説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】高効率のプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために、本発明は、真空紫外線により可視光を発する蛍光体層を備えたプラズマディスプレイパネルであって、前記蛍光体層として、一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKを含む蛍光体を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PDPは、いわゆる3原色(赤、緑、青)を加法混色することにより、フルカラー表示を行っている。このフルカラー表示を行うために、PDPには3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を発光する蛍光体層が備えられ、この蛍光体層を構成する蛍光体粒子はPDPの放電セル内で発生する紫外線により励起され、各色の可視光を生成している。
【0003】
従来から知られている赤色蛍光体として、母体結晶がLn(P,V)O4(但し、Lnは、Sc、Y、La、Gd、および、Luから選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で表され、付活剤として少なくともEu3+イオンを含有する希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体があり、特にY(P,V)O4:Eu3+蛍光体(YPV)は、蛍光ランプやPDPなどで実用化されている(例えば、特許文献1〜5、非特許文献1参照)。
【0004】
YPVは、りんとバナジウムの比率を変えることによって発光色や発光強度が変わることが知られており、りん比が低い場合、赤色純度の面で優れるものの、真空紫外線(VUV)励起下における発光強度が下がる。また、VUV励起下での発光強度は、りん比が約65原子%のとき最大となることが知られている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3417027号明細書
【特許文献2】特公昭57−352号公報
【特許文献3】特許第3988337号公報
【特許文献4】特開2004−256763号公報
【特許文献5】特開2009−256529号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】蛍光体ハンドブック、オーム社、pp.233−235、pp.332−333
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、YPVの主成分であるバナジウムはイオン価数が不安定であり、PDPの製造工程において、YPVの発光強度は著しく低下する。そのため、PDPの効率に悪影響を及ぼす。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高効率なPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は、真空紫外線により可視光を発する蛍光体層を備えたプラズマディスプレイパネルであって、前記蛍光体層として、一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKを含む蛍光体を用いたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、真空紫外線により可視光を発する蛍光体層を備えたプラズマディスプレイパネルであって、前記蛍光体層として、一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKと、0.50〜4.00原子%のWとを含む蛍光体を用いたことを特徴とする。
【0011】
なお、前記一般式において、0.03≦a≦0.06であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高効率なPDPを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のPDPの構成を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
まず、交流面放電型PDPを例として、本発明のPDPについて説明する。図1は、交流面放電型PDPの主要構造を示す斜視断面図である。なお、ここで示すPDPは、便宜的に、42インチクラスの1024×768画素仕様に合わせたサイズ設定にて図示しているが、他のサイズや仕様に適用してもよいのは勿論である。
【0016】
図1で示すように、このPDP10は、フロントパネル20とバックパネル26とを有しており、それぞれの主面が対向するようにして配置されている。
【0017】
このフロントパネル20は、前面基板としてのフロントパネルガラス21と、このフロントパネルガラス21の一方の主面に設けられた帯状の表示電極(X電極23、Y電極22)と、この表示電極を覆う厚さ約30μmの前面側誘電体層24と、この前面側誘電体層24の上に設けられた厚さ約1.0μmの保護層25とを含んでいる。
【0018】
上記表示電極は、厚さ0.1μm、幅150μmの帯状の透明電極220(230)と、この透明電極上に重ね設けられた厚さ7μm、幅95μmのバスライン221(231)とを含んでいる。また、各対の表示電極が、x軸方向を長手方向としてy軸方向に複数配置されている。
【0019】
また、各対の表示電極(X電極23、Y電極22)は、それぞれフロントパネルガラス21の幅方向(y軸方向)の端部付近で、パネル駆動回路(図示せず)と電気的に接続されている。なお、Y電極22は一括してパネル駆動回路に接続され、X電極23はそれぞれ独立してパネル駆動回路に接続されている。パネル駆動回路を用いて、Y電極22と特定のX電極23とに給電すると、X電極23とY電極22との間隙(約80μm)に面放電(維持放電)が発生する。X電極23はスキャン電極として作動させることもでき、これにより、後述するアドレス電極28との間で書き込み放電(アドレス放電)を発生させることができる。
【0020】
