説明

プリント配線板及びその製造方法

【課題】表面研磨を行うことなく、平坦化されたプリプレグ被覆プリント配線板を製造すること。その結果、回路の損傷・磨滅、プリント配線基板の寸法変化、生産性の低下等を、防止すること。
【解決手段】
(I)熱硬化型樹脂インク(10)又は光・熱二段硬化型樹脂インク(10)をプリント配線基板(1)表面上の少なくとも凸部(2)及び/又は凹部(13)に塗布した後、塗布インク(10)を半硬化(11)する工程、(II)部材(3)を、部材の平坦面が半硬化樹脂(11)面上に来るように、半硬化樹脂(11)上に載せる工程、(III)部材(3)とプリント配線基板(1)とを、半硬化樹脂(11)の軟化温度以上の加熱下、半硬化樹脂(11)が完全硬化(12)する迄、圧着(4)する工程、から少なくとも成ることを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、プリント配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層プリント配線板の製造は通常、プリント配線基板(図3B,1)上に(必要に応じ銅箔付きの)プリプレグ(図3B,3)を直接、積層し、その後、熱プレス(図3B,4)して行われる。熱プレスにより、プリプレグは、プリント配線基板と圧着すると同時に、完全硬化(図3C,7)する。
【0003】
しかし、このようにして製造される従来のプリプレグ被覆多層プリント配線板は、回路(図3C,2)上において回路厚の分だけプリプレグ表面が盛り上がり(図3C,5)、平坦性に欠けるものであった。更に、回路の付け根部分の隅々に迄、プリプレグが十分、充填されず、この部分に空隙やボイド(図3C,6)が生じるものであった。その結果、得られる多層プリント配線板は、電気的・熱的信頼性が劣る、という問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するため、以下のような製造方法が行われる。即ち、先ず、プリント配線基板(図4B,1)表面上にアンダーコートインク(図4B,8)を全面塗布する。次いで、塗布インクを完全硬化(図4C,9)する。この際、回路上における完全硬化層部分は回路厚の分だけ盛り上がっている(図4C,5)ため、回路が露出する迄、完全硬化層を全面研磨し、プリント配線基板を平坦化(図4D)する(特許文献1の図4等)。その後、予め平坦化したプリント配線基板表面上にプリプレグ(図4E,3)を積層し、熱プレス(図4E,4)する。熱プレスにより、プリプレグは、完全硬化層(図4F,9)と圧着すると同時に、完全硬化(図4F,7)する。こうして、平坦化されたプリプレグ被覆多層プリント配線板が製造される(図4F)。
【0005】
しかし、このような製造方法においては、表面研磨を行うため、以下のような問題が生じた。即ち、表面研磨の際、回路表面迄、研磨してしまい回路を損傷・磨滅してしまう、プリント配線基板の寸法変化が大きくなる、更には生産性が低下する、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−108163号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本願発明は、表面研磨を行うことなく、平坦化されたプリプレグ被覆プリント配線板を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願発明者が鋭意、検討した結果、以下の本願発明を成すに到った。
【0009】
即ち、本願第1発明は、(I)熱硬化型樹脂インク又は光・熱二段硬化型樹脂インクをプリント配線基板表面上の少なくとも凸部及び/又は凹部に塗布した後、塗布インクを半硬化する工程、(II)部材を、部材の平坦面が半硬化樹脂上に来るように、半硬化樹脂上に載せる工程、(III)部材とプリント配線基板とを、半硬化樹脂の軟化温度以上の加熱下、半硬化樹脂が完全硬化する迄、圧着する工程、から少なくとも成ることを特徴とするプリント配線板の製造方法、を提供する。
【0010】
本願第2発明は、熱硬化型樹脂インクがエポキシ樹脂、酸無水物、及び熱硬化剤を含有し、光・熱二段硬化型樹脂インクがエチレン性不飽和二重結合含有化合物、光反応開始剤、エポキシ樹脂、及び熱硬化剤を含有することを特徴とする本願第1発明のプリント配線板の製造方法、を提供する。
【0011】
本願第3発明は、凸部が回路であり、凹部が回路間であることを特徴とする本願第1発明又は第2発明のプリント配線板の製造方法、を提供する。
【0012】
本願第4発明は、回路が、回路厚35μm以上の銅回路であることを特徴とする本願第3発明のプリント配線板の製造方法、を提供する。
【0013】
本願第5発明は、部材が、プリプレグ、銅箔、銅箔つきプリプレグ、及びこれらの2以上を積層したもの、の何れかであることを特徴とする本願第1発明〜第4発明の何れかのプリント配線板の製造方法、を提供する。
