プリント基板
【課題】 複数のメタライズ層に形成されている導電トラックで構成されているコイルによって発生する、垂直巻線軸に沿う磁界の一様性を高めることができるプリント基板を提供する。
【解決手段】 このプリント基板においては、垂直方向に連続している第1のメタライズ層と第2のメタライズ層とに形成されている導電トラック(90、92、102、104、114、116、130、132、140、142、150、152)の、メタライズ層に平行な1つの平面上への重ね合わせによって、互いに直交しており、かつメタライズ層に平行である軸XおよびYを対称軸とする2軸対称性を有するパターンが形成され、重ね合わされる第1のメタライズ層および第2のメタライズ層の各々の単一または複数の導電トラックは、それだけでは、軸Xおよび/またはYを対称軸とする軸対称性を有していない。
【解決手段】 このプリント基板においては、垂直方向に連続している第1のメタライズ層と第2のメタライズ層とに形成されている導電トラック(90、92、102、104、114、116、130、132、140、142、150、152)の、メタライズ層に平行な1つの平面上への重ね合わせによって、互いに直交しており、かつメタライズ層に平行である軸XおよびYを対称軸とする2軸対称性を有するパターンが形成され、重ね合わされる第1のメタライズ層および第2のメタライズ層の各々の単一または複数の導電トラックは、それだけでは、軸Xおよび/またはYを対称軸とする軸対称性を有していない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板および磁界センサに関する。
【0002】
プリント基板すなわちPCBは、1セットの電気部品の電気的接続のために用いられる支持体である。プリント基板は、一般に、層状プレートまたは積層プレートの形態を呈している。このプリント基板は、単層プリント基板である場合もあるし、多層プリント基板である場合もある。単層プリント基板は、各電気部品を相互に電気的に接続するための導電トラックがプリントされている、ただ1層のメタライズ層しか有していない。これに反して、多層プリント基板は、いくつかのメタライズ層、すなわち、少なくとも2層のメタライズ層、好ましくは4層または6層を超えるメタライズ層を有している。以下の説明は、主として、このような多層プリント基板に関するものである。
【0003】
各メタライズ層は、プリント基板を構成している積層プレートの層の1つであり、それらの層には、各電気部品を相互に電気的に接続するための1つ以上の導電トラックが形成されている。これらの層は平坦であり、積層プレートの表面に平行に延在している。一般に、メタライズ層は、導電材料(通常、銅などの金属)の一様な層の被着、およびこの一様な層の、その後の、導電トラックだけを残すようなエッチングによって、得られる。
【0004】
プリント基板の各メタライズ層は、電気絶縁材料から成る電気絶縁層によって、物理的に互いに分離されている。この電気絶縁材料は、高い絶縁耐力、すなわち,通常3MV/mを超過し、好ましくは10MV/mを超過する絶縁耐力を有している。電気絶縁材料は、例えばエポキシ樹脂、および/またはガラス繊維でできている。電気絶縁層は、一般に、他の層と結合したときに軟化しない材料から成る剛性板の形態を呈している。電気絶縁層は、例えば不可逆的な熱硬化処理を受けた熱硬化性樹脂でできている。
【0005】
多層プリント基板の各層は、「樹脂含浸」層、より一般的には「プリプレグ」層として知られている接着層を介して、何らの自由度なしに互いに結合している。
【0006】
樹脂含浸層は、一般に、ファブリックなどの補強材に、熱硬化性樹脂を含浸させることによって作られる。この熱硬化性樹脂は、通常、エポキシ樹脂である。プリント基板の製造中に、熱硬化性樹脂の変態によって、含浸材料が、プリント基板の各層に不可逆的に密着した、剛性の固体物質に転換する、不可逆的な重合化がもたらされる。通常、樹脂含浸層を、高温に加熱、かつ高圧で圧縮したときに、熱硬化性樹脂の各々の変態が生じる。この場合の、高温とは、100℃を超過する温度、好ましくは150℃を超過する温度である。高圧とは、0.3MPaを超過する圧力であるが、通常は、1MPaを超過する圧力である。
【0007】
電気絶縁層を貫通している導電孔によって、複数のメタライズ層の導電トラックを電気的に接続することができる。この導電孔は、「ビア」または「ビアホール」として、一般的に知られている。ビアは、一般に、電気絶縁層の表面に垂直に延びている。これらのビアを作るには、いくつかの方法がある。最も一般的な方法の1つは、1層以上の電気絶縁層に、それらの上下を貫くように孔を形成し、次いで、それらの孔の内壁を金属で覆うことである。したがって、これらのビアは、メタライズホール(金属で被覆された孔)と呼ばれる。
【0008】
ビアは、必ずしも、プリント基板の全ての電気絶縁層を貫通しているとは限らない。例えばプリント基板の片側の外表面にしか開口していないブラインドビアホールが存在する。今日では、さらに、例えばHDI(High Density Interconnect:高密度配線)技術などの公知の技術を用いて、「ベリード」ビアを形成することもできる。ベリードビアは、プリント基板のいずれの外表面にも開いていない。ベリードビアは、例えばプリント基板の内部に埋め込まれた複数のメタライズ層に形成されている導電トラックを電気的に接続する。
【背景技術】
【0009】
従来、次のものを備えている、プリント基板が存在する。
・ 電気絶縁層によって物理的に互いに分離された、いくつかのメタライズ層の、垂直方向に沿ったスタックと、
・ それぞれのメタライズ層に形成されている導電トラックによって構成され、電気絶縁層の少なくとも1つを貫通している導電孔によって、互いに電気的に接続されている複数のターンを有し、それぞれに対応する少なくとも1つの垂直巻線軸に沿って延在している、少なくとも1つのコイル。
【0010】
このようなプリント基板は、例えば特許文献1または特許文献2によって公知である。
【0011】
このようなプリント基板に関する従来技術は、特許文献3によっても公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7511591号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許公開第1168387号公報
【特許文献3】米国特許第4080585号公報
【特許文献4】米国特許第7372261号公報
【特許文献5】国際公開第WO08/016198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術によるプリント基板においては、コイルによって発生する、巻線軸に沿う磁界は、ほとんど一様性を有しておらず、かつ理想的なコイルによって発生するおそれのある磁界に、対照的なバイアスを有することが指摘されている。このような磁界の非一様性によって、これらのコイルによる測定に誤りが発生する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、このような欠点を修正することを目的としている。この目的を達成するために、本発明は、垂直方向に連続している第1のメタライズ層と第2のメタライズ層とに形成されている、コイルの導電トラックの、メタライズ層に平行な1つの平面上への重ね合わせによって、互いに直交しており、かつメタライズ層に平行である軸XおよびYを対称軸とする2軸対称性を有するパターンが形成され、重ね合わされる第1のメタライズ層および第2のメタライズ層の各々の単一または複数の導電トラックは、それだけでは軸Xおよび/またはYを対称軸とする軸対称性を有していないプリント基板を提供するものである。
【0015】
プリント基板においては、各メタライズ層のコイルの導電トラックは、例えば完全なループを形成するように始点に終端するということは、それによって、ターンが短絡するためにあり得ない。さらに、ビアが垂直であるために、各メタライズ層の各コイルの導電トラックの始点の位置は、そのメタライズ層の上のメタライズ層に位置している、この同じコイルの導電トラックの終点の位置に定められる。
【0016】
これらの制約のために、プリント基板が作られたとき、各メタライズ層の各コイルの導電トラックは、その下のメタライズ層に位置する同じコイルの導電トラックと完全には一致しない。したがって、各メタライズ層に形成されている導電トラックの間には、ずれが存在する。これらのずれによって、各メタライズ層の導電トラックによって発生する磁界は、そのメタライズ層の上または下に位置している別のメタライズ層の導電トラックによって発生する磁界と異なるようになる。これは、巻線軸に沿った磁界が一様ではないことを意味する。さらに、特別の予防措置を講じない限り、導電トラック間のずれによる影響を相殺することはできない。一方、特別の注意を払わない限り、これらのずれが加算されて、このプリント基板のコイルによって発生する磁界に、このコイルが、磁心のまわりに導線を機械的に巻くことによって作られている場合に発生するおそれのある磁界に比して、より大きなバイアスがもたらされる。
【0017】
第1のメタライズ層と第2のメタライズ層との導電トラック間に軸対称性を生み出す上述のレイアウトによって、第1のメタライズ層の導電トラックのずれは、第2のメタライズ層の導電トラックのずれによって、少なくとも部分的に相殺される。これによって、プリント基板に形成されているコイルによって発生する磁界や測定される磁界に現れ得るバイアスの大きさが抑制される。
【0018】
さらに、第1のメタライズ層と第2のメタライズ層とが連続しているという事実によって、巻線軸に沿って発生する磁界の一様性が改善される。
【0019】
本発明のプリント基板の実施形態には、次の特性のうちの1つ以上を有する形態が含まれる。
− 第1のメタライズ層の導電トラックは、第1の対称中心を中心とする中心対称性を有しており、第2のメタライズ層の導電トラックは、第2の対称中心を中心とする中心対称性を有しており、第1の対称中心と第2の対称中心とは、垂直方向から見て一致している。
− 各コイルは、下降しながら、対応する垂直巻線軸を囲んでいる下向き巻線部をなしている、複数の第1の導電トラックと、上昇しながら、この垂直巻線軸を囲んでいる上向き巻線部をなしている、複数の第2の導電トラックとを有しており、下向き巻線部と上向き巻線部とは、上向き巻線部と下向き巻線部とで、電流が同じ向きに回るように、直列接続されている。
− 上述の重ね合わせにおいて、次のような対称性が得られる。
・ 第2のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラックは、軸Yに関して、第1のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラックに対称であり、かつ軸Xに関して、第1のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラックに対称であり、
・ 第2のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラックは、軸Yに関して、第1のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラックに対称であり、かつ軸Xに関して、第1のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラックに対称である。
− このプリント基板は、垂直巻線軸に沿って延びている、磁心を受容するための貫通孔を有している。
− Nを2以上の自然数であるとしたときに、メタライズ層のスタックは、1層の上部メタライズ層、1層の下部メタライズ層、および上部メタライズ層と下部メタライズ層との間の、N層の中間メタライズ層を有しており、垂直方向に重ねられた2層の中間メタライズ層から成るペアが(N−1)組以上存在し、ペアを構成している2層の中間メタライズ層は、それぞれ第1のメタライズ層および第2のメタライズ層に対応している。
【0020】
さらに、プリント基板のこれらの実施形態は、次の利点を有している。
− さらに、導電トラックが中心対称性を有しているという事実によって、垂直巻線軸に沿う磁界の一様性が増す。
− コイルを、下向き巻線部と上向き巻線部とによって形成することによって、コイルへの/からの信号の入出力を行うための全ての接続ピンを、プリント基板の同一の面上に配置することができる。これによって、さらに、垂直巻線軸に沿う磁界の一様性が増す。
【0021】
本発明は、さらに、次のものを備えている磁界センサを提供するものである。
− 少なくとも1つの磁心と、
− 磁心を飽和磁化させることができる励磁コイルおよび測定コイルの機能を満たすための1つ以上のコイル。
【0022】
この磁界センサは、さらに、上述のプリント基板を備えており、このプリント基板のコイルには、磁界センサの励磁コイル、および/または測定コイルの機能を満たすためのコイルが含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による磁界センサの斜視図である。
【図2】図1の磁界センサのコイルを作るために、上部メタライズ層にエッチングによって形成された導電トラックの平面図である。
【図3】図1の磁界センサのコイルを作るために、偶数次の中間メタライズ層にエッチングによって形成された導電トラックの平面図である。
【図4】図1の磁界センサのコイルを作るために、奇数次の中間メタライズ層にエッチングによって形成された導電トラックの平面図である。
【図5】図1の磁界センサのコイルを作るために、下部メタライズ層にエッチングによって形成された導電トラックの平面図である。
【図6】図3と図4との導電トラックを、一平面上に重ね合わせた図である。
【図7】図1の磁界センサに用いられる、コイルで囲まれた垂直磁性体リングの組立分解斜視図である。
【図8】図1の磁界センサに用いられる、コイルで囲まれた垂直磁性体リングの組立後の斜視図である。
【図9】図8の、コイルで囲まれた垂直磁性体リングの上部U字形状部分と下部U字形状部分とのアームの重ね合わせを示す部分断面図である。
【図10】本発明による交流発電機の斜視図である。
【図11】図10の交流発電機のプリント基板に形成されている導電トラックの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、単に非限定的な例として提供する以下の説明を読むことによって、本発明を、より明瞭に理解しうると思う。
【0025】
添付図面において、同等の要素には、同一の符号を付してある。
【0026】
以下の説明において、当業者に公知である特性および機能については、詳細に説明しない。
【0027】
図1は、フラックスゲートセンサ2を示している。このフラックスゲートセンサ2は、外部磁界Tの方向を、さらに、必要に応じて、その強度を測定することができる。より具体的には、フラックスゲートセンサ2は、外部磁界Tの、同一直線上にない3つの軸X、Y、Zへの投影にそれぞれ一致する外部磁界成分TX、TY、TZを測定する。軸X、Y、Zは、互いに直交している。軸Zは垂直軸であり、軸XおよびYは、水平面を定めている。
