説明

ベルトコンベア

【課題】リターン側ベルトからの付着粉体の落下がなく、しかも反転部分で大きなスペースが必要となることもないベルトコンベアを提供する。
【解決手段】回転軸が垂直方向に配設されたドライブプーリ3とテールプーリ4との間に、ベルト幅方向の内側部をこれらのプーリ3,4との接触部とし、ベルト幅方向の残部を搬送部26としたコンベアベルト2を張設する。コンベアベルト2の搬送部には、下方から支えるキャリアローラ20と、進行方向に対して水平方向からコンベアベルトの蛇行を防止するサイドローラ21と、端部を上方から押える押えローラ22とが配置され、コンベアベルト2の搬送部26をU字型に曲げたり、L字型に開いたりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リターンベルトからの付着物の落下を発生させない新規なベルトコンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転軸を水平に併設したドライブプーリとテールプーリにて、無限軌道状のコンベアベルトを回転させ、粉体を搬送するベルトコンベアは公知である。しかし、搬送面が下側を向くリターン側ベルトからの付着粉体の落下、および、ベルトコンベア下側への付着粉体の堆積が避けられない為、定期的な清掃が必要であった。
【0003】
この問題を解決するために、搬送側ベルトおよびリターン側ベルトの断面形状を丸め、パイプ状としたパイプコンベアがある。しかし特許文献1に示されるように、このパイプコンベアにおいても、ドライブプーリ、テールプーリ付近のベルトについては、形状を平状からパイプ状へ変形させるための長さが必要となり、その部分からの付着物の落下を防止できなかった。
【0004】
また特許文献2の図1に示されるように、搬送面が常に上向きとなるように、水平面内で円弧を描いて反転させる構造のコンベヤも提案されている。しかしこれは曲面搬送路に対応させるための構造であり、直線移送用のコンベヤとして用いる場合には、反転部分でコンベヤの基本断面形状を維持することができないうえ、反転部分で大きなスペースが必要となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−21621号公報
【特許文献2】特開2004−75377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、リターン側ベルトからの付着粉体の落下がなく、しかも反転部分で大きなスペースが必要となることもないベルトコンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、粉状の搬送物を運搬するために用いるベルトコンベアであって、
回転軸が垂直方向に配設され、コンベアベルトを駆動させるドライブプーリと、
回転軸が垂直方向に配設され、前記ドライブプーリと共に前記コンベアベルトに張力を与えるテールプーリと、
ベルト幅方向の内側部を前記ドライブプーリおよび前記テールプーリとの接触部とし、ベルト幅方向の残部を搬送部としたコンベアベルトと、
前記コンベアベルトの前記搬送部を下方から支えるキャリアローラと、
前記コンベアベルトの前記搬送部を前記コンベアベルトの進行方向に対して水平方向からコンベアベルトの蛇行を防止するサイドローラと、
前記コンベアベルトの前記搬送部の端部を上方から押える押えローラと、
搬入部から搬入した前記コンベアベルトの前記搬送部にある搬送物を搬出部から掻き出すスクレーパと
を具備することを特徴とするものである。
【0008】
なお、前記テールプーリを複数とすることができる。また、ドライブプーリおよび前記テールプーリは、クラウンプーリであり、最大寸法部の位置がプーリの中央より上部にあることがこのましい。また、前記スクレーパは、上下へ移動できる昇降手段を備えていることが好ましく、さらにコンベアベルトは、前記ドライブプーリおよび前記テールプーリと接触する接触部に芯体を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リターン側においてもコンベアベルトが下向きとなることがないので、リターン側ベルトから付着物の落下を全く発生させないベルトコンベアを提供することができ、コンベアベルトへの付着物を除去するためのベルトクリーナの設置、点検保守を不要にできる。また本ベルトコンベアは、リターン側ベルトも搬送に使用する事ができるため、複数個のテールプーリ、及び荷卸スクレーパを用いる事により、搬送エリアを二次元的に拡張することもできる。さらに本ベルトコンベヤは、反転部分に大きなスペースを要しない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】搬送部のベルトを開いた付着物の落下を発生させないベルトコンベアの平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図2のA−A断面図(搬入部)である。
【図4】図2のB−B断面図(搬出部)である。
【図5】搬送部のベルトを閉じた付着物の落下を発生させないベルトコンベアの平面図である。
【図6】図5の正面図である。
【図7】図6のC−C断面図(搬入部)である。
【図8】図6のD−D断面図(中間部)である。
【図9】図6のE−E断面図(搬出部)である。
【図10】リターン側ベルトで搬送するベルトコンベアの平面図である。
