説明

ベルトプレス脱水装置

【課題】複数段の脱水部によって処理対象物を順に脱水する場合に、後段の脱水部での脱水性能を向上させることができるベルトプレス脱水装置を提供する。
【解決手段】ベルトプレス脱水装置10は、ろ布ベルト16を用いて処理対象物を脱水する1次脱水部12と、1次脱水部12で脱水処理された処理対象物を、ろ布ベルト16、20を用いてさらに脱水する2次脱水部14と、1次脱水部12と2次脱水部14との間に設けられ、1次脱水部12から排出される処理対象物の高さを増加させてから2次脱水部14へと搬出する形状変更部18とを備え、2次脱水部14に十分な高さ寸法を持った処理対象物を投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ布ベルトを用いて汚泥等の処理対象物の脱水処理を行うためのベルトプレス脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、処理対象物である下水や工場排水等の汚泥等を周回移動する無端状のろ布ベルト間で加圧脱水し、その含水率を低下させるベルトプレス脱水装置が利用されている。
【0003】
このようなベルトプレス脱水装置に関し、特許文献1には、脱水性能の向上を図るために、ろ布ベルト間で汚泥を加圧脱水する1次脱水部と、この1次脱水部で脱水処理された汚泥をろ布ベルトと押圧ローラとを用いてさらに脱水する2次脱水部とを備え、これら1次脱水部と2次脱水部との間に、汚泥に鉄系脱水助剤(鉄系凝集剤)を混合する混合機を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−42312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術では、1次脱水部のろ布ベルト間から排出される幅広で薄い形状の汚泥が、その幅広で薄い形状のまま後段の2次脱水部に投入される構成となっている。このため、ある程度の高さ寸法を持って汚泥が投入される1次脱水部に比べ、薄い汚泥が投入される2次脱水部では、その加圧脱水の効率が低下する傾向にあり、特に、2次脱水部に投入される汚泥は1次脱水部で脱水処理がなされた後であるため、更なる脱水が難しく、薄い汚泥では更に効率は低下する。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を考慮してなされたものであり、複数段の脱水部によって処理対象物を順に脱水する場合に、後段の脱水部での脱水性能を向上させることができるベルトプレス脱水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るベルトプレス脱水装置は、ろ布ベルトを用いて処理対象物を脱水する1次脱水部と、前記1次脱水部で脱水処理された処理対象物を、ろ布ベルトを用いてさらに脱水する2次脱水部と、前記1次脱水部と前記2次脱水部との間に設けられ、前記1次脱水部から排出される処理対象物の高さを増加させてから前記2次脱水部へと搬出する形状変更部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、複数段の脱水部の間に、処理対象物の高さを増加させる形状変更部を設けることにより、1次脱水部のろ布ベルト上で幅方向へと広がった状態の処理対象物を、形状変更部を経由させることで圧密し、その厚みを増した状態で2次脱水部へと投入することができる。これにより、後段の2次脱水部に対しても、処理対象物を十分な厚みを持って投入することができるため、2次脱水部での脱水性能を向上させることができる。
【0009】
前記形状変更部には、前記高さを増加させた処理対象物を幅方向に分散させる分散部材が設けられていると、高さを増加させた処理対象物を、その高さを維持した状態のまま、該分散部材によって幅方向両側部へと分散させて広げることができる。このため、2次脱水部でのろ布ベルトの幅寸法を有効に活用した脱水が可能となり、脱水効率を一層高めることができる。
【0010】
前記形状変更部は、前記1次脱水部から排出される処理対象物が流通する搬送路の幅方向寸法を、下流側に向かって漸次減少させた集合路を有すると、1次脱水部で幅方向に広がった処理対象物を該集合路によって幅方向中央に集め、その高さを増加させることができる。
