説明

ベルトコンベヤ

【課題】ベルトコンベヤにおいて、電力を全く必要とせず、より軽くより安価でよりコンパクトで、入力ペダルを軽く踏んで離すだけで搬送ベルトを長く送ることができること。
【解決手段】作業者が入力ペダル10のペダル部10aを足で踏んで離すと、一旦収縮したコイルばね11が蓄積された弾性エネルギーを放出して伸長し、入力ペダル10を押し上げ、ラックギヤ12が入力ペダル10と一体に上昇してピニオンギヤ13を回転させ、第1のスプロケット14も回転してチェーン15によって第2のスプロケット16に伝達され、第2のスプロケット16も回転する結果、駆動軸6aも回転する。これによって、駆動ローラ6が回転し、更に駆動ローラ6の重さで慣性力によってその数倍回転して搬送ベルト4を走行させ、搬送物を一気に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要なときだけペダルを踏んで弾性エネルギー蓄積手段に弾性エネルギーを蓄えて搬送ベルトを走行させることができる、電力を全く必要としない省エネルギータイプのベルトコンベヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のベルトコンベヤは、一般に無端状の搬送ベルトを備え、この搬送ベルトは電動モータ或いは空気圧モータによって回転される駆動ローラによって走行させられ、搬送ベルトの上面に載置されたワークを搬送するものである。例えば、特許文献1に開示された特許発明に係るベルトコンベヤにおいては、搬送ベルトの損傷を小さくする工夫がなされているが、モータを内蔵した駆動ローラや減速機付きモータに接続された駆動ローラ等によって搬送ベルトを駆動している。
【0003】
しかし、特許文献1に開示されたベルトコンベヤを始めとする従来のベルトコンベヤは、いずれも電動モータ或いは空気圧モータ等によって駆動されるものであるから、結局は電力を必要とする。特に、大きな工場等では24時間ベルトコンベヤを稼動し続ける場合も多く、ワークを搬送しない場合でもベルトコンベヤだけが稼動している場合もあることから多大な電気エネルギーの浪費となる。また、ベルトコンベヤを好みの距離だけ走行させたり、ベルトコンベヤ上のワークを好みの位置まで搬送したり、さらにはベルトコンベヤを微小距離送るといった細かい制御は、従来の電動モータ・空気圧モータ等による駆動システムでは制御系が著しく複雑になり、実現が困難であった。
【0004】
そこで、本発明者は、特許文献2に示されるように、必要なときだけ人力でぜんまいばねを巻いて搬送ベルトを走行させることができ、電力を一切用いず大幅に省エネルギー化を図ることができるとともに、細かい制御を容易に行うことができるぜんまい式ベルトコンベヤを発明し、この発明について特許出願を行い、特許を取得した。
【0005】
この特許文献2に記載されたぜんまい式ベルトコンベヤは、入力レバーまたは足踏みペダルによる入力軸の回動を複数の歯車の組み合わせ(回転数増大伝達機構)によって複数回の回転に変換し、この回転によってぜんまいばねを巻いて弾性エネルギーを蓄積し、一度に開放することによって搬送ベルトを所定距離だけ一気に送ることもでき、また入力レバーまたは足踏みペダルを少しずつ戻すことによって搬送ベルトを微小距離送る細かい制御も可能で、かつ電力を全く必要としない画期的なベルトコンベヤである。
【特許文献1】特許第3058637号公報
【特許文献2】特開2005−231815号公報(特許第3887379号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に開示されたぜんまい式ベルトコンベヤにおいては、回転数増大伝達機構として複数の歯車を組み合わせているため、ベルトコンベヤ全体の重量が重くなって移動に不便であり、また歯車はやや高価なためベルトコンベヤ全体としてもやや高価になってしまう。さらに、入力レバーまたは足踏みペダルの回動角度が約150度と比較的大きく、これをより小さくしようとするとより多くの歯車が必要になって、回転数増大伝達機構がより大きくなるとともに重くなってしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、電力を全く必要としないという上記ベルトコンベヤの長所を保ちながら、より軽くより安価でよりコンパクトでペダルを軽く踏んで離すだけで搬送ベルトを長く送ることができるベルトコンベヤを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係るベルトコンベヤは、互いに離間対向した1対のフレームと、前記1対のフレームの駆動側フレームに軸支された駆動軸に回転自在に取付けられた駆動ローラと、前記1対のフレームの従動側フレームに軸支された従動軸に回転自在に取付けられた従動ローラと、前記駆動ローラと前記従動ローラに掛け渡された無端状の走行自在な搬送ベルトと、前記駆動ローラと前記従動ローラの間において、前記搬送ベルトの下方向への変位を制限し、前記搬送ベルトの裏面側を受ける支持部材と、前記駆動側フレームに対し、略垂直方向に移動自在に取付けられた入力ペダルと、前記入力ペダルが押圧されて略垂直方向に移動するとき、それに伴って伸長または収縮して弾性エネルギーを蓄積し、前記入力ペダルの押圧力が解除されることによって前記蓄積された弾性エネルギーが放出され、前記入力ペダルを逆方向に移動させる弾性エネルギー蓄積手段と、前記入力ペダルの移動を第1のスプロケットの回転運動に変換する回転運動変換手段と、前記第1のスプロケットの回転運動を前記第1のスプロケットの回転数よりもその回転数を増大する駆動ローラの駆動軸に伝達する第2のスプロケットに伝達するチェーンと、前記弾性エネルギー蓄積手段がエネルギーを蓄積するときには前記駆動ローラが回転せず、前記弾性エネルギー蓄積手段が蓄積されたエネルギーを放出するときには回転するように取付けられたワンウェイクラッチとを具備するものである。
【0009】
ここで、「略垂直方向に移動自在に取付けられた入力ペダル」とは、略垂直方向に足で踏み込むことが可能なペダルを含むことは勿論、足で操作するものばかりでなく、手で押して操作するものでも良い。また、「弾性エネルギー蓄積手段」としては、入力ペダルが押圧されて略垂直方向に移動することによって移動方向に伸長するコイルばね・ゴムベルト・ゴム紐等や、入力ペダルが押圧されて略垂直方向に移動することによって移動方向に収縮するコイルばね・板ばね・ゴム製のブロック・ゴム製のパイプ等がある。更に、「回転運動変換手段」としては、例えば、入力ペダルと一体に移動する長尺のラックギヤとそのラックギヤに噛み合わされたピニオンギヤの組み合わせ等がある。
【0010】
請求項2の発明に係るベルトコンベヤは、互いに離間対向した1対のフレームと、前記1対のフレームの駆動側フレームに軸支された駆動軸に一体回転自在に取付けられた駆動ローラと、前記1対のフレームの従動側フレームに軸支された従動軸に一体回転自在に取付けられた従動ローラと、前記駆動ローラと前記従動ローラに掛け渡された無端状の走行自在な搬送ベルトと、前記駆動ローラと前記従動ローラの間において、前記搬送ベルトの下方向への変位を制限し、前記搬送ベルトの裏面を支持する支持部材と、前記駆動側フレームに平行移動自在に取付けられた入力ペダルと、前記入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に伸長または収縮して弾性エネルギーを蓄積し、前記入力ペダルを押す力が解除されることによって前記蓄積された弾性エネルギーが放出されて前記入力ペダルを逆方向に平行移動させる弾性エネルギー蓄積手段と、前記入力ペダルの少しの距離の平行移動を第1のスプロケットの多くの回転数の回転運動に変換する回転運動変換手段と、前記第1のスプロケットの回転運動を前記駆動軸に一体回転自在に取付けられた第2のスプロケットに伝達するチェーンとを具備し、前記駆動ローラは前記弾性エネルギー蓄積手段がエネルギーを蓄積して前記駆動軸が回転するときには回転せず、前記弾性エネルギー蓄積手段が蓄積されたエネルギーを放出して前記駆動軸が回転するときには回転するように、ワンウェイクラッチを介して前記駆動軸に取付けられているものである。
【0011】
ここで、「平行移動自在に取付けられた入力ペダル」とは、垂直方向に足で踏み込むことができるペダルを含むことは勿論、斜め方向に平行移動自在なペダルも含まれ、入力ペダルは足で操作するものばかりでなく、手で押して操作するものでも良い。また、「弾性エネルギー蓄積手段」としては、入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に伸長するコイルばね・ゴムベルト・ゴム紐等や、入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に収縮するコイルばね・板ばね・ゴム製のブロック・ゴム製のパイプ等がある。更に、「回転運動変換手段」としては、例えば、入力ペダルと一体に平行移動する長尺のラックギヤとそのラックギヤに噛み合わされた小径のピニオンギヤの組み合わせ等がある。
