説明

プリプレグ、積層板、プリント配線板、および半導体装置

【課題】ガラス繊維基材中のボイドの発生を大幅に低減でき、信頼性の高いプリント配線板や半導体装置を形成可能なプリプレグ、積層板、並びに、これらを用いたプリント配線板、及び、半導体装置を提供する。
【解決手段】ガラス繊維基材(A)に熱硬化性樹脂組成物(B)を含浸させてなるプリプレグであって、前記ガラス繊維基材(A)のガラス繊維表面に平均粒径が500nm以下の無機微粒子が付着していることを特徴とする、プリプレグである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、積層板、プリント配線板、および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、更には高密度実装化等が進んでいる。そのため、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して、小型化かつ高密度化が進んでいる。このプリント配線板の絶縁材料としては、ガラス織布等のガラス繊維基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて得られるプリプレグを積層して加熱加圧硬化させた積層板が広く使用されているが、高密度化に伴い絶縁信頼性低下の問題が顕在化してきている。
【0003】
また近年、プリント配線板上への部品実装が高密度化しているため、プリント配線板の基板材料に要求される諸特性の中でも、低線膨張化、高剛性化、高耐熱化が特に要求されるようになった。
半導体素子は、熱膨張率が3〜6ppm/℃であり、一般的な半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板の熱膨張率より小さい。そのため半導体プラスチックパッケージに熱衝撃が加わったときに、半導体素子と半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板の熱膨張率差により、半導体プラスチックパッケージに反りが発生し、半導体素子と半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板間や、半導体プラスチックパッケージと実装されるプリント配線板間で接続不良が生じることがある。反りを小さくして接続信頼性確保するためには、熱膨張率が小さい積層板の開発が必要である。また、プリント配線板は、部品や他の基板との接続および部品の実装等に適するように、部分的あるいは全体的に高剛性も要求される。また、電気・電子部品の信頼性という面からはプリプレグの耐熱性が要求されている。
【0004】
低線膨張化、高剛性化、高耐熱化のためには、ガラス織布を高密度化すること(例えば、特許文献1)や、樹脂組成物中の充填材量を高くすること(例えば、特許文献2)などが試みられている。
【0005】
しかしながら、ガラス織布を高密度化すると、バスケットホールと呼ばれる経糸と緯糸により囲まれたガラス繊維糸のない部分の面積が小さくなる。そのため、樹脂や充填材のガラス織布への含浸性が悪くなり、ガラス織布中に樹脂や充填材が含浸しないボイド(空隙)が発生し、絶縁信頼性が低下する問題が発生したり、成形できない問題が発生している。特に、高密度化されたガラス織布は充填材の含浸性が悪化する。そのため、高密度化したガラス織布に、高い充填材量の樹脂組成物をボイドを発生させることなく含浸させることはできなかった。従って、プリント配線板の基板材料において、低線膨張化、高剛性化、及び高耐熱化がいまだ不十分であり、また、半導体装置における信頼性も不十分であった。ガラス織布に樹脂組成物の含浸性を高める試みとしては、ガラス織布にシランカップリング剤で表面処理を行ったり、物理加工を施すことが試みられている(特許文献3)。しかしながら、このような表面処理や物理加工では、ガラス織布中に充填材を十分に含浸させ、ボイド(空隙)の発生率を低減するには不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−192521号公報
【特許文献2】特開2007−224269号公報
【特許文献3】特開2009−173765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ガラス繊維基材中のボイドの発生を大幅に低減でき、信頼性の高いプリント配線板や半導体装置を形成可能なプリプレグ、積層板、並びに、これらを用いたプリント配線板、及び、半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明[1]〜[12]により達成される。
[1] ガラス繊維基材(A)に熱硬化性樹脂組成物(B)を含浸させてなるプリプレグであって、前記ガラス繊維基材(A)のガラス繊維表面に平均粒径が500nm以下の無機微粒子が付着していることを特徴とする、プリプレグ。
[2] 前記ガラス繊維基材(A)における前記無機微粒子が、シリカ微粒子であることを特徴とする[1]項に記載のプリプレグ。
[3] 前記ガラス繊維基材(A)の厚みが150μm以下であることを特徴とする[1]項又は[2]項に記載のプリプレグ。
[4] 前記ガラス繊維基材(A)は、ガラス繊維表面が、前記無機微粒子が分散された処理液により処理されてなることを特徴とする[1]〜[3]項のいずれかに記載のプリプレグ。
[5] 前記熱硬化性樹脂組成物(B)に、無機充填材を含むことを特徴とする[1]〜[4]項のいずれかに記載のプリプレグ。
[6] 前記熱硬化性樹脂組成物(B)に、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする[1]〜[5]項のいずれかに記載のプリプレグ。
[7] 前記熱硬化性樹脂組成物(B)に、シアネート樹脂を含むことを特徴とする[1]〜[6]項のいずれかに記載のプリプレグ。
[8] 前記熱硬化性樹脂組成物(B)中に含まれる無機充填材は平均粒径が0.1μm〜5.0μmであることを特徴とする[1]〜[7]項のいずれかに記載のプリプレグ。
[9] 前記[1]〜[8]項のいずれかに記載のプリプレグを、硬化して得られることを特徴とする積層板。
[10] 前記プリプレグの少なくとも一方の外側の面に導体層が設置されてなることを特徴とする、[9]項に記載の積層板。
[11] 前記[9]項又は[10]項に記載の積層板を用いて、配線加工を施してなることを特徴とする、プリント配線板。
[12] 前記[11]項に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする、半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガラス繊維基材(A)に熱硬化性樹脂組成物(B)を含浸させてなるプリプレグであって、前記ガラス繊維基材(A)のガラス繊維表面に平均粒径が500nm以下の無機微粒子が付着しているプリプレグとしたことにより、ガラス繊維基材が高密度であってもガラス繊維基材中のボイドの発生を大幅に低減でき、信頼性の高いプリント配線板や半導体装置を製造することができるという効果を奏する。
また、本発明によれば、更なるガラス繊維基材の高密度化や熱硬化性樹脂組成物中の高充填材量化を達成可能となり、低線膨張化、高剛性化、及び高耐熱化を実現した積層板を得ることが可能になり、半導体装置の信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例4に用いられた、平均粒径が100nmの無機微粒子が付着したガラス繊維基材の表面のSEM写真である。