【0028】
フラックスゲートセンサは、当業者にはよく知られている。その機能に関しては、例えば特許文献4を参照することができる。したがって、この説明においては、本発明を理解するために必要な特徴だけについて、詳細に述べる。
【0029】
フラックスゲートセンサ2は、多層プリント基板4を備えている。多層プリント基板4は、通常、2層または5層を超えるメタライズ層、好ましくは10層を超えるメタライズ層を有している。図1の場合には、多層プリント基板4は、10層のメタライズ層を有している。図1においては、単純化のために、多層プリント基板4の1層しか示されていない。メタライズ層は、軸Zに沿って、上下にスタックされている。軸Zに沿った、最も上のメタライズ層は、多層プリント基板4の上面に一致し、一方、最も下のメタライズ層は、多層プリント基板4の下面と一致している。
【0030】
多層プリント基板4は、水平な環状の凹み内に収容された磁性体リング6を有している。磁性体リング6は、多層プリント基板4の上面と下面との間に位置している。磁性体リング6は、通常、1000を超過し、好ましくは10000を超過する静的な比透磁率、すなわち周波数0Hzにおける比透磁率を有する磁性材料で作られている。この磁性材料は、例えばミューメタル、または「Vitrovac(登録商標)」6025として商業的に知られている磁性金属である。
【0031】
磁性体リング6は、多層プリント基板4から独立に製造され、次いで、多層プリント基板4の製造中に、水平な環状の凹み内に挿入される。これを可能にするために、磁性体リング6の横方向の寸法、すなわち図1の場合には、垂直断面における磁性体リング6の寸法は、凹みの対応する横方向の寸法より少なくとも5μmだけ、好ましくは少なくとも100μmだけ短くされている。したがって、凹みの壁面と磁性体リング6の対向面との間には間隙が存在する。この間隙の存在のために、磁性体リング6は、多層プリント基板4から機械的圧力を受けない。磁性体リング6に及ぼされるいかなる機械的圧力も、磁気歪みによって、磁性体リング6の磁気特性を変化させる。したがって、測定される外部磁界Tに外乱を導き入れるから、機械的圧力を受けないことによって、フラックスゲートセンサ2の精度は著しく向上する。
【0032】
磁性体リング6は、軸Xに平行に2つの磁性体バー8および9、軸Yに平行に2つの磁性体バー11および12を有している。これらの磁性体バーの端部は、磁性材料から成るコーナー部により互いに連結されて、磁性体リング6を形成している。
【0033】
磁性体リング6を飽和磁化させるための、4つの励磁コイル14〜17が、多層プリント基板4内に形成されている。これらの励磁コイルは、同一の励磁電流iexHを、励磁周波数fexHで流される。励磁周波数fexHは、通常、300Hzを超過するが、10kHzを超過することが好ましい。図1の場合には、励磁コイル14〜17は、それぞれ磁性体バー11、8、12、9を囲んでいる。
【0034】
励磁コイル14〜17に励磁電流iexHが流されたときに、一方の向きに、励磁磁界BexHと呼ばれる磁界が発生するように、励磁コイル14〜17は、互いに直列に接続されている。各励磁コイル14〜17は、磁性体リング6の上側および下側にそれぞれ1層ずつ位置している、多層プリント基板4の2層のメタライズ層に形成されている導電トラックによって、それらのほとんどを構成されている。導電トラックの端部は、垂直のビアによって互いに連結されている。これによって、磁性体リング6の上側と下側とに位置しているメタライズ層が連続的に結合され、励磁コイル14〜17の各々の各ターンが形成されている。水平軸に沿って延在しているコイルに関する、このような形態は、例えば特許文献5に開示されている。
【0035】
多層プリント基板4は、さらに、磁性体バー11、8、12、9の磁界を測定するために、それらを、それぞれ1つずつ囲んでいる4つの測定コイル20〜23を有している。これらの測定コイル20〜23の各々によって測定される磁界の測定値を、それぞれ、M1、M2、M3、M4とする。これらの測定値は、次の関係式のようになっている。
・ M1=TY−BexH
・ M2=TX+BexH
・ M3=TY+BexH
・ M4=TX−BexH
【0036】
これらの関係式は、次の条件の下におけるものである。
− 励磁磁界BexHは、反時計回りの向きに回っており、
− 外部磁界成分TXおよびTYは、それぞれ軸XおよびYと同じ方向に向いている。
【0037】
図1において、測定コイル20〜23は、それぞれ励磁コイル14〜17を囲んでいる。これらの測定コイル20〜23は、励磁コイル14〜17の導電トラックを形成するために用いられているメタライズ層の上側および下側に位置しているメタライズ層に形成されている導電トラックによって、それらのほとんどが構成されている。
【0038】
この実施形態においては、磁性体バー11、8、12、9の磁界を打ち消すために、さらに、4つの補償コイル26〜29が、それぞれ測定コイル20〜23を囲んでいる。したがって、外部磁界成分TXおよびTYの測定値は、補償コイル26〜29に流れる補償電流icHの強度から演繹される。
【0039】
補償コイル26〜29は、測定コイルの導電トラックを形成するために用いられているメタライズ層の上側および下側に位置しているメタライズ層に形成されている導電トラックによって、それらのほとんどを構成されている。
【0040】
この場合には、測定がゼロ磁界空間においてなされるから、軸XとYとに沿って測定される測定値間に生じる磁気結合は、このような構成でない場合に比して減少する。
【0041】
多層プリント基板4は、さらに、外部磁界成分TZを測定するための垂直コイルを有している。用語「垂直コイル」は、垂直軸を囲んで、垂直軸に沿って延在しているコイルを意味している。図2〜図5を参照して、垂直コイルについて詳細に説明する。図1においては、垂直コイルは、きわめて概略的にしか示されていない。
【0042】
より具体的には、2つの孔30および32が、それぞれ垂直軸34および36に沿って、多層プリント基板4の一方の側(上面)から他方の側(下面)まで通じている。これらの孔30および32は、垂直磁性体リングの2つのアームの一方および他方を受容するようになっている。図を単純化するために、この垂直磁性体リングは、図1には示されていない。
【0043】
これらの孔30および32の周囲において、多層プリント基板4は、2つの垂直励磁コイル38および39を有している。垂直励磁コイル38および39は、励磁周波数fexvの励磁電流iexvを流されたときに、垂直磁性体リングを飽和磁化させる励磁磁界Bexvを発生させることができる。励磁電流iexvおよび励磁周波数fexvは、例えばそれぞれ励磁電流iexHおよび励磁周波数fexHに等しくされている。
【0044】
垂直測定コイル40が、2つの孔30および32を囲んでいる。この垂直測定コイル40は、垂直磁性体リングの磁界を測定するようになっている。
【0045】
最後に、垂直補償コイル42が、多層プリント基板4内に形成されている。垂直補償コイル42は、孔30および32を囲んでいる。上述の補償コイル26〜29と同様に、垂直補償コイル42は、それに補償電流icvが流されたときに、垂直磁性体リングの磁界を打ち消す機能を有している。
【0046】
垂直励磁コイル38および39、垂直測定コイル40、垂直補償コイル42の各ターンは、多層プリント基板4の各メタライズ層に形成されている各1つの導電トラックによって構成されている。同じコイルの各ターン間を電気的に互いに接続するために、同じコイルに属する導電トラック同士は、垂直ビアによって互いに結合されている。
【0047】
最後に、フラックスゲートセンサ2は、励磁コイルおよび補償コイル、垂直励磁コイルおよび垂直補償コイルへの電流供給を制御することができ、また外部磁界Tの測定値を得るために、測定コイルおよび垂直測定コイルからの信号を処理することができる電子処理ユニット50を備えている。通常、外部磁界Tの各外部磁界成分の測定値は、測定コイルまたは垂直測定コイルの端子間電圧のうちの、励磁周波数の高調波である周波数を有する電圧の振幅から得られる。図を単純化するために、図1には、電子処理ユニット50と各コイルとの間の電気接続部を示していない。
【0048】
ここで、図2〜図6を参照して、垂直励磁コイル38および39、垂直測定コイル40、垂直補償コイル42について、より詳細に説明する。
【0049】
図2〜図5は、それぞれ上部メタライズ層、偶数次の中間メタライズ層、奇数次の中間メタライズ層、下部メタライズ層に形成されている導電トラックを示している。上部メタライズ層には、垂直励磁コイル38および39、垂直測定コイル40、垂直補償コイル42の上端部を構成している導電トラックが含まれている。下部メタライズ層には、垂直励磁コイル38および39、垂直測定コイル40、垂直補償コイル42の下端部を構成している導電トラックが含まれている。
【0050】
偶数次および奇数次の中間メタライズ層は、上部メタライズ層と下部メタライズ層との間に位置している。これらの中間メタライズ層には、各コイルのターンの主要部分を構成している導電トラックが含まれている。これらの中間メタライズ層は、偶数次の中間メタライズ層と奇数次の中間メタライズ層とが交互になるように、上下にスタックされている。偶数次の中間メタライズ層は、全て互いに同じ構造を有しているから、これらの偶数次の中間メタライズ層のうちの1つだけを、図3を参照して詳細に説明する。同様に、奇数次の中間メタライズ層は、全て互いに同じ構造を有しているから、これらの奇数次の中間メタライズ層のうちの1つだけを、図4を参照して詳細に説明する。中間メタライズ層の数は2層を超えており、4層または8層を超えていることが好ましい。
【0051】
上部メタライズ層、中間メタライズ層、下部メタライズ層の各々に直交するように、孔30および32が穿たれている。これらのメタライズ層の断面は、全てのメタライズ層において同一である。孔30と32との水平面上の形状は細長く、同一の軸52に沿って延びている。さらに、軸52は、孔30および32の対称軸である。さらに、孔30と32とは、軸52に直交する別の軸54に関して互いに対称である。軸52と54とは、点0で交差している。以下の説明において、いずれのメタライズ層においても、符号52、54が付されている軸は、それぞれ同一の対称軸を示している。
【0052】
この実施形態においては、垂直励磁コイル38および39、垂直測定コイル40、垂直補償コイル42の各々は、下向き巻線部および上向き巻線部を有している。同一のコイルを形成するために、下向き巻線部と上向き巻線部とを用いることによって、各コイルに対する信号の入出力のために、多層プリント基板の同じ面上に、2つの接続パッドを形成することが可能になる。図2〜図5の例においては、これらの接続パッドは、多層プリント基板の上面に形成されている。
【0053】
各コイルの下向き巻線部は、多層プリント基板の上面に形成されている一方の接続パッドから下面に向かって下るように、孔30、32の一方または両方を囲んでいる。逆に、上向き巻線部は、下面から上面に形成されている他方の接続パッドに向かって上るように、孔30、32の一方または両方を囲んでいる。したがって、下向き巻線部と上向き巻線部とは、どちらの接続パッドを始点とし、どちらの接続パッドを終点とするかによって、反対になる。以下の説明においては、接続パッド56、62、66を始点、接続パッド58、60、64を終点としている。したがって、接続パッド56、62、66から下面に向かう巻線部が下向き巻線部、下面から接続パッド58、60、64に向かう巻線部が上向き巻線部である。同一のコイルの下向き巻線部と上向き巻線部とは、それらを流れる電流が、常に、孔30、32の一方または両方のまわりに同じ向きに回るように、直列に接続されている。
【0054】
以下の説明において、用語「接続」は、電気的接続を意味している。
【0055】
垂直励磁コイル38と39とは、それぞれ孔30と32とを、互いに逆向きに囲んでいる。垂直測定コイル40と垂直補償コイル42とは、どちらも、垂直励磁コイル38および39を、したがって孔30および32を囲んでいる。垂直補償コイル42は、垂直測定コイル40を囲んでいる。
【0056】
図2〜図5において、導電トラック端に位置している円環は、その導電トラックを、その直下のメタライズ層の導電トラックに接続しているビア(以下、下りビアと呼ぶ)の端を表わしている。対照的に、導電トラック端に位置している実点は、その導電トラックを、その直上のメタライズ層の導電トラックに接続しているビア(以下、上りビアと呼ぶ)の端を表わしている。したがって、下りビア、上りビアという名称は絶対的なものではなく、同一のビアが、その上端にある導電トラックを基準にしたときに、下りビアと呼ばれ、下端にある導電トラックを基準にしたときに、上りビアと呼ばれる。したがって、円環は、ビアの上端と一致しており、一方、実点は、ビアの下端と一致している。
【0057】
図2は、垂直励磁コイル38および39に励磁電流を供給するための接続パッド56および58を示している。これらの2つの接続パッドは、軸52に関して互いに反対側で、軸54上に位置している。
【0058】
上部メタライズ層には、さらに、接続パッド60および62が含まれている。垂直測定コイル40が、垂直磁性体リング内の磁界を表わす電圧を、接続パッド60と62との間に出力する。
【0059】
この上部メタライズ層には、さらに、垂直補償コイル42に補償電流を供給するための接続パッド64および66が含まれている。
【0060】
接続パッド56は、導電トラック70を介して、下りビアであるビア68に接続されている。導電トラック70は、孔30を、外側から内側に向かって、時計回りの向きに回りながら囲んでいる。この導電トラック70は、ビア68に達するまでに、孔30のまわりを、何回か完全に回っている。
【0061】
接続パッド58は、導電トラック74を介して、下りビアであるビア72に接続されている。導電トラック74は、点0に関して、導電トラック70と中心対称の関係にある。
【0062】
接続パッド60、62、64、66は、それぞれ下りビアであるビア78、80、82、84に接続されている。
【0063】
図3は、偶数次の中間メタライズ層を示している。この中間メタライズ層において、垂直励磁コイル38および39の下向き巻線部のターンは、単一の導電トラック90によって構成されている。同様に、垂直励磁コイル38および39の上向き巻線部のターンは、単一の導電トラック92によって構成されている。導電トラック90は、次のように形成されている。
− 上りビアであるビア94を始点として、孔30を、内側から外側に向かって、時計回りの向きに回りながら囲んでおり、次いで、
− 下りビアであるビア96を終点として、孔32を、外側から内側に向かって、反時計回りの向きに回りながら囲んでいる。
【0064】
導電トラック92は、一定の間隔すなわち距離を置いて、導電トラック90に沿って延在している。したがって、導電トラック92は、次のように形成されている。
− 下りビアであるビア98を始点として、孔30を、内側から外側に向かって、時計回りの向きに回りながら囲んでおり、次いで、
− 上りビアであるビア100を終点として、孔32を、外側から内側に向かって、反時計回りの向きに回りながら囲んでいる。
