説明

ヘルペスウイルス感染の治療方法

本発明は、ヒト被験体でのヘルペスウイルス増殖を治療する、殺傷する、および/または阻害する方法に関し、該方法は、抗ウイルス性を有するナノエマルジョン組成物を、その必要があるヒト被験体に局所的に投与するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト被験体でのヘルペスウイルス増殖を治療する、殺傷する、および/または阻害する方法に関し、該方法は抗ウイルス性を有するナノエマルジョン組成物を、その必要があるヒト被験体に局所的に投与するステップを含む。本発明は、ヒトおよび動物被験体でのヘルペスウイルス感染に付随する病変を治療する、および/または予防する方法にも関し、該方法は抗ウイルス性を有するナノエマルジョン組成物を、その必要があるヒトまたは動物被験体に局所的に投与するステップを含む。
【背景技術】
【0002】
A.ヘルペスウイルス感染
ヘルペスウイルスは、インフルエンザおよび風邪のウイルスに次ぐ、ヒトウイルス疾患の主な原因である。ヘルペスウイルスは、顕性疾患を引き起こすことができ、または長年無症状のままであってシングルズ(Shingles)などとして再活性化される能力がある。ヘルペスの名称は、ラテン語のヘルペス(herpes)に由来し、これはさらに忍び寄ることを意味するギリシャ語のヘルペイン(herpein)に由来する。これは、多くのヘルペスのウイルス型によって引き起こされる皮膚病変の、忍び寄り、または広がる性質を反映するものである。
【0003】
ヘルペスウイルス(Herpesviridae)科には少なくとも25種のウイルスが存在する(現在、α、β、およびγの3つの亜科に分けられている)。表1に示すように、8つまたはそれを超えるヘルペスウイルス型が、ヒトに感染することが知られている。
【表1】

【0004】
患者がヘルペスウイルスに一旦感染すると、感染は一生存続する。最初の感染の後に潜伏が続き、引き続き再活性化することがある。ヘルペスウイルスは、ヒト人口の殆どに感染し、中年期を過ぎて生きているヒトは、通常HHV-8を例外として、上記のヘルペスウイルスの殆どに対する抗体を持っている。ヘルペスウイルスは、潜伏状態におけるその位置によって分類される(表2)。
【表2】

【0005】
ヘルペスウイルスの構造
ヘルペスウイルスはエンベロープで覆われているウイルスである。ウイルスの膜は極めて脆く、エンベロープが損傷を受けたウイルスには感染性がない。これは、ウイルスが容易に分解し、したがってウイルスは、粘膜表面、または感染者の分泌物との直接接触によってのみ獲得され得ることを意味する。ヘルペスウイルスの構造を図解したものを下記に示す。
【化1】