【図2】比較例4に用いられた、ガラス繊維表面に付着していないガラス繊維基材の表面のSEM写真である。
【図3】実施例4の銅張積層板の断面観察のSEM写真である。
【図4】比較例4の銅張積層板の断面観察のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のプリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体装置について詳細に説明する。
【0012】
本発明のプリプレグは、ガラス繊維基材(A)に熱硬化性樹脂組成物(B)を含浸させてなるプリプレグであって、前記ガラス繊維基材(A)のガラス繊維表面に平均粒径が500nm以下の無機微粒子が付着していることを特徴とする。
【0013】
なお、前記「付着」とは、前記ガラス繊維基材(A)を有機溶剤中に浸漬させても、剥離しない程度に、前記無機微粒子がガラス繊維表面に固定していることをいう。「付着」には、カップリング剤や樹脂等を介して前記無機微粒子がガラス繊維表面に付着している場合が含まれる。含浸させる熱硬化性樹脂組成物(B)に用いられる有機溶剤に前記ガラス繊維基材(A)を浸漬させても剥離しない程度に、前記無機微粒子がガラス繊維表面に固定していれば良い。
【0014】
本発明のプリプレグは、前記ガラス繊維基材(A)のガラス繊維表面に平均粒径が500nm以下の無機微粒子が付着していることにより、ガラス繊維基材が高密度であってもガラス繊維基材中に熱硬化性樹脂組成物が含浸しやすくなり、ガラス繊維基材中のボイドの発生を大幅に低減できる。これは、通常μmオーダーの繊維径のガラス繊維表面に、平均粒径が500nm以下の無機微粒子が付着していることにより、各ガラス繊維間に適度なスペースが設けられ、樹脂だけでなく充填材も含浸性が向上するからではないかと推定される。本発明によればガラス繊維基材中のボイドの発生を大幅に低減できるため、信頼性の高いプリント配線板や半導体装置を製造することができる
また、本発明によれば、高密度化されたガラス繊維基材であっても、熱硬化性樹脂組成物中の充填材量を高くしても、ガラス繊維基材中のボイドの発生を低減可能なため、低線膨張化、高剛性化、及び高耐熱化を実現した積層板を得ることが可能になり、半導体装置の信頼性を高くすることができる。
【0015】
本発明で用いるガラス繊維基材(A)としては、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等が挙げられる。これにより、プリプレグの強度が上がり、また低吸水化することができる。また、プリプレグの線膨張係数を小さくすることができる。
【0016】
ガラス繊維におけるガラス材質としては、Eガラス、Dガラス、Qガラス、Sガラス、NEガラス、Tガラス等が挙げられる。中でもTガラスを用いると、これにより、ガラス繊維基材の高弾性化を達成することができ、熱膨張係数も小さいプリプレグを実現することができる。また、Tガラスは、後述する熱硬化性樹脂組成物(B)においてシアネート樹脂を含む場合に、特に親和性が良好になり、より優れた低膨張性、高弾性率(高剛性)を達成可能になる。ここでいうTガラスの組成は、SiO2 :64〜66重量%、Al23 :24〜26重量%、MgO:9〜11重量%である。
【0017】
また、ガラス繊維としては、平均繊維径が2.5〜9.0μmの範囲のガラスフィラメントからなるガラス繊維が好ましい。
ガラス織布としては、5〜500TEX(好ましくは22〜68TEX)のガラス繊維束を経糸及び緯糸として用い、織物としたものが挙げられる。ガラス織布の織り密度は縦糸及び横糸共に10〜200本/25mmが好ましく、更に15〜100本/25mm、より更に好ましくは15〜80本/25mmの範囲が挙げられる。織り構造については平織り構造が好ましいが、ななこ織り、朱子織り、綾織り、等の織り構造を有するガラス織布でもよい。
また、ガラス繊維基材の質量は5〜400g/m2 、好ましくは10〜300g/m2 の範囲であることが好ましい。
【0018】
本発明で用いるガラス繊維基材(A)は厚みが150μm以下であることが、含浸性の点から好ましい。
【0019】
また、ガラス繊維表面に付着している平均粒径が500nm以下の無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム等の微粒子を用いることができる。中でも、シリカ微粒子が、低膨張性の点から、好ましい。シリカ微粒子としては、例えば燃焼法などの乾式の溶融シリカや沈降法やゲル法などの湿式のゾルゲルシリカ等を用いることができる。中でもコロイド状シリカを用いることが好ましい。コロイド状シリカを用いると、ガラス繊維表面にコロイド状シリカが、均一に付着する点で好ましい。
【0020】
ガラス繊維表面に付着している無機微粒子の平均粒径は500nm以下であるが、中でも10〜300nmであることが好ましく、更に40〜150nmであることが、含浸性の点から好ましい。上記平均粒径が、10nm未満では、フィラメント間を広げる効果が小さく、含浸性が向上しない場合がある。また上記平均粒径が500nmより大きいとフィラメント間に入ることが難しく、作業性が低下する場合がある。
なお、本発明における平均粒径は、D50で規定され、レーザー回折散乱法により測定することができる。具体的には、無機微粒子を水中で超音波により分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA製、LA−500)により、無機微粒子の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。
【0021】
ガラス繊維基材の表面は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていても良い。表面処理剤は含浸させる熱硬化性樹脂との反応性を考慮して、適宜選択することが好ましい。例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等の不飽和二重結合を有するシランカップリング剤;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤が例示できる。
【0022】
また、ガラス繊維基材の表面は、剛性を向上させる点から、水溶性ポリウレタン等により表面処理されていてもよい。水溶性ポリウレタンとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、水溶性のポリオキシアルキレンポリオールとを反応させて得られた化合物が挙げられる。
【0023】
ガラス繊維表面に平均粒径が500nm以下の無機微粒子が付着しているガラス繊維基材を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、水や有機溶剤等の溶媒に、少なくとも平均粒径が500nm以下の無機微粒子が分散された処理液を用いて、ガラス繊維表面に塗布する等の処理を行う方法が挙げられる。上記無機微粒子が分散された処理液としては、コロイド状シリカ含有液が好適に用いられる。当該処理液には、上記のような表面処理剤や樹脂を混合しても良い。
【0024】
