説明

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法

【課題】被処理体におけるプラズマ処理される被処理部分の処理ガスの濃度の低下を防止することができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供すること。
【解決手段】プラズマ処理装置1は、被処理体Wに向けて処理ガスG1を噴出する開口23および24をそれぞれ有するガス供給管4および5と、処理ガスG1を活性化させてプラズマが発生するように電界を発生させる上部電極2および下部電極3と、拡散防止用ガスGSを噴出することにより、処理空間SをエアカーテンASで囲んで、処理ガスG1が拡散するのを防止するエアカーテン生成部15、16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置およびそれを用いたプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圧下において、被処理体の表面をプラズマ処理するプラズマ処理装置としては、図4に示すような、平行平板型プラズマ処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、図4では、説明の都合上、図4中の上側を「上方」、下側を「下方」という。
図4に示すプラズマ処理装置40は、被処理体Wを図中の矢印方向に搬送するコロコンベア(ローラ)41と、搬送される被処理体Wを挟んで(介して)上方および下方にそれぞれ配置された上部電極42および下部電極43とを備えている。
【0003】
このプラズマ処理装置40では、上部電極42および下部電極43を貫通して設けられたガス導入管44a、44bから処理ガスが上部電極42および下部電極43の間(以下「処理空間S」という)に導入され、処理空間Sに発生する高周波電界Eによって、前記処理ガスが活性化される。該活性化された処理ガス(以下、「活性化ガス」という)は、プラズマとなり、処理空間Sを通過する被処理体Wの表面に接触して当該表面にプラズマ処理を施す。
【0004】
プラズマ処理装置40では、処理空間Sから外部へ拡散する余剰の活性化ガスやプラズマ処理による副生成物が、上部電極42および下部電極43のそれぞれを2重に囲んで配置されたガス排気管45a、45bによって吸引される。ここで、外側のガス排気管45bは、余剰の活性化ガスなどが外部へ拡散するのを確実に防止するために、処理空間Sから離れて配置される。
【0005】
しかしながら、前述したように外側のガス排気管45bが処理空間Sから離れて配置されるため、プラズマ処理中では、処理空間Sから外部へ向けたガス流(気流)が発生する。このガス流は、処理空間Sにおける処理ガスを巻き込むように作用するため、処理空間Sにおける処理ガスの濃度の低下を引き起こすという問題があった。
また、この濃度低下により、電極間の放電が不安定となり、被処理体Wにおけるプラズマ処理する箇所にムラが生じるおそれがあった。
また、濃度低下を回避するために、例えば、多量の処理ガスを処理空間Sへ供給する必要があった。このため、処理ガスの消費量(使用量)が多くなるという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平7−211645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、被処理体におけるプラズマ処理される被処理部分の処理ガスの濃度の低下を防止することができるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のプラズマ処理装置は、被処理体に向けて処理ガスを噴出する開口を有する処理ガス噴出部と、前記処理ガスを活性化させてプラズマが発生するように電界を発生させる一対の電極とを備えたプラズマ処理装置であって、
拡散防止用ガスを噴出することにより、前記被処理体におけるプラズマ処理される被処理部分を気流で囲んで、プラズマが拡散するのを防止する拡散防止用ガス噴出部を備えたことを特徴とする。
これにより、被処理体におけるプラズマ処理される被処理部分の処理ガスの濃度の低下を防止することができる。
【0009】
本発明のプラズマ処理装置では、前記噴出された拡散防止用ガスを回収する拡散防止用ガス回収手段を備えたことが好ましい。
これにより、拡散防止用ガスを確実に回収することができる。
本発明のプラズマ処理装置では、前記噴出された処理ガスを回収する処理ガス回収手段を備えたことが好ましい。
これにより、処理ガスを確実に回収することができる。
【0010】
本発明のプラズマ処理装置では、前記回収された処理ガスは、プラズマ処理に再利用されることが好ましい。
これにより、処理ガスの消費量(使用量)を削減することができる。