【0006】
1.単純ヘルペスウイルス1型(Herpes Simplex Virus Type 1)および単純ヘルペスウイルス2型(Herpes Simplex Virus Type 2)
単純ヘルペス1型および2型は、非常に大型のウイルスであり、特徴が非常に似通っている。殆どのあらゆるヒトの細胞型はHSVに感染している可能性がある。内皮細胞および線維芽細胞などの多くの細胞において感染は溶解性であるが、ニューロンは通常潜伏感染を支持する。ヘルペス感染の際立った特徴は、上皮粘膜細胞またはリンパ球に感染する能力があることである。赤色化した領域から斑が生じ、これが外被を生じて丘疹が形成する。この水疱中の液体はウイルスで満たされている。ウイルスは、湿性が保たれている限り感染性であり続けることができる。
【0007】
単純ヘルペス1型および2型は、ヒトおよび他の動物の両方に感染することができるが、ヒトだけが疾患の症状を示す。HSV-1およびHSV-2は、最初に粘膜上皮の細胞に感染し、または傷口から侵入する。これらは、次いで、神経細胞における潜伏感染を頻繁にもたらす。最初の感染部位は、患者がウイルスを獲得した方法による。上皮細胞が感染した後は、病変周囲でウイルスの複製があり、神経が支配するニューロン中へ侵入する。ウイルスはニューロンに沿って神経節に移動する。口腔粘膜のヘルペス感染の場合は、ウイルスは三叉神経節に移動し、生殖器粘膜の感染ではウイルスの仙骨神経節への侵入がもたらされる。ウイルスは逆方向にも移動して、最初に感染した粘膜に到達することもある。感染性のウイルスを含む小胞が粘膜上に形成され、ウイルスが蔓延する。小胞は治癒し、通常、その結果の痕跡は存在しない。
【0008】
潜伏
ウイルス粒子はニューロンに感染することがあり、最初期タンパク質だけが作られるので、(ウイルスの存在は、最初期タンパク質に対する抗体を用いた免疫蛍光顕微鏡などの技術によって検出することができるが)細胞変性効果は存在しない。潜伏の破壊はこれらの細胞において生じることがあり、ウイルスは神経軸索に沿って移動し戻る。病変は、今度は、単一の後側脊髄神経(それだけには限定されないが三叉神経を含む)によって神経支配される皮膚の領域であるデルマトームに生じる。これは、最初の感染と同じ部位に感染の再発(したがって症状)が生じることを意味する。再発を誘発すると思われる物質はいくつか存在するが、その殆どがストレス関連である。強力な太陽光への曝露、およびおそらく発熱が再発をもたらし得るとも思われる。これらのファクターは、神経細胞におけるウイルスの増殖の再生をもたらす免疫抑制をある程度引き起こし得る。感染の再発は、通常、初感染ほど顕著ではなく、初感染より速やかに解消する。
【0009】
HSV1およびHSV2感染は生涯続き、潜伏はすぐに確立されるが、感染患者は、再発の結果他者に感染させることがある。ウイルスは皮膚上の病変中に見出されるが、唾液および膣分泌物などの様々な体液中にも存在することがある。両タイプのHSVとも、接触した領域に応じて口腔または生殖器の粘膜に感染することがある。しかし、HSV-1は通常、口から口に伝染し、または感染性のウイルスの手への伝播によって、その後ウイルスはあらゆる傷口によって、または目から身体に入ることがある。抗体によって判定して、大半の人口にHSV-1感染の証拠がある。低開発国では衛生状態が劣る結果、HSV-1抗体が90%を超える子供に見出される。HSV-1は性感染によって伝染することもある。
【0010】
HSV-2は、通常性行為によって伝染し、肛門、直腸、および上部消化管、ならびに生殖器領域に見出される。さらに、乳児は、生殖器から感染した母親によって出産される時に感染することがある。乳児は、母親の感染が伝染する場合、子宮内感染することもある。
【0011】
単純ヘルペスウイルスによって引き起こされる疾患
1型および2型単純ヘルペスは重症の疾患を引き起こすことがある。いずれの場合も、最初の病変は同じに見える。その小水疱の基部に赤色(紅斑性の)病変の基部を有する、感染性のウイルスを含んだ透明な小水疱である。この膿を含んだ(膿疱性の)病変から、外被に覆われた病変および潰瘍が発生することがある。HSV-1およびHSV-2感染に付随する疾患の例には、口腔ヘルペス、ヘルペス性角膜炎、ヘルペス性ひょう疸、剣状ヘルペス、ヘルペス・ルグベイオルム(herpes rugbeiorum)、ヘルペス性湿疹、性器ヘルペス、HSV直腸炎、HSV脳炎、HSV髄膜炎、および新生児のHSV感染が含まれる。
【0012】
口腔ヘルペスは通常HSV-1によって引き起こされるが、まれにHSV-2によって引き起こされることがある。原発性疱疹性歯肉口内炎では、通常透明な病変が最初に発達し、白色の外見を有する潰瘍が続く。この感染は、しばしば最初は唇上にあり、口および咽頭の全部分に広がることがある。三叉神経節から再活性化し、コールドソア(cold sore)として知られているものをもたらすことがある。ヘルペス咽頭炎は、上気道の他のウイルス感染に付随することが多い。この疾患は、AIDS患者など、免疫の抑制された人々においてより重症である。
【0013】
コールドソアとしても知られる口唇ヘルペス(HSV-1)は、最も頻繁には最初の感染部位の、高率の再発を特徴とする(再発性口唇ヘルペス)。成人におけるHSV-1の世界的な血清陽性率は、現在70〜80%であり、年間400万人以上のコールドソアがもたらされている。米国において青年期人口の40〜50%、および成人人口の80〜90%がHSV-1に曝されている。感染者人口の約40%がいずれかの時点でコールドソアを有し、コールドソアを有したことがあるヒトの殆どに再発の出現がある。米国において5000万人を超える成人に、1年あたり2回以上の出現がある。発症は一般に7〜10日以内に消失し、12〜14日までに完全に治癒するが、扁平瘢痕または紅斑が持続することがある(3)。再発性の口唇ヘルペスは自発的に消失する良性の疾患であるが、感染性が高く、水疱および流出液中のウイルス力価は高い。口唇ヘルペスは身体的疼痛を引き起こし、特に再発の頻繁な患者において外観を損なうこともある。
【0014】
口唇ヘルペスに対する現在の治療は、3つの主要なカテゴリーに分けることができる:(1)対症療法、(2)局所的な抗ウイルス薬物療法、(3)全身的な抗ウイルス薬物療法。局所麻酔薬(リドカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、ベンジルアルコール、カンファー、およびフェノール)、ならびに軟化薬(ワセリンおよびアラントイン)での対処療法は、口唇ヘルペスの再発の不快感のいくつかを軽減するが、時間経過に対して、または再発の頻度に対して、何の効果もない。口唇ヘルペスの発疹の時間経過の短縮を称する局所的および全身的な抗ウイルス薬物療法はいくつか存在する。小売(OTC)販売用にFDAによって認可されている局所クリーム剤であるAbreva(登録商標)(ドコサノール10%クリーム製剤)には、直接的な抗ウイルス作用はなく、その提唱されている機序は、ウイルスが細胞中に侵入するのを予防することである。Abreva(登録商標)は、治癒までの平均時間をおよそ半日短縮することが示されている。反応を著しくするために、前駆段階の間にドコサノールを投与しなければならない。HSV-1感染に用いられる処方の抗ウイルス薬は全て、非環式グアノシンの類似体である:Zovirax(登録商標)(アシクロビル)、Valtrex(登録商標)(バラシクロビル)、Denavir(登録商標)(ペンシクロビル)、およびFamvir(登録商標)(ファムシクロビル)。ウイルス耐性が発生する可能性があるので、FDAはこれらの薬物をOTC販売用に認可していない。Zovirax(登録商標)はバイオアベイラビリティが低いため周辺効果しかなく、前駆段階後に投与しても効果はほとんどまたは全くない。1%濃度のペンシクロビル(Denavir(登録商標)1%)での治療を、前駆段階の間に開始すると、病変治癒時間の短縮、疼痛の軽減、およびウイルスの排出において、Zovirax(登録商標)よりもいくらか効果的である。しかし、前駆段階後に投与しても、治癒までの症状および時間における低減が20〜30%という周辺効果しかない。Famivir(登録商標)(ファムシクロビル)は体内でペンシクロビルに変換される。ファムシクロビルは、アシクロビルと同じウイルスに対して作用するが、作用の持続時間が長い。Valtrex(登録商標)はアシクロビルのバリンエステルであり、体内でアシクロビルに変換される、別の「プロドラッグ」である。経口のValtrex(登録商標)(バラシクロビル)は1日治療として免疫応答性の成人における使用に認可されている。これらアシクロビルのプロドラッグで経口的に治療すると、口唇ヘルペスの発症の持続時間をおよそ1日短縮する。ヘルペス病変は再発性であり、生涯続くので、HSV-1感染に利用可能な治療はない。
【0015】
ヘルペス性角膜炎は目の感染であり、主にHSV-1によって引き起こされる。これは再発性であることがあり、失明にいたることがある。ヘルペス性角膜炎は米国における角膜性の失明の主要原因である。
【0016】
ヘルペス性ひょう疸は、ヘルペス感染した身体分泌液と手を接触した者の疾患であり、HSVのいずれの型によっても引き起こされることがあり、手または手首上の小さな傷口から身体に侵入する。これは、生殖器から手にHSV-2が伝達することによっても引き起こされ得る。
【0017】
剣状ヘルペスには、レスラーがかかる。これは、あるレスラー上の皮膚病変から彼の/彼女の対戦相手への直接的な接触によって広がると考えられ、通常、頭部および頸部領域(レスリングで掴むときに頻繁に接触する部位である)に出現する。これは、ラグビーなどの他の接触性のスポーツにおいても見られ、この場合はスクラム疹として知られている(ヘルペス・ルグベイオルム)。
【0018】
ヘルペス性湿疹は、活性の湿疹、既存のアトピー性皮膚炎のある小児において見出され、湿疹病変の部位の皮膚にわたって広がることがある。ウイルスは肝臓および副腎などの他の器官に広がることがある。
【0019】
性器ヘルペスは通常HSV-2の結果であり、症例の約10%がHSV-1の結果である。しかし、最近の研究では、性器ヘルペスの新しい症例の約半分がHSV-1によって引き起こされることが示されている。一次感染は無症状であることが多いが、多くの有痛性の病変が男性の陰茎の亀頭または骨幹上に、および女性の外陰部、膣、頸部、および肛門周囲領域上に発達し得る。男性も女性も、尿道が含まれることがある。女性では、感染には膣分泌物が伴うことがある。性器ヘルペス感染は一過性のウイルス血症を伴い、発熱、筋肉痛、および鼠径部領域の腺の炎症を含めた様々な症状が付随することがある。性器ヘルペスの二次発症は仙骨神経節におけるウイルスの再活性化の結果として生じ、一次発症ほど重症でない(そして、継続が短時間である)ことが多い。再発性の発症は、通常、HSV-2の一次感染に起因すると考えられる。再発を経験しようとする患者は、発疹しようとする領域において灼熱感のある前駆症状を、通常、最初に経験する。再発が稀にしかない患者もいるが、14〜21日毎ほど頻繁に再発を経験する患者もいる。明らかに活性な疾患が存在しても、存在しなくても、感染患者は顕性の症状なしに感染性であり続け、そのためウイルスを性交相手にそれとは知らずに伝染させてしまう。
【0020】
HSV直腸炎は、直腸および肛門の炎症である。
【0021】
HSV脳炎は、通常HSV-1感染の結果であり、最も一般的な散発性ウイルス性脳炎である。HSV脳炎は熱性疾患であり、側頭葉の1つに損傷をもたらすことがある。その結果、脊髄液中に血液が存在し、患者は発作などの神経学的症状を経験する。この疾患は致死的であり得るが、米国においては1年あたり1000症例より少ない。
【0022】
HSV髄膜炎はHSV-2感染の結果である。症状は自発的に解消すると思われる。
【0023】
新生児のHSV感染はHSV-2に起因し、致死的であることが多いが、このような感染は稀である。母親が分娩時にウイルスを排出する場合、特に感染の可能性がある。ウイルスは、子宮内で、または出産中のいずれかに獲得されることがあり、後者がより一般的である。新生児は免疫系が未発達であるので、ウイルスは多くの末梢器官(例えば、肺および肝臓)に速やかに伝播し、中枢神経系にも感染することがある。
【0024】
2.水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus)
水痘帯状疱疹ウイルス(帯状疱疹ウイルス(Herpes Zoster virus)および3型ヒトヘルペスウイルスとしても知られる)は、多くの患者の胸郭周囲に帯を形成する特徴的な発疹をもたらす。このウイルスは、通常小児期におけるチキンポックス(Chicken-pox)(水痘)、および後年におけるシングルズという2つの主要な疾患を引き起こす。シングルズ(帯状疱疹)は、早期の水痘感染の再活性化である。
【0025】
水痘ウイルスは感染性が高く、米国人口の90%を超えて水痘タンパク質に対する抗体がある。感染患者の家庭では、今までに疾患のなかった者が接触すると90%が罹患する(ワクチン接種をしていない場合)。これは呼吸によるエアロゾル、または皮膚病変との直接的な接触によって伝染する。HSV同様、感染は粘膜によるが、今回は気道の粘膜である。
【0026】
前駆段階の10〜12日の間、呼吸器粘膜におけるウイルスはマクロファージおよび肺細胞に感染する。この段階では症状はない。ウイルスは肺からリンパ球および単球に、そして細網内皮系に伝播する。次に約5日目に第2のウイルス血症が生じ、ウイルスは皮膚、口、結膜、気道に、そして、実際身体中の上皮部位に移動する。次いでウイルスは血管を離れ、最初に上皮下の部位に、次いで上皮部位に感染し、細胞内封入体を有する多核細胞を含む丘疹を形成する。初感染の約12〜14日後、ウイルスは表面に到達し、気道外部に排出される。特徴的な丘疹(発疹)が出現した場合、ウイルスが皮膚表面に到達するのに少々長く(数日)かかる。初感染とチキンポックスと診断される丘疹の出現との間の期間は様々であるが、10日から23日の範囲であり、平均約2週間である。疾患の伝染は、気道におけるウイルスから(咳による)、または感染性のウイルスを含む皮膚上の丘疹の破裂との接触からであり得る。
【0027】
発疹は、顔面、頭皮、および体幹上で最も顕著であり、四肢ではそれほどではない。この疾患は年長の小児および成人において、より重症である。これは免疫の低下した患者(AIDS、移植など)において特に重症である。ウイルスの伝播は、肺、肝臓における問題、および髄膜炎をもたらすことがある。この場合、死亡率は最高20%であることがある。
【0028】
シングルズ
感染期の後、ウイルスは、ウイルスが積極的に複製される領域に関連する神経節に遊走することがある。次いで、ウイルスは、ストレス下で、または免疫抑制で再活性化され得る。これは、通常、後年に生じる。水痘の複製の再発は、潜伏感染が生じた神経によって神経支配された別々の領域において重症の根性痛を伴う。数日後、単一の神経節によって神経支配される制限された領域(デルマトーム)にチキンポックス様病変が生じる。新たな病変が、隣接するデルマトーム、およびさらに離れたデルマトームに出現することがある。再活性化は、三叉神経を介して目に罹患することがあり(ブドウ膜炎、角膜炎、結膜炎、眼筋麻痺、虹彩炎)、第VIIおよび第VIII脳神経を介して脳に罹患することがある(ベル麻痺およびラムゼイハント症候群)。皮膚病変は、皮膚の小領域、通常胸郭上に制限され、チキンポックスにおける病変と幾分異なる。これらは小型であり、互いに接近している。再活性化は、主に高齢者に見られる帯状疱疹後神経痛と呼ばれる慢性灼熱感または掻痒性の疼痛をもたらすことがある。疼痛は発疹が治癒した後も長く続くことがある(数ヵ月または数年)。
【0029】
3.エプスタインバーウイルス(Epstein-Bar Virus)
エプスタインバーウイルスは、アフリカにおけるバーキットリンパ腫、アジア諸国における鼻咽頭の癌腫、および西欧における伝染性単核球症の原因物質である。これは、バーキットリンパ腫の原因物質として最初に発見され、後に、感染性単核球症患者がバーキットリンパ腫細胞と反応する抗体を有することが見出された。
【0030】
ウイルスは、補体C3d成分に対する受容体(CR2またはCD21)を発現する少数の細胞型だけに感染する。これらはある種の上皮細胞(中咽頭および鼻咽頭)、ならびにBリンパ球である。これによりウイルスの細胞の向性が説明される。
【0031】
感染性単核球症
一次感染は無症状であることが多いが、患者は感染性のウイルスを長年排出することがある。この疾患は、倦怠感、リンパ節症、扁桃炎、脾臓および肝臓の肥大、ならびに発熱を特徴とする。発熱は1週間を超えて持続することがある。発疹があることもある。疾患の重症度は年齢によることが多く(患者が若いほど疾患の回復が速い)、回復は通常1週間から4週間で生じる。感染性単核球症は通常良性であるが、合併症があることもある。合併症には、髄膜炎、脳炎、脊髄炎、およびギランバレー症候群などの神経学的障害が含まれる。
【0032】
4.サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)
サイトメガロウイルス感染は、かなりの割合の人口に見出される。エプスタインバーウイルス同様、年齢とともに血清陽性が上昇する。大学生の年齢までに米国人口の約15%が感染しており、これは35歳までに約50%に上昇する。
【0033】
サイトメガロウイルスは小児に症状を引き起こさず、殆どの成人では疾患は軽度である。臓器移植を受けた患者、または免疫抑制性疾患(例えば、AIDS)を有する患者では、サイトメガロウイルスは大問題であり得る。とりわけ重要なのは、目におけるサイトメガロウイルス網膜炎であり、全AIDS患者の最高15%に生じる。
【0034】
5.他のヘルペスウイルス
ヒトヘルペスウイルス6型は世界中に見出され、大半の成人(>90%)の唾液中に見出される。これは2歳までの殆ど全ての小児に感染し、感染は生涯続く。これはBリンパ球およびTリンパ球、巨核球、グリア芽細胞腫細胞において、ならびに中咽頭において複製する。これは、細胞が分裂するように刺激される場合、後に活性化され得るT細胞において潜伏感染を確立することがある。制御には細胞性免疫が不可欠であるが、感染は生涯続き、ウイルスは免疫抑制において再活性化することがある。
【0035】
ヒトヘルペスウイルス6型には、HHV-6AおよびHHV-6Bの2つの型がある。後者は、他では小児バラ疹として知られている、突発性発疹を引き起こす。これは幼い子供には一般的な疾患であり(米国では>45%の小児が2歳までにHHV-6に血清陽性である)、症状には発熱、ならびに、時折上気道感染およびリンパ節腫脹が含まれる。症状は、およそ14日の潜伏期の後、数日続く。発熱が収まり、体幹および頸部に紅斑(macropapular rash)が残り、これはそれより数日長く続く。成人では、一次感染は単核球症に付随する。このウイルスは、もともとリンパ球増殖性疾患の患者から単離され、HIV感染しているT4リンパ球に同時感染し、HIVの複製を悪化させることがある。HIV患者は、正常集団よりも感染率が高い。
【0036】
ヒトヘルペスウイルス7型(Human Herpes Virus Type 7)はCD4抗原に結合し、T4(CD4+)細胞中で複製し、成人人口の大多数(>75%)の唾液中に見出される。殆どのヒトが小児時に感染を獲得し、残りの人生の間残存する。これはHHV-6に類似しており、突発性発疹のいくつかの症例の一因となり得る。
【0037】
ヒトヘルペスウイルス8型(Human Herpes Virus Type 8)は、以前はカポジ肉腫に付随するヘルペスウイルスとして知られたものであり、多くのAIDS患者の唾液中に見出される。これは末梢血リンパ球に感染する。
【0038】
最後に、ヘルペスBウイルスは、マカクなどの旧世界サルに見出されるサルウイルスであり、サルを扱う人間におけるヒトの病原であることがある(サルの咬傷が伝播経路である)。ヒトでは、この疾患はその天然の宿主中にあるよりもずっと問題となる。実際、ヒト症例の約75%が死亡し、多くの生存者には深刻な神経学的問題(脳炎)がある。サルから感染したヒトから別のヒトに疾患が伝染し得る証拠も存在する。
【0039】
B.ヘルペスウイルス感染に対する従来の治療オプション
HSV-1、HSV-2、および水痘などのヘルペス感染を治療するのに用いられる、様々なヌクレオシド類似体薬物が存在する。ヘルペス感染を治療するのに用いられるヌクレオシド類似体の例には、アシクロビル、ファムシクロビル、およびバラシクロビルが含まれる。これらのヌクレオシド類似体は全て、耐性のヘルペス変異体の出現に頭を痛めている。さらに、これらの薬物はウイルスの複製に対して作用し、したがってこれらは潜伏性のウイルスに対して効果がない。
【0040】
とりわけ、米国食品医薬品局は、「市販の各非環式グアノシン類似体に耐性であるヘルペスウイルス(HSV)分離株の出現が記載されている。耐性の発生は、HSV-1よりもHSV-2に一般に付随するものであり、HSV耐性は全体的に、免疫系の完全な個体間よりも免疫が低下した個体の間により頻繁に生じると、一般的に考えられている。作用機序が共通であるので、利用可能な非環式グアノシン類似体間の交叉耐性の割合はほぼ完全であるとも一般的に考えられている。したがって当局は、これらの薬物を誤って使用すると、HSV耐性の発生を早め、重症かつ生命を脅かすヘルペス感染を治療するための全クラスの薬剤の有用性を危うくしかねないと懸念するものである。これらの感染の治療において非環式グアノシン類似体に匹敵する安全性および有効性を有する他のクラスの薬剤が現在入手できないという事実が、この懸念をさらに強めている。これらの懸念は、個々の患者における安全性および認容性よりもさらに広い意味のある、長期の公衆衛生問題を反映するものである。」と述べている。食品医薬品局医薬品評価センター、2000年3月。
【0041】
アシクロビル(Zovirax(登録商標))は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、および水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)に対して有効な、合成プリンヌクレオシド類似体である。Zoviraxカプセル剤、錠剤、および懸濁剤は経口投与用の製剤である。アシクロビルに対するHSVおよびVZVの耐性は、ウイルスのTKおよび/またはDNAポリメラーゼにおける質的および量的な変化に起因し得る。アシクロビルに対する感受性の低下したHSVおよびVZVの臨床分離株が、免疫低下患者、特にHIV感染の進行した患者から回収されている。アシクロビルに付随する有害作用または有害事象には、アナフィラキシー、血管性浮腫、発熱、頭痛、疼痛、末梢浮腫、攻撃行動、不穏、運動失調、昏睡、錯乱、意識低下、せん妄、めまい、構音障害、脳症、幻覚、知覚異常、精神病、てんかん発作、傾眠、振戦、下痢、胃腸障害、悪心、貧血、白血球破壊性血管炎、白血球減少症、リンパ節腫脹、血小板減少症、肝炎、抗ビリルビン血症、黄疸、筋肉痛、脱毛症、多形性紅斑、日光過敏性発疹、掻痒症、発疹、スティーブンスジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、蕁麻疹、腎不全、血中尿素窒素上昇、クレアチニン上昇、血尿、および肉眼的異常が含まれる。
【0042】
ファムシクロビル(Famivir(登録商標))は、帯状疱疹(シングルズ;過去にチキンポックスを有したことがあるヒトに生じることがある発疹)を治療するのに用いられる、経口投与される錠剤である。これは、免疫系が正常であるヒトにおけるヘルペスウイルスのコールドソアまたは熱性疱疹の繰返し出現を治療するのにも用いられる。免疫系が正常であるヒトにおける繰り返し出現を治療し、性器ヘルペス(時折生殖器および直腸周辺に形成する痛みを引き起こすヘルペスウイルス感染)のさらなる出現を予防するのに、ファムシクロビルが用いられる。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を有するヒトにおける、皮膚および粘膜(口、肛門)の単純ヘルペス感染の再発を治療するのにも、ファムシクロビルは用いられる。
【0043】
ファムシクロビルは、抗ウイルス薬と呼ばれる一クラスの薬物療法である。これは、体内のヘルペスウイルスの伝播を止めることによって作用する。ファムシクロビルはヘルペス感染を治療するわけではなく、ヘルペスウイルスの他のヒトへの伝染を阻止し得るものでもない。しかし、これは疼痛、灼熱感、刺痛、圧痛、および掻痒の症状を低減し、痛みが治癒するのを助けることができる。ファムシクロビルに付随する副作用には、頭痛、悪心、嘔吐、下痢または軟便、ガス、腹痛、倦怠、紅斑、掻痒、生理痛、および疼痛、灼熱感、しびれ、または手もしくは足における刺痛が含まれる。
【0044】
バラシクロビル(Valtrex(登録商標))は、帯状疱疹(シングルズ)および性器ヘルペスを治療するのに用いられる経口投与される薬物である。これはヘルペス感染を治療するわけではないが、疼痛および掻痒を低減し、痛みが治癒するのを助け、新しいものが形成するのを予防する。バラシクロビルに付随する副作用には、頭痛、胃部不快感、嘔吐、下痢または軟便、便秘、紅斑、掻痒、錯乱、皮膚または目の黄色化、発熱、および尿中の血液が含まれる。
【0045】
経口の形態に利用可能な抗ウイルス薬物療法(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル)は、性器ヘルペスの治療に特に開発されているが、これらを口腔ヘルペスに対して処方してもよい。ヘルペス病変を治療するための全身の医療用薬品を使用する際の問題の1つは、症状の開始から1〜4時間以内に治療を始めなければならないため、患者が薬物をタイミングよく容易に利用できないことである。
【0046】
口腔のHSV症状を治療するために処方される局所的な抗ウイルス薬物療法には、アシクロビル軟膏(商品名Zovirax(登録商標))およびペンシクロビルクリーム(商品名Denavir(登録商標))の2つがある。両方とも、治癒プロセスを加速するように作用し、ウイルス活性を低下させるが、これらの薬品は対症的な軽減をもたらすだけであるか、または出現を約12時間しか短縮しない。これらの局所用薬物は、それ自体が病変上に直接塗布されるが、前駆症状の開始時に用いることもできる。
【0047】
口腔ヘルペス用の他の局所的治療は小売(OTC)で入手可能であるが、アシクロビルおよびペンシクロビルなどの抗ウイルス化合物はそうではない。領域を麻痺させ、出現の不快感からの一時的な軽減を誘発する成分を含むものもある。残念ながら、OTC治療の中には、繰り返し投与で領域をさらに刺激することがあるという理由で、症状の治癒時間を実際に遅らせる可能性のあるものもある。OTCでFDA認可されたクリーム剤はAbreva(登録商標)だけであり、これは治癒プロセスを早めるのを助けることが臨床的に証明されている。
【0048】
単純ヘルペスウイルスと異なり、エプスタインバーウイルスを治療するのに利用可能な薬物は存在しない。これは、このウイルスによってコードされるチミジンキナーゼが非存在であることを反映し得る(単純ヘルペスに対して有効であるアシクロビルなどの薬物は、ウイルスのチミジンキナーゼによって活性化される)。
【0049】
サイトメガロウイルス(CMV)治療に対して、全てのヒトヘルペスウイルスの複製を阻害するガンシクロビルが、特に網膜炎を治療するのに、通常用いられている。ホスカルネットも米国において認可されている。アシクロビルは有効ではない。
【0050】
ガンシクロビルは、免疫系が正常に働いていないヒトにおけるサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎(失明をもたらすことがある目の感染)を治療するのに用いられる、経口投与される薬物である。ガンシクロビルカプセルは、病状が静脈内のガンシクロビルによって制御された後、CMV網膜炎を治療するのに用いられる。ガンシクロビルは、後天性免疫不全症候群(AIDS)疾患を有するヒトまたは臓器移植を受けたヒト、およびCMV疾患の危険性のあるヒトにおけるサイトメガロウイルス(CMV)疾患を予防するのにも用いられる。ガンシクロビルには、胃部不快感、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、げっぷ、食欲減退、食物を味わう能力における変化、口渇、口の痛み、異常夢、神経過敏、うつ、発汗、紅潮、関節もしくは筋肉の疼痛もしくは痙攣、斑点、光の閃光、もしくは全てに黒いカーテンがかかったものが見える、排尿の低下、蕁麻疹、発疹、掻痒、手、腕、足、足首、もしくは下肢の腫脹、手もしくは足における刺痛、もしくは灼熱感、疼痛、しびれ、制御することができない手の震え、呼吸もしくは飲み込みの困難、胸痛、気分の変化、およびてんかん発作などの重症の副作用があることがある。さらに、ガンシクロビルは血中のあらゆるタイプの細胞の数を低減することがあり、重大かつ生命を脅かす問題を引き起こす。さらに、ガンシクロビルを投与した実験動物は先天性欠損、精子数減少、および癌を発症した。ガンシクロビルが、ヒトにおいて、先天性欠損、精子数減少、もしくは生殖上の問題、または癌を引き起こすか否かは知られていない。
【0051】
B型ヘルペスウイルスに推奨される治療は、アシクロビルおよびガンシクロビルであるが、これらの有効性は知られていない。
【0052】
C.ナノエマルジョン
ナノエマルジョンに関する以前の教示は、グラム陽性細菌、細菌の芽胞、またはグラム陰性細菌を不活性化する方法に対する、米国特許第6,015,832号に記載されている。この方法は、グラム陽性細菌、細菌の芽胞、またはグラム陰性細菌を、細菌を不活性化する(または細菌の芽胞を不活性化する)エマルジョンと接触させるステップを含んでいる。米国特許第6,506,803号は、エマルジョンを用いてヒト上またはヒト中の微生物物質(例えば、細菌、ウイルス、芽胞、真菌)を殺傷または中和する方法に対するものである。米国特許第6,559,189号は、試料(ヒト、動物、食物、医療機器など)をナノエマルジョンと接触させるステップを含む、試料を汚染除去するための方法に対するものである。ナノエマルジョンを細菌、ウイルス、真菌、または芽胞と接触させると、病原体を殺傷し、または不能化する。抗微生物性のナノエマルジョンは、四級アンモニウム化合物、エタノール/グリセロール/PEGの1つ、および界面活性剤を含んでいる。米国特許第6,635,676号は2つの異なる組成物、および試料をいずれかの組成物で処理することにより試料を汚染除去する方法に対する。組成物1は、細菌、ウイルス、真菌、および芽胞に対して抗微生物性であるエマルジョンを含んでいる。エマルジョンは油および四級アンモニウム化合物を含んでいる。米国特許第7,314,624号は、免疫原およびナノエマルジョンの組み合わせで、粘膜表面を介して被験体を治療するステップを含む、免疫原に対する免疫反応を誘導する方法に対する。ナノエマルジョンは、油、エタノール、界面活性剤、四級アンモニウム化合物、および蒸留水を含んでいる。US-2005-0208083-AおよびUS-2006-0251684-A1は好ましいサイズの液滴を有するナノエマルジョンに対する。US-2007-0054834-A1は、ハロゲン化四級アンモニウムを含む組成物、およびそれを用いて感染状態を治療する方法に対する。四級アンモニウム化合物は、エマルジョンの部分として提供されてよい。最後に、US-2007-0036831-A1は抗炎症薬を含むナノエマルジョンに対するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】米国特許第6,015,832号
【特許文献2】米国特許第6,506,803号
【特許文献3】米国特許第6,559,189号
【特許文献4】米国特許第6,635,676号
【特許文献5】米国特許第7,314,624号
【特許文献6】US-2005-0208083-A
【特許文献7】US-2006-0251684-A1
【特許文献8】US-2007-0054834-A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0054】
当技術分野において、ヘルペス感染に罹患している患者に対する治療オプションの改善が必要とされている。特に、当技術分野において、ヘルペス感染に付随する病変に必要とされる治癒時間を減少させることができる、極めて有効な局所薬剤が必要とされている。本発明はこれらの必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0055】
本発明は、その必要があるヒト被験体において、ヘルペスウイルス感染を治療する、ヘルペスウイルス感染を予防する、ヘルペスウイルス感染の再発を予防する、ヘルペスウイルスの再活性化を予防する、ヘルペスウイルスの再活性化を最小化する、またはそれらの組み合わせを行なう方法に対する。本方法は、ヒト被験体にナノエマルジョンを局所的に投与するかまたは皮内投与するステップを含み、局所投与は、ヘルペス病変、ヘルペス病変の周囲の皮膚、またはそれらの組み合わせに対するものである。ナノエマルジョンは約1000nm未満の平均直径を有する液滴を含み、かつナノエマルジョンは、水、少なくとも1種の油、少なくとも1種の界面活性剤、および少なくとも1種の有機溶媒を含む。さらなる一実施形態において、ナノエマルジョンはヘルペスウイルスを殺傷し、ウイルスの伝播を予防する。
【0056】
本発明の一実施形態において、必要がある被験体に本発明によるナノエマルジョンを投与することを含む本発明の方法は、ビヒクル、治療なし、または非ナノエマルジョンの治療方法に比べて治癒までの時間の減少をもたらす。
【0057】
本発明の一実施形態において、ナノエマルジョン中に存在する界面活性剤は、カチオン性界面活性剤である。本発明の別の一実施形態において、ナノエマルジョンはキレート剤をさらに含む。
【0058】
ナノエマルジョンはそれ自体、抗ウイルス活性を有し、治療有効性を得るための別の有効薬剤と組み合わせる必要はない。
【0059】
別の一実施形態において、ナノエマルジョンは、それだけには限定されないが別の抗ウイルス薬の添加を含めた、ヘルペス感染を治療する、治癒させる、または緩和する上で有用な1種または複数の有効薬剤をさらに含む。
【0060】
驚くべきことに、局所的に投与されたナノエマルジョンは、ヘルペスウイルス感染に対する従来の局所治療、および経口投与された抗ウイルス治療と同様に有効であり、またはそれらより優れていることが見出された。局所的に投与された薬物、それゆえ局所の、部位特異的活性は、全身活性を有する経口投与された薬物よりも極めて好ましいので、これは意義深い。背景技術の項目において記載したように、全身性の抗ウイルス薬には多くの副作用があり、そのいくつかは非常に重大である。
【0061】
本発明の一実施形態において、本発明のナノエマルジョンは、(a)ヘルペスウイルスに対して治療上有効であり、および/または(b)ヘルペスウイルスに対して殺ウイルス的もしくは静ウイルス的である。
【0062】
本発明の別の一実施形態において、本発明によるナノエマルジョンでの治療後、病変の部分的もしくは完全な除去が観察される。本発明のナノエマルジョンは、病変が顕在化もしくは発達するのを予防することができる。本発明のナノエマルジョンは、対照に比べて、および/またはAbreva(登録商標)、Zovirax(登録商標)、およびDenavir(登録商標)などの従来の非ナノエマルジョンの治療に比べて、治癒までの時間を減少させることもできる。例えば、本発明のナノエマルジョンは、ベースラインが前駆病変段階である場合、ベースラインが紅斑病変段階である場合、ベースラインが丘疹病変段階である場合、および/またはベースラインが小水疱病変段階である場合、治癒までの時間を減少させることができる。
【0063】
治療すべき患者は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスリンパ球向性ウイルス(Herpes Lymphotropic Virus)、ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)、ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)、またはそれらの組み合わせなどのヘルペスウイルス感染に罹患していてよい。
【0064】
ナノエマルジョンは、例えば、口腔顔面部、目、尿生殖部(外部もしくは内部の、皮膚もしくは粘膜)、膣粘膜、直腸粘膜、肛門粘膜、口粘膜、四肢、皮膚、咽頭口部、表面皮膚構造および付属器、唇、赤唇縁、口の全領域、頸部、会陰、大腿、手、角膜、目、尿道、またはそれらのいずれかの組み合わせを含めた、治療の必要があるあらゆる身体領域に投与することができる。
【0065】
好ましくは、局所または皮内投与用のナノエマルジョンは、軟膏剤、クリーム剤、エマルジョン剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、生体接着ゲル剤、スプレー剤、シャンプー剤、エアロゾル剤、パスタ剤、泡沫剤、サンスクリーン剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤の形態、または物品もしくは担体の形態、例えば、絆創膏、インサート、シリンジ様アプリケーター、ペッサリー、粉末、タルクもしくは他の固体、シャンプー、清浄剤(リーブオンおよびウォッシュオフ製品)、ならびに表皮、真皮、およびケラチン層内への浸透を支持する薬剤である。本発明のナノエマルジョンは、殺ウイルス的または静ウイルス的であってよい。
【0066】
先の一般的記載および以下の図面の簡単な説明および発明を実施するための形態は、例示的かつ説明的なものであり、請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図するものである。他の目的、利点、および新規な特徴は、当業者であれば、以下の本発明の発明を実施するための形態から容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明によるナノエマルジョン(「NB-001」)を口唇ヘルペスに起因するヘルペス病変に投与した場合の、ナノエマルジョンの提唱されている作用機序を示す図である。ナノエマルジョンはウイルスを溶解し、ウイルスの不活性化、ウイルスの死滅、またはそれらの組み合わせをもたらすと考えられる。
【図2】HSV-1感染のマウスモデルを示す図であり、本発明によるナノエマルジョン(NB-001)は病変の形成を予防し、致死量のHSV-1に感染したマウスの生存を改善した。結果は、局所のナノエマルジョンは、全身のアシクロビルと同様の程度にマウスにおける全身ウイルス感染を予防することを示している。
【図3】口唇ヘルペスの治療における、本発明によるナノエマルジョン(NB-001)の使用の臨床試験の結果を示す図であり、NB-001はビヒクルに比べてヘルペス病変の治癒を改善した。図3Aは、ビヒクル、0.05%ナノエマルジョン、または0.10%ナノエマルジョンで処置した場合に、3日目までに治癒した被験体のパーセント値を示し、図3Bは、ビヒクル、0.05%ナノエマルジョン、または0.10%ナノエマルジョンで処置した場合に、4日目までに治癒した被験体のパーセント値を示す。
【図4】ビヒクルおよび本発明によるナノエマルジョン(0.1%NB-001、0.3%NB-001、および0.5%NB-001)で治療した場合の、口唇ヘルペスの第2B相試験における被験体の傾向および個体群統計学を示す図である。
【図5】本発明によるナノエマルジョン(NB-001)を用いた、口唇ヘルペスの第2B相試験における有害事象のまとめを示す図であり、有害事象の発生率はナノエマルジョンで処置した治療被験体とビヒクルで処置した被験体との間で差がなかった。
【図6】本発明によるナノエマルジョンを用いた、口唇ヘルペスを治療する第2B相試験における、被験体によって評価した治癒までの時間(日数)(Kaplan-Meier生命表分析(ITT))を示す図である。一次分析は、とりわけ0.3%ナノエマルジョンで処置した被験体に対して、治癒までの時間における有意な改善を指摘している。
【図7】本発明によるナノエマルジョンを用いた、口唇ヘルペスを治療する第2B相試験における調査者によって評価した治癒までの時間(日数)(Kaplan-Meier生命表分析(ITT))を示す図である。一次分析は、とりわけ0.3%ナノエマルジョンで処置した被験体に対して、治癒までの時間における有意な改善を指摘している。
【図8】本発明によるナノエマルジョン(0.30%ナノエマルジョンに対する最終の分析)を用いた、口唇ヘルペスを治療する第2B相試験において実証された治癒までの時間における改善を示す図である。
【図9】口唇ヘルペスの治療における、本発明によるナノエマルジョンと比べた、主要な市販の治療法に対して別々に報告された有効性レベルの比較を示す図である。報告された有効性の値を、経口用Famvir(登録商標)、経口用Valtrex(登録商標)、局所用Abreva(登録商標)、局所用Zovirax(登録商標)、および局所用Denavir(登録商標)について示す。
【図10】本発明によるナノエマルジョン(NB-001)によるHSV-1の溶解を示す電子顕微鏡写真を示す図である。図10AはNB-001投与前のHSV-1ウイルスを示し、図10Bは投与15分後のHSV-1ウイルスを示し、NB-001がHSV-1ウイルスを取り囲み、HSV-1ウイルスと融合することを示しており、図10CはNB-001投与30分後のHSV-1ウイルスを示し、NB-001がHSV-1生物体を破壊および溶解することを示している。
【図11】本発明によるナノエマルジョン(NB-001)による、様々な株のHSV-1の阻害を示す図である。試験したHSV-1株は、野生型(WT)、ヌクレオシド類似体アシクロビルに対して耐性(ACV-R)、ピロリン酸類似体ホスカルネットに対して耐性(FOS-R)、またはアシクロビルおよびホスカルネット両方に対して耐性(ACV/FOS-R)であった。データは、本発明によるナノエマルジョンは、アシクロビルおよびホスカルネット両方に対して耐性のHSV-1株に対して活性であることを示す。
【図12】本発明によるナノエマルジョン(NB-001)による、様々な株のHSV-2の阻害を示す図である。試験したHSV-2株は、野生型(WT)、アシクロビルに対して耐性(ACV-R)、ホスカルネットに対して耐性(FOS-R)、またはアシクロビルおよびホスカルネット両方に対して耐性(ACV/FOS-R)であった。データは、本発明によるナノエマルジョンは、アシクロビルおよびホスカルネット両方に対して耐性のHSV-2株に対して活性であることを示す。
【図13】様々な量の界面活性剤CPCを含む、本発明によるナノエマルジョンでの、24時間のブタ皮膚中への送達に対する様々なナノエマルジョン用量(0.1%、0.3%、および0.5%CPCに相当する0.1%、0.3%、および0.5%ナノエマルジョン)の効果を示す図である。図13Aは表皮送達の結果を示し、図13Bは真皮送達の結果を示す。
【図14】12時間内に5回投与し24時間後の、ヒト屍体皮膚の表皮中への浸透に対する高用量のナノエマルジョン(0.1%、0.3%、および0.5%CPCに相当する0.1%、0.3%、および0.5%ナノエマルジョン)の効果を示す図である。交差偏光顕微鏡は、高濃度で皮膚に投与した場合、ナノエマルジョンからのCPCの結晶化をやはり実証している。
【図15】12時間内に5回投与し24時間後の、ヒト屍体皮膚の真皮中への浸透に対する高用量のナノエマルジョン(0.1%、0.3%、および0.5%CPCに相当する0.1%、0.3%、および0.5%ナノエマルジョン)の効果を示す図である。
【図16】実施例7に記載したヒト屍体皮膚を利用した側方拡散試験の寸法を示す図であり、2つの同心性のガラス環は、外側の投与領域5.27cm2、中間領域3.3cm2、および内側領域0.5cm2を規定する。
【図17】実施例7に記載した側方拡散試験のデザインを示す図である。
【図18】0.5%塩化セチルピリジニウム(CPC)水溶液を含む対照組成物と比べた、ヒト屍体皮膚および0.5%塩化セチルピリジニウム(CPC)を含む本発明によるナノエマルジョンを利用した側方拡散試験の結果を図示する図である。24時間を超えた側方拡散の結果を図示するものであり、CPC水溶液組成物では中間領域中への側方拡散は最小であり、内側領域において側方拡散は示されなかった。これとは対照的に、0.5%ナノエマルジョンを投与した場合、中間領域および内側領域に対して側方拡散が明らかに測定された。
【図19】実施例7に記載した側方拡散試験の結果を図示する図であり、表皮組織内の、本発明によるナノエマルジョンであるNB-002(0.5%NB-002および0.25%NB-002)の移動が、外側投与領域および中間領域ならびに内側領域の3つの領域全てに示される。
【図20】実施例7に記載した側方拡散試験の結果を図示する図であり、表皮組織内の、0.5%NB-002および0.25%NB-002の移動が、外側投与領域ならびに中間領域および内側領域の3つの領域全てに示される。
【図21】外側投与領域における単回投与24時間後の、表皮内の試験した0.5%NB-002の側方拡散を図示する図であり、外側、中間、および内側領域中に、測定可能な量のナノエマルジョンが検出された。
【図22】外側投与領域における単回投与24時間後の、真皮内のNB-002の側方拡散を図示する図であり、外側、中間、および内側領域中に、測定可能な量のナノエマルジョンが検出された。
【図23】0時間および8時間の外側投与領域における投与24時間後の、表皮内のNB-002の側方拡散を図示する図であり、外側、中間、および内側領域中に、NB-002に対するマーカーとして用いられるCPCの測定によって4μg/g NB-002の最小殺真菌濃度(MFC90)を超える測定可能な量のナノエマルジョンが検出された。
【図24】0時間および8時間の外側投与領域における投与24時間後の、真皮内のNB-002の側方拡散を図示する図であり、外側、中間、および内側領域中に、NB-002に対するマーカーとして用いられるCPCの測定によって4μg/g超の最小殺真菌濃度(MFC90)を超える測定可能な量のナノエマルジョンが検出された。
【図25】Lamisil(登録商標)クリームと比べた、テルビナフィン塩酸塩(TB)を含む2種の異なるナノエマルジョン製剤の、ブタ皮膚の表皮(背側皮膚)中への吸収を示す図であり、両方とも、ナノエマルジョンまたはLamisil(登録商標)を2回投与し(0時間および8時間)、24時間後を示した。
【図26】Lamisil(登録商標)クリームと比べた、テルビナフィン塩酸塩(TB)を含む2種の異なるナノエマルジョン製剤の、ブタ皮膚の真皮中への吸収を示す図であり、両方とも、ナノエマルジョンまたはLamisil(登録商標)を2回投与し(0時間および8時間)、24時間後を示した。
【図27】本発明によるナノエマルジョンの、ヘルペスウイルスHSV-1 KOSに対するin vitroの殺ウイルス活性を示す図である。図27Aは、本発明によるナノエマルジョン(NB-001)投与による15分後のHSV-1の低減を示し、図27Bは、IC50のNB-001によるHSV-1の低減を示す。
【図28】非ナノエマルジョン製剤(Lotramin(登録商標)AFスプレー溶液)中で局所投与したミコナゾール(MCZ)と比べた、ナノエマルジョン(NB-002)中に組み入れられたMCZに対する、局所投与(BID投与)24時間後のブタ皮膚表皮中のMCZのレベルを示す図であり、MCZがナノエマルジョン中に組み入れられた場合、MCZの表皮中への送達が有意に改善することを実証している。
【図29】非ナノエマルジョン製剤(Lotramin(登録商標)AFスプレー溶液)中で局所投与したミコナゾール(MCZ)と比べた、ナノエマルジョン(NB-002)中に組み入れられたMCZに対する、局所投与(BID投与)24時間後のブタ皮膚真皮中のMCZのレベルを示す図であり、MCZがナノエマルジョン中に組み入れられた場合、MCZの真皮中への送達が有意に改善することを実証している。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明は、その必要があるヒト被験体において、ヘルペスウイルス感染を治療する、ヘルペスウイルス感染を予防する、ヘルペスウイルス感染の再発を治療する、ヘルペスウイルスの再活性化を予防する、ヘルペスウイルスの再活性化を最小化する、またはそれらの組み合わせである方法に対するものであり、ヒトまたは動物被験体にナノエマルジョンを局所的に投与するかまたは皮内投与するステップを含む。局所投与は、ヘルペス病変、ヘルペス病変の周囲の皮膚、またはそれらの組み合わせに対するものである。ナノエマルジョンは約1000nm未満の平均直径を有する液滴を含み、ナノエマルジョンは、水、少なくとも1種の油、少なくとも1種の界面活性剤、および少なくとも1種の有機溶媒を含む。ナノエマルジョンはキレート剤をさらに含むことができる。本発明の一実施形態において、ナノエマルジョンはヘルペスウイルスを殺傷する。治療すべきヘルペスウイルス感染は、潜伏性、活性、または再活性化されていてよい。
【0069】
ヘルペスウイルス感染に起因する病変を治療するのに用いられる従来の薬物の問題の1つは、局所的に投与した従来の治療には最小の有効性しかないことである。経口投与された薬物は、局所的に投与された治療法に存在するこの問題点に対処することができるが、経口投与された薬物は全身的に作用し、したがって、肝毒性および本発明の背景技術において論じた他の副作用を引き起こし得る。
【0070】
驚くべきことに、局所的に投与された本発明のナノエマルジョンは、ヘルペスウイルス感染に対して経口投与された従来の治療に比べて、ヘルペスウイルス感染に起因する病変を治療する上で、同様に効果的、またはそれより優れている。局所的投与による、ゆえに局所性である部位特異的活性は、経口投与による、ゆえに全身性の作用よりも極めて好ましいので、これは意義深い。本発明のナノエマルジョンは、経口投与された薬物、および市販の局所的に投与される抗ウイルス薬に比べて、ヘルペスウイルス感染に付随する病変を治療する上で、同等またはより優れた有効性を有する。
【0071】
本発明のナノエマルジョンの提唱されている作用機序を図1に図示する。平均直径約1000nm未満を有するナノエマルジョンの液滴は、皮膚に局所的に投与してもよく、または皮膚の層の間に(皮内)注射してもよい。ナノエマルジョンの液滴は皮膚孔/表層皮膚構造を介して遊走して、ヘルペスウイルス感染の部位に到達する。本発明者らは理論によって拘泥しようとするものではないが、ナノエマルジョンの液滴は、ウイルスエンベロープにおいて脂質と融合し、膜の破壊およびヘルペスウイルスの溶解を引き起こし、それによって接触時にウイルスを「殺傷」すると考えられている。
【0072】
ヘルペスウイルス感染に起因する病変の部分的または完全な除去は、本発明のナノエマルジョンおよび方法を用いて得ることができる。
【0073】
治癒までの時間
驚くべきことに、本発明のナノエマルジョンは、Kaplan-Meier分析を用いて測定して、対照と比べて治癒までの時間を減少させることができる。例えば、治療後、病変の治癒までの時間の平均または中央値を、対照に比べて、少なくとも12時間、少なくとも1日(24時間)、少なくとも36時間(1.5日)、少なくとも2日(48時間)、少なくとも3日、少なくとも3.5日、少なくとも4日、少なくとも4.5日、または少なくとも5日減少させることができる。実施例に示す「治癒までの時間」のデータを参照されたい。
【0074】
例えば、実施例2において提供する調査者が評価した治癒までの時間のKaplan-Mayer生存曲線は、ビヒクル群に比べて有効治療群全てにおいて治癒時間が減少する方向の傾向を実証していた。0.3%NB-001群において、ビヒクル群に比べて、治癒までの時間の中央値および平均においてそれぞれ1.0日および1.3日の統計的に有意な短縮があった。
【0075】
「治癒までの時間」の測定の仕方が、最終結果に著しく影響を及ぼすことがある。例えば、口唇ヘルペス病変のいくつかの試験では、ベースライン時に病変を有する被験体を除外している(Spruanceら、「Single-dose, patient-initiated famciclovir: A randomized, double-blind, placebo-controlled trial for episodic treatment of herpes labialis」、J. Am. Acad. Dermatol.、55巻、47〜53頁(2006年); Spruanceら、「High-dose, short-duration, Early valacyclovir therapy for episodic treatment of cold sores: results of two randomized, placebo-controlled, multicenter studies」、Antimicrob. Agents Chemother.、47巻(3)、1072〜1080頁(2003年))。しかし、コールドソア患者の多くは、前駆症状がなく、または病変の発疹の前に治療を開始することができないので、治療を必要とするときには病変を有している。これは、コールドソア患者の全人口の少なくとも半分を代表し得る。例えば、下記の実施例5に記載する、本発明によるナノエマルジョンを用いた口唇ヘルペス試験における被験体の約75%は、第1の調査者の評価時までにすでに病変があり、他のコールドソア試験から除外されている。これらの被験体の除外により、コールドソア患者の母集団におけるこれら他の製品の利点が過剰評価される。これらの被験体が含まれる場合、他の製品での治療効果は著しく減少し、または非存在である。とりわけ、Sackによって公開されているドコサノール(Abreva(登録商標))の試験は、ベースライン時に水疱のなかった被験体のみの登録を許した(Sacksら、「Clinical efficacy of topical docosanol 10% cream for herpes simplex labialis: A multicenter, randomized, placebo-controlled trial」、J. Am. Acad. Dermatol.、45巻、222〜230頁(2001年))。Sacksのドコサノールの試験において、コールドソア症状(前駆症状)の発病を証明した被験体は診療所に報告することになっており、病変の証拠を示さなかった場合は登録されるだけであった。これとは対照的に、以下の実施例5に記載した試験は、ベースライン時の状態に関係なく全ての被験体を許可するものであった。
【0076】
以下の実施例2に記載する通り、本発明によるナノエマルジョンでの治療は、再発性の口唇ヘルペスに現在最も広く用いられている治療であるドコサノール(Abrava(登録商標))で治療した被験体に対する治癒までの時間の減少が0.5日であるのに比べて、ベースライン時に病変のなかった被験体においてビヒクルを凌ぐ1.7日の改善がもたらされた。したがって、下記の実施例2に記載するデータは、病変の開始前に、すなわち、前駆段階または紅斑段階の間に治療を開始すると、本発明によるナノエマルジョンでいっそう大きな治療効果をもたらすことを示唆している。再発性の顔面病変の治癒までの時間における1日またはそれを超えた減少は、極めて望ましい性質である。
【0077】
したがって、本発明の一実施形態において、本発明によるナノエマルジョンでの治療後、病変の部分的または完全な除去が観察される。本発明のナノエマルジョンは、病変が出現または発症するのを予防することができる。本発明のナノエマルジョンは、対照に比べて、および/またはAbreva(登録商標)などの従来の非ナノエマルジョンの治療に比べて、治癒までの時間をやはり減少させることができる。例えば、本発明のナノエマルジョンは、ベースラインが前駆病変段階である場合、ベースラインが紅斑病変段階である場合、ベースラインが丘疹病変段階である場合、および/またはベースラインが小水疱病変段階である場合、治癒までの時間を減少させることができる。
【0078】
さらなる実施形態
さらに、治療後、中断病変の発生率が対照に比べて増大する場合があることも見出された。例えば以下の表3を参照されたい。
【表3】