【0012】
請求項3の発明に係るベルトコンベヤは、請求項1または請求項2の構成において、前記弾性エネルギー蓄積手段は、前記入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に収縮して弾性エネルギーを蓄積するコイルばねであるものである。
【0013】
請求項4の発明に係るベルトコンベヤは、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記回転運動変換手段は、前記入力ペダルと一体に平行移動するラックギヤと、前記ラックギヤと噛み合い、前記第1のスプロケットと一体に回転する小径のピニオンギヤとからなるものである。
【0014】
請求項5の発明に係るベルトコンベヤは、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記支持部材には全長に亘ってまたは前記支持部材の中間付近を中心として前記搬送ベルトが接触しても摩擦力が掛からないように前記搬送ベルトの搬送方向に回転する複数の回転ローラが設けられているものである。
【0015】
ここで、「複数の回転ローラ」は、支持部材の長手方向に沿って支持部材の幅一杯の回転ローラが1列に配置されたものでも良いし、支持部材の長手方向に沿って支持部材の中央部分のみに幅の狭い回転ローラが1列に配置されたものでも良いし、支持部材の長手方向に沿って支持部材の両端部分のみに幅の狭い回転ローラが2列に配置されたものでも良いし、支持部材の長手方向に沿って支持部材の中央部分及び両端部分に幅の狭い回転ローラが3列に配置されたものでも良い。
【0016】
請求項6の発明に係るベルトコンベヤは、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記駆動ローラの慣性を増すために、前記駆動ローラの外周部に重い材料を使用し、及び/または前記駆動ローラの外周部の壁面の厚さを厚くし、及び/または前記駆動ローラの外周部の壁面の内部に全周に亘って重りを取付けたものである。
【0017】
ここで、「駆動ローラの外周部に重い材料を使用し、及び/または駆動ローラの外周部の壁面の厚さを厚くし、及び/または駆動ローラの外周部の壁面の内部に全周に亘って重りを取付けた」とは、それぞれの3種類の処理をどれか1つだけ実施したものでも良いし、それぞれの3種類の処理をどれか2つ共に実施したものでも良いし、それぞれの3種類の処理を全て実施したものでも良いことを意味する。
【0018】
請求項7の発明に係るベルトコンベヤは、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記支持部材の両側に前記搬送ベルトを必要な高さに支持するための複数の支持脚が取付けられているものである。ここで、駆動側フレーム部分に支持脚を設ける場合には、駆動側フレームと支持脚を一体化することもできる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明に係るベルトコンベヤは、互いに離間対向した1対のフレームと、1対のフレームの駆動側フレームに軸支された駆動軸に回転自在に取付けられた駆動ローラと、1対のフレームの従動側フレームに軸支された従動軸に回転自在に取付けられた従動ローラと、駆動ローラと従動ローラに掛け渡された無端状の走行自在な搬送ベルトと、駆動ローラと従動ローラの間において、搬送ベルトの下方向への変位を制限し、搬送ベルトの裏面側を受ける支持部材と、駆動側フレームに対し、略垂直方向に移動自在に取付けられた入力ペダルと、入力ペダルが押圧されて略垂直方向に移動するとき、それに伴って伸長または収縮して弾性エネルギーを蓄積し、入力ペダルの押圧力が解除されることによって蓄積された弾性エネルギーが放出され、入力ペダルを逆方向に移動させる弾性エネルギー蓄積手段と、入力ペダルの移動を第1のスプロケットの回転運動に変換する回転運動変換手段と、第1のスプロケットの回転運動を第1のスプロケットの回転数よりもその回転数を増大する駆動ローラの駆動軸に伝達する第2のスプロケットに伝達するチェーンと、弾性エネルギー蓄積手段がエネルギーを蓄積するときには駆動ローラが回転せず、弾性エネルギー蓄積手段が蓄積されたエネルギーを放出するときには回転するように取付けられたワンウェイクラッチとを具備するものである。
【0020】
ここで、「略垂直方向に移動自在に取付けられた入力ペダル」とは、略垂直方向に足で踏み込むことが可能なペダルを含むことは勿論、足で操作するものばかりでなく、手で押して操作するものでも良い。また、「弾性エネルギー蓄積手段」としては、入力ペダルが押圧されて略垂直方向に移動することによって移動方向に伸長するコイルばね・ゴムベルト・ゴム紐等や、入力ペダルが押圧されて略垂直方向に移動することによって移動方向に収縮するコイルばね・板ばね・ゴム製のブロック・ゴム製のパイプ等がある。更に、「回転運動変換手段」としては、例えば、入力ペダルと一体に移動する長尺のラックギヤとそのラックギヤに噛み合わされたピニオンギヤの組み合わせ等がある。
【0021】
このような構成によって、入力ペダルを足で踏んで(または手で押して)駆動側フレームに対して略垂直方向に移動させると、それに伴って弾性エネルギー蓄積手段が伸長または収縮して弾性エネルギーを蓄積するとともに、回転運動変換手段によって入力ペダルの移動が第1のスプロケットの回転運動に変換されて、第1のスプロケットが回転しその回転運動が第1のスプロケットの回転数よりもその回転数を増大する駆動ローラの駆動軸に伝達する第2のスプロケットに伝達するチェーンによって第2のスプロケットに伝達される。
【0022】
これによって、駆動軸が多数回回転するが、駆動ローラは弾性エネルギー蓄積手段がエネルギーを蓄積するときには回転しないようにワンウェイクラッチが取付けられているので、駆動ローラは回転せず、よって搬送ベルトも走行しない。この状態で、足または手を入力ペダルから離して押圧力が解除されると、弾性エネルギー蓄積手段によって蓄積された弾性エネルギーが放出されて入力ペダルを逆方向に移動させ、回転運動変換手段によって入力ペダルの逆方向へ移動が第1のスプロケットの回転運動に変換されて、第1のスプロケットが逆方向に回転しその回転運動が第1のスプロケットの回転数よりもその回転数を増大する駆動ローラの駆動軸に伝達する第2のスプロケットに伝達するチェーンによって第2のスプロケットに伝達される。
【0023】
これによって、駆動軸が逆方向に回転し、駆動ローラは弾性エネルギー蓄積手段が蓄積されたエネルギーを放出するときには回転するようにワンウェイクラッチが取付けられているので、駆動ローラが多数の回転数の回転をして搬送ベルトが長い距離を走行する。ここで、本発明に係るベルトコンベヤは、入力ペダルの移動を回転運動変換手段によって回転運動に変換し、第1のスプロケットの回転運動を第1のスプロケットの回転数よりもその回転数を増大する駆動ローラの駆動軸に伝達する第2のスプロケットに伝達する1本のチェーンのみで駆動軸に多数の回転数の回転運動を伝達しているため、上記特許文献2に開示されたぜんまい式ベルトコンベヤの複数の歯車からなる回転数増大伝達機構に比べて、構造が極めて簡単である。また、歯車(ギヤ)は1個3000円から4000円で市販されているのに対して、スプロケットとチェーンは1組1000円程度で入手することができるので、装置全体としても極めて安価に製造することができ、しかも極めて軽量になる。
【0024】
なお、足または手を入力ペダルから離さずに少しずつ押す力を弱めて、入力ペダルを少しずつ戻すことによって、搬送ベルトを微小距離ずつ送ること(寸動送り)も、本発明に係るベルトコンベヤにおいても可能である。
【0025】
このようにして、電力を全く必要としないととともに、より軽くより安価でよりコンパクトで、ペダルを軽く、少しの距離だけ踏んで離すだけで、搬送ベルトを長く送ることができるベルトコンベヤとなる。
【0026】
