説明

プレス金型搬送台車

【課題】プレスの前部位置付近でのクレーン作業を行うことなく、プレス金型を能率よく交換できるようにするためのプレス金型搬送台車を提供する。
【解決手段】台車フレーム11の前後方向の一端部左右位置と他端部左右位置に、走行車輪13aと13bを配置する。台車フレーム11の左右方向の一端部前後位置と他端部前後位置に、横行車輪26aと26bを配置する。走行車輪13aと13bを昇降可能とし、台車全体の荷重を走行車輪13a,13b又は横行車輪26a,26bに選択的に受けもたせるようにする。走行車輪13a,13bと横行車輪26a,26bを電動モータ23で駆動できるようにし、電動モータ23へ給電を行うバッテリー12を台車フレーム11上に搭載する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はトランスファプレス等のプレス機械で用いるプレス金型を搬送するプレス金型搬送台車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プレス機械の一例としてトランスファプレスの場合は、図5に概略を示す如く、プレスラインLに沿うよう敷設したベッド1と、該ベッド1上のプレスラインLを挟んで対向する位置にプレスラインL方向に所要間隔を隔ててそれぞれ立設したコラム2と、これらコラム2の上端を連結するクラウン3とから構成されるプレスハウジング4内のプレスラインL方向に沿う各コラム2間の位置をそれぞれプレスステーションSとして形成し、各プレスステーションSの上方位置には、それぞれスライド5を上下動可能に配置し、又、各プレスステーションSの下部位置には、上面にボルスタ9を搭載した金型搬送台車8を搬入して位置させ、スライド5の下面にはプレス金型としての上金型6をセットすると共に、ボルスタ9上にはプレス金型としての下金型7をセットし、上記クラウン3内に組み込んだスライド駆動装置により各プレスステーションSのスライド5を上下動させることにより、上下の金型6,7間でパネル等のワークをプレス成形できるようにしてある。又、上記金型搬送台車8は、図6に示す如く、給電ケーブル10に接続された外部給電方式としてあり、給電ケーブル10の長さの範囲内でのみ移動できて、プレスハウジング4内のプレスステーションSとプレスハウジング4の外部との間を移動できるようにしてある。
【0003】
上記のようなトランスファプレスのプレスステーションSでプレス成形が行われる場合、ステーション毎に、古くなった金型6,7を新しい金型に交換したり、異なる製品の成形のために、その製品に適した別の金型6,7に交換することがあるが、かかる金型6,7の交換の場合、従来では、図6に一例を示す如く、先ず、スライド5を下降させて下金型7上に上金型6を載せた後、上金型6を取り外してスライド5を上昇させ、次に、上下の金型6,7を載せた金型搬送台車8をプレスステーションSからプレスラインLと直角方向に移動させて、プレスハウジング4の前面部位置へ引き出すようにする。この際、金型搬送台車8は、外部給電方式としてあるため、プレスハウジング4の下側から出ている給電ケーブル10を引きずっているので、引き出し位置はプレスハウジング4の前面部位置となる。次に、この位置で、図示しないクレーンにより上下の金型6,7を一緒に吊り上げて金型ストレージエリアまで運搬し、次いで、金型ストレージエリアからクレーンで搬送してきた上下の金型6,7を金型搬送台車8上のボルスタ9上に吊り下して載置させ、しかる後、金型搬送台車8をプレスステーションS内に移動させて、上金型6をスライド5の下面に、又、下金型7をボルスタ9の上面にセットするようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の金型交換作業では、給電ケーブル10の長さ範囲でしか金型搬送台車8が移動できないので、プレスハウジング4の前面部位置付近でのクレーン作業が繁雑になる問題があると共に、各プレスステーションS間では金型搬送台車8を共有することができないという不便さがある。又、金型ストレージエリアからクレーンによって金型6,7を吊り上げてくることから、各プレスステーションSで金型6,7の位置合わせが必要であり、金型交換作業に時間が掛かることになる。
【0005】
そこで、本発明は、プレスの前部位置付近でのクレーン作業を不要とすることができるようにすると共に、各プレスステーション間やプレス間で台車を共有することができるようにし、更に、金型の位置合わせを容易に行うことができるようにしようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、上面にプレス金型を載置させるようにした台車フレームに、バッテリーを搭載し、該バッテリーからの給電により自走できるようにした構成とする。
【0007】
バッテリー搭載型としてあるため、プレス金型を積んだまま金型ストレージヤードまで移動することができる。したがって、クレーンを用いた金型の積み替えを金型ストレージヤードで行うことができ、プレスの前面部位置付近でのクレーン作業をなくすことができるようになる。
【0008】
