】
本発明の有機系色素は、プラスチックレンズウエハーのみに含有させてもよいし、このプラスチックレンズウエハーの片面又は両面に形成されるハードコート層やプライマー層その他の成分層のみに含有させてもよい。成分層が複数層ある場合は、このうちの少なくとも一層に有機系色素を含有させてもよい。また、プラスチックレンズウエハーと成分層の両方に有機系色素を含有させてもよい。
【0082】
前記本発明の有機系色素を含有させた成分層の形成に関して、以下に具体例を挙げて説明する。しばしば実施されている形態においては、前記熱硬化性又は熱可塑性プラスチックレンズウエハーの少なくとも片面にプライマー層を形成させ、その表面にハードコートが施されレンズウエハー材料表面に耐擦傷性などの機械的特性が付与される。更に必要に応じてハードコート層の表面には所定の無機多層膜が施され反射防止性能が付与される。前記プライマー層はレンズウエハー面とハードコート層間の密着性に寄与するだけでなく、主たる目的はハードコートや反射防止層が施されることによって生じるレンズ自体の耐衝撃性の劣化を応力の緩衝作用を通して改善できることである。
【0083】
本発明の有機系色素を前記ハードコート層やプライマー層に含有させて本発明で必要な選択的遮光性を発現させることができる。
前記プライマー層としては公知の方法、例えばブロック型ポリイソシアネートとポリオールをイソシアネートと水酸基の当量比が概略0.8〜1.25となるよう配合し、溶媒で希釈し、微量の錫系触媒とレベリング剤を加えた溶液に本発明の有機系色素を樹脂分に対して0.5〜2重量%の範囲で加えてプライマー溶液とし、例えば、(Ia)のチオウレタン系熱硬化性樹脂レンズの両面を前記プライマー溶液を用いてデイッピング処理後、溶剤を蒸発乾燥後約120℃〜140℃で熱硬化させることで本発明の有機系色素が含有されたポリウレタン系プライマー層を形成させることができる。
【0084】
前記プライマー層の形成において、本発明の有機系色素を含有させないポリウレタン系プライマー層を形成させ、その上に本発明の有機系色素を含有させたハードコート層を形成させることができる。適用できるハードコート剤は公知のものが使用できる。
例えば(a)コロイダル珪素酸化物、コロイダルアルミニウム酸化物、コロイダルアンチモン酸化物、コロイダルジルコニウム酸化物、コロイダルタングステン酸化物、コロイダルチタン酸化物、コロイダル亜鉛酸化物、コロイダルスズ酸化物、のような50〜200オングストロームの平均粒子直径を有する無機酸化物粒子、又は官能基を有しないアルコキシ金属化合物などの官能基を有しない金属化合物と、(b)エポキシ基、メタクリル基のような官能基を有するシラン化合物を含む配合物を共加水分解させてなる成分を主体とする組成物が挙げられる。前記官能基を有するシラン化合物の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル−メチル−ジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。ハードコート剤は前記例示の成分に加えて、必要に応じて前記例示の成分と化学的に実質上不活性な溶媒で希釈してハードコート液として使用することもできる。
【0085】
前記ハードコート液はプラスチックレンズの少なくとも片面に前記プライマーコートされた面上に塗布され通常は60〜140℃、好ましくは70〜130℃の温度範囲で加熱することで硬化処理が施される。その際必要に応じてハードコート液中に無機酸などの触媒を含有させることもできる。硬化反応はまた紫外線などの光を照射することでも行うことができる。その際は前記の(a)コロイダル無機酸化物物表面の表面を(メタ)アクリル基などのビニル基含有有機基による改質、あるいは光開始剤の併用などの処方を施すことがより好ましい。硬化後のハードコート層の場合の層の厚さは、1μm〜10μm、好ましくは2μm〜5μmの範囲である。
【0086】
このようにして、例えば予め前記ハードコート液に本発明の有機系色素を樹脂分に対して0.5〜2重量%の範囲で加え溶解し、更にレベリング剤を加えて色素含有ハードコート液を調製し、前記両面にプライマー層の施された(Ia)のチオウレタン系熱硬化性樹脂レンズを、前記色素含有ハードコート液にて両面をデイッピング処理し溶剤を蒸発乾燥後例えば120℃で3時間硬化処理することでポリウレタンプライマー層を介して本発明の有機系色素が含有されたハードコート層の施されたプラスチックレンズが得られる。
本発明の有機系色素含有のプラスチックレンズは必要に応じてマルチコート(反射防止層)、防曇処理、撥水処理、あるいは帯電防止処理など、従来の技術範囲で可能な機能処理が施されてもよい。
【0087】
[実施例]
以下に、実施例により本発明の具体例を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、参考として、以下に説明する本発明の実施例又は比較例で使用した色素の分光吸度スペクトルから求めた吸収ピークの特性を表1に示す。
【0088】
表1は、有機系色素であるPD-311SとTY-102の吸光度スペクトル結果を示したものである。
【表1】