請求項2の発明に係るベルトコンベヤは、互いに離間対向した1対のフレームと、1対のフレームの駆動側フレームに軸支された駆動軸に一体回転自在に取付けられた駆動ローラと、1対のフレームの従動側フレームに軸支された従動軸に一体回転自在に取付けられた従動ローラと、駆動ローラと従動ローラに掛け渡された無端状の走行自在な搬送ベルトと、駆動ローラと従動ローラの間において、搬送ベルトの下方向への変位を制限し、搬送ベルトの裏面を支持する支持部材と、駆動側フレームに平行移動自在に取付けられた入力ペダルと、入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に伸長または収縮して弾性エネルギーを蓄積し、入力ペダルを押す力が解除されることによって蓄積された弾性エネルギーが放出されて入力ペダルを逆方向に平行移動させる弾性エネルギー蓄積手段と、入力ペダルの少しの距離の平行移動を第1のスプロケットの多くの回転数の回転運動に変換する回転運動変換手段と、第1のスプロケットの回転運動を駆動軸に一体回転自在に取付けられた第2のスプロケットに伝達するチェーンとを具備し、駆動ローラは弾性エネルギー蓄積手段がエネルギーを蓄積して駆動軸が回転するときには回転せず、弾性エネルギー蓄積手段が蓄積されたエネルギーを放出して駆動軸が回転するときには回転するように、ワンウェイクラッチを介して駆動軸に取付けられている。
【0027】
ここで、「平行移動自在に取付けられた入力ペダル」とは、垂直方向に足で踏み込むことができるペダルを含むことは勿論、斜め方向に平行移動自在なペダルも含まれ、入力ペダルは足で操作するものばかりでなく、手で押して操作するものでも良い。また、「弾性エネルギー蓄積手段」としては、入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に伸長するコイルばね・ゴムベルト・ゴム紐等や、入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に収縮するコイルばね・板ばね・ゴム製のブロック・ゴム製のパイプ等がある。更に、「回転運動変換手段」としては、例えば、入力ペダルと一体に平行移動する長尺のラックギヤとそのラックギヤに噛み合わされた小径のピニオンギヤの組み合わせ等がある。
【0028】
このような構成によって、入力ペダルを足で踏んで(または手で押して)駆動側フレームに対して平行移動させると、弾性エネルギー蓄積手段が平行移動方向に伸長または収縮して弾性エネルギーを蓄積するとともに、回転運動変換手段によって入力ペダルの少しの距離の平行移動が第1のスプロケットの多数の回転数の回転運動に変換されて、第1のスプロケットが多数の回転数回転しその回転運動がチェーンによって第2のスプロケットに伝達される。
【0029】
これによって、駆動軸に一体回転可能に取付けられた第2のスプロケットが多数の回転数回転するため、駆動軸も一体に多数の回転数の回転をするが、駆動ローラは弾性エネルギー蓄積手段がエネルギーを蓄積して駆動軸が回転するときには回転しないようにワンウェイクラッチを介して駆動軸に取付けられているので、駆動ローラは回転せず、よって搬送ベルトも走行しない。
【0030】
この状態で、足または手を入力ペダルから離して入力ペダルを押す力が解除されると、弾性エネルギー蓄積手段に蓄積された弾性エネルギーが放出されて入力ペダルを逆方向に平行移動させ、回転運動変換手段によって入力ペダルの逆方向への少しの距離の平行移動が第1のスプロケットの多数の回転数の回転運動に変換されて、第1のスプロケットが逆方向に多数の回転数回転しその回転運動がチェーンによって第2のスプロケットに伝達される。
【0031】
これによって、駆動軸に一体回転可能に取付けられた第2のスプロケットが逆方向に多数の回転数回転するため、駆動軸も一体に逆方向に多数の回転数の回転をし、駆動ローラは弾性エネルギー蓄積手段が蓄積されたエネルギーを放出して駆動軸が回転するときには回転するようにワンウェイクラッチを介して駆動軸に取付けられているので、駆動ローラが多数の回転数の回転をして搬送ベルトが長い距離を走行する。
【0032】
ここで、本発明に係るベルトコンベヤは、入力ペダルの少しの距離の平行移動を回転運動変換手段によって第1のスプロケットの多数の回転数の回転運動に変換し、1本のチェーンのみで駆動軸に取付けられた第2のスプロケットに多数の回転数の回転運動を伝達しているため、上記特許文献2に開示されたぜんまい式ベルトコンベヤの複数の歯車からなる回転数増大伝達機構に比べて、構造が極めて簡単である。また、歯車(ギヤ)は1個3000円から4000円で市販されているのに対して、スプロケットとチェーンは1組1000円程度で入手することができるので、装置全体としても極めて安価に製造することができ、しかも極めて軽量になる。
【0033】
なお、足または手を入力ペダルから離さずに少しずつ押す力を弱めて、入力ペダルを少しずつ戻すことによって、搬送ベルトを微小距離ずつ送ること(寸動送り)も、本発明に係るベルトコンベヤにおいても可能である。
【0034】
このようにして、電力を全く必要としないととともに、より軽くより安価でよりコンパクトで、ペダルを軽く、少しの距離だけ踏んで離すだけで、搬送ベルトを長く送ることができるベルトコンベヤとなる。
【0035】
請求項3の発明に係るベルトコンベヤにおいては、弾性エネルギー蓄積手段が、入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に収縮して弾性エネルギーを蓄積するコイルばねである。
【0036】
コイルばねは安価で丈夫であり、弾性力にも優れたものが容易に入手できるため、弾性エネルギー蓄積手段として安定して使用することができる。そして、コイルばねを収縮させて弾性エネルギーを蓄積する構造とすることによって、ベルトコンベヤ全体の構造がより簡単になる。
【0037】
このようにして、電力を全く必要としないととともに、より軽くより安価でよりコンパクトで、ペダルを軽く、少しの距離だけ踏んで離すだけで、搬送ベルトを長く送ることができるベルトコンベヤとなる。
【0038】
請求項4の発明に係るベルトコンベヤにおいては、回転運動変換手段が、入力ペダルと一体に平行移動するラックギヤと、ラックギヤと噛み合い、第1のスプロケットと一体に回転する小径のピニオンギヤとからなる。
【0039】
このように、回転運動変換手段を入力ペダルと一体に平行移動するラックギヤと、ラックギヤと噛み合い、第1のスプロケットと一体に回転する小径のピニオンギヤとから構成することによって、簡単な構成で容易に、入力ペダルの少しの距離の平行移動を第1のスプロケットの多くの回転数の回転運動に変換することができる。
【0040】
このようにして、電力を全く必要としないととともに、より軽くより安価でよりコンパクトで、ペダルを軽く、少しの距離だけ踏んで離すだけで、搬送ベルトを長く送ることができるベルトコンベヤとなる。
【0041】
請求項5の発明に係るベルトコンベヤにおいては、支持部材には全長に亘ってまたは支持部材の中間付近を中心として搬送ベルトが接触しても摩擦力が掛からないように搬送ベルトの搬送方向に回転する複数の回転ローラが設けられている。
【0042】
ここで、「複数の回転ローラ」は、支持部材の長手方向に沿って支持部材の幅一杯の回転ローラが1列に配置されたものでも良いし、支持部材の長手方向に沿って支持部材の中央部分のみに幅の狭い回転ローラが1列に配置されたものでも良いし、支持部材の長手方向に沿って支持部材の両端部分のみに幅の狭い回転ローラが2列に配置されたものでも良いし、支持部材の長手方向に沿って支持部材の中央部分及び両端部分に幅の狭い回転ローラが3列に配置されたものでも良い。
【0043】
通常、搬送ベルトは駆動ローラ及び従動ローラに緊張した状態で掛けられており、支持部材からは浮いた状態になっているが、重さのある搬送物を載置した場合には搬送ベルトがその部分で撓んで、搬送ベルトの裏面が支持部材と接触した状態となる。この状態で搬送ベルトを走行させると、搬送ベルトの裏面が支持部材と摩擦しながら移動することになり、搬送ベルトの表面には搬送物が滑らないように滑り難い素材を、搬送ベルトの裏面には摩擦抵抗を少なくするために滑り易い素材を使ってはいるが、それでも搬送ベルトの裏面が摩耗してしまう。
【0044】
しかし、本発明に係るベルトコンベヤにおいては、支持部材に搬送ベルトの搬送方向に回転する複数の回転ローラが設けられているので、搬送物の重さで搬送ベルトの裏面が接触してもころがり摩擦となり、殆ど摩耗しなくて済むため、搬送ベルトの寿命を著しく延ばすことができる。また、搬送ベルトに掛かる抵抗が少なくなるため、同じ駆動エネルギーを掛けた場合には、走行距離がより伸びることになる。
【0045】
ここで、複数の回転ローラは支持部材の全長に亘って設けても良いが、両端の駆動ローラ及び従動ローラに近い部分は搬送ベルトの撓みが少なくなり、支持部材に接触しなくなるため、より撓み易い中間付近を中心として部分的に設けても効果がある。
【0046】
このようにして、電力を全く必要としないととともに、より軽くより安価でよりコンパクトで、ペダルを軽く踏んで離すだけで搬送ベルトをより長く送ることができるとともに、搬送ベルトの寿命を延ばすことができるベルトコンベヤとなる。
【0047】
請求項6の発明に係るベルトコンベヤは、駆動ローラの慣性を増すために、駆動ローラの外周部に重い材料を使用し、及び/または駆動ローラの外周部の壁面の厚さを厚くし、及び/または駆動ローラの外周部の壁面の内部に全周に亘って重りを取付けたものである。