【0011】
前記形状変更部は、前記集合路によって幅が減少されると共に、高さが増加された処理対象物を、前記2次脱水部へと搬出する搬出路を有し、前記搬出路の幅方向寸法は、下流側に向かって漸次増加するとよい。そうすると、形状変更部から搬出される処理対象物を適度に幅方向へと拡散させながら2次脱水部へと投入することができるため、2次脱水部を構成するろ布ベルトの幅寸法を有効に活用した脱水が可能となり、より高い脱水効率を得ることができる。
【0012】
前記形状変更部は、前記1次脱水部から排出される処理対象物を一時的に貯留する貯留槽を有すると、形状変更部での処理対象物の詰まりや圧損を低減することができ、より円滑な流通が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数段の脱水部の間に、処理対象物の高さを増加させる形状変更部を設けることにより、1次脱水部のろ布ベルト上で幅方向へと広がった状態の処理対象物を、その厚みを増した状態で2次脱水部へと投入することができる。これにより、後段の2次脱水部に対しても、処理対象物を十分な厚みを持って投入することができるため、2次脱水部での脱水性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係るベルトプレス脱水装置の全体構成図である。
【図2】図2は、図1中のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図3は、1次脱水部から形状変更部に投入される処理対象物と形状変更部から2次脱水部へと搬出される処理対象物の状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係るベルトプレス脱水装置の変形例に係るベルトプレス脱水装置の全体構成図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態に係るベルトプレス脱水装置の全体構成図である。
【図6】図6は、図5中のVI−VI線に沿う一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るベルトプレス脱水装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るベルトプレス脱水装置10の全体構成図であり、一部を断面で示した側面図である。本実施形態に係るベルトプレス脱水装置10(以下、単に「脱水装置10」ともいう)は、下水汚泥等の処理対象物を、ろ布ベルトを用いた1次脱水部12と2次脱水部14とで順に搬送しながら脱水処理し、脱水ケーキとして排出する装置であり、脱水機のみならず濃縮機として用いても勿論よい。
【0017】
図1に示すように、脱水装置10は、ろ布ベルト(上ろ布ベルト)16を用いて処理対象物を重力脱水する1次脱水部12と、1次脱水部12で脱水処理された処理対象物の形状を変更する形状変更部(圧密機構)18と、形状変更部18から排出された処理対象物をろ布ベルト16とろ布ベルト(下ろ布ベルト)20との間で加圧脱水する2次脱水部14とを備える。
【0018】
1次脱水部12は、複数のローラ22a〜22fに巻回され、一方向に周回駆動される無端状のろ布ベルト16を備え、ろ布ベルト16の移動方向(矢印A方向)に向かって上方に傾斜したローラ22a、22e間に張られたろ布ベルト16が、重力脱水部12aを構成している。
【0019】
ろ布ベルト16は、通水性を持った長尺帯状のろ布であり、十分な張力で各ローラ22a〜22fに巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、図1中の矢印A方向に移動可能である。
【0020】
重力脱水部12aは、上部のローラ22a、22e間に張られたろ布ベルト16の外周面(表面)に処理対象物が載置されることで、該処理対象物に含まれる水分を重力によってろ過分離する手段である。
【0021】
