ホトマスク及びその製造方法並びに露光方法
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の利用分野】本発明は、ホトマスクとウェハまたはプリント板等の基板を微小ギャップ離して露光するプロキシミティ露光法等において、高解像性能を得るためのホトマスク及びその製造方法並びに露光方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ホトマスク上の所望のパターンをウェハまたはプリント板等の基板上に転写する露光方法は、投影露光方法、密着露光法、プロキシミティ露光方法の3つに大きく分けることができる。各露光方法の性能を評価する基準として解像度、歩留まり、露光速度、装置価格を考える。解像度は、より細かいパターンを転写できるほどよく、歩留まりは、パターン転写欠陥の起こる確率が小さいほど良い。
【0003】レンズ系やミラー系を用いた投影露光方式は、解像度や歩留まりはよいが、装置構成が複雑なため高価格であり、ホトマスクや基板を移動させるため比較的露光速度は遅い。ホトマスクと基板を密着させて露光する密着露光方式は、解像度はよく露光速度も速く装置も低価格であるが、接触によりホトマスクや基板の損傷が起こり、歩留まりが低い。
【0004】ホトマスクと基板を微小ギャップあけて露光するプロキシミティ露光方式は、装置は低価格で露光速度も速く、ホトマスクと基板の接触による損傷はないため歩留まりはよいが、微小ギャップあけるために光が回折し、高解像度は得られない。
【0005】また、従来技術として、特公平1−51825号公報が知られている。即ち、この従来技術には、「リソグラフィ用マスクがリソグラフィの分解能よりも小さな複数の透明要素及び不透明要素(ハーフトーン)を含むリソグラフィ方法」により、解像度が向上することが示されている。また、透過光の位相をシフトさせる位相シフトを併用し、有限段数の位相シフタとハーフトーンにより任意の複素振幅透過率分布を実現することが示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】上記従来のプロキシミティ露光方法で用いられたホトマスクは、光の回折により解像度が低下するという課題があった。この課題について、図2、図5を用いて説明する。図2は、孤立遮光パターンを露光するための従来のホトマスクの断面図であり、ホトマスク11上には遮光パターン12が形成されている。横軸xは基板13上の位置を示す座標であり、x1、x2は遮光パターン12境界の座標である。gは、ホトマスクと基板間のギャップである。このホトマスク11に露光照明光10を照射して露光をおこなうときの基板13上の光強度Iの分布を図5に示す。ポジレジストを基板上に塗布して露光および現像をするとき、基板上の光強度Iがあるしきい値以下の部分にパターンが残ることになる。実線31は照明光10が平行コヒーレント光であるとき(視角ゼロのとき)の光強度分布であり、回折光の影響でパターン中心部で光強度が大きくなる。光強度しきい値をどのようにとっても、解像パターンの境界をx1とx2にとることはできない。一点鎖線30は図9の視角57を大きくするときの光強度分布で、パターン中心部の光強度が小さくなってx1とx2を境界にもつ所望のパターンが得られるが、解像する光強度しきい値付近の光強度分布の勾配が非常に小さくなっている。この勾配が小さいと、露光量のばらつきやプロセスばらつきに対するパターン線幅の変化が大きくなり、安定な解像パターン線幅が得られないという課題を有していた。
【0007】図7(a)、(b)はホトマスク上に長方形遮光パターン35が形成されているときの被露光基板上の光強度の等高線分布を示す図である。長方形の短辺の長さは、1次元の場合のパターン幅dと同じであり、35は長方形の境界も示す。図7(a)は視角ゼロの場合で、光強度しきい値をどのようにとっても、回路パターン形状は大きく変化してしまい、しきい値0.4のときのレジストパターンは斜線に示すようになる。図7(b)は1次元の場合と同じく視角を大きくする場合であるが、やはり所望の回路パターン形状は得られないという課題を有するものである。
【0008】また、特公平1−51825号公報には、波面を逆に再生し、基板上で結像させて、プロキシミティ露光の解像度を向上させようとする課題については、考慮されていない。