処理液をガラス繊維表面に塗布する方法としては、ガラス繊維基材を処理液に浸漬する方法、各種コーター装置により塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維基材を処理液に浸漬する方法が好ましい。これにより、ガラス繊維基材に対する処理液の含浸性を向上させることができる。ガラス繊維基材を処理液に浸漬する際に超音波振動を作用させることも好ましい。また、ガラス繊維基材に処理液を塗布した後、溶媒を乾燥させる方法としては、熱風、電磁波等公知の方法が適用可能である。溶媒乾燥後に、該ガラス繊維基材にさらに上記のような表面処理剤や樹脂を塗布しても良い。
【0025】
ガラス繊維基材への表面処理は、製織に必要な集束剤を除去した段階で、公知の表面処理法で上記表面処理剤を表面処理すれば良い。また、柱状流等の高圧水流、または水中での高周波振動法による超音波等によってガラス繊維基材へ開繊加工を施しても良い。
【0026】
ガラス繊維基材(A)において、ガラス繊維表面に平均粒径が500nm以下の無機微粒子が付着している量としては、ガラス繊維基材(A)100重量部に対して、平均粒径が500nm以下の無機微粒子が1.0×10−3〜5.0×10−2重量部であることが好ましく、更に1.0×10−2〜4.0×10−2重量部であることが、ガラス繊維基材中のボイドの発生を低減し、成形性の点から、好ましい。
【0027】
次に、本発明で用いられる熱硬化性樹脂組成物(B)を説明する。
熱硬化性樹脂組成物(B)には、少なくとも熱硬化性樹脂が含まれる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ポリエステル樹脂またはシアネート樹脂などが挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂および/またはシアネート樹脂が好ましい。エポキシ樹脂および/またはシアネート樹脂を用いる場合には、線膨張が小さくなり、耐熱性が著しく向上するからである。また、エポキシ樹脂および/またはシアネート樹脂を高充填量の充填材と組み合わせると、耐熱性、耐衝撃性、高剛性に優れるというメリットがある。耐熱性が高く線膨張係数が低いエポキシ樹脂及び/又はシアネート樹脂は、粘度が高いためにガラス繊維基材に含浸し難いが、本願の上記ガラス繊維基材(A)を用いると、このような粘度が高い樹脂も良好に含浸できる。本願によれば、上記ガラス繊維基材(A)と、耐熱性が高く線膨張係数が低いエポキシ樹脂及び/又はシアネート樹脂と、高充填量の充填材との組み合わせが実現できることにより、低線膨張係数で耐熱性、耐衝撃性、高剛性に優れたプリプレグを得ることが可能になる。
【0028】
前記エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの2重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。
【0029】
本発明でアラルキル変性エポキシ樹脂は、難燃性、低吸水化、半田耐熱性の点から好適に用いられる。アラルキル変性エポキシ樹脂は、例えば、下記式(1)で表わされるエポキシ樹脂が挙げられる。具体的には、フェノールアラルキルエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂、ナフタレンアラルキルエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0030】
【化1】

(式中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の単環あるいは多環の芳香族炭化水素が置換基になったアリール基を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基、アリール基を示し、mは1〜5までの整数を示し、nは1から50までの整数を示す。)
【0031】
これらの中でもビフェニルアラルキルエポキシ樹脂及び/又はフェノールアラルキルエポキシ樹脂が難燃性の点で好ましく用いられる。前記アラルキル変性エポキシ樹脂は、特に限定されないが、樹脂組成物(B)の全固形分中に、5〜50重量%、特に20〜50重量%が低吸水化、半田耐熱性の点から好ましい。前記アラルキル変性エポキシ樹脂の中でもビフェニルアラルキルエポキシ樹脂が、エポキシ当量が大きく低吸水化の効果が大きい点で特に好ましい。また、本発明でビフェニルアラルキルエポキシ樹脂及び/又はフェノールアラルキルエポキシ樹脂を用いる場合、その繰り返し単位は2〜7が260℃の半田耐熱性の点で好ましい。また、繰り返し単位が7を超えるとシアネート樹脂を併用する場合に、シアネート樹脂との相溶性が悪化する場合がある。
なお、本発明において固形分とは、溶媒を除くすべての成分を含み、液状の樹脂成分等も固形分に含まれる。
【0032】
本発明で用いるシアネート樹脂は、例えばハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させることにより得ることができる。シアネート樹脂の具体例としては、例えばフェノールノボラック型シアネート樹脂、クレゾールノボラック型シアネート樹脂等のノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールAD型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂等を挙げることができる。
【0033】
これらの中でも特にノボラック型シアネート樹脂を含むことが好ましい。中でも、ノボラック型シアネート樹脂を樹脂組成物(B)の全固形分中に10重量%以上含むことが好ましい。これにより、プリプレグの耐熱性(ガラス転移温度、熱分解温度)を向上できる。またプリプレグの熱膨張係数(特に、プリプレグの厚さ方向の熱膨張係数)を低下することができる。プリプレグの厚さ方向の熱膨張係数が低下すると、多層プリント配線の応力歪みを軽減できる。更に、微細な層間接続部を有する多層プリント配線板においては、その接続信頼性を大幅に向上することができる。
ノボラック型シアネート樹脂の中でも好適なものとしては、下記式(I)で表わされるノボラック型シアネート樹脂が挙げられる。重量平均分子量が2000以上、より好ましくは2,000〜10,000、更に好ましくは2,200〜3,500の式(I)で表わされるノボラック型シアネート樹脂と、重量平均分子量が1500以下、より好ましくは200〜1,300の式(I)で表わされるノボラック型シアネート樹脂とを組み合わせて用いることが好ましい。なお、本発明において重量平均分子量は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で測定した値である。
【0034】
【化2】

【0035】
また、シアネート樹脂としては、下記一般式(II)で表わされるシアネート樹脂も好適に用いられる。下記一般式(II)で表わされるシアネート樹脂は、α−ナフトールあるいはβ−ナフトール等のナフトール類とp−キシリレングリコール、α,α’−ジメトキシ−p−キシレン、1,4−ジ(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものである。一般式(II)のnは10以下であることがさらに望ましい。nが10以下の場合、樹脂粘度が高くならず、基材への含浸性が良好で、積層板としての性能を低下させない傾向がある。また、合成時に分子内重合が起こりにくく、水洗時の分液性が向上し、収量の低下を防止できる傾向がある。
【0036】
【化3】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、nは1以上の整数を示す。)
【0037】