1次脱水部12において、重力脱水部12aの上流側(ローラ22e側)のろ布ベルト16上に投入された処理対象物は、該ろ布ベルト16によって下流側(ローラ22a側)へと搬送されつつ、水分のみが重力によってろ布ベルト16を透過してろ過脱水される。ろ過された水分(分離液、ろ液)は、ろ布ベルト16の内周面側(裏面側)へと透過・落下した後、ろ液受皿24によって回収される。
【0022】
2次脱水部14は、複数のローラ22f〜22iに巻回され、一方向に周回駆動される無端状のろ布ベルト20と、前記ろ布ベルト16とを備え、ろ布ベルト16とろ布ベルト20との外周面(表面)同士を当接(又は近接)配置した部分が、加圧脱水部(プレス部)14aを構成している。なお、図1は、理解の容易のため、ろ布ベルト16とろ布ベルト20との外周面間にやや誇張した隙間を図示しているが、実際にはろ布ベルト16とろ布ベルト20の外周面間は互いに当接又は近接するものであり、図4、図5についても同様である。
【0023】
ろ布ベルト20は、ろ布ベルト16と同様、通水性を持った長尺帯状のろ布であり、十分な張力で各ローラ22f〜22iに巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、図1中の矢印B方向に移動可能である。
【0024】
加圧脱水部14aは、ローラ22b、22c、22f、22d間に張られたろ布ベルト16の外周面と、ローラ22i、22f、22g間に張られたろ布ベルト20の外周面とを当接配置した状態で、これらろ布ベルト16とろ布ベルト20とを同一方向(矢印A、B方向)へと移動させ、両ろ布ベルト16、20の外周面間で処理対象物を挟持・加圧することで、該処理対象物に含まれる水分をろ過分離する手段である。
【0025】
2次脱水部14において、形状変更部18から排出され、加圧脱水部14aの上流側(ローラ22i側)のろ布ベルト20上に投入された処理対象物は、該ろ布ベルト20によって搬送された後、ローラ22b付近から加圧脱水部14aを構成するろ布ベルト16とろ布ベルト20との間に引き込まれて挟持・加圧された状態で下流側へと搬送されつつ、水分のみが両ろ布ベルト16、20による加圧力によってろ布ベルト20を透過してろ過脱水される。ろ過された水分は、加圧脱水部14aを構成するろ布ベルト20の内周面側(裏面側)へと透過・落下し、さらに下部のローラ22g、22h、22i間のろ布ベルト20も透過・落下した後、ろ液受皿26によって回収される。
【0026】
図2は、図1中のII−II線に沿う断面図であり、形状変更部18の平面断面図である。
【0027】
形状変更部18は、1次脱水部12で脱水処理された処理対象物の高さ方向寸法(厚み)を増加させてから2次脱水部14へと搬出・投入することにより、該2次脱水部14での脱水効率を向上させる処理対象物形状変更部(処理対象物高さ増幅部)である。つまり、形状変更部18は、1次脱水部12と2次脱水部14との間で処理対象物を圧密する圧密機構として機能し、圧密された処理対象物を2次脱水部14に投入することで当該2次脱水部14での脱水効率を向上させるものである。
【0028】
この形状変更部18は、図1及び図2に示すように、天面の1次脱水部12寄りに入口28aが開口形成され、2次脱水部14寄りの側面に出口28bが開口形成されたタンク(貯留槽)28を備える。タンク28は、入口28aが、集合路30によって1次脱水部12の出口(ローラ22a付近)と接続され、出口28bが、搬出路32によって2次脱水部14の入口(ローラ22i付近)と接続されている。タンク28には、内部に投入され滞留される処理対象物を攪拌するための攪拌装置29(図1中の2点鎖線参照)や、図示しない薬品添加口(凝集剤投入口)等を付設してもよい。
【0029】
図2に示すように、形状変更部18を構成するタンク28は、1次脱水部12及び2次脱水部14での処理対象物の搬送路を構成するろ布ベルト16及びろ布ベルト20の幅方向に平行する側縁部の幅W1が、ろ布ベルト16及びろ布ベルト20の搬送方向に直交する方向の幅W2よりも小さく設定され、槽内に十分な深さが形成された角タンクである。勿論、タンク18は、角タンク以外であってもよいが、その幅や外径は、両ろ布ベルト16、20の幅W2よりも狭く設定される。なお、本実施形態では、ろ布ベルト16及びろ布ベルト20の幅W2を同一のものとして説明するが、これら両ろ布ベルト16、20の幅は異なるものでもよい。