【0065】
導電トラック90および92は、孔30および32のまわりを、何回か回っている。
【0066】
この中間メタライズ層においては、垂直測定コイル40の下向き巻線部、および上向き巻線部のターンは、ただ2つの導電トラック、すなわち、それぞれ導電トラック102および導電トラック104によって構成されている。導電トラック102は、上りビアであるビア106を始点、下りビアであるビア108を終点として、導電トラック90および92を、外側から内側に向かって、反時計回りの向きに回りながら囲んでいる。導電トラック104は、下りビアであるビア110を始点、上りビアであるビア112を終点として、導電トラック90および92を、外側から内側に向かって、反時計回りの向きに回りながら囲んでいる。導電トラック102および104は、孔30および32のまわりを、何回か完全に回っている。
【0067】
垂直補償コイル42の下向き巻線部および上向き巻線部のターンは、ただ2つの導電トラック、すなわち、それぞれ導電トラック114および116によって構成されている。導電トラック114および116は、導電トラック102および104を囲んでいる。より具体的には、導電トラック114は、上りビアであるビア118から、下りビアであるビア120に向かって、時計回りの向きに回りながら、導電トラック102および104を囲んでいる。導電トラック116は、上りビアであるビア124から、下りビアであるビア122に向かって、反時計回りの向きに回りながら、導電トラック102および104を囲んでいる。この例においては、導電トラック114および116は、この中間メタライズ層において、半ターンしか構成していない。
【0068】
ビア106、108、110、112、118、120、122、124は、全て、軸54上に並んでいる。
【0069】
この中間メタライズ層における各コイルの上向き巻線部と、下向き巻線部とを構成している2つの導電トラックは、点0に関して互いに中心対称の関係にあるが、軸対称の関係にはない。
【0070】
図4は、図3の中間メタライズ層の直下に位置している奇数次の中間メタライズ層に形成されている導電トラックを示している。したがって、図3の下りビアの下端が、上りビアの下端として、図4にも示されている。したがって、これらの上りビアの下端には、図3の下りビアの上端と同一の数字を付している。
【0071】
垂直励磁コイル38および39の下向き巻線部および上向き巻線部のターンは、ただ2つの導電トラック130および132によって構成されている。導電トラック130は、上りビアであるビア96から下りビアであるビア136まで延在している。導電トラック132は、上りビアであるビア98から下りビアであるビア138まで延在している。
【0072】
垂直測定コイル40の下向き巻線部および上向き巻線部のターンは、ただ2つの導電トラック140および142によって構成されている。導電トラック140は、上りビアであるビア108から下りビアであるビア144まで延在している。導電トラック142は、上りビアであるビア110から下りビアであるビア146まで延在している。
【0073】
最後に、垂直補償コイル42の下向き巻線部および上向き巻線部のターンは、ただ2つの導電トラック150および152によって構成されている。導電トラック150は、上りビアであるビア120から下りビアであるビア154まで延在しており、導電トラック152は、上りビアであるビア122から下りビアであるビア156まで延在している。
【0074】
導電トラック130、132、140、142、150、152は、それぞれ導電トラック92、90、104、102、116、114を、軸52に関して反転させることによって導き出される。さらに、導電トラック130、132、140、142、150、152は、それぞれ導電トラック90、92、102、104、114、116を、軸54に関して反転させることによっても導き出される。したがって、これらの導電トラックの構造について、これ以上、詳細に説明しない。さらに、図3の場合と同様に、各コイルを構成している2つの導電トラックは、点0に関して互いに中心対称の関係にあるが、軸対称の関係にはないことが認識される。
【0075】
ビア108、110、120、122、144、146、154、156は、軸54上に並んでいる。
【0076】
図5は、各コイルの下向き巻線部と上向き巻線部とを互いに接続するための導電トラックを有している下部メタライズ層を示している。下向き巻線部と上向き巻線部とは、信号が入出力されているときに、それらのターンを流れる電流が同じ向きに回るように、互いに接続されている。説明を簡単にするために、この下部メタライズ層は、図4の奇数次の中間メタライズ層の直下にあるとする。したがって、図5には、図4の下りビアの下端が、上りビアの下端として示されている。
【0077】
垂直励磁コイル38および39には、ビア136を始点として、内側から外側に向かって、時計回りの向きに回りながら孔30を囲んでおり、次いで、ビア138を終点として、外側から内側に向かって、反時計回りの向きに回りながら孔32を囲んでいる導電トラック160が含まれている。この導電トラック160は、点0に関して中心対称性を有している。導電トラック160は、孔30および32を、何回か完全に回っている。
【0078】
導電トラック162は、垂直測定コイル40のビア144と146とを接続している。導電トラック164は、垂直補償コイル42のビア154と156とを接続している。
【0079】
中間メタライズ層の導電トラック90と92とのセット、または130と132とのセットは、孔30および32を、互いに逆向きに回りながら囲んでいるから、いずれか一方だけでは軸対称性を有することはできない。
【0080】
中間メタライズ層における2つの導電トラック102と104とのセットも、2つの導電トラック140と142とのセットも、いかなる軸対称性も有し得ない。実際、これらの下向き巻線部と上向き巻線部との、どちらのセットの2つの導電トラックも、同一の中間メタライズ層内に形成されており、したがって、2つの導電トラックは、互いにずれている必要がある。このことは、導電トラック90と92、130と132、114と116、150と152の各セットに対しても当てはまる。
【0081】
本発明において、各コイルを上述のような構造にする目的の1つは、それぞれの巻線軸に沿う磁界の一様性を高めて、理想コイルに対照的に観察されるバイアスを抑制するために、各コイルの対称性を高めることである。偶数次および奇数次の各中間メタライズ層の導電トラックの、本明細書に説明されているレイアウトにおいては、それらの導電トラックを、単一の水平面内に重ね合わせたときに、新たな対称軸が生じて、この目的が達成される。偶数次の中間メタライズ層と奇数次の中間メタライズ層とを重ね合わせた状態が、図6に示されている。この重ね合わせによって、軸52、54をそれぞれの対称軸とする、2つの軸対称が生じる。これによって、ワイヤ巻線に比してバイアスが減り、巻線軸に沿う磁界の一様性が増す。したがって、全ての偶数次および全ての奇数次の中間メタライズ層の導電トラックを重ね合わせたとき、平面図である図6においては、1つの偶数次および1つの奇数次の中間メタライズ層の導電トラックしか、目視することができない。
【0082】
最後に、上述の実施形態において、上部メタライズ層の直下に位置している、偶数次の中間メタライズ層を、その直下の奇数次の中間メタライズ層と重ね合わされたときに、これらの2つの中間メタライズ層の重ね合わせは、完全には軸対称になり得ない。実際、この偶数次の中間メタライズ層において、ビア106、112、118、124は、それぞれ上部メタライズ層のビア80、78、84、82の下端と一致するように、軸54からわずかにずらされている。しかしながら、この偶数次の中間メタライズ層を除けば、他のいずれの偶数次の中間メタライズ層も、奇数次の中間メタライズ層の任意の1つと重ね合わせられたときに、それらの重ね合わせは、完全な2軸対称性を備える。
【0083】
図7および図8は、外部磁界成分TZを測定するために、フラックスゲートセンサ2において用いられる、コイルで囲まれた垂直磁性体リングを示している。図7および図8において、フラックスゲートセンサ2の他の部品は示していない。より具体的には、垂直磁性体リング170を、多層プリント基板4の孔30および32に通すことによって、このコイルで囲まれた垂直磁性体リングが形成されている。図7は、コイルで囲まれた垂直磁性体リングの分解組立図であり、図8は、同じコイルで囲まれた垂直磁性体リングの組み立て後の図である。垂直磁性体リング170は、上部U字形状部分172および下部U字形状部分174によって構成されている。上部U字形状部分172および下部U字形状部分174は、それぞれ、「U」字の底を構成している水平部材184および186に結合された各2つの垂直のアーム176、178および180、182を有している。
【0084】
上部U字形状部分172および下部U字形状部分174は、1000を超過し、好ましくは10000を超過する静的な比透磁率を有する磁性材料から成る板材からカットされたものである。この磁性材料は、例えばミューメタル、または「Vitrovac(登録商標)」6025として商業的に知られている磁性金属である。このような製造方法を用いることによって、磁性材料に加えられる機械的圧力が抑制される。とりわけ、このような製造方法によって、磁性材料の折り曲げ加工なしに、U字形状を形成することができる。上部U字形状部分172および下部U字形状部分174は、実質的に、軸52を通る垂直面YZ内に延在している。上部U字形状部分172および下部U字形状部分174の各々の幅方向は、この垂直面内にある。上部U字形状部分172および下部U字形状部分174の厚さ方向は、この垂直面と直交している。上部U字形状部分172および下部U字形状部分174の厚さは、通常、250μm未満であるが、100μm未満、または25μm未満であることが好ましい。
【0085】
アーム176、178は、多層プリント基板4の上面側から、それぞれ孔30、32に挿入されている。一方、アーム180、182は、多層プリント基板4の下面側から、それぞれ孔30、32に挿入されている。
【0086】
図9に示すように、この実施例においては、アーム176と180とは、孔30内で、軸Xに直交する面同士で重ね合わされており、これによって、磁気的連続性が確保されている。アーム176と180とは、例えば、これらの垂直方向長さの1/3を超過して、重ね合わされている。アーム178と182も、同様に、孔32内で重ね合わされている。
【0087】
アームの横方向の寸法は、孔30、32の対応する横方向の寸法より、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも100μm短く、孔30、32の垂直壁面とアームの対向面との間に、間隙が形成されている。より具体的には、アームの横方向の寸法は、5μmを超過する間隙Jが、垂直磁性体リング170の最も厚い部分と、孔30、32の垂直壁との間に生じるように選ばれている。垂直磁性体リング170の最も厚い部分は、2つのアームが軸Xに直交する面同士で重ね合わされている部分である。この間隙が存在するために、垂直磁性体リング170は機械的圧力を受けず、したがって、フラックスゲートセンサ2の精度が高くなる。
【0088】
図10は、磁化リング202の変位によって交流電圧を発生させる発電機200を示している。図10においては、本発明を理解するために必要な要素しか示されていない。したがって、例えばこの発電機の磁化リングを変位させる要素や、電子コントローラは示されていない。
【0089】
磁化リング202は、移動路206に沿って、上下方向の磁化の向きが交互に逆になるように配置されている、一連の磁石204N、204Sを有している。この場合、移動路206は、垂直回転軸208に中心を有する水平な円である。N極が上側になるように配置されている磁石に、参照数字204Nを付している。S極が上側になるように配置されている磁石に、参照数字204Sを付している。
【0090】
磁石204Nと204Sとが交互に並ぶように、磁石204N、204Sが、全移動路206に沿って配置されている。この場合、2個の磁石204Nの間に、必ず、1個の磁石204Sが挿入されている。例えば6個を超える磁石が、移動路206に沿って配置されている。
【0091】
この発電機は、さらに、各磁石による磁界を電圧に変換することができる一連のコイル212A、212Bを有している。この電圧への変換のために、これらのコイル212A、212Bは、一連の磁石204N、204Sに対向するように配置されている。コイル212A、212Bは、移動路206に沿って交互に配置されている。コイル212A、212Bは、それぞれの垂直巻線軸を、一方の向きに回りながら囲む場合と、他方の向きに回りながら囲む場合とがあるということ以外は、いずれも同一である。外側から開始して、内側に向かって、時計回りの向きに回りながら、垂直巻線軸を囲んでいるコイルには、符号212Aが付されている。その逆の向きに回るコイルには、符号212Bが付されている。コイル212Aと212Bとは、移動路206に沿って交互に配置されている。この場合に、2つのコイル212Aの間に、必ず、1つのコイル212Bが配置されている。
【0092】
コイルの横方向の寸法は、コイル212Aが磁石204Nに対向するときには、このコイル212Aに直接に隣接している、上流および下流のそれぞれのコイル212Bは、この磁石204Nに直接に隣接している、上流および下流のそれぞれの磁石204Sに対向するように設定されている。同様に、コイル212Aが磁石204Sに対向するときには、このコイル212Aに直接に隣接している、上流および下流のそれぞれのコイル212Bは、この磁石204Sに直接に隣接している、上流および下流のそれぞれの磁石204Nに対向する。用語「下流」および「上流」は、この例においては、垂直回転軸208のまわりの、コイル212A、212Bに相対的な、磁石204N、204Sの回転方向Sに基づいて定められている。したがって、1つのコイルが1つの磁石に対向するときに、そのコイルは、主として、この磁石の磁束に反応し、この磁石に隣接している磁石の磁束にはほとんど影響を受けない。
【0093】
各コイルは、垂直ビアによって互いに接続された、多層プリント基板214(この例においては2層の)の導電トラック(図11)で構成されている。図10においては、図を簡略化するために、多層プリント基板214は示されていない。
【0094】
これらの導電トラックは、上部メタライズ層と下部メタライズ層とに分配されている。
【0095】
用いる垂直ビアの数を少なくするために、コイル212A、212Bは、ペアにグループ化されている。各ペアは、1つのコイル211Aと、回転方向Sにおいて、このコイル211Aに直接隣接している1つのコイル212Bとを有している。各ペアにおいて、コイル212Bは、コイル212Aの上流に位置している。
【0096】
上部メタライズ層においては、同一のペアのコイル212Aおよび212Bのターンは、単一の導電トラック216によって構成されている。導電トラック216は、 次のように形成されている。