【0014】
本願第6発明は、本願第1発明〜第5発明の何れかのプリント配線板の製造方法により製造されるプリント配線板、を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本願発明により、表面研磨を行うことなく、平坦化されたプリプレグ被覆プリント配線板を製造することができる。その結果、回路の損傷・磨滅、プリント配線基板の寸法変化、生産性の低下等を、防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明に係るプリント配線板の製造方法を説明するための、工程断面図である。
【図2】本願発明に係るプリント配線板の製造方法の別の態様を説明するための、断面図である。A〜Cは、樹脂インクをプリント配線基板表面上に塗布した状態をそれぞれ表す。A’〜C’は、製造された平坦化プリント配線板をそれぞれ表す。
【図3】従来のプリント配線板の製造方法を説明するための、工程断面図である。
【図4】従来のプリント配線板の製造方法の別の態様を説明するための、工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明を、図面を用い、詳述する。
本願発明の製造方法において、先ず工程(I)として、熱硬化型樹脂インク又は光・熱二段硬化(第一段光硬化+第二段熱硬化)型樹脂インク(図1B,10)をプリント配線基板(図1B,1)表面上の少なくとも凸部(図1B,2)及び/又は凹部(図1B,13)に塗布(図1B)した後、塗布インクを半硬化(図1C,11)する。
【0018】
工程(I)において、熱硬化型樹脂インクとしては、エポキシ樹脂、酸無水物、及び熱硬化剤を含有するものが挙げられる。
【0019】
熱硬化型樹脂インクにおいて、エポキシ樹脂としては、具体的にはノボラック型エポキシ化合物[フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等]、ビスフェノール型エポキシ化合物[ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等]、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の一以上が挙げられる。
【0020】
熱硬化型樹脂インクにおいて、酸無水物としては、具体的には二塩基酸無水物[無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等]、芳香族多価カルボン酸無水物[無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等]、多価カルボン酸無水物誘導体[5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等]等の一以上が挙げられる。
【0021】
熱硬化型樹脂インクにおいて、熱硬化剤としては、具体的にはアミン化合物類、イミダゾール化合物類、カルボン酸類、フェノール類、第四級アンモニウム塩類、メチロール基含有化合物類、ジシアンジアミド、グアナミン化合物等の一以上が挙げられる。
【0022】
熱硬化型樹脂インクにおいて、その他添加剤として、充填剤、着色用顔料、密着性付与剤、消泡剤、レベリング剤、溶剤、だれ止め剤等の一以上を含有してよい。
【0023】
熱硬化型樹脂インクの組成において、エポキシ樹脂100重量部のとき、酸無水物1〜10(特に2〜5)重量部、及び熱硬化剤1〜30(特に4〜10)重量部が、それぞれ好ましい。
【0024】
工程(I)において、光・熱二段硬化型樹脂インクとしては、エチレン性不飽和二重結合含有化合物、光反応開始剤、エポキシ樹脂、及び熱硬化剤を含有するものが挙げられる。
【0025】
光・熱二段硬化型樹脂インクにおいて、エチレン性不飽和二重結合含有化合物としては、(メタ)アクリル基含有樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル基含有樹脂としては、(メタ)アクリル酸類及び/又は(メタ)アクリル酸エステル類[「(メタ)アクリル酸(エステル)類」とも言う。]から成る重合体、並びに(メタ)アクリル酸(エステル)類と「他のモノマー類」とから成る重合体等が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリル基含有樹脂において、(メタ)アクリル酸(エステル)類としては、具体的には(メタ)アクリル酸、メチル又はエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチル又はエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエトキシル(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性テトラフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸カルビトール、2−カルボキシエチル又はプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の一以上が挙げられる。