【0030】
図1及び図2に示すように、集合路30は、1次脱水部12の出口側からタンク28の入口28a側に向かって漸次狭幅となる先細りの搬送路であり、搬送される処理対象物の脱落を防止する側板30aが両側部に起立形成され、下流側(入口28a側)に向かって下方に傾斜している。
【0031】
集合路30は、1次脱水部12の出口側よりもタンク28の入口28a側が狭幅に設定されることで、1次脱水部12で幅方向に広がって搬送・脱水処理された処理対象物を幅方向で中央へと集めて密集させることができ、この密集させた状態で入口28aからタンク28内へと投入可能な搬送路(流路)である。
【0032】
図1及び図2に示すように、搬出路32は、タンク28の出口28b側から2次脱水部14の入口側に向かって漸次幅広となる先広がりの搬送路であり、搬送される処理対象物の脱落を防止する側板32aが両側部に起立形成され、下流側(2次脱水部14の入口側)に向かって下方に傾斜している。
【0033】
搬出路32は、タンク28の出口28b側よりも2次脱水部14の入口側が幅広に設定されることで、タンク28内に集められた処理対象物を幅方向で両側部に向かって広げながら2次脱水部14へと投入可能な搬送路(流路)である。
【0034】
図1に示すように、入口28aからタンク28内へと投入された処理対象物は、タンク28内に一時的に貯留・滞留された後、出口28bから搬出路32へとオーバーフローによって排出される。つまり、タンク28では、処理対象物の入口28aからの投入量と出口28bからの排出量とが等しく設定されており、従って、タンク28内に滞留されている処理対象物は、その上澄み部分から順に出口28bへとオーバーフローによって排出される。
【0035】
搬出路32上には、タンク28の出口28bから搬出される処理対象物に当接し、この処理対象物を幅方向で両側部へと強制的に分散させる分散板(分散部材)38が設けられる。分散板38は、例えば、図2に示す平面視で上流側に頂点が設定され、下流側に底辺が設定されることにより、下流側に向かって幅広となる三角形状の部材であり、搬出路32を2方に分岐させている。勿論、分散板38は、搬出路32を3方以上に分岐させるものであってもよい。
【0036】
次に、以上のように構成されるベルトプレス脱水装置10の動作について説明する。
【0037】
先ず、1次脱水部12を構成する重力脱水部12aの上流側に投入された処理対象物(以下、処理対象物として汚泥を例に説明する)は、ろ布ベルト16上で搬送されつつ重力脱水(自然脱水)され、集合路30へと投入される。集合路30を流れる汚泥は、下流側に向かうに従って幅方向で中央へと集められた後、入口28aからタンク28内へと投入される。
【0038】
タンク28内に投入された汚泥は、オーバーフローによって出口28bから搬出路32へと連続的に排出される。なお、タンク28内に滞留する汚泥を、攪拌装置29で攪拌することも有効である。そうすると、攪拌によって汚泥中のガス分を抜くことができ、2次脱水部14での脱水効率を向上させることができる。さらに、この攪拌時、前記薬品添加口より鉄系凝集剤等の無機凝集剤を添加すれば、タンク28における高い攪拌効率と圧密作用により、該タンク28内に集められた汚泥を凝集剤と十分に混合でき、2次脱水部14での脱水効率を一層向上させることができる。
【0039】
次に、タンク28の出口28bから搬出路32へと搬出された汚泥は、形状変更部18での圧密作用により、1次脱水部12の出口側での厚み(高さH1)よりも厚みを増した状態(高さH2)となり(図3参照)、この厚くなった高さH2の状態で搬出路32を流れて2次脱水部14へと投入される。これにより、2次脱水部14の加圧脱水部14aに投入された汚泥は、ろ布ベルト16、20間で挟持・加圧されて効率よく脱水され、その含水率が所望の値まで低下された後、脱水ケーキとして2次脱水部14から外部に排出される。
【0040】
以上のように、本実施形態に係るベルトプレス脱水装置10によれば、ろ布ベルト16を用いて処理対象物を脱水する1次脱水部12と、1次脱水部12で脱水処理された処理対象物を、ろ布ベルト16、20を用いてさらに脱水する2次脱水部14と、1次脱水部12と2次脱水部14との間に設けられ、1次脱水部12から排出される処理対象物の高さを増加させてから2次脱水部14へと搬出する形状変更部18とを備える。