上記バックパネル26は、背面基板としてのバックパネルガラス27と、複数のアドレス電極28と、背面側誘電体層29と、隔壁30と、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の何れかに対応する蛍光体層31〜33とを含んでいる。蛍光体層31〜33は、隣り合う2つの隔壁30の側壁とその間の背面側誘電体層29とに接して設けられており、また、x軸方向に繰り返して配列されている。
【0021】
赤色蛍光体層(R)は、上述した本発明の赤色蛍光体を含んでいる。他方、緑色蛍光体層(G)および青色蛍光体層(B)は一般的な蛍光体を含んでいる。例えば、緑色蛍光体としては、Zn2Si4:MnやY3OAl512:Ceが、青色蛍光体としてはBaMgAl1017:Euが挙げられる。
【0022】
各蛍光体層は、蛍光体粒子を溶解させた蛍光体インクを、例えばメニスカス法やラインジェット法などの公知の塗布方法により隔壁30および背面側誘電体層29に塗布し、これを乾燥や焼成(例えば500℃で10分)することにより形成できる。上記蛍光体インクは、例えば体積平均粒径2μmの緑色蛍光体30質量%と、重量平均分子量約20万のエチルセルロース4.5質量%と、ブチルカルビトールアセテート65.5質量%とを混合して作製することができる。また、その粘度を、最終的に2000〜6000cps(2〜6Pas)程度となるように調整すると、隔壁30に対するインクの付着力を高めることができて好ましい。
【0023】
アドレス電極28はバックパネルガラス27の一方の主面に設けられている。また、背面側誘電体層29はアドレス電極28を覆うようにして設けられている。また、隔壁30は、高さが約150μm、幅が約40μmであり、y軸方向を長手方向とし、隣接するアドレス電極28のピッチに合わせて、背面側誘電体層29の上に設けられている。
【0024】
上記アドレス電極28は、それぞれが厚さ5μm、幅60μmであり、y軸方向を長手方向としてx軸方向に複数配置されている。また、このアドレス電極28は、ピッチが一定間隔(約150μm)となるように配置されている。なお、複数のアドレス電極28は、それぞれ独立して上記パネル駆動回路に接続されている。それぞれのアドレス電極に個別に給電することによって、特定のアドレス電極28と特定のX電極23との間でアドレス放電させることができる。
【0025】
フロントパネル20とバックパネル26とは、アドレス電極28と表示電極とが直交するように配置している。封着部材としてのフリットガラス封着部(図示せず)により両パネル20、26の外周縁部が封着されている。
【0026】
フリットガラス封着部によって密封された、フロントパネル20とバックパネル26との間の密閉空間には、He、Xe、Ne等の希ガス成分からなる放電ガスが所定の圧力(通常6.7×104〜1.0×105Pa程度)で封入されている。
【0027】
なお、隣接する2つの隔壁30の間に対応する空間が、放電空間34となる。また、一対の表示電極と1本のアドレス電極28とが放電空間34を挟んで交叉する領域が、画像を表示するセルに対応している。なお、本例では、x軸方向のセルピッチは約300μm、y軸方向のセルピッチは約675μmに設定されている。
【0028】
また、PDP10の駆動時には、パネル駆動回路によって、特定のアドレス電極28と特定のX電極23とにパルス電圧を印加してアドレス放電させた後、一対の表示電極(X電極23、Y電極22)の間にパルスを印加し、維持放電させる。これにより発生させた短波長の紫外線(波長約147nmを中心波長とする共鳴線および172nmを中心波長とする分子線)を用いて、蛍光体層31〜33に含まれる蛍光体を可視光発光させることで、所定の画像をフロントパネル側に表示することができる。
【0029】
次に、本発明のPDPに用いる蛍光体について説明する。
【0030】
本発明者は、YPV粒子の表面近傍にKあるいはKおよびWを含有させることで、不安定なバナジウムを安定化し、PDPの製造工程(蛍光体インク焼成工程、フロントパネルとバックパネルの封着排気工程)におけるYPVの発光強度低下を大幅に抑制できることを見出した。
【0031】
なお、蛍光体粒子の表面近傍とは、X線光電子分光法(XPS)による測定範囲であり、具体的には蛍光体粒子表面から10nm程度である。
【0032】
本発明の蛍光体は、一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKを含むものである。前記一般式において、aは、輝度の観点から好ましい範囲は、0.03≦a≦0.06である。
【0033】
また、本発明の蛍光体は、一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKと、1〜4原子%のWを含むものである。
【0034】
次に、本発明の蛍光体の製造方法について説明するが、本発明の蛍光体の製造方法は以下に限られるものではない。
【0035】
原料としては、高純度(純度99%以上)の水酸化物、アンモニウム塩、炭酸塩、硝酸塩など、焼成により酸化物になる化合物かまたは、高純度(純度99%以上)の酸化物を用いることができる。
【0036】
一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の製造は、上記の原料を混合し、焼成して行うが、原料の混合方法としては、溶液中での湿式混合でも乾燥粉体の乾式混合でもよく、工業的に通常用いられるボールミル、媒体撹拌ミル、遊星ミル、振動ミル、ジェットミル、V型混合機、攪拌機等を用いることができる。
【0037】
混合粉体の焼成は、まず、大気中において1200〜1500℃の温度範囲で1〜50時間程度行う。更に、得られた希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体に対して、KあるいはKおよびWに相当する上記原料を混合し、大気中において600〜1000℃の温度範囲で1〜4時間程度焼成することにより、希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍にKあるいはKおよびWを含む蛍光体を得ることができる。
【0038】
焼成に用いる炉は、工業的に通常用いられる炉を用いることができ、プッシャー炉等の連続式またはバッチ式の電気炉やガス炉を用いることができる。
【0039】
