説明

ベルトコンベア装置

【課題】大掛かりな設備を要することなく、ベルトコンベアを用いた掘削ずりの搬送の利点を活かしながら、ずり出し作業にかかる時間を短縮することができるベルトコンベア装置を提供する。
【解決手段】切羽の発破作業によって生じた掘削ずりを、ベルトコンベア装置Mを用いて搬送する。ベルトコンベア装置Mは、前後方向に伸縮可能なベルトコンベア部1を備えている。ベルトコンベア部1は、第1ベルトコンベア10A〜第3ベルトコンベア10Cの3つのベルトコンベアを備えている。このうち、上端に配置された第3ベルトコンベア10Cおよび第2ベルトコンベア10Bがベース台車3よりも前方に送り出されることによって、ベルトコンベア部1が伸長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルとコンベア装置に係り、特に、トンネル内に配置され、トンネルの掘削によって生じた土砂を搬送するベルトコンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルにおいて切羽を掘削する際には、たとえば切羽に対して発破を行う方法が採られている。発破によって生じた掘削ずりを坑外に運搬する方法としては、たとえばホイルローダでダンプトラックに積み込み、ダンプトラックによってトンネルの坑外まで搬送するいわゆるタイヤ工法が知られている。その一方で、近年、トンネル内に設けられたベルトコンベアによって掘削ずりを搬送して排出する運搬方式も用いられている。
【0003】
ベルトコンベアを用いた運搬方式では、掘削によって生じた掘削ずりを破砕するクラッシャーをトンネル内に配置しておき、掘削ずりをホイルローダでクラッシャーまで搬送した後にクラッシャーで破砕する。続いて、クラッシャーで小径に破砕した掘削ずりをベルトコンベアに移載し、ベルトコンベアによって坑口まで運搬している。
【0004】
ベルトコンベアを用いた運搬方式として、従来、ベルトコンベアの先端部を起伏可能とし、発破作業を行う際のクラッシャーの退避領域を確保する移動式ベルトコンベアが開示されている(たとえば、特許文献1参照)。あるいは、トンネル坑内の長手方向に沿って配置されたガイドレールに吊り下げ支持され、ずり出し作業に伴うクラッシャーの移動に追随して移動する可動コンベア装置を備え、切羽進行に応じてガイドレールを延伸させるベルトコンベアシステムが開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−20680号公報
【特許文献2】特開2002−303099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のベルトコンベアを用いた運搬方式では、切羽の発破作業を行う際、クラッシャーやベルトコンベアの損傷を防止するため、クラッシャーやベルトコンベアを切羽からおよそ70〜100m程度退避させている。ここで、上記特許文献1に開示された移動式ベルトコンベアでは、発破作業が終了した後にずり出し作業を行う際に、切羽側にクラッシャーを切羽側に移動させる。ところが、起伏可能とされたベルトコンベアの長さはクラッシャーの長さ程度とされていることから、クラッシャーを切羽側に移動させる距離を大きくとることができない。このため、ずり出し作業を行う際におけるホイルローダの走行距離が長くなり、ずり出し作業を行う際のサイクルタイムが長くなってしまい、工期が長くなってしまうという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に開示されたベルトコンベアシステムでは、トンネルの掘削を行う際にガイドレールを設置する必要がある。このため、やはり工期が長くなってしまうという問題を避けることができなかった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、ベルトコンベアを用いた掘削ずりの搬送の利点を活かしながら、ずり出し作業にかかる時間を短縮し、工期の短縮に寄与することができるベルトコンベア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明に係るベルトコンベア装置は、トンネル内に配置され、トンネルの掘削によって生じた掘削ずりを搬送するベルトコンベア装置であって、複数のベルトコンベアが重ねられたベルトコンベア部を備え、ベルトコンベア部がベース部に搭載されており、ベルトコンベア部は、複数のベルトコンベアがベース部から送り出されることによって伸長状態となるように伸縮可能とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るベルトコンベア装置において、発破作業を行う際には、ベルトコンベア部を収縮することにより、ベルトコンベア装置の損傷を防止することができる。