− 下りビアを始点として、内側から外側に向かって、反時計回りの向きに回りながら、コイル212Bの巻線軸を囲んでおり、次いで、
− 別の下りビアを終点として、外側から内側に向かって、時計回りの向きに回りながら、コイル212Aの巻線軸を囲んでいる。
【0097】
導電トラック216は、各巻線軸のまわりを、何回か完全に回っている。導電トラック216は、例えば上述の導電トラック90と同様のものである。
【0098】
下部メタライズ層においては、コイル212Bのターンは、導電トラック218によって構成されている。導電トラック218は、上りビアの下端を終点として、外側から内側に向かって、時計回りの向きに回りながら、コイル212Bの巻線軸を囲んでいる。導電トラック218は、さらに、外側から内側に向かって、時計回りの向きに回りながら、コイル212Bの上流側に直接隣接しているペアのコイル212Aの巻線軸を囲んでいる。
【0099】
このペアのコイル212Aの、下部メタライズ層におけるターンは、このコイル212Aの下流側で直接隣接しているペアのコイル212Bの、下部メタライズ層におけるターンをも構成している導電トラック218によって構成されている。
【0100】
したがって、導電トラック218は、隣接し合う2つのペアの隣接し合うコイル212Aと212Bとの、下部メタライズ層におけるターンを同時に構成している。導電トラック218は、さらに、隣接し合う2つのペアのコイルを直列に接続している。したがって、コイル212A、212Bの各々のターンを流れる電流は、常に、上部メタライズ層と下部メタライズ層とで同じ向きに回る。この直列接続によって、コイルが磁石に対向しているときに、コイルの各々によって発生する電圧が順次に加え合わされて、単純に増加していく。導電トラック218は、上述の導電トラック130と同様であるが、1角度ピッチ分だけ、上部メタライズ層の導電トラックからずれている。この角度ピッチは、隣接し合うコイル212A、212Bの、連続する2つの垂直巻線軸と、垂直回転軸208との間の角度に等しい。
【0101】
図11は、多層プリント基板214の上部メタライズ層を示している。図11において、ビアの上端が、円環によって示されている。これらの上端は、全て、垂直回転軸208を中心とする同一の円上に並んでいる。上部メタライズ層の導電トラック216は、軸220および222を対称軸とする2軸対称性を有している。軸220と222とは互いに直交しており、どちらも上部メタライズ層の面内にある。
【0102】
さらに、この実施形態においては、導電トラック216と218とを、同一水平面内に重ね合わせることによって、回転対称性を有するパターンが生じる。より具体的には、このパターンは、隣接し合うコイル212A、212Bの、連続する2つの垂直巻線軸間の角距離に等しい1角度ピッチだけの回転によって、回転前のパターンと一致する。
【0103】
この発電機の作動中に、コイルのペアのうちのコイル212Aが、磁石204Nに対向しているときには、コイル212Aは、電圧Uを発生させる。同時に、同じペアのうちのコイル212Bは、磁石204Sに対向しており、したがって、コイル212Bも、電圧Uを発生させる。同じことが、コイルの全てのペアにおいて生じる。コイルの全てのペアが、直列に接続されているから、各ペアで発生した電圧2Uが加え合わされ、したがって、はるかに大きな電圧が生じる。磁化リング202が、多層プリント基板214に相対的に変位すると、直前に磁石204Nに対向していたコイル212Aは、次の磁石204Sに対向する位置を占める。したがって、このコイル212Aは、他の全てのコイルと同様に、電圧−Uを発生させる。したがって、多層プリント基板214に相対的に、磁化リング202を回転変位させることによって、交流電圧が発生する。
【0104】
他の多くの実施形態が可能である。例えば上述のようにして作られたいくつかの多層プリント基板を、垂直方向に順に重ねることによって、多層プリント基板を厚くすることができる。このスタッキングにおいて、これらの多層プリント基板は、各コイルのターンの回る向きが同一に保たれるように相互に接続される。この場合に、いくつかの多層プリント基板を重ね合わせることによって、垂直磁性体リングの(長さ/幅)比、およびフラックスゲートセンサのターン数は増える。
【0105】
導電トラックは、メタライズ層のエッチングによって、またはメタライズ層への被着によって形成することができる。
【0106】
単純化された一変形例においては、垂直磁化リング全体に励磁磁界を発生させるために、単一の垂直励磁コイルが用いられる。
【0107】
各コイルを構成している導電トラックを、垂直補償コイル42の場合に説明したように、孔30および32のまわりに半周しかしないようにすることもできる。この半周は、巻線軸のまわりの単一の半周である。別の一変形例において、上向き巻線部が省かれる。
【0108】
多層プリント基板は、さらに、1つの水平面内に重ね合わせたときに、2軸対称性を有するパターンを示さない導電トラックを有する中間メタライズ層を備えていてもよい。
【0109】
図2、図5を参照して説明した上部メタライズ層、および/または下部メタライズ層が省かれている場合がある。この場合には、外部回路と各コイルとの電気的接続、および/またはコイル同士の電気的接続は、直接、中間メタライズ層においてなされる。
【0110】
各中間メタライズ層において、ビア96と98とを統合することができる。この場合には、下向き巻線部だけしかないが、良好な対称性を有するコイルが得られる。
【0111】
一変形例として、3層を超えるメタライズ層の導電トラックの重ね合わせが、2軸対称性を有するパターンを示す。
【0112】
重ね合わせによって、軸対称性を有するパターンが形成されるメタライズ層は、メタライズ層のスタックにおいて、連続し合っているメタライズ層である必要はない。
【0113】
垂直磁性体リングは、平行な2つの垂直磁性体バーに置き換えることができる。垂直磁性体リングと異なり、これらの垂直磁性体バーは、大きなギャップによって互いに磁気的に分離されている。この場合には、各垂直励磁コイルのターンは、これらの垂直磁性体バーのそれぞれの垂直軸34および36を同じ向きに回りながら囲んでいる。この構成においても、偶数次および奇数次の中間メタライズ層の導電トラックは、それらを1つの水平面上に重ね合わせることによって、2軸対称性を有するパターンが生じるようにレイアウトされている。
【0114】
上述の、垂直励磁コイルの巻線部を、水平で平行な複数の巻線軸を囲んで延在する励磁コイルを作るために用いることもできる。上述のように、これによって、水平磁性体リングのアーム間、または互いに平行で、磁気的に分離されている水平磁性体バー間に配置される垂直ビアの数が抑制される。
【0115】
コイルで囲まれた垂直磁性体リングの上部U字形状部分および下部U字形状部分は、細片またはワイヤの折り曲げ加工によって得ることができる。この場合には、これらの細片またはワイヤは、孔30および32を通って、1つ以上のターンを構成するように巻かれることが好ましい。
【0116】
垂直磁性体リングを水平方向に厚くするために、いくつかの上部U字形状部分、および下部U字形状部分を、それぞれプリント基板の上面側および下面側から、孔30および32内に挿入することができる。
【0117】
垂直のアーム176、178を、剛性のガイド内に収容することができる。このガイドは、例えば25℃におけるヤング率が5GPaを超過し、好ましくは、50GPaを超過する材料、または材料の組み合わせで作られている。剛性のガイドは、孔30、32への垂直のアームの挿入を容易にする。この場合には、垂直のアームとこのガイドとの間の間隙は、垂直のアームと、孔30、32の壁面との間の上述の間隙に相当する。このガイドは、さらに、磁気素子のより効果的な位置決めを可能にする。このガイドは、通常、垂直の各アームを受けるために、U字形状の水平断面を有している。
【0118】
一変形例として、複数の垂直磁性体リングを水平方向に重ねる場合に、それらの相互の電気的絶縁のために、電気絶縁体が、それらのアーム間に挿入される。それをなすために、電気絶縁材料から、U字形状の絶縁部材を切断し、次に、このU字形状の絶縁部材を、隣接する2つの垂直磁性体リング170の一方の上部U字形状部分172と、他方の下部U字形状部分174との間に挿入することができる。別の方法として、上部U字形状部分172と下部U字形状部分174との、重なり合う外面に粘性の液体または接着剤を塗るか、または注入することができる。さらに別の方法として、アームの表面を、電気絶縁性になるように処理することができる。この処理は、「パッシベーション」として知られている。
【0119】
磁石204N、204Sおよびコイル212A、212Bが配置される移動路は、必ずしも円形でなくてもよい。一変形例として、この移動路は、例えば直線状である。
【0120】
発電機200の多層プリント基板の下部メタライズ層のターンは、上部メタライズ層に形成されているターンと必ずしも同一でなくてもよい。例えば下部メタライズ層のターンの数は、上部メタライズ層のターンの数より少ない場合、または多い場合がある。
【0121】
多層プリント基板214は、さらなるターンが形成されている1層以上のメタライズ層を備えている場合がある。
【符号の説明】
【0122】
0 点
2 フラックスゲートセンサ
4、214 多層プリント基板
6 磁性体リング
8、9、11、12 磁性体バー
14〜17 励磁コイル
20〜23 測定コイル
26〜29 補償コイル
30、32 孔
34、36 垂直軸
38、39 垂直励磁コイル
40 垂直測定コイル
42 垂直補償コイル
50 電子処理ユニット
52、54、220、222 軸
56、58、60、62、64、66 接続パッド
68、72、78、80、82、84、94、96、98、100、106、108、110、112、118、120、122、124、136、138、144、146、154、156 ビア
70、74、90、92、102、104、114、116、130、132、140、142、150、152、160、162、164、216、218 導電トラック
170 垂直磁性体リング
172 上部U字形状部分
174 下部U字形状部分
176、178、180、182 アーム
184、186 水平部材
200 発電機
202 磁化リング
204N、204S 磁石
206 移動路
208 垂直回転軸
212A、212B コイル
J 間隙
S 回転方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板および磁界センサに関する。
【0002】
プリント基板すなわちPCBは、1セットの電気部品の電気的接続のために用いられる支持体である。プリント基板は、一般に、層状プレートまたは積層プレートの形態を呈している。このプリント基板は、単層プリント基板である場合もあるし、多層プリント基板である場合もある。単層プリント基板は、各電気部品を相互に電気的に接続するための導電トラックがプリントされている、ただ1層のメタライズ層しか有していない。これに反して、多層プリント基板は、いくつかのメタライズ層、すなわち、少なくとも2層のメタライズ層、好ましくは4層または6層を超えるメタライズ層を有している。以下の説明は、主として、このような多層プリント基板に関するものである。
【0003】
各メタライズ層は、プリント基板を構成している積層プレートの層の1つであり、それらの層には、各電気部品を相互に電気的に接続するための1つ以上の導電トラックが形成されている。これらの層は平坦であり、積層プレートの表面に平行に延在している。一般に、メタライズ層は、導電材料(通常、銅などの金属)の一様な層の被着、およびこの一様な層の、その後の、導電トラックだけを残すようなエッチングによって、得られる。
【0004】
プリント基板の各メタライズ層は、電気絶縁材料から成る電気絶縁層によって、物理的に互いに分離されている。この電気絶縁材料は、高い絶縁耐力、すなわち,通常3MV/mを超過し、好ましくは10MV/mを超過する絶縁耐力を有している。電気絶縁材料は、例えばエポキシ樹脂、および/またはガラス繊維でできている。電気絶縁層は、一般に、他の層と結合したときに軟化しない材料から成る剛性板の形態を呈している。電気絶縁層は、例えば不可逆的な熱硬化処理を受けた熱硬化性樹脂でできている。
【0005】
多層プリント基板の各層は、「樹脂含浸」層、より一般的には「プリプレグ」層として知られている接着層を介して、何らの自由度なしに互いに結合している。
【0006】
樹脂含浸層は、一般に、ファブリックなどの補強材に、熱硬化性樹脂を含浸させることによって作られる。この熱硬化性樹脂は、通常、エポキシ樹脂である。プリント基板の製造中に、熱硬化性樹脂の変態によって、含浸材料が、プリント基板の各層に不可逆的に密着した、剛性の固体物質に転換する、不可逆的な重合化がもたらされる。通常、樹脂含浸層を、高温に加熱、かつ高圧で圧縮したときに、熱硬化性樹脂の各々の変態が生じる。この場合の、高温とは、100℃を超過する温度、好ましくは150℃を超過する温度である。高圧とは、0.3MPaを超過する圧力であるが、通常は、1MPaを超過する圧力である。
【0007】
電気絶縁層を貫通している導電孔によって、複数のメタライズ層の導電トラックを電気的に接続することができる。この導電孔は、「ビア」または「ビアホール」として、一般的に知られている。ビアは、一般に、電気絶縁層の表面に垂直に延びている。これらのビアを作るには、いくつかの方法がある。最も一般的な方法の1つは、1層以上の電気絶縁層に、それらの上下を貫くように孔を形成し、次いで、それらの孔の内壁を金属で覆うことである。したがって、これらのビアは、メタライズホール(金属で被覆された孔)と呼ばれる。
【0008】
ビアは、必ずしも、プリント基板の全ての電気絶縁層を貫通しているとは限らない。例えばプリント基板の片側の外表面にしか開口していないブラインドビアホールが存在する。今日では、さらに、例えばHDI(High Density Interconnect:高密度配線)技術などの公知の技術を用いて、「ベリード」ビアを形成することもできる。ベリードビアは、プリント基板のいずれの外表面にも開いていない。ベリードビアは、例えばプリント基板の内部に埋め込まれた複数のメタライズ層に形成されている導電トラックを電気的に接続する。
【背景技術】
【0009】
従来、次のものを備えている、プリント基板が存在する。
・ 電気絶縁層によって物理的に互いに分離された、いくつかのメタライズ層の、垂直方向に沿ったスタックと、
・ それぞれのメタライズ層に形成されている導電トラックによって構成され、電気絶縁層の少なくとも1つを貫通している導電孔によって、互いに電気的に接続されている複数のターンを有し、それぞれに対応する少なくとも1つの垂直巻線軸に沿って延在している、少なくとも1つのコイル。
【0010】
このようなプリント基板は、例えば特許文献1または特許文献2によって公知である。
【0011】
このようなプリント基板に関する従来技術は、特許文献3によっても公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7511591号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許公開第1168387号公報