本発明のプラズマ処理装置では、前記噴出された処理ガスの噴出量は、前記回収された処理ガスの吸引量よりも多いことが好ましい。
これにより、回収された処理ガスの濃度の低下を防止することができ、よって、処理ガスの再利用の効率を高めることができる。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置では、前記拡散防止用ガスを加熱する加熱手段を備えたことが好ましい。
これにより、被処理体に対するプラズマ処理が促進される。
本発明のプラズマ処理装置では、前記拡散防止用ガスは、不活性ガスであることが好ましい。
これにより、被処理体に高純度なプラズマ処理を施すことができる。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置では、前記一対の電極は、前記被処理体を介して、互いに対向して配置されることが好ましい。
これにより、被処理体の片面または両面をプラズマ処理することができる。
本発明のプラズマ処理装置では、前記一対の電極における互いに対向する面には、それぞれ、前記処理ガス噴出部の開口が設けられていることが好ましい。
これにより、被処理体におけるプラズマ処理される被処理部分に処理ガスを確実に供給することができる。
【0013】
本発明のプラズマ処理方法は、本発明のプラズマ処理装置を用いて、前記被処理体をプラズマ処理する方法であって、
前記被処理体を設置し、
次に、前記拡散防止用ガス噴出部から前記拡散防止用ガスを噴出した状態で、前記処理ガス噴出部の開口から前記被処理体に向けて前記処理ガスを噴出しつつ、前記一対の電極間に電界を生じさせて、プラズマを発生させ、該発生したプラズマにより前記被処理体を処理することを特徴とする。
これにより、被処理体におけるプラズマ処理される被処理部分の処理ガスの濃度の低下を防止することができる。
【0014】
本発明のプラズマ処理方法は、被処理体に向けて処理ガスを噴出する開口を有する処理ガス噴出部と、前記処理ガスを活性化させてプラズマが発生するように電界を発生させる一対の電極との近傍を前記被処理体を通過させて、該被処理体をプラズマ処理するに際し、
拡散防止用ガスを噴出して、プラズマが拡散するのを防止した状態で、前記被処理体を処理することを特徴とする。
これにより、被処理体におけるプラズマ処理される被処理部分の処理ガスの濃度の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法の好適な実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明のプラズマ処理装置の第1実施形態の概略構成を示す断面図である。なお、以下の説明では、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言い、図1中の上下方向を「垂直方向」、左右方向を「水平方向」と言う。
【0016】
まず、本発明のプラズマ処理装置1について説明する。
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、被処理体Wに向けて処理ガスG1を供給(噴出)するガス供給管(処理ガス噴出部)4、5と、電界を発生させる一対の電極(上部電極2および下部電極3)と、エアカーテンを生成するエアカーテン生成部(拡散防止用ガス噴出部)15、16と、被処理体Wを搬送するコロコンベア10とを備えている。
まず、処理ガスG1について説明する。
処理ガスG1としては、特に限定されないが、例えば、O、CF、N、アルゴン、CHなどの気体が挙げられる。
【0017】
以下、プラズマ処理装置1の各部の構成について説明する。
図1に示すように、上部電極2および下部電極3は、被処理体W(例えばシリコンウエハのような半導体基板等)を介し、互いに対向して平行に配置される。これにより、被処理体Wの上面、下面または両面をプラズマ処理することができる。
上部電極2は、導線6を介して高周波電源7に接続されている。また、下部電極3は、導線8を介して接地されている。被処理体Wにプラズマ処理を施すとき、高周波電源7が作動して、両電極間に高周波電圧が印加される。このとき、両電極間(処理空間S)には、高周波電界Eが発生する。この高周波電界Eによって、上部電極2と下部電極3との間の空間(以下「処理空間S」という)に供給された処理ガスG1が活性化(例えば、励起、電離など)されて、プラズマが生じる。以下、活性化された処理ガスG1を「活性化ガス」ということがある。
【0018】
なお、高周波電源7の周波数は、特に限定されないが、通常、数kHz〜50MHzで用いられるのが好ましい。