その一方で、ずり出し作業を行う際には、ベルトコンベア部を伸長させることにより、切羽からベルトコンベアまでの距離を短縮することができる。このため、ずり出し作業を行う際における切羽とクラッシャーとの間を短くすることができる。その結果、切羽から掘削ずりをクラッシャーまで搬送するホイルローダ等の走行距離を短くすることができる。したがって、ベルトコンベアを用いた掘削ずりの搬送の利点を活かしながら、ずり出し作業にかかる時間を短縮し、工期の短縮に寄与することができる。
【0011】
ここで、複数のベルトコンベアのうちの上下に位置するベルトコンベアの間にスライダが介在されている態様とすることができる。
【0012】
このように、複数のベルトコンベアのうちの上下に位置するベルトコンベアの間にスライダが介在されていることにより、ベルトコンベア部の伸縮を円滑に行うことができる。
【0013】
また、ベルトコンベアの先端に車輪が取り付けられており、ベース部におけるベルトコンベアの送り出し方向に車輪の走行を案内するレールが敷設されている態様とすることができる。
【0014】
このように、ベース部におけるベルトコンベアの送り出し方向に車輪の走行を案内するレールが敷設されていることにより、ベルトコンベア部を伸長させる際のベルトコンベアの移動を安定させることができる。
【0015】
さらに、複数のベルトコンベアのうちの最上段に配置された最上段ベルトコンベアに接続されるワイヤを備えるウインチを有しており、ウインチにおけるワイヤを巻き出すことにより、ベルトコンベアが送り出され、ワイヤを巻き取ることによってベルトコンベアが収容される態様とすることができる。
【0016】
このように、ウインチによって最上段コンベアの送り出しおよび収容を行うことにより、ベルトコンベア部の伸縮を容易に行うことができる。
【0017】
また、ベルトコンベア部をベース部材に対して鉛直軸周りに揺動させる揺動構造を備える態様とすることができる。
【0018】
このように、ベルトコンベア部をベース部材に対して鉛直軸周りに揺動させる揺動構造を備えることにより、ベルトコンベア装置をトンネルの端部に設置した場合にも、ベルトコンベアの先端をトンネルの中央位置に配置させやすくすることができる。また、トンネルがカーブしている場合においても、ベルトコンベア部を適切な方向に伸長させ易くすることができる。
【0019】
さらに、ベース部材が、自走手段を備えるベース台車である態様とすることができる。
【0020】
このように、ベース部材が、自走手段を備えるベース台車であることにより、トンネルの掘削が進行してベルトコンベア装置を前進させる必要がある場合に、ベルトコンベア装置を容易に前進させることができる。
【0021】
そして、ベルトコンベアの先端部に、上段に配置されたベルトコンベアの逸脱を防止する逸脱防止ガイドが設けられている態様とすることができる。
【0022】
このように、ベルトコンベアの先端部に、上段に配置されたベルトコンベアの逸脱を防止する逸脱防止ガイドが設けられていることにより、ベルトコンベアを送り出す際の逸脱を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るベルトコンベア装置によれば、ベルトコンベアを用いた掘削ずりの搬送の利点を活かしながら、ずり出し作業にかかる時間を短縮し、工期の短縮に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係るベルトコンベア装置が配置されたトンネルの側断面図、(b)は、その平面図である。
【図2】ベルトコンベア装置の側面図である。
【図3】ベルトコンベア装置の平面図である。
【図4】ベルトコンベア部の前方拡大側面図である。
【図5】ベルトコンベア部の後方拡大側面図である。
【図6】ベルトコンベア部の斜視図である。
【図7】ベルトコンベア部の旋回態様を示す平面図である。
【図8】ベルトコンベア部を伸長させたベルトコンベア装置の側面図である。
【図9】(a)は、ベルトコンベア部を伸長させる工程を示す側面図、(b)は、(a)に続く工程を示す側面図である。