【特許文献3】米国特許第4080585号公報
【特許文献4】米国特許第7372261号公報
【特許文献5】国際公開第WO08/016198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来技術によるプリント基板においては、コイルによって発生する、巻線軸に沿う磁界は、ほとんど一様性を有しておらず、かつ理想的なコイルによって発生するおそれのある磁界に、対照的なバイアスを有することが指摘されている。このような磁界の非一様性によって、これらのコイルによる測定に誤りが発生する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、このような欠点を修正することを目的としている。この目的を達成するために、本発明は、垂直方向に連続している第1のメタライズ層と第2のメタライズ層とに形成されている、コイルの導電トラックの、メタライズ層に平行な1つの平面上への重ね合わせによって、互いに直交しており、かつメタライズ層に平行である軸XおよびYを対称軸とする2軸対称性を有するパターンが形成され、重ね合わされる第1のメタライズ層および第2のメタライズ層の各々の単一または複数の導電トラックは、それだけでは軸Xおよび/またはYを対称軸とする軸対称性を有していないプリント基板を提供するものである。
【0015】
プリント基板においては、各メタライズ層のコイルの導電トラックは、例えば完全なループを形成するように始点に終端するということは、それによって、ターンが短絡するためにあり得ない。さらに、ビアが垂直であるために、各メタライズ層の各コイルの導電トラックの始点の位置は、そのメタライズ層の上のメタライズ層に位置している、この同じコイルの導電トラックの終点の位置に定められる。
【0016】
これらの制約のために、プリント基板が作られたとき、各メタライズ層の各コイルの導電トラックは、その下のメタライズ層に位置する同じコイルの導電トラックと完全には一致しない。したがって、各メタライズ層に形成されている導電トラックの間には、ずれが存在する。これらのずれによって、各メタライズ層の導電トラックによって発生する磁界は、そのメタライズ層の上または下に位置している別のメタライズ層の導電トラックによって発生する磁界と異なるようになる。これは、巻線軸に沿った磁界が一様ではないことを意味する。さらに、特別の予防措置を講じない限り、導電トラック間のずれによる影響を相殺することはできない。一方、特別の注意を払わない限り、これらのずれが加算されて、このプリント基板のコイルによって発生する磁界に、このコイルが、磁心のまわりに導線を機械的に巻くことによって作られている場合に発生するおそれのある磁界に比して、より大きなバイアスがもたらされる。
【0017】
第1のメタライズ層と第2のメタライズ層との導電トラック間に軸対称性を生み出す上述のレイアウトによって、第1のメタライズ層の導電トラックのずれは、第2のメタライズ層の導電トラックのずれによって、少なくとも部分的に相殺される。これによって、プリント基板に形成されているコイルによって発生する磁界や測定される磁界に現れ得るバイアスの大きさが抑制される。
【0018】
さらに、第1のメタライズ層と第2のメタライズ層とが連続しているという事実によって、巻線軸に沿って発生する磁界の一様性が改善される。
【0019】
本発明のプリント基板の実施形態には、次の特性のうちの1つ以上を有する形態が含まれる。
− 第1のメタライズ層の導電トラックは、第1の対称中心を中心とする中心対称性を有しており、第2のメタライズ層の導電トラックは、第2の対称中心を中心とする中心対称性を有しており、第1の対称中心と第2の対称中心とは、垂直方向から見て一致している。
− 各コイルは、下降しながら、対応する垂直巻線軸を囲んでいる下向き巻線部をなしている、複数の第1の導電トラックと、上昇しながら、この垂直巻線軸を囲んでいる上向き巻線部をなしている、複数の第2の導電トラックとを有しており、下向き巻線部と上向き巻線部とは、上向き巻線部と下向き巻線部とで、電流が同じ向きに回るように、直列接続されている。
− 上述の重ね合わせにおいて、次のような対称性が得られる。
・ 第2のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラックは、軸Yに関して、第1のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラックに対称であり、かつ軸Xに関して、第1のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラックに対称であり、
・ 第2のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラックは、軸Yに関して、第1のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラックに対称であり、かつ軸Xに関して、第1のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラックに対称である。
− このプリント基板は、垂直巻線軸に沿って延びている、磁心を受容するための貫通孔を有している。
− Nを2以上の自然数であるとしたときに、メタライズ層のスタックは、1層の上部メタライズ層、1層の下部メタライズ層、および上部メタライズ層と下部メタライズ層との間の、N層の中間メタライズ層を有しており、垂直方向に重ねられた2層の中間メタライズ層から成るペアが(N−1)組以上存在し、ペアを構成している2層の中間メタライズ層は、それぞれ第1のメタライズ層および第2のメタライズ層に対応している。
【0020】
さらに、プリント基板のこれらの実施形態は、次の利点を有している。
− さらに、導電トラックが中心対称性を有しているという事実によって、垂直巻線軸に沿う磁界の一様性が増す。
− コイルを、下向き巻線部と上向き巻線部とによって形成することによって、コイルへの/からの信号の入出力を行うための全ての接続ピンを、プリント基板の同一の面上に配置することができる。これによって、さらに、垂直巻線軸に沿う磁界の一様性が増す。
【0021】
本発明は、さらに、次のものを備えている磁界センサを提供するものである。
− 少なくとも1つの磁心と、
− 磁心を飽和磁化させることができる励磁コイルおよび測定コイルの機能を満たすための1つ以上のコイル。
【0022】
この磁界センサは、さらに、上述のプリント基板を備えており、このプリント基板のコイルには、磁界センサの励磁コイル、および/または測定コイルの機能を満たすためのコイルが含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による磁界センサの斜視図である。
【図2】図1の磁界センサのコイルを作るために、上部メタライズ層にエッチングによって形成された導電トラックの平面図である。
【図3】図1の磁界センサのコイルを作るために、偶数次の中間メタライズ層にエッチングによって形成された導電トラックの平面図である。
【図4】図1の磁界センサのコイルを作るために、奇数次の中間メタライズ層にエッチングによって形成された導電トラックの平面図である。
【図5】図1の磁界センサのコイルを作るために、下部メタライズ層にエッチングによって形成された導電トラックの平面図である。
【図6】図3と図4との導電トラックを、一平面上に重ね合わせた図である。
【図7】図1の磁界センサに用いられる、コイルで囲まれた垂直磁性体リングの組立分解斜視図である。
【図8】図1の磁界センサに用いられる、コイルで囲まれた垂直磁性体リングの組立後の斜視図である。
【図9】図8の、コイルで囲まれた垂直磁性体リングの上部U字形状部分と下部U字形状部分とのアームの重ね合わせを示す部分断面図である。
【図10】本発明による交流発電機の斜視図である。
【図11】図10の交流発電機のプリント基板に形成されている導電トラックの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、単に非限定的な例として提供する以下の説明を読むことによって、本発明を、より明瞭に理解しうると思う。
【0025】
添付図面において、同等の要素には、同一の符号を付してある。
【0026】
以下の説明において、当業者に公知である特性および機能については、詳細に説明しない。
【0027】
図1は、フラックスゲートセンサ2を示している。このフラックスゲートセンサ2は、外部磁界Tの方向を、さらに、必要に応じて、その強度を測定することができる。より具体的には、フラックスゲートセンサ2は、外部磁界Tの、同一直線上にない3つの軸X、Y、Zへの投影にそれぞれ一致する外部磁界成分TX、TY、TZを測定する。軸X、Y、Zは、互いに直交している。軸Zは垂直軸であり、軸XおよびYは、水平面を定めている。
【0028】
フラックスゲートセンサは、当業者にはよく知られている。その機能に関しては、例えば特許文献4を参照することができる。したがって、この説明においては、本発明を理解するために必要な特徴だけについて、詳細に述べる。
【0029】
フラックスゲートセンサ2は、多層プリント基板4を備えている。多層プリント基板4は、通常、2層または5層を超えるメタライズ層、好ましくは10層を超えるメタライズ層を有している。図1の場合には、多層プリント基板4は、10層のメタライズ層を有している。図1においては、単純化のために、多層プリント基板4の1層しか示されていない。メタライズ層は、軸Zに沿って、上下にスタックされている。軸Zに沿った、最も上のメタライズ層は、多層プリント基板4の上面に一致し、一方、最も下のメタライズ層は、多層プリント基板4の下面と一致している。
【0030】
多層プリント基板4は、水平な環状の凹み内に収容された磁性体リング6を有している。磁性体リング6は、多層プリント基板4の上面と下面との間に位置している。磁性体リング6は、通常、1000を超過し、好ましくは10000を超過する静的な比透磁率、すなわち周波数0Hzにおける比透磁率を有する磁性材料で作られている。この磁性材料は、例えばミューメタル、または「Vitrovac(登録商標)」6025として商業的に知られている磁性金属である。
【0031】
磁性体リング6は、多層プリント基板4から独立に製造され、次いで、多層プリント基板4の製造中に、水平な環状の凹み内に挿入される。これを可能にするために、磁性体リング6の横方向の寸法、すなわち図1の場合には、垂直断面における磁性体リング6の寸法は、凹みの対応する横方向の寸法より少なくとも5μmだけ、好ましくは少なくとも100μmだけ短くされている。したがって、凹みの壁面と磁性体リング6の対向面との間には間隙が存在する。この間隙の存在のために、磁性体リング6は、多層プリント基板4から機械的圧力を受けない。磁性体リング6に及ぼされるいかなる機械的圧力も、磁気歪みによって、磁性体リング6の磁気特性を変化させる。したがって、測定される外部磁界Tに外乱を導き入れるから、機械的圧力を受けないことによって、フラックスゲートセンサ2の精度は著しく向上する。
【0032】
磁性体リング6は、軸Xに平行に2つの磁性体バー8および9、軸Yに平行に2つの磁性体バー11および12を有している。これらの磁性体バーの端部は、磁性材料から成るコーナー部により互いに連結されて、磁性体リング6を形成している。
【0033】
磁性体リング6を飽和磁化させるための、4つの励磁コイル14〜17が、多層プリント基板4内に形成されている。これらの励磁コイルは、同一の励磁電流iexHを、励磁周波数fexHで流される。励磁周波数fexHは、通常、300Hzを超過するが、10kHzを超過することが好ましい。図1の場合には、励磁コイル14〜17は、それぞれ磁性体バー11、8、12、9を囲んでいる。
【0034】
励磁コイル14〜17に励磁電流iexHが流されたときに、一方の向きに、励磁磁界BexHと呼ばれる磁界が発生するように、励磁コイル14〜17は、互いに直列に接続されている。各励磁コイル14〜17は、磁性体リング6の上側および下側にそれぞれ1層ずつ位置している、多層プリント基板4の2層のメタライズ層に形成されている導電トラックによって、それらのほとんどを構成されている。導電トラックの端部は、垂直のビアによって互いに連結されている。これによって、磁性体リング6の上側と下側とに位置しているメタライズ層が連続的に結合され、励磁コイル14〜17の各々の各ターンが形成されている。水平軸に沿って延在しているコイルに関する、このような形態は、例えば特許文献5に開示されている。
【0035】
多層プリント基板4は、さらに、磁性体バー11、8、12、9の磁界を測定するために、それらを、それぞれ1つずつ囲んでいる4つの測定コイル20〜23を有している。これらの測定コイル20〜23の各々によって測定される磁界の測定値を、それぞれ、M1、M2、M3、M4とする。これらの測定値は、次の関係式のようになっている。
・ M1=TY−BexH
・ M2=TX+BexH
・ M3=TY+BexH
・ M4=TX−BexH
【0036】
これらの関係式は、次の条件の下におけるものである。
− 励磁磁界BexHは、反時計回りの向きに回っており、
− 外部磁界成分TXおよびTYは、それぞれ軸XおよびYと同じ方向に向いている。
【0037】
図1において、測定コイル20〜23は、それぞれ励磁コイル14〜17を囲んでいる。これらの測定コイル20〜23は、励磁コイル14〜17の導電トラックを形成するために用いられているメタライズ層の上側および下側に位置しているメタライズ層に形成されている導電トラックによって、それらのほとんどが構成されている。
【0038】
この実施形態においては、磁性体バー11、8、12、9の磁界を打ち消すために、さらに、4つの補償コイル26〜29が、それぞれ測定コイル20〜23を囲んでいる。したがって、外部磁界成分TXおよびTYの測定値は、補償コイル26〜29に流れる補償電流icHの強度から演繹される。
【0039】
補償コイル26〜29は、測定コイルの導電トラックを形成するために用いられているメタライズ層の上側および下側に位置しているメタライズ層に形成されている導電トラックによって、それらのほとんどを構成されている。
【0040】
この場合には、測定がゼロ磁界空間においてなされるから、軸XとYとに沿って測定される測定値間に生じる磁気結合は、このような構成でない場合に比して減少する。
【0041】
多層プリント基板4は、さらに、外部磁界成分TZを測定するための垂直コイルを有している。用語「垂直コイル」は、垂直軸を囲んで、垂直軸に沿って延在しているコイルを意味している。図2〜図5を参照して、垂直コイルについて詳細に説明する。図1においては、垂直コイルは、きわめて概略的にしか示されていない。
【0042】
より具体的には、2つの孔30および32が、それぞれ垂直軸34および36に沿って、多層プリント基板4の一方の側(上面)から他方の側(下面)まで通じている。これらの孔30および32は、垂直磁性体リングの2つのアームの一方および他方を受容するようになっている。図を単純化するために、この垂直磁性体リングは、図1には示されていない。