【0048】
ここで、「駆動ローラの外周部に重い材料を使用し、及び/または駆動ローラの外周部の壁面の厚さを厚くし、及び/または駆動ローラの外周部の壁面の内部に全周に亘って重りを取付けた」とは、それぞれの3種類の処理をどれか1つだけ実施したものでも良いし、それぞれの3種類の処理をどれか2つ共に実施したものでも良いし、それぞれの3種類の処理を全て実施したものでも良いことを意味する。
【0049】
これによって、弾性エネルギー蓄積手段から弾性エネルギーが放出されて駆動ローラが回転すると、慣性力によって駆動ローラが放出された弾性エネルギーによる回転数の数倍回転して、搬送ベルトをより長距離走行させることができる。
【0050】
このようにして、電力を全く必要としないととともに、より軽くより安価でよりコンパクトで、ペダルを軽く踏んで離すだけで搬送ベルトをより長く送ることができるベルトコンベヤとなる。
【0051】
請求項7の発明に係るベルトコンベヤにおいては、支持部材の両側に搬送ベルトを必要な高さに支持するための複数の支持脚が取付けられている。ここで、駆動側フレーム部分に支持脚を設ける場合には、駆動側フレームと支持脚を一体化することもできる。
【0052】
ある程度の高さまでは、1対のフレームを高く作製することによって搬送ベルトを必要な高さに支持できるが、それにも限界があり、特に従動ローラと従動軸が取付けられるだけの従動フレーム側においては、フレーム材料の無駄遣いとなる。そこで、搬送ベルトを支えるために1対のフレーム間に架け渡されている支持部材の両側に必要な高さの支持脚を取付けることによって、搬送ベルトを必要な高さに支持することができる。
【0053】
ここで、搬送ベルトは略水平に支持されるとは限らず、必要に応じて斜めに、即ち従動ローラ側が高くまたは従動ローラ側が低く支持される。また、支持部材の幅が搬送ベルトの幅より広く支持部材の両側面が搬送ベルトから突出している場合は、支持部材の両側面に直接複数の支持脚を取付けることができるが、支持部材の幅が搬送ベルトの幅より狭く支持部材の両側面が搬送ベルトより引っ込んでいる場合は、支持部材の両側面に支持脚の数だけの中継ぎ部材を搬送ベルトから突出するように取付けて、この中継ぎ部材に支持脚を取付ける必要がある。
【0054】
このようにして、必要な高さに搬送ベルトが支持されて、電力を全く必要としないととともに、より軽くより安価でよりコンパクトで、ペダルを軽く踏んで離すだけで搬送ベルトをより長く送ることができるベルトコンベヤとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0056】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について、図1乃至図7を参照して説明する。
【0057】
図1(a)は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの全体構成をベルトコンベヤの中間部分の二箇所を省略して示す平面図、(b)は正面図である。図2は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの駆動部分の構成を正面側から見て示す縦断面図である。図3は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの駆動部分の構成を右側面側から見て示す縦断面図である。
【0058】
図4(a)は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの駆動側フレームの内側フレーム内部を拡大して示す縦断面図、(b)は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤに用いられる回転ローラユニットを示す斜視図である。図5は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの駆動側フレーム近傍を拡大して示す平面図である。図6は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの従動側フレーム近傍を拡大して示す平面図である。図7は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの従動ローラ近傍を拡大して示す斜視図である。
【0059】
図1(a),(b)に示されるように、本実施の形態1に係るベルトコンベヤ1は、鋼板を略四角柱形状に組み付けてなる1対のフレームの一方としての駆動側フレーム2と、それと離間対向した2枚の鋼板からなる1対のフレームの他方としての従動側フレーム3と、これら1対のフレーム2,3に両端を固定された支持部材としての厚さ1.6mmの長尺鋼板5と、長尺鋼板5の側面の従動側フレーム3の近傍と、駆動側フレーム2と従動側フレーム3との中間付近とに1脚ずつ取付けられた複数の支持脚30A,31A,32A,33A,30B,31B,32B,33Bとを基本骨格として構成されている。
【0060】
駆動側フレーム2には駆動軸6aが水平に軸支され、駆動軸6aには鋼材製の駆動ローラ6が一体回転可能に取付けられており、同様に従動側フレーム3には従動軸7aが水平に軸支され、アルミニウム製の従動ローラ7が一体回転可能に取付けられ、これら駆動ローラ6と従動ローラ7には無端状の走行可能な搬送ベルト4が掛け渡されている。そして、この無端状の搬送ベルト4を弛みなく張るために、駆動側フレーム2の内側端にはアルミニウム製のテンションローラ8が回転可能に軸支されている。
【0061】
前記複数の支持脚30A,31A,32A,33A,30B,31B,32B,33Bは、支持部材としての長尺鋼板5の下側を通過する無端状の搬送ベルト4の下側部分を潜らせるように、長尺鋼板5の両側面に固定された鋼板製のコの字形部材30A,30Bと、コの字形部材30A,30Bの底面に固定された鋼板製の細い四角柱形状の各1対の脚部31A,31B(図1(b)においては向こう側の脚部31A,31Bは隠れて見えない)と、各1対の脚部31A,31Bの下端に固定された支持板32A,32Bと、支持板32A,32Bの両端に高さ調節可能に取付けられた各1対の接地部33A,33Bとから構成されている。
【0062】
これによって、図1(a)の平面図に示されるように、支持板32A,32Bは左右に拡がって接地し、充分な安定性を持って搬送ベルト4を所定の高さに支持することができる。
【0063】
そして、駆動側フレーム2には略垂直方向に平行移動可能に入力ペダル10が取付けられており、図1(b)に破線で示されるように、駆動側フレーム2内には入力ペダル10を足で踏んで(または手で押して)下降させることによって、収縮して弾性エネルギーを蓄積する弾性エネルギー蓄積手段としてのコイルばね11と、入力ペダル10と一体に平行移動するラックギヤ12と、このラックギヤ12と噛み合う小径のピニオンギヤ13と、小径のピニオンギヤ13と一体に回転する第1のスプロケット14と、駆動軸6aと一体に回転する第2のスプロケット16と、第1のスプロケット14から第2のスプロケット16に回転力を伝達するチェーン15とが内蔵されている。
【0064】
このような構成によって、入力ペダル10を少しの距離だけ下降させると、小径のピニオンギヤ13が多くの回転数だけ回転し、これによって第1のスプロケット14も多くの回転数だけ回転する。また、入力ペダル10を押し下げる力を解除すると、収縮して弾性エネルギーを蓄積したコイルばね11が伸びて弾性エネルギーを放出し、小径のピニオンギヤ13が多くの回転数だけ逆方向に回転し、これによって第1のスプロケット14も多くの回転数だけ逆方向に回転する。したがって、ラックギヤ12と小径のピニオンギヤ13とは、本発明における回転運動変換手段を構成している。
【0065】
そして、第1のスプロケット14の回転がチェーン15を介して第2のスプロケット16に伝達され、第2のスプロケット16が多数回回転するのに伴って、駆動軸6aも多数回回転する。しかし、駆動ローラ6は後述するようにワンウェイクラッチを介して駆動軸6aに取付けられているため、入力ペダル10を下降させるときには回転せず、コイルばね11が伸びて入力ペダル10を押し上げるときに回転する。これによって、駆動ローラ6と従動ローラ7に掛け渡された無端状の搬送ベルト4が走行する。したがって、入力ペダル10の押し下げ距離が小さくても、搬送ベルト4を長く送ることができる。
【0066】