【図10】(a)は、図9(b)に続く工程を示す側面図、(b)は、(a)に続く工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0026】
図1(a)は、本発明の実施形態に係るベルトコンベア装置が配置されたトンネルの側断面図、(b)は、その平面図である。図1に示すように、トンネルT内には、本実施形態に係るベルトコンベア装置Mが配置されている。ベルトコンベア装置Mにおける切羽K側の近傍には、クラッシャーCが配置されている。クラッシャーCは、切羽Kにおける発破作業によって生じた掘削ずりを破砕し、破砕した掘削ずりをベルトコンベア装置Mに排出する。
【0027】
また、ベルトコンベア装置MおよびクラッシャーCは、図1(b)に示すように、トンネルTにおける側端部に配置されている。図1には、切羽Kにおいて発破作業が行われる際の位置にベルトコンベア装置MおよびクラッシャーCが配置されている。このとき、クラッシャーCは、切羽Kからおよそ70m離れた位置に配置されている。発破作業によって生じた掘削ずりは、図1(b)に示す掘削機器Sによって掻き出され、ホイルローダHによってクラッシャーCまで搬送される。
【0028】
ベルトコンベア装置Mの坑口側には、搬送用ベルトコンベアBが配設されている。搬送用ベルトコンベアBの端部は、ベルトコンベア装置Mの坑口側端部に配置されており、ベルトコンベア装置Mによって搬送された掘削ずりを坑口まで搬送する。図1(b)に示すように、搬送用ベルトコンベアBも、トンネルTにおける側端部に配置されている。
【0029】
次に、本実施形態に係るベルトコンベア装置Mについて説明する。図2は、ベルトコンベア装置の側面図、図3は、ベルトコンベア装置の平面図である。図2および図3に示すように、ベルトコンベア装置Mは、ベルトコンベア部1を備えている。ベルトコンベア部1は、ベース台車3に搭載されている。また、ベース台車3には、ウインチ取付架台4が搭載されている。さらに、ベース台車3における切羽側には、走行レール部材5が敷設されている。
【0030】
ベルトコンベア部1は、複数のベルトコンベアとして、第1ベルトコンベア10A、第2ベルトコンベア10B、および第3ベルトコンベア10Cを備えている。第1ベルトコンベア10Aは、ベース台車3に搭載されている。また、第2ベルトコンベア10Bは、第1ベルトコンベア10Aの上に配置されており、第3ベルトコンベア10Cは、第2ベルトコンベア10Bの上に配置されている。
【0031】
第1ベルトコンベア10Aは、ベース台車3に前後方向に固定となるように取り付けられている。また、第2ベルトコンベア10Bは、第1ベルトコンベア10Aに対して、前後方向に移動可能とされており、第3ベルトコンベア10Cは、第2ベルトコンベア10Bに対して前後方向に移動可能とされている。このため、第2ベルトコンベア10Bは、ベース台車3に対しても前後方向に移動可能とされており、第3ベルトコンベア10Cは、ベース台車3および第1ベルトコンベア10Aに対しても前後方向に移動可能とされている。
【0032】
また、第2ベルトコンベア10Bの先端部下面側には、第2走行車輪11Bが取り付けられている。同様に、第3ベルトコンベア10Cの先端部下面側には、第3走行車輪11Cが取り付けられている。第2走行車輪11Bおよび第3走行車輪11Cは、走行レール部材5上を走行可能とされている。
【0033】
さらに、第1ベルトコンベア10A〜第3ベルトコンベア10Cのそれぞれの先端部上面側には、コンベア受車輪12A〜12Cが取り付けられている。さらに、図4に示すように、第2ベルトコンベア10Bおよび第3ベルトコンベア10Cの下側面には、第2送出レール13Bおよび第3送出レール13Cが取り付けられている。
【0034】
第2ベルトコンベア10Bは、第1コンベア受車輪12Aが第2送出レール13Bに沿って回転することにより、第1ベルトコンベア10Aから送り出される。同様に、第3ベルトコンベア10Cは、第2コンベア受車輪12Bが第3送出レール13Cに沿って回転することにより、第2ベルトコンベア10Bから送り出される。これらの第1コンベア受車輪12Aと第2送出レール13Bおよび第2コンベア受車輪12Bおよび第3送出レール13Cがそれぞれ本発明のスライダを構成する。
【0035】
また、第3ベルトコンベア10Cは、図4に示すように、コンベアベルト14C、ベルト駆動ドラム15C、従動ドラム16C、およびキャリアローラ17Cを備えている。同様に、第1ベルトコンベア10Aおよび第2ベルトコンベア10Bも、これらのコンベアベルト、ベルト駆動ドラム、従動ドラム、およびキャリアローラを備えている。