PD-311S:三井化学(株)社製。TY-102(ADEKA ARKLS):旭電化工業(株)社製。
ピーク(P)吸光度の単位は、(ml/g・cm)
吸光度の計測は、JASCO製の吸光度計測器 UV/VIS SPECTROMETER V-550を用いた。
【0089】
[実施例1]
PD−311S(三井化学社製)0.0010重量部をビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン(2,5−体と2,6−体の混合物)50.6重両部に加え攪拌下均一溶液とした後、この溶液にペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)23.9重量部、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3、6−ジチアオクタン25.5重量部、硬化促進剤としてジブチル錫ジクロライド0.02重量部、離型剤としてZelecUN(登録商標、Stepan社製)0.13重量部、及び紫外線吸収剤としてSeesorb 709(シプロ化成社製)0.05重量部を加えて混合溶解し、室温減圧下で脱泡処理して得られるモノマー混合物を、3μmのフィルターを通してろ過した。その後、チューブを通して成形用のレンズ注型用鋳型に注入した。レンズ注型用鋳型は前後面ともに平板型でその間隔が2.2mmのプラノ型とした。注入後閉栓したレンズ注型用鋳型を熱風循環式オーブンの中に置き、26時間かけて20℃から130℃に昇温し、その後130℃で4時間維持、徐冷の後、オーブンからレンズ注型用鋳型を取り出した。レンズ注型用鋳型からレンズを離型し、130℃で2時間アニール処理して有機色素含有の熱硬化性プラスチック眼鏡レンズを得た。得られたレンズの透過率スペクトルを図1に示す。この実施例では、最低透過率ピークにおける波長は、588.0nmであった。
また、前記レンズの透過光の色度計による測定結果を表2に示す。前記レンズを通して観察した色調は紫青であった。得られたレンズを通しての観察では、例えば、晴天下の樹木の小枝の線や赤色、黄色、緑色のコントラストがきわめて明瞭化して見えた。
【0090】
[実施例2]
PD−311S(三井化学社製)を0.0020重量部用いた以外は実施例1と同様にして熱硬化性プラスチック眼鏡レンズを得た。得られたレンズの透過率スペクトルを図2に示す。この実施例では、最低透過率ピークにおける波長は、588.0nmであった。
また、前記レンズの透過光の色度計による測定結果を表2に示す。前記レンズを通して観察した色調は紫青であった。得られたレンズを通しての観察では、例えば、晴天下の樹木の小枝の線や赤色、黄色、緑色のコントラストがきわめて明瞭化して見えた。
【0091】
【表2】