このような本実施の形態1に係るベルトコンベヤ1における駆動機構について、図2及び図3を参照して、より詳細に説明する。図2に示されるように、駆動側フレーム2は、上部フレーム2A,下部フレーム2B,内側フレーム2Cの三つのフレームによって構成されている。このうち下部フレーム2Bの内部には、円柱状の第1のスライドシャフト17及び第2のスライドシャフト18が立設されており、入力ペダル10の鋼板製のペダル本体10bには、円筒状の第1のスライド部10c及び第2のスライド部10dが設けられている。
【0067】
第1のスライド部10cは第1のスライドシャフト17にスライド自在に嵌合しており、第2のスライド部10dは第2のスライドシャフト18にスライド自在に嵌合している。このように、ペダル本体10bが二箇所のスライド機構を有していることによって、入力ペダル10はがたつくことなくスムーズに、垂直方向に平行移動することができる。また、第1のスライドシャフト17にはコイルばね11が嵌挿されており、コイルばね11の上端は第1のスライド部10cによって抑えられている。
【0068】
したがって、入力ペダル10のペダル部10aに力が加えられて入力ペダル10が垂直方向に下降すると、コイルばね11はペダル本体10bの第1のスライド部10cによって圧縮されて、弾性エネルギーを蓄積しながら収縮する。
【0069】
ここで、入力ペダル10の垂直方向の移動の下限は、ストップボルト22にペダル本体10bに2本のボルトで固定されたストップブロック10eの下端が当接することによって決定され、入力ペダル10の垂直方向の移動の上限は、調整板20にペダル本体10bの第1のスライド部10cのフランジ部分が当接することによって決定される。調整板20は、調整ボルト21に沿って、下部フレーム2Bに対して上下に移動させることができる。よって、入力ペダル10の移動ストロークは、ストップボルト22の上端の位置及び調整板19の上下の位置を調整することによって、自由に設定することができる。
【0070】
また、図2に示されるように、入力ペダル10の鋼板製のペダル本体10bには、ラックギヤ12が取付け板23及び2本の取付けボルト24A,24Bによって、強固に取付け固定されている。ラックギヤ12には、ギヤ軸13aに軸支された歯数16・PCD(基準円直径)φ24mmの小径のピニオンギヤ(平歯車)13が噛み合わされている。このギヤ軸13aには、歯数20・PCDφ60.89mmの第1のスプロケット14が、ピニオンギヤ13と一体回転可能に軸支されている。
【0071】
更に、この第1のスプロケット14には、上部フレーム2A内に軸支された同じく歯数20・PCDφ60.89mmの第2のスプロケット16との間に、無端状のチェーン15が掛け渡されており、第2のスプロケット16は駆動軸6aに一体回転可能に上部フレーム2A内に軸支されている。
【0072】
したがって、入力ペダル10のペダル部10aに力が加えられて入力ペダル10が垂直方向に下降すると、上述の如くコイルばね11が収縮するのと同時に、ラックギヤ12が入力ペダル10と一体に垂直方向に下降してピニオンギヤ13を回転させ、これによって第1のスプロケット14が同じ回転数だけ回転して、その回転がチェーン15によって第2のスプロケット16に伝達され、第2のスプロケット16も歯数及びPCDが第1のスプロケット14と同一であるため同じ回転数だけ回転する結果、駆動軸6aも一体に同じ回転数だけ回転する。
【0073】
ここで、上部フレーム2A内の詳細な構造について、図3を参照して説明する。図3に示されるように、駆動側フレーム2の上部フレーム2Aの内部には、鋼鉄製の駆動ローラ6が、両端を上部フレーム2Aに2個のボールベアリング軸受け25によって水平に軸支された駆動軸6aに、ワンウェイクラッチ26を介して一体回転可能に取付けられており、駆動ローラ6の外周には搬送ベルト4が掛けられている。
【0074】
なお、本実施の形態1に係るベルトコンベヤ1においては、鋼鉄製の駆動ローラ6の外周壁面の厚さが充分に厚く、駆動ローラ6自体の重さで回転時の慣性が充分に得られ、駆動ローラ6の回転による搬送ベルト4の走行距離が充分に長くなるため、特に駆動ローラ6の内部に重りを取付けていないが、必要に応じて駆動ローラ6の外周部の内面に重りを取付けることによって、より駆動ローラ6の外周部を重くして回転時の慣性を大きくすることもできる。
【0075】
ここで、ワンウェイクラッチ26は、上述の如く入力ペダル10が垂直方向に下降してコイルばね11が収縮するのと同時に駆動軸6aが回転するとき、即ち駆動軸6aが図2において右回り(時計回り方向)に回転する場合には、駆動軸6aの回転力を駆動ローラ6に伝達しないように取付けられている。これによって、入力ペダル10を踏み込むときには駆動ローラ6は回転せず、搬送ベルト4も走行しないため、入力ペダル10を踏み込むときに搬送ベルト4が通常の走行方向と逆方向に走行する事態を防止することができ、使い勝手の良いベルトコンベヤ1となる。
【0076】
一方、入力ペダル10を押す力を解除して、収縮していたコイルばね11が蓄積された弾性エネルギーを放出して伸長し、入力ペダル10を押し上げると、ラックギヤ12が入力ペダル10と一体に垂直方向に上昇してピニオンギヤ13を逆方向に回転させ、これによって第1のスプロケット14が同じ回転数だけ逆方向に回転して、その回転がチェーン15によって第2のスプロケット16に伝達され、第2のスプロケット16も同じ回転数だけ逆方向に回転する結果、駆動軸6aも一体に同じ回転数だけ逆方向に回転する。
【0077】
このように駆動軸6aが逆方向に回転する場合には、ワンウェイクラッチ26は、駆動軸6aの回転力を駆動ローラ6に伝達するように取付けられているので、駆動ローラ6が駆動軸6aと同じ回転数だけ図2において左回り(反時計回り方向)に回転し、更に駆動ローラ6の重さで慣性力によってその数倍の回転数だけ回転するため、搬送ベルト4が長い距離を走行する。
【0078】
更に、図4(a)に示されるように、駆動側フレーム2の内側フレーム2Cの内部には、アルミニウム製のテンションローラ8が、内側フレーム2Cに固定された中心軸8aに対して1対のボールベアリング軸受け25によって水平に軸支されており、搬送ベルト4にテンションを掛けて搬送ベルト4が張るようにしている。また、搬送ベルト4が走行時に蛇行して駆動ローラ6または従動ローラ7の中心から左右にずれる場合には、後述するように、従動ローラ7の向きを調整して解消するようにしているが、それでも解消されない場合には、図4(a)に示される1対のボルト8bのいずれかまたは両方を回転させて、中心軸8aの上下方向の向きを調整することによって解消するようにしている。
【0079】
また、図1,図2及び図4に示されるように、支持部材としての長尺鋼板5の上には、プラスチック製の本体42に軸支された複数の回転ローラとしてのプラスチック製の小型ローラ41を各10個ずつ有するミニローラユニット40が、3列に複数個ずつ配置されている。
【0080】
図4(b)に示されるように、ミニローラユニット40は、箱型のプラスチック製の本体42に、複数の回転ローラとしてのプラスチック製の10個の小型ローラ41が回転自在に軸支されてなるものである。各小型ローラ41の両端にはローラ軸41aが突出して設けられており、このローラ軸41aがプラスチック製の本体42の両側面に設けられた軸受け部42aに嵌合することによって、各小型ローラ41はプラスチック製の本体42から外れることなく、回転自在に軸支されている。
【0081】
本実施の形態1に係るベルトコンベヤ1においては、かかるプラスチック製のミニローラユニット40として、オークラ輸送機(株)のコロコン(登録商標)ミニKB150を用いて、3列に配置して、3列のミニローラユニット40の間には、図4(a)及び図5に示されるように、仕切りとして厚みのある仕切り鋼板46を4列に亘って長尺鋼板5の上に固定している。
【0082】
これらの複数の回転ローラとしてのプラスチック製の小型ローラ41が、支持部材としての長尺鋼板5の全長に亘って配置されているため、搬送ベルト4の上に重い搬送物が載せられて搬送ベルト4が撓んだ場合でも、長尺鋼板5に直接接触することなく回転自在なプラスチック製の小型ローラ41に接触して支持されるため、重い搬送物が載せられた場合でも、搬送ベルト4がスムーズに長距離走行することができる。
【0083】
次に、従動側フレーム3及びその近傍の構成について、図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7に示されるように、従動側フレーム3は、1対の部材3a,平板に1対のシャフト受け部分が固定された部材3b,1対のボルト3cから構成されている。1対の部材3aの間には円柱状の従動軸7aが固定されており、従動軸7aにはアルミニウム製の従動ローラ7が回転自在に取付けられている。
【0084】
また、部材3bには2組のボルト44・ナット45が貫通して螺合しており、2本のボルト44の先端は、鋼板製の押さえプレート43に当接している。この押さえプレート43は、長尺鋼板5の全長に亘って配置された多数個のミニローラユニット40を互いに隙間なく押えるための板材であって、その位置は2組のボルト44・ナット45を調節することによって、自由に調節することができる。