【0043】
これらの孔30および32の周囲において、多層プリント基板4は、2つの垂直励磁コイル38および39を有している。垂直励磁コイル38および39は、励磁周波数fexvの励磁電流iexvを流されたときに、垂直磁性体リングを飽和磁化させる励磁磁界Bexvを発生させることができる。励磁電流iexvおよび励磁周波数fexvは、例えばそれぞれ励磁電流iexHおよび励磁周波数fexHに等しくされている。
【0044】
垂直測定コイル40が、2つの孔30および32を囲んでいる。この垂直測定コイル40は、垂直磁性体リングの磁界を測定するようになっている。
【0045】
最後に、垂直補償コイル42が、多層プリント基板4内に形成されている。垂直補償コイル42は、孔30および32を囲んでいる。上述の補償コイル26〜29と同様に、垂直補償コイル42は、それに補償電流icvが流されたときに、垂直磁性体リングの磁界を打ち消す機能を有している。
【0046】
垂直励磁コイル38および39、垂直測定コイル40、垂直補償コイル42の各ターンは、多層プリント基板4の各メタライズ層に形成されている各1つの導電トラックによって構成されている。同じコイルの各ターン間を電気的に互いに接続するために、同じコイルに属する導電トラック同士は、垂直ビアによって互いに結合されている。
【0047】
最後に、フラックスゲートセンサ2は、励磁コイルおよび補償コイル、垂直励磁コイルおよび垂直補償コイルへの電流供給を制御することができ、また外部磁界Tの測定値を得るために、測定コイルおよび垂直測定コイルからの信号を処理することができる電子処理ユニット50を備えている。通常、外部磁界Tの各外部磁界成分の測定値は、測定コイルまたは垂直測定コイルの端子間電圧のうちの、励磁周波数の高調波である周波数を有する電圧の振幅から得られる。図を単純化するために、図1には、電子処理ユニット50と各コイルとの間の電気接続部を示していない。
【0048】
ここで、図2〜図6を参照して、垂直励磁コイル38および39、垂直測定コイル40、垂直補償コイル42について、より詳細に説明する。
【0049】
図2〜図5は、それぞれ上部メタライズ層、偶数次の中間メタライズ層、奇数次の中間メタライズ層、下部メタライズ層に形成されている導電トラックを示している。上部メタライズ層には、垂直励磁コイル38および39、垂直測定コイル40、垂直補償コイル42の上端部を構成している導電トラックが含まれている。下部メタライズ層には、垂直励磁コイル38および39、垂直測定コイル40、垂直補償コイル42の下端部を構成している導電トラックが含まれている。
【0050】
偶数次および奇数次の中間メタライズ層は、上部メタライズ層と下部メタライズ層との間に位置している。これらの中間メタライズ層には、各コイルのターンの主要部分を構成している導電トラックが含まれている。これらの中間メタライズ層は、偶数次の中間メタライズ層と奇数次の中間メタライズ層とが交互になるように、上下にスタックされている。偶数次の中間メタライズ層は、全て互いに同じ構造を有しているから、これらの偶数次の中間メタライズ層のうちの1つだけを、図3を参照して詳細に説明する。同様に、奇数次の中間メタライズ層は、全て互いに同じ構造を有しているから、これらの奇数次の中間メタライズ層のうちの1つだけを、図4を参照して詳細に説明する。中間メタライズ層の数は2層を超えており、4層または8層を超えていることが好ましい。
【0051】
上部メタライズ層、中間メタライズ層、下部メタライズ層の各々に直交するように、孔30および32が穿たれている。これらのメタライズ層の断面は、全てのメタライズ層において同一である。孔30と32との水平面上の形状は細長く、同一の軸52に沿って延びている。さらに、軸52は、孔30および32の対称軸である。さらに、孔30と32とは、軸52に直交する別の軸54に関して互いに対称である。軸52と54とは、点0で交差している。以下の説明において、いずれのメタライズ層においても、符号52、54が付されている軸は、それぞれ同一の対称軸を示している。
【0052】
この実施形態においては、垂直励磁コイル38および39、垂直測定コイル40、垂直補償コイル42の各々は、下向き巻線部および上向き巻線部を有している。同一のコイルを形成するために、下向き巻線部と上向き巻線部とを用いることによって、各コイルに対する信号の入出力のために、多層プリント基板の同じ面上に、2つの接続パッドを形成することが可能になる。図2〜図5の例においては、これらの接続パッドは、多層プリント基板の上面に形成されている。
【0053】
各コイルの下向き巻線部は、多層プリント基板の上面に形成されている一方の接続パッドから下面に向かって下るように、孔30、32の一方または両方を囲んでいる。逆に、上向き巻線部は、下面から上面に形成されている他方の接続パッドに向かって上るように、孔30、32の一方または両方を囲んでいる。したがって、下向き巻線部と上向き巻線部とは、どちらの接続パッドを始点とし、どちらの接続パッドを終点とするかによって、反対になる。以下の説明においては、接続パッド56、62、66を始点、接続パッド58、60、64を終点としている。したがって、接続パッド56、62、66から下面に向かう巻線部が下向き巻線部、下面から接続パッド58、60、64に向かう巻線部が上向き巻線部である。同一のコイルの下向き巻線部と上向き巻線部とは、それらを流れる電流が、常に、孔30、32の一方または両方のまわりに同じ向きに回るように、直列に接続されている。
【0054】
以下の説明において、用語「接続」は、電気的接続を意味している。
【0055】
垂直励磁コイル38と39とは、それぞれ孔30と32とを、互いに逆向きに囲んでいる。垂直測定コイル40と垂直補償コイル42とは、どちらも、垂直励磁コイル38および39を、したがって孔30および32を囲んでいる。垂直補償コイル42は、垂直測定コイル40を囲んでいる。
【0056】
図2〜図5において、導電トラック端に位置している円環は、その導電トラックを、その直下のメタライズ層の導電トラックに接続しているビア(以下、下りビアと呼ぶ)の端を表わしている。対照的に、導電トラック端に位置している実点は、その導電トラックを、その直上のメタライズ層の導電トラックに接続しているビア(以下、上りビアと呼ぶ)の端を表わしている。したがって、下りビア、上りビアという名称は絶対的なものではなく、同一のビアが、その上端にある導電トラックを基準にしたときに、下りビアと呼ばれ、下端にある導電トラックを基準にしたときに、上りビアと呼ばれる。したがって、円環は、ビアの上端と一致しており、一方、実点は、ビアの下端と一致している。
【0057】
図2は、垂直励磁コイル38および39に励磁電流を供給するための接続パッド56および58を示している。これらの2つの接続パッドは、軸52に関して互いに反対側で、軸54上に位置している。
【0058】
上部メタライズ層には、さらに、接続パッド60および62が含まれている。垂直測定コイル40が、垂直磁性体リング内の磁界を表わす電圧を、接続パッド60と62との間に出力する。
【0059】
この上部メタライズ層には、さらに、垂直補償コイル42に補償電流を供給するための接続パッド64および66が含まれている。
【0060】
接続パッド56は、導電トラック70を介して、下りビアであるビア68に接続されている。導電トラック70は、孔30を、外側から内側に向かって、時計回りの向きに回りながら囲んでいる。この導電トラック70は、ビア68に達するまでに、孔30のまわりを、何回か完全に回っている。
【0061】
接続パッド58は、導電トラック74を介して、下りビアであるビア72に接続されている。導電トラック74は、点0に関して、導電トラック70と中心対称の関係にある。
【0062】
接続パッド60、62、64、66は、それぞれ下りビアであるビア78、80、82、84に接続されている。
【0063】
図3は、偶数次の中間メタライズ層を示している。この中間メタライズ層において、垂直励磁コイル38および39の下向き巻線部のターンは、単一の導電トラック90によって構成されている。同様に、垂直励磁コイル38および39の上向き巻線部のターンは、単一の導電トラック92によって構成されている。導電トラック90は、次のように形成されている。
− 上りビアであるビア94を始点として、孔30を、内側から外側に向かって、時計回りの向きに回りながら囲んでおり、次いで、
− 下りビアであるビア96を終点として、孔32を、外側から内側に向かって、反時計回りの向きに回りながら囲んでいる。
【0064】
導電トラック92は、一定の間隔すなわち距離を置いて、導電トラック90に沿って延在している。したがって、導電トラック92は、次のように形成されている。
− 下りビアであるビア98を始点として、孔30を、内側から外側に向かって、時計回りの向きに回りながら囲んでおり、次いで、
− 上りビアであるビア100を終点として、孔32を、外側から内側に向かって、反時計回りの向きに回りながら囲んでいる。
【0065】
導電トラック90および92は、孔30および32のまわりを、何回か回っている。
【0066】
この中間メタライズ層においては、垂直測定コイル40の下向き巻線部、および上向き巻線部のターンは、ただ2つの導電トラック、すなわち、それぞれ導電トラック102および導電トラック104によって構成されている。導電トラック102は、上りビアであるビア106を始点、下りビアであるビア108を終点として、導電トラック90および92を、外側から内側に向かって、反時計回りの向きに回りながら囲んでいる。導電トラック104は、下りビアであるビア110を始点、上りビアであるビア112を終点として、導電トラック90および92を、外側から内側に向かって、反時計回りの向きに回りながら囲んでいる。導電トラック102および104は、孔30および32のまわりを、何回か完全に回っている。
【0067】
垂直補償コイル42の下向き巻線部および上向き巻線部のターンは、ただ2つの導電トラック、すなわち、それぞれ導電トラック114および116によって構成されている。導電トラック114および116は、導電トラック102および104を囲んでいる。より具体的には、導電トラック114は、上りビアであるビア118から、下りビアであるビア120に向かって、時計回りの向きに回りながら、導電トラック102および104を囲んでいる。導電トラック116は、上りビアであるビア124から、下りビアであるビア122に向かって、反時計回りの向きに回りながら、導電トラック102および104を囲んでいる。この例においては、導電トラック114および116は、この中間メタライズ層において、半ターンしか構成していない。
【0068】
ビア106、108、110、112、118、120、122、124は、全て、軸54上に並んでいる。
【0069】
この中間メタライズ層における各コイルの上向き巻線部と、下向き巻線部とを構成している2つの導電トラックは、点0に関して互いに中心対称の関係にあるが、軸対称の関係にはない。
【0070】
図4は、図3の中間メタライズ層の直下に位置している奇数次の中間メタライズ層に形成されている導電トラックを示している。したがって、図3の下りビアの下端が、上りビアの下端として、図4にも示されている。したがって、これらの上りビアの下端には、図3の下りビアの上端と同一の数字を付している。
【0071】
垂直励磁コイル38および39の下向き巻線部および上向き巻線部のターンは、ただ2つの導電トラック130および132によって構成されている。導電トラック130は、上りビアであるビア96から下りビアであるビア136まで延在している。導電トラック132は、上りビアであるビア98から下りビアであるビア138まで延在している。
【0072】
垂直測定コイル40の下向き巻線部および上向き巻線部のターンは、ただ2つの導電トラック140および142によって構成されている。導電トラック140は、上りビアであるビア108から下りビアであるビア144まで延在している。導電トラック142は、上りビアであるビア110から下りビアであるビア146まで延在している。
【0073】
最後に、垂直補償コイル42の下向き巻線部および上向き巻線部のターンは、ただ2つの導電トラック150および152によって構成されている。導電トラック150は、上りビアであるビア120から下りビアであるビア154まで延在しており、導電トラック152は、上りビアであるビア122から下りビアであるビア156まで延在している。
【0074】
導電トラック130、132、140、142、150、152は、それぞれ導電トラック92、90、104、102、116、114を、軸52に関して反転させることによって導き出される。さらに、導電トラック130、132、140、142、150、152は、それぞれ導電トラック90、92、102、104、114、116を、軸54に関して反転させることによっても導き出される。したがって、これらの導電トラックの構造について、これ以上、詳細に説明しない。さらに、図3の場合と同様に、各コイルを構成している2つの導電トラックは、点0に関して互いに中心対称の関係にあるが、軸対称の関係にはないことが認識される。
【0075】
ビア108、110、120、122、144、146、154、156は、軸54上に並んでいる。
【0076】
図5は、各コイルの下向き巻線部と上向き巻線部とを互いに接続するための導電トラックを有している下部メタライズ層を示している。下向き巻線部と上向き巻線部とは、信号が入出力されているときに、それらのターンを流れる電流が同じ向きに回るように、互いに接続されている。説明を簡単にするために、この下部メタライズ層は、図4の奇数次の中間メタライズ層の直下にあるとする。したがって、図5には、図4の下りビアの下端が、上りビアの下端として示されている。
【0077】
垂直励磁コイル38および39には、ビア136を始点として、内側から外側に向かって、時計回りの向きに回りながら孔30を囲んでおり、次いで、ビア138を終点として、外側から内側に向かって、反時計回りの向きに回りながら孔32を囲んでいる導電トラック160が含まれている。この導電トラック160は、点0に関して中心対称性を有している。導電トラック160は、孔30および32を、何回か完全に回っている。
【0078】
導電トラック162は、垂直測定コイル40のビア144と146とを接続している。導電トラック164は、垂直補償コイル42のビア154と156とを接続している。
【0079】
中間メタライズ層の導電トラック90と92とのセット、または130と132とのセットは、孔30および32を、互いに逆向きに回りながら囲んでいるから、いずれか一方だけでは軸対称性を有することはできない。
【0080】
中間メタライズ層における2つの導電トラック102と104とのセットも、2つの導電トラック140と142とのセットも、いかなる軸対称性も有し得ない。実際、これらの下向き巻線部と上向き巻線部との、どちらのセットの2つの導電トラックも、同一の中間メタライズ層内に形成されており、したがって、2つの導電トラックは、互いにずれている必要がある。このことは、導電トラック90と92、130と132、114と116、150と152の各セットに対しても当てはまる。
【0081】
