説明

プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法

【課題】被処理物の外側に位置する保護部の交換頻度を少なくするため、保護部の長寿命化を図るプラズマ処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】内部を真空とすることが可能な処理室1に、被処理物Sを載置する載置部3と、ガスを供給するためのガス供給部2とを備えたプラズマ処理装置において、載置部3は、被処理物Sの外周側に配置されたマスクリング33を有し、ガス供給部2は、被処理物Sの上部に位置し、プラズマ処理用のガスを供給する中心側開口部22a、中間開口部22bと、マスクリング33の上部若しくは外側に位置し、マスクリング33に堆積物を生じさせるガスを供給する外周側開口部22cとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、処理室内に反応ガスを導入し、電極間の放電により発生したプラズマによって、被処理物のエッチングやアッシングを行うためのプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理物に対するエッチングやアッシングを行う装置として、プラズマ処理装置が広く用いられている。例えば、高周波プラズマ処理装置は、真空とすることが可能な処理室内に設けられたテーブルを一方の電極とし、これに対向して他方の電極を設け、処理室内に反応ガスを導入して、高周波電源からの電圧を電極に印加することによりプラズマを発生させ、テーブルに載置した被処理物に対して、所望の処理を行う装置である。
【0003】
かかる高周波プラズマ処理装置の一例として、特許文献1には、基板側に直接プラズマを生成せずに、処理室に連通したプラズマ発生室においてプラズマを生成し、そこで生じたイオンやラジカルを処理室内に導入して、エッチングやアッシングを行うプラズマ処理装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−142462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなプラズマ処理装置においては、被処理物が載置されるテーブルの載置面は、被処理物よりも大きいので、被処理物の外側の部分をエッチングやアッシングから保護する必要がある。このため、被処理物の外周側には、テーブルの載置面を覆うマスクリングが配置されているのが一般的である。
【0005】
しかし、エッチングやアッシングを行い続けると、マスクリング自体も劣化していく。例えば、絶縁膜系エッチング装置において、CF系やCHF系を含んだガス系で、半導体ウェーハをエッチング処理した場合、半導体ウェーハの外側に設置されたマスクリングも同様にエッチングされる。
【0006】
このため、処理を継続して行うに従って、マスクリングの厚さが徐々に減少し、例えば、エッチングレートの増減や、半導体ウェーハ面内でのレートの均一性が悪化するといった、エッチング特性の変化を引き起こす可能性がある。
【0007】
このエッチング特性の変化を回避するため、従来は、定期的にマスクリングの交換を行っていた。しかし、ハイレートな処理を行った場合、マスクリングの交換頻度が増えるため、メンテナンス増加、消耗品交換のためのコスト(COC:Cost Of Consumable)の増加などの問題が生じる。
【0008】
特許文献1では、パーティクルによる汚染を防止するため、その発生源となるマスクリングを、耐熱性樹脂で形成したり、耐熱性樹脂で覆うことが提案されている。しかし、かかる場合でも、エッチングやアッシングによって耐熱性樹脂が削れていくため、マスクリングの交換が必要となることに変わりはない。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、被処理物の外側に位置する保護部の交換頻度を少なくするため、保護部の長寿命化を図るプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するため、請求項1の発明は、内部を真空とすることが可能な処理室に、被処理物を載置する載置部と、ガスを供給するためのガス供給部とを備えたプラズマ処理装置において、前記載置部は、被処理物の外周側に配置された保護部を有し、前記ガス供給部は、前記被処理物の上部に位置し、プラズマ処理用のガスを供給する内側開口部と、前記マスク部の上部若しくは外側に位置し、前記保護部に堆積物を生じさせるガスを供給する外側開口部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、内部を真空とすることが可能な処理室内に、ガス供給部からガスを供給し、発生するプラズマによって、載置部に載置された被処理物に対する処理を行うプラズマ処理方法において、前記ガス供給部は、前記被処理物にプラズマ処理用のガスを供給し、前記被処理物の外周側に配置された保護部に堆積物を生じさせるガスを供給することを特徴とする。