【0027】
(メタ)アクリル基含有樹脂において、「他のモノマー類」としては、具体的にはビニルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、メチルイソプロペニルケトン、酢酸ビニル、ベオバモノマー(シェル化学製品)、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート、(メタ)アクリロニトリル等の一以上が挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリル基含有樹脂の重量平均分子量は、例えば500〜10000(特に1000〜3000)が、好ましい。
【0029】
他のエチレン性不飽和二重結合含有化合物としては、(メタ)アクリル基含有モノマーが挙げられる。(メタ)アクリル基含有モノマーとしては、具体的には上記(メタ)アクリル酸(エステル)類等が挙げられる。
【0030】
光・熱二段硬化型樹脂インクにおいて、光反応開始剤としては、具体的にはヒドロキシケトン類、ベンジルメチルケタール類、アシルホスフィンオキサイド類、アミノケトン類、ベンゾインエーテル類、ベンゾイル化合物類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ビイミダゾール類、ジメチルアミノ安息香酸エステル類、トリアリールスルホニウム塩類、アントラキノン類、アクリドン類、アクリジン類、カルバゾール類、チタン錯体等の一以上が挙げられる。
【0031】
光・熱二段硬化型樹脂インクにおいて、エポキシ樹脂及び熱硬化剤としては、具体的には前記熱硬化型樹脂インクにおいてそれぞれ例示したもの等が挙げられる。
【0032】
光・熱二段硬化型樹脂インクにおいて、その他添加剤として、増感剤、重合禁止剤、及び前記熱硬化型樹脂インクにおいて例示したもの等が挙げられる。
【0033】
光・熱二段硬化型樹脂インクの組成において、エチレン性不飽和二重結合含有化合物100重量部のとき、光反応開始剤0.1〜10(特に1〜5)重量部、エポキシ樹脂10〜100(特に20〜50)重量部、及び熱硬化剤1〜20(特に2〜10)重量部が、それぞれ好ましい。
【0034】
工程(I)において、凸部としては、具体的には回路、チップ部品、表面実装されたベアチップ等が挙げられる。本願発明効果(特に、プリント配線板の平坦化)は、凸部の厚み(基板表面からの高さ)が大きい程、顕著に発揮される。そのような凸部としては、例えば肉厚(具体的には、回路厚35μm以上、典型的には50〜600μm)の回路(銅回路等)が挙げられる。
【0035】
工程(I)において、凹部としては、凸部と凸部の間隙(回路間等)、ホール(ビアホール、スルーホール等)が挙げられる。
【0036】
工程(I)において、少なくとも、凸部(全部若しくは一部)及び/又は凹部(全部若しくは一部)に塗布する。具体的には、塗布は、例えば、凸部の全部及び凹部の全部(プリント配線基板の全面塗布を含む。)(図1)、凸部の一部及び凹部の全部(図2A)、凸部(のみ)の全部(図2B)、又は凹部(のみ)の全部(図2C)、に行われる。塗布量は、例えば凸部の全部及び凹部の全部を塗布する場合、凸部が回路であるとき、回路上は5〜50(特に10〜30)μm、回路間は回路の厚さの0.7〜1.0(特に0.8〜0.9)倍の厚さが好ましい。塗布量が多過ぎると部材を圧着する際に周辺部からの食(は)み出し量が多く、少な過ぎると充分な平坦性が得られないことがある。塗布は、例えばるスクリーン印刷、メタルマスク印刷、ロールコート印刷、バーコート印刷等にて行うことができる。
【0037】
工程(I)において、塗布インクを半硬化する。「半硬化」には、単段硬化型樹脂の不完全硬化、及び多段硬化型樹脂の中途段階硬化が含まれる。前記熱硬化型樹脂インクの半硬化は、例えば80〜130(特に100〜120)℃、10〜60(特に20〜30)分の加熱により行われる。前記光・熱二段硬化型樹脂インクの半硬化(第一段光硬化)は、例えば波長300〜500(特に350〜450)nm、照射量0.1〜5(特に0.5〜2)J/cmの光照射により行われる。
【0038】
次いで、工程(II)において、部材(図1D,3)を、部材の平坦面が半硬化樹脂面上に来るように、半硬化樹脂(図1D,11)上に載せる。
【0039】
工程(II)において、部材は、少なくとも片面が平坦面であり、例えばフィルム、シート、又はプレート状等が好ましい。部材としては、具体的にはプリプレグ、銅箔、銅箔つきプリプレグ、及びこれらの2以上を積層したもの等が挙げられる。