また、熱硬化性樹脂組成物には硬化剤を併用しても良い。例えば、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂やシアネート樹脂であれば、フェノール樹脂やエポキシ樹脂やシアネート樹脂の硬化促進剤を用いることができる。前記フェノール樹脂は、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、アリールアルキレン型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。上記フェノール樹脂としては、フェノールノボラック又はクレゾールノボラック樹脂が好ましい。中でも、ビフェニルアラルキル変性フェノールノボラック樹脂が、吸湿半田耐熱性の点から好ましい。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上のフェノール樹脂と、それらのフェノール反応物を併用したりすることもできる。
【0038】
前記硬化促進剤は、特に限定されないが、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、1−ベンジルー2−メチルイミダゾール、1−ベンジルー2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチルー2−エチルー4−メチルイミダゾール、1−シアノエチルー2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾール、2,3−ジヒドロー1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸、オニウム塩化合物等またはこの混合物が挙げられる。これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
これらの硬化促進剤の中でも、ワニス保存性が良好になりプリプレグの生産時の歩留まりが向上する点からオニウム塩化合物が好ましい。
【0039】
前記オニウム塩化合物は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)で表されるオニウム塩化合物を用いることができる。
【0040】
【化4】

(式中、Pはリン原子、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。Aは分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、又はその錯アニオンを示す。)
【0041】
前記一般式(2)で表される化合物は、例えば特開2004−231765に記載の方法で合成することができる。一例を挙げると、4,4’−ビスフェノールSとテトラフェニルホスホニウムブロミドとイオン交換水を仕込み、加熱撹拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を滴下。析出する結晶を濾過、水洗、真空乾燥することにより精製して得ることができる。
【0042】
また前記オニウム塩化合物は、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化5】

(式中、Pは、リン原子、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中Xは、置換基YおよびYと結合する有機基である。式中Xは、置換基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYはプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の置換基Y、およびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。 YおよびYはプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の置換基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X1、およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、Y、Y、Y、およびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。Z1は置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を表す。)
【0044】
前記一般式(3)で表される化合物は、例えば特開2007−246671にある方法で合成することができる。一例を挙げると、2,3−ジヒドロキシナフタレンと3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びメタノールを攪拌下で均一溶解し、トリエチルアミンのアセトニトリル溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下する。次いでテトラフェニルホスホニウムブロミドのメタノール溶液をフラスコ内に徐々に滴下し、析出する結晶を濾過、水洗及び真空乾燥することにより精製して得ることができる。
【0045】
また前記オニウム塩化合物は、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0046】
【化6】

(式中、Pはリン原子、Bはホウ素原子、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基、あるいは分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0047】
前記一般式(4)で表される化合物は、例えば、特開2000−246113にある方法で合成することができる。一例を挙げると、ホウ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、メチルセルソルブ及び純水を攪拌下で均一に溶解し、次いで、テトラフェニルホスホニウムブロミドをメタノール/純水混合溶媒に均一に溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下し、析出する結晶を濾過、水洗及び真空乾燥することにより精製して得ることができる。
【0048】
前記オニウム塩化合物の含有量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂、及び/またはシアネート樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物(B)の全固形分に対して0.01〜10重量%であるのが好ましく、より好ましくは、0.1〜5重量%であり、最も好ましくは0.2〜2.5重量%である。これにより、優れた硬化性、流動性及び硬化物特性を発現することができる。
【0049】
また、前記熱硬化性樹脂組成物中には、耐熱性の点から、マレイミド化合物が含まれていてもよい。マレイミド化合物は1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その具体例としては、N−フェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ) −フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、これらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどが挙げられる。