L*,a*,b*(Lスター,aスター,bスター)はJISによる色の表示方法
Yは視感透過率(単位%)
透過率の計測には、SHIMADZU製の透過率計測器UV-160Aを用いた。
【0092】
[実施例3]
表3に示した色素とその重量部を使用した以外は実施例1と同様にしてレンズ注型に供されるモノマー混合物を調製、更には注型を行い、配合された色素が異なる以外は実施例1と同様にして所望の色調を備えた熱硬化性プラスチック眼鏡レンズを得た。
得られたレンズの透過率スペクトルを図3に示す。この実施例では、最低透過率ピークにおける波長は、588.0nmであった。また、前記レンズの透過光の色度計による測定結果及び前記レンズを通して観察した色調を表4に示す。得られたレンズを通しての観察では、例えば、晴天下の樹木の小枝の線や赤色、黄色、緑色のコントラストがきわめて明瞭化して見えた。
【0093】
[実施例4〜9]
表3に示した色素とその重量部を用いた以外は実施例1と同様にしてレンズ注型に供されるモノマー混合物を調製した。このモノマー混合物を用い、レンズ注型用鋳型として、前後面ともに8Rでその間隔を2.2mmとした以外は実施例1と同様にして所望の色調を備えた熱硬化性プラスチック眼鏡レンズを得た。
得られたレンズの透過率スペクトルを図4〜図9に示す。各実施例において最低透過率ピークにおける波長は、
実施例4(図4):587.5nm
実施例5(図5):588.0nm
実施例6(図6):588.0nm
実施例7(図7):587.5nm
実施例8(図8):588.0nm
実施例9(図9):588.0nm
であった。また、前記レンズの透過光の色度計による測定結果及び前記レンズを通して観察した色調を表4に示す。実施例4〜9で得られたレンズを通しての観察では、例えば、晴天下の樹木の小枝の線や赤色、黄色、緑色のコントラストがきわめて明瞭化して見えた。
【0094】
【表3】

表中の単位は重量部。
以下は、有機系色素とその製品名
Blue:Blue up−R[北陸カラー(株)社製]
Y2G:Y−2G[北陸カラー(株)社製]
KP-R:KP PLAST RED[紀和化学(株)社製)]
KP-Y:KP PLAST YELLOW[紀和化学(株)社製)]
Y.S.5R:Y.S.5R[北陸カラー(株)社製]
【0095】
【表4】

【0096】
[実施例10〜11]
内面がSUSで形成されたタンクに、熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂のペレットとしてパンライトL−1250VX(Natural)[帝人化成(株)]を100重量部を仕込み、これに表5に示す色素とその重量部を加えペレット表面に吸着させた。得られた配合物を120℃で12時間乾燥処理を施し、これを260〜300℃に温度調節された射出成形機で外径73mm、中心圧2mmのレンズに成形した。得られたレンズの透過率スペクトルを図10及び図11に示す。それぞれにおける最低透過率ピークにおける波長、色調及び視感透過率計による視感透過率はそれぞれ、
実施例10(図10) :586.0nm(ピーク波長)、グレー(色調)、40.0%(視感透過率)
実施例11(図11) :585.9nm(ピーク波長)、ブラウン(色調)、49.1%(視感透過率)
であった。得られたレンズを通しての観察では、例えば、晴天下の樹木の小枝の線や赤色、黄色、緑色のコントラストがきわめて明瞭化して見えた。
【表5】

表中の単位は重量部。
Blue-2:Blue up−R-3[北陸カラー(株)社製]、Blue-3:Blue up−R-3[北陸カラー(株)社製]、その他の色素記号は表3の脚注に記載。
【0097】
[実施例12〜13]
内面がSUSで形成されたタンクに、ポリアミド樹脂ペレットとして
Grilamid TR90(Natural)[EMS−CHEMIE]を100重量部仕込み、これに表6に示す色素とその重量部を加えペレット表面に吸着させた。得られた配合物を減圧下80℃で12時間乾燥処理を施し、これを250〜290℃に温度調節された射出成形機で外径73mm、中心肉厚2mmのレンズに成形した。得られたレンズの透過率スペクトルを図12及び図13に示す。それぞれにおける最低透過率ピークにおける波長、色調及び視感透過率計による視感透過率はそれぞれ、
実施例12(図12) :585.2nm(ピーク波長)、グレー(色調)、46.5%(視感透過率)
実施例13(図13) :585.1nm(ピーク波長)、ブラウン(色調)、55.8%(視感透過率)
であった。得られたレンズを通しての観察では、例えば、晴天下の樹木の小枝の線や赤色、黄色、緑色のコントラストがきわめて明瞭化して見えた。
【表6】