【0041】
このように、1次脱水部12と2次脱水部14との間に、処理対象物の高さを増加(嵩上げ)させる形状変更部18を設けることにより、1次脱水部12のろ布ベルト16上で幅方向へと広がった状態の処理対象物を、形状変更部18を経由させることで圧密し、その厚み(高さ)を増した状態で2次脱水部14へと投入することができる。これにより、後段の2次脱水部14に対しても、処理対象物を十分な厚みを持って投入することができるため、2次脱水部14の加圧脱水部14aでの脱水性能を向上させることができる。
【0042】
本実施形態の場合、形状変更部18として、図2及び図3に示すように、搬出路32の上流側が接続される出口28bが、ろ布ベルト16、20の幅W2よりも狭い幅W1程度に設定されたタンク28を備える。従って、図3に示すように、1次脱水部12からタンク28へと投入される処理対象物P1の高さH1よりも、タンク28から2次脱水部14へと投入される処理対象物P2の高さH2を容易に且つ確実に高くすることができる。このように、出口28bをろ布ベルト16、20の幅寸法よりも狭い幅寸法に設定すると、1次脱水部12で幅方向に広がって厚みが薄くなった処理対象物P1を幅方向で集約し、その厚みを増大させた状態で搬出路32へと排出し、十分な厚み(高さH2)を持った処理対象物P2として2次脱水部14に投入することができる。
【0043】
また、形状変更部18は、処理対象物を一時的に貯留する貯留槽となるタンク28を有するため、集合路30から連続的に投入される処理対象物をタンク28内で一旦滞留させてから搬出路32へと搬出することができる。これにより、集合路30と搬出路32との間で形状変更を受ける処理対象物が流路上で詰まりを生じることや圧損を生じることを低減することができ、より円滑な流通が可能となる。
【0044】
なお、図1では、1次脱水部12として、重力脱水部12aによって処理対象物を重力脱水する構成を例示したが、該1次脱水部12についても、2次脱水部14と同様に、一対のろ布ベルト間で処理対象物を挟持・加圧するベルトプレス構造とするため、例えば、図1中に2点鎖線で示すように、ローラ40a、40b、40cに巻き掛けられたろ布ベルト42を設置してもよい。このように、1次脱水部12にベルトプレス構造を用いた場合には、該1次脱水部12から排出される処理対象物P1の形状は、一層薄い板状となっているため、1次脱水部12と2次脱水部14との間に形状変更部18を設けることによる脱水性能の向上効果が一層顕著なものとなる。勿論、2次脱水部14を一対のろ布ベルト16、20を用いた構成以外、例えばローラとろ布ベルトとで処理対象物を加圧・脱水する構成としてもよい。
【0045】
また、タンク28の出口28bと2次脱水部14の入口との間を接続し、タンク28の出口28b側よりも2次脱水部14の入口側が幅広に設定された搬出路32を設けることにより、タンク28の出口28bから搬出される処理対象物を適度に幅方向へと拡散させながら2次脱水部14へと投入することができるため、2次脱水部14を構成するろ布ベルト16、20の幅寸法を有効に活用した脱水が可能となり、より高い脱水効率を得ることができる。
【0046】
この際、搬出路32上に分散板38が設けられることにより、図2および図3に示すように、タンク28によってろ布ベルト16及びろ布ベルト20の幅W2よりも狭い幅W1へと密集された後、出口28bから搬出路32上に流された処理対象物を、十分な高さH2を維持した状態のまま、両側部へと分散させて広げることができる。このため、2次脱水部14での両ろ布ベルト16、20の幅寸法を一層有効に活用した脱水が可能となり、脱水効率をより一層高めることができる。
【0047】