また、前記熱硬化性樹脂組成物中には、金属箔との密着性の点から、ポリアミドイミドが含まれていてもよい。
【0050】
熱硬化性樹脂組成物(B)中の熱硬化性樹脂の量は、その目的に応じて適宜調整されれば良く特に限定されないが、樹脂組成物(B)の全固形分中に、熱硬化性樹脂は10〜90重量%であることが好ましく、更に20〜70重量%、より更に25〜50重量%であることが好ましい。
【0051】
また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び/又はシアネート樹脂を用いる場合には、樹脂組成物(B)の全固形分中に、エポキシ樹脂は5〜50重量%であることが好ましく、更にエポキシ樹脂は5〜25重量%であることが好ましい。また、樹脂組成物(B)の全固形分中に、シアネート樹脂は5〜50重量%であることが好ましく、更にシアネート樹脂は10〜25重量%であることが好ましい。
【0052】
熱硬化性樹脂組成物(B)中には、無機充填材を含有することが、低熱膨張と機械強度の点から好ましい。無機充填材は、特に限定されないが、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH)、「擬」ベーマイトと通常呼ばれるベーマイト(すなわち、Al2O3・xH2O、ここで、x=1から2)、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。
【0053】
これらの中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、シリカ、溶融シリカ、タルク、焼成タルク、アルミナが好ましい。低熱膨張性、および絶縁信頼性の点で特にシリカが好しく、更に好ましくは、球状の溶融シリカである。また、耐燃性の点で、水酸化アルミニウムが好ましい。また、本発明では、無機充填材であっても含浸しやすいガラス繊維基材(A)を用いるため、熱硬化性樹脂組成物(B)中に無機充填材の量を多くすることができる。熱硬化性樹脂組成物(B)中に無機充填材が高濃度の場合、ドリルでスルーホール加工をする際のドリル摩耗性が悪化するが、無機充填材がベーマイトを含む場合にはドリル摩耗性が良好になる点から好ましい。
【0054】
無機充填材の粒径は、特に限定されないが、単分散の無機充填材を用いることもできるし、多分散の無機充填材を用いることができる。さらに単分散及び/または、多分散の無機充填材を1種類または2種類以上併用したりすることもできる。前記無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm〜5.0μmが好ましく、特に0.1μm〜3.0μmが好ましい。無機充填材の粒径が前記下限値未満であると樹脂組成物の粘度が高くなるため、プリプレグ作製時の作業性に影響を与える場合がある。また、前記上限値を超えると、樹脂組成物中で無機充填材の沈降等の現象が起こる場合がある。尚、平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(島津製作所SALD−7000等の一般的な機器)を用いて測定することができる。
【0055】
前記無機充填材の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物(B)の全固形分中に10重量%〜90重量%であることが好ましく、更に30重量%〜80重量%、より更に50重量%〜75重量%であることが好ましい。樹脂組成物中にシアネート樹脂及び/又はそのプレポリマーを含有する場合には、上記無機充填材の含有量は、樹脂組成物の全固形分中に50〜75重量%であることが好ましい。無機充填材含有量が上記上限値を超えると樹脂組成物の流動性が極めて悪くなるため好ましくない場合があり、上記下限値未満であると樹脂組成物からなる絶縁層の強度が十分でなく、好ましくない場合がある。
【0056】
熱硬化性樹脂組成物(B)には、更にカップリング剤を含有しても良い。カップリング剤は、熱硬化性樹脂と無機充填材との界面の濡れ性を向上させることにより、基材に対して樹脂および無機充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良するために配合する。
【0057】
前記カップリング剤は、特に限定されないが、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。これにより、無機充填材の界面との濡れ性を高くすることができ、それによって耐熱性をより向上させることできる。
前記カップリング剤の添加量は、特に限定されないが、無機充填材100重量部に対して0.05〜3重量部が好ましく、特に0.1〜2重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると無機充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると反応に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
【0058】
熱硬化性樹脂組成物(B)には、必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、シリコーンパウダー等の難燃助剤、イオン捕捉剤等の上記成分以外の添加物を添加しても良い。
【0059】
熱硬化性樹脂組成物(B)は、プリプレグの低線膨張化、高剛性化、及び高耐熱化を実現しやすい点から、少なくともエポキシ樹脂、シアネート樹脂、及び無機充填材を含むことが好ましい。中でも、樹脂組成物(B)の固形分中に、エポキシ樹脂を5〜50重量%、シアネート樹脂を5〜50重量%、及び無機充填材を10〜90重量%含むことが好ましく、更に、エポキシ樹脂を5〜25重量%、シアネート樹脂を10〜25重量%、及び無機充填材を30〜80重量%含むことが好ましい。特に、上記エポキシ樹脂としてアラルキル変性エポキシ樹脂と、上記シアネート樹脂としてノボラック型シアネート樹脂とを組み合わせることが好ましい。
【0060】
本発明で得られる熱硬化性樹脂組成物(B)をガラス繊維基材(A)に含浸させる方法には、一般的な含浸塗布設備等を用いることができる。本発明においては、ガラス繊維基材(A)に熱硬化性樹脂組成物(B)を含浸する際には、通常、当該樹脂組成物(B)を溶剤に溶解したワニスの形で使用することが含浸性の点で好ましい。用いられる溶媒は組成に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。本発明の樹脂組成物を溶剤に溶解して得られるワニスを、基材に含浸させ、80〜200℃で乾燥させることによりプリプレグを得ることが出来る。
【0061】
また、プリプレグは、プリプレグを構成する樹脂を加熱硬化させて使用することもできるが、その樹脂が未硬化の状態でも使用することができる。更には、硬化と未硬化との間における任意の半硬化の状態でも使用することができる。具体的には、プリプレグを構成する樹脂が未硬化の状態を維持したまま金属箔を積層し、回路形成することができる。
【0062】