【0036】
さらに、図5に示すように、第3ベルトコンベア10Cは、第3コンベア駆動モータ18Cを備えている。第3コンベア駆動モータ18Cを駆動することにより、ベルト駆動ドラム15Cが回転し、ベルト駆動ドラム15Cの回転によってコンベアベルト14Cが作動する。コンベアベルト14Cの作動により、コンベアベルト14Cに積載された掘削ずりがトンネルの坑口側に搬送される。同様に、第2ベルトコンベア10Bは、第2コンベア駆動モータ18Bを備えており、第1ベルトコンベア10Aは、第1コンベア駆動モータ18Aを備えている。
【0037】
また、第2ベルトコンベア10Bおよび第3ベルトコンベア10Cは、それぞれ第2後方コンベア受車輪19Bおよび第3後方コンベア受車輪19Cを備えている。さらに、第1ベルトコンベア10A〜第3ベルトコンベア10Cは、それぞれ後方コンベア受車輪受ブラケット20A〜20Cを備えている。
【0038】
第3ベルトコンベア10Cを収容する際、第3後方コンベア受車輪19Cが第2後方コンベア受車輪受ブラケット20Bに当接することにより、第2ベルトコンベア10Bに対する第3ベルトコンベア10Cの相対的な坑口側への移動が抑止される。同様に、第2ベルトコンベア10Bを収容する際、第2後方コンベア受車輪19Bが第1後方コンベア受車輪受ブラケット20Aに当接することにより、第1ベルトコンベア10Aに対する第2ベルトコンベア10Bの相対的な坑口側への移動が抑止される。
【0039】
さらに、図2および図4に示すように、第2ベルトコンベア10Bの先端部には、逸脱防止ガイド21が取り付けられている。逸脱防止ガイド21は、第2ベルトコンベア10Bの先端部側方位置において、上方に突出し、その上端が第3ベルトコンベア10Cの高さよりも高い位置まで延在して形成されている。逸脱防止ガイド21は、第3ベルトコンベア10Cを送り出しあるいは収容する際における第2ベルトコンベア10Bからの逸脱を防止している。
【0040】
また、図2および図6に示すように、第3ベルトコンベア10Cの長手方向略中央位置には、ワイヤ受架台22が設けられているワイヤ受架台22は、第3ベルトコンベア10Cの両端部にそれぞれ立設されており、その側面視した形状が略三角形状をなしている。またワイヤ受架台22の上端部には、図6に示すフック23が取り付けられている。
【0041】
ベース台車3は、図2に示すように、台車本体31を備えている。台車本体31には、ベルトコンベア部1の第1ベルトコンベア10Aが前後方向に固定された状態で搭載されている。また、台車本体31には、走行装置となるクローラ32が取り付けられている。クローラ32によって、ベース台車3は、自走可能とされている。
【0042】
さらに、台車本体31には、旋回軸受33が設けられており、この旋回軸受33にベルトコンベア部1が取り付けられている。ベルトコンベア部1には、鉛直方向に延在する図示しない回転軸が備えられ、この回転軸が旋回軸受33に軸支されている。このため、図7に示すように、ベルトコンベア部1は、鉛直方向に延在する旋回軸周りに旋回可能とされている。
【0043】
また、台車本体31における前後左右位置には、アウトリガー34が設けられている。さらに、台車本体31には、ベルトコンベア部1の傾斜角度を調整する角度調整機構35を備えている。角度調整機構は、ベルトコンベア部1における第1ベルトコンベア10Aの後部を鉛直方向に上下動させる機構を備えており、第1ベルトコンベア10Aの後部の高さを調整することによってベルトコンベア部1の傾斜角度を調整する。
【0044】
ウインチ取付架台4は、図2および図6に示すように、ベース台車3における台車本体31に搭載された架台本体41を備えている。架台本体41は、骨組み構造をなしており、その天部にタンデムウインチ42が取り付けられている。さらに、タンデムウインチ42は、タンデム状のウインチドラムを備えており、ウインチドラムからは2本のワイヤ43が巻き出し・巻き取り可能とされている。2本のワイヤ43は、ワイヤ受架台22に設けられたフック23にそれぞれ接続されている。タンデム状のウインチドラムは同期して回転するので、2本のワイヤ43は同じ巻き出し長さで巻き出し・巻き取りが行われる。
【0045】