又、台車フレームに設けた走行車輪と横行車輪のいずれかを昇降可能として、走行と横行を切り換えられるようにした構成とすることにより、狭いスペースの移動も楽に行うことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1乃至図4は本発明の実施の一形態を示すもので、図5に示したトランスファプレスの各プレスステーションSに配置して、上面のボルスタ9上にプレス金型としての下金型7をセットできるようにしてある金型搬送台車と同様な構成において、台車フレーム11にバッテリー12を搭載して、該バッテリー12から供給される電力によって自走できるようにした構成を有するプレス金型搬送台車Iとする。
【0011】
詳述すると、プレスハウジング4の前面部位置からプレスラインLと直角な方向に沿いプレスステーションSに出入できる大きさに形成した矩形の台車フレーム11の前後方向(矢印X方向)の一端部左右位置と他端部左右位置に、走行車輪13aと13bをそれぞれ配置して、走行車輪13aと13bを、主軸部14aと偏心軸部14bとを有する車輪軸14の偏心軸部14bに回転自在に取り付けると共に、該各車輪軸14の主軸部14aを、台車フレーム11上に固定した軸受15に回転自在に支持させ、且つ上記各車輪軸14の偏心軸部14bに、昇降用レバー16の基端部をそれぞれ取り付け、該各昇降用レバー16の先端部に、前後方向へ向け配置して支持させた昇降駆動装置としての電動シリンダ17のロッド端を接続し、該電動シリンダ17の伸縮作動で昇降用レバー16を介し車輪軸14を主軸部14aを中心に変位させることにより、走行車輪13a,13bが台車フレーム11の底板11aに設けられた開口31を通して台車フレーム11の底板11aより上方に収納される位置(図2の二点鎖線の位置)と下方に突出する位置(図2の実線の位置)との間で昇降させられるようにする。
【0012】
又、前後方向一端部側の走行車輪13aの一側面に、ギヤ18をそれぞれ一体に固定して車輪軸14の偏心軸部14bに回転自在に嵌装し、一方、上記台車フレーム11上の走行車輪13aよりも内側位置に、動力伝達軸19を、左右方向(矢印Y方向)に延びるように配置して、両端部を軸受20に回転自在に支持させ、且つ該動力伝達軸19上の両端部付近に、上記走行車輪13aと一体のギヤ18に噛合させるようにしたギヤ21を取り付けると共に、該動力伝達軸19上の中間部所要個所に、伝達ギヤ22を取り付け、更に、上記台車フレーム11上の前後方向一端部に、台車駆動装置としての電動モータ23を設置し、該電動モータ23の出力軸に減速機24を介して連結した駆動ギヤ25を、上記動力伝達軸19上の伝達ギヤ22に噛合させ、走行車輪13a,13bが下方へ突出する状態において、電動モータ23の駆動で駆動ギヤ25を回転させ、その回転力を伝達ギヤ22、動力伝達軸19、ギヤ21、ギヤ18へ伝えることにより、走行車輪13aを走行駆動輪として、又、走行車輪13bを走行従動輪として、台車フレーム11を前後方向へ走行させられるようにする。
【0013】
更に、上記台車フレーム11上の左右方向の一端部と他端部に、走行車輪13a,13bの昇降位置の中間高さ位置にあるようにして、前後方向に所要間隔を隔てて横行車輪26aと26bを配置し、且つ一端部側の横行車輪26aを、前後方向に配した長さの長い1本の車輪軸27上にそれぞれ取り付けて、該車輪軸27を軸受28に回転自在に支持させると共に、該車輪軸27の一端を、上記動力伝達軸19にベベルギヤ機構29を介して連結し、又、上記左右方向の他端部側の横行車輪26bを、軸受33に回転自在に支持させた個々の車輪軸30に取り付け、走行車輪13a,13bが上方へ収納された状態において、電動モータ23の駆動で駆動ギヤ25を回転させ、その回転力を伝達ギヤ22、動力伝達軸19、ベベルギヤ機構29を介し車輪軸27に伝えることにより、横行車輪26aを横行駆動輪として、又、横行車輪26bを横行従動輪として、台車フレーム11を左右方向へ横行させられるようにする。
【0014】
上記構成において、台車フレーム11上の適宜位置にバッテリー12を搭載し、該バッテリー12から供給される電力によって、電動モータ23と電動シリンダ17が駆動されるようにした内部給電方式とする。なお、図1において、32は外部の遠隔操作部からの指令、又は、台車I自体に装備させた操作部からの指令に基づいて上記電動モータ23や電動シリンダ17のドライバへ駆動指令を送る制御盤を示す。
【0015】
上記構成としてある本発明のプレス金型搬送台車Iは、従来の金型搬送台車8と同様に、プレスハウジング4のプレスステーションS内に定置させて使用するようにする。なお、プレスステーションS内での定置状態においては、たとえば、ベッド1側の車輪受部が所要量下降する等の周知の手段により、各車輪13a,13b,26a,26bに対しプレス荷重が作用しないようにしてある。
【0016】
金型6,7を交換する必要が生じたときには、図3及び図4に示す如く、スライド5を下降させて下金型7上に上金型6を載置させた状態として、先ず、プレス金型搬送台車I全体をプレスステーションSからプレスハウジング4の前面部位置付近まで移動させるようにする。この際、図2において実線で示す如く、各電動シリンダ17を伸長作動させ、昇降用レバー16を介し車輪軸14を回転変位させることにより各走行車輪13a,13bを下降させて、プレス金型搬送台車I全体の荷重を走行車輪13a,13bに受けさせるようにし、その状態で、電動モータ23を駆動すると、その回転力が駆動ギヤ25、伝達ギヤ22、ギヤ21、ギヤ18を介し走行車輪13aに伝えられるため、プレス金型搬送台車IはプレスラインLと直角な方向に移動させられることになる。
【0017】