なお、図3では、分散板38を設けた構成での汚泥の搬送状態を例示しているため、搬出路32上で汚泥が2方に分岐して流されている状態を図示しているが、分散板38を設けない構成の場合、汚泥は、出口28bの形状に近似した断面形状で搬出路32上を流れつつ、その厚み(高さH2)を維持したまま、搬出路32の形状によって幅方向に僅かに広げられて2次脱水部14へと投入される。このように分散板38を設置しない場合には、汚泥の両ろ布ベルト16、20の幅方向での分散効率は低下するが、汚泥の厚みを十分に増大させた状態で2次脱水部14に投入することは可能であるため、高い脱水効率を得ることは十分可能である。
【0048】
図1及び図2に示すように、集合路30と搬出路32とは、平面視で互いに重なる位置に設置されている。このように集合路30と搬出路32とを形状変更部18の同一側面側に設けて高さ方向に並べて配置することにより、1次脱水部12と2次脱水部14とを処理対象物の搬送方向に集約して配置することができるため、当該脱水装置10が搬送方向に長尺化し、設置スペースが増大することを回避でき、コンパクトな設備構成を実現することができる。
【0049】
図4は、第1の実施形態に係るベルトプレス脱水装置10の変形例に係るベルトプレス脱水装置10aの全体構成図であり、図4(A)は、変形例に係るベルトプレス脱水装置10aの一部省略平面図を示し、図4(B)は、図4(A)に示すベルトプレス脱水装置10aの側面図である。
【0050】
図4(A)及び図4(B)に示すように、ベルトプレス脱水装置10aは、1次脱水部12と2次脱水部14と略同様な構成からなる1次脱水部44と2次脱水部46とを処理対象物の搬送方向に並べて配置し、その間に形状変更部18を設置した構成となっている。
【0051】
1次脱水部44は、ローラ48a、48b間に巻き掛けられたろ布ベルト50を備え、2次脱水部46は、ローラ48c、48d間に巻き掛けられたろ布ベルト52及びローラ48e、48f間に巻き掛けられたろ布ベルト54を備える。このベルトプレス脱水装置10aの場合、装置構成が処理対象物の搬送方向に長尺化することにはなるが、高さ方向での設置スペースを抑え、装置構成を簡素化することができるという利点がある。また、1次脱水部と2次脱水部とを個別に駆動可能とすれば、ろ布速度の変更が容易となり、2次脱水部のろ布速度を低下させることにより、更に脱水ケーキ含水率は低下する。
【0052】
次に、本発明の第2の実施形態に係るベルトプレス脱水装置10bについて、図5及び図6を参照して説明する。
【0053】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るベルトプレス脱水装置10bの全体構成図である。図6は、図5中のVI−VI線に沿う一部省略断面図である。
【0054】
図5に示すように、ベルトプレス脱水装置10b(以下、単に「脱水装置10b」ともいう)は、ろ布ベルト(上ろ布ベルト)60とろ布ベルト(下ろ布ベルト)62との間で処理対象物を加圧脱水する1次脱水部64と、1次脱水部64で脱水処理された処理対象物の形状を変更する形状変更部(圧密機構)66と、形状変更部66から排出された処理対象物をろ布ベルト60とろ布ベルト62との間で加圧脱水する2次脱水部68とを備える。
【0055】
ろ布ベルト60は、複数のローラ70a〜70i及び70kに巻回されて一方向に周回駆動され、同様に、ろ布ベルト62は、複数のローラ70h〜70p及び70c、70eに巻回されて一方向に周回駆動される。ろ布ベルト60及びろ布ベルト62は、1次脱水部64と2次脱水部68の途中のローラ70d、70j部分で互いの外周面(表面)同士が大きく引き離されることで、その間に空間72を形成している。
【0056】
空間72の上流側は、ろ布ベルト60とろ布ベルト62との外周面(表面)同士が当接(又は近接)配置されることで1次脱水部64の加圧脱水部(プレス部)64aを構成し、空間72の下流側は、ろ布ベルト60とろ布ベルト62との外周面(表面)同士が当接(又は近接)配置されることで2次脱水部68の加圧脱水部(プレス部)68aを構成している。1次脱水部64は、上記第1の実施形態に係るベルトプレス脱水装置10、10aの1次脱水部12、44の場合と同様に、重力脱水部として形成しても勿論よい。
【0057】
1次脱水部64及び2次脱水部68を構成する加圧脱水部64a、68aは、上記脱水装置10、10aの加圧脱水部14aと同様な機能を有するものであり、ろ過された水分は、下部のろ液受皿73、74によって回収される。