【0040】
工程(II)において、部材を半硬化樹脂上に載せる。この際、部材の平坦面が半硬化樹脂面上に来るように、即ち部材の平坦面と半硬化樹脂表面とが対向するよう、部材を半硬化樹脂上に載せる。
【0041】
次いで、工程(III)において、部材(図1D,3)とプリント配線基板(図1D,1)とを、半硬化樹脂の軟化温度以上の加熱下、半硬化樹脂(図1D,11)が完全硬化(図1E,12)する迄、圧着(図1D,4)する。
【0042】
工程(III)において、具体的には以下のことが行われる。即ち、先ず半硬化樹脂が、加熱により軟化する。これにより、半硬化樹脂は、部材の平坦面の圧迫によってその表面が均され、平坦化する。そして、この状態にて、半硬化樹脂は、部材と圧着し、完全硬化する。こうして、平坦化された完全硬化樹脂上に部材(プリプレグ等)が積層されるので、高度に平坦化されたプリント配線板が製造される。
【0043】
工程(III)において、加熱は、半硬化樹脂の軟化温度以上、行われる。半硬化樹脂の軟化温度としては、80〜160(特に120〜150)℃が好ましい。軟化温度が低過ぎると半硬化樹脂が端面から食み出してプリント配線基板やプレス機が汚染され、軟化温度が高過ぎると平坦化が不十分になることがある。半硬化樹脂の軟化時における粘度は、レオメーターにより測定(即ち、サイン波の微細な振動を与えながら加熱し、その時の抵抗力から粘度を算出)した場合、1Hzの周波数で10000mPa・sの応力を加えたとき、1〜1000(特に10〜100)Pa・sが好ましい。粘度値が小さ過ぎると流動性が高くなり過ぎて基板から食み出すことがあり、大き過ぎると流動性が不足し充分な平坦化が得られないことがある。
【0044】
工程(III)において、好ましくは、加熱は、半硬化樹脂の完全硬化温度以上、行われる。半硬化樹脂の完全硬化温度としては、150〜200(特に160〜180)℃が好ましい。
【0045】
工程(III)において、圧着は、半硬化樹脂が上記加熱により完全硬化する迄、行われる。部材がBステージのプリプレグである場合、プリプレグが完全硬化(図1E,7)する迄、更に圧着するのが好ましい。圧着は、具体的には真空プレス等にて行うことができる。圧着条件としては、例えば100〜250(特に130〜190)℃、10〜200(特に90〜120)分の加熱下、圧力0.1〜5(特に2〜3)MPaにより行われる。
【0046】
以上のようにして、熱硬化型樹脂インク又は光・熱二段硬化型樹脂インクをプリント配線基板表面上の、凸部の全部及び凹部の全部に塗布した場合、図1Eに示される平坦化プリプレグ被覆プリント配線板が製造される。
同様に、凸部の一部及び凹部の全部に塗布した場合は図2A’、凸部(のみ)の全部に塗布した場合は図2B’、並びに凹部(のみ)の全部に塗布した場合は図2C’、にそれぞれ示される平坦化プリプレグ被覆プリント配線板が製造される。
【0047】
本願発明の製造方法により、表面凹凸差5μm以下のプリプレグ被覆プリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本願発明を、実施例にて、具体的に説明する。
<プリプレグ被覆プリント配線板の製造>
・実施例1
熱硬化型樹脂インク組成(重量部):
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(100)、無水テトラヒドロフタル酸(20)、 硫酸バリウム粉末(120)、「アミキュアPN−23」(味の素ファインテクノ製 、熱硬化剤)(6)、シリコンオイル(1)。
【0049】
上記熱硬化型樹脂インクを、銅回路(回路厚70μm、L/S100μm)形成済プリント配線基板にスクリーン印刷にて全面塗布した。塗布厚は、回路上25μm、回路間60μmであった。塗布後、プリント配線基板を、乾燥機に入れ、110℃、60分、加熱し、塗布インクを半硬化させた。
【0050】
次いで、プリプレグ(「R−1551」、パナソニック電工製、厚さ0.1mm)を、上記半硬化樹脂層上に被覆した。
次いで、プリプレグとプリント配線基板とを、真空プレスにて圧着・一体化した。プレス条件は、180℃、120分の加熱下、圧力3MPaであった。
【0051】
このようにして製造されたプリプレグ被覆プリント配線板について、表面粗さ計(「サーフコム130R」、東京精密製)にて調べたところ表面凹凸差5μm以下であり、断面を実体顕微鏡(50倍)で観察したところ回路の付け根部分に空隙は全く無かった。
【0052】
・実施例2
光・熱二段硬化型樹脂インク組成(重量部):
フェノールノボラック型エポキシ樹脂とアクリル酸の反応物(100)、トリメチロ ールプロパントリアクリレート(100)、「イルガキュアー907」(チバガイギ ー製)(3)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(60)、「アミキュアPN−23 」(味の素ファインテクノ製)(6)、シリコンオイル(1)、シリカ粉末(200 )。