タンデムウインチ42におけるワイヤ43が巻き取られている状態では、ベルトコンベア部1における第2ベルトコンベア10Bおよび第3ベルトコンベア10Cが収容された状態となっている。この状態からワイヤ43を巻き出すと、第2ベルトコンベア10Bおよび第3ベルトコンベア10Cが自重によって斜め前方に下降しながら送り出される。その後、図8に示すように、第2ベルトコンベア10Bにおける第2走行車輪11Bおよび第3ベルトコンベア10Cにおける第3走行車輪11Cが走行レール部材5に接触するまで、第2ベルトコンベア10Bおよび第3ベルトコンベア10Cが送り出される。
【0046】
走行レール部材5は、図3に示すように、レール収容部材51および走行レール52を備えている。レール収容部材51は、上方が開口し、正面した形状が略凹字形状をなしている。走行レール52は、レール収容部材51における凹部に2本並んで敷設されている。この走行レール52上を第2ベルトコンベア10Bにおける第2走行車輪11Bおよび第3ベルトコンベア10Cにおける第3走行車輪11Cが走行可能とされている。
【0047】
次に、本実施形態に係るベルトコンベア装置Mを用いたトンネルの掘削手順について説明する。トンネルの掘削では、切羽の発破を行う発破作業および発破作業によって生じた掘削ずりを排出するずり出し作業が行われる。発破作業が行われている間、ベルトコンベア装置Mは、トンネルの坑口側に退避し、発破に伴う損傷を防止している。また、ずり出し作業を行う際には、クラッシャーC、ホイルローダH、および掘削機器Sなども坑口側に退避させておく。
【0048】
発破作業が済むと、ずり出し作業に移行する。ずり出し作業を行う際には、図1(b)に示すように、掘削機器Sを切羽Kの近傍まで移動させるとともに、ホイルローダHおよびクラッシャーCを切羽K側に移動させる。また、本実施形態では、ベルトコンベア装置Mにおけるベルトコンベア部1を伸長させる。以下、ベルトコンベア部1を伸長させる手順について説明する。
【0049】
ベルトコンベア部1を伸長させるにあたり、まず、図9(a)に示すように、ベース台車3におけるアウトリガー34を設置し、ベルトコンベア装置Mを安定化させる。また、ベルトコンベア部1の切羽K側に、走行レール部材5を敷設する。このとき、クラッシャーCは、前方または側方に移動させておく。
【0050】
次に、タンデムウインチ42からワイヤ43を巻き出す。ワイヤ43を巻き出すと、第2ベルトコンベア10Bおよび第3ベルトコンベア10Cが自重によって移動し始めて斜め前方に送り出される。その後、図9(b)に示すように、第2ベルトコンベア10Bにおける第2走行車輪11Bが走行レール部材5に当接すると、第2ベルトコンベア10Bが停止し、第2ベルトコンベア10Bの送り出しが一旦停止する。
【0051】
その後、さらにタンデムウインチ42からワイヤ43を巻き出すと、第3ベルトコンベア10Cが自重によって斜めに送り出される。その後、図10(a)に示すように、第3ベルトコンベア10Cにおける第3走行車輪11Cが走行レール部材5に当接するまで、第3ベルトコンベア10Cが斜め前方に移動する。このとき、第2ベルトコンベア10Bの先端部には、逸脱防止ガイド21が設けられている。このため、第3ベルトコンベア10Cを送り出す際の第3ベルトコンベア10Cの逸脱を防止することができる。
【0052】
第3走行車輪11Cが走行レール部材5に当接した後、第3ベルトコンベア10Cの先端部に、コンベア送り出し装置を接続する。ここで用いられる送り出し装置としては、重機など、ある程度の重さの部材を引張する機器であれば何を用いてもよく、たとえば、近傍にホイルローダや他の作業で利用しているダンプトラックなどがあれば、それらの機器を適宜利用することができる。
【0053】
この送り出し装置によって第3ベルトコンベア10Cの先端部を切羽K方向に牽引しながら、ワイヤ43をタンデムウインチ42から巻き出す。この操作によって、図10(b)に示すように、第3ベルトコンベア10Cおよび第2ベルトコンベア10Bが前方に送り出される。その後、ベルトコンベア装置Mの切羽K側近傍に図1に示すクラッシャーCが配置される。
【0054】
このように、本実施形態に係るベルトコンベア装置Mでは、第2ベルトコンベア10Bおよび第3ベルトコンベア10Cを送り出すことにより、ベルトコンベア部1を伸長させている。このため、ずり出し作業を行う際における切羽KとクラッシャーCとの間を短くすることができる。その結果、切羽KからクラッシャーCまでホイルローダHで掘削ずりを搬送する際に、ホイルローダHの走行距離を短くすることができる。したがって、ベルトコンベアを用いた掘削ずりの搬送の利点を活かしながら、ずり出し作業にかかる時間を短縮し、工期の短縮に寄与することができる。