【0079】
これは、本発明の一実施形態において、この方法が病変の予防、および病変に対する治癒までの時間の短縮を包含することを意味する。さらに、本発明によるナノエマルジョンでの治療後、被験体はウイルスを長期間排出しないことがある。ウイルスの排出はHSV-1ウイルスの伝染をもたらすので、これは意義深い。ウイルスの排出の除去またはウイルスの排出の時間の減少は、HSV-1に感染した個体への曝露に関連する他者によるHSV-1の罹患を除去または最小化する。特に、Abreva(登録商標)がウイルスの排出に効果があることを実証する公開されたデータは存在しない。
【0080】
ヘルペスウイルスは、例えば、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスリンパ球向性ウイルス、ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)、ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)、およびそれらの組み合わせであってよい。
【0081】
本発明の一実施形態において、ナノエマルジョンを、口腔顔面部、目、尿生殖部(外部もしくは内部の、皮膚もしくは粘膜)、膣粘膜、直腸粘膜、肛門粘膜、口粘膜、四肢、皮膚、咽頭口部、表面皮膚構造および付属器、唇、赤唇縁、口の全領域、頸部、会陰、大腿、手、角膜、目、尿道、またはそれらのいずれかの組み合わせに投与する。
【0082】
本発明の別の一実施形態において、本方法を用いて、アシクロビルなどのヌクレオシド類似体に対する耐性など、1種または複数の抗ウイルス薬に対する耐性を有する被験体を治療する。アシクロビルなどの伝統的な抗ウイルス薬とは対照的に、被験体は、本発明によるナノエマルジョンによる治療に対する耐性を生じない。これは、本発明によるナノエマルジョンの物理的な作用機序が、ナノエマルジョンに対する薬物耐性の出現を起こらなさそうなものとしているからである。致死量以下の濃度の本発明によるナノエマルジョン(NB-001)の存在下、in vitroで継代を繰り返しても、いかなる安定なHSV-1耐性株も生成されない。さらに、既存の抗ウイルス薬との交叉耐性は観察されていない。病原性が経時的に突然変異するとともに、抗ウイルス薬を含めた殆ど全ての抗微生物薬が薬物耐性に曝され、治療に対する感受性を失っていくので、これは意義深い。
【0083】
本発明の方法は、病変の予防にも応用することができる。このような方法において、ヘルペスウイルスは潜伏性である。ヘルペスウイルスは、三叉神経節、Bリンパ球、腰仙骨神経節、単球、ニューロン、Tリンパ球、または上皮細胞中に潜伏することがある。したがって、本発明の一実施形態において、ナノエマルジョンは、ヘルペス感染、再発感染、またはウイルスの再活性化に対して予防的である。
【0084】
本発明の方法を用いて治療することができるヘルペスウイルス感染の例には、それだけには限定されないが、口唇ヘルペス、性器ヘルペス、眼部ヘルペス、ヘルペス・ルグベイオルム(herpes rugbiorum)、剣状ヘルペス、またはヘルペス性ひょう疽が含まれる。
【0085】
本発明のナノエマルジョンは、ヘルペスウイルスに対して治療上有効であり、ヘルペスウイルスに対して殺ウイルス的であり、ヘルペスウイルスに対して静ウイルス的であり、またはそれらのいずれかの組み合わせであってよい。例えば、図10、11、および12を参照されたい。図10は、本発明によるナノエマルジョン(NB-001、製剤の詳細に関して以下表5、6、および8を参照されたい)によるHSV-1の溶解を示す。図11は、本発明によるナノエマルジョン(NB-001)によるHSV-1の阻害を示す。最後に図12は、本発明によるナノエマルジョン(NB-001)によるHSV-2の阻害を示す。
【0086】
図11および12は、NB-001がHSV-1およびHSV-2株に対して等しく殺ウイルス的であり、IC50値の範囲が0.5〜4.3μg/mLであったことをす。ヌクレオシド類似体であるアシクロビル(ACV)またはピロリン酸類似体であるホスカルネット(FOS)のいずれかに耐性を付与する変異を試験した場合、NB-001に対する交叉耐性は存在しなかった。HSV-2株は性器ヘルペスにおいて最も一般的に見出されるが、HSV-1は先進国において性器ヘルペスと新規に診断される最も一般的な原因である。HSV-2は口唇ヘルペスを引き起こすことも知られている。
【0087】
ナノエマルジョン液滴は、表皮、真皮、皮膚、皮膚孔、粘膜、角膜、易感染性皮膚、爪、頭皮、損傷皮膚、患部皮膚、側方もしくは近位のしわ、下爪皮、角膜、またはそれらのいずれかの組み合わせを介して、横切り、および/または拡散することができる。したがって、「局所」投与は、あらゆる表層の皮膚構造、目、またはそれらのいかなる組み合わせに対するものであってよい。
【0088】
ナノエマルジョンは、約1000nm未満の平均直径を有する液滴を含み、ナノエマルジョンは、水相、少なくとも1種の油、少なくとも1種の界面活性剤または洗剤、および少なくとも1種の有機溶媒を含んでいる。本発明の一実施形態において、ナノエマルジョン中に存在する界面活性剤は、カチオン性界面活性剤である。1種を超える界面活性剤または洗剤が、本発明のナノエマルジョン中に存在することができる。例えば、ナノエマルジョンは、非イオン性界面活性剤と組み合わせてカチオン性界面活性剤を含むことができる。本発明の別の一実施形態において、ナノエマルジョンはキレート剤をさらに含む。「局所」投与は、あらゆる表層の皮膚構造、毛髪、毛幹、毛嚢、目、またはそれらのいずれかの組み合わせに対するものであってよい。本発明の有機溶媒は、無リンベースの溶媒であってよい。
【0089】
本発明のさらなる一実施形態において、ナノエマルジョンは、抗ウイルス薬など、ヘルペスウイルスを治療し、治癒し、または軽減するのに有用な有効薬剤をさらに含んでいる。ヘルペス感染を治療するのに適するあらゆる抗ウイルス薬などのあらゆる適切な有効薬剤を、本発明の局所用ナノエマルジョン中に組み入れることができる。ナノエマルジョンは、それ自体抗ウイルス活性があり、治療的有効性を得るための小分子抗ウイルス薬などの別の有効薬剤と組み合わせる必要はない。しかし、別の薬剤を加えることで、ナノエマルジョンの治療的有効性を増強することがある。
【0090】
本発明の一実施形態において、ナノエマルジョンは、(a)水相、(b)約1%〜約80%の油、(c)約0.1%〜約50%の有機溶媒、(d)約0.001%〜約10%の界面活性剤もしくは洗剤、(e)約0.0005%〜約0.72%のキレート剤、または(e)それらのいずれかの組み合わせを含む。本発明の別の一実施形態において、ナノエマルジョンは、(a)約10%〜約80%の油、(b)約1%〜約50%の有機溶媒、(c)約0.1%〜約10%の量で存在する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、(d)約0.01%〜約2%の量で存在する少なくとも1種のカチオン剤、(e)約0.0005%〜約1%のキレート剤、または(f)それらのいずれかの組み合わせを含む。
【0091】
ナノエマルジョン中に存在する各成分のこれらの量は、治療用のナノエマルジョンに関し、in vitroで試験するナノエマルジョンに関するものではない。in vitroで試験するナノエマルジョンは、局所使用などの治療的使用を意図するナノエマルジョン中に存在するものよりも低濃度の油、有機溶媒、界面活性剤もしくは洗剤、および(存在するとすれば)キレート剤を一般的に有するので、これは重要である。これは、in vitroの試験ではナノエマルジョン液滴が皮膚を横切ることを必要としないからである。局所的に(または皮内の)使用するためには、成分の濃度は、治療用のナノエマルジョンをもたらすために高くなければならない。しかし、in vitroで試験したナノエマルジョン中に用いられる各成分の相対量は、治療的に用いられるナノエマルジョンに応用でき、したがってin vitroの量は治療用組成物を調製するためにスケールアップしてよく、in vitroのデータは局所投与の成功を予測するものである。
【0092】
ナノエマルジョンの好ましい濃度
図13〜15に示すように、ナノエマルジョンの濃度は変化してよい。興味深いことに、ナノエマルジョンの濃度が高くなっても、本発明のナノエマルジョンにおける有効性の増大に必ずしも対応しない。(本発明の別の一実施形態において、有効薬剤を本発明によるナノエマルジョンにさらに加えることができるが、)ナノエマルジョンは伝統的な「有効薬剤」を含まないので、界面活性剤の測定が、本発明の実施例における送達のマーカーとして用いられる。図13は、高濃度のナノエマルジョンの、ブタ皮膚中への送達に対する効果を示すものである。図14および15における結果は、約0.15%から約0.35%の濃度を利用して最適な送達が得られることを示しており、好ましい濃度は約0.2〜0.3%であり、最も好ましい濃度はナノエマルジョン約0.3%である。
【0093】
吸収を制限する方法としての結晶化
高濃度の、すなわち約0.5%を超えるナノエマルジョンでは、表面に投与したとき、特にナノエマルジョンを複数回投与した後に、ナノエマルジョンが結晶化する傾向がある。皮膚の表面上でのこの結晶化が、さらに投与されたナノエマルジョンの吸収を制限するバリアとして働く。例えば、図13〜15を参照されたい。図13は、0.1%を超え、0.4%未満の濃度を有するナノエマルジョンの単回または複数回投与が、最適の吸収を有することを示している。驚くべきことに、ナノエマルジョンの濃度を増加させても、ナノエマルジョンの皮膚中への吸収は増加しない。この効果は、ナノエマルジョンを繰り返し投与するとより顕著になる。図14および15に示すように、表皮(図14)吸収および真皮(図15)吸収の両方に対して、濃度0.3%を有するナノエマルジョンの複数(5)回投与は、濃度0.5%を有するナノエマルジョンの複数(5)回投与よりも吸収が顕著に高い。これは、上記に記載したように、ナノエマルジョンの濃度が高いと、投与時に結晶化がもたらされ、これが皮膚上にバリアを生成するからである。このバリアが、さらに投与されたナノエマルジョンの吸収を制限するように働く。このようなバリアは、ナノエマルジョンの過剰な吸収を防ぐことができるので望ましいことがある。所望の治療および吸収されるべき用量に応じて、ナノエマルジョンの濃度が高いほど望ましいことがある。
【0094】
側方拡散
下記実施例7および9に実証するように、ナノエマルジョン、およびナノエマルジョン中に組み入れられる有効薬剤は、皮膚に損傷を与えずに、感染部位へ組織平面内を側方に(translaterally)拡散する。とりわけ、以下の実施例は、本発明によるナノエマルジョンが組織平面に沿って側方拡散をして、皮膚投与部位から最高2cm離れた感染部位に到達することを記載するものである。これにより、バリア下に存在する感染の治療が可能になる。したがって、本発明によるナノエマルジョンを、感染を覆っているバリアに投与することができ、投与後、ナノエマルジョンは、次いで、バリアの下を遊走して(またはバリア下を側方拡散して)、効果的に感染に到達し、感染を根絶する。測定可能な量のナノエマルジョンが治療された被験体の血漿内に見出されないので(あらゆる界面活性剤または洗剤、例えばナノエマルジョン中に存在するカチオン性界面活性剤が血流中に吸収されるか否かを測定することによって決定して)、この結果は全身性の吸収なしに得られる。
【0095】
さらに、実施例は、本発明によるナノエマルジョン中に組み入れられる有効薬剤は、投与部位の直接下にない領域に側方拡散することを示している。適切な有効薬剤には、それだけには限定されないが、あらゆる抗ウイルス薬または緩和薬が含まれ、これらの例は以下のD.6セクションに記載する。
【0096】
さらに、実施例に示すデータは、ナノエマルジョン中に有効薬剤を組み入れることで、有効薬剤を単独で皮膚に投与するのに比べて、予想外に優れた有効薬剤の送達がもたらされることを実証するものである。したがって、本発明によるナノエマルジョン中に組み入れられる有効薬剤は相乗作用を有すると考えられ、組み合わせにより、各有効薬剤および別々に投与されたナノエマルジョンに比べて著しく優れた結果をもたらす可能性がある。しかし、ナノエマルジョンが本質的にかつ単独で抗ウイルス的であり、殺ウイルス的であり、他の有益な性質を有するので、有効薬剤をナノエマルジョン中に組み入れる必要がないことが留意される。
【0097】
A.定義
本発明を、以下に述べるように、および本出願を通して、いくつかの定義を用いて本明細書に記載する。
【0098】
本明細書で用いられる「約」は、当業者であれば理解されるものであり、それが用いられる文脈に応じてある範囲まで変化する。それが用いられる文脈を考慮して当業者には明らかではない語の使用がある場合、「約」は、特定の語のプラス10%またはマイナス10%までを意味する。
【0099】
本明細書で用いられる「ナノエマルジョン」の語は、ディスパーションまたは液滴を含み、および水不混和性の油相が水相と混合される場合に無極性の残基(すなわち長鎖炭化水素)を水から外に遠ざけ、極性の頭部基を水に向って動かす疎水性力の結果として形成することができる他の脂質構造を含む。これらの他の脂質構造には、それだけには限定されないが、単層状、少重層状、および多層状の脂質小胞、ミセルおよびラメラ相が含まれる。
【0100】
本明細書で用いられる「被験体」の語は、本発明の組成物によって治療される生物体を意味する。このような生物体には、動物(飼育動物種、野生動物)、およびヒトが含まれる。
【0101】
「界面活性剤」の語は、水による溶媒和をエネルギー的に好む極性の頭部基、および水によって良好に溶媒和されない疎水性の尾部の両方を有するあらゆる分子を意味する。「カチオン性界面活性剤」の語は、カチオン性の頭部基を有する界面活性剤を意味する。「アニオン性界面活性剤」の語は、アニオン性の頭部基を有する界面活性剤を意味する。
【0102】
「親水親油バランス指数」および「HLB指数」の語は、界面活性剤分子の化学構造を、それらの界面活性と相関させるための指数を意味する。HLB指数は、参照によって本明細書に援用されるMeyers(Meyers、「Surfactant Science and Technology」、VCH Publishers Inc.、New York、231〜245頁(1992年))によって記載される様々な実験式によって計算することができる。本明細書で用いられる、界面活性剤のHLB指数は、McCutcheon著、Emulsifiers and Detergents、北アメリカ版、第1巻、1996年(参照によって本明細書に援用される)における界面活性剤に割り当てられたHLB指数である。HLB指数は、市販の界面活性剤では、0〜約70、またはそれを超える範囲である。水における溶解性が高く、可溶性の性質を持つ親水性の界面活性剤はスケールの高値の端にあるが、油中における水の良好な可溶化剤である、水における溶解性の低い界面活性剤は、スケールの低値の端にある。
【0103】
「バッファー」または「緩衝剤」の語は、溶液に加えた場合に、溶液をpHの変化に抵抗する材料を意味する。
【0104】
「キレーター」または「キレート剤」の語は、金属イオンに対する結合に利用可能である長い1対の電子を有する原子を1つを超えて有するあらゆる物質を意味する。
【0105】
本明細書で用いられる「製薬上許容される」または「薬理学上許容される」の語は、宿主(例えば、動物もしくはヒト)に投与した場合に有害なアレルギー反応または免疫学的反応を本質的に生成しない組成物を意味する。このような製剤には、ディップ、スプレー、シードドレッシング(seed dressing)、ステムインジェクション(stem injection)、スプレー、およびミストが含まれる。本明細書で用いられる「製薬上許容される担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、等張化剤および吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、バレイショデンプン、またはデンプングリコール酸ナトリウム)などが含まれる。
【0106】
本明細書で用いられる「局所的に」の語は、本発明の組成物を皮膚の表面に、ならびに粘膜細胞に、ならびに組織に(例えば、肺、頬側、舌、舌下、咀嚼、または鼻粘膜、および他の組織、および中空器官もしくは体腔の内側を覆う細胞)に投与することを意味する。
【0107】
本明細書で用いられる「局所的に有効な薬剤」は、皮膚または粘膜表面に投与される本発明の組成物を意味する。望ましい薬理学的結果が、被験体に対する投与(接触)部位、または部位付近に意図される。
【0108】
本明細書で用いられる「全身的に有効な薬物」は、その投与が感染源付近である必要がなく、そのレベルを投与部位からかなり離れた部位で測定することができる物質または組成物を示すように広く用いられる(例えば、薬物のレベルが血流において、または組織中もしくは器官中に見出される経口の薬物投与)。
【0109】
B.本発明のナノエマルジョンの性質
本発明のナノエマルジョンは、全身的に吸収されずに、および/または上皮を刺激せずに、ヘルペスウイルス感染を効果的に治療および/または制御する。ナノエマルジョン液滴は、皮膚孔および毛嚢を横切ることができる。ナノエマルジョンは、ウイルスを殺傷し、またはウイルスの増殖を阻害することによってヘルペスウイルス感染を効果的に治療し、ヘルペスウイルスの溶解、死滅、病原性の喪失、またはそれらのいずれかの組み合わせをもたらす。
【0110】
ナノエマルジョンは、ヘルペスウイルスに対して殺ウイルス的であり、ヘルペスウイルスに対して静ウイルス的であり、またはそれらの組み合わせであってよい。本発明によるナノエマルジョンの最小殺ウイルス濃度(MVC)を決定するための方法は、E1052-96(懸濁液中のウイルスに対する抗微生物薬の効力に対する標準試験法(Standard Test Method for Efficacy of Antimicrobial Agents Against Viruses in Suspension))と呼ばれ、American Society for Testing and Materials International、100 Barr Harbor Drive、PO Box C700、West Conshohocken、PA 19428-2959、米国によって発行されている国際標準から形作ることができる。最小殺ウイルス濃度(MVC)は、室温で15分間、1ミリリットルあたり1×105から3×107のプラーク形成単位のヘルペスウイルスと混合されるナノエマルジョンの濃度の範囲を用いて決定される。MVCは、ウイルスの99.9%を殺傷するナノエマルジョンの最小濃度と定義される。ウイルス宿主細胞(Vero細胞)の細胞毒性のモニター、およびナノエマルジョンの中和に対する制御が含まれる。Vero細胞に対して細胞毒性でなく、その下でナノエマルジョンが中和される唯一の条件が妥当である。
【0111】
さらに、本発明のナノエマルジョンは、病変の出現および再発に対する可能性を制限することができる。
【0112】
C.本発明のナノエマルジョンの貯蔵に対するおよび投与後の安定性
1.貯蔵安定性
本発明のナノエマルジョンは、少なくとも約1ヵ月まで、少なくとも約3ヵ月まで、少なくとも約6ヵ月まで、少なくとも約12ヵ月まで、少なくとも約18ヵ月まで、少なくとも約2年まで、少なくとも約2.5年まで、または少なくとも約3年までの期間、約40℃および相対湿度約75%で安定であることができる。
【0113】
本発明の別の一実施形態において、本発明のナノエマルジョンは、少なくとも約1ヵ月まで、少なくとも約3ヵ月まで、少なくとも約6ヵ月まで、少なくとも約12ヵ月まで、少なくとも約18ヵ月まで、少なくとも約2年まで、少なくとも約2.5年まで、または少なくとも約3年まで、少なくとも約3.5年まで、少なくとも約4年まで、少なくとも約4.5年まで、または少なくとも約5年までの期間、約25℃および相対湿度約60%で安定であることができる。
【0114】
さらに、本発明のナノエマルジョンは、少なくとも約1ヵ月まで、少なくとも約3ヵ月まで、少なくとも約6ヵ月まで、少なくとも約12ヵ月まで、少なくとも約18ヵ月まで、少なくとも約2年まで、少なくとも約2.5年まで、少なくとも約3年まで、少なくとも約3.5年まで、少なくとも約4年まで、少なくとも約4.5年まで、少なくとも約5年まで、少なくとも約5.5年まで、少なくとも約6年まで、少なくとも約6.5年まで、または少なくとも約7年までの期間、約4℃で安定であることができる。
【0115】
2.投与時の安定性
本発明のナノエマルジョンは、驚くべきことに、ナノエマルジョンが投与時にその物理的構造を失わないので、投与時に安定である。本発明によるナノエマルジョンの投与後に皮膚表面を顕微鏡観察すると、本発明のナノエマルジョンの物理的完全性が実証される。この物理的完全性は、本発明のナノエマルジョンに観察される望ましい吸収をもたらすことがある。
【0116】
D.ナノエマルジョン
本明細書で定義される「ナノエマルジョン」の語は、ディスパーション、または液滴、またはあらゆる他の脂質構造を意味する。本発明において企図される典型的な脂質構造には、それだけには限定されないが、単層状、少重層状、および多層状の脂質小胞、ミセルおよびラメラ相が含まれる。
【0117】
本発明のナノエマルジョンは、約1000nm未満、約950nm未満、約900nm未満、約850nm未満、約800nm未満、約750nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、またはそれらのいずれかの組み合わせの平均直径サイズを有する液滴を含む。一実施形態において、液滴は約125nmを超え、約300nm以下である平均直径サイズを有する。異なる一実施形態において、液滴は約50nmを超え、または約70nmを超え、約125nm以下である平均直径サイズを有する。
【0118】
1.水相
水相は、それだけには限定されないが、水(例えば、H2O、蒸留水、水道水)、および溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液)を含むあらゆるタイプの水相を含むことができる。ある実施形態において、水相は、pH約4〜10、好ましくは約6〜8の水を含んでいる。水は脱イオン水(以降「DiH2O」)でもよい。いくつかの実施形態において、水相はリン酸緩衝食塩水(PBS)を含んでいる。水相は、さらに滅菌およびパイロジェンフリーであってよい。
【0119】
2.有機溶媒
本発明のナノエマルジョン中の有機溶媒には、それだけには限定されないが、C1〜C12アルコール、ジオール、トリオール、ジアルキルリン酸、トリアルキルリン酸、例えば、トリ-n-ブチルリン酸塩、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせが含まれる。本発明の一態様において、有機溶媒は、非極性溶媒、極性溶媒、プロトン性溶媒、または非プロトン性溶媒から選択されるアルコールである。
【0120】
ナノエマルジョンに適する有機溶媒には、それだけには限定されないが、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、グリセロール、中鎖トリグリセリド、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、n-ブタノール、ブチレングリコール、調香アルコール(perfumers alcohol)、イソプロパノール、n-プロパノール、ギ酸、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、工業用変性アルコール、トリアセチン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ギ酸、それらの半合成誘導体、およびそれらのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0121】
3.油相
本発明のナノエマルジョン中の油は、あらゆる化粧上または製薬上許容される油であってよい。油は、揮発性または不揮発性であってよく、動物油、植物油、天然油、合成油、炭化水素油、シリコーン油、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0122】
適切な油には、それだけには限定されないが、ミネラルオイル、スクアレン油、香油、シリコン(silicon)油、精油、水不溶性ビタミン、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、ベヘン酸トリデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、アントラニル酸メンチル(Menthyl anthranhilate)、オクタン酸セチル、サリチル酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ネオペンチルグリコールジカルパートセトールズ(neopentyl glycol dicarpate cetols)、Ceraphyls(登録商標)、オレイン酸デシル、アジピン酸ジイソプロピル、乳酸C12〜15アルキル、乳酸セチル、乳酸ラウリル、ネオペンタン酸イソステアリル、乳酸ミリスチル、ステアロイルステアリン酸イソセチル、ステアロイルステアリン酸オクチルドデシル、炭化水素油、イソパラフィン、液状パラフィン、イソドデカン、ワセリン、アルガン(Argan)油、アブラナ油、チリ(Chile)油、ココナツ油、コーン油、綿実油、アマニ油、グレープシード油、カラシ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ラッカセイ油、パインシード油、ポピーシード油、パンプキンシード油、米ぬか油、ベニバナ油、ティー油、トリュフ油、植物油、アプリコット(核)油、ホホバ油(シモンドシアチャイネシス(simmondsia chinensis)種子油)、グレープシード油、マカダミア油、麦芽油、アーモンド油、ナタネ油、ヒョウタン油、ダイズ油、ゴマ油、へーゼルナッツ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、大麻油、ボア(Bois)油、クキナット(Kuki nut)油、アボカド油、クルミ油、魚油、ベリー油、オールスパイス油、ジュニパー油、種子油、アーモンドシード油、アニスシード油、セロリ種子油、クミンシード油、ナツメグ種子油、リーフ油、バジルリーフ油、ベイリーフ油、シナモンリーフ油、コモンセージリーフ油、ユーカリリーフ油、レモングラスリーフ油、メラレウカリーフ油、オレガノリーフ油、パチュリリーフ油、ペパーミントリーフ油、マツ葉油、ローズマリーリーフ油、スペアミントリーフ油、ティーツリーリーフ油、タイムリーフ油、ウインターグリーンリーフ油、フラワー油、カモミール油、クラリーセージ油、チョウジ油、ゼラニウムフラワー油、ヒソップフラワー油、ジャスミンフラワー油、ラベンダーフラワー油、マヌカフラワー油、マーホラムフラワー(Marhoram flower)油、オレンジフラワー油、ローズフラワー油、イランイランフラワー油、樹皮油、桂皮油、シナモン樹皮油、サッサフラス樹皮油、木油、クスノキ油、セダーウッド油、シタン油、ビャクダン油、根茎(ショウガ)木油、樹脂油、オリバナム油、ミルラ油、果皮油、ベルガモット果皮油、グレープフルーツ果皮油、レモン果皮油、ライム果皮油、オレンジ果皮油、タンジェリン果皮油、根部油、吉草油、オレイン酸、リノール酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、それらの半合成誘導体、およびそれらのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0123】
油は、揮発性シリコーン成分などのシリコーン成分をさらに含み、これはシリコーン成分中の唯一の油であってよく、または他のシリコーンおよび非シリコーン、揮発性および非揮発性油と組み合わされてもよい。適切なシリコーン成分には、それだけには限定されないが、メチルフェニルポリシロキサン、シメチコン、ジメチコン、フェニルトリメチコン(もしくはその有機修飾されているバージョン)、高分子シリコーンのアルキル化誘導体、セチルジメチコン、ラウリルトリメチコン、高分子シリコーンのヒドロキシル化誘導体、例えば、ジメチコノール、揮発性シリコーン油、環状および直鎖状シリコーン、シクロメチコン、シクロメチコンの誘導体、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、揮発性直鎖状ジメチルポリシロキサン、イソヘキサデカン、イソエイコサン、イソテトラコサン、ポリイソブテン、イソオクタン、イソドデカン、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0124】
揮発性油は有機溶媒であってよく、または揮発性油は有機溶媒の他に存在してもよい。適切な揮発性油には、それだけには限定されないが、テルペン、モノテルペン、セスキテルペン、駆風薬、アズレン、メントール、カンファー、ツジョン、チモール、ネロール、リナロール、リモネン、ゲラニオール、ペリリルアルコール、ネロリドール、ファルネソール、イランゲン、ビサボロール、ファルネセン、アスカリドール、ケノポジ油、シトロネラール、シトラール、シトロネロール、カマズレン、セイヨウノコギリソウ、グアイアズレン、カモミール、半合成誘導体、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0125】
本発明の一態様において、シリコーン成分中の揮発性油は、油相中の油と異なる。
【0126】
4.界面活性剤/洗剤
本発明中のナノエマルジョン中の界面活性剤または洗剤は、製薬上許容されるイオン性界面活性剤、製薬上許容される非イオン性界面活性剤、製薬上許容されるカチオン性界面活性剤、製薬上許容されるアニオン性界面活性剤、または製薬上許容される両性イオン性界面活性剤であってよい。
【0127】
例示的な有用な界面活性剤は、参照によって特に援用される、「Applied Surfactants: Principles and Applications.」、Tharwat F. Tadros、著作権、8巻、2005年、WILEY-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA、Weinheim、ISBN:3-527-30629-3)に記載されている。
【0128】
さらに、界面活性剤は、製薬上許容されるイオン性高分子界面活性剤、製薬上許容される非イオン性高分子界面活性剤、製薬上許容されるカチオン性高分子界面活性剤、製薬上許容されるアニオン性高分子界面活性剤、または製薬上許容される両性イオン性高分子界面活性剤であってよい。高分子界面活性剤の例には、それだけには限定されないが、複数(少なくとも1種)のポリエチレンオキシド(PEO)側鎖を有するポリ(メチルメタクリレート)バックボーンのグラフト共重合体、ポリヒドロキシステアリン酸、アルコキシル化したアルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物、脂肪酸疎水性物質を有するポリアルキレングリコール修飾されているポリエステル、ポリエステル、それらの半合成誘導体、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0129】
界面活性性の薬剤または界面活性剤は、極性またはイオン性の親水性部分に付着している、炭素原子8〜18個を含む、通常、直鎖または分枝の炭化水素またはフッ化炭素鎖である非極性疎水性部分からなる両親媒性分子である。親水性部分は、非イオン性、イオン性、または両性イオン性であってよい。炭化水素鎖は水性の環境において水分子と弱く相互作用し、極性またはイオン性の頭部基は双極子またはイオン-双極子相互作用によって水分子と強力に相互作用する。親水性基の性質に基づいて、界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性イオン性、非イオン性、および高分子の界面活性剤に分類される。
【0130】
適切な界面活性剤には、それだけには限定されないが、エチレングリコールを9単位から10単位を含むエトキシ化ノニルフェノール、エチレングリコール8単位を含むエトキシ化ウンデカノール、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、エトキシ化水素化リシン油、ラウリル硫酸ナトリウム、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのジブロック共重合体、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロック共重合体、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとをベースにした四官能性共重合体(tetra-functional block copolymers)、グリセリルモノエステル、カプリン酸グリセリル、カプリル酸グリセリル、グリセリルコケート(Glyceryl cocate)、エルカ酸グリセリル、ヒドロキシステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、ラノリン脂肪酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、リノール酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、PABAグリセリル、パルミチン酸グリセリル、リシノール酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、グリセリルチグリコレート(Glyceryl thiglycolate)、ジラウリン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、グリセリルセスオレエート(Glyceryl sesuioleate)、ステアリン酸乳酸グリセリル、ポリオキシエチレンセチル/ステアリルエーテル、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレンラウレートもしくはジラウレート、ポリオキシエチレンステアレートもしくはジステアレート、ポリオキシエチレン脂肪エーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ステロイド、コレステロール、β-シトステロール、ビサボロール、アルコールの脂肪酸エステル、イソプロピルミリステート、アリファチイソプロピルn-ブチレート(Aliphati-isopropyl n-butyrate)、n-ヘキサン酸イソプロピル、n-デカン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル(isoproppyl)、ミリスチン酸オクチルドデシル、アルコキシル化アルコール、アルコキシル化酸、アルコキシル化アミド、アルコキシル化糖誘導体、天然油およびロウのアルコキシル化誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ノノキシノール-14、PEG-8ラウレート、PEG-6コカミド、PEG-20メチルグルコースセスキステアレート、PEG40ラノリン、PEG-40ヒマシ油、PEG-40硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪エーテル、グリセリルジエステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、およびポリオキシエチレンラウリルエーテル、ジラウリン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、それらの半合成誘導体、またはそれらの混合物が含まれる。
【0131】
さらなる適切な界面活性剤には、それだけには限定されないが、ラウリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、それらの半合成誘導体、およびそれらの混合物などの非イオン性脂質が含まれる。
【0132】
さらなる実施形態において、界面活性剤は、約2個〜約100個の基のポリオキシエチレン頭部基を有するポリオキシエチレン脂肪エーテルであり、または構造R5--(OCH2 CH2)y-OHを有するアルコキシル化アルコールであり、R5は、炭素原子約6個から約22個までを有する分枝または非分枝のアルキル基であり、yは、約4〜約100であり、好ましくは約10〜約100である。好ましくは、アルコキシル化アルコールは、R5がラウリル基であり、yが23の平均値を有する種である。
【0133】
異なる一実施形態において、界面活性剤は、ラノリンアルコールのエトキシ化誘導体であるアルコキシ化アルコールである。好ましくは、ラノリンアルコールのエトキシ化誘導体は、平均エトキシ化値が10であるラノリンアルコールのポリエチレングリコールエーテルであるラネス-10である。
【0134】
非イオン性界面活性剤には、それだけには限定されないが、エトキシ化界面活性剤、エトキシ化アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化モノアルカオールアミド(monoalkaolamide)、エトキシ化ソルビタンエステル、エトキシ化脂肪アミノ、エチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体、ビス(ポリエチレングリコールビス[イミダゾイルカルボニル])、ノノキシノール9、ビス(ポリエチレングリコールビス[イミダゾイルカルボニル])、Brij(登録商標) 35、Brij(登録商標) 56、Brij(登録商標) 72、Brij(登録商標) 76、Brij(登録商標) 92V、Brij(登録商標) 97、Brij(登録商標)、58P、Cremophor(登録商標) EL、デカエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-デカノイル-N-メチルグルカミン、n-デシルα-D-グルコピラノシド、デシルβ-D-マルトピラノシド、n-ドデカノイル-N-メチルグルカミド、n-ドデシルα-D-マルトシド、n-ドデシルβ-D-マルトシド、n-ドデシルβ-D-マルトシド、ヘプタエチレングリコールモノデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、n-ヘキサデシルβ-D-マルトシド、ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、Igepal CA-630、Igepal CA-630、メチル-6-O-(N-ヘプチルカルバモイル)-α-D-グルコピラノシド、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-N-ノナノイル-N-メチルグルカミン、オクタエチレングリコールモノデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、オクチル-β-D-グルコピラノシド、ペンタエチレングリコールモノデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノオクチルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールエーテルW-1、ポリオキシエチレン10トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン100ステアレート、ポリオキシエチレン20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン20オレイルエーテル、ポリオキシエチレン40ステアレート、ポリオキシエチレン50ステアレート、ポリオキシエチレン8ステアレート、ポリオキシエチレンビス(イミダゾリルカルボニル)、ポリオキシエチレン25プロピレングリコールステアレート、キラヤ(Quillaja)樹皮からのサポニン、Span(登録商標) 20、Span(登録商標)40、Span(登録商標)60、Span(登録商標)65、Span(登録商標)80、Span(登録商標)85、Tergitol、Tergitol Type 15-S-12、Tergitol Type 15-S-30、Tergitol Type 15-S-5、Tergitol Type 15-S-7、Tergitol Type 15-S-9、Tergitol Type NP-10、Tergitol Type NP-4、Tergitol Type NP-40、Tergitol Type NP-7、Tergitol Type NP-9、Tergitol、Tergitol Type TMN-10、Tergitol Type TMN-6、テトラデシル-β-D-マルトシド、テトラエチレングリコールモノデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、トリエチレングリコールモノデシルエーテル、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、Triton CF-21、Triton CF-32、Triton DF-12、Triton DF-16、Triton GR-5M、Triton QS-15、Triton QS-44、Triton X-100、Triton X-102、Triton X-15、Triton X-151、Triton X-200、Triton X-207、Triton(登録商標) X-114、Triton(登録商標) X-165、Triton(登録商標) X-305、Triton(登録商標) X-405、Triton(登録商標) X-45、Triton(登録商標) X-705-70、TWEEN(登録商標) 20、TWEEN(登録商標) 21、TWEEN(登録商標) 40、TWEEN(登録商標) 60、TWEEN(登録商標) 61、TWEEN(登録商標) 65、TWEEN(登録商標) 80、TWEEN(登録商標) 81、TWEEN(登録商標) 85、Tyloxapol、n-ウンデシルβ-D-グルコピラノシド、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0135】
さらに、非イオン性界面活性剤はポロキサマーであってよい。ポロキサマーは、ポリオキシエチレンのブロック、その後ポリオキシプロピレンのブロック、その後ポリオキシエチレンのブロックで作られる高分子である。ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンの単位の平均数は、高分子に関連する数字に基づいて変化する。例えば、最小の高分子であるポロキサマー101は、平均2単位のポリオキシエチレンとのブロック、平均16単位のポリオキシプロピレンとのブロック、その後平均2単位のポリオキシエチレンとのブロックからなる。ポロキサマーは、無色の液体およびペースト状から白色固体の範囲である。化粧品およびパーソナルケア製品では、ポロキサマーは、皮膚清浄剤、入浴製品、シャンプー、ヘアコンディショナー、うがい液、アイメーキャップ除去剤、ならびに他の皮膚および毛髪製品の製剤において用いられる。ポロキサマーの例には、それだけには限定されないが、ポロキサマー101、ポロキサマー105、ポロキサマー108、ポロキサマー122、ポロキサマー123、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー182、ポロキサマー183、ポロキサマー184、ポロキサマー185、ポロキサマー188、ポロキサマー212、ポロキサマー215、ポロキサマー217、ポロキサマー231、ポロキサマー234、ポロキサマー235、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー282、ポロキサマー284、ポロキサマー288、ポロキサマー331、ポロキサマー333、ポロキサマー334、ポロキサマー335、ポロキサマー338、ポロキサマー401、ポロキサマー402、ポロキサマー403、ポロキサマー407、ポロキサマー105安息香酸塩、およびポロキサマー182二安息香酸塩が含まれる。
【0136】
適切なカチオン性界面活性剤には、それだけには限定されないが、四級アンモニウム化合物、塩化アルキルトリメチルアンモニウム化合物、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム化合物、カチオン性ハロゲン含有化合物、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、臭化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムテトラクロロヨウ素酸塩、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化ドデシルエチルジメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム、グリニャード試薬T、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、N,N',N'-ポリオキシエチレン(10)-N-タロウ(tallow)-1,3-ジアミノプロパン、臭化トンゾニウム、臭化トリメチル(テトラデシル)アンモニウム、1,3,5-トリアジン-1,3,5(2H,4H,6H)-トリエタノール、1-デカナミニウム、N-デシル-N,N-ジメチル-クロリド、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化2-(2-(p-(ジイソブチル)クレゾスキシ(cresosxy))エトキシ)エチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化2-(2-(p-(ジイソブチル)フェノキシ)エトキシ)エチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキル1または3ベンジル-1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリニウム、塩化アルキルビス(2-ヒドロキシエチル)ベンジルアンモニウム、塩化アルキルデメチル(demethyl)ベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチル 3,4-ジクロロベンジルアンモニウム(100% C12)、塩化アルキルジメチル3,4-ジクロロベンジルアンモニウム(50% C14、40% C12、10% C16)、塩化アルキルジメチル 3,4-ジクロロベンジルアンモニウム(55% C14、23% C12、20% C16)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(100% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(100% C16)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(41% C14、28% C12)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(47% C12、18% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(55% C16、20% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(58% C14、28% C16)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(60% C14、25% C12)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(61% C11、23% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(61% C12、23% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(65% C12、25% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(67% C12、24% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(67% C12、25% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム90% C14、5% C12)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(93% C14、4% C12)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(95% C16、5% C18)、塩化アルキルジデシルジメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(C12〜16)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(C12〜18)、塩化ジアルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチルジメチルベンジルアンモニウム、臭化アルキルジメチルエチルアンモニウム(90% C14、5% C16、5% C12)、臭化アルキルジメチルエチルアンモニウム(ダイズ油の脂肪酸中としてのアルキル基およびアルケニル基の混合)、塩化アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウム(60% C14)、塩化アルキルジメチルイソプロピルベンジルアンモニウム(50% C12、30% C14、17% C16、3% C18)、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(58% C18、40% C16、1% C14、1% C12)、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(90% C18、10% C16)、塩化アルキルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム(C12〜18)、塩化ジ-(C8〜10)-アルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキルメチルベンジルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジイソデシルジメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルビス(2-ヒドロキシエチル)オクチル水素アンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ドデシルカルバモイルメチルジネチル(dinethyl)ベンジルアンモニウム、塩化ヘプタデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウム、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-s-トリアジン、塩化ミリスタルコニウム(および)クアット(Quat) RNIUM 14、塩化N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム重合体、塩化n-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム一水和物、塩化オクチルデシルジメチルアンモニウム、塩化オクチルドデシルジメチルアンモニウム、塩化オクチフェノキシエトキシエチル(Octyphenoxyethoxyethyl)ジメチルベンジルアンモニウム、オキシジエチレンビス(塩化アルキルジメチルアンモニウム)、塩化トリメトキシシリ(Trimethoxysily)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウム、トリメトキシシリルクアット(Trimethoxysilyl quats)、塩化トリメチルドデシルベンジルアンモニウム、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0137】
例示的なカチオン性ハロゲン含有化合物には、それだけには限定されないが、ハロゲン化セチルピリジニウム、ハロゲン化セチルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルエチルアンモニウム、ハロゲン化セチルジメチルベンジルアンモニウム、ハロゲン化セチルトリブチルホスホニウム、ハロゲン化ドデシルトリメチルアンモニウム、またはハロゲン化テトラデシルトリメチルアンモニウムが含まれる。いくつかの特定の実施形態において、適切なカチオン性ハロゲン含有化合物には、それだけには限定されないが、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルベンジルジメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム(CPB)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、臭化セチジメチル(cetyidimethyl)エチルアンモニウム、臭化セチルトリブチルホスホニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、および臭化テトラデシルトリメチルアンモニウムが含まれる。特に好ましい実施形態において、カチオン性ハロゲン含有化合物はCPCであるが、本発明の組成物は、特定のカチオン性含有化合物との製剤に限定されない。
【0138】
適切なアニオン性界面活性剤には、それだけには限定されないが、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸ナトリウム塩、コール酸、ウシまたはヒツジ胆汁、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、デオキシコール酸メチルエステル、ジギトニン、ジギトキシゲニン、N,N-ジメチルドデシルアミンN-オキシド、ドキュセートナトリウム塩、グリコケノデオキシコール酸ナトリウム塩、グリココール酸水和物、合成、グリココール酸ナトリウム塩水和物、合成、グリコデオキシコール酸一水和物、グリコデオキシコール酸ナトリウム塩、グリコリトコール酸3-サルフェート二ナトリウム塩、グリコリトコール酸エチルエステル、N-ラウロイルサルコシンナトリウム塩、N-ラウロイルサルコシン溶液、N-ラウロイルサルコシン溶液、ドデシル硫酸リチウム、ドデシル硫酸リチウム、ルゴール溶液、Niaproof 4、Type 4、1-オクタンスルホン酸ナトリウム塩、1-ブタンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム無水物、1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム無水物、1-ノナンスルホン酸ナトリウム、1-プロパンスルホン酸ナトリウム一水和物、2-ブロモエタンスルホン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム水和物、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム一水和物、ドデシル硫酸ナトリウム、ヘキサンスルホン酸ナトリウム無水物、オクチル硫酸ナトリウム、ペンタンスルホン酸ナトリウム無水物、タウロコール酸ナトリウム、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム塩、タウロデオキシコール酸ナトリウム塩一水和物、タウロヒオデオキシコール酸(Taurohyodeoxycholic acid)ナトリウム塩水和物、タウロリトコール酸3-硫酸二ナトリウム塩、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム塩、Trizma(登録商標)ドデシル硫酸、TWEEN(登録商標)80、ウルソデオキシコール酸、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0139】
適切な両性イオン性界面活性剤には、それだけには限定されないが、N-アルキルベタイン、ラウリルアミンド(amindo)プロピルジメチルベタイン、アルキルジメチルグリシネート(glycinate)、N-アルキルアミノプロピオネート、CHAPS、最小98%(TLC)、CHAPS、Sigma Ultra、最小98%(TLC)、CHAPS、電気泳動用、最小98%(TLC)、CHAPSO、最小98%、CHAPSO、Sigma Ultra、CHAPSO、電気泳動用、3-(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート分子内塩、3-ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート分子内塩、Sigma Ultra、3-(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート分子内塩、3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート、3-(N,N-ジメチルオクタデシルアンモニオ)プロパンスルホネート、3-(N,N-ジメチルオクチルアンモニオ)プロパンスルホネート分子内塩、3-(N,N-ジメチルパルミチルアンモニオ)プロパンスルホネート、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0140】
いくつかの実施形態において、ナノエマルジョンはカチオン性界面活性剤を含み、カチオン性界面活性剤は塩化セチルピリジニウムであってよい。本発明の他の実施形態において、ナノエマルジョンはカチオン性界面活性剤を含み、カチオン性界面活性剤の濃度は、約5.0%未満であり、約0.001%を超える。本発明のさらに別の一実施形態において、ナノエマルジョンはカチオン性界面活性剤を含み、カチオン性界面活性剤の濃度は、約5%未満、約4.5%未満、約4.0%未満、約3.5%未満、約3.0%未満、約2.5%未満、約2.0%未満、約1.5%未満、約1.0%未満、約0.90%未満、約0.80%未満、約0.70%未満、約0.60%未満、約0.50%未満、約0.40%未満、約0.30%未満、約0.20%未満、約0.10%未満からなる群から選択される。さらにナノエマルジョン中のカチオン性薬剤の濃度は、約0.002%を超え、約0.003%を超え、約0.004%を超え、約0.005%を超え、約0.006%を超え、約0.007%を超え、約0.008%を超え、約0.009%を超え、約0.010%を超え、または約0.001%を超える。一実施形態において、ナノエマルジョン中のカチオン性薬剤の濃度は、約5.0%未満であり、約0.001%を超える。
【0141】
本発明の別の一実施形態において、ナノエマルジョンは少なくとも1種のカチオン性界面活性剤および少なくとも1種の非カチオン性界面活性剤を含んでいる。非カチオン性界面活性剤は、ポリソルベート(Tween)、例えば、ポリソルベート80またはポリソルベート20などの非イオン性界面活性剤である。一実施形態において、非イオン性界面活性剤は約0.05%から約7%までの濃度で存在し、または非イオン性界面活性剤は約0.5%から約4%までの濃度で存在する。本発明のさらに別の一実施形態において、ナノエマルジョンは、非イオン性界面活性剤と組み合わせて約0.01%から約2%までの濃度で存在するカチオン性界面活性剤を含んでいる。
【0142】
5.さらなる成分
本発明のナノエマルジョンにおける使用に適するさらなる化合物には、それだけには限定されないが、有機リン酸ベースの溶媒、増量剤、着色剤、製薬上許容される賦形剤、保存剤、pH調整剤、バッファー、キレート剤などの1種または複数の溶媒が含まれる。さらなる化合物を、予め乳化したナノエマルジョン中に混合することができ、またはさらなる化合物を乳化すべきオリジナルの混合物に加えてもよい。ある種のこれらの実施形態において、その使用直前に、1種または複数のさらなる化合物を既存のナノエマルジョン組成物中に混合する。
【0143】
本発明のナノエマルジョン中の適切な保存剤には、それだけには限定されないが、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロルヘキシジン、イミダゾリジニル尿素、フェノール、ソルビン酸カリウム、安息香酸、ブロノポール、クロロクレゾール、パラベンエステル、フェノキシエタノール、ソルビン酸、α-トコフェルノール(tocophernol)、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、クエン酸、エデト酸、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせが含まれる。他の適切な保存剤には、それだけには限定されないが、ベンジルアルコール、クロルヘキシジン(ビス(p-クロロフェニルジグアニド)ヘキサン)、クロルフェネシン(3-(4-クロロフェノキシ)-プロパン-1,2-ジオール)、カトンCG(メチルおよびメチルクロロイソチアゾリノン)、パラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルヒドロベンゾエート)、フェノキシエタノール(2-フェノキシエタノール)、ソルビン酸(ソルビン酸カリウム、ソルビン酸)、フェノニップ(フェノキシエタノール、メチル、エチル、ブチル、プロピルパラベン)、Phenoroc(フェノキシエタノール0.73%、メチルパラベン0.2%、プロピルパラベン0.07%)、Liquipar Oil(イソプロピル、イソブチル、ブチルパラベン)、Liquipar PE(70%フェノキシエタノール、30%liquipar油)、Nipaguard MPA(ベンジルアルコール(70%)、メチルおよびプロピルパラベン)、Nipaguard MPS(プロピレングリコール、メチルおよびプロピルパラベン)、Nipasept(メチル、エチル、およびプロピルパラベン)、Nipastat(メチル、ブチル、エチル、およびプロピエル(propyel)パラベン)、Elestab388(プロピレングリコール中フェノキシエタノール、+クロルフェネシンおよびメチルパラベン)、ならびにKillitol(7.5%クロルフェネシン、および7.5%メチルパラベン)が含まれる。
【0144】
ナノエマルジョンは、少なくとも1種のpH調製剤をさらに含むことができる。本発明のナノエマルジョン中の適切なpH調整剤には、それだけには限定されないが、ジエチアノールアミン(diethyanolamine)、乳酸、モノエタノールアミン、トリエチルアノールアミン(triethylanolamine)、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0145】
さらに、ナノエマルジョンはキレート剤を含むことができる。本発明の一実施形態において、キレート剤は約0.0005%から約0.72%の量で存在する。キレート剤の例には、それだけには限定されないが、フィチン酸、ポリリン酸、クエン酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、およびジメルカプロールが含まれ、好ましいキレート剤はエチレンジアミン四酢酸である。
【0146】
ナノエマルジョンは、製薬上許容されるバッファー剤などのバッファー剤を含むことができる。バッファー剤の例には、それだけには限定されないが、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、≧99.5%(NT)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、≧99.0%(GC)、L-(+)-酒石酸、≧99.5%(T)、ACES、≧99.5%(T)、ADA、≧99.0%(T)、酢酸、≧99.5%(GC/T)、酢酸、発光用、≧99.5%(GC/T)、酢酸アンモニウム溶液、分子生物学用、H2O中約5M、酢酸アンモニウム、発光用、99.0%(T)(乾燥物質に対して計算、T)、炭酸水素アンモニウム、≧99.5%(T)、クエン酸二アンモニウム、≧99.0%(T)、ギ酸アンモニウム溶液、H2O中10M、ギ酸アンモニウム、≧99.0%(T) (乾燥物質に対して計算、NT)、シュウ酸アンモニウム一水和物、≧99.5%(RT)、リン酸二アンモニウム、H2O中2.5M、リン酸二アンモニウム、≧99.0%(T)、リン酸一アンモニウム溶液、H2O中2.5M、リン酸一アンモニウム≧99.5%(T)、リン酸水素アンモニウムナトリウム四水和物、≧99.5%(NT)、硫酸アンモニウム溶液、分子生物学用、H2O中3.2M、酒石酸二アンモニウム溶液、H2O中2M(20℃で無色の溶液)、酒石酸二アンモニウム、≧99.5%(T)、BES緩衝食塩水、分子生物学用、2×濃度、BES、≧99.5%(T)、BES、分子生物学用、≧99.5%(T)、BICINEバッファー溶液、分子生物学用、H2O中1M、BICINE≧99.5%(T)、BIS-TRIS、≧99.0%(NT)、重炭酸塩バッファー溶液、>0.1M Na2CO3、>0.2M NaHCO3、ホウ酸、≧99.5%(T)、ホウ酸、分子生物学用、≧99.5%(T)、CAPS、≧99.0%(TLC)、CHES、≧99.5%(T)、酢酸カルシウム水和物、≧99.0%(乾燥材料に対して計算、KT)、炭酸カルシウム、沈降、≧99.0%(KT)、クエン酸三カルシウム四水和物、≧98.0%(乾燥材料に対して計算、KT)、クエン酸濃縮液、分子生物学用、H2O中1M、クエン酸、無水、≧99.5%(T)、クエン酸、発光用、無水、≧99.5%(T)、ジエタノールアミン、≧99.5%(GC)、EPPS、≧99.0%(T)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物、分子生物学用、≧99.0%(T)、ギ酸溶液、H2O中1.0M、Gly-Gly-Gly、≧99.0%(NT)、Gly-Gly、≧99.5%(NT)、グリシン、≧99.0%(NT)、グリシン、発光用、≧99.0%(NT)、グリシン、分子生物学用、≧99.0%(NT)、HEPES緩衝食塩水、分子生物学用、2×濃度、HEPES、≧99.5%、HEPES、分子生物学用、≧99.5%(T)、イミダゾール緩衝溶液、H2O中1.0M、イミダゾール、≧99.5%(GC)、イミダゾール、発光用、≧99.5%(GC)、イミダゾール、分子生物学用、≧99.5%(GC)、リポタンパク質リフォールディングバッファー(Lipoprotein Refolding Buffer)、酢酸リチウム二水和物、≧99.0%(NT)、クエン酸三リチウム四水和物、≧99.5%(NT)、MES水和物、≧99.5%(T)、MES一水和物、発光用、≧99.5%(T)、MES溶液、分子生物学用、H2O中0.5M、MOPS、≧99.5%(T)、MOPS、発光用、≧99.5%(T)、MOPS、分子生物学用、≧99.5%(T)、酢酸マグネシウム溶液、分子生物学用、H2O中約1M、酢酸マグネシウム四水和物、≧99.0%(KT)、クエン酸三マグネシウム九水和物、≧98.0%(乾燥材料に対して計算、KT)、ギ酸マグネシウム溶液、H2O中0.5M、リン酸二マグネシウム三水和物、≧98.0%(KT)、in situハイブリダイゼーション用in situハイブリダイゼーション用中和溶液、分子生物学用、シュウ酸二水和物、≧99.5%(RT)、PIPES、≧99.5%(T)、PIPES、分子生物学用、≧99.5%(T)、リン酸緩衝食塩水、溶液(高圧滅菌済み)、リン酸緩衝食塩水、ウエスタンブロッティングにおけるペルオキシダーゼコンジュゲート用洗浄バッファー、10倍濃度、ピペラジン、無水、≧99.0%(T)、D-酒石酸一カリウム、≧99.0%(T)、酢酸カリウム溶液、分子生物学用、酢酸カリウム溶液、分子生物学用、H2O中5M、酢酸カリウム溶液、分子生物学用、H2O中約1M、酢酸カリウム、≧99.0%(NT)、酢酸カリウム、発光用、≧99.0%(NT)、酢酸カリウム、分子生物学用、≧99.0%(NT)、重炭酸カリウム≧99.5%(T)、炭酸カリウム、無水、≧99.0%(T)、塩化カリウム、≧99.5%(AT)、クエン酸一カリウム、≧99.0%(乾燥材料、NT)、クエン酸三カリウム溶液、H2O中1M、ギ酸カリウム溶液、H2O中14M、ギ酸カリウム、≧99.5%(NT)、シュウ酸カリウム一水和物、≧99.0%(RT)、リン酸二カリウム、無水、≧99.0%(T)、リン酸二カリウム、発光用、無水、≧99.0%(T)、リン酸二カリウム、分子生物学用、無水、≧99.0%(T)、リン酸一カリウム、無水、≧99.5%(T)、リン酸一カリウム、分子生物学用、無水、≧99.5%(T)、リン酸三カリウム一水和物、≧95%(T)、フタル酸一カリウム、≧99.5%(T)、酒石酸カリウムナトリウム溶液、H2O中1.5M、酒石酸カリウムナトリウム四水和物、≧99.5%(NT)、四ホウ酸カリウム四水和物、≧99.0%(T)、四シュウ酸カリウム二水和物、≧99.5%(RT)、プロピオン酸溶液、H2O中1.0M、STEバッファー溶液、分子生物学用、pH7.8、STETバッファー溶液、分子生物学用、pH8.0、5,5-ジエチルバルビツール酸ナトリウム、≧99.5%(NT)、酢酸ナトリウム溶液、分子生物学用、H2O中約3M、酢酸ナトリウム三水和物、≧99.5%(NT)、酢酸ナトリウム、無水、≧99.0%(NT)、酢酸ナトリウム、発光用、無水、≧99.0%(NT)、酢酸ナトリウム、分子生物学用、無水、≧99.0%(NT)、重炭酸ナトリウム、≧99.5%(T)、重酒石酸ナトリウム一水和物、≧99.0%(T)、炭酸ナトリウム十水和物、≧99.5%(T)、炭酸ナトリウム、無水、≧99.5%(乾燥物質に対して計算、T)、クエン酸一ナトリウム、無水、≧99.5%(T)、クエン酸三ナトリウム二水和物、≧99.0%(NT)、クエン酸三ナトリウム二水和物、発光用、≧99.0%(NT)、クエン酸三ナトリウム二水和物、分子生物学用、≧99.5%(NT)、ギ酸ナトリウム溶液、H2O中8M、シュウ酸ナトリウム、≧99.5%(RT)、リン酸二ナトリウム二水和物、≧99.0%(T)、リン酸二ナトリウム二水和物、発光用、≧99.0%(T)、リン酸二ナトリウム二水和物、分子生物学用、≧99.0%(T)、リン酸二ナトリウム十二水和物、≧99.0%(T)、リン酸二ナトリウム溶液、H2O中0.5M、リン酸二ナトリウム、無水、≧99.5%(T)、リン酸二ナトリウム、分子生物学用、≧99.5%(T)、リン酸一ナトリウム二水和物、≧99.0%(T)、リン酸一ナトリウム二水和物、分子生物学用、≧99.0%(T)、リン酸一ナトリウム一水和物、分子生物学用、≧99.5%(T)、リン酸一ナトリウム溶液二水和物、H2O中5M、ピロリン酸二ナトリウム、≧99.0%(T)、ピロリン酸四ナトリウム十水和物、≧99.5%(T)、酒石酸二ナトリウム、≧99.0%(NT)、酒石酸二ナトリウム溶液、H2O中1.5M(20℃で無色の溶液)、四ホウ酸ナトリウム十水和物、≧99.5%(T)、TAPS≧99.5%(T)、TES≧99.5%(乾燥物質をベースに計算、T)、TMバッファー溶液、分子生物学用、pH7.4、TNTバッファー溶液、分子生物学用、pH8.0、TRISグリシンバッファー溶液、10倍濃度、TRIS酢酸-EDTAバッファー溶液、分子生物学用、TRIS緩衝食塩水、10×濃度、TRISグリシンSDSバッファー溶液、電気泳動用、10倍濃度、TRISリン酸-EDTAバッファー溶液、分子生物学用、濃度、10倍濃度、トリシン、≧99.5%(NT)、トリエタノールアミン、≧99.5%(GC)、トリエチルアミン、≧99.5%(GC)、酢酸トリエチルアンモニウムバッファー、揮発性バッファー、H2O中約1.0M、リン酸トリエチルアンモニウム溶液、揮発性バッファー、H2O中約1.0M、酢酸トリメチルアンモニウム溶液、揮発性バッファー、H2O中約1.0M、リン酸トリメチルアンモニウム溶液、揮発性バッファー、H2O中約1.0M、Tris-EDTAバッファー溶液、分子生物学用、濃度、100×濃度、Tris-EDTAバッファー溶液、分子生物学用、pH7.4、Tris-EDTAバッファー溶液、分子生物学用、pH8.0、Trizma(登録商標)酢酸塩、≧99.0%(NT)、Trizma(登録商標)塩基、≧99.8%(T)、Trizma(登録商標)塩基、≧99.8%(T)、Trizma(登録商標)塩基、発光用、≧99.8%(T)、Trizma(登録商標)塩基、分子生物学用、≧99.8%(T)、Trizma(登録商標)炭酸塩、≧98.5%(T)、Trizma(登録商標)塩酸バッファー溶液、分子生物学用、pH7.2、Trizma(登録商標)塩酸バッファー溶液、分子生物学用、pH7.4、Trizma(登録商標)塩酸バッファー溶液、分子生物学用、pH7.6、Trizma(登録商標)塩酸バッファー溶液、分子生物学用、pH8.0、Trizma(登録商標)塩酸、≧99.0%(AT)、Trizma(登録商標)塩酸、発光用、≧99.0%(AT)、Trizma(登録商標)塩酸、分子生物学用、≧99.0%(AT)、ならびにTrizma(登録商標)マレイン酸塩、≧99.5%(NT)が含まれる。
【0147】
ナノエマルジョンは、エマルジョンの形成における補助のための乳化剤を1種または複数含むことができる。乳化剤には、油/水界面で凝集して、2つの隣接する液滴間の直接的な接触を防ぐ一種の連続膜を形成する化合物が含まれる。本発明のある実施形態は、その抗ウイルスの性質を損なわずに望ましい濃度に水で容易に希釈され得るナノエマルジョンを特徴としている。
【0148】
6.本発明のナノエマルジョン中に組み入れられる有効薬剤
本発明のさらなる一実施形態において、ナノエマルジョンは、抗ウイルス薬または緩和薬などの有効薬剤をさらに含む。別の薬剤を加えることで、ナノエマルジョンの治療有効性が増強されることがある。ナノエマルジョンは本質的にかつ単独で抗ウイルス活性があり、治療有効性を得るために別の有効薬剤と組み合わせる必要はない。ヘルペス感染を治療するのに適する抗ウイルス薬を、本発明の局所用ナノエマルジョン中に組み入れることができる。
【0149】
このような抗ウイルス薬の例には、それだけには限定されないが、ヌクレオシド類似体(例えば、アシクロビル(Zovirax(登録商標))、ファムシクロビル(Famvir(登録商標))、およびバラシクロビル(Valtrex(登録商標)))、アマンタジン(Symmetrel(登録商標))、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))、リマンチジン(Flumadine(登録商標))、およびザナミビル(Relenza(登録商標))、シドフォビル(Vistide(登録商標))、ホスカルネット(Foscavir(登録商標))、ガンシクロビル(Cytovene(登録商標))、リバビリン(Virazole(登録商標))、ペンシクロビル(Denavir(登録商標))、ブシクロビル、非環状グアノシン誘導体、(E)-5-(2-ブロモビニル)-2'-デオキシウリジン、ならびにその構造上関連のある類似体[すなわち、シトシン誘導体(E)-5-(2-ブロモビニル)-2'-デオキシシチジンおよび4'-チオ誘導体(E)-5-(2-ブロモビニル)-2'-デオキシ-4'-チオウリジン]、ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体(例えば、アバカビル(Ziagen、ABC)、ジダノシン(Videx、ddI)、エムトリシタビン(Emtriva、FTC)、ラミブジン(Epivir、3TC)、スタブジン(Zerit、d4T)、テノフォビル(Viread、TDF)、ザルシタビン(Hivid、ddC)、およびジドブジン(Retrovir、AZT、ZDV));非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター(例えば、デラビルジン(Rescriptor、DLV)、エファビレンツ(Sustiva、Stocrin、EFV)、エトラビリン(Intelence、TMC 125)、ネビラピン(Viramune、NVP));プロテアーゼインヒビター(アンプレナビル(Agenerase、APV)、アタザナビル(Reyataz、ATV)、ダルナビル(Prezista、DRV、TMC114)、ホスアンプレナビル(Lexiva、Telzir、FPV)、インジナビル(Crixivan、IDV)、ロピナビル/リトナビル(Kaletra)、ネルフィナビル(Viracept、NFV)、リトナビル(Norvir、RTV)、サキナビル(Invirase、SQV)、およびチプラナビル(Aptivus、TPV));融合インヒビター(例えば、エンフビルチド(Fuzeon、ENF、T-20));ケモカインコレセプターアンタゴニスト(Chemokine Coreceptor Antagonists)(例えば、マラビロク(Selzentry、Celsentri、MVC));ならびにインテグラーゼインヒビター(例えば、Raltegravir (Isentress、RAL))が含まれる。ナノエマルジョン中に組み入れるのが好ましい抗ウイルス薬には、それだけには限定されないが、アシクロビル(Zovirax(登録商標))、ペンシクロビル(Denavir(登録商標))ファムシクロビル(Famvir(登録商標))、およびバラシクロビル(Valtrex(登録商標))が含まれる。
【0150】
本発明のナノエマルジョン中に組み入れることができる緩和薬の例には、それだけには限定されないが、メントール、カンファー、フェノール、アラントイン、ベンゾカイン、コルチコステロイド、フェノール、酸化亜鉛、カンファー、プラモキシン、ジメチコン、メラジメート、オクチノキセート、オクチサレート、オキシベンゾン、ジクロニン、アルコール(例えば、ベンジルアルコール)、ミネラルオイル、プロピレングリコール、二酸化チタン、およびステアリン酸マグネシウムが含まれる。
【0151】
ヘルペスを治療するためのナノエマルジョン中に組み入れることができる他の例示の有効薬剤には、それだけには限定されないが、ドコサノール(Abreva(登録商標))が含まれる。
【0152】
E.医薬組成物
本発明のナノエマルジョンは、治療有効量のナノエマルジョン、およびその必要があるヒト被験体に局所投与または皮内投与するのに適する製薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物中に調合することができる。そのような賦形剤は、当技術分野ではよく知られている。
【0153】
「治療有効量」の語は、ヘルペスウイルスを殺傷し、またはヘルペスウイルスの増殖を阻害することによって、ヘルペスウイルス感染を治療し、ヘルペスウイルスに病原性の喪失をもたらし、またはそれらのいずれかの組み合わせにおいて有効であるナノエマルジョンのあらゆる量を意味する。
【0154】
局所投与または皮内投与用の剤形には、それだけには限定されないが、パッチ剤、軟膏剤、クリーム剤、乳剤、液剤、ローション剤、ゲル剤、生体接着ゲル剤、エアロゾル剤、シャンプー剤、パスタ剤、泡沫剤、サンスクリーン剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、または物品もしくは担体の形態、例えば、絆創膏、インサート、シリンジ様アプリケーター、ペッサリー、粉末、タルクもしくは他の固体、シャンプー、清浄剤(リーブオンおよびウォッシュオフ製品)、ならびに表皮、真皮、およびケラチン層内への浸透を支持する薬剤である。
【0155】
皮内投与は、本発明によるナノエマルジョンの皮膚層間の注射を意味する。
【0156】
医薬組成物は、全身性の吸収なしの、表皮または真皮中への、即効放出、持効性放出、徐放放出、遅延放出、またはそれらのいずれかの組み合わせのために調合されていてよい。いくつかの実施形態において、製剤は、ナノエマルジョンの角質層を介した表皮または真皮中への浸透を増強するための浸透増強剤を含むことができる。適切な浸透増強剤には、それだけには限定されないが、エタノールなどのアルコール、トリグリセリド、およびアロエ組成物が含まれる。浸透増強剤の量は、製剤の重量によって約0.5%から約40%までを含むことができる。
【0157】
本発明のナノエマルジョンを、電気泳動送達/電気泳動を利用して、投与および/または送達することができる。電流を加えることを含む、このような経皮的な方法は、当技術分野ではよく知られている。
【0158】
全身吸収がないということは、例えば、治療を受けているヒト被験体の血漿中の、カチオン性界面活性剤などの界面活性剤の量を測定することによってモニターされ得る。血漿中の界面活性剤の量が約10ng/ml以下であることにより、全身吸収が最小であることが確認される。本発明の別の一実施形態において、局所投与時にナノエマルジョン最小の全身吸収が起こる。このような最小の全身の曝露は、被験体の血漿中、ナノエマルジョン中に存在する1種または複数の界面活性剤の検出が10ng/mL未満、8ng/mL未満、5ng/mL未満、4ng/mL未満、3ng/mL未満、または2ng/mL未満であることによって決定され得る。
【0159】
局所投与または皮内投与のための医薬組成物を、単回投与において、または複数回投与において投与してもよい。医薬組成物は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、週1回、少なくとも週2回、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、1日に複数回、1週に複数回、2週間に1回、少なくとも1ヵ月に1回、またはそれらのいずれかの組み合わせで、局所的に、または皮内に投与される。医薬組成物は、約1ヵ月、約2ヵ月、約3ヵ月、約4ヵ月、約5ヵ月、約6ヵ月、約7ヵ月、約8ヵ月、約9ヵ月、約10ヵ月、約11ヵ月、約1年、約1.5年、約2年、約2.5年、約3年、約3.5年、約4年、約4.5年、および約5年の期間、局所的に、または皮内に投与される。
【0160】
局所投与または皮内投与後、ナノエマルジョンは、閉塞または半閉塞されてよい。閉塞または半閉塞は、局所調製物に対して絆創膏、ポリオレフィンフィルム、布の物品、不透過性のバリア、または半透過性のバリアをオーバーレイすることによって行われてよい。
【0161】
F.代表的なナノエマルジョン
いくつかの代表的なナノエマルジョンを以下に記載するが、本発明の方法はこのようなナノエマルジョンの使用に限定されない。各々の成分および量は、他のナノエマルジョンの調製において本明細書に記載する通りに変化することができる(「CPC」は、ナノエマルジョン中に存在するカチオン性界面活性剤である、塩化セチルピリジニウムを意味する)。
【表4】