また、上部電極2および下部電極3における互いに対向する面のほぼ中央には、それぞれ、処理空間Sに向けて処理ガスG1を噴出するガス供給管4の開口23およびガス供給管5の開口24が設けられている。このように、開口23、24が処理空間Sに面していることにより、処理ガスG1を処理空間Sに確実に供給することができる。
【0019】
また、上部電極2および下部電極3は、それぞれ、被処理体Wから所定距離(図1中、h1、h2で示す長さ)だけ離れた位置に配置される。これらの距離h1、h2は、高周波電源7の出力や、被処理体Wに施すプラズマ処理の種類等を考慮して適宜設定されるが、0.5〜2mm程度であるのが好ましい。これにより、両電極間に高周波電界Eを確実に発生させることができる。
なお、上部電極2および下部電極3の材質としては、電導性の高い材質(例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、タングステン等)が用いられる。
【0020】
また、高周波電界Eにおいてアーク放電の発生を防止する観点から、上部電極2の表面を例えばアルミナ、石英、窒化シリコン等の誘電体で被覆するのが好ましい。この誘電体の厚さは、厚すぎるとプラズマ発生に高電圧を要することがあり、薄すぎると電圧印加時に絶縁破壊が起こり、アーク放電が発生することがあるため、0.5〜2mm程度であるのが好ましい。
【0021】
コロコンベア10は、水平方向に配列された複数の搬送ローラ9を備えている。このコロコンベア10は、被処理体Wを図1中の白抜き矢印方向に向けて搬送するように作動する。
なお、コロコンベア10は、被処理体Wを水平方向に搬送する搬送ローラ9だけでなく、被処理体Wを図1中の奥行き方向に搬送する搬送ローラを備えていてもよい。これにより、被処理体Wを水平方向・奥行き方向に自在に移動させることができる。従って、被処理体Wの表面W1、W2におけるプラズマ処理の施行が所望される領域(被処理部分(以下、「プラズマ処理所望領域」という))の位置に拘わらず、当該プラズマ処理所望領域を高周波電界E内に位置させることができる。
【0022】
また、コロコンベア10は、プラズマ処理中においても被処理体Wを移動することが可能であるため、たとえ、高周波電界Eと表面W1、W2との交差領域の大きさがプラズマ処理所望領域の大きさより小さくても、コロコンベア10の作動により被処理体Wを移動させることによって、プラズマ処理所望領域の全面にプラズマ処理を施すことが可能である。
プラズマ処理装置1は、処理空間Sに供給された処理ガスG1を排出する(回収する)ガス排出管12、13を備えている。ガス排出管12、13は、上部電極2および下部電極3の外周にそれぞれ配置され、処理空間Sに開口する吸引口(回収口)11を有している。この吸引口11は、後述するエアカーテンASより内側に設けられている。
【0023】
これらのガス排出管12、13は、排気ポンプ25に連通している。この排気ポンプ25が作動すると、ガス排出管12、13は、処理空間Sの処理ガスG1を吸引口11から吸引する。
また、ガス排出管12、13は、排気ポンプ25を介して、エアタンク(処理ガス精製処理装置)26に接続されている。吸引口11(ガス排出管12、13)から吸引された処理ガスG1は、エアタンク26に蓄積される(回収される)。
【0024】
このように、ガス排出管12、13と、排気ポンプ25と、エアタンク26とは、処理空間Sに噴出された処理ガスG1を回収する処理ガス回収手段としての機能を発揮している。これにより、簡単な構成で、処理ガスG1を確実に回収することができる。
また、回収された処理ガスG1は、再度、ガス供給管4から噴出されて、高周波電界Eによって活性化される。すなわち、回収された処理ガスG1は、プラズマ処理に再利用される。これにより、処理ガスG1の消費量(使用量)を削減することができる。
【0025】
ところで、ガス排出管12(ガス排出管13)から吸引される処理ガスG1の量が、ガス供給管4(ガス供給管5)から供給される処理ガスG1の量より多い場合、ガス排出管12が吸引する処理ガスG1には、当該処理ガスG1以外のガスが含まれる(巻き込まれる)。これにより、回収された処理ガスG1の濃度が低下して、処理ガスG1の再利用の効率が悪化する。
【0026】
従って、プラズマ処理装置1は、ガス供給管4から供給される処理ガスG1の量は、ガス排出管12から吸引される処理ガスG1の量より多くなるよう設定されるのが好ましい。また、エアカーテン生成部15、16を水平方向に長くすることで、ガス排出管12、13が外部から離され、これにより大気中のガスが巻き込まれるのが防止されて、回収された処理ガスG1の濃度の低下を防止することができ、よって、処理ガスG1の再利用の効率を高めることができる。
【0027】
図1に示すように、エアカーテン生成部15、16は、それぞれ、ガス排出管12、13の外側に配置され、被処理体Wに向けて拡散防止用ガスGSを噴出する複数の噴出孔14を有している。