未硬化乃至半硬化のプリプレグ中における樹脂組成物の反応率は、特に限定されないが、反応率30%以下が好ましく、特に反応率0.1〜20%が好ましい。これにより、可撓性に加え、粉の発生を防止することができる。前記反応率は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。すなわち、未反応の樹脂組成物と、プリプレグ中における樹脂組成物の双方についてDSCの反応による発熱ピークの面積を比較することにより、次式(I)により求めることができる。なお、測定は昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下で行うことができる。
反応率(%)=(1−プリプレグ中における樹脂組成物の反応ピークの面積/未反応の樹脂組成物の反応ピーク面積)×100(I)
未反応の樹脂組成物の発熱ピークは、用いられる樹脂組成物からなるワニスを基材に含浸し、40℃で10分風乾後、40℃、1kPaの真空下、1時間で、溶剤を除去したものをサンプルとして用いて測定した。
【0063】
次に、積層板について説明する。
本発明の積層板は、前記本発明に係るプリプレグを硬化して得られることを特徴とする。また、本発明の積層板は、前記本発明に係るプリプレグの少なくとも一方の外側の面に導体層が設置されてなることが好ましい。
導体層としては、金属箔を用いたり、めっきにより形成することができる。前記金属箔は、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金等の金属箔が挙げられる。また、上記のような銅、銅系合金等の導体層をめっきにより形成してもよい。
【0064】
本発明の積層板は、例えば、前記プリプレグを少なくとも1枚、又は複数枚積層した積層体の上下両面に、金属箔を重ね、加熱、加圧することで得ることができる。前記加熱する温度は、特に限定されないが、120〜230℃が好ましく、特に150〜210℃が好ましい。また、前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.5〜5MPaが好ましく、特に1〜3MPaが好ましい。
【0065】
本発明の金属張積層板の別の製造方法としては、特開平8−150683に記載されているような長尺状の基材と長尺状の金属箔を用いる方法を適用することもできる(特開平8−150683の段落0005、0006、図1)。この場合、本発明に係るプリプレグの製造の直後又は製造と同時に、積層板が製造される。この方法による場合は、長尺状の、前記本発明のプリプレグに用いられる上記特定のガラス繊維基材(A)をロール形態に巻き取ったもの、および、長尺状の金属箔をロール形態に巻き取ったもの2つを用意する。そして、2枚の金属箔を別々にロールから送り出し、各々に前記本発明のプリプレグに用いられる上記熱硬化性樹脂組成物(B)を塗布し、絶縁樹脂層を形成する。樹脂組成物を溶剤で希釈して用いる場合には、塗布後、乾燥される。引き続き、2枚の金属箔の絶縁樹脂層側を対向させ、その対向しあう金属箔の間に上記特定のガラス繊維基材(A)を1枚または2枚以上ロールから送り出し、プレスローラーで積層接着する。次いで、連続的に加熱加圧して絶縁樹脂層を半硬化状態とし、冷却後、所定の長さに切断する。この方法によれば、長尺状の基材及び金属箔をライン上に移送しながら、連続的に積層が行われるので、製造途中において、長尺状の半硬化積層体が得られる。切断した半硬化状態の積層板をプレス機により加熱加圧することにより、金属張積層板が得られる。
【0066】
次に、プリント配線板について説明する。
本発明のプリント配線板は、前記本発明に係る積層板を用いて、配線加工を施してなることを特徴とする。プリント配線板は多層プリント配線板であっても良い。
【0067】
多層プリント配線板の製造方法は、特に限定されないが、例えば、前記両面に金属箔を有する積層板を用い、ドリル機で所定の位置に開口部を設け、開口部等を無電解めっきし、内層回路基板の両面の導通を図る。そして、前記金属箔をエッチングすることにより内層回路を形成する。
なお、内層回路部分は、黒化処理等の粗化処理したものを好適に用いることができる。また開口部は、導体ペースト、または樹脂ペーストで適宜埋めることができる。
【0068】
次に前記本発明のプリプレグ、または熱可塑性樹脂フィルム上に絶縁樹脂層を形成した絶縁樹脂シートを用い、前記内層回路を覆うように、積層し、絶縁樹脂層を形成する。積層(ラミネート)方法は、特に限定されないが、真空プレス、常圧ラミネーター、および真空下で加熱加圧するラミネーターを用いて積層する方法が好ましく、更に好ましくは、真空下で加熱加圧するラミネーターを用いる方法である。その後、前記絶縁樹脂層を加熱することにより硬化させる。硬化させる温度は、特に限定されないが、例えば、100℃〜250℃の範囲で硬化させることができる。好ましくは150℃〜200℃で硬化させることである。
【0069】
次に積層した絶縁樹脂層に、レーザーを照射して、開口部を形成し、レーザー照射後の樹脂残渣等は過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより除去することが好ましい。また、平滑な絶縁樹脂層の表面を同時に粗化することができ、続く金属メッキにより形成する外層回路の密着性を上げることができる。
次に、絶縁樹脂層に、炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁樹脂層表面に外層回路形成を行い、外層回路と内層回路との導通を図る。なお、外層回路は、半導体素子を実装するための接続用電極部を設ける。
【0070】
その後、最外層にソルダーレジストを形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させ、接続用電極部にニッケル金メッキ処理を施し、所定の大きさに切断し、多層プリント配線板を得ることができる。
【0071】
次に、半導体装置について説明する。
本発明の半導体装置は、前記本発明に係るプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする。
前記本発明に係るプリント配線板に半田バンプを有する半導体素子を実装し、半田バンプを介して、前記プリント配線板と半導体素子とを接続する。そして、プリント配線板と半導体素子との間には液状封止樹脂を充填し、半導体装置を製造する。
【0072】
半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマスなどからなる合金で構成されることが好ましい。半導体素子とプリント配線板との接続方法は、フリップチップボンダーなどを用いてプリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、予めプリント配線板上の接続用電極部に半田ペースト等の比較的融点の低い金属の層を形成しておいても良い。この接合工程に先んじて、半田バンプ、及び/またはプリント配線板上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。尚、実施例中、部は特に特定しない限り重量部を表す。また、層又は膜の厚みは平均膜厚で表わされている。
【0074】
以下の原料を用い、実施例及び比較例に用いる熱硬化性樹脂組成物を調製した。
エポキシ樹脂A:下記式で表わされるビフェニルアラルキル変性フェノールノボラック型(2<n<3);日本化薬株式会社製、「NC3000」
【0075】
【化7】

【0076】
エポキシ樹脂B:ナフタレンジオールジグリシジルエーテル;DIC株式会社製、「エピクロンHP−4032D」
【0077】
エポキシ樹脂C:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;DIC株式会社製、「エピクロンN−665−EXP−S」