【0058】
次に、形状変更部66は、上記脱水装置10、10aの形状変更部18と同様な機能を有するものであり、1次脱水部64で脱水処理された処理対処物の高さ方向寸法(厚み)を増加させてから2次脱水部68へと搬出・投入することにより、該2次脱水部68での脱水効率を向上させる処理対象物形状変更部(処理対象物高さ増幅部)である。つまり、形状変更部66は、上記形状変更部18と同様、1次脱水部64と2次脱水部68との間で処理対象物を圧密する圧密機構として機能し、圧密された処理対象物を2次脱水部68に投入することで当該2次脱水部68での脱水効率を向上させるものである。
【0059】
この形状変更部66は、図5及び図6に示すように、ローラ70d、70jによって互いに離間されたろ布ベルト60、62間に形成された空間72内に設置されている。形状変更部66は、1次脱水部64から排出された処理対象物を幅方向で中央に集合させる集合路76と、集合路76によって集められた処理対象物を2次脱水部68へと搬出する搬出路78とを備えることで、1次脱水部64から2次脱水部68へと流通する処理対象物の搬送流路幅を一時的に変更する流路幅変更部材である。
【0060】
形状変更部66は、例えば、当該脱水装置10bを床面上に支持・固定する図示しない基台に設けられたブラケット80によって支持され、空間72内に設置される直方体形状のブロック部材であり、該ブロック部材に集合路76及び搬出路78と、後述する分散板82とが形成されている。
【0061】
なお、形状変更部78のすぐ下流側にあるろ布ベルト62の外周面には、空間72を形成するためのローラ70jが配置されているが、このローラ70jは、図6に示すように、ろ布ベルト62の両側縁部近傍のみを当接支持する2分割構造とすることにより、形状変更部66から搬出された処理対象物を一対のローラ70j、70j間の隙間から下流側へと円滑に搬送することができる。他方、他のローラ70a等については、処理対処物の搬送路上に配置されることはないため、ろ布ベルト60やろ布ベルト62の幅寸法より多少長尺な1本構造であってもよいが、勿論、ローラ70jのような2分割構造でもよく、上記ローラ22a等についても同様である。
【0062】
集合路76は、上記脱水装置10、10aの集合路30と同様な機能を有するものであり、1次脱水部64の出口側から下流側に向かって漸次狭幅となる先細りの搬送路である。図5に示すように、形状変更部66は、その下面がローラ70i、70j間のろ布ベルト62の外周面に摺接又は近接する位置に設置されることで、1次脱水部64から排出された処理対象物は、集合路76へと円滑に流入し、下方への傾斜によって下流側へと流通される。
【0063】
搬出路78は、上記脱水装置10、10aの搬出路32と同様な機能を有するものであり、集合路76の出口となる狭幅部76aから下流側に向かって漸次幅広となる先広がりの搬送路である。この搬出路78上には、上記脱水装置10、10aの分散板38と同様な機能を有する分散板(分散部材)82が配置されている。勿論、分散板82についても、搬出路78を3方以上に分岐させるものであってもよい。
【0064】
図6に示すように、1次脱水部64を出て集合路76へと流入した処理対象物は、次第に幅方向で中央に集められ、その厚み(高さ)を高さH1から高さH2へと増した後(例えば、図3に示される処理対象物P1、P2を参照)、そのまま狭幅部76aから搬出路78へと流通し、2次脱水部68へと投入される。
【0065】
以上のように、本実施形態に係るベルトプレス脱水装置10bにおいても、ろ布ベルト60、62を用いて処理対象物を脱水する1次脱水部64と、1次脱水部64で脱水処理された処理対象物を、ろ布ベルト60、62を用いてさらに脱水する2次脱水部68と、1次脱水部64と2次脱水部68との間に設けられ、1次脱水部64から排出される処理対象物の高さを増加させてから2次脱水部68へと搬出する形状変更部66とを備えるため、上記第1の実施形態に係るベルトプレス脱水装置10、10aの場合と同様に、1次脱水部64で幅方向へと広がった状態の処理対象物を、形状変更部66を経由させることで圧密し、その厚み(高さ)を増した状態で2次脱水部68へと投入することができ、2次脱水部68の加圧脱水部68aでの脱水性能を向上させることが可能となる。