【0009】本発明の目的は、上記課題を解決すべく、プロキシミティ露光方式等では解像できなかった微小パターンを正確に解像し、しかもパターン寸法の変化を小さくして露光できるようにしたホトマスク及びその製造方法並びに露光方法を提供することにある。
【0010】
【問題点を解決するための手段】本発明においては、上記目的を達成するために、基板上で望ましい光強度分布が得られるようなホトマスクを設計する。その設計方法の1つは以下のとおりである。照明光波長をλ、露光時のホトマスクと基板との間のギャップをgとする。所望の転写パターンが波長λの平行コヒーレント光によって照射されるときの回路パターンから光軸方向にz離れた仮想平面上での光の複素振幅分布を、光の回折の式等を用いて計算機により計算して求める。なお、光の回折の式を用いる場合には、フレネル回折やフラウンホーファ回折の近似式によるのがよい。そしてこの複素振幅分布の複素共役に等しい位相分布および振幅透過率分布を透過光に与えるようなホトマスクを形成すればよい。すなわち、透過光の位相と実効的な光振幅透過率の両方が連続的または離散的に変化するようなホトマスクを用いる。実際の露光では、図9に示す露光系を用いて、波長λを主な波長成分とする照明光をこのホトマスクに照射して基板上にパターンを転写する。
【0011】
【作用】本発明による作用を図10により説明する。図1010(a)は、所望の転写パターンを有するホトマスク60に平行コヒーレント光を照射するときの光の波面の伝播状況を表している。図10(b)は本発明によるホトマスク62に平行コヒーレント光を照射して露光するときの光の波面の伝播状況を表している。図10(a)のホトマスク60と基板61の間隔と、図10(b)のホトマスク62と基板63間の間隔は同じである。70から74および80から84は位相の等しい波面を表しており、線の太さは光の振幅の大きさを表す。例えば、図10(a)の透過直後の波面71は、遮光部の振幅がゼロで透過部の振幅、位相が等しいことを示し、波面72はパターン部の位相が大きく遅れていて振幅が小さいことを表している。伝播するにつれ、波面74のようにパターン部にあたる部分の振幅が大きくなり、位相の遅れが小さくなっていく。ホトマスク透過直後の波面81が、波面74の振幅と同一で位相を反転した波面となるようにホトマスク62を形成する。ホトマスク62と基板63間で波面が(a)の場合と逆に伝播し、波面82、83はそれぞれ波面73、72と振幅が等しく位相を反転した波面になる。基板63面上の波面84は、元のホトマスク60透過直後の波面71の再生になる。すなわち基板63上では、遮光部に対応する部分の光の振幅がゼロとなり透過部では一様な振幅、位相になる。波面81が波面74の反転そのものであるような理想的な場合には、ホトマスクと基板の間のギャップがいかに大きくても元のホトマスク60透過直後の光の強度分布が再現できる。
【0012】
【実施例】本発明によるホトマスクを用いたプロキシミティ露光の実施例を図1を用いて説明する。図1は本発明によるホトマスクの一実現方法(実施例)を表す断面図である。1は平行なコヒーレント光、2はホトマスク、3はホトマスク上に形成された微小なクロムの細線パターン、4は位相シフタ、5は基板である。このホトマスクは、以下のようにして得られる。図2に示す所望のパターン12を有するホトマスク11への露光照明光10を平行コヒーレント光とする。このときホトマスク透過直後の光の振幅分布は図3(a)に示す分布15をもつ。ギャップgだけホトマスク11から離れた基板13上の回折光の複素振幅分布を求め、その複素共役をとると図3(b)に示す実線の振幅分布16と図3(c)に示す実線の位相分布18になる。基板上の位置を示すx軸を十分細かい間隔で分割し、各領域で振幅分布16を3段階に離散化すると点線で示す振幅分布17が得られる。透過度1/3の部分は図3(d)のように開口部と遮光部の比を1対2に、2/3の部分は図3(e)のように2対1にして図1に示す細線パターン3を得る。この細線パターンが解像しないようにx軸の分割間隔を選んでおく。この細線パターン3は、クロム等を用いて通常の露光、現像、エッチングプロセスにより形成できる。また、位相分布18も同様に離散化して点線で示す位相分布19をえる。この分布を実現するには、空気に対してある屈折率差をもつ透明な材料からなる位相シフタを設ける。位相シフタのある開口部の位相が遅れることになる。位相シフタ材料としては、SiO2やホトレジスト材料が考えられる。先の位相分布の離散化単位の遅れを透過光に与える位相シフタ厚さを計算し、位相シフタをその厚さを単位として3層に重ね、図1に示す位相シフタ4を形成する。