得られた蛍光体粉末を、ボールミルやジェットミルなどを用いて再度粉砕し、さらに必要に応じて洗浄あるいは分級することにより、蛍光体粉末の粒度分布や流動性を調整することができる。
【0040】
以下、具体的な実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0041】
一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体であって、前記希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKを含む蛍光体は、次のようにして作製した。
【0042】
出発原料として、Y23,Eu23,(NH42HPO4,V25を用い、これらを所定の組成になるよう秤量し、ボールミルを用いて純水中で湿式混合した。この混合物を乾燥させた後、大気中1300〜1500℃で4時間焼成した。実施例の蛍光体試料については、得られた希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体に対し、KOHを所定の組成になるよう秤量し、ボールミルを用いて純水中で湿式混合した。この混合物を乾燥させた後、大気中800℃で2時間焼成した。
【0043】
次に、一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体であって、前記希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKと、0.50〜4.00原子%のWとを含む蛍光体は、次のようにして作製した。
【0044】
出発原料として、Y23,Eu23,(NH42HPO4,V25を用い、これらを所定の組成になるよう秤量し、ボールミルを用いて純水中で湿式混合した。この混合物を乾燥させた後、大気中1300〜1500℃で4時間焼成した。実施例の蛍光体試料については、得られた希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体に対し、K2WO4を所定の組成になるよう秤量し、ボールミルを用いて純水中で湿式混合した。この混合物を乾燥させた後、大気中800℃で2時間焼成した。
【0045】
本発明の実施例および比較例の蛍光体試料に対し、真空中で波長146nmの真空紫外光を照射し、可視領域の発光を測定した。試料の輝度(Y)は国際照明委員会XYZ表色系における輝度Yであり、試料番号1に対する相対値である。
【0046】
また、上述した交流面放電型PDPの例と同様にして図1の構成を有するPDPを作製した。作製したPDPについて、パネル輝度(試料番号1を用いた場合に対する相対値)を測定した。パネルは赤色1色固定表示とした。表1に、蛍光体試料の配合組成比とX線光電子分光法(XPS)により測定した粒子表面近傍のKおよびW比、試料の輝度(Y)およびパネル輝度を示す。なお、表1において*印を付した試料は比較例である。
【0047】
【表1】

【0048】
表1から明らかなように、組成比が本発明の組成範囲内にあり、蛍光体粒子の表面近傍にKあるいはKおよびWを含む蛍光体は、真空紫外光励起による輝度が比較的高く、前記蛍光体を用いたパネルの輝度は更に高い。中でも、KおよびWを含む蛍光体を用いたパネル(試料番号6〜10)の輝度は特に高い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、高効率なPDPを提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 PDP
20 フロントパネル
21 フロントパネルガラス
22 Y電極(表示電極)
23 X電極(表示電極)
24 前面側誘電体層
25 保護層
26 バックパネル
27 バックパネルガラス
28 アドレス電極
29 背面側誘電体層
30 隔壁
31 蛍光体層(R)
32 蛍光体層(G)
33 蛍光体層(B)
34 放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空紫外線により可視光を発する蛍光体層を備えたプラズマディスプレイパネルであって、前記蛍光体層として、一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKを含む蛍光体を用いたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
真空紫外線により可視光を発する蛍光体層を備えたプラズマディスプレイパネルであって、前記蛍光体層として、一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKと、0.50〜4.00原子%のWとを含む蛍光体を用いたことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体であって、前記希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKを含むことを特徴とする希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体。
【請求項4】
一般式(Y1-aEua)(Pb1-b)O4(0.01≦a≦0.10、0.62≦b≦0.70)で表される希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体であって、前記希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体粒子の表面近傍に、1〜8原子%のKと、0.50〜4.00原子%のWとを含むことを特徴とする希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体。

【図1】
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【公開番号】特開2013−16340(P2013−16340A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147969(P2011−147969)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】