本発明において、各コイルを上述のような構造にする目的の1つは、それぞれの巻線軸に沿う磁界の一様性を高めて、理想コイルに対照的に観察されるバイアスを抑制するために、各コイルの対称性を高めることである。偶数次および奇数次の各中間メタライズ層の導電トラックの、本明細書に説明されているレイアウトにおいては、それらの導電トラックを、単一の水平面内に重ね合わせたときに、新たな対称軸が生じて、この目的が達成される。偶数次の中間メタライズ層と奇数次の中間メタライズ層とを重ね合わせた状態が、図6に示されている。この重ね合わせによって、軸52、54をそれぞれの対称軸とする、2つの軸対称が生じる。これによって、ワイヤ巻線に比してバイアスが減り、巻線軸に沿う磁界の一様性が増す。したがって、全ての偶数次および全ての奇数次の中間メタライズ層の導電トラックを重ね合わせたとき、平面図である図6においては、1つの偶数次および1つの奇数次の中間メタライズ層の導電トラックしか、目視することができない。
【0082】
最後に、上述の実施形態において、上部メタライズ層の直下に位置している、偶数次の中間メタライズ層を、その直下の奇数次の中間メタライズ層と重ね合わされたときに、これらの2つの中間メタライズ層の重ね合わせは、完全には軸対称になり得ない。実際、この偶数次の中間メタライズ層において、ビア106、112、118、124は、それぞれ上部メタライズ層のビア80、78、84、82の下端と一致するように、軸54からわずかにずらされている。しかしながら、この偶数次の中間メタライズ層を除けば、他のいずれの偶数次の中間メタライズ層も、奇数次の中間メタライズ層の任意の1つと重ね合わせられたときに、それらの重ね合わせは、完全な2軸対称性を備える。
【0083】
図7および図8は、外部磁界成分TZを測定するために、フラックスゲートセンサ2において用いられる、コイルで囲まれた垂直磁性体リングを示している。図7および図8において、フラックスゲートセンサ2の他の部品は示していない。より具体的には、垂直磁性体リング170を、多層プリント基板4の孔30および32に通すことによって、このコイルで囲まれた垂直磁性体リングが形成されている。図7は、コイルで囲まれた垂直磁性体リングの分解組立図であり、図8は、同じコイルで囲まれた垂直磁性体リングの組み立て後の図である。垂直磁性体リング170は、上部U字形状部分172および下部U字形状部分174によって構成されている。上部U字形状部分172および下部U字形状部分174は、それぞれ、「U」字の底を構成している水平部材184および186に結合された各2つの垂直のアーム176、178および180、182を有している。
【0084】
上部U字形状部分172および下部U字形状部分174は、1000を超過し、好ましくは10000を超過する静的な比透磁率を有する磁性材料から成る板材からカットされたものである。この磁性材料は、例えばミューメタル、または「Vitrovac(登録商標)」6025として商業的に知られている磁性金属である。このような製造方法を用いることによって、磁性材料に加えられる機械的圧力が抑制される。とりわけ、このような製造方法によって、磁性材料の折り曲げ加工なしに、U字形状を形成することができる。上部U字形状部分172および下部U字形状部分174は、実質的に、軸52を通る垂直面YZ内に延在している。上部U字形状部分172および下部U字形状部分174の各々の幅方向は、この垂直面内にある。上部U字形状部分172および下部U字形状部分174の厚さ方向は、この垂直面と直交している。上部U字形状部分172および下部U字形状部分174の厚さは、通常、250μm未満であるが、100μm未満、または25μm未満であることが好ましい。
【0085】
アーム176、178は、多層プリント基板4の上面側から、それぞれ孔30、32に挿入されている。一方、アーム180、182は、多層プリント基板4の下面側から、それぞれ孔30、32に挿入されている。
【0086】
図9に示すように、この実施例においては、アーム176と180とは、孔30内で、軸Xに直交する面同士で重ね合わされており、これによって、磁気的連続性が確保されている。アーム176と180とは、例えば、これらの垂直方向長さの1/3を超過して、重ね合わされている。アーム178と182も、同様に、孔32内で重ね合わされている。
【0087】
アームの横方向の寸法は、孔30、32の対応する横方向の寸法より、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも100μm短く、孔30、32の垂直壁面とアームの対向面との間に、間隙が形成されている。より具体的には、アームの横方向の寸法は、5μmを超過する間隙Jが、垂直磁性体リング170の最も厚い部分と、孔30、32の垂直壁との間に生じるように選ばれている。垂直磁性体リング170の最も厚い部分は、2つのアームが軸Xに直交する面同士で重ね合わされている部分である。この間隙が存在するために、垂直磁性体リング170は機械的圧力を受けず、したがって、フラックスゲートセンサ2の精度が高くなる。
【0088】
図10は、磁化リング202の変位によって交流電圧を発生させる発電機200を示している。図10においては、本発明を理解するために必要な要素しか示されていない。したがって、例えばこの発電機の磁化リングを変位させる要素や、電子コントローラは示されていない。
【0089】
磁化リング202は、移動路206に沿って、上下方向の磁化の向きが交互に逆になるように配置されている、一連の磁石204N、204Sを有している。この場合、移動路206は、垂直回転軸208に中心を有する水平な円である。N極が上側になるように配置されている磁石に、参照数字204Nを付している。S極が上側になるように配置されている磁石に、参照数字204Sを付している。
【0090】
磁石204Nと204Sとが交互に並ぶように、磁石204N、204Sが、全移動路206に沿って配置されている。この場合、2個の磁石204Nの間に、必ず、1個の磁石204Sが挿入されている。例えば6個を超える磁石が、移動路206に沿って配置されている。
【0091】
この発電機は、さらに、各磁石による磁界を電圧に変換することができる一連のコイル212A、212Bを有している。この電圧への変換のために、これらのコイル212A、212Bは、一連の磁石204N、204Sに対向するように配置されている。コイル212A、212Bは、移動路206に沿って交互に配置されている。コイル212A、212Bは、それぞれの垂直巻線軸を、一方の向きに回りながら囲む場合と、他方の向きに回りながら囲む場合とがあるということ以外は、いずれも同一である。外側から開始して、内側に向かって、時計回りの向きに回りながら、垂直巻線軸を囲んでいるコイルには、符号212Aが付されている。その逆の向きに回るコイルには、符号212Bが付されている。コイル212Aと212Bとは、移動路206に沿って交互に配置されている。この場合に、2つのコイル212Aの間に、必ず、1つのコイル212Bが配置されている。
【0092】
コイルの横方向の寸法は、コイル212Aが磁石204Nに対向するときには、このコイル212Aに直接に隣接している、上流および下流のそれぞれのコイル212Bは、この磁石204Nに直接に隣接している、上流および下流のそれぞれの磁石204Sに対向するように設定されている。同様に、コイル212Aが磁石204Sに対向するときには、このコイル212Aに直接に隣接している、上流および下流のそれぞれのコイル212Bは、この磁石204Sに直接に隣接している、上流および下流のそれぞれの磁石204Nに対向する。用語「下流」および「上流」は、この例においては、垂直回転軸208のまわりの、コイル212A、212Bに相対的な、磁石204N、204Sの回転方向Sに基づいて定められている。したがって、1つのコイルが1つの磁石に対向するときに、そのコイルは、主として、この磁石の磁束に反応し、この磁石に隣接している磁石の磁束にはほとんど影響を受けない。
【0093】
各コイルは、垂直ビアによって互いに接続された、多層プリント基板214(この例においては2層の)の導電トラック(図11)で構成されている。図10においては、図を簡略化するために、多層プリント基板214は示されていない。
【0094】
これらの導電トラックは、上部メタライズ層と下部メタライズ層とに分配されている。
【0095】
用いる垂直ビアの数を少なくするために、コイル212A、212Bは、ペアにグループ化されている。各ペアは、1つのコイル211Aと、回転方向Sにおいて、このコイル211Aに直接隣接している1つのコイル212Bとを有している。各ペアにおいて、コイル212Bは、コイル212Aの上流に位置している。
【0096】
上部メタライズ層においては、同一のペアのコイル212Aおよび212Bのターンは、単一の導電トラック216によって構成されている。導電トラック216は、 次のように形成されている。
− 下りビアを始点として、内側から外側に向かって、反時計回りの向きに回りながら、コイル212Bの巻線軸を囲んでおり、次いで、
− 別の下りビアを終点として、外側から内側に向かって、時計回りの向きに回りながら、コイル212Aの巻線軸を囲んでいる。
【0097】
導電トラック216は、各巻線軸のまわりを、何回か完全に回っている。導電トラック216は、例えば上述の導電トラック90と同様のものである。
【0098】
下部メタライズ層においては、コイル212Bのターンは、導電トラック218によって構成されている。導電トラック218は、上りビアの下端を終点として、外側から内側に向かって、時計回りの向きに回りながら、コイル212Bの巻線軸を囲んでいる。導電トラック218は、さらに、外側から内側に向かって、時計回りの向きに回りながら、コイル212Bの上流側に直接隣接しているペアのコイル212Aの巻線軸を囲んでいる。
【0099】
このペアのコイル212Aの、下部メタライズ層におけるターンは、このコイル212Aの下流側で直接隣接しているペアのコイル212Bの、下部メタライズ層におけるターンをも構成している導電トラック218によって構成されている。
【0100】
したがって、導電トラック218は、隣接し合う2つのペアの隣接し合うコイル212Aと212Bとの、下部メタライズ層におけるターンを同時に構成している。導電トラック218は、さらに、隣接し合う2つのペアのコイルを直列に接続している。したがって、コイル212A、212Bの各々のターンを流れる電流は、常に、上部メタライズ層と下部メタライズ層とで同じ向きに回る。この直列接続によって、コイルが磁石に対向しているときに、コイルの各々によって発生する電圧が順次に加え合わされて、単純に増加していく。導電トラック218は、上述の導電トラック130と同様であるが、1角度ピッチ分だけ、上部メタライズ層の導電トラックからずれている。この角度ピッチは、隣接し合うコイル212A、212Bの、連続する2つの垂直巻線軸と、垂直回転軸208との間の角度に等しい。
【0101】
図11は、多層プリント基板214の上部メタライズ層を示している。図11において、ビアの上端が、円環によって示されている。これらの上端は、全て、垂直回転軸208を中心とする同一の円上に並んでいる。上部メタライズ層の導電トラック216は、軸220および222を対称軸とする2軸対称性を有している。軸220と222とは互いに直交しており、どちらも上部メタライズ層の面内にある。
【0102】
さらに、この実施形態においては、導電トラック216と218とを、同一水平面内に重ね合わせることによって、回転対称性を有するパターンが生じる。より具体的には、このパターンは、隣接し合うコイル212A、212Bの、連続する2つの垂直巻線軸間の角距離に等しい1角度ピッチだけの回転によって、回転前のパターンと一致する。
【0103】
この発電機の作動中に、コイルのペアのうちのコイル212Aが、磁石204Nに対向しているときには、コイル212Aは、電圧Uを発生させる。同時に、同じペアのうちのコイル212Bは、磁石204Sに対向しており、したがって、コイル212Bも、電圧Uを発生させる。同じことが、コイルの全てのペアにおいて生じる。コイルの全てのペアが、直列に接続されているから、各ペアで発生した電圧2Uが加え合わされ、したがって、はるかに大きな電圧が生じる。磁化リング202が、多層プリント基板214に相対的に変位すると、直前に磁石204Nに対向していたコイル212Aは、次の磁石204Sに対向する位置を占める。したがって、このコイル212Aは、他の全てのコイルと同様に、電圧−Uを発生させる。したがって、多層プリント基板214に相対的に、磁化リング202を回転変位させることによって、交流電圧が発生する。
【0104】
他の多くの実施形態が可能である。例えば上述のようにして作られたいくつかの多層プリント基板を、垂直方向に順に重ねることによって、多層プリント基板を厚くすることができる。このスタッキングにおいて、これらの多層プリント基板は、各コイルのターンの回る向きが同一に保たれるように相互に接続される。この場合に、いくつかの多層プリント基板を重ね合わせることによって、垂直磁性体リングの(長さ/幅)比、およびフラックスゲートセンサのターン数は増える。
【0105】
導電トラックは、メタライズ層のエッチングによって、またはメタライズ層への被着によって形成することができる。
【0106】
単純化された一変形例においては、垂直磁化リング全体に励磁磁界を発生させるために、単一の垂直励磁コイルが用いられる。
【0107】
各コイルを構成している導電トラックを、垂直補償コイル42の場合に説明したように、孔30および32のまわりに半周しかしないようにすることもできる。この半周は、巻線軸のまわりの単一の半周である。別の一変形例において、上向き巻線部が省かれる。
【0108】
多層プリント基板は、さらに、1つの水平面内に重ね合わせたときに、2軸対称性を有するパターンを示さない導電トラックを有する中間メタライズ層を備えていてもよい。
【0109】
図2、図5を参照して説明した上部メタライズ層、および/または下部メタライズ層が省かれている場合がある。この場合には、外部回路と各コイルとの電気的接続、および/またはコイル同士の電気的接続は、直接、中間メタライズ層においてなされる。
【0110】
各中間メタライズ層において、ビア96と98とを統合することができる。この場合には、下向き巻線部だけしかないが、良好な対称性を有するコイルが得られる。
【0111】
一変形例として、3層を超えるメタライズ層の導電トラックの重ね合わせが、2軸対称性を有するパターンを示す。
【0112】
重ね合わせによって、軸対称性を有するパターンが形成されるメタライズ層は、メタライズ層のスタックにおいて、連続し合っているメタライズ層である必要はない。
【0113】
垂直磁性体リングは、平行な2つの垂直磁性体バーに置き換えることができる。垂直磁性体リングと異なり、これらの垂直磁性体バーは、大きなギャップによって互いに磁気的に分離されている。この場合には、各垂直励磁コイルのターンは、これらの垂直磁性体バーのそれぞれの垂直軸34および36を同じ向きに回りながら囲んでいる。この構成においても、偶数次および奇数次の中間メタライズ層の導電トラックは、それらを1つの水平面上に重ね合わせることによって、2軸対称性を有するパターンが生じるようにレイアウトされている。