【0085】
そして、このように押さえプレート43で押えられた状態にあっても、長尺鋼板5の全長に亘って配置された多数個のミニローラユニット40のうちから、任意の位置の1個のミニローラユニット40を取り外し、及び取り外して生じた空間に新たなミニローラユニット40を嵌め込むことは容易にできるため、ミニローラユニット40の各10個の小型ローラ41のうち1個以上が消耗して回転しなくなった場合には、そのミニローラユニット40を取り外して新品のミニローラユニット40を嵌め込むことによって、直ちに元の状態に復帰させることができる。
【0086】
また、1対のボルト3cの先端は部材3bに当接しており、これらの1対のボルト3cを回転させて1対の部材3aを部材3bから離すことによって、従動ローラ7が部材3bから離れて、従動ローラ7に掛け渡されている搬送ベルト4にテンションを掛けて張らせることができる。更に、搬送ベルト4が走行時に蛇行して従動ローラ7の中心から左右にずれるような場合には、これらの1対のボルト3cのいずれか一方または両方を回転させて、従動軸7aの水平方向の傾きを調整することによって、搬送ベルト4が走行時にずれる事態を解消することができる。
【0087】
このような構成を有する本実施の形態1に係るベルトコンベヤ1の使用方法について、図1乃至図3を参照して説明する。初期状態においては、図2に示されるように、コイルばね11は自然に伸びた状態にあり、入力ペダル10は円筒状の第1のスライド部10cが調整板20に当接した位置において、ストロークの上端にある。ここでは、入力ペダル10の上下動ストロークは、調整ボルト21,ストップボルト22によって150mmに設定されている。
【0088】
この状態から、作業者が両手で搬送物を搬送ベルト4の上の駆動側フレーム2よりに置いて、入力ペダル10のペダル部10aを足で踏むことによって、入力ペダル10のペダル本体10bは、ペダル本体10bに2本のボルトで固定されたストップブロック10eの下端がストップボルト22に当接するまで、150mm押し下げられる。これによって、コイルばね11が150mm収縮するのと同時に、ラックギヤ12が入力ペダル10と一体に垂直方向に下降してピニオンギヤ13を回転させ、ピニオンギヤ13が約2回転する。
【0089】
したがって、第1のスプロケット14がやはり約2回転して、その回転がチェーン15によって第2のスプロケット16に伝達され、第2のスプロケット16も歯数及びPCDが第1のスプロケット14と同一であるため約2回転する結果、駆動軸6aも一体に約2回転するが、上述したように、ワンウェイクラッチ26の作用によって駆動ローラ6は回転せず、搬送ベルト4も走行しないため、入力ペダル10を踏み込むときに搬送ベルト4が通常の走行方向と逆方向に走行して、作業者が搬送ベルト4の上に載置した搬送物が落下する事態を防止することができる。
【0090】
続いて、作業者が入力ペダル10のペダル部10aから足を離すと、収縮していたコイルばね11が蓄積された弾性エネルギーを放出して伸長し、入力ペダル10を150mm押し上げ、ラックギヤ12が入力ペダル10と一体に垂直方向に150mm上昇してピニオンギヤ13を逆方向に約2回転させ、これによって第1のスプロケット14が逆方向に約2回転して、その回転がチェーン15によって第2のスプロケット16に伝達され、第2のスプロケット16も逆方向に約2回転する結果、駆動軸6aも一体に逆方向に約2回転する。
【0091】
このように駆動軸6aが逆方向に回転する場合には、ワンウェイクラッチ26は、駆動軸6aの回転力を駆動ローラ6に伝達するように取付けられているので、駆動ローラ6が図2において左回り(反時計回り方向)に約2回転し、更に駆動ローラ6の重さで慣性力によってその数倍の約8回転する。ここで、駆動ローラ6の外径はφ139mmで外周は約437mmであるため、約437mm×8=約3500mm=約3.5m分搬送ベルト4が走行して、搬送物を約3.5m先まで一気に搬送する。
【0092】
また、上述の如く、複数の回転ローラとしてのプラスチック製の小型ローラ41が、支持部材としての長尺鋼板5の全長に亘って配置されているため、搬送ベルト4の上に重い搬送物が載せられて搬送ベルト4が撓んだ場合でも、長尺鋼板5に直接接触することなく回転自在なプラスチック製の小型ローラ41に接触して支持されるため、重い搬送物が載せられた場合でも、搬送ベルト4によってスムーズに約3.5m先まで搬送される。
【0093】
このようにして、本実施の形態1に係るベルトコンベヤ1においては、必要な高さに搬送ベルト4が支持されて、電力を全く必要としないととともに、より軽くより安価でよりコンパクトなベルトコンベヤ1となり、入力ペダル10を軽く踏んで離すだけで搬送ベルト4をより長く送ることができる。
【0094】
また、本実施の形態1のベルトコンベヤ1は、電力が不要で全体としても軽量であるという長所を生かして、移動設置式のベルトコンベヤとしての用途が広がるものと考えられる。例えば、河川の堤防決壊による洪水時に、現場へ運んで設置して土嚢を搬送する等の緊急時の用途にも対応できる。
【0095】
更に、本実施の形態1に係るベルトコンベヤ1に特有の作用効果として、複数の回転ローラとして、図4(b)に示されるミニローラユニット40を多数個、支持部材としての長尺鋼板5の上の全長に亘って取り外し可能に配置したため、複数の回転ローラとしてのプラスチック製の各10個の小型ローラ41のうち1個以上が回転不能になった場合には、そのミニローラユニット40のみを交換するだけで直ちに修理することができ、極めてメンテナンス性に優れたベルトコンベヤとなる。
【0096】
本実施の形態1においては、「入力ペダルが押圧されて略垂直方向に移動するとき、それに伴って収縮して弾性エネルギーを蓄積し、入力ペダルの押圧力が解除されることによって蓄積された弾性エネルギーが放出され、入力ペダルを逆方向に移動させる弾性エネルギー蓄積手段」及び「入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に収縮して弾性エネルギーを蓄積し、入力ペダルを押す力が解除されることによって蓄積された弾性エネルギーが放出されて入力ペダルを逆方向に平行移動させる弾性エネルギー蓄積手段」として、コイルばね11を用いた例について説明したが、他にも板ばね・ゴム製のブロック・ゴム製のパイプ等を用いることができる。
【0097】
ゴム製のブロックを用いる場合には、円柱形状や角柱形状のゴム製のブロックを入力ペダル10のペダル本体10bに設けられた押圧部で、入力ペダル10が押圧されて移動するのに伴って円柱形状や角柱形状の長手方向に押し潰すように取付ければ良い。また、ゴム製のパイプを用いる場合には、円筒形状や角筒形状のゴム製のパイプを、本実施の形態1における第1のスライドシャフト17のようなシャフトに嵌挿して支持し、第1のスライド部10cで円筒形状や角筒形状の長手方向に押し潰すように取付ければ良い。
【0098】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について、図8及び図9を参照して説明する。図8(a)は本発明の実施の形態2に係るベルトコンベヤの全体構成をベルトコンベヤの中間部分の二箇所を省略して示す平面図、(b)は正面図である。図9は本発明の実施の形態2に係るベルトコンベヤの駆動部分の構成を正面側から見て示す縦断面図である。
【0099】
なお、本発明の実施の形態2に係るベルトコンベヤの全体的な構成は、一部を除いて実施の形態1のベルトコンベヤ1の構成と同様であるため、同一の部分については同一の符号を付して説明を一部省略する。
【0100】
図8及び図9に示されるように、本実施の形態2に係るベルトコンベヤ51が実施の形態1のベルトコンベヤ1と異なる点は、弾性エネルギー蓄積手段としてのコイルばねが収縮して弾性エネルギーを蓄積するのではなく、伸長して弾性エネルギーを蓄積するものである点、及び複数の回転ローラとしてのプラスチック製の小型ローラとして、実施の形態1のベルトコンベヤ1よりも大きなものを使用し、配列も3列から2列にした点のみである。
【0101】
即ち、図9に示されるように、本実施の形態2に係るベルトコンベヤ51においては、駆動側フレーム52の下部フレーム52B内にコイルばね止め具72を固定し、このコイルばね止め具72にコイルばね61の上端を固定し、入力ペダル60のペダル本体60bに設けられた円筒状の第1のスライド部60cの上端にコイルばね止め具73を固定し、このコイルばね止め具73にコイルばね61の下端を固定している。
【0102】