【0162】
G.製造方法
本発明のナノエマルジョンは、古典的なエマルジョン形成技術を用いて形成することができる。例えば、U.S.2004/0043041を参照されたい。その全てが参照によって援用される、米国特許第6,015,832号、同第6,506,803号、同第6,559,189号、同第6,635,676号、および米国特許公開第20040043041号も参照されたい。さらに、エマルジョンを作成する方法は、米国特許第5,103,497号および同第4,895,452号(参照によって本明細書に援用される)に記載されている。例示の一方法において、比較的高いせん断力の下で(例えば、高い動水力および機械力を用いて)油を水相と混合して、約1000nm未満の平均直径を有する油滴を含むナノエマルジョンを得る。本発明のいくつかの実施形態は、エタノールなどのアルコールを含む油相を有するナノエマルジョンを使用する。油相および水相を、フレンチプレスまたは高せん断ミキサーなど、エマルジョンを形成するのに十分なせん断力を生成することができるあらゆる装置を用いてブレンドすることができる。(例えば、Admix社、Manchester、N.H.などからのFDA認可の高せん断ミキサーが利用可能である。)このようなエマルジョンを生成する方法は、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許第5,103,497号および同第4,895,452号に記載されている)。
【0163】
例示的な一実施形態において、本発明の方法において用いられるナノエマルジョンは、水などの水性の連続相中に分散されている油性の不連続相の油滴を含んでいる。本発明のナノエマルジョンは安定であり、長い貯蔵期間の後でも分解しない。本発明のある種のナノエマルジョンは非毒性であり、飲み込んだ場合、吸入した場合、または被験体の皮膚に接触した場合、安全である。
【0164】
本発明の組成物を大量に生成することができ、本発明の組成物は広範囲の温度で数ヵ月間安定である。ナノエマルジョンは、半固形のクリーム状から希薄なローション状までの範囲の質感を有してよく、手によって局所的に投与されてよく、表面上に噴霧されてよい。
【0165】
上記に記載したように、少なくとも一部分のエマルジョンは、それだけには限定されないが、単層状、多層状、および少重層状の脂質小胞、ミセルおよびラメラ相を含む脂質構造の形態であってよい。
【0166】
本発明は、記載するナノエマルジョンの多くの変形が本発明の方法において有用であることを企図するものである。候補ナノエマルジョンが本発明での使用に適するか否かを決定するために、3つの判定基準を分析する。本明細書に記載する方法および標準を用いて、候補エマルジョンが適切であるか否かを容易に試験することができる。第一に、本明細書に記載する方法を用いて望ましい成分を調製して、ナノエマルジョンが形成され得るか否かを決定する。ナノエマルジョンが形成され得なかった場合、候補は却下される。第二に、候補ナノエマルジョンは安定なエマルジョンを形成しなければならない。ナノエマルジョンが意図される使用を可能にするのに十分な期間エマルジョンの形態であり続ければ、ナノエマルジョンは安定である。例えば、貯蔵されるべき、輸送されるべきなどのナノエマルジョンでは、ナノエマルジョンが数ヵ月から数年の間、エマルジョンの形態であり続けるのが望ましいことがある。比較的不安的である典型的なナノエマルジョンは、1日以内にその形態を失う。第三に、候補ナノエマルジョンには、その意図される使用に対する有効性がなければならない。例えば、本発明のエマルジョンは、in vitroでヘルペスウイルスを殺傷または不能化しなければならない。特定の候補ナノエマルジョンの望ましいヘルペスウイルスに対する適合性を決定するために、ナノエマルジョンを好適な対照試料(例えば、水などの陰性対照)との並列実験において1つまたは複数の期間ヘルペスウイルスに曝露し、ナノエマルジョンがヘルペスウイルスを殺傷または不能化するか否か、およびどの程度殺傷および不能化するかを決定する。
【0167】
本発明のナノエマルジョンは、多くの異なるタイプの容器および送達システムにおいて提供することができる。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、ナノエマルジョンは、クリーム剤または他の固体もしくは半固形の形態において提供される。本発明のナノエマルジョンを、ヒドロゲル製剤中に組み入れてもよい。
【0168】
ナノエマルジョンを、あらゆる適切な容器において送達(例えば、被験体に、または顧客に)することができる。1種または複数の単回使用または複数回使用の用量のナノエマルジョンを望ましい投与に提供する適切な容器を用いることができる。本発明のいくつかの実施形態において、ナノエマルジョンを懸濁液または液体の形態において提供する。このようなナノエマルジョンは、スプレーボトル(例えば、加圧スプレーボトル)を含めたあらゆる適切な容器において送達されてよい。
【0169】
H.実施例
本発明を、以下の実施例を参照することによってさらに記載するが、以下の実施例は説明のみのために提供するものである。本発明は実施例に限定されるものではなく、むしろ本明細書に提供される教示から明らかである変形を全て含むものである。それだけには限定されないが米国特許を含めた、本明細書に参照される公的に入手可能な文書は全て、参照によって特に援用される。
【実施例】
【0170】
(実施例1)口唇ヘルペスを治療するためのナノエマルジョンの使用に関する第2A相試験
全てがダイズ油、Tween20、エタノール、CPC、EDTA、および水を含んでいる3種の異なるナノエマルジョンを調製した。製剤を以下の表5および表6に概要する。
【表5】