エポキシ樹脂D:ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;DIC株式会社製、「EXA−7320」
シアネート樹脂A:下記式で表わされるノボラック型シアネート樹脂;ロンザジャパン株式会社製、「プリマセットPT−30」
【0078】
【化8】

【0079】
シアネート樹脂B:下記式で表わされるp−キシレン変性ナフトールアラルキル型シアネート;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(東都化成株式会社製、「SN−485」)と塩化シアンの反応物
【0080】
【化9】

フェノール樹脂A:下記式で表わされるビフェニルアラルキル変性フェノールノボラック樹脂(約n=2);明和化成株式会社製、「MEH−7851−S」
【0081】
【化10】

【0082】
フェノール樹脂B:フェノールノボラック樹脂;住友ベークライト株式会社製、「PR−51470」
マレイミド樹脂:ビス(3−メチル−5−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ケイ・アイ化成株式会社製、「BMI−70」
無機充填材A:溶融シリカ、株式会社アドマテックス製、「SO−25R」、平均粒径0.5μm
無機充填材B:溶融シリカ、株式会社アドマテックス製、「SO−32R」、平均粒径1μm
無機充填材C:シリコーン複合パウダー、信越化学工業株式会社製、「KMP−600」、平均粒径5μm
無機充填材D:水酸化アルミニウム、日本軽金属株式会社製、「BE−033」、平均粒径2μm
無機充填材E:タルク、富士タルク工業株式会社製、「LMS−200」、平均粒径
5μm
無機充填材F:ベーマイト、河合石灰工業株式会社製、「BMT−3L」、平均粒径
3μm
硬化触媒A:上記一般式(3)に該当する化合物のリン系触媒、住友ベークライト株式会社製、「C05−MB」
硬化触媒B:オクチル酸亜鉛
硬化触媒C:ジシアンジアミド
カップリング剤:エポキシシラン
【0083】
<製造例1:熱硬化性樹脂組成物(B)の樹脂ワニスの調製>
エポキシ樹脂A 11.2重量部、シアネート樹脂A 20.0重量部、フェノール樹脂A 8.8重量部、カップリング剤 0.3重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、無機充填材A59.7重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分70重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0084】
<製造例2〜9:熱硬化性樹脂組成物(B)の樹脂ワニスの調製>
表1に示されるような組成に変更した以外は、製造例1と同様にして、製造例2〜9の樹脂ワニスを調製した。
【0085】
【表1】

【0086】
<実施例1>
(1)プリプレグの製造
製造例1で得られた熱硬化性樹脂組成物の樹脂ワニスを、ガラス繊維表面に平均粒径が100nmの無機微粒子が付着したガラス繊維基材(厚さ96μm、質量115g/m、日東紡績株式会社製、WEA2117A;Eガラス)に含浸し、150℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグ中の樹脂組成物固形分が45.2重量%のプリプレグを得た。
なお、ガラス繊維表面に平均粒径が100nmの無機微粒子が付着したガラス繊維基材は、ガラス繊維基材を平均粒径100nmのコロイド状シリカ含有液に浸漬し、超音波振動を作用させることにより調製した。
【0087】
(2)銅張積層板の製造
前記のプリプレグを、両面に18μmの銅箔を重ねて、圧力4MPa、温度200℃で2時間加熱加圧成形することによって、厚さ0.1mmの絶縁層に銅箔を両面に有する積層板を得た。
【0088】
(3)多層プリント配線板の製造
前記で得られた銅張積層板に、直径0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。さらに、両面をエッチングにより回路形成し、内層回路基板として用いた。
一方、製造例1の樹脂ワニスを、PETフィルム(厚さ38μm、三菱樹脂ポリエステル社製、SFB38)上に、コンマコーター装置を用いて、乾燥後のエポキシ樹脂層の厚さが40μmとなるように塗工し、これを150℃の乾燥装置で5分間乾燥して、樹脂シートを製造した。
上記で得られた樹脂シートのエポキシ樹脂面を内側にして、前記内装回路基板に重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させた。樹脂シートから基材のPETフィルムを剥離後、熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱し硬化させて、多層プリント配線板を得た。
【0089】
<実施例2〜3>
実施例1において、製造例1で得られた樹脂ワニスの代わりに、製造例2又は製造例4で得られた樹脂ワニスをそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ中の樹脂組成物固形分が45.2重量%のプリプレグを製造した。更に、得られたプリプレグを用いて、実施例1と同様にして、銅張積層板を製造した。更に、得られた銅張積層板を用いて、実施例1と同様にして、多層プリント配線板を製造した。
【0090】
<実施例4〜10>
実施例1において、ガラス繊維基材として、ガラス繊維表面に平均粒径が100nmの無機微粒子が付着したガラス繊維基材(厚さ90μm、質量106g/m、日東紡績株式会社製、WEA116E;Eガラス)に変更し、表2に示されるような上記製造例3〜9の樹脂ワニスを用いた以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ中の樹脂組成物固形分が49.6重量%のプリプレグを製造した。更に、得られたプリプレグを用いて、実施例1と同様にして、銅張積層板を製造した。更に、得られた銅張積層板を用いて、実施例1と同様にして、多層プリント配線板を製造した。用いられた平均粒径が100nmの無機微粒子が付着したガラス繊維基材の表面のSEM写真を図1に示す。
なお、実施例7では、ドリルビットを用いてスルーホール加工を行った際のドリル摩耗性が良好であった。
<実施例11>
実施例1において、ガラス繊維基材として、ガラス繊維表面に平均粒径が100nmの無機微粒子が付着したガラス繊維基材(厚さ90μm、質量106g/m、日東紡績株式会社製、WTX116E;Tガラス)に変更し、表2に示されるような上記製造例3の樹脂ワニスを用いた以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ中の樹脂組成物固形分が49.6重量%のプリプレグを製造した。更に、得られたプリプレグを用いて、実施例1と同様にして、銅張積層板を製造した。更に、得られた銅張積層板を用いて、実施例1と同様にして、多層プリント配線板を製造した。
【0091】
<比較例1>
実施例1において、ガラス繊維基材として、ガラス繊維表面に無機微粒子が付着していないガラス繊維基材(厚さ96μm、質量115g/m、日東紡績株式会社製、WEA2117A)に変更した以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ中の樹脂組成物固形分が45.2重量%のプリプレグを製造した。更に、得られたプリプレグを用いて、実施例1と同様にして、銅張積層板を製造した。更に、得られた銅張積層板を用いて、実施例1と同様にして、多層プリント配線板を製造した。