【0055】
また、第1ベルトコンベア10Aと第2ベルトコンベアとの間、および第2ベルトコンベア10Bと第3ベルトコンベア10Cとの間には、スライダとなる第1コンベア受車輪12Aと第2送出レール13Bおよび第2コンベア受車輪12Bおよび第3送出レール13Cが設けられている。このため、ベルトコンベア部1を伸長させる際における第2ベルトコンベア10Bおよび第3ベルトコンベア10Cが円滑に移動するので、ベルトコンベア部1の伸長を円滑に行うことができる。
【0056】
さらに、第2ベルトコンベア10Bおよび第3ベルトコンベア10Cの先端部には、それぞれ第2走行車輪11Bおよび第3走行車輪11Cが取り付けられている。また、第2走行車輪11Bおよび第3走行車輪11Cは、ベルトコンベア部1の切羽K側に敷設された走行レール部材5における走行レール52上を走行可能とされている。このため、ベルトコンベア部1を伸長させる際に、第2ベルトコンベア10Bおよび第3ベルトコンベア10Cを安定して移動させることができる。
【0057】
また、タンデムウインチ42からワイヤ43を巻き出すことによってベルトコンベア部1を伸長させている。このため、ベルトコンベア部1を伸長させる作業を簡易に行うことができる。さらに、ウインチとしてタンデムウインチ42を用いており、2本のワイヤ43によって第3ベルトコンベア10Cの両端部を支持しながらベルトコンベア部1を伸長させている。このため、安定した状態でベルトコンベア部1の伸長作業を行うことができる。
【0058】
さらに、ベルトコンベア部1は、旋回軸受33によって軸支される鉛直方向に延在する旋回軸周りに旋回可能とされている。このため、ベルトコンベア装置MはトンネルTの即部に配置されているものの、ベルトコンベア部1を旋回軸周りに旋回させることによって、第3ベルトコンベア10Cの先端部をトンネルの幅方向略中央部にまで移動させることができる。したがって、ずり出し作業をさらに効率よく行うことができる。
【0059】
また、ベース台車3には、ベース台車3が自走可能となるクローラ32が設けられている。このため、トンネルTの掘削が進行してベルトコンベア装置Mを前進させる必要がある場合に、ベルトコンベア装置Mを容易に前進させることができる。
【0060】
また、ずり出し作業が済んだ後は、再び発破作業に移行する。発破作業に移行する際には、ベルトコンベア装置Mにおけるベルトコンベア部1を収容する。ベルトコンベア部1を収容する手順は、ベルトコンベア部1を送り出す手順と逆の手順を辿るものとなる。以下、順に説明する。
【0061】
ずり出し作業が終了すると、図10(b)に示すように、ベルトコンベア部1は伸長状態とされている。この状態から、タンデムウインチ42によってワイヤ43を巻き取ることにより、第3ベルトコンベア10Cが第2ベルトコンベア10B上に徐々に収容されていく。
【0062】
さらに、タンデムウインチ42によってワイヤ43を巻き取ると、第3ベルトコンベア10Cの第3後方コンベア受車輪19Cが第2ベルトコンベア10Bの第2後方コンベア受車輪受ブラケット20Bに当接する。この状態で、さらにタンデムウインチ42によってワイヤ43を巻き取っていくと、第3ベルトコンベア10Cとともの第2ベルトコンベア10Bが移動を開始し、第1ベルトコンベア10A上に徐々に収容されていく。
【0063】
そして、そのままタンデムウインチ42によってワイヤ43を巻き取り続けると、第2ベルトコンベア10Bの第2後方コンベア受車輪19Bが第1ベルトコンベア10Aの第1後方コンベア受車輪受ブラケット20Aに当接する。こうして、第3ベルトコンベア10Cおよび第2ベルトコンベア10Bが第1ベルトコンベア10Aに収容されて、ベルトコンベア部1が収縮する。
【0064】
ベルトコンベア装置Mにおけるベルトコンベア部1が収縮すると、クラッシャーCやホイルローダHなどの機器を切羽Kから離れた位置、たとえば切羽Kから70〜100m程度坑口側にむけて離れた位置に退避させる。その後、切羽Kに対する発破作業を行って、図9(a)に示す工程に進む。この工程を繰り返すことによって、トンネルTの掘進を行う。
【0065】