【表6】

【0171】
試験デザインは、再発性の口唇ヘルペスを有するヒト被験体における、対照(ビヒクル)と比較した3種の異なるナノエマルジョンの無作為化対照試験であった。予め無作為化したバイアルを含む施錠されたキットを被験体540名に与えた。被験体332名が治療を完了した。試験の結果を図3に示す。具体的には、薬物動態学的試験において無視できる血液吸収が検出され、皮膚の刺激または薬物関連の有害事象は報告されなかった。さらに、ビヒクル単独に比べて、治癒までの平均時間に0.7日の改善が観察された。
【0172】
ウイルススワブデータ
現場担当者は、関連する各来院時に存在するいずれかの病変の体液のスワブを入手した。日数によるウイルスのスワブの概要を、以下の表に示す。検体の回収に伴う困難さ、輸送後の検体の適切さ、および/またはPCRアッセイの感度により、試験における被験体のおよそ半数が、この分析において評価され得るデータを有していた。ウイルスのスワブが陽性であった平均の日数は、NB-001 0.1%試験群では0.5日、処置なしの群では0.8日、NB-001 0.025%および0.05%試験群では0.8日、およびビヒクル試験群では1.0日であった。さらに、ウイルスを有した最大日数は、6日から4日に短縮された。記述的には、最高用量の治療アームにおける被験体は、ビヒクル対照アームにおける被験体よりもおよそ1日半早くウイルス陰性となった。
【表7】

【0173】
(実施例2)ヒトにおける有効性
本実施例の目的は、ヒトにおける口唇ヘルペスの治療における本発明によるナノエマルジョンの有効性を決定することであった。図4〜8に示す結果は、ナノエマルジョンを用いた再発性の口唇ヘルペスの局所的治療に対する有効性および安全性を実証するものである。さらに、この結果は、有効性が経口用の抗ウイルス製品の有効性に等しいことも実証した。図9を参照されたい。最も驚くべきことに、0.3%ナノエマルジョンは、治癒までの時間を1.3日改善したことが見出された。著しい皮膚の刺激、全身性の吸収、または薬物関連の有害事象は記録されなかった。
【0174】
全てがダイズ油、Tween20、エタノール、CPC、EDTA、および水を含む、3種の異なるナノエマルジョンを調製した。製剤を以下の表8に概要する。表5および表6も参照されたい。
【表8】

【0175】
対照(ビヒクル)と比較した、ナノエマルジョン3用量の用量範囲探索二重盲検無作為化プラセボ対照試験においてナノエマルジョンを利用した。予め無作為化したキットを、全て再発性の口唇ヘルペスを有する年齢18歳から80歳のヒト被験体919名に米国28箇所から配布した(図4)。各試験参加者には、1年あたり少なくとも3回のコールドソア発症の病歴があった。被験体482名はコールドソアの発作を有しており、キットをあけ、治療を開始した。ナノエマルジョンを、4日間1日5回投与したが、これは20用量に等しい。被験体を、試験調査者が1日2回評価した。一次有効性パラメータは、Kaplan-Meier分析(ITT)を用いた治癒までの時間であった。被験体の評価および調査者の評価の両方を記録した。
【0176】
序文
再発性の口唇ヘルペス(コールドソア)を有する被験体482名において、用量範囲探索二重盲検ビヒクル対照第2B相試験を行った。前年に少なくとも3回のコールドソア出現の病歴のある被験体に、ビヒクルまたはNB-001(0.1%、0.3%、または0.5%、CPC 0.1%、0.3%、および0.5%に相当する)のいずれかを含む無作為に割り当てた治療キットを与えた。ナノエマルジョンは、界面活性剤としてTween20、有機溶媒としてエタノール、カチオン性界面活性剤としてCPC、ダイズ油、DiH2O、およびEDTAを含んでいる。各成分の正確な量を、上記表8に示す。
【0177】
コールドソア症状の最初の発生時に、被験体は音声自動応答装置(IVRS)に電話をかけて、キットを開錠するためのコードを入手し、4日間または病変が治癒するまで、1日5回の治療を開始した。被験体は、病変を段階付けるために1日2回IVRSに電話をかけた。被験体は、治療を開始して12時間以内、およびその後毎日、病変を段階付けるために診療所を訪れた(調査者の評価)。病変の段階は、0(前駆症状)、1(紅斑)、水疱(2)、潰瘍(3)、瘡蓋(4)、治癒(5)、または中断(6)として記録された。被験体は、ベースライン段階でも試験への登録を許可された。治癒は、瘡蓋または痂皮のない正常な皮膚と定義され、中断は病変の発症のない前駆症状または紅斑と定義された。被験体はIVRSに電話をかけて、治癒または中断病変の日付/時間を記録し、治癒または中断病変を確認するために診療所を訪れた。
【0178】
治癒までの時間を、治療開始の日付/時間から病変の治癒の日付/時間までに決定した。コールドソアの試験に登録した集団は、治癒までのエンドタイムに著しい影響を及ぼす可能性がある。
【0179】
結果
この被験体482名における、用量反応のビヒクル対照無作為化第2相二重盲検試験の結果は、0.3% NB-001を0.2mL、1日5回最高4日間投与すると、再発性の口唇ヘルペスを有する被験体における病変治癒までの時間を短縮するのに効果的であることを実証している。生命表の方法を用いると、0.3% NB-001対ビヒクルに対する治癒までの時間において被験体(p=0.012)および調査者(p=0.006)の評価に基づいてそれぞれ1.2日および1.3日の、統計上有意な短縮があった(図6〜8)。結果は全て統計的に有意であり、p値は0.0012〜0.0486の範囲であった。
【0180】
0.3% NB-001の治療効果のサイズは、0.1% NB-001で見られた効果のサイズよりも数値的に大きく、用量反応の証拠を提供するものであった。この試験において0.1% NB-001で見られた治療効果のサイズ(治癒までの時間の0.5日の短縮)は、以前の第2相の試験に見られたものと同様であったが、この標本数では統計的有意性を達成するには十分ではなかった。とりわけ、0.5% NB-001には治療効果がなかった。
【0181】
コールドソアの治癒に対する以前に報告された試験は、治癒までの時間に劇的に影響を及ぼし得る異なった参加基準を用いていた。とりわけ興味深かったのは、ベースライン時に水疱のなかった被験体のみの登録を許した、Sacksが公開したドコサノール(Abreva(登録商標))の試験であった。Sacksら、「Clinical efficacy of topical docosanol 10% cream for herpes simplex labialis: A multicenter, randomized, placebo-controlled trial」、J. Am. Acad. Dermatol.、45巻、222〜230頁(2001年)。ドコサノールの試験において、コールドソア症状(前駆症状)の発症のあった被験体は診療所に報告することになっており、ベースライン時に病変の証拠を示さなかった場合のみ登録された。ベースライン時に病変のない被験体は、病変の治癒が速い可能性が大きいと考えられる。したがって、ベースライン時に病変のない被験体のみを登録する試験は、治療効果を過剰評価する傾向がある。これとは対照的に、NB-001〜003の試験は、治療を開始するベースラインの段階に関係なく、全ての被験体を受け入れた。ドコサノールの試験における集団に類似していたNB-001〜003試験からの集団を見るために、本発明者らは、ベースライン時に前駆段階または紅斑段階であったと調査者に評価されたサブセットのNB-001〜003の被験体だけを分析した。
【0182】
治癒または中断病変の日付/時間から治療開始の日付/時間を差し引いて、治癒までの時間を決定した。各4つの治療群(ビヒクル、0.1%、0.3%、0.5%)において、Kaplan-Meier法を用いて治癒までの時間の分布をまとめた。ベースライン時に調査者の評価のなかった被験体は含まれなかった。治癒の日付があるが時間が記録されていない被験体は、その日付の23時間59分に治癒したものと仮定した。治癒の日付/時間のなかった被験体は、試験において最後に記録された日付および時間に治癒しなかったものとみなされた。
【0183】
次いで、治癒までの時間を従属変数とし、治療群をファクターとしたCox比例ハザード回帰モデルをフィッティングさせた。次いで、ビヒクル群と3つの各有効群間の対比較を試験した。各治療群における中断病変を有する被験体の割合を計算し、結果を記述的に比較した。中断病変は、調査者によって、前駆段階または紅斑段階を超えて進行しなかった病変と定義された。
【0184】
全集団の24.8%を表す被験体120名からなる、前駆症状および紅斑のサブグループが試験に登録された。ビヒクル、0.1%、0.3%、および0.5%群における標本数は、それぞれ21人、31人、34人、および28人であった。表9は、4つの各治療群における治癒までの時間の分布をまとめたものである。
【表9】