そして、入力ペダル60のペダル本体60bに設けられた円筒状の第1のスライド部60cは、実施の形態1に係るベルトコンベヤ1と同様に立設された円柱状の第1のスライドシャフト17にスライド自在に嵌合しており、第2のスライド部60dは第2のスライドシャフト18にスライド自在に嵌合している。このように、ペダル本体60bが二箇所のスライド機構を有していることによって、入力ペダル60はがたつくことなくスムーズに、垂直方向に平行移動することができる。
【0103】
したがって、入力ペダル60のペダル部60aに力が加えられて入力ペダル60が垂直方向に下降すると、コイルばね61はペダル本体60bの第1のスライド部60cの上端に固定されたコイルばね止め具73によって引っ張られて、弾性エネルギーを蓄積しながら伸長する。
【0104】
ここで、入力ペダル60の垂直方向の移動の下限は、ストップボルト22にペダル本体60bに2本のボルトで固定されたストップブロック60eの下端が当接することによって決定され、入力ペダル60の垂直方向の移動の上限は、調整板70にペダル本体60bの第1のスライド部60cのフランジ部分が当接することによって決定される。調整板70は、調整ボルト71に沿って、下部フレーム52Bに対して上下に移動させることができる。よって、入力ペダル60の移動ストロークは、ストップボルト22の上端の位置及び調整板70の上下の位置を調整することによって、自由に設定することができる。
【0105】
また、図8及び図9に示される駆動ローラ6は、実施の形態1と同様にワンウェイクラッチ26によって駆動軸6aに取付けられているため、入力ペダル60が垂直方向に下降してコイルばね61が伸長するのと同時に駆動軸6aが回転するとき、即ち駆動軸6aが図9において右回り(時計回り方向)に回転する場合には、駆動軸6aの回転力を駆動ローラ6に伝達しない。したがって、入力ペダル60を踏み込むときには駆動ローラ6は回転せず、搬送ベルト4も走行しないため、入力ペダル60を踏み込むときに搬送ベルト4が通常の走行方向と逆方向に走行する事態を防止することができ、使い勝手の良いベルトコンベヤ51となる。
【0106】
一方、入力ペダル60を押す力を解除して、伸長していたコイルばね61が蓄積された弾性エネルギーを放出して収縮し、入力ペダル60を押し上げると、ラックギヤ12が入力ペダル60と一体に垂直方向に上昇してピニオンギヤ13を逆方向に回転させ、これによって第1のスプロケット14が逆方向に回転して、その回転がチェーン15によって第2のスプロケット16に伝達され、第2のスプロケット16も逆方向に回転する結果、駆動軸6aも一体に逆方向に回転する。
【0107】
このように駆動軸6aが逆方向に回転する場合には、ワンウェイクラッチ26は、駆動軸6aの回転力を駆動ローラ6に伝達するように取付けられているので、駆動ローラ6が駆動軸6aと同じ回転数だけ図9において左回り(反時計回り方向)に回転し、更に駆動ローラ6の重さで慣性力によってその数倍の回転数だけ回転するため、搬送ベルト4が長い距離を走行する。
【0108】
更に、図8(a)に示されるように、本実施の形態2に係るベルトコンベヤ51においては、支持部材としての長尺鋼板5の上に、実施の形態1におけるミニローラユニット40の倍程度の大きさのプラスチック製のローラユニット80を配置している。ローラユニット80の回転ローラ81は、ミニローラユニット40の回転ローラ41の倍程度の幅を有しているため、図8(a)に示されるように長尺鋼板5の上に2列に配置するだけで、充分に搬送ベルト4を支持することができる。
【0109】
このような構成を有する本実施の形態2に係るベルトコンベヤ51の使用方法について、図8及び図9を参照して説明する。初期状態においては、図9に示されるように、コイルばね61は自然に縮んだ状態にあり、入力ペダル60は円筒状の第1のスライド部60cが調整板70に当接した位置において、ストロークの上端にある。ここでは、入力ペダル60の上下動ストロークは、調整ボルト71によって200mmに設定されている。
【0110】
この状態から、作業者が両手で搬送物を搬送ベルト4の上の駆動側フレーム52よりに置いて、入力ペダル60のペダル部60aを足で踏むことによって、入力ペダル60のペダル本体60bは、ペダル本体60bに2本のボルトで固定されたストップブロック60eの下端がストップボルト22に当接するまで、200mm押し下げられる。これによって、コイルばね11が200mm伸長するのと同時に、ラックギヤ12が入力ペダル60と一体に垂直方向に下降してピニオンギヤ13を回転させ、ピニオンギヤ13が約2.7回転する。
【0111】
したがって、第1のスプロケット14がやはり約2.7回転して、その回転がチェーン15によって第2のスプロケット16に伝達され、第2のスプロケット16も歯数及びPCDが第1のスプロケット14と同一であるため約2.7回転する結果、駆動軸6aも一体に約2.7回転するが、上述したように、ワンウェイクラッチ26の作用によって駆動ローラ6は回転せず、搬送ベルト4も走行しないため、入力ペダル60を踏み込むときに搬送ベルト4が通常の走行方向と逆方向に走行して、作業者が搬送ベルト4の上に載置した搬送物が落下する事態を防止することができる。
【0112】
続いて、作業者が入力ペダル60のペダル部60aから足を離すと、伸長していたコイルばね61が蓄積された弾性エネルギーを放出して収縮し、入力ペダル60を200mm引き上げ、ラックギヤ12が入力ペダル60と一体に垂直方向に200mm上昇してピニオンギヤ13を逆方向に約2.7回転させ、これによって第1のスプロケット14が逆方向に約2.7回転して、その回転がチェーン15によって第2のスプロケット16に伝達され、第2のスプロケット16も逆方向に約2.7回転する結果、駆動軸6aも一体に逆方向に約2.7回転する。
【0113】
このように駆動軸6aが逆方向に回転する場合には、ワンウェイクラッチ26は、駆動軸6aの回転力を駆動ローラ6に伝達するように取付けられているので、駆動ローラ6が図9において左回り(反時計回り方向)に約2.7回転し、更に駆動ローラ6の重さで慣性力によってその数倍の約10回転する。ここで、駆動ローラ6の外径はφ139mmで外周は約437mmであるため、約437mm×10=約4370mm=約4.37m分搬送ベルト4が走行して、搬送物を約4.37m先まで一気に搬送する。
【0114】
また、上述の如く、複数の回転ローラとしてのプラスチック製の回転ローラ81が、支持部材としての長尺鋼板5の全長に亘って配置されているため、搬送ベルト4の上に重い搬送物が載せられて搬送ベルト4が撓んだ場合でも、長尺鋼板5に直接接触することなく回転自在なプラスチック製の回転ローラ81に接触して支持されるため、重い搬送物が載せられた場合でも、搬送ベルト4によってスムーズに約4.37m先まで搬送される。
【0115】
このようにして、本実施の形態2に係るベルトコンベヤ51においては、必要な高さに搬送ベルト4が支持されて、電力を全く必要としないととともに、より軽くより安価でよりコンパクトなベルトコンベヤ51となり、入力ペダル60を軽く踏んで離すだけで搬送ベルト4をより長く送ることができる。
【0116】
また、本実施の形態2のベルトコンベヤ51は、電力が不要で全体としても軽量であるという長所を生かして、移動設置式のベルトコンベヤとしての用途が広がるものと考えられる。例えば、河川の堤防決壊による洪水時に、現場へ運んで設置して土嚢を搬送する等の緊急時の用途にも対応できる。
【0117】
更に、本実施の形態2に係るベルトコンベヤ51に特有の作用効果として、複数の回転ローラとして、図8(a)に示されるローラユニット80を多数個、支持部材としての長尺鋼板5の上の全長に亘って取り外し可能に配置したため、複数の回転ローラとしてのプラスチック製の各10個の回転ローラ81のうち1個以上が回転不能になった場合には、そのローラユニット80のみを交換するだけで直ちに修理することができ、極めてメンテナンス性に優れたベルトコンベヤとなる。
【0118】
本実施の形態2においては、「入力ペダルが押圧されて略垂直方向に移動するとき、それに伴って伸長して弾性エネルギーを蓄積し、入力ペダルの押圧力が解除されることによって蓄積された弾性エネルギーが放出され、入力ペダルを逆方向に移動させる弾性エネルギー蓄積手段」及び「入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に伸長して弾性エネルギーを蓄積し、入力ペダルを押す力が解除されることによって蓄積された弾性エネルギーが放出されて入力ペダルを逆方向に平行移動させる弾性エネルギー蓄積手段」として、コイルばね61を用いた例について説明したが、他にもゴムベルト・ゴム紐等を用いることができる。
【0119】