【0012】
以上のような請求項1及び4の発明では、被処理物に対するプラズマ処理中に、被処理物の外周側の保護部に堆積物を堆積させることができるので、保護部のプラズマ処理による劣化が抑制され、保護部の長寿命化が可能となる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1のプラズマ処理装置において、前記ガス供給部は、前記外側開口部に、低F/C比ガスを供給するガス供給手段を有することを特徴とする。
【0014】
以上のような請求項2の発明では、F/C比の低いガスは、ポリマーが堆積しやすいので、このポリマーによって保護部のプラズマ処理による劣化が抑制される。
【0015】
請求項3の発明は、前記ガス供給部は、前記外側開口部に、Hガスを供給するガス供給手段を有することを特徴とする。
【0016】
以上のような請求項3の発明では、Hガスは、保護部の材質がSiの場合に、酸素による酸化がなく、ポリマーにより保護部の処理が抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被処理物の外側に位置する保護部の交換頻度を少なくするため、保護部品の長寿命化を図るプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態(以下、実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[実施形態の構成]
本発明の第1の実施形態の構成を、図1〜図3を参照して説明する。本実施形態は、図1に示すように、処理室1、ガス供給部2、載置部3、電源部4等を有している。
【0019】
処理室1は、図示しない真空源に接続され、内部を真空とすることが可能なチャンバである。処理室1の側面には、排気ポート11(排気部)が設けられ、図示しないポンプに接続されることにより、ガスを排気可能に設けられている。また、処理室1には、載置部3の周囲に、排気ポート11への排気の制御用の整流板12及びシャッタ13が設けられている。
【0020】
ガス供給部2は、図2に示すように、上部電極21、ガスノズル22、マスフローコントローラ23,24、ニードルバルブ25,26,27を有している。上部電極21は、処理室1の上部に取り付けられ、被処理物Sの上部に対応する中心側ガス流路21a及び中間ガス流路21bと、後述するマスクリング33に対応する外周側ガス流路21cが設けられている。
【0021】
中心側ガス流路21a及び中間ガス流路21bは、図示しない第1のガス供給源に、マスフローコントローラ23を介して、配管により接続されている。配管は、マスフローコントローラ23から中心側ガス流路21a及び中間ガス流路21bへと分岐しており、それぞれの配管にはニードルバルブ25,26が設けられている。第1のガス供給源から供給されるガスとしては、例えば、被処理物Sとして絶縁膜ウェーハをエッチングする場合には、メインエッチングガスとして、CFやC等のフルオロカーボンガスと、Ar等の希釈ガスとすることが考えられるが、これには限定されない。
【0022】
外周側ガス流路21cは、図示しない第2のガス供給源に、マスフローコントローラ24を介して、配管により接続されている。配管には、ニードルバルブ27が設けられている。第2のガス供給源から供給されるガスとしては、C、C、C等のF/C比(フッ素原子数と炭素原子数の比)の低いガス、若しくはHガス等とすることが考えられるが、これには限定されない。なお、これらの外周側ガス流路21c、第2のガス供給源、マスフローコントローラ24、ニードルバルブ27、配管等によって、請求項のガス供給手段が構成されている。
【0023】
ガスノズル22は、上部電極21の下部に取り付けられ、載置部3に対向する平板状の部材である。このガスノズル22には、内側開口部として、上部電極21の中心側ガス流路21aに対応する中心側開口部22a、中間ガス流路21bに対応する中間開口部22bが設けられている。また、ガスノズル22には、外周側ガス流路21cに対応する外側開口部22cが設けられている。これらの開口部は、リング状に連続していてもよいし、断続的に形成されていてもよい。
【0024】
載置部3は、図3に示すように、下部電極31、静電チャック32、マスクリング33、マスクベース34、絶縁リング35を有している。下部電極31は、後述する電源部4に接続された電極であり、被処理物Sを支持するテーブル(台)を構成している。図示しない上部電極は接地されており、電力が印加された下部電極31との間に電界を作り、プロセスガスをプラズマ化する。静電チャック32は、被処理物Sを下部電極31に保持する手段である。