【0185】
4つの各治療群における標本数は小さかったが、治癒までの時間の中央値は、0.3% NB-001群においてビヒクルに比べて治癒が速かった(3.6日対5.3日)傾向を実証している。Cox比例ハザード回帰モデルに基づくと、ビヒクル群と各有効群間の対比較に対する両側性のp値は、標本数が小さくても、0.3%群とビヒクル群との間の差はほとんど統計上有意であることを示している。
【0186】
各治療群において中断病変を有する被験体の割合を表10に示す。統計的な比較は行わなかったが、中断病変を有する被験体の割合は、0.3%NB-3治療アームにおいて数値的に高い。
【表10】

【0187】
公開されているドコサノールの試験(Sacksら)において含まれていた被験体、すなわちベースライン時に病変のなかった被験体に類似する試験からの亜集団の分析は、治癒までの時間の中央値は、0.3% NB-001処置群における被験体では3.6日であり、これに対しドコサノール試験において報告されたのは4.1日であったことを示していた(表11)。
【表11】

【0188】
最後に、表12は四分位値に関して分析した第2b相の結果を示す。
【表12】

【0189】
結果は、ドコサノールで治療した被験体では1日未満の改善であったのに比べて、NB-001で治療した被験体ではビヒクルと比較して1.7日の改善を表している。これは、病変の発症前に、すなわち前駆段階または紅斑段階の間に治療を開始すると、本発明によるナノエマルジョンではよりすぐれた治療効果がもたらされ得ることを示唆している。
【0190】
(実施例2)ナノエマルジョンは動物およびヒトにおける局所投与に安全である
in vivoの安全性試験を行って、ヒトに使用するためのナノエマルジョンの安全性を確認した。試験したナノエマルジョンの組成を表13に示す。
【表13】

【0191】
モルモットのメス10匹およびオス10匹を治療して、連続3週間、週3回ナノエマルジョン10mg/mlを投与し、次いで1週間後に6時間誘発することによって、ナノエマルジョンが皮膚感作をもたらすか否かを決定した。9ヵ月間毎日ナノエマルジョン0.1〜1mg/cm2投与に曝したミニブタメス4匹およびオス4匹の群においても、皮膚の毒性試験を行った。表14は試験の結果をまとめるものである。
【表14】

【0192】
局所投与は、モルモットにおいて皮膚感作を引き起こさず、ミニブタにおける9ヵ月繰返し投与皮膚試験において毒性を示さなかった。これらの結果は、本発明のナノエマルジョンは局所投与に対して安全であることを明らかに実証するものである。
【0193】
ヒト安全性
再発性の口唇ヘルペス(コールドソア)を有する被験体482名において、用量範囲探索ビヒクル対照二重盲検第2B相試験を行った。前年に少なくとも3回のコールドソアの発症の病歴のある被験体に、ビヒクルまたはNB-001(0.1%、0.3%、または0.5%、CPC 0.1%、0.3%、および0.5%に相当する)のいずれかを含む無作為に割り当てた治療キットを与えた。この試験において安全性も評価した。試験を通して、投与部位の病変の周囲の皮膚(すなわち、病変を伴わない皮膚)を調査者(または、訓練を受けた試験担当者)が評価して、試験薬物に対する組織の認容性を決定した。
【0194】
ナノエマルジョンは、界面活性剤としてTween20、有機溶媒としてエタノール、カチオン性界面活性剤としてCPC、ダイズ油、DiH2O、およびEDTAを含んでいる。各成分の正確な量を、表8に示す。
【0195】
図5は、試験において報告された有害事象のまとめを示す。表15は、試験に対して報告された皮膚の有害事象を示す。全体に、報告された有害事象は比較的少なく、これらの事象は重症度において軽度から中程度であり試験集団に対して予想した通りであった。投与部位の有害事象の全体の発生率は低く、用量反応の証拠はなかった。他の有害事象は全て、被験体の2%未満に生じた。治療後、血液学、血清化学、または尿検査のパラメータにおいて著しい変化はなかった。検出限界をわずかに超える、無視できるレベルのCPC(1.03〜2.18ng/mL)が、被験体4名(ビヒクルアームにおける2名、0.1% NB-001アームにおける1名、および0.3%NB-001アームにおける1名)からの単離された血漿試料中に見出され、著しい全身性の吸収がなかったことを示していた。
【表15】

【0196】
これらの結果は、本発明のナノエマルジョンは局所投与に対して安全であることを明らかに実証するものである。
【0197】
(実施例3)ナノエマルジョンは安定である
本実施例の目的は、本発明によるナノエマルジョンの長期の生理化学的安定性を調査することであった。
【0198】
確証済みの分析方法を用いて、最高36ヵ月の期間にわたって、適切なハーモナイゼーション国際会議(ICH)貯蔵条件で3強度(0.1%w/v、0.25%w/v、および0.5%w/v)のナノエマルジョン製剤(NB-001)を試験して、効力、物理的外見、粒子サイズ分布、およびpHにおける変化を測定した。エマルジョンの物理的安定性を、物理的外見(すなわち、沈降、クリーム分離、変色、および相分離)における変化をモニターすることによって評価した。ナノエマルジョンを、全体的外見(分離の徴候のない均一な白色液体)、pHメーターによるpH(4〜6)、Beckman Coulter N4 Particle Size Analyzerを用いたレーザー光回折光散乱による液滴サイズ(<400nm)、および効力によって評価した。ナノエマルジョン中に存在するカチオン性界面活性剤である塩化セチルピリジニウムを、ナノエマルジョンの液滴の効力のリポーターとして用い、HPLCによって定量した。
【0199】
長期安定性を評価するために、各強度を、最高36ヵ月、25℃/60%RHおよび5℃で、ガラスバイアル中に貯蔵した。試料を、0、1、3、6、9、12、18、24、および36ヵ月間隔で分析した。各強度を、6ヵ月間ストレス条件下(40℃/75%RH)に配置し、1、3、および6ヵ月の時間点に分析した。試料が40℃/75%RHで安定であれば、30℃/65%RHの加速条件で貯蔵した試料を試験する必要はなかった。
【0200】
結果
3種の異なる強度のナノエマルジョンに対して、物理的および化学的安定性が実証された。目視検査によって、ナノエマルジョンの外観における変化は認められなかった。さらに、平均粒子サイズ分布または粒子サイズにおける変化はなかった。粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、予め設定された安定性の規格を満たし、平均粒子サイズはおよそ180nmであった。ストレス条件下を含めて、あらゆる時間点で観察されたエマルジョンの不安定性の証拠はなかった。効力の測定値またはpHにおける変化はなかった。効力の値は、ナノエマルジョンに対する0.1%w/vおよび0.5%w/vの目標初期値から殆ど変化を示さなかった。
【0201】
結論
安定性データは、本発明によるナノエマルジョンに対する最高3年の有効期間を支持するものである。
【0202】
(実施例4)ナノエマルジョンは感染部位に側方拡散する
本実施例の目的は、ナノエマルジョン液滴が、投与部位の直接下にない皮膚における領域に側方拡散することができるか否かを試験することであった。
【0203】
ヒト屍体皮膚を切断したものを用いて、改変フランツ拡散装置においてin vitroの試験を行った。この試験で用いたナノエマルジョンは水中油型(o/w)エマルジョンであり、平均液滴直径は約200nmであった。送達用のマーカーとして用いる塩化セチルピリジニウム(CPC)は、油相と水相の間の界面に存在する。界面活性剤の一部分は油コア中に分配され、一部分は水相に存在する。
【0204】
ナノエマルジョン試験製剤は、0.25% NB-002または0.5% NB-002(「NB-002」は水性媒体中に、ダイズ油、非イオン性界面活性剤としてTween20(登録商標)、エタノール、カチオン性界面活性剤として塩化セチルピリジニウム(CPC)、EDTA、および水を含んでいる)のいずれかを含んでいた。エマルジョンは、水不混和性の油相を水相と混合し、その後高エネルギーで乳化して約200nmの望ましい粒子サイズを得ることによって生成される。CPCを単純に秤量し、CPCが水相中に溶解するまで水を加えることによって、CPC水溶液を調製した。本試験に用いられたナノエマルジョンの組成を、別段の記載がなければw/w%として表して、以下の表16に記載する。
【表16】

【0205】
以下により詳しく記載する通り、100μl/cm2のNB-002ナノエマルジョンを、皮膚の5.27cm2の同心性の表面積に投与し、2個の同心性のガラス製シリンダーによって封入した。図16および17を参照されたい。投与24時間後、投与領域をスワブで掻き取ることによって残余のナノエマルジョンを除去した。投与領域の表皮および真皮を分離し、秤量し、CPCに対してアッセイした。内側の非投与領域(内側領域)および中間部の非投与領域(中間領域)の8mm(表面積0.5cm2)のパンチ生検を同様のやり方で加工した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってCPCの定量を行った。装置のデザインにより、中間または内側の組織においてCPCを検出することができる唯一の方法は、投与領域の下にある皮膚中に浸透したナノエマルジョンが、非投与領域中に側方に移動することによるものである。
【0206】
非投与領域における表皮および真皮のCPC濃度は、中間領域においてそれぞれ700μg/グラムおよび150μg/グラムであり、内側領域においてそれぞれ200μg/グラム組織および100μg/グラム組織であった。図18〜24を参照されたい。これらのデータは、ナノエマルジョンが投与領域から外側に最高11mm横切って移動したことを示している。中間および内側領域の組織におけるナノエマルジョンのレベルは、in vitroで真菌を殺傷するナノエマルジョンの以前に決定した濃度よりもかなり高かった(4μg/グラム)。
【0207】
実験
改変拡散セル法
in vitroの屍体皮膚有限用量法を用いて、経皮的な吸収を測定した。凍結保存した、デルマトーム採取した(約700μm)ヒト屍体腹部皮膚を用い、使用時まで-70℃のアルミホイルパウチ中に貯蔵した。使用時、密封したパウチをおよそ5分間、37℃の湯中に配置することによって皮膚を解凍した。皮膚をパウチから取り出し、次いで切片に切断して38mm浸透ウェルのセル上に合わせた。レセプターコンパートメントを蒸留水、pH7で満たし、ドナーコンパートメントは開放したままにして周囲の実験室条件にした。細胞全てを、ウェルの外側上が循環水浴によってレセプター溶液が37℃に維持されている拡散装置に搭載した。拡散試験に対するパラメータを表17に列挙する。
【表17】

【0208】
2個の円形ガラスチャンバーをシアノアクリレート接着剤(例えば、スーパーグルー)を用いて糊付けして、図17に示すように皮膚表面上のチャンバーに接着させた。図16は、試験に関与した表面積の寸法を図示するものである。試験製剤を外側投与領域に投与した。中間領域および内側領域には、試験製剤の局所投与を行わなかった。
【0209】
試験製剤を、ポジティブディスプレイスメントピペット(μL)を用いて拡散セルのドナーチャンバーの表皮表面に投与した。単回投与には527μlを投与した(例えば、QD)。複数回投与には(例えば、BID)、最初の投与の8時間後に527μlを投与した。曝露されている投与表皮表面積は5.27cm2であった。
【0210】
最初の投与の24時間後に、外側投与領域を70%エタノール溶液で数回スワブでこすって、皮膚表面から残余の製剤を全て除去した。中間領域および内側領域の表面領域もスワブでこすった。表面のスワブを全てCPC含量についてアッセイした。次いでチャンバーを取り除き、外側投与領域を処理した。簡潔に述べると、表皮を、外側投与領域における真皮から掻爬法によって取り除き、風袋重量を差し引いたバイアル中に配置し、秤量した。次いで、メスを用いて真皮を投与領域から取り除き、風袋重量を差し引いたバイアル中に配置し、秤量した。組織の重量を全て記録し、計算において用いた。中間領域および内側領域を同じやり方で処理した。外側、中間、および内側領域からの表皮および真皮組織を70%エタノール溶液で抽出し、30分間超音波処理し、25mm、0.45μm PTFEメンブランシリンジフィルターを通してHPLCバイアル中にろ過し、HPLCを用いてアッセイした。
【0211】
レセプター媒体
各セルのレセプター容積は、装置1個あたり50mlであった。蒸留水、pH7.0を、in vitroの浸透試験においてレセプター溶液として用いた。レセプターコンパートメントの口をパラフィルムで覆って、レセプター溶液の蒸発を最小にした。
【0212】
結果および結論
NB-002に対する浸透試験の結果を表18および19に示す。様々なコンパートメント(表皮、真皮、およびレセプター)に見出されたCPCのレベルは、CPC水溶液およびNB-002製剤に対して有意に差があった。24時間の持続時間後、表皮および真皮中に見出されたCPCのレベルは、0.5%w/v CPC水溶液では、0.25%および0.5% NB-002に比べて低かった。24時間にレセプターコンパートメント中に見出されたCPCの量は、全ての製剤に対して検出レベル(5ng/ml)未満であった。0.5% NB-002を1回投与したものに比べて、1日2回投与した0.25% NB-002製剤(t=0および8時間後に投与)からの表皮中および真皮中に、より多くのCPCが見出された。
【表18】

【表19】

【0213】
これらの結果より、ナノエマルジョンは、投与部位から1センチメートル外側にわたって角質層下から組織まで側方拡散することが確認された。
【0214】
(実施例5)
本実施例の目的は、Lamisil(登録商標)クリームによって代表される従来のTB製剤と比べた、有効薬剤テルビナフィン塩酸塩(TB)をさらに含む本発明によるナノエマルジョンの表皮中および真皮中へのin vitroの吸収を評価することであった。動物モデルとしてブタの皮を用いた。
【0215】
5.1 in vitro皮膚モデル
in vitro皮膚モデルは、局所的に投与した化合物の経皮吸収を試験するための価値あるツールであることが証明されている。このモデルは、典型的なin vivoの条件に適合する温度および湿度に皮膚を維持するのを可能にする、特別にデザインされている拡散チャンバーに搭載された、切除された皮膚を用いる。Franz, TJ、「Percutaneous absorption: on the relevance of in vitro data.」、J Invest Dermatol、1975年、64巻、190〜195頁。有限の用量の製剤を、皮膚の外側表面である表皮に投与し、皮膚の真皮表面を浸すレセプター溶液中に出現する割合をモニターすることによって、化合物の吸収を測定する。全体の吸収、吸収割合、および皮膚接触を規定するデータをこのモデルにおいて正確に測定することができる。このモデルは、in vivoの経皮吸収の動態学を正確に予測するための歴史的前例がある。「Skin: Drug Application and Evaluation of Environmental Hazards, Current Problems in Dermatology、第7巻」における「Franz TJ: The finite dose technique as a valid in vitro model for the study of percutaneous absorption in man.」、G. Simon、Z.Paster、M Klingberg、M. Kaye (編集)、Basel、Switzerland, S.、Karger、1978年、58〜68頁。
【0216】
5.2.テルビナフィン塩酸塩
テルビナフィン塩酸塩は白色の微結晶の粉末であり、メタノールおよびジクロロメタンに溶けやすく、エタノールに溶け、水に溶けにくい。テルビナフィンは、真菌の皮膚糸状菌に主に有効である。TBHC250mgを含む経口用錠剤は、皮膚糸状菌である爪白癬(Tinea unguium)による足指爪または指の爪の爪真菌症の治療にしばしば処方される。1%クリーム剤または散剤として、テルビナフィンは、いんきんたむし(股部白癬(Tinea cruris))、乾疱状白癬(足白癬(Tinea pedis))、および他のタイプの白癬(Tinea coporis)などの表層皮膚感染に用いられる。化学構造および物理化学的性質を以下に示す。
【化2】

【0217】
5.3 試験において用いられるナノエマルジョン
2種の異なるナノエマルジョンを調製した。ナノエマルジョン製剤#1は、1%TB、0.3%塩酸セチルピリジニウム(CPC)、および10%エタノールを含んでいた。ナノエマルジョン製剤#2は、1%TB、0.3%塩酸セチルピリジニウム(CPC)、および20%エタノールを含んでいた。Lamisil(登録商標)クリームは1%TBを含んでいた。この試験において用いたナノエマルジョンは、水中油型(o/w)エマルジョンであり、平均液滴直径は約180nmであった。さらなる送達のマーカー剤として、ナノエマルジョン中のカチオン性界面活性剤である塩酸セチルピリジニウム(CPC)を用いた。CPCは油相と水相との間の界面に存在する。界面活性剤の疎水性の尾部は油のコア中に分布し、極性の頭部基は水相中に存在する。
【表20】

【0218】
5.4 ブタ皮膚
月齢2ヵ月のオスブタからの背側皮膚(厚さ約1000μm)全層を浸透試験において用い、これはSinclair Research Center社、Auxvasse、MOから入手した。メスを用いて皮下脂肪を除去し、使用するまで-70℃のアルミホイルパウチ中に皮膚を貯蔵した。使用時、およそ5分間、密封パウチを30℃の湯中に配置することによって皮膚を解凍した。解凍した皮膚をパウチから取り出し、円盤(直径30mm)に切断して、浸透チャンバーのドナー側とレシーバー側との間に合わせた。
【0219】
5.5 フランツ拡散セル法:条件、パラメータ、手順
in vitroの屍体皮膚有限用量法2を用いて、経皮吸収を測定した。レセプターコンパートメントを蒸留水、pH7で満たし、ドナーコンパートメントを解放したままにして周囲の実験室条件にした。各セルのレセプター容積はマグネチックスターラーのバーを含む装置1つあたり7.7mlであった。レセプターコンパートメントの口をテフロン製スクリューキャップで覆って、レセプター溶液の蒸発を最小にした。正確なサイズにしたブタ皮膚を浸透セル上の開口部上に配置した。セルを全てクランプサポートで個々に固定し、セルの外側が循環水浴によって37℃に維持されている加熱水浴中に配置した。レセプターコンパートメントを水浴およびマグネチックスターラーによる撹拌で37℃に維持した。皮膚の表面温度は、IR表面温度プローブによって測定しておよそ32℃であった。
【0220】
皮膚を30分間平衡化した後、用量113μLを投与した。ナノエマルジョン製剤を、ポジティブディスプレイスメントピペットを用いて拡散セルのドナーチャンバーの表皮表面上に投与した。曝露されている投与表皮表面積は1.13cm2であった。第2用量の113μLを8時間後に投与した。LamisilATクリームを、また、ポジティブディスプレイスメントピペットを用いて投与し、次いで10秒間皮膚中にすり込んだ。クリームを8時間後にも投与した。第1の用量を投与して24時間後、皮膚表面を70%エタノール/水溶液1mlですすぎ、次いで、70%エタノールを浸したコットンスワブで4回清浄化した。アルコールスワブの後、ドナーのキャップを取り除き、装置から皮膚を取り除いた。表皮を掻爬法によって真皮から除去し、タールを塗ったシンチレーションバイアル中に配置した。真皮を通してパンチ生検を得、タールを塗ったシンチレーションバイアル中に配置した。真皮および表皮の重量を記録した。過剰の皮膚部分を、表面スワブと一緒にシンチレーションバイアル中に配置した。
【0221】
5.6 試料採取(レセプター試料採取、表皮、真皮、スワブ表面/余分の皮膚)
第1用量を投与して24時間後、投与領域の表面を70%エタノール/水溶液1mLですすぎ、70%エタノール/水溶液を浸したコットンスワブで数回個々に掻き取って皮膚表面から残余の製剤を全て除去した。表面スワブを全てCPC含量についてアッセイした。24時間後に各セルのレセプターからレセプター溶液2mLをやはり試料採取し、0.45μm PTFE(25mm)メンブレンシリンジフィルターを通して2本のHPLCスナップキャップ中にろ過し、TBHCおよびCPCについて個々にアッセイした。
【0222】
皮膚試料を上記に記載した通りに採取し、表皮および真皮組織の重量を記録した。表皮および真皮組織を、200プルーフの無水アルコール3mLで抽出し、30分間超音波処理し、25mm、0.45μm PTFEメンブレンシリンジフィルターを通してHPLCバイアル中にろ過し、HPLCを用いてアッセイした。試料を、TBHCおよびCPCについて個々にアッセイした。Lamisil試料を、また、陰性対照としてCPCについてアッセイした。
【0223】
5.7 表皮および真皮の計算
表皮、真皮、およびレセプターコンパートメント中に浸透したTBHCおよびCPCの量(第1用量の24時間後)をHPLCによって決定した。標準濃度のTBHCおよびCPCを生成し、投与領域におけるTBHCおよびCPCの濃度を決定するのに用いた。各皮膚領域におけるCPCまたはTBHCのレベルを、(1)湿潤組織重量あたりの量(μg/グラム)±標準偏差、(2)表面積あたりの量(μg/cm2)±標準偏差、(3)投与した用量の%±標準偏差として表す。計算において用いた反復の数は、各製剤に対して5回であった。
【0224】
in vitroの皮膚浸透試験を、フランツ拡散セル法を用いて行った。3種の異なる試験物品を2回投与して24時間後、表皮と真皮とを分離し、秤量し、HPLCによって、TBHC(例えば、LamisilATクリーム、1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンa、1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンb)についてアッセイした。レセプター試料もTBHCについてアッセイした。CPCを、HPLCによるナノエマルジョンのマーカーとして、NB-00X製剤からの同じ試料から測定した。
【0225】
5.8 1%TBHC/0.3%ナノエマルジョン製剤を局所投与した後のCPCレベル
1%TBHC/0/3%ナノエマルジョン製剤に対するCPC浸透試験の結果を表21に示す。
【表21】

【0226】
1%THBC/0.3%ナノエマルジョンaおよび0.3%ナノエマルジョンbでのCPCマーカーの表皮中への送達は同等であった。ナノエマルジョン製剤中のエタノール濃度は、CPCの真皮組織中への送達を増強すると思われる。1%THBC/0.3%ナノエマルジョンb製剤は、1%THBC/0.3%ナノエマルジョンa製剤よりもCPCは2倍高いレベルであった(70.6μg/グラムに比べて37.1μg/グラム)。この所見は、真皮におけるTBHCレベルに見られた所見と一致する。
【0227】
24時間後にレセプターコンパートメント中に見出されたCPCの量は、全製剤に対する検出レベル(5ng/ml)未満であった。
【0228】
5.9 TBHC吸収結果
LamisilAT、1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンa、および1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンbに対するTBHC浸透試験の結果を表22に示す。
【表22】

【0229】
LamisilATクリームは、真皮に比べて表皮中に約12倍多いTBHCを送達した。1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンaは、真皮に比べて表皮中に約9倍多いTBHCを送達した。1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンbは、真皮に比べて表皮中に約20倍多いTBHCを送達した。
【0230】
表皮中および真皮中への吸収を、ブタ皮膚上に0時間および8時間の2回投与して24時間後に測定した。LamisilATクリーム製剤に比べて1%TBHC/0.3%ナノエマルジョン製剤では、TBHCの表皮中(図25)および真皮中(図26)への送達における増大があった。24時間後に表皮および真皮において見出されたTBHCのレベルは、LamisilAT製剤では1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンに比べて低かった。表皮中のTBHCレベルは、LamisilATクリーム製剤に比べて、1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンaおよび1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンbに対してそれぞれ18.6倍および15.1倍高かった。真皮中TBHCのレベルは、LamisilATクリーム製剤に比べて、1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンaおよび1%TBHC/0.3%ナノエマルジョンbに対してそれぞれ10.9倍および20倍高かった。これは、TBHCを含む新規なナノエマルジョンの局所投与後に、TBHCの皮膚中への優れた送達が実現したことを示している。したがって、3種のナノエマルジョンは、表皮および真皮中へのTBの送達を大幅に増強した。
【0231】
図25および26に実証するように、Lamisil(登録商標)クリームは、表皮中に全用量の約0.2%、真皮中に全用量の0.1%の吸収しか示さなかった。これとは対照的に、製剤#1は、表皮中および真皮中に、全用量のそれぞれ約3.7%および約1.2%の吸収を示した。同様に、製剤#2は、表皮中および真皮中に、全用量のそれぞれ約5.2%および約2.7%の吸収を示し、これらは対照のLamisil(登録商標)クリームに比べて有意な増大である。
【0232】
(実施例6)
本実施例の目的は、テルビナフィン塩酸塩(TBHC)などの、ナノエマルジョン製剤中に組み込まれた有効薬剤がヒト屍体皮膚中に側方拡散することができるか否かを決定することであった。
【0233】
1%TBHCおよび0.3%塩酸セチルピリジニウム(CPC)を、NB-00Xb製剤中に組み入れた。この試験において用いた水中油型ナノエマルジョンの平均液滴直径はおよそ180nmである。CPCは油相と水相との間の界面に存在する。1%TBHCを含むLamisil(登録商標)クリームを対照として用いた。
【0234】
改変フランツ拡散装置において、切断したヒト屍体皮膚を用いてin vitroの試験を行った。100μL/cm2の1%TBHC/0.3%CPC NB-00Xbを、2つの同心円のガラスシリンダーによって囲まれた皮膚の同心円の表面積5.27cm2に投与した。投与24時間後、残余のナノエマルジョンを、投与領域をスワブで掻き取ることによって除去した。投与領域の表皮と真皮とを分離し、秤量し、CPCおよびTBHCに対してアッセイした。内側の非投与領域(内側領域)および中間の非投与領域(中間領域)の8mm(表面積0.5cm2)のパンチ生検を同様に処理した。CPCおよびTBHCの定量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって独立した方法で行った。中間組織または内側組織においてCPCまたはTBHCを検出することができる唯一の方法は、投与領域の下にある皮膚中へのナノエマルジョンの浸透、およびその後の非投与領域中への側方拡散による。
【0235】
6.1 実験
試験製剤
1%TBHC/0.3%NB-00Xbの調製
本試験のナノエマルジョン製剤は、0.3%CPC(0.3%NB-001または3mg CPC/ml)、および1%TBHCを含んでいた。最初にTBHCをエタノール中に溶解し、次いで、水と混合することにより、TBHCを1%NB-00Xb(1%CPCを含む)中に組み入れた。この溶液を、穏やかに混和しながら、1%ナノエマルジョンにゆっくりと加えて、0.3%ナノエマルジョンと1%TBHCを含む最終生成物を得た。最終製剤は22%エタノールおよび57%水を含んでいた。THBCナノエマルジョンの組成を表23に示す。
【表23】

【0236】
Lamisil(登録商標)を地元の薬局から購入し、これは1%TBHCを含んでいた。
【0237】
試験製剤を、ポジティブティスプレイスメントピペットを用いて、拡散セルのドナーチャンバーの表皮表面に投与した。単回投与に対して527μLを投与した(例えば、QD)。複数回投与(例えば、BID)に対して、初回投与の8時間後に527μLを投与した。曝露された投与表皮表面積は5.27cm2であった。
【0238】
ヒト屍体皮膚
本試験において、Life Legacy組織バンクから入手した75歳白人男性ドナーからのヒト屍体背側腹部を用いた。皮膚を直径38mmの円盤に切断し、組織抽出前に、および各投与領域から、および各非投与領域から各セルに対して表皮および真皮の重量を記録した。1%TBHC/0.3%NB-00Xb製剤およびLamisil(登録商標)を、試験開始後0時間および8時間の2回投与した。
【0239】
改変拡散装置
Franz TJ、「The finite dose technique as a valid in vitro model for the study of percutaneous absorption in man.」Skin: Drug Application and Evaluation of Environmental Hazards, Current Problems in Dermatology、第7巻、G. Simon、Z. Paster、M Klingberg、M. Kaye (編集)、Basel、Switzerland、S. Karger、1978年、58〜68頁によって記載されているin vitro屍体皮膚有限用量法を用いて、経皮吸収を測定した。
【0240】
凍結保存されている、デルマトーム切除されたヒト屍体体幹皮膚をLife Legacy組織ドナーバンクから入手し、使用まで-70℃のアルミホイルパウチ中に貯蔵した。使用時、密封したパウチをおよそ5分間、37℃の湯中に配置することによって皮膚を解凍した。皮膚をパウチから取り出し、切片に切断して38mm浸透ウェルセル上に合わせた。レセプターコンパートメントを50mLの蒸留水、pH7で満たし、ドナーコンパートメントは開放したままにして周囲の実験室条件にした。細胞全てを、ウェルの外側上の循環水浴によってレセプター溶液が37℃に維持されている拡散装置に搭載した。拡散試験に対するパラメータを表24に列挙する。
【表24】