表中の単位は重量部。色素記号は表3及び表5の脚注に記載。
【0098】
[比較例1]
表1に示した如く、吸光度スペクトルにおいて吸収ピークは585nm付近(概ね585±2nm付近)にはあるがピークの線幅が本発明の範囲を超えて大きい色素例としてTY−102[ADEKA ARKLS、旭電化工業(株)]0.00115重量部を用いた以外は実施例1と同様にして熱硬化性プラスチック眼鏡レンズを得た。得られたレンズの透過率スペクトルを図14に示す。この例において最低透過率ピークにおける波長は、587.0nmであった。また、前記レンズの透過光の色度計による測定結果を表7に示す。前記レンズを通して観察した色調は淡い紫青であった。得られたレンズを通しての観察では、例えば、晴天下の樹木の小枝の線や赤色、黄色、緑色のコントラストは明瞭化して見えた。
【0099】
[比較例2]
表8に示した色素とその重量部を用いた以外は実施例3と同様にして色調を付与した熱硬化性プラスチック眼鏡レンズを得た。得られたレンズの透過率スペクトルを図15に示す。この例において最低透過率ピークにおける波長は、587.5nmであった。また、前記レンズの透過光の色度計による測定結果を表7に示す。また、前記レンズを通しての観察では、例えば、晴天下の樹木の小枝の線や赤色、黄色、緑色のコントラストは明瞭化して見えたが、前記レンズを通して観察した色調はかなり淡いグリーンで色調が目立たちにくいだけでなくややくすみがみられた。
【0100】
[比較例3]
表8に示した色素とその重量部を用いた以外は実施例4と同様にして色調を付与した熱硬化性プラスチック眼鏡レンズを得た。得られたレンズの透過率スペクトルを図16に示す。この例において最低透過率ピークにおける波長は、587.0nmであった。また、前記レンズの透過光の色度計による測定結果を表7に示す。また、前記レンズを通しての観察では、例えば、晴天下の樹木の小枝の線や赤色、黄色、緑色のコントラストは明瞭化して見えたが、前記レンズを通して観察した色調はブラウンではなく、淡いカパー色でややくすみがみられた。前記レンズの透過光の色度計による測定結果を表6に示す。前記レンズを通しての例えば、晴天下の樹木の小枝の線や赤色、黄色、緑色のコントラストはレンズ不使用に比べると明瞭化して見えるが、暗視野では識別性がかなり低下した。
【0101】
【表7】

表中の単位は重量部。
【0102】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、ネオジム化合物等の希土類金属を用いずに特定色素を用いたプラスチック眼鏡レンズに適用が可能である。本発明のプラスチック眼鏡レンズは、防眩性に優れるだけでなく明るい視野で像や色の識別性に優れており、混色法による所望の色調への設定性に優れている。また、本発明が適用されるプラスチック眼鏡レンズは、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から形成したプラスチックレンズウエハー単体からなるものであってもよいし、前記プラスチックウェハーとこのプラスチックウェハーの片面又は両面に形成された一層又は複数層の成分層(ハードコート層,プライマー層その他の成分層を含む)とからなるプラスチック眼鏡レンズであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施例1で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図2】実施例2で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図3】実施例3で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図4】実施例4で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図5】実施例5で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図6】実施例6で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図7】実施例7で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図8】実施例8で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図9】実施例9で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図10】実施例10で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図11】実施例11で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図12】実施例12で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図13】実施例13で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図14】比較例1で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図15】比較例2で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。
【図16】比較例2で得られたレンズの分光透過率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン系熱硬化性樹脂、(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂、
ポリカーボネート樹脂又はポリアミド樹脂から形成したプラスチックレンズウエハーからなるプラスチック眼鏡レンズ又は前記プラスチックウェハーとこのプラスチックウェハーの少なくとも片面に形成された一層又は複数層の成分層とからなるプラスチック眼鏡レンズであって、前記プラスチックウェハー及び前記成分層のうちの少なくとも一つが以下の条件(A)を満足する有機系色素を含有することを特徴とするプラスチック眼鏡レンズ。
条件(A):有機系色素のクロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm〜605nmの間に主吸収ピーク(P)を有し、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光係数が0.5×10(ml/g・cm)以上であり、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が50nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が30nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下の範囲にあること。
【請求項2】
前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)が580nm〜590nmの間である請求項1に記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項3】
前記レンズの透過率スペクトルにおける透過率極小値の波長位置が585nmを越え600nm以下の間である請求項1に記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項4】
前記有機系色素が以下の式(1)で表されるテトラアザポルフィルン化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【化1】