次に、図2において二点鎖線で示す如く、上記各電動シリンダ17を収縮作動させ、昇降用レバー16を介し車輪軸14を回転変位させることにより各走行車輪13a,13bを上昇させて、プレス金型搬送台車I全体の荷重を横行車輪26a,26bに受けもたせるようにし、その状態で、電動モータ23を駆動し、その回転力を駆動ギヤ25から伝達ギヤ22、動力伝達軸19、ベベルギヤ機構29、車輪軸27を介し横行車輪26aに伝えるようにすることによって、台車Iを横行車輪26a,26bにより横行させ、更に、必要に応じ、走行、横行を切り換えながら自走させて、金型ストレージヤード34まで移動させるようにする。
【0018】
プレス金型搬送台車Iが金型ストレージヤード34に到着すると、ボルスタ9上に載置されている使用済みの上下の金型6,7をクレーンにより吊り上げて下ろした後、次に使用する上下の金型6,7をボルスタ9上にクレーンを用いて載置させるようにする。この際、下金型7をボルスタ9上に正確にセットするようにし、その上に上金型6を載せておくようにする。
【0019】
しかる後、上下の金型6,7を載せた状態のプレス金型搬送台車Iを、上記と同様に適宜走行と横行を切り換えながら自走させ、プレスハウジング4の目的とするプレスステーションSの前部位置まで移動させるようにした後、プレス金型搬送台車Iを当該プレスステーションS内に進入させて定置させるようにする。次いで、スライド5を下降させ、該スライド5に上金型6をセットして、スライド5を上昇させるようにする。この際、下金型7は既にボルスタ9にセットされているので、上金型6はスライド5にセットすることで、上下の金型6,7の位置合わせを行うことができる。
【0020】
このように、プレス金型搬送台車Iは、バッテリー12を搭載して任意の場所へ自走できることから、金型6,7の積み替え作業を金型ストレージヤード34で行うことができ、したがって、プレスハウジング4の前面部位置と金型ストレージヤード34との間でクレーンが往き交うことがなく、金型6,7の交換作業を短時間にて能率的に行うことができる。又、上記プレス金型搬送台車Iは各プレスステーションS間で共有することができるので、どのプレスステーションSで用いても金型6,7の位置合わせを容易に行うことができる。更に、たとえば、図5に示すように4つのプレスステーションSを有する場合、各プレスステーションS毎に2台のプレス金型搬送台車Iを用意しておけば、1台が使用中に他の1台に次の金型6,7を載置して待機させておくことができ、金型交換作業をより能率よく行うことができる。
【0021】
なお、上記実施の形態では、トランスファプレスへの採用例について示したが、他のプレス機械に対しても採用できること、又、実施の形態では走行車輪13a,13bを昇降できるようにした場合を示したが、横行車輪26a,26bを昇降できるようにしてもよいこと、更に、実施の形態では、説明の便宜上、プレスラインLと直角な方向を走行としたが、プレスラインLと平行な方向が走行であってもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0022】
【発明の効果】
以上述べた如く、本発明のプレス金型搬送台車によれば、次の如き優れた効果を発揮する。
(1)上面にプレス金型を載置させるようにした台車フレームに、バッテリーを搭載し、該バッテリーからの給電により自走できるようにした構成としてあるので、従来の金型搬送台車の如く給電ケーブルの長さにより移動範囲が制限されてしまうようなことがなく、そのため、金型ストレージヤードまで移動して金型の積み替えを行うことができ、したがって、プレスの前面部位置付近でのクレーン作業を不要にでき、能率よく金型の交換作業を行うことができると共に、トランスファプレスのプレスステーション間や別のプレス間で台車の共有化を図ることができるので、金型の位置合わせを容易に行うことができる。
(2)台車フレームに設けた走行車輪と横行車輪のいずれかを昇降可能として、走行と横行を切り換えられるようにした構成とすることにより、狭いスペースでも無理なく円滑に移動することができ、他の作業の邪魔にならないように移動させることができて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプレス金型搬送台車の実施の一形態を示す台車フレームの概略平面図である。
【図2】図1のA−A方向矢視図である。
【図3】金型交換要領の一例を示す概略側面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】トランスファプレスの一例を示す概略正面図である。
【図6】図5のB−B方向矢視図である。
【符号の説明】
6 上金型(プレス金型)
7 下金型(プレス金型)
11 台車フレーム
12 バッテリー
13a,13b 走行車輪
26a,26b 横行車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にプレス金型を載置させるようにした台車フレームに、バッテリーを搭載し、該バッテリーからの給電により自走できるようにした構成を有することを特徴とするプレス金型搬送台車。
【請求項2】
台車フレームに設けた走行車輪と横行車輪のいずれかを昇降可能として、走行と横行を切り換えられるようにした請求項1記載のプレス金型搬送台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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