【0092】
<比較例2〜3>
比較例1において、製造例1で得られた樹脂ワニスの代わりに、製造例2又は製造例4で得られた樹脂ワニスをそれぞれ用いた以外は、比較例1と同様にして、プリプレグ中の樹脂組成物固形分が45.2重量%のプリプレグを製造した。更に、得られたプリプレグを用いて、実施例1と同様にして、銅張積層板を製造した。更に、得られた銅張積層板を用いて、実施例1と同様にして、多層プリント配線板を製造した。
【0093】
<比較例4〜10>
比較例1において、ガラス繊維基材として、ガラス繊維表面に無機微粒子が付着していないガラス繊維基材(厚さ90μm、質量106g/m、日東紡績株式会社製、WEA116E)に変更し、表2に示されるような上記製造例3〜9の樹脂ワニスを用いた以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ中の樹脂組成物固形分が49.6重量%のプリプレグを製造した。更に、得られたプリプレグを用いて、実施例1と同様にして、銅張積層板を製造した。更に、得られた銅張積層板を用いて、実施例1と同様にして、多層プリント配線板を製造した。用いられたガラス繊維表面に付着していないガラス繊維基材の表面のSEM写真を図2に示す。
<比較例11>
比較例1において、ガラス繊維基材として、ガラス繊維表面に無機微粒子が付着していないガラス繊維基材(厚さ90μm、質量106g/m、日東紡績株式会社製、WTX116E)に変更し、表2に示されるような上記製造例3の樹脂ワニスを用いた以外は、実施例1と同様にして、プリプレグ中の樹脂組成物固形分が49.6重量%のプリプレグを製造した。更に、得られたプリプレグを用いて、実施例1と同様にして、銅張積層板を製造した。更に、得られた銅張積層板を用いて、実施例1と同様にして、多層プリント配線板を製造した。
【0094】
[評価]
1.含浸性
実施例及び比較例で得られた銅張積層板の断面観察を行った。断面観察は、走査電子顕微鏡(株式会社キーエンス製)を用いて行った。
含浸率は、断面観察結果において、観察されたボイドの面積が、全面積10%未満であった場合を合格(○)と評価した。また、観察されたボイドの面積が、10〜30%の場合を△、30%超過の場合を×と評価した。評価結果を、表2に合わせて示す。
更に、実施例4の銅張積層板の断面観察のSEM写真を図3に、比較例4の銅張積層板の断面観察のSEM写真を図4に示す。
【0095】
2.熱膨張係数
実施例及び比較例で得られた銅張積層板の銅箔を全面エッチングし、得られた積層板から4mm×20mmのテストピースを切り出し、TMA(熱機械分析;熱機械測定装置
ティー・エイ・インスツルメント社 / Q400)を用いて10℃/分の条件で、50℃〜150℃での面方向の線膨張係数(平均線膨張係数)を測定した。なお、表2中、「NA」は、テストピースに目視で明らかなボイドが観察され、測定するに値するテストピースとならなかったため、測定を行っていない。
【0096】
3.半田耐熱性
実施例及び比較例で得られた銅張積層板から50mm角にサンプルを切り出し、両面の銅箔のうち3/4(一方の面は全部及びもう一方の面は半分)をエッチングした。当該サンプルをプレッシャークッカーを用いて121℃2時間処理後、260℃の半田に30秒浸漬させ、膨れの有無を観察した。各符号は以下のとおりである。
○:異常なし
×:膨れが発生
【0097】
4.絶縁信頼性試験
実施例及び比較例で得られた多層プリント配線板を用いて、スルーホール壁間の絶縁信頼性試験を実施した。壁間150μmのパターンで、130℃/85%環境下で20V印加させ、200時間後のサンプルを試験槽から取り出し、常温常湿下での抵抗値を測定した。各符号は下記の通りである。
○:抵抗値10Ω以上
×:抵抗値10Ω未満
【0098】
【表2】

【0099】
本発明の実施例では、ガラス繊維表面に平均粒径が500nm以下の無機微粒子が付着したガラス繊維基材を用いたため、低線膨張化及び高剛性化を実現する高密度化されたガラス繊維基材を用い、熱硬化性樹脂組成物中の充填材量を高くしても、ガラス繊維基材への樹脂組成物の含浸性が高く、ガラス繊維基材中のボイドの発生を大幅に低減でき、低線膨張化、高剛性化、及び高耐熱化を実現した積層板を得ることが可能になり、半導体装置の信頼性を高くすることができることが明らかにされた。
一方、ガラス繊維表面に無機微粒子が付着していないガラス繊維基材を用いた比較例では、低線膨張化及び高剛性化を実現する高密度化されたガラス繊維基材を用い、熱硬化性樹脂組成物中の充填材量を高くすると、ガラス繊維基材中に樹脂や充填材が含浸しないボイド(空隙)が発生し、半田耐熱性が悪化するとともに、半導体装置の信頼性が低下することが明らかにされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維基材(A)に熱硬化性樹脂組成物(B)を含浸させてなるプリプレグであって、前記ガラス繊維基材(A)のガラス繊維表面に平均粒径が500nm以下の無機微粒子が付着していることを特徴とする、プリプレグ。
【請求項2】
前記ガラス繊維基材(A)における前記無機微粒子が、シリカ微粒子であることを特徴とする請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記ガラス繊維基材(A)の厚みが150μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記ガラス繊維基材(A)は、ガラス繊維表面が、前記無機微粒子が分散された処理液により処理されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物(B)に、無機充填材を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂組成物(B)に、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物(B)に、シアネート樹脂を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂組成物(B)中に含まれる無機充填材は平均粒径が0.1μm〜5.0μmであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のプリプレグを、硬化して得られることを特徴とする積層板。
【請求項10】
前記プリプレグの少なくとも一方の外側の面に導体層が設置されてなることを特徴とする、請求項9に記載の積層板。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の積層板を用いて、配線加工を施してなることを特徴とする、プリント配線板。
【請求項12】
請求項11に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする、半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−178992(P2011−178992A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21021(P2011−21021)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】