【図11】図10の正面図である。
【図12】図11のF−F断面図(搬入部)である。
【図13】図11のG−G断面図(搬出部)である。
【図14】搬送エリアを二次元的に拡張したベルトコンベアの平面図である。
【図15】図14のH−H断面図(搬出部1)である。
【図16】図14のI−I断面図(搬出部2)である。
【図17】幅方向に対して、芯体をドライブプーリ、テールプーリと接する部分の長さのみとしたコンベアベルトの断面図である。
【図18】クラウンの最大寸法部を中央に配置したプーリと、コンベアベルトの取り合い関係図である。
【図19】クラウンの最大寸法部を上部に配置したプーリと、コンベアベルトの取り合い関係図である。
【図20】テイクアップ部の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の様々な実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1〜図4に、付着物の落下を全く発生させないベルトコンベア11を示す。
2は上面を搬送面1とし、粉状の搬送物5を運搬するために用いられる幅広、無限軌道状のコンベヤベルトであり、3はコンベアベルト2を一定方向に駆動させるドライブプーリ、4はドライブプーリ3と共にコンベアベルト2に張力を与えるテールプーリである。これらのドライブプーリ3とテールプーリ4は何れも、回転軸が垂直方向になるようにベースプレート32上に配設されたものであり、コンベアベルト2は水平方向に反転する構造である。
【0012】
コンベアベルト2はゴムなどの弾性材料からなり、そのベルト幅方向の内側を前記ドライブプーリ3および前記テールプーリ4との接触部とし、ベルト幅方向の残部を搬送部26としたものである。接触部は常に垂直状態にあるが、搬送部26は図3、図4に示されるように、U字型に曲げたり、L字型に開いたりすることができる。5は粉状の搬送物であり、投入部6にてシュート8を介してコンベアベルト2の搬送部26に投入され、搬出部7にて固定したスクレーパ10によりコンベアベルト2から搬出される。
【0013】
更に詳細に説明すると、ドライブプーリ3とテールプーリ4とはそれぞれ軸受28により保持されている。ドライブプーリ3は、チェインホイール16、17、ローラチェイン18を介し、減速モータ19で回転される。コンベアベルト2をU字型に折り曲げたり、L字型に開いたりする断面形状の変更は、キャリアローラ20、サイドローラ21、押えローラ22で行う。
【0014】
キャリアローラ20は、コンベアベルト2の搬送部26を下方から支えるローラである。サイドローラ21は、コンベアベルト2の搬送部26をコンベアベルト2の進行方向に対して水平方向からコンベアベルト2の蛇行を防止するローラである。押えローラ22は、コンベアベルト2の端部29を上方から押えるローラである。これらの各ローラの配置や角度を変えることにより、コンベアベルト2をU字型に折り曲げたりL字型に開いたりすることができる。
【0015】
すなわち、投入部6では図3に示すようにキャリアローラ20にてコンベアベルト2の搬送部26を持ち上げ、投入した搬送物5をこぼれにくくしている。また搬出部7では、図4に示すように、キャリアローラ20にてコンベアベルト2の搬送部26を水平にして、搬送物5を排出しやすくしている。なお、サイドローラ21と押えローラ22はコンベアベルト2の接触部を垂直状態に維持するためにも配置されている。
【0016】
このように構成された本発明のベルトコンベヤ11は、投入部6と搬出部7との間では搬送部26をL字型に開いて搬送物5を搬送し、リターン側12ではU字型に折り曲げてリターンさせる。このように搬送面1はリターン側12でも上向き状態を維持するので、付着物の落下を全く発生させることがない。このため、コンベアベルト2への付着物を除去するためのベルトクリーナの設置及び点検保守を不要にできる利点がある。
【0017】
(第2の実施形態)
図5〜図9に、ベルトを閉じた第2の実施形態を示す。このベルトコンベア11も基本的な構成は前記した第1の実施形態と同様であるが、投入部6と搬出部7との中間部25を図8に示すように上端を内向きに傾斜させた押えローラ22でU字型に押さえ込むことにより搬送物5を包み込み、通常搬送できない急傾斜の搬送にも使用する事が可能となる。その他の構成は第1の実施形態と同様であるから、対応する部材に同一の番号を付して説明を繰り返すことを省略する。
【0018】
(第3の実施形態)
図10〜13に、第3の実施形態を示す。この第3の実施形態では、ベルトコンベア11のリターン側12をL字型に開いて上向きにし、リターン側12も搬送に使用できるようにしたものである。その他の構成は第1の実施形態と同様であるから、対応する部材に同一の番号を付して説明を繰り返すことを省略する。
【0019】
(第4の実施形態)
図14〜16に、第4の実施形態を示す。この第4の実施形態では、テールプーリ4を複数個、用いる事により、1本のベルトコンベア11の搬送エリアを二次元的に拡張したものである。また、固定スクレーパ10の上流にシリンダ23で昇降する可動スクレーパ24を設ける事により、搬出部7を複数個所に設ける事が出来る。
【0020】
(テイクアップ部)
なお何れの実施形態においても、少なくとも1箇所のテールプーリ4に対し、コンベアベルト2の張り調整を行うためのテイクアップ部30を有する。図20にテイクアップ部30の詳細図を示す。図20に示すように、テールプーリ4を保持する軸受28及び、キャリアローラ20、押えローラ22等を載せたスライドベース31をメインフレーム32上に締結ボルト33で締結する。