これらのエアカーテン生成部15、16は、被処理体Wに向けて拡散防止用ガスGSを噴出することにより、処理空間S(被処理体Wのプラズマ処理所望領域)を前記噴出した拡散防止用ガスGS、すなわち、エアカーテン(気流)ASで囲むように作用する。このエアカーテンASにより、処理ガスG1が外に流れづらくなり、処理空間Sに滞留する。よって、放電に必要なガス流量(濃度依存)が削減できる。
【0028】
これにより、処理空間Sの処理ガスG1の濃度の低下を防止することができ、よって、上部電極2および下部電極3間の放電を安定させることができるため、被処理体Wにプラズマ処理を均一に施すことができる。
また、搬入側(図1中の左側)のエアカーテン生成部15、16には、拡散防止用ガスGSを加熱するヒータ(加熱手段)27が設けられている。拡散防止用ガスGSは、ヒータ27を通過することにより加熱されて(昇温されて)、被処理体Wへ向って噴出する。
【0029】
この加熱された拡散防止用ガスGSを搬送中の被処理体Wに吹き付けることにより、当該被処理体Wは、処理空間Sに搬入される前に加熱される。このように、被処理体Wが加熱されることにより、プラズマ処理が促進される。例えば被処理体Wが150℃まで加熱された場合、レジストのアッシング処理では、通常、アッシングレートが加熱しない場合の数倍も早くなる。
【0030】
また、拡散防止用ガスGSとしては、特に限定されないが、例えばNガスなどの不活性ガスが好ましい。例えば、拡散防止用ガスGSが空気である場合には、プラズマ処理がエッチング処理やCVD処理などのとき、H、Oが活性化ガスと結合して多種の副生成物が発生する。このような副生成物は、被処理体Wの表面W1、W2に付着して該表面を汚染する。そこで、拡散防止用ガスGSが不活性ガスであると、前述したような副生成物の発生が防止さて、被処理体Wに高純度なプラズマ処理を施すことができる。
【0031】
次に、プラズマ処理装置1を用いて、被処理体Wをプラズマ処理する方法(工程)について説明する。
まず、コロコンベア10を作動させて、処理空間Sに被処理体Wを搬送する。ここで、被処理体Wのプラズマ処理所望領域が処理空間S内に位置するように、被処理体Wを設置する。
【0032】
次に、エアカーテン生成部15、16の各噴出孔14から拡散防止用ガスGSを噴出して、エアカーテンASを処理空間Sの周囲に生成する。以下、このエアカーテンASが生成された状態を「エアカーテン生成状態」という。
エアカーテン生成状態で、ガス供給管4の開口23と、ガス供給管5の開口24とから処理ガスG1を処理空間Sへ供給しつつ、高周波電源7を作動させて、両電極間に電圧を印加する。このとき、両電極間には、電界が生じることとなる。これにより、処理空間S内の処理ガスG1が活性化されて、プラズマが発生する。その後、被処理体Wがプラズマ処理される。
プラズマ処理終了後には、高周波電源7の作動を停止し、次いで、処理ガスG1の供給を停止する。
【0033】
次に、拡散防止用ガスGSの噴出を停止する。
次に、コロコンベア10を再度作動させて、被処理体Wを搬送(搬出)する。
このような工程を経ることにより、プラズマ処理を行うときには、エアカーテンASにより、処理空間S内の処理ガスG1の拡散が防止される。これにより、処理空間S内の処理ガスG1の濃度の低下を防止することができ、よって、上部電極2および下部電極3間の放電を安定させることができるため、被処理体Wにプラズマ処理を均一に施すことができる。
【0034】
また、プラズマ処理装置1では、ガス排出管12、13によって処理空間Sに存在する処理ガスG1を通常、高回収率で吸引することができ、その結果、処理ガス精製処理装置による処理ガスG1の再利用の効率を高めることができる。
また、従来のプラズマ処理装置では、処理空間Sから離れた外部(位置)にガス排出管を配置していたが、プラズマ処理装置1では、100%処理ガスを回収することで、2重のガス排出管を必要としないため、装置の製造コストを低減することができる。
【0035】
<第2実施形態>
図2は、本発明のプラズマ処理装置の第2実施形態の概略構成を示す断面図である。なお、以下の説明では、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言い、図2中の上下方向を「垂直方向」、左右方向を「水平方向」と言う。
以下、第2実施形態のプラズマ処理装置について、前述した第1実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。本実施形態は、エアカーテン生成部の構成が異なること以外は第1実施形態と同様である。
【0036】
図2に示すように、プラズマ処理装置18のエアカーテン生成部15、16には、それぞれ、噴出孔14から噴出された拡散防止用ガスGSを回収(吸収)する複数の回収孔20が設けられている。各回収孔20は、各噴出孔14と互いに隣り合うように形成されている。