本発明を実施するに際しては、ベルトコンベヤのその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤ1及び本発明の実施の形態2に係るベルトコンベヤ51は、電気を使用していないことから、水周りの作業場、例えば、調理室、炎天下の農作業場、コンベヤが水中に入る水槽への搬入または水槽からの搬出に使用できる。さらには、河川の堤防の決壊による洪水等の際には、現場へ運んで設置して、堤防を修復するための土嚢を搬送するのにも使用することができる。
【0121】
また、調理室においては、調理室と配膳室との間の受け渡しにも、絶縁変圧器等の絶縁性を高める防水構造の配線が不要となるから、ベルトコンベヤが廉価となる。また、駆動しないときには、全くエネルギーを使用していないから、常に連続運転する従来のベルトコンベヤと相違するので、省エネ効果がある。
【0122】
そして、薬局等の調合室と受け渡し場所間の搬送、クリーンルームと外部との受け渡し、野菜・果物の選果場での選果作業と選果後の搬送、勿論、部品組立工場の人海作業からメインコンベヤへの受け渡し、グループ単位の部品等の組み立てと搬送、函詰単位の搬送等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの全体構成をベルトコンベヤの中間部分の二箇所を省略して示す平面図、(b)は正面図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの駆動部分の構成を正面側から見て示す縦断面図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの駆動部分の構成を右側面側から見て示す縦断面図である。
【図4】図4(a)は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの駆動側フレームの内側フレーム内部を拡大して示す縦断面図、(b)は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤに用いられる回転ローラユニットを示す斜視図である。
【図5】図5は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの駆動側フレーム近傍を拡大して示す平面図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの従動側フレーム近傍を拡大して示す平面図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態1に係るベルトコンベヤの従動ローラ近傍を拡大して示す斜視図である。
【図8】図8(a)は本発明の実施の形態2に係るベルトコンベヤの全体構成をベルトコンベヤの中間部分の二箇所を省略して示す平面図、(b)は正面図である。
【図9】図9は本発明の実施の形態2に係るベルトコンベヤの駆動部分の構成を正面側から見て示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0124】
1,51 ベルトコンベヤ
2,52 駆動側フレーム
3 従動側フレーム
4 搬送ベルト
5 支持部材
6 駆動ローラ
6a 駆動軸
7 従動ローラ
7a 従動軸
10,60 入力ペダル
11,61 コイルばね
12 ラックギヤ
13 ピニオンギヤ
14 第1のスプロケット
15 チェーン
16 第2のスプロケット
26 ワンウェイクラッチ
30A,30B,31A,31B,32A,32B,33A,33B 複数の支持脚
41,81 複数の回転ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間対向した1対のフレームと、
前記1対のフレームの駆動側フレームに軸支された駆動軸に回転自在に取付けられた駆動ローラと、
前記1対のフレームの従動側フレームに軸支された従動軸に回転自在に取付けられた従動ローラと、
前記駆動ローラと前記従動ローラに掛け渡された無端状の走行自在な搬送ベルトと、
前記駆動ローラと前記従動ローラの間において、前記搬送ベルトの下方向への変位を制限し、前記搬送ベルトの裏面側を受ける支持部材と、
前記駆動側フレームに対し、略垂直方向に移動自在に取付けられた入力ペダルと、
前記入力ペダルが押圧されて略垂直方向に移動するとき、それに伴って伸長または収縮して弾性エネルギーを蓄積し、前記入力ペダルの押圧力が解除されることによって前記蓄積された弾性エネルギーが放出され、前記入力ペダルを逆方向に移動させる弾性エネルギー蓄積手段と、
前記入力ペダルの移動を第1のスプロケットの回転運動に変換する回転運動変換手段と、
前記第1のスプロケットの回転運動を前記第1のスプロケットの回転数よりもその回転数を増大する駆動ローラの駆動軸に伝達する第2のスプロケットに伝達するチェーンと、
前記弾性エネルギー蓄積手段がエネルギーを蓄積するときには前記駆動ローラが回転せず、前記弾性エネルギー蓄積手段が蓄積されたエネルギーを放出するときには回転するように取付けられたワンウェイクラッチと
を具備することを特徴とするベルトコンベヤ。
【請求項2】
互いに離間対向した1対のフレームと、
前記1対のフレームの駆動側フレームに軸支された駆動軸に一体回転自在に取付けられた駆動ローラと、
前記1対のフレームの従動側フレームに軸支された従動軸に一体回転自在に取付けられた従動ローラと、
前記駆動ローラと前記従動ローラに掛け渡された無端状の走行自在な搬送ベルトと、
前記駆動ローラと前記従動ローラの間において、前記搬送ベルトの下方向への変位を制限し、前記搬送ベルトの裏面を支持する支持部材と、
前記駆動側フレームに平行移動自在に取付けられた入力ペダルと、
前記入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に伸長または収縮して弾性エネルギーを蓄積し、前記入力ペダルを押す力が解除されることによって前記蓄積された弾性エネルギーが放出されて前記入力ペダルを逆方向に平行移動させる弾性エネルギー蓄積手段と、
前記入力ペダルの少しの距離の平行移動を第1のスプロケットの多くの回転数の回転運動に変換する回転運動変換手段と、
前記第1のスプロケットの回転運動を前記駆動軸に一体回転自在に取付けられた第2のスプロケットに伝達するチェーンとを具備し、
前記駆動ローラは前記弾性エネルギー蓄積手段がエネルギーを蓄積して前記駆動軸が回転するときには回転せず、前記弾性エネルギー蓄積手段が蓄積されたエネルギーを放出して前記駆動軸が回転するときには回転するように、ワンウェイクラッチを介して前記駆動軸に取付けられていることを特徴とするベルトコンベヤ。
【請求項3】
前記弾性エネルギー蓄積手段は、前記入力ペダルが押されて平行移動することによって平行移動方向に収縮して弾性エネルギーを蓄積するコイルばねであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のベルトコンベヤ。
【請求項4】
前記回転運動変換手段は、前記入力ペダルと一体に平行移動するラックギヤと、前記ラックギヤと噛み合い、前記第1のスプロケットと一体に回転する小径のピニオンギヤとからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のベルトコンベヤ。
【請求項5】
前記支持部材には全長に亘ってまたは前記支持部材の中間付近を中心として前記搬送ベルトが接触しても摩擦力が掛からないように前記搬送ベルトの搬送方向に回転する複数の回転ローラが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のベルトコンベヤ。
【請求項6】
前記駆動ローラの慣性を増すために、前記駆動ローラの外周部に重い材料を使用し、及び/または前記駆動ローラの外周部の壁面の厚さを厚くし、及び/または前記駆動ローラの外周部の壁面の内部に全周に亘って重りを取付けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のベルトコンベヤ。
【請求項7】
前記支持部材の両側に前記搬送ベルトを必要な高さに支持するための複数の支持脚が取付けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載のベルトコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−201492(P2008−201492A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36593(P2007−36593)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(591284379)豊明工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】