【0053】
上記光・熱二段硬化型樹脂インクを、上記と同様にして、銅回路形成済プリント配線基板に全面塗布した。塗布後、プリント配線基板に対し、波長365nm、照射量0.6J/cmにて光照射を行い、塗布インクを半硬化させた。
【0054】
次いで、上記と同様にして、プリプレグを上記半硬化樹脂層上に被覆し、更にプリプレグとプリント配線基板とを、加熱下、真空プレスにて圧着した。
【0055】
このようにして製造されたプリプレグ被覆プリント配線板について、上記表面粗さ計にて調べたところ表面凹凸差5μm以下であり、断面を上記実体顕微鏡で観察したところ空隙は全く無かった。
【0056】
・比較例1
樹脂フィルム(「ABF−GX3」、味の素ファインテクノ製、フィルム厚50μm、軟化温度130℃)2枚重ねたものを、上記銅回路形成済プリント配線基板に被覆した。
【0057】
次いで、上記樹脂フィルムとプリント配線基板とを、真空プレスにて圧着・一体化を製造した。プレス条件は、180℃、120分の加熱下、圧力3MPaであった。
【0058】
このようにして製造された樹脂被覆プリント配線板について上記実体顕微鏡にて調べたところ、空隙は無かった。しかし、プレス時に、樹脂フィルムがプレス熱により軟化・液状化し、プリント配線基板の側面から流れ出した。その結果、回路上の樹脂フィルムの厚さが不安定であったのみならず、プリント配線基板やプレス機が汚染された。
【0059】
・比較例2
プレス温度を180℃から150℃に替えた以外は、比較例1と同様にして、樹脂被覆プリント配線板を製造した。
【0060】
プレス時に、樹脂フィルムが液状化することは無かった。しかし、製造された樹脂被覆プリント配線板について、上記表面粗さ計にて調べたところ表面凹凸差20μm以上であり、上記実体顕微鏡にて調べたところ回路の付け根部分の隅々に迄、プリプレグが十分、充填されず、この部分に空隙が生じた。
【0061】
・比較例3
樹脂フィルム(「ABF−GX3」)の替わりにプリプレグ(「R−1551」、厚さ0.1mm)を用いた以外は、比較例1と同様にして、プリプレグ被覆プリント配線板を製造した。
【0062】
このようにして製造されたプリプレグ被覆プリント配線板について上記表面粗さ計にて調べたところ、表面凹凸差40μm以上であった。
【符号の説明】
【0063】
プリント配線基板 1
凸部(回路) 2
部材(Bステージプリプレグ) 3
圧着(熱プレス) 4
盛り上がり部 5
空隙 6
部材(完全硬化プリプレグ) 7
未硬化塗布樹脂 8,10
完全硬化塗布樹脂 9,12
半硬化塗布樹脂 11
凹部(回路間) 13

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)熱硬化型樹脂インク又は光・熱二段硬化型樹脂インクをプリント配線基板表面上の少なくとも凸部及び/又は凹部に塗布した後、塗布インクを半硬化する工程、
(II)部材を、部材の平坦面が半硬化樹脂面上に来るように、半硬化樹脂上に載せる工程、
(III)部材とプリント配線基板とを、半硬化樹脂の軟化温度以上の加熱下、半硬化樹脂が完全硬化する迄、圧着する工程、
から少なくとも成ることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
熱硬化型樹脂インクがエポキシ樹脂、酸無水物、及び熱硬化剤を含有し、光・熱二段硬化型樹脂インクがエチレン性不飽和二重結合含有化合物、光反応開始剤、エポキシ樹脂、及び熱硬化剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
凸部が回路であり、凹部が回路間であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
回路が、回路厚35μm以上の銅回路であることを特徴とする請求項3に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
部材が、プリプレグ、銅箔、銅箔つきプリプレグ、及びこれらの2以上を積層したもの、の何れかであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のプリント配線板の製造方法により製造されるプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−199232(P2011−199232A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87313(P2010−87313)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(591028980)山栄化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】