各回収孔20は、排気ポンプ28に連通している(接続されている)。この排気ポンプ28の作動により、拡散防止用ガスGSは、回収孔20から吸引される。また、回収孔20は、排気ポンプ28を介して、エアタンク29に接続されている。回収孔20から吸引された拡散防止用ガスGSは、エアタンク29に蓄積される(回収される)。
【0037】
このように、回収孔20と、排気ポンプ28と、エアタンク29とは、拡散防止用ガスGSを回収する拡散防止用ガス回収手段としての機能を発揮している。これにより、簡単な構成で、拡散防止用ガスGSを確実に回収することができる。
また、プラズマ処理装置18(エアカーテン生成部15、16)では、噴出孔14から噴出する拡散防止用ガスGSの量と、回収孔20から回収する拡散防止用ガスGSの量とを調整することによって、エアカーテン生成部15と被処理体Wとの間の空間S1の圧力を、エアカーテン生成部16と被処理体Wとの空間S2の圧力より小さくすることができる。これにより、上方に向けて被処理体Wを吸引する吸引力が発生して、被処理体Wを浮上させることができる。
【0038】
また、エアカーテン生成部15、16では、噴出孔14と回収孔20とが互いに隣り合うように設けられているため、空間S1および空間S2のそれぞれにおいて、噴出孔14から回収孔20に向けての拡散防止用ガスGSの流れを発生させることができる。この流れ(気流)の方向を制御することによって、水平方向へ被処理体Wを移動する(搬送する)ことができる。これにより、前記第1実施形態で挙げたようなコロコンベア10を設けるのが省略することができる。
【0039】
このように、プラズマ処理装置18のエアカーテン生成部15、16は、被処理体Wを搬送する搬送手段としての機能を有している。
また、プラズマ処理装置18では、前述したように空間S1が減圧されるため、処理ガスG1のガス分子の平均自由行程が長くなり、処理空間Sにおいてグロー放電を容易に発生させることができる。これにより、放電着火電力や放電維持電力を低減することができる。
【0040】
<第3実施形態>
図3は、本発明のプラズマ処理装置の第3実施形態の概略構成を示す断面図である。なお、以下の説明では、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言い、図3中の上下方向を「垂直方向」、左右方向を「水平方向」と言う。
以下、第3実施形態のプラズマ処理装置について、前述した第2実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。本実施形態は、プラズマ処理装置が被処理体の下面をプラズマ処理するよう構成されていること以外は第1実施形態と同様である。
【0041】
図3に示すように、プラズマ処理装置30には、被処理体Wの下側にのみ、ガス供給管5が設けられている。これにより、被処理体Wの下面をプラズマ処理することができる。
また、プラズマ処理装置30には、被処理体Wの下側にのみ、エアカーテン生成部16が設置されている。これにより、被処理体Wに対して下側の処理空間S内の処理ガスG1が拡散するのが防止され、この処理ガスG1の濃度の低下を防止することができる。
【0042】
また、噴出孔14から噴出する拡散防止用ガスGSの量を、回収孔20から回収する拡散防止用ガスGSの量より多く設定することによって、被処理体Wを浮上させて搬送することができる。
また、プラズマ処理装置30は、被処理体Wの下面をプラズマ処理するよう構成されているのに限定されず、被処理体Wの上面をプラズマ処理するよう構成されていてもよい。このとき、上側の噴出孔14から噴出する拡散防止用ガスGSの量を、上側の回収孔20から回収する拡散防止用ガスGSの量より少なく設定することによって、被処理体Wを吸引して浮上させる。
【0043】
以上、本発明のプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。プラズマ処理装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
例えば、第2実施形態のプラズマ処理装置に、第1実施形態のプラズマ処理装置におけるコロコンベアを設けてもよい。
また、プラズマ処理装置は、前記各実施形態に示すいわゆる平行平板型であるのに限定されず、例えば、いわゆるリモート型であってもよい。