【0021】
スライドベース31側には、雌ねじを有したブラケット34を取付け、メインフレーム32側には、通し穴を有したブラケット35を取付け、テイクアップ用の引きボルト36及び、ロックナット37を組み付ける事により、スライドベース31の位置を調整する。すなわち、締結ボルト33を緩めた状態で、テイクアップ用の引きボルト36を回転させる事により、スライドベース31ごと、テールプーリ4を保持する軸受28及び、キャリアローラ20、押えローラ22等を引き方向(図20にて、左方向)に移動するため、コンベアベルト2の張り調整を行う事ができる。
【0022】
(コンベアベルト)
図17に、幅方向に対し、芯体13をドライブプーリ3、テールプーリ4と接する部分の長さのみとしたコンベアベルト2の断面図を示す。コンベアベルト2をU字型に折り曲げたり、L字型に開いたり、断面形状を大きく変更する必要があるため、幅方向に対し、芯体13をドライブプーリ3、テールプーリ4と接する部分の長さのみとしたコンベアベルト2を使用して、コンベアベルト2の粉体搬送部26の伸縮性を大きくしている。
【0023】
(プーリとコンベアベルトの関係)
図18、19に、ドライブプーリ3、テールプーリ4のクラウン14と、コンベアベルト2の取り合い関係図を示す。コンベアベルト2の重力、芯体13が無い折り曲げ部分のベルト張力を考慮し、ベルトの蛇行を発生させない様、バランスを取った位置に、ドライブプーリ3とテールプーリ4に施すクラウン14の最大寸法部15を配置する。
【0024】
図18に示す、クラウン14の最大寸法部15をドライブプーリ3とテールプーリ4の中央に配置した場合、コンベアベルト2を上方向に引っ張り上げる力を発生する勾配を有した接触面27を大きく取れないため、コンベアベルト2の重力、芯体13が無い折り曲げ部分のベルト張力により、コンベアベルト2は下方向に移動してしまう。
【0025】
図19に示す、クラウン14の最大寸法部15をドライブプーリ3とテールプーリ4の上部に配置した場合、コンベアベルト2を上方向に引っ張り上げる力を発生する勾配を有した接触面27を充分に取れるため、コンベアベルト2の重力、芯体13が無い折り曲げ部分のベルト張力により、コンベアベルト2が下方向に移動してしまう事は無い。
【符号の説明】
【0026】
1 搬送面
2 コンベアベルト
3 ドライブプーリ
4 テールプーリ
5 搬送物
6 投入部
7 搬出部
8 シュート
10 スクレーパ
11 ベルトコンベア
12 リターン側
13 芯体
14 クラウン
15 最大寸法部
16 チェインホイール
17 チェインホイール
18 ローラチェイン
19 減速モータ
20 キャリアローラ
21 サイドローラ
22 押えローラ
23 シリンダ
24 可動スクレーパ
25 中間部
26 搬送部
27 接触面
28 軸受
29 端部
30 テイクアップ部
31 スライドベース
32 メインフレーム
33 締結ボルト
34 雌ねじを有したブラケット
35 通し穴を有したブラケット
36 引きボルト
37 ロックナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状の搬送物を運搬するために用いるベルトコンベアであって、
回転軸が垂直方向に配設され、コンベアベルトを駆動させるドライブプーリと、
回転軸が垂直方向に配設され、前記ドライブプーリと共に前記コンベアベルトに張力を与えるテールプーリと、
ベルト幅方向の内側部を前記ドライブプーリおよび前記テールプーリとの接触部とし、ベルト幅方向の残部を搬送部としたコンベアベルトと、
前記コンベアベルトの前記搬送部を下方から支えるキャリアローラと、
前記コンベアベルトの前記搬送部を前記コンベアベルトの進行方向に対して水平方向からコンベアベルトの蛇行を防止するサイドローラと、
前記コンベアベルトの前記搬送部の端部を上方から押える押えローラと、
搬入部から搬入した前記コンベアベルトの前記搬送部にある搬送物を搬出部から掻き出すスクレーパと
を具備することを特徴とするベルトコンベア。
【請求項2】
前記テールプーリが複数であることを特徴とする請求項1記載のベルトコンベア。
【請求項3】
前記ドライブプーリおよび前記テールプーリはクラウンプーリであり、最大寸法部の位置がプーリの中央より上部にあることを特徴とする請求項1または2記載のベルトコンベア。
【請求項4】
前記スクレーパは、上下へ移動できる昇降手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のベルトコンベア。
【請求項5】
前記コンベアベルトは、ドライブプーリおよび前記テールプーリと接触する接触部に芯体を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のベルトコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−35929(P2012−35929A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174999(P2010−174999)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】