【0025】
マスクリング33は、下部電極31に載置された被処理物Sの外周側に配置され、静電チャック32、下部電極31等を覆って、プラズマ処理から保護し、処理プロセスを最適化するための保護部である。マスクリング33の材質としては、例えば、SiやSiOが挙げられるが、これには限定されない。マスクベース34は、マスクリング33を静電チャック32側に取り付けるための取り付け部材である。さらに、絶縁リング35は、下部電極31、静電チャック32及びマスクリング33の周囲に設けられ、他部材との絶縁を確保する部材である。
【0026】
電源部4は、図1に示すように、高周波電源41、マッチング回路42及びブロッキングコンデンサ43を有している。高周波電源41は、下部電極31に接続され、接地されている上部電極との間にプラズマ発生用の電圧を印加するための電源である。マッチング回路42はインピーダンス整合用に、ブロッキングコンデンサ43はバイアス電圧等の不要な直流成分等のブロック用に挿入されている。
【0027】
上記のポンプ、第1及び第2のガス供給源、マスフローコントローラ23,24、ニードルバルブ25,26,27、静電チャック32、電源部4等は、図示しない制御装置によって制御される。この制御装置は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。従って、以下に説明する手順で本装置の動作を制御するためのコンピュータプログラム及びこれを記録した記録媒体も、本発明の一態様である。
【0028】
[実施形態の作用]
以上のような本実施形態の作用は、次の通りである。なお、以下の説明は、本実施形態を、エッチング装置として構成した場合の一例である。まず、上部電極21の中心側ガス流路21a、中間ガス流路21b及び外周側ガス流路21cと、これに対応するガスノズル22の中心側開口部22a、中間ガスノズル22b及び外周側ガスノズル22cによって、ガス供給経路は、3つの領域(図2中、点線で囲まれたA、B及びCの領域)に区切られている。
【0029】
A領域とB領域は、同一のマスフローコントローラ23でガス流量を制御し、A,Bの2つの領域に流すガスの流量比は、ニードルバルブ25,26で制御する。Cの領域は、上記のA,Bの領域とは独立した、マスフローコントローラ24、ニードルバルブ27によって、ガス流量を制御する。また、外側開口部22cは、被処理物Sよりも外側で、マスクリング33の上部付近に位置している。なお、外側開口部22cを、マスクリング33より外側に対向配置し、マスクリング33に向けて堆積物を生成するガスを供給するようにしてもよい。
【0030】
ここで、被処理物Sとして、絶縁膜ウェーハをエッチングする場合、上記のメインエッチングガスを、A領域及びB領域から供給する。そして、高周波電源41より電力を供給し、プラズマを生成、被処理物Sをエッチング処理する。
【0031】
例えば、被処理物Sが酸化膜であった場合、プラズマ中のCFラジカルとFラジカルが、被処理物S上に堆積し、Arイオンのイオン衝撃によるイオンエネルギーと化学反応によりエッチングが進行する。この時、もし、C領域からガスを供給しない場合、マスクリング33上にも、A領域ほどではないが、CF、Fラジカルが堆積し、エッチングされてしまう。
【0032】
そこで、本実施形態では、A,B領域からのメインエッチングガスの供給とともに、C領域から、上記のF/C比の低いガスを供給する。F/C比の低いフルオロカーボンガスは、(CFポリマーデポが堆積しやすい。このため、被処理物Sのエッチングが進行するとともに、マスクリング33上に(CHのポリマーデポが堆積する。
【0033】
なお、F/C比の低いガスの供給タイミングに関してであるが、通常のエッチングに先立ってF/C比の低いガスをC領域より供給させることで、ポリマーデポをマスクリング33に堆積させ、エッチング中はそのガスの供給を止めておくようにしても良い。ただし、この場合、エッチング速度の速い条件で処理を行うと、エッチング処理前にマスクリング33に堆積させておいたポリマーデポがエッチング処理中に損失してしまうことも考えられる。従って、エッチング処理中にわたってF/C比の低いガスを供給し続け、ポリマーデポをマスクリング33に堆積させるようにした方が好ましい。
【0034】
また、マスクリング33の材質がSiの場合、C領域から、Hガスを供給してもよい。Hガスは還元性があるため、プラズマ中のCFと反応し、マスクリング33上に(CHのポリマーデポが堆積する。マスクリング33の材質がSiであるならば、酸素による酸化がなく、マスクリング33のエッチングを抑制することができる。
【0035】
さらに、排気ポート11からガスを排気すると、被処理物Sの中心側から外周側へと向かう気流が生じるので、C領域から供給されるF/C比の低いガスやHは、被処理物S側へ流れて、エッチングが阻害されることが防止される。