図4に、このホトマスクに平行コヒーレント光を照射して露光を行うときの基板5上の光強度分布25を示す。遮光パターンに対応する中心部分での光強度はほぼゼロで、点線に示すようにもとのパターン境界のx1、x2を境界にもつ解像パターンが得られる。また、解像する光強度しきい値付近での光強度分布は急勾配をもち、露光量の変動や現像プロセスのばらつきに対する解像パターン幅の変化が小さい。一方、本実施例で用いたような細線パターン3は回折格子として働き、図4では示されていないさらに外側の基板上の光強度分布に、高空間周波数成分からなるノイズが生じることがある。しかし、照明系の視角57を増やすことでノイズを打ち消すことができる。図には示さないが、ノイズが打ち消される程度に視角を増やしても図4の光強度分布はほとんど変わらない。
【0013】同じ1次元孤立遮光パターンのプロキシミティ露光に用いるホトマスクの計算方法は、以上の1通りだけではない。図6を用いて説明する。これまでは、所望のパターン透過直後の光は振幅位相とも一様として微小ギャップ離れた基板面上の光の振幅および位相分布を計算した。よりコントラストのよい光強度分布を得るための方法は、所望のパターン透過直後の光の振幅分布が図3(a)の振幅分布15ではなく、図6のような遮光パターンエッジx1、x2付近のコントラストを大きくした振幅分布33であると仮定して、基板面上の光の複素振幅分布を計算することである。こうして計算したホトマスクを用いて露光を行うと、解像する光強度しきい値付近の勾配のより大きい光強度分布となり、パターン線幅の変動が小さくなる。また、露光時の基板上の光強度分布だけが所望の分布になればよく、その位相は問われない。前の実施例では、所望のパターンに照射する光の位相は一様として基板上の光の振幅および位相分布を計算したが、任意の位相分布を与えても良いことは明らかである。位相分布をうまく与えることにより、ホトマスクの形成をより簡単にしたり、露光時の基板上の光強度分布をより望ましくすることができる。
【0014】2次元の場合の長方形パターンのプロキシミティ露光の実施例を図8を用いて説明する。図8(a)に示すように、所望の長方形パターン41の形成されたホトマスク42と、そのホトマスクから露光ギャップg離れており、かつ格子上に区切られた仮想面43を考える。このホトマスク42に平行コヒーレント光40を照射するときの仮想面43上の各格子内での光の振幅分布と位相分布を計算する。その振幅分布を3段階に離散化し、透過率ゼロの格子はすべて遮光部とし、透過率1/3の格子は図8(b)のような斜線で示す遮光部と空白の透過部の比率が2対1のパターンに置き換え、2/3の格子は図8(c)のように遮光部と透過部の比率が1対2のパターンに置き換え、透過率が1の格子はすべて開口とする。これらのパターンが解像しない程度に微小となるように格子の大きさをあらかじめ決めておく。図8(d)は、その結果得られたホトマスク上の細線パターン44を上方から見た図である。図8(d)、(e)、(f)とも点線は図8(a)の元の長方形遮光パターン41の境界を示す。一方、位相分布は正負逆にしたのちある離散化単位で離散化し、位相を遅らせる格子ほど厚い位相シフタに置き換える。そのときの位相シフタ配置図をホトマスク上方から見たものを図8図(e)に示す。45はシフタのない部分、46、47、48はそれぞれ単位シフタ厚さの1倍、2倍、3倍の厚さの領域を表している。この細線パターン44と位相シフタ配置を有するホトマスクに平行コヒーレント光を照射して露光するときのギャップg離れた基板上の光強度の等高線分布を図8(f)に示す。図7(b)と同様に斜線部は、光強度が解像光強度しきい値より小さい部分であり、元のパターンに近いレジストパターンが得られている。さらに解像する光強度しきい値付近での等高線密度が大きく光強度分布の勾配が大きいため、線幅ばらつきが小さくなっている。なお、この場合も細線に垂直な方向に光が回折して光強度分布に高周波のノイズが生じるため、視角を少し増す必要がある。
【0015】本発明によるホトマスクにおいて、光の振幅透過率分布や位相分布を実現する他の実施例について図11を用いて説明する。まず振幅透過率の場合は、図1111に示すように露光量により現像後に光の透過率のかわる感光材料91、たとえば銀塩感光材料やフォトポリマーをホトマスク90に塗布した後、この感光材料91に図に示すように適当な露光量分布をもつ露光をして現像する。露光量分布は、たとえばレーザー直描で場所により照射