【0066】
この場合、本実施形態では、形状変更部66として、処理対象物の流通する搬送路の幅寸法を集合路76によって狭幅にする構造で、図5に示すように、1次脱水部64から形状変更部66へと投入される処理対象物P1の高さH1よりも、形状変更部66から2次脱水部68へと投入される処理対象物P2の高さH2を容易に且つ確実に高くすることができるため、装置構成の簡素化と低コスト化を図ることができる。なお、図5に示されるろ布ベルト60、62を用いた2段のベルトプレス構造の脱水装置10bについても、形状変更部66に代えて、図1に示す形状変更部18を空間72内に設置してもよいことは勿論であり、同様に、図1及び図4に示す脱水装置10、10aについても、形状変更部18に代えて、タンク28を持たない構成の形状変更部66を用いてもよい。
【0067】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0068】
例えば、上記実施形態では、1次脱水部と2次脱水部の2段で処理対象物を脱水処理するシステムを例示したが、3段以上に分けて脱水処理するシステムとして構成しても勿論よい。この場合、形状変更部18、66は、例えば、いずれか又は全ての2段の脱水部の間に設置するとよい。
【0069】
また、1次脱水部と2次脱水部との間で処理対象物を圧密し、その高さを増加させる形状変更部(圧密機構)としては、上記の形状変更部18、66以外の構成であっても勿論よく、要は、前段の脱水部で脱水処理された処理対象物を後段の脱水部に投入する前に、その厚みを増加させることができる構成を持つものであればよい。
【符号の説明】
【0070】
10、10a、10b ベルトプレス脱水装置
12、44、64 1次脱水部
14、46、68 2次脱水部
16、20、60、62 ろ布ベルト
18、66 形状変更部
30、76 集合路
32、78 搬出路
38、82 分散板
42、50、52、54 ろ布ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ布ベルトを用いて処理対象物を脱水する1次脱水部と、
前記1次脱水部で脱水処理された処理対象物を、ろ布ベルトを用いてさらに脱水する2次脱水部と、
前記1次脱水部と前記2次脱水部との間に設けられ、前記1次脱水部から排出される処理対象物の高さを増加させてから前記2次脱水部へと搬出する形状変更部と、
を備えることを特徴とするベルトプレス脱水装置。
【請求項2】
請求項1記載のベルトプレス脱水装置において、
前記形状変更部には、前記高さを増加させた処理対象物を幅方向に分散させる分散部材が設けられていることを特徴とするベルトプレス脱水装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のベルトプレス脱水装置において、
前記形状変更部は、前記1次脱水部から排出される処理対象物が流通する搬送路の幅方向寸法を、下流側に向かって漸次減少させた集合路を有することを特徴とするベルトプレス脱水装置。
【請求項4】
請求項3記載のベルトプレス脱水装置において、
前記形状変更部は、前記集合路によって幅が減少されると共に、高さが増加された処理対象物を、前記2次脱水部へと搬出する搬出路を有し、
前記搬出路の幅方向寸法は、下流側に向かって漸次増加することを特徴とするベルトプレス脱水装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のベルトプレス脱水装置において、
前記形状変更部は、前記1次脱水部から排出される処理対象物を一時的に貯留する貯留槽を有することを特徴とするベルトプレス脱水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−91044(P2013−91044A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235399(P2011−235399)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】