【0241】
図17に示すように、シアノアクリレート接着剤(例えば、スーパーグルー)を用いて2個の円形ガラスチャンバーを糊付けして、皮膚表面上に接着させた。図16は、試験に関与した表面積の寸法を図示している。試験製剤を、改変フランツセル装置を皮膚試料で準備した15分後に、外側投与領域に投与した。中間領域および内側領域には、試験製剤の局所投与を行わなかった。
【0242】
試料採取
第1用量を投与して24時間後、外側投与領域ならびに内側および中間領域の表面を、70%エタノール溶液で数回、個々にスワブで掻き取って、皮膚表面から残余の製剤を全て除去した。表面のスワブを全てCPC含量についてアッセイした。レセプター溶液1mLも各セルのレセプターから24時間後に試料採取し、0.45μm PTFE(25mm)メンブランシリンジフィルターを通してろ過した。ろ液をHPLCスナップキャップバイアル中に採取した。
【0243】
ガラスチャンバーを取り除いた後、皮膚試料を採取した。第一に、外側投与領域を処理した。簡潔に述べると、表皮を掻爬法によって外側投与領域における真皮から取り除き、風袋重量を差し引いた20mLガラスバイアル中に配置し、秤量した。次いで、真皮を投与領域からメスを用いて取り除き、風袋重量を差し引いた20mLガラスバイアル中に配置し、重量を記録した。中間領域および内側領域を同じやり方で処理した。外側、中間、および内側領域からの表皮および真皮の組織を70%エタノール溶液で抽出し、1時間超音波処理し、25mm、0.45μm PTFEメンブランシリンジフィルターを通してHPLCバイアル中にろ過し、HPLCを用いてアッセイした。
【0244】
試料の分析
ヒト屍体皮膚試料から抽出したテルビナフィンのアッセイを、40℃のPhenomenex AquaC18(150×4.6mm、5μm)カラムを用いて、アセトニトリル:水40:60中0.1%リン酸を移動相とし、Velesco,Ann Arbor MIによって展開した224nmのUV検出で10分間の均一濃度のHPLC逆相法を用いて行った。方法を、直線性、正確さ、定量限界、検出限界、ならびに皮膚表皮、真皮、抽出溶媒、および製剤の賦形剤からのテルビナフィンの特異性に対して確認した。実験条件を以下の表25に表にする。
【表25】

【0245】
ヒト皮膚試料から抽出した塩化セチルピリジニウムのアッセイでは、45/55(v/v%)バッファー(CTAB-KH2PO4)、pH2.5:メタノールを移動相として260nmのUV検出で、40℃のCPS-2 Hypersil(直径4.6mm×長さ150mm、粒子サイズ5μm)カラムで、12分間の均一濃度の逆相法を用いた。方法を、直線性、正確さ、定量限界、検出限界、ならびに皮膚表皮、真皮、抽出溶媒、および製剤の賦形剤からの塩化セチルピリジニウムの特異性に対して確認した。実験条件を以下の表26に表にする。
【表26】

【0246】
表皮および真皮の計算
表皮、真皮、およびレセプターコンパートメント中に浸透したTBHCおよびCPCの量(第1用量の24時間後)をHPLCによって決定した。標準濃度のTBHCおよびCPCを調製し、投与領域におけるTBHCまたはCPCの濃度を決定するのに用いた。各皮膚領域におけるCPCまたはTBHCのレベルを、(1)湿潤組織重量あたりの量(μg/グラム)±標準偏差、(2)表面積あたりの量(μg/cm2)±標準偏差として表す。計算に用いた反復の数は、各製剤に対して3回または4回であった。
【0247】
6.2 結果
局所投与後のTBHCレベル
ヒト屍体皮膚表皮に対する、およびヒト屍体皮膚真皮に対するLamisil(登録商標)および1%TBHC/0.3%NB-00Xbの浸透試験の結果をそれぞれ表27および表28に示す。様々なコンパートメント(表皮および真皮)中に見出されたNB-00Xbから送達されたTBHCのレベルは、Lamisil(登録商標)クリームから送達されたTBHCのレベルと有意に差があった。24時間後に表皮および真皮中に見出されたTBHCのレベルは、Lamisil(登録商標)クリームでは1%TBHC/0.3%NB-00Xb製剤に比べて低かった。
【0248】
NB-00Xb製剤によって処理した試料の外側、中間、および内側の表皮中に見出されたTBHCのレベルは、Lamisil(登録商標)クリームによって処理した試料の同じ領域(外側、中間、内側)に比べて、それぞれ14倍、35倍、および310倍(μg/g組織レベル)高かった。1%TBHC/0.3%NB-00Xb製剤によって処理した試料の外側、中間、および内側の表皮中に見出されたTBHCのレベルは、Lamisil(登録商標)クリームによって処理した試料の同じ領域(外側、中間、内側)に比べて、それぞれ27倍、28倍、および115倍(μg/g組織レベル)高かった。また、24時間後に中間および内側表面領域の表面スワブ中に見出されたTBHCの量は、全ての製剤に対して検出レベルの5μg/ml未満であり、投与領域から非投与領域への試験物品の漏出がなかったことを示していた。
【表27】

【表28】

【0249】
6.3 結論
塩酸テルビナフィンを含むナノエマルジョンの側方拡散のデータは、ナノエマルジョンが、角質層下を組織に向って、投与領域から最高11mm離れて側方に移動することを示している。
【0250】
(実施例7)ミコナゾールを含むナノエマルジョン製剤および硝酸ミコナゾールを含むLotrimin(登録商標)スプレー溶液に対するin vitro浸透試験
本実施例の目的は、テルビナフィン塩酸塩(TBHC)など、ナノエマルジョン製剤中に組み込まれた有効薬剤が皮膚中に側方に拡散することができるか否かを決定することであった。とりわけ本実施例は、ナノエマルジョン製剤がミコナゾール(MCZ)をブタ皮膚中に送達する可能性を調査するものであった。市販のLotriminAF(登録商標)スプレー溶液を対照として用いた。ナノエマルジョン中のカチオン性界面活性剤である塩化セチルピリジニウム(CPC)を、ナノエマルジョンに対する送達のさらなるマーカー薬剤として用いた。
【0251】
ミコナゾールは、真菌感染症を治療するために、通常、皮膚または粘膜に局所的に投与されるイミダゾール系抗真菌薬である。ミコナゾールは、真菌細胞膜の重要な成分であるエルゴステロールの合成を阻害することによって作用する。単細胞寄生体の1タイプである、一部のリーシュマニア(Leishmania)原虫も、その細胞膜中にエルゴステロールを含むので、これらに対してミコナゾールを用いることもできる。ミコナゾールには抗真菌作用および抗寄生体作用に加えて、いくつかの限られた抗細菌の性質もある。ミコナゾールは、主に、足白癬、みずむし、およびいんきんたむしの治療に外用に用いられる。内服を口腔または膣の鵞口瘡(酵母菌感染)に用いる。さらに、口腔用ゲルを、唇の障害である口角炎に用いてもよい。化学構造および物理化学的性質を以下に示す。
【0252】
ミコナゾールの化学構造
【化3】

【表29】

【0253】
7.1 試験製剤
2%ミコナゾール/0.3%ナノエマルジョンの調製
ナノエマルジョン試験製剤は、最終濃度0.3%(0.3%CPCまたは3mg CPC/ml)および2%のミコナゾールを含んでいた。最初にミコナゾールをエタノール中に完全に溶けるまで溶解し、次いで水と混和することによって、ミコナゾールを1%ナノエマルジョン(1%CPCを含んでいる)中に組み入れた。この溶液を穏やかに混和しながら1%ナノエマルジョンにゆっくりと加えて、2%ミコナゾールとともに0.3%ナノエマルジョンを含む最終生成物を得た。ナノエマルジョンと混和後、目視検査および顕微鏡によって、ミコナゾールの沈殿物の証拠は観察されなかった。ミコナゾールを油相にやはり可溶化した後、エマルジョンを調合した。ミコナゾールナノエマルジョンの組成を、表30に列挙する。
【表30】

【0254】
Lotrimin AF(登録商標)スプレー溶液は、2%硝酸ミコナゾールを含んでいた。Lotrimin AF(登録商標)スプレー溶液中の非有効成分には、変性アルコール(13%v/v)、コカミドDEA、イソブテン、プロピレングリコール、およびトコフェロール(ビタミンE)が含まれる。
【0255】
7.2 表皮および真皮の計算
表皮、真皮、およびレセプターコンパートメント中に浸透したMCZの量(第1用量の24時間後)をHPLC MS/MSによって決定した。標準濃度のMCZを生成し、投与領域中のMCZの濃度を決定するのに用いた。各皮膚領域中のCPCまたはMCZのレベルを、(1)表面積あたりの量(μg/cm2)±標準偏差、(2)湿潤組織重量あたりの量(μg/グラム)±標準偏差、(3)投与した用量の%±標準偏差として表す。計算に用いられた反復の数は、各製剤に対して5回であった。
【0256】
in vitroの皮膚浸透試験を、図16および17に記載するように、拡散セル法を用いて行った。ナノエマルジョン製剤およびLotrimin AF(登録商標)スプレー溶液を2回投与して24時間後、表皮と真皮とを分離し、秤量し、LC/MS/MSによってミコナゾールに対してアッセイした。レセプターからの試料もミコナゾールに対してアッセイした。ミコナゾールを含むナノエマルジョン製剤において、CPC濃度もHPLCによって決定した。
【0257】
Lotrimin(登録商標)AFスプレー溶液および2%MCZ/0.3%ナノエマルジョンに対するMCZ浸透試験の結果を、表31、ならびに図28および29に示す。
【表31】

【0258】
市販のLotrimin(登録商標)AFスプレー溶液は、表皮中に真皮に比べて約5.6倍多いMCZを送達した。驚くべきことに、2%MCZ/0.3%NB-00Xを含むナノエマルジョン製剤は、表皮中に真皮に比べて約18.6倍多いMCZを送達した。このように、Lotrimin AF(登録商標)スプレー溶液に比べて2%MCZ/0.3%ナノエマルジョン製剤では、表皮および真皮中へのMCZの送達に著しい増大があった。24時間後に表皮および真皮において見出されたMCZのレベルは、Lotriminスプレー製剤では2%MCZ/0.3%ナノエマルジョン製剤に比べて低かった。表皮中のMCZのレベルは、2%MCZ/0.3%ナノエマルジョンでは、Lotrimin AF(登録商標)スプレー溶液に比べて30倍高かった。真皮中のMCZのレベルは、2%MCZ/0.3%ナノエマルジョンではLotrimin AF(登録商標)スプレー溶液に比べて9倍高かった。したがって、ナノエマルジョン製剤を用いると、Lotrimin AF(登録商標)スプレー溶液に比べて、MCZの表皮および真皮組織中への送達が増大する。24時間後にレセプターコンパートメント中に見出されたMCZの量は、試験した全製剤に対して検出レベル(50ng/ml)未満であった。
【0259】
(実施例8)
本実施例の目的は、本発明によるナノエマルジョンの殺ウイルス活性を決定することであった。
【0260】
本発明によるナノエマルジョンのin vitroの殺ウイルス活性は、ナノエマルジョン濃度、曝露期間、およびウイルス量に依存する。図27Aは、1.6μg/mL(0.00016%NB-001)の濃度で15分以内に、ウイルス量における最大の低下に到達したことを示している。IC50付近の濃度(0.0001%NB-001または1μgCPC/mL)および2.7×107pfu/mLのウイルス量で、HSV-1 KOS株の≧3-logの殺傷を実現するには、室温で4時間のインキュベートが必要とされる(22℃、図27B)。
【0261】
NB-001を他の単純ヘルペス株に対して試験した。ASTM E1052-96法(American Society for Testing and Materials (ASTM E1052-96、2002年))は、ウイルスがその抗ウイルス活性を発揮するのに積極的に複製することも必要としないので、この方法を用いてNB-001が懸濁液中のウイルスを殺傷する活性の評価を行った。NB-001は、0.5〜4.3μg/mlのIC50値の範囲で、HSV-1およびHSV-2株に対して等しく殺ウイルス的であった(図11および12)。ヌクレオシド類似体であるアシクロビル(ACV)またはピロリン酸類似体であるホスカルネット(FOS)のいずれかに対して耐性を付与する変異体を試験した場合、NB-001に対する交叉耐性はなかった。HSV-2株は性器ヘルペスに最も一般的に見出されるが、HSV-1は先進国において性器ヘルペスと新規に診断される最も一般的な原因である。アシクロビルおよび/またはホスカルネット耐性株の大多数は、出現の再発を防ぐために予防的にヌクレオシド類似体を用いる免疫の低下した患者に生じる。
【0262】
(実施例9)
本実施例の目的は、ナノエマルジョンの濃度が増大するとともに本発明によるナノエマルジョンが結晶化する効果を評価することであった。
【0263】
0.1%、0.3%、および0.5%のCPC水性製剤を、スライドガラスに塗布後、経時的に交差偏光顕微鏡によって観察することによってCPC0.1%、0.3%、および0.5%を含むナノエマルジョンと比較した。以下の表は、スライドガラスに塗布した場合の3%水性CPC(3mg/mL)からの結晶の時間依存性の形成を実証するものである。結晶化は10分以内に明らかであり、本質的に完全な結晶化は30分以内に生じる。同量のCPCをナノエマルジョンとして(0.3% NB-001)調合した場合、2時間、いかなる著しい度合いでも結晶化は生じなかった。0.5%NB-001は30分以内に広範な結晶形成を示した。CPCは、水/エタノールが蒸発するとともに、スライド表面上に結晶化した。
【表32】