【0114】
上述の、垂直励磁コイルの巻線部を、水平で平行な複数の巻線軸を囲んで延在する励磁コイルを作るために用いることもできる。上述のように、これによって、水平磁性体リングのアーム間、または互いに平行で、磁気的に分離されている水平磁性体バー間に配置される垂直ビアの数が抑制される。
【0115】
コイルで囲まれた垂直磁性体リングの上部U字形状部分および下部U字形状部分は、細片またはワイヤの折り曲げ加工によって得ることができる。この場合には、これらの細片またはワイヤは、孔30および32を通って、1つ以上のターンを構成するように巻かれることが好ましい。
【0116】
垂直磁性体リングを水平方向に厚くするために、いくつかの上部U字形状部分、および下部U字形状部分を、それぞれプリント基板の上面側および下面側から、孔30および32内に挿入することができる。
【0117】
垂直のアーム176、178を、剛性のガイド内に収容することができる。このガイドは、例えば25℃におけるヤング率が5GPaを超過し、好ましくは、50GPaを超過する材料、または材料の組み合わせで作られている。剛性のガイドは、孔30、32への垂直のアームの挿入を容易にする。この場合には、垂直のアームとこのガイドとの間の間隙は、垂直のアームと、孔30、32の壁面との間の上述の間隙に相当する。このガイドは、さらに、磁気素子のより効果的な位置決めを可能にする。このガイドは、通常、垂直の各アームを受けるために、U字形状の水平断面を有している。
【0118】
一変形例として、複数の垂直磁性体リングを水平方向に重ねる場合に、それらの相互の電気的絶縁のために、電気絶縁体が、それらのアーム間に挿入される。それをなすために、電気絶縁材料から、U字形状の絶縁部材を切断し、次に、このU字形状の絶縁部材を、隣接する2つの垂直磁性体リング170の一方の上部U字形状部分172と、他方の下部U字形状部分174との間に挿入することができる。別の方法として、上部U字形状部分172と下部U字形状部分174との、重なり合う外面に粘性の液体または接着剤を塗るか、または注入することができる。さらに別の方法として、アームの表面を、電気絶縁性になるように処理することができる。この処理は、「パッシベーション」として知られている。
【0119】
磁石204N、204Sおよびコイル212A、212Bが配置される移動路は、必ずしも円形でなくてもよい。一変形例として、この移動路は、例えば直線状である。
【0120】
発電機200の多層プリント基板の下部メタライズ層のターンは、上部メタライズ層に形成されているターンと必ずしも同一でなくてもよい。例えば下部メタライズ層のターンの数は、上部メタライズ層のターンの数より少ない場合、または多い場合がある。
【0121】
多層プリント基板214は、さらなるターンが形成されている1層以上のメタライズ層を備えている場合がある。
【符号の説明】
【0122】
0 点
2 フラックスゲートセンサ
4、214 多層プリント基板
6 磁性体リング
8、9、11、12 磁性体バー
14〜17 励磁コイル
20〜23 測定コイル
26〜29 補償コイル
30、32 孔
34、36 垂直軸
38、39 垂直励磁コイル
40 垂直測定コイル
42 垂直補償コイル
50 電子処理ユニット
52、54、220、222 軸
56、58、60、62、64、66 接続パッド
68、72、78、80、82、84、94、96、98、100、106、108、110、112、118、120、122、124、136、138、144、146、154、156 ビア
70、74、90、92、102、104、114、116、130、132、140、142、150、152、160、162、164、216、218 導電トラック
170 垂直磁性体リング
172 上部U字形状部分
174 下部U字形状部分
176、178、180、182 アーム
184、186 水平部材
200 発電機
202 磁化リング
204N、204S 磁石
206 移動路
208 垂直回転軸
212A、212B コイル
J 間隙
S 回転方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 電気絶縁層によって互いに物理的に分離された、いくつかのメタライズ層の、垂直方向に沿うスタックと、
− それぞれのメタライズ層に形成されている導電トラック(90、92、102、104、114、116、130、132、140、142、150、152)によって構成されており、前記電気絶縁層の少なくとも1つを貫通しているビアによって互いに電気的に接続されている複数のターンを有し、それぞれに対応する1つ以上の垂直巻線軸に沿って延在している少なくとも1つのコイル(38、39、40、42)
とを備えているプリント基板であって、
前記垂直方向に連続している第1のメタライズ層と第2のメタライズ層とに形成されている、前記コイルの導電トラック(90、92、102、104、114、116、130、132、140、142、150、152)の、前記メタライズ層に平行な1つの平面上への重ね合わせによって、互いに直交しており、かつ前記メタライズ層に平行である軸XおよびYを対称軸とする2軸対称性を有するパターンが形成され、重ね合わされる前記第1のメタライズ層および第2のメタライズ層の各々の単一または複数の導電トラックは、それだけでは、前記軸Xおよび/またはYを対称軸とする軸対称性を有していないことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記第1のメタライズ層の導電トラック(90、92、102、104、114、116)は、第1の対称中心を中心とする中心対称性を有しており、前記第2のメタライズ層の導電トラック(130、132、140、142、150、152)は、第2の対称中心を中心とする中心対称性を有しており、前記第1の対称中心と前記第2の対称中心とは、前記垂直方向から見て一致している、請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記コイルの各々は、
− 対応する垂直巻線軸を、第1の向きに回りながら囲んでおり、該垂直巻線軸に沿って、第1の方向に前進している「下向き巻線部」と呼ばれる第1の巻線部をなしている、複数の第1の導電トラック(90、102、114、130、140、150)と、
− 該垂直巻線軸を、前記第1の向きに回りながら囲んでおり、該垂直巻線軸に沿って、前記第1の方向と反対の方向に前進している「上向き巻線部」と呼ばれる第2の巻線部をなしている、複数の第2の導電トラック(92、104、116、132、142、152)とを有しており、
前記下向き巻線部と前記上向き巻線部とは、前記上向き巻線部と前記下向き巻線部とで、電流が同じ向きに回るように、直列接続されている、請求項1または2に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記重ね合わせにおいて、
− 前記第2のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラック(132、142、152)は、前記軸Yに関して、前記第1のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラック(92、104、116)に対称であり、かつ前記軸Xに関して、前記第1のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラック(90、102、114)に対称であり、
− 前記第2のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラック(130、140、150)は、前記軸Yに関して、前記第1のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラック(90、102、114)に対称であり、かつ前記軸Xに関して、前記第1のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラック(92、104、116)に対称である、請求項3に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記垂直巻線軸に沿って、磁心を受容するための貫通孔(30、32)が延びている、請求項1〜4のいずれか1つに記載のプリント基板。
【請求項6】
− Nを2以上の自然数であるとしたときに、前記スタックは、1層の上部メタライズ層、1層の下部メタライズ層、および該上部メタライズ層と下部メタライズ層との間の、N層の中間メタライズ層を有しており、
− 前記垂直方向に重ねられた2層の中間メタライズ層から成るペアが(N−1)組以上存在し、各ペアを構成している2層の中間メタライズ層は、それぞれ前記第1のメタライズ層および第2のメタライズ層に対応している、請求項1〜5のいずれか1つに記載のプリント基板。
【請求項7】
− 少なくとも1つの磁心(170)と、
− 該磁心を飽和磁化させることができる励磁コイルおよび測定コイルの機能を満たすための1つ以上のコイル(38〜40)とを
備えている磁界センサであって、
前記磁界センサは、請求項1〜6のいずれか1つに記載のプリント基板を備えており、該プリント基板のコイルに、前記磁界センサの励磁コイルおよび/または測定コイルの機能を満たすためのコイルが含まれていることを特徴とする磁界センサ。
【請求項1】
− 電気絶縁層によって互いに物理的に分離された、いくつかのメタライズ層の、垂直方向に沿うスタックと、
− それぞれのメタライズ層に形成されている導電トラック(90、92、102、104、114、116、130、132、140、142、150、152)によって構成されており、前記電気絶縁層の少なくとも1つを貫通しているビアによって互いに電気的に接続されている複数のターンを有し、それぞれに対応する1つ以上の垂直巻線軸に沿って延在している少なくとも1つのコイル(38、39、40、42)
とを備えているプリント基板であって、
前記垂直方向に連続している第1のメタライズ層と第2のメタライズ層とに形成されている、前記コイルの導電トラック(90、92、102、104、114、116、130、132、140、142、150、152)の、前記メタライズ層に平行な1つの平面上への重ね合わせによって、互いに直交しており、かつ前記メタライズ層に平行である軸XおよびYを対称軸とする2軸対称性を有するパターンが形成され、重ね合わされる前記第1のメタライズ層および第2のメタライズ層の各々の単一または複数の導電トラックは、それだけでは、前記軸Xおよび/またはYを対称軸とする軸対称性を有していないことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記第1のメタライズ層の導電トラック(90、92、102、104、114、116)は、第1の対称中心を中心とする中心対称性を有しており、前記第2のメタライズ層の導電トラック(130、132、140、142、150、152)は、第2の対称中心を中心とする中心対称性を有しており、前記第1の対称中心と前記第2の対称中心とは、前記垂直方向から見て一致している、請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記コイルの各々は、
− 対応する垂直巻線軸を、第1の向きに回りながら囲んでおり、該垂直巻線軸に沿って、第1の方向に前進している「下向き巻線部」と呼ばれる第1の巻線部をなしている、複数の第1の導電トラック(90、102、114、130、140、150)と、
− 該垂直巻線軸を、前記第1の向きに回りながら囲んでおり、該垂直巻線軸に沿って、前記第1の方向と反対の方向に前進している「上向き巻線部」と呼ばれる第2の巻線部をなしている、複数の第2の導電トラック(92、104、116、132、142、152)とを有しており、
前記下向き巻線部と前記上向き巻線部とは、前記上向き巻線部と前記下向き巻線部とで、電流が同じ向きに回るように、直列接続されている、請求項1または2に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記重ね合わせにおいて、
− 前記第2のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラック(132、142、152)は、前記軸Yに関して、前記第1のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラック(92、104、116)に対称であり、かつ前記軸Xに関して、前記第1のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラック(90、102、114)に対称であり、
− 前記第2のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラック(130、140、150)は、前記軸Yに関して、前記第1のメタライズ層の下向き巻線部の導電トラック(90、102、114)に対称であり、かつ前記軸Xに関して、前記第1のメタライズ層の上向き巻線部の導電トラック(92、104、116)に対称である、請求項3に記載のプリント基板。
【請求項5】
前記垂直巻線軸に沿って、磁心を受容するための貫通孔(30、32)が延びている、請求項1〜4のいずれか1つに記載のプリント基板。
【請求項6】
− Nを2以上の自然数であるとしたときに、前記スタックは、1層の上部メタライズ層、1層の下部メタライズ層、および該上部メタライズ層と下部メタライズ層との間の、N層の中間メタライズ層を有しており、
− 前記垂直方向に重ねられた2層の中間メタライズ層から成るペアが(N−1)組以上存在し、各ペアを構成している2層の中間メタライズ層は、それぞれ前記第1のメタライズ層および第2のメタライズ層に対応している、請求項1〜5のいずれか1つに記載のプリント基板。
【請求項7】
− 少なくとも1つの磁心(170)と、
− 該磁心を飽和磁化させることができる励磁コイルおよび測定コイルの機能を満たすための1つ以上のコイル(38〜40)とを
備えている磁界センサであって、
前記磁界センサは、請求項1〜6のいずれか1つに記載のプリント基板を備えており、該プリント基板のコイルに、前記磁界センサの励磁コイルおよび/または測定コイルの機能を満たすためのコイルが含まれていることを特徴とする磁界センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−58754(P2013−58754A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−196431(P2012−196431)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196431(P2012−196431)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】
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