このように、本実施形態に係るベルトコンベア装置Mを用いてトンネルTの掘進を行うことにより、サイクルタイムの短縮を図ることができる。たとえば、本実施形態に係るベルトコンベア装置Mを用いない場合には、ずり出し作業を行う際に、クラッシャーCを切羽から70〜100m程度坑口側にむけて離れた位置に配置する必要があるが、本実施形態では、30m程度とすることができる。このため、掘削ずりを搬送するホイルローダHの走行距離を短くすることができるので、その分サイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、ベルトコンベア部1に3台のベルトコンベア10A〜10Cを搭載しているが、2台あるいは4台以上のベルトコンベアを搭載する態様とすることもできる。また、第1ベルトコンベア10Aをベース台車3に対して前後方向に移動可能となる態様とすることもできる。
【0067】
さらに、上記実施形態では、ベース台車が走行装置を備えていない態様とすることもできるし、ベース台車に対してベルトコンベア部が旋回不能とされている態様とすることもできる。また、上記実施形態では、ベルトコンベア部1の伸縮にウインチを用いているが、その他の態様、たとえば油圧シリンダなどのシリンダ装置を用いる態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0068】
1…ベルトコンベア部
3…ベース台車
4…ウインチ取付架台
5…走行レール部材
10A〜10C…ベルトコンベア
11B,11C…走行車輪
12A,12B…コンベア受車輪
13B,13C…第3送出レール
14C…コンベアベルト
15C…ベルト駆動ドラム
16C…従動ドラム
17C…キャリアローラ
18A〜18C…コンベア駆動モータ
19B,19C…後方コンベア受車輪
20A,20B…後方コンベア受車輪受ブラケット
21…逸脱防止ガイド
22…ワイヤ受架台
23…フック
31…台車本体
32…クローラ
33…旋回軸受
34…アウトリガー
35…角度調整機構
41…架台本体
42…タンデムウインチ
43…ワイヤ
51…レール収容部材
52…走行レール
B…搬送用ベルトコンベア
C…クラッシャー
H…ホイルローダ
K…切羽
M…ベルトコンベア装置
S…掘削機器
T…トンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に配置され、トンネルの掘削によって生じた掘削ずりを搬送するベルトコンベア装置であって、
複数のベルトコンベアが重ねられたベルトコンベア部を備え、
前記ベルトコンベア部がベース部に搭載されており、
前記ベルトコンベア部は、前記複数のベルトコンベアが前記ベース部から送り出されることによって伸長状態となるように伸縮可能とされていることを特徴とするベルトコンベア装置。
【請求項2】
前記複数のベルトコンベアのうちの上下に位置するベルトコンベアの間にスライダが介在されている請求項1に記載のベルトコンベア装置。
【請求項3】
前記ベルトコンベアの先端に車輪が取り付けられており、
前記ベース部における前記ベルトコンベアの送り出し方向に前記車輪の走行を案内するレールが敷設されている請求項1または請求項2に記載のベルトコンベア装置。
【請求項4】
前記複数のベルトコンベアのうちの最上段に配置された最上段ベルトコンベアに接続されるワイヤを備えるウインチを有しており、
前記ウインチにおけるワイヤを巻き出すことにより、前記ベルトコンベアが送り出され、前記ワイヤを巻き取ることによって前記ベルトコンベアが収容される請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のベルトコンベア装置。
【請求項5】
前記ベルトコンベア部を前記ベース部材に対して鉛直軸周りに揺動させる揺動構造を備える請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載のベルトコンベア装置。
【請求項6】
前記ベース部材が、自走手段を備えるベース台車である請求項1〜請求項5のうちのいずれか1項に記載のベルトコンベア装置。
【請求項7】
前記ベルトコンベアの先端部に、上段に配置されたベルトコンベアの逸脱を防止する逸脱防止ガイドが設けられている請求項1〜請求項6のうちのいずれか1項に記載のベルトコンベア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−163051(P2011−163051A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29268(P2010−29268)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】