また、被処理体に施すプラズマ処理としては、特に限定されず、例えば、アッシング処理、エッチング処理、親水処理、撥水処理などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のプラズマ処理装置の第1実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明のプラズマ処理装置の第2実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明のプラズマ処理装置の第3実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図4】従来の平行平板型の大気圧プラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1、18、30、40……プラズマ処理装置 2、42……上部電極 3、43……下部電極 4、5……ガス供給管 6、8……導線 7……高周波電源 9……搬送ローラ 10、41……コロコンベア 11……吸引口 12、13……ガス排出管 14……噴出孔 15、16……エアカーテン生成部 20……回収孔 23、24……開口 25、28……排気ポンプ 26、29……エアタンク 27……ヒータ 44a、44b……ガス導入管 45a、45b……ガス排気管 AS……エアカーテン E……高周波電界 h1、h2……距離 S……処理空間 S1、S2……空間 W……被処理体 W1、W2……表面 G1……処理ガス GS……拡散防止用ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に向けて処理ガスを噴出する開口を有する処理ガス噴出部と、前記処理ガスを活性化させてプラズマが発生するように電界を発生させる一対の電極とを備えたプラズマ処理装置であって、
拡散防止用ガスを噴出することにより、前記被処理体におけるプラズマ処理される被処理部分を気流で囲んで、プラズマが拡散するのを防止する拡散防止用ガス噴出部を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記噴出された拡散防止用ガスを回収する拡散防止用ガス回収手段を備えた請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記噴出された処理ガスを回収する処理ガス回収手段を備えた請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記回収された処理ガスは、プラズマ処理に再利用される請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記噴出された処理ガスの噴出量は、前記回収された処理ガスの吸引量よりも多い請求項3または4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記拡散防止用ガスを加熱する加熱手段を備えた請求項1ないし5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記拡散防止用ガスは、不活性ガスである請求項1ないし6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記一対の電極は、前記被処理体を介して、互いに対向して配置される請求項1ないし7のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記一対の電極における互いに対向する面には、それぞれ、前記処理ガス噴出部の開口が設けられている請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載のプラズマ処理装置を用いて、前記被処理体をプラズマ処理する方法であって、
前記被処理体を設置し、
次に、前記拡散防止用ガス噴出部から前記拡散防止用ガスを噴出した状態で、前記処理ガス噴出部の開口から前記被処理体に向けて前記処理ガスを噴出しつつ、前記一対の電極間に電界を生じさせて、プラズマを発生させ、該発生したプラズマにより前記被処理体を処理することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項11】
被処理体に向けて処理ガスを噴出する開口を有する処理ガス噴出部と、前記処理ガスを活性化させてプラズマが発生するように電界を発生させる一対の電極との近傍を前記被処理体を通過させて、該被処理体をプラズマ処理するに際し、
拡散防止用ガスを噴出して、プラズマが拡散するのを防止した状態で、前記被処理体を処理することを特徴とするプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−5315(P2006−5315A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182969(P2004−182969)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】