【0264】
9.1 NB-001の皮膚中への浸透
NB-001の表皮中および真皮中への浸透を試験するためのin vitroモデルとしてヒト屍体皮膚を用いた。0.3%NB-001(3mg CPC/mL)を単回投与して24時間後、2.4mg CPC/gm表皮組織を採取し、27μg CPC/gm組織が真皮に送達された。したがって、表皮中および真皮中両方の薬物の濃度は、代表的なウイルスに対してのIC50を超えた(データは示さず)。これとは対照的に、CPC 3mg/mL水溶液をヒト屍体皮膚に投与した場合、表皮中または真皮中のいずれかに最小レベルのCPCが見出され、またはCPCは見出されなかった(データは示さず)。これは、水が速やかに蒸発したために皮膚に生じた溶液からのCPCの結晶化に起因し得るものであり、したがって、ミセルは角質層を浸透するのに十分小型であるにかかわらず、CPCはあったとしても殆ど皮膚に送達されない。
【0265】
0.1%、0.3%、または0.5% NB-001の5回の投与(各投与は1.13cm2の投与領域にわたって113μLの投与であった)を、12時間にわたってヒト屍体皮膚に行ってNB-001の送達を反映し、表皮および真皮におけるCPC濃度を測定することによって24時間後の送達を測定した(図14および15)。0.3%NB-001が最高濃度のCPCを送達し、0.1%または0.5% NB-001よりも、表皮において10倍高いレベル(2.6mg CPC/組織g)、および真皮において4倍高いレベル(20.3μg CPC/組織g)を達成した。0.5% NB-001から表皮中および真皮中へのCPCの送達は、0.3% NB-001に比べて有意に低下し、これは皮膚に投与された後、ナノエマルジョンからのCPCの結晶化をもたらすナノエマルジョンのエタノール/水成分の蒸発によるものであった。これは、0.5% NB-001が投与された後ヒト屍体皮膚上の結晶の存在を示す、交差偏光顕微鏡を用いてやはり視覚化することができる。
【0266】
当業者であれば、本発明の精神または範囲から逸脱することなしに、本発明の方法および組成物において様々な改変および変形を行うことができることが明らかである。したがって、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内に入るのであれば、本発明の改変および変形を本発明が網羅するものとされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その必要があるヒト被験体において、ヘルペスウイルス感染を治療する、ヘルペスウイルス感染を予防する、ヘルペスウイルス感染の再発を予防する、ヘルペスウイルスの再活性化を予防する、ヘルペスウイルスの再活性化を最小化する、またはそれらの組み合わせを行なう方法であって、該ヒト被験体にナノエマルジョンを局所的に投与するかまたは皮内投与するステップを含み、
(a)該局所投与は、ヘルペス病変、ヘルペス病変の周囲の皮膚、またはそれらの組み合わせに対するものであり、
(b)該ナノエマルジョンは約1000nm未満の平均直径を有する液滴を含み、かつ
(c)該ナノエマルジョンは、水、少なくとも1種の油、少なくとも1種の界面活性剤、および少なくとも1種の有機溶媒を含み、
該方法は、ビヒクルを用いた処置、処置なし、または非ナノエマルジョン組成物を用いた処置と比較して、治癒のための時間の減少をもたらす、上記方法。
【請求項2】
(a)前記ナノエマルジョンが、ヘルペスウイルスを殺傷し、弱化させ、不能化し、もしくはその病原性を低下させ、
(b)該ナノエマルジョンは、ヘルペス感染、再発感染、もしくはウイルスの再活性化に対して予防的であり、または
(c)それらの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)前記ナノエマルジョンがヘルペスウイルスに対して治療上有効であり、
(b)該ナノエマルジョンがヘルペスウイルスに対して殺ウイルス的もしくは静ウイルス的であり、
(c)治療に続いて、病変の部分的もしくは完全な除去が観察され、
(d)該ナノエマルジョンが病変が顕在化もしくは発達するのを予防し、
(e)ベースラインが前駆病変段階である場合、該ナノエマルジョンが治癒までの時間を減少させ、
(f)ベースラインが紅斑病変段階である場合、該ナノエマルジョンが治癒までの時間を減少させ、
(g)ベースラインが丘疹病変段階である場合、該ナノエマルジョンが治癒までの時間を減少させ、
(h)ベースラインが小水疱病変段階である場合、該ナノエマルジョンが治癒までの時間を減少させ、または
(i)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)前記ナノエマルジョン液滴がウイルスと結合して、殺傷、増殖阻害、病原性の喪失、もしくはそれらのいずれかの組み合わせをもたらし、
(b)該ナノエマルジョン液滴が病変を治癒させ、予防し、もしくはその発症を阻害し、または
(c)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノエマルジョンが、口腔顔面部、目、尿生殖部(外部もしくは内部の、皮膚もしくは粘膜)、膣粘膜、直腸粘膜、肛門粘膜、口腔粘膜、四肢、皮膚、咽頭口部、表面皮膚構造および付属器、唇、赤唇縁、口の全領域、頸部、会陰、大腿、手、角膜、尿道、またはそれらのいずれかの組み合わせに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ヘルペス感染が、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスリンパ球向性ウイルス、ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)、ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるヘルペスウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(a)前記方法が1種または複数の抗ウイルス薬に耐性を有する被験体を治療するのに用いられ、(b)該被験体がヌクレオシド類似体および/もしくはホスカルネットに耐性を有し、(c)被験体がアシクロビルに耐性であり、または(d)それらのいずれかの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)前記ヘルペス感染が、潜伏性であり、活性であり、または再活性化されており、
(b)該ヘルペスが、三叉神経節、Bリンパ球、腰仙骨神経節、単球、ニューロン、Tリンパ球、もしくは上皮細胞において潜伏性であり、または
(c)それらの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ヘルペス感染が、口唇ヘルペス、性器ヘルペス、眼部ヘルペス、ヘルペス・ルグベイオルム(herpes rugbiorum)、剣状ヘルペス、またはヘルペス性ひょう疽である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノエマルジョン液滴が、毛嚢、皮膚孔、粘膜、角膜、易感染性皮膚、表皮、真皮、皮膚、頭皮、損傷皮膚、患部皮膚、またはそれらのいずれかの組み合わせを通して、横断し、および/または拡散する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノエマルジョン液滴が、約950nm未満、約900nm未満、約850nm未満、約800nm未満、約750nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nmを超える、約70nmを超える、約125nmを超える、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される平均直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノエマルジョンが、
(a)キレート剤
(b)シリコーン成分
(c)少なくとも1種の保存剤、
(d)pH調整剤、
(e)バッファー
(f)別の有効薬剤、または
(g)それらのいずれかの組み合わせ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(a)前記キレート剤が約0.0005%〜約1%の量で存在し、または該キレート剤が、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、およびジメルカプロールからなる群から選択され、またはそれらの組み合わせであり、
(b)前記シリコーン成分は
(i)少なくとも1種の揮発性シリコーン油を含み、該揮発性シリコーン油はシリコーン成分中唯一の油であってよく、または他のシリコーン油および非シリコーンの油と組み合わせられていてよく、該他の油は揮発性または非揮発性であってよく、
(ii)メチルフェニルポリシロキサン、シメチコン、ジメチコン、フェニルトリメチコン(もしくはその有機修飾されているバージョン)、高分子シリコーンのアルキル化誘導体、セチルジメチコン、ラウリルトリメチコン、高分子シリコーンのヒドロキシル化誘導体、例えばジメチコノール、揮発性シリコーン油、環状および直鎖状シリコーン、シクロメチコン、シクロメチコンの誘導体、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、揮発性直鎖状ジメチルポリシロキサン、イソヘキサデカン、イソエイコサン、イソテトラコサン、ポリイソブテン、イソオクタン、イソドデカン、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、または、
(iii)それらのいずれかの組み合わせであり、
(c)前記保存剤は、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロルヘキシジン、イミダゾリジニル尿素、フェノール、ソルビン酸カリウム、安息香酸、ブロノポール、クロロクレゾール、パラベンエステル、フェノキシエタノール、ソルビン酸、α-トコフェルノール(tocophernol)、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、アスコルビン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、クエン酸、エデト酸、クロルフェネシン(3-(4-クロロフェノキシ)-プロパン-1,2-ジオール)、カトンCG(メチルおよびメチルクロロイソチアゾリノン)、パラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルヒドロベンゾエート)、フェノキシエタノール(2-フェノキシエタノール)、ソルビン酸(ソルビン酸カリウム、ソルビン酸)、フェノニップ(フェノキシエタノール、メチル、エチル、ブチル、プロピルパラベン)、Phenoroc(フェノキシエタノール0.73%、メチルパラベン0.2%、プロピルパラベン0.07%)、Liquipar油(イソプロピル、イソブチル、ブチルパラベン)、Liquipar PE(70%フェノキシエタノール、30%liquipar油)、Nipaguard MPA(ベンジルアルコール(70%)、メチルおよびプロピルパラベン)、Nipaguard MPS(プロピレングリコール、メチルおよびプロピルパラベン)、Nipasept(メチル、エチル、およびプロピルパラベン)、Nipastat(メチル、ブチル、エチル、およびプロピエル(propyel)パラベン)、Elestab388(プロピレングリコール中フェノキシエタノール、+クロルフェネシンおよびメチルパラベン)、ならびにKillitol(7.5%クロルフェネシン、および7.5%メチルパラベン)、それらの半合成誘導体、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(d)pH調整剤は、ジエチアノールアミン(diethyanolamine)、乳酸、モノエタノールアミン、トリエチラノールアミン(triethylanolamine)、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(e)前記バッファーは、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、L-(+)-酒石酸、ACES、ADA、酢酸、酢酸アンモニウム溶液、炭酸水素アンモニウム、クエン酸二アンモニウム、ギ酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム一水和物、リン酸二アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム四水和物、硫酸アンモニウム溶液、酒石酸二アンモニウム、BES緩衝食塩水、BES、BICINE、BIS-TRIS、重炭酸塩バッファー溶液、ホウ酸、CAPS、CHES、酢酸カルシウム水和物、炭酸カルシウム、クエン酸三カルシウム四水和物、クエン酸濃縮液、クエン酸、含水、ジエタノールアミン、EPPS、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物、ギ酸溶液、Gly-Gly-Gly、Gly-Gly、グリシン、HEPES、イミダゾール、リポタンパク質リフォールディングバッファー、酢酸リチウム二水和物、クエン酸三リチウム四水和物、MES水和物、MES一水和物、MES溶液、MOPS、酢酸マグネシウム溶液、酢酸マグネシウム四水和物、クエン酸三マグネシウム九水和物、ギ酸マグネシウム溶液、リン酸二マグネシウム三水和物、シュウ酸二水和物、PIPES、リン酸緩衝食塩水、ピペラジン、D-酒石酸一カリウム、酢酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム溶液、ギ酸カリウム、シュウ酸カリウム一水和物、リン酸二カリウム、リン酸二カリウム、分子生物学用、無水、リン酸一カリウム、リン酸一カリウム、リン酸三カリウム一水和物、フタル酸一カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム四水和物、四ホウ酸カリウム四水和物、四シュウ酸カリウム二水和物、プロピオン酸、STEバッファー、STETバッファー、5,5-ジエチルバルビツール酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、重炭酸ナトリウム、重酒石酸ナトリウム一水和物、炭酸ナトリウム十水和物、炭酸ナトリウム、クエン酸一ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、ギ酸ナトリウム溶液、シュウ酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸二ナトリウム十二水和物、リン酸二ナトリウム溶液、リン酸一ナトリウム二水和物、リン酸一ナトリウム一水和物、リン酸一ナトリウム溶液、ピロリン酸二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム十水和物、酒石酸二ナトリウム二水和物、酒石酸二ナトリウム溶液、四ホウ酸ナトリウム十水和物、TAPS、TES、TMバッファー溶液、TNTバッファー溶液、TRISグリシンバッファー、TRIS酢酸-EDTAバッファー溶液、TRIS緩衝食塩水、TRISグリシンSDSバッファー溶液、TRISリン酸-EDTAバッファー溶液、トリシン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、酢酸トリエチルアンモニウムバッファー、リン酸トリエチルアンモニウム溶液、酢酸トリメチルアンモニウム溶液、リン酸トリメチルアンモニウム溶液、Tris-EDTAバッファー溶液、Trizma(登録商標)酢酸塩、Trizma(登録商標)塩基、Trizma(登録商標)炭酸塩、Trizma(登録商標)塩酸、Trizma(登録商標)マレイン酸塩、またはそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択され、
(f)前記さらなる薬剤は、ヌクレオシド類似体(例えば、アシクロビル(Zovirax(登録商標))、ファムシクロビル(Famvir(登録商標))、およびバラシクロビル(Valtrex(登録商標)))、アマンタジン(Symmetrel(登録商標))、オセルタミビル(Tamiflu(登録商標))、リマンチジン(Flumadine(登録商標))、およびザナミビル(Relenza(登録商標))、シドフォビル(Vistide(登録商標))、ホスカルネット(Foscavir(登録商標))、ガンシクロビル(Cytovene(登録商標))、リバビリン(Virazole(登録商標))、ペンシクロビル(Denavir(登録商標))、ブシクロビル、非環状グアノシン誘導体、(E)-5-(2-ブロモビニル)-2'-デオキシウリジン、ならびにその構造上関連のある類似体[すなわち、シトシン誘導体である(E)-5-(2-ブロモビニル)-2'-デオキシシチジン、および4'-チオ誘導体である(E)-5-(2-ブロモビニル)-2'-デオキシ-4'-チオウリジン]、ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体(例えば、アバカビル(Ziagen、ABC)、ジダノシン(Videx、ddI)、エムトリシタビン(Emtriva、FTC)、ラミブジン(Epivir、3TC)、スタブジン(Zerit、d4T)、テノフォビル(Viread、TDF)、ザルシタビン(Hivid、ddC)、およびジドブジン(Retrovir、AZT、ZDV));非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター(例えば、デラビルジン(Rescriptor、DLV)、エファビレンツ(Sustiva、Stocrin、EFV)、エトラビリン(Intelence、TMC 125)、ネビラピン(Viramune、NVP));プロテアーゼインヒビター(アンプレナビル(Agenerase、APV)、アタザナビル(Reyataz、ATV)、ダルナビル(Prezista、DRV、TMC 114)、ホスアンプレナビル(Lexiva、Telzir、FPV)、インジナビル(Crixivan、IDV)、ロピナビル/リトナビル(Kaletra)、ネルフィナビル(Viracept、NFV)、リトナビル(Norvir、RTV)、サキナビル(Invirase、SQV)、およびチプラナビル(Aptivus、TPV));融合インヒビター(例えば、エンフビルチド(Fuzeon、ENF、T-20));ケモカインコレセプターアンタゴニスト(例えば、マラビロク(Selzentry、Celsentri、MVC));ならびにインテグラーゼインヒビター(例えば、Raltegravir (Isentress、RAL))からなる群から選択される抗ウイルス薬であり(ナノエマルジョン中に組み入れるのが好ましい抗ウイルス薬には、それだけには限定されないが、アシクロビル(Zovirax(登録商標))、ファムシクロビル(Famvir(登録商標))、およびバラシクロビル(Valtrex(登録商標))が含まれる)、
(g)前記さらなる薬剤は、メントール、カンファー、フェノール、アラントイン、ベンゾカイン、コルチコステロイド、フェノール、酸化亜鉛、カンファー、プラモキシン、ジメチコン、メラジメート、オクチノキセート、オクチサレート、オキシベンゾン、ジクロニン、アルコール、ミネラルオイル、プロピレングリコール、二酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、およびドコサノールからなる群から選択され、あるいは
(h)それらのいずれかの組み合わせ
である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノエマルジョンが、
(a)水相
(b)約1%〜約80%の油
(c)約0.1%〜約50%の有機溶媒
(d)約0.001%〜約10%の量で存在する少なくとも1種の界面活性剤
(e)約0.0005%〜約1%の量で存在する少なくとも1種のキレート剤、または
(f)それらのいずれかの組み合わせ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノエマルジョンが、
(a)水相
(b)約5%〜約80%の油
(c)約0.1%〜約10%の有機溶媒
(d)約0.1%〜約10%の量で存在する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤
(e)約0.01%〜約2%の量で存在する少なくとも1種のカチオン剤
(f)約0.0005%〜約1%の量で存在する少なくとも1種のキレート剤、または
(g)それらのいずれかの組み合わせ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノエマルジョンが、
(a)約1ヵ月まで、約3ヵ月まで、約6ヵ月まで、約12ヵ月まで、約18ヵ月まで、約2年まで、約2.5年まで、および約3年までからなる群から選択される期間、約40℃および相対湿度約75%で、
(b)約1ヵ月まで、約3ヵ月まで、約6ヵ月まで、約12ヵ月まで、約18ヵ月まで、約2年まで、約2.5年まで、約3年まで、約3.5年まで、約4年まで、約4.5年まで、および約5年までからなる群から選択される期間、約25℃および相対湿度約60%で、または
(c)約1ヵ月まで、約3ヵ月まで、約6ヵ月まで、約12ヵ月まで、約18ヵ月まで、約2年まで、約2.5年まで、約3年まで、約3.5年まで、約4年まで、約4.5年まで、約5年まで、約5.5年まで、約6年まで、約6.5年まで、および約7年までからなる群から選択される期間、約4℃で、
安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記有機溶媒が、
(a)C1〜C12アルコール、ジオール、トリオール、ジアルキルリン酸、トリアルキルリン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(b)非極性溶媒、極性溶媒、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(c)トリ-n-ブチルホスフェート、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、グリセロール、中鎖トリグリセリド、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、n-ブタノール、ブチレングリコール、調香アルコール、イソプロパノール、n-プロパノール、ギ酸、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、工業用変性アルコール、トリアセチン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ギ酸、それらの半合成誘導体、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択され、かつ
(d)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記油が、
(a)いずれかの化粧上もしくは製薬上許容される油であり、
(b)非揮発性であり、
(c)動物油、植物油、天然油、合成油、炭化水素油、シリコーン油、およびそれらの半合成誘導体からなる群から選択され、
(d)ミネラルオイル、スクアレン油、香油、シリコン(silicon)油、精油、水不溶性ビタミン、ステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、ベヘン酸トリデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、アントラニル酸メンチル(Menthyl anthranhilate)、オクタン酸セチル、サリチル酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、ネオペンチルグリコールジカルパートセトールズ(neopentyl glycol dicarpate cetols)、Ceraphyls(登録商標)、オレイン酸デシル、アジピン酸ジイソプロピル、乳酸C12-15アルキル、乳酸セチル、乳酸ラウリル、ネオペンタン酸イソステアリル、乳酸ミリスチル、ステアロイルステアリン酸イソセチル、ステアロイルステアリン酸オクチルドデシル、炭化水素油、イソパラフィン、液状パラフィン、イソドデカン、ワセリン、アルガン油、アブラナ油、チリ油、ココナツ油、コーン油、綿実油、アマニ油、グレープシード油、カラシ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、ラッカセイ油、パインシード油、ポピーシード油、パンプキンシード油、米ぬか油、ベニバナ油、ティー油、トリュフ油、植物油、アプリコット(核)油、ホホバ油(シモンドシア・チャイネシス (simmondsia chinensis)種子油)、グレープシード油、マカダミア油、麦芽油、アーモンド油、ナタネ油、ヒョウタン油、ダイズ油、ゴマ油、へーゼルナッツ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、大麻油、ボア油、クキナット油、アボカド油、クルミ油、魚油、ベリー油、オールスパイス油、ジュニパー油、種子油、アーモンドシード油、アニスシード油、セロリ種子油、クミンシード油、ナツメグ種子油、リーフ油、バジルリーフ油、ベイリーフ油、シナモンリーフ油、コモンセージリーフ油、ユーカリリーフ油、レモングラスリーフ油、メラレウカリーフ油、オレガノリーフ油、パチュリリーフ油、ペパーミントリーフ油、マツ葉油、ローズマリーリーフ油、スペアミントリーフ油、ティーツリーリーフ油、タイムリーフ油、ウインターグリーンリーフ油、フラワー油、カモミール油、クラリーセージ油、チョウジ油、ゼラニウムフラワー油、ヒソップフラワー油、ジャスミンフラワー油、ラベンダーフラワー油、マヌカフラワー油、マーホラムフラワー(Marhoram flower)油、オレンジフラワー油、ローズフラワー油、イランイランフラワー油、樹皮油、桂皮油、シナモン樹皮油、サッサフラス樹皮油、木油、クスノキ油、セダーウッド油、シタン油、ビャクダン油、根茎(ショウガ)木油、樹脂油、オリバナム油、ミルラ油、果皮油、ベルガモット果皮油、グレープフルーツ果皮油、レモン果皮油、ライム果皮油、オレンジ果皮油、タンジェリン果皮油、根部油、吉草油、オレイン酸、リノール酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、それらの半合成誘導体、およびそれらの組合せからなる群から選択され、または
(d)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノエマルジョンが揮発性油を含み、
(a)該揮発性油が有機溶媒であり、
(b)該揮発性油が有機溶媒のほかに存在し、
(c)シリコーン成分中に用いられる該揮発性油が油相中の油と異なり、
(d)該揮発性油が、テルペン、モノテルペン、セスキテルペン、駆風薬、アズレン、それらの半合成誘導体、またはそれらの組み合わせであり、
(e)該揮発性油が、テルペン、モノテルペン、セスキテルペン、駆風薬、アズレン、メントール、カンファー、ツジョン、チモール、ネロール、リナロール、リモネン、ゲラニオール、ペリリルアルコール、ネロリドール、ファルネソール、イランゲン、ビサボロール、ファルネセン、アスカリドール、ケノポジ油、シトロネラール、シトラール、シトロネロール、カマズレン、セイヨウノコギリソウ、グアイアズレン、カモミール、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、または
(f)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項20】
(a)前記界面活性剤が、製薬上許容されるイオン性界面活性剤、製薬上許容されるイオン性高分子界面活性剤、製薬上許容される非イオン性界面活性剤、製薬上許容される非イオン性高分子界面活性剤、製薬上許容されるカチオン性界面活性剤、製薬上許容されるカチオン性高分子界面活性剤、製薬上許容されるアニオン性界面活性剤、製薬上許容されるアニオン性高分子界面活性剤、製薬上許容される両性イオン性界面活性剤、または製薬上許容される両性イオン性高分子界面活性剤であり、
(b)該界面活性剤が、少なくとも1種のポリエチレンオキシド(PEO)側鎖を有するポリ(メチルメタクリレート)バックボーンのグラフト共重合体、ポリヒドロキシステアリン酸、アルコキシル化したアルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物、脂肪酸疎水性物質を有するポリアルキレングリコール修飾されているポリエステル、ポリエステル、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される高分子界面活性剤であり、または
(c)それらの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項21】
(a)前記界面活性剤が、エチレングリコールを9〜10単位を含むエトキシ化ノニルフェノール、エチレングリコール8単位を含むエトキシ化ウンデカノール、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、エトキシ化水素化リシン油、ラウリル硫酸ナトリウム、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのジブロック共重合体、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロック共重合体、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとをベースにした四官能性ブロック共重合体、グリセリルモノエステル、カプリン酸グリセリル、カプリル酸グリセリル、グリセリルコケート(Glyceryl cocate)、エルカ酸グリセリル、ヒドロキシステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、ラノリン脂肪酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、リノール酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、PABAグリセリル、パルミチン酸グリセリル、リシノール酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、グリセリルチグリコレート(thiglycolate)、ジラウリン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、グリセリルセスオレエート(Glyceryl sesuioleate)、ステアリン酸乳酸グリセリル、ポリオキシエチレンセチル/ステアリルエーテル、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレンラウレートもしくはジラウレート、ポリオキシエチレンステアレートもしくはジステアレート、ポリオキシエチレン脂肪エーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ステロイド、コレステロール、β-シトステロール、ビサボロール、アルコールの脂肪酸エステル、イソプロピルミリステート、アリファチイソプロピルn-ブチレート(Aliphati-isopropyl n-butyrate)、n-ヘキサン酸イソプロピル、n-デカン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル(isoproppyl)、ミリスチン酸オクチルドデシル、アルコキシル化アルコール、アルコキシル化酸、アルコキシル化アミド、アルコキシル化糖誘導体、天然油およびロウのアルコキシル化誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ノノキシノール-14、PEG-8ラウレート、PEG-6コカミド、PEG-20メチルグルコースセスキステアレート、PEG40ラノリン、PEG-40ヒマシ油、PEG-40硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪エーテル、グリセリルジエステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、およびポリオキシエチレンラウリルエーテル、ジラウリン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(b)該界面活性剤は、ラウリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、ジラウリン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性脂質であり、
(c)該界面活性剤は、約2個〜約100個の基のポリオキシエチレン頭部基を有するポリオキシエチレン脂肪エーテルであり、
(d)該界面活性剤は、以下の式I:
R5--(OCH2 CH2)y--OH 式I
[式中、
R5は、炭素原子約6個〜約22個を有する分枝または非分枝のアルキル基であり、
yは、約4〜約100であり、好ましくは約10〜約100である]
に示す構造を有するアルコキシル化アルコールであり、
(e)該界面活性剤は、(d)によるアルコキシル化アルコールであり、R5はラウリル基であり、yは23の平均値を有し、
(f)該界面活性剤は、ラノリンアルコールのエトキシ化誘導体であるアルコキシ化アルコールであり、
(g)該界面活性剤は、ラノリンアルコールのエトキシ化誘導体であるアルコキシ化アルコールであり、該ラノリンアルコールのエトキシ化誘導体は、平均エトキシ化値が10であるラノリンアルコールのポリエチレングリコールエーテルであるラネス-10であり、
(h)該界面活性剤は非イオン性であり、ノノキシノール-9、エトキシ化界面活性剤、エトキシ化アルコール、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化モノアルカオールアミド(monoalkaolamide)、エトキシ化ソルビタンエステル、エトキシ化脂肪アミノ、エチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体、ビス(ポリエチレングリコールビス[イミダゾイルカルボニル])、Brij(登録商標) 35、Brij(登録商標) 56、Brij(登録商標) 72、Brij(登録商標) 76、Brij(登録商標) 92V、Brij(登録商標) 97、Brij(登録商標)58P、Cremophor(登録商標) EL、デカエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-デカノイル-N-メチルグルカミン、n-デシルα-D-グルコピラノシド、デシルβ-D-マルトピラノシド、n-ドデカノイル-N-メチルグルカミド、n-ドデシルα-D-マルトシド、n-ドデシルβ-D-マルトシド、ヘプタエチレングリコールモノデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、ヘプタエチレングリコールモノドデシルエーテル、n-ヘキサデシルβ-D-マルトシド、ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、Igepal CA-630、メチル-6-O-(N-ヘプチルカルバモイル)-α-D-グルコピラノシド、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル、N-ノナノイル-N-メチルグルカミン、オクタエチレングリコールモノデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、オクチル-β-D-グルコピラノシド、ペンタエチレングリコールモノデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノオクタデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノオクチルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールエーテルW-1、ポリオキシエチレン10トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン100ステアレート、ポリオキシエチレン20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン20オレイルエーテル、ポリオキシエチレン40ステアレート、ポリオキシエチレン50ステアレート、ポリオキシエチレン8ステアレート、ポリオキシエチレンビス(イミダゾリルカルボニル)、ポリオキシエチレン25プロピレングリコールステアレート、キラヤ樹皮からのサポニン、Span(登録商標) 20、Span(登録商標)40、Span(登録商標)60、Span(登録商標)65、Span(登録商標)80、Span(登録商標)85、Tergitol、Tergitol Type 15-S-12、Tergitol Type 15-S-30、Tergitol Type 15-S-5、Tergitol Type 15-S-7、Tergitol Type 15-S-9、Tergitol Type NP-10、Tergitol Type NP-4、Tergitol Type NP-40、Tergitol Type NP-7、Tergitol Type NP-9、Tergitol Type TMN-10、Tergitol Type TMN-6、テトラデシル-β-D-マルトシド、テトラエチレングリコールモノデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノドデシルエーテル、テトラエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、トリエチレングリコールモノデシルエーテル、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノテトラデシルエーテル、Triton CF-21、Triton CF-32、Triton DF-12、Triton DF-16、Triton GR-5M、Triton QS-15、Triton QS-44、Triton X-100、Triton X-102、Triton X-15、Triton X-151、Triton X-200、Triton X-207、Triton X-114、Triton X-165、Triton X-305、Triton X-405、Triton X-45、Triton X-705-70、TWEEN(登録商標) 20、TWEEN(登録商標) 21、TWEEN(登録商標) 40、TWEEN(登録商標) 60、TWEEN(登録商標) 61、TWEEN(登録商標) 65、TWEEN(登録商標) 80、TWEEN(登録商標) 81、TWEEN(登録商標) 85、Tyloxapol、n-ウンデシルβ-D-グルコピラノシド、ポロキサマー101、ポロキサマー105、ポロキサマー108、ポロキサマー122、ポロキサマー123、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー182、ポロキサマー183、ポロキサマー184、ポロキサマー185、ポロキサマー188、ポロキサマー212、ポロキサマー215、ポロキサマー217、ポロキサマー231、ポロキサマー234、ポロキサマー235、ポロキサマー237、ポロキサマー238、ポロキサマー282、ポロキサマー284、ポロキサマー288、ポロキサマー331、ポロキサマー333、ポロキサマー334、ポロキサマー335、ポロキサマー338、ポロキサマー401、ポロキサマー402、ポロキサマー403、ポロキサマー407、ポロキサマー105安息香酸塩、ポロキサマー182二安息香酸塩、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(i)該界面活性剤はカチオン性であり、四級アンモニウム化合物、塩化アルキルトリメチルアンモニウム化合物、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、臭化ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムテトラクロロヨウ素酸塩、塩化セチルピリジニウム、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化ドデシルエチルジメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム、グリニャード試薬T、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、N,N',N'-ポリオキシエチレン(10)-N-タロウ(tallow)-1,3-ジアミノプロパン、臭化トンゾニウム、臭化トリメチル(テトラデシル)アンモニウム、1,3,5-トリアジン-1,3,5(2H,4H,6H)-トリエタノール、1-デカナミニウム、N-デシル-N,N-ジメチル-、クロリド、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化2-(2-(p-(ジイソブチル)クレゾスキシ(cresosxy))エトキシ)エチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化2-(2-(p-(ジイソブチル)フェノキシ)エトキシ)エチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキル1または3ベンジル-1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリニウム、塩化アルキルビス(2-ヒドロキシエチル)ベンジルアンモニウム、塩化アルキルデメチル(demethyl)ベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチル3,4-ジクロロベンジルアンモニウム(100% C12)、塩化アルキルジメチル3,4-ジクロロベンジルアンモニウム(50% C14、40% C12、10% C16)、塩化アルキルジメチル3,4-ジクロロベンジルアンモニウム(55% C14、23% C12、20% C16)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(100% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(100% C16)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(41% C14、28% C12)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(47% C12、18% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(55% C16、20% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(58% C14、28% C16)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(60% C14、25% C12)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(61% C11、23% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(61% C12、23% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(65% C12、25% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(67% C12、24% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(67% C12、25% C14)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(90% C14、5% C12)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(93% C14、4% C12)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(95% C16、5% C18)、塩化アルキルジデシルジメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(C12〜16)、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム(C12〜18)、塩化ジアルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチルジメチルベンジルアンモニウム、臭化アルキルジメチルエチルアンモニウム(90% C14、5% C16、5% C12)、臭化アルキルジメチルエチルアンモニウム(ダイズ油の脂肪酸中としてのアルキル基およびアルケニル基の混合)、塩化アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウム(60% C14)、塩化アルキルジメチルイソプロピルベンジルアンモニウム(50% C12、30% C14、17% C16、3% C18)、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(58% C18、40% C16、1% C14、1% C12)、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(90% C18、10% C16)、塩化アルキルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム(C12〜18)、塩化ジ-(C8〜10)-アルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキルメチルベンジルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジイソデシルジメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルビス(2-ヒドロキシエチル)オクチル水素アンモニウム、塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ドデシルカルバモイルメチルジエチル(dinethyl)ベンジルアンモニウム、塩化ヘプタデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウム、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-s-トリアジン、塩化ミリスタルコニウム(および)(クアット)(Quat)RNIUM 14、塩化N,N-ジメチル-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム重合体、塩化n-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム一水和物、塩化オクチルデシルジメチルアンモニウム、塩化オクチルドデシルジメチルアンモニウム、塩化オクチフェノキシエトキシエチル(Octyphenoxyethoxyethyl)ジメチルベンジルアンモニウム、オキシジエチレンビス(塩化アルキルジメチルアンモニウム)、塩化トリメトキシシリ(Trimethoxysily)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウム、トリメトキシシリルクアット(Trimethoxysilyl quats)、塩化トリメチルドデシルベンジルアンモニウム、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(j)該界面活性剤はアニオン性であり、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸ナトリウム塩、コール酸、ウシまたはヒツジ胆汁、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、デオキシコール酸メチルエステル、ジギトニン、ジギトキシゲニン、N,N-ジメチルドデシルアミンN-オキシド、ドキュセートナトリウム塩、グリコケノデオキシコール酸ナトリウム塩、グリココール酸水和物、合成、グリココール酸ナトリウム塩水和物、合成、グリコデオキシコール酸一水和物、グリコデオキシコール酸ナトリウム塩、グリコリトコール酸3-サルフェート二ナトリウム塩、グリコリトコール酸エチルエステル、N-ラウロイルサルコシンナトリウム塩、N-ラウロイルサルコシン溶液、ドデシル硫酸リチウム、ルゴール溶液、Niaproof 4、Type 4、1-オクタンスルホン酸ナトリウム塩、1-ブタンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム無水物、1-ノナンスルホン酸ナトリウム、1-プロパンスルホン酸ナトリウム一水和物、2-ブロモエタンスルホン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム水和物、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム一水和物、ドデシル硫酸ナトリウム、ヘキサンスルホン酸ナトリウム無水物、オクチル硫酸ナトリウム、ペンタンスルホン酸ナトリウム無水物、タウロコール酸ナトリウム、タウロケノデオキシコール酸ナトリウム塩、タウロデオキシコール酸ナトリウム塩一水和物、タウロヒオデオキシコール酸(Taurohyodeoxycholic acid)ナトリウム塩水和物、タウロリトコール酸3-硫酸二ナトリウム塩、タウロウルソデオキシコール酸ナトリウム塩、Trizma(登録商標)ドデシル硫酸、ウルソデオキシコール酸、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
(k)該界面活性剤は両性イオン性であり、N-アルキルベタイン、ラウリルアミンド(amindo)プロピルジメチルベタイン、アルキルジメチルグリシネート(glycinate)、N-アルキルアミノプロピオネート、CHAPS(最小98%)、CHAPSO(最小98%)、3-(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート分子内塩、3-(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート分子内塩、3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート、3-(N,N-ジメチルオクタデシルアンモニオ)プロパンスルホネート、3-(N,N-ジメチルオクチルアンモニオ)プロパンスルホネート分子内塩、3-(N,N-ジメチルパルミチルアンモニオ)プロパンスルホネート、それらの半合成誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、あるいは、
(l)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノエマルジョンが、
(a)少なくとも1種のカチオン性界面活性剤を含み、
(b)塩化セチルピリジニウムであるカチオン性界面活性剤を含み、
(c)カチオン性界面活性剤を含み、カチオン性界面活性剤の濃度は約5.0%未満であり、約0.001%を超え、
(d)カチオン性界面活性剤を含み、カチオン性界面活性剤の濃度は、約5%未満、約4.5%未満、約4.0%未満、約3.5%未満、約3.0%未満、約2.5%未満、約2.0%未満、約1.5%未満、約1.0%未満、約0.90%未満、約0.80%未満、約0.70%未満、約0.60%未満、約0.50%未満、約0.40%未満、約0.30%未満、約0.20%未満、約0.10%未満、約0.001%を超え、約0.002%を超え、約0.003%を超え、約0.004%を超え、約0.005%を超え、約0.006%を超え、約0.007%を超え、約0.008%を超え、約0.009%を超え、約0.010%を超えるものからなる群から選択され、または
(e)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項23】
(a)前記ナノエマルジョンが少なくとも1種のカチオン性界面活性剤および少なくとも1種の非カチオン性界面活性剤を含み、
(b)該ナノエマルジョンが少なくとも1種のカチオン性界面活性剤および少なくとも1種の非カチオン性界面活性剤を含み、該非カチオン性界面活性剤は非イオン性界面活性剤であり、
(c)該ナノエマルジョンが少なくとも1種のカチオン性界面活性剤および少なくとも1種の非カチオン性界面活性剤を含み、該非カチオン性界面活性剤はポリソルベート非イオン性界面活性剤であり、
(d)該ナノエマルジョンが少なくとも1種のカチオン性界面活性剤、およびポリソルベート20もしくはポリソルベート80である少なくとも1種の非カチオン性界面活性剤を含み、
(e)該ナノエマルジョンが少なくとも1種のカチオン性界面活性剤および少なくとも1種の非カチオン性界面活性剤を含み、該非カチオン性界面活性剤は非イオン性界面活性剤であり、非イオン性界面活性剤は約0.05%〜約10%、もしくは約0.1%〜約7%の濃度で存在し、
(f)該ナノエマルジョンが少なくとも1種のカチオン性界面活性剤および少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含み、該カチオン性界面活性剤は約0.05%〜約2%の濃度で存在し、または
(g)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項24】
水がリン酸緩衝食塩水(PBS)中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
(a)前記ナノエマルジョンが、単回投与において局所的に投与または皮内投与され、
(b)該ナノエマルジョンが局所的に投与され、その後投与領域を洗浄していかなる残余のナノエマルジョンをも除去し、
(c)該ナノエマルジョンが、少なくとも週1回、少なくとも週2回、少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、1日3回、1日4回、1日複数回、1週間に複数回、2週間に1回、少なくとも1ヵ月に1回、またはそれらのいずれかの組み合わせで、局所的に投与または皮内投与され、
(d)該ナノエマルジョンが、約1日、2日、3日、4日、約1週間、1ヵ月、約2ヵ月、約3ヵ月、約4ヵ月、約5ヵ月、約6ヵ月、約7ヵ月、約8ヵ月、約9ヵ月、約10ヵ月、約11ヵ月、約1年、約1.5年、約2年、約2.5年、約3年、約3.5年、約4年、約4.5年、および約5年からなる群から選択される期間、局所的に投与または皮内投与され、あるいは、
(e)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項26】
(a)前記ナノエマルジョンがヒト被験体において最小の全身吸収を示し、10ng/ml未満の界面活性剤が被験体の血漿中で測定されることを意味し、
(b)局所的に投与され、または皮内投与された該ナノエマルジョンが、ヒト被験体に対して全身性に毒性ではなく、
(c)投与後、被験体の血漿中に5ng/ml未満の界面活性剤が測定され、
(d)投与後、被験体の血漿中に3ng/ml未満の界面活性剤が測定され、
(e)投与後、被験体の血漿中に1ng/ml未満の界面活性剤が測定され、
(f)該ナノエマルジョンの局所投与後、該ナノエマルジョンは閉塞され、または半閉塞され、
(g)該ナノエマルジョンの局所投与後、該ナノエマルジョンは閉塞され、または半閉塞され、閉塞または半閉塞は、該局所調製物に対して絆創膏、ポリオレフィンフィルム、布の物品、不透過性のバリア、または半透過性のバリアを重ねることによって行われ、
(h)該ナノエマルジョンは、絆創膏、インサート、シリンジ様アプリケーター、ペッサリー、粉末、タルクもしくは他の固体、溶液、液体、スプレー、エアロゾル、シャンプー、清浄剤(リーブオンおよびウォッシュオフ製品)、軟膏、泡沫、クリーム、ゲル、パスタ、ローション、マイクロカプセル、生体接着ゲル、またはそれらの組み合わせなどの物品、または担体の形態で局所的に投与され、
(i)該ナノエマルジョンは、電気泳動装置を用いて局所的に投与され、
(j)該ナノエマルジョンは、徐放製剤、持効性製剤、即効製剤、もしくはそれらのいずれかの組み合わせであり、または
(k)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項27】
(a)処置後、病変の治癒までの平均時間が、対照に比べて減少し、
(b)処置後、病変の治癒までの平均時間が、対照に比べて少なくとも1日(24時間の期間)減少し、
(c)処置後、中断病変の発生率が、対照に比べて増大し、
(d)処置開始3日後、被験体は病変の完全な治癒を有し、
(e)処置後、該被験体はウイルスの排出を示さず、もしくは排出の低減を有し、または
(f)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記有効性が、
(a)ヘルペスウイルス感染に付随する病変を治療するために用いられる経口投与される薬物に等しく、もしくはそれより優れており、
(b)ヘルペスウイルス感染に付随する病変を治療するために製品ラベルにおいて求められる通りに用いられる経口投与される薬物に等しく、もしくはそれより優れており、
(c)ヘルペスウイルス感染に付随する病変を治療するために用いられる局所的に投与されるいかなる市販の薬物より優れており、
(d)ヘルペスウイルス感染に付随する病変を治療するために製品ラベルにおいて求められる通りに用いられる局所的に投与されるいかなる市販の薬物より優れており、または
(e)それらのいずれかの組み合わせである、
請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2011−518184(P2011−518184A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505231(P2011−505231)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/040970
【国際公開番号】WO2009/129470
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507337072)ナノバイオ コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】