[式(1)中、A〜A8は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。]
【請求項5】
Mが2価の銅原子である請求項4に記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項6】
テトラアザポルフィリン化合物が式(2)で表されるテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・銅錯体である請求項4又は5に記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【化2】

[式(2)中、Cuは2価の銅を、t-C4H9はターシャリ−ブチル基を表し、その4個の置換基の置換位置は式(1)におけるそれぞれA1とA2、A3とA4、A5とA6及びA7とA8のいずれかひとつの位置に置換されていている位置異性体構造を表す。]
【請求項7】
有機系色素が前記プラスチックレンズウエハーに予め含有されている請求項1〜6のいずれかに記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項8】
有機系色素が前記プラスチックレンズウエハー内において実質的に全領域に分布して予め含有されており、前記有機系色素のプラスチックレンズウエハーに対する濃度が0.0002重量%〜0.05重量%の範囲である請求項1〜7のいずれかに記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項9】
有機系色素が前記プラスチックレンズウエハー内の少なくとも片面表面から500μm以下の深さの範囲に局在している請求項7に記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項10】
前記成分層を構成する層のうちの少なくとも一層が前記有機系色素を含有している場合において、前記成分層における前記有機系色素の濃度が0.02重量%〜5重量%の範囲である請求項1〜6のいずれかに記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項11】
前記ウレタン系熱硬化性樹脂が、ポリチオールをモノマー成分とするチオウレタン系熱硬化性樹脂又はポリオールをモノマー成分とするウレタン系熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項12】
前記ポリカーボネート樹脂100重量部と前記ポリアミド樹脂30〜0.5重量部とを混合した樹脂を用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項13】
前記成分層を構成する層のうちの少なくとも一層が有機樹脂コート剤から形成されている請求項1〜12のいずれかに記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項14】
前記有機樹脂コート剤が熱可塑性有機樹脂コート剤又は熱硬化性有機樹脂コート剤から形成されている請求項13に記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項15】
前記成分層を構成する層のうちの少なくとも一層がハードコート層である請求項1〜14のいずれかに記載の熱硬化性プラスチック眼鏡レンズ。
【請求項16】
前記成分層を構成する層のうちの少なくとも一層が前記ハードコート層に接するプライマー層である請求項15に記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項17】
前記条件(A)の有機系色素以外の他の1種以上の有機系色素を用いて着色したことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項18】
前記チオウレタン系熱硬化性樹脂が、ポリイソシアネート化合物、イソチオシアネート基を有するイソシアネート化合物、ポリイソチオシアネート化合物から選ばれる1種または2種以上のイソ(チオ)シアネート系化合物(B)と、活性水素化合物(C)を重合反応させて得られるチオウレタン系樹脂であり、
前記活性水素化合物(C)が、ヒドロキシ基を有するチオール化合物、ポリチオール化合物から選ばれる1種または2種以上のチオール系活性水素化合物(C1)又はヒドロキシ基を有する水酸基系活性水素化合物(C2)のいずれかであることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項19】
イソ(チオ)シアネート系化合物(B)がジイソシアネート化合物であり活性水素化合物(C)がポリチオール化合物である請求項18に記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項20】
イソ(チオ)シアネート系化合物(B)が2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、m−キシリレンジイソシアネートから選ばれる1種または2種以上のジイソシアネートであり、活性水素化合物(C)がペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-メルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタンから選ばれる1種または2種以上のポリチオール化合物である請求項18に記載のプラスチック眼鏡レンズ。
【請求項21】
前記(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂が、多官能性(メタ)アクリル酸エステル類(D)から選ばれる1種又は2種以上のモノマーが70〜100重量%、及び芳香族基と共役する単官能性又は多官能性ビニル化合物類(E−1)及び/又はカルボニル基と共役する単官能性ビニル化合物類(E−2)から選ばれる1種又は2種以上のモノマーが0〜30重量%からなる混合物を主成分とする(メタ)アクリル系モノマー組成物を重合反応させて得られる(メタ)アクリル系熱硬化性樹脂である請求項1〜20のいずれかに記載のプラスチック眼鏡レンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−61653(P2013−61653A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220902(P2012−220902)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2007−267290(P2007−267290)の分割
【原出願日】平成19年10月13日(2007.10.13)
【出願人】(394019543)株式会社ホプニック研究所 (5)
【Fターム(参考)】