【0036】
また、F/C比の低いガスやHガスは、シャッタ13によって処理室1の内壁から遮断されるため、ポリマーデポが内壁に付着することもない。それと同時に、処理室1の内壁は、絶縁体で覆ったシャッタ13によってプラズマによるダメージから保護される。
【0037】
[実施形態の効果]
以上のような本実施形態によれば、メインエッチングガスの供給とは別に、マスクリング33上部付近のC領域の外周側開口部22cより、F/C比の低いガスや、Hガスなどを供給することによって、マスクリング33上にポリマーデポを意図的に堆積させ、マスクリング33のエッチング等を抑制し、長寿命化を図ることができる。これにより、メンテナンスの容易化、コスト低減を実現できる。
【0038】
[他の実施形態]
本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。例えば、上部電極やガスノズルに形成する穴の大きさ、数、形状及び位置は、上記の実施形態で例示したものには限定されない。例えば、上記の実施形態では、A領域とB領域の配管経路を別にして、それぞれの領域に供給されるガスの供給量を変えられるようにしたが、供給経路を共通化してもよい。なお、前者のようにすると、被処理物の中心側と外周側とでガスの供給量を変えて、処理の均一性を図ることが可能となる。ただし、本発明の効果を得るためには、少なくとも、保護部と被処理物とで、異なるガスを供給できるように構成されていればよい。ガスの種類や流量を制御する手段や配管構成も、上記の実施形態で例示したものには限定されない。保護部の形状、材質も、上記のマスクリングには限定されない。
【0039】
また、本発明は、エッチング装置、アッシング装置等を含むプラズマ処理装置として広く適用可能であり、処理対象となる被処理物も自由である。したがって、供給するガスも、上記の実施形態で例示したものには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態の概略を示す縦断面図である。
【図2】図1のガス供給部周辺の概略を示す拡大断面図である。
【図3】図1の載置部周辺の概略を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…処理室
2…ガス供給部
3…載置部
4…電源部
11…排気ポート
12…整流板
21…上部電極
21a…中心側ガス流路
21b…中間ガス流路
21c…外周側ガス流路
22…ガスノズル
22a…中心側開口部
22b…中間開口部
22c…外周側開口部
23,24…マスフローコントローラ
25,26,27…ニードルバルブ
31…下部電極
32…静電チャック
33…マスクリング
34…マスクベース
35…絶縁リング
41…高周波電源
42…マッチング回路
43…ブロッキングコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を真空とすることが可能な処理室に、被処理物を載置する載置部と、ガスを供給するためのガス供給部とを備えたプラズマ処理装置において、
前記載置部は、載置される被処理物の外周側に配置された保護部を有し、
前記ガス供給部は、
前記被処理物の上部に位置し、プラズマ処理用のガスを供給する内側開口部と、
前記保護部の上部若しくは外側に位置し、前記保護部に堆積物を生じさせるガスを前記保護部に向けて供給する外側開口部と、
を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ガス供給部は、前記外側開口部に、低F/C比ガスを供給するガス供給手段を有することを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ガス供給部は、前記外側開口部に、Hガスを供給するガス供給手段を有することを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
内部を真空とすることが可能な処理室内に、ガス供給部からガスを供給し、発生するプラズマによって、載置部に載置された被処理物に対する処理を行うプラズマ処理方法において、
前記ガス供給部は、前記被処理物に向けてプラズマ処理用のガスを供給し、前記被処理物の外周側に配置された保護部に堆積物を生じさせるガスを供給することを特徴とするプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−123812(P2010−123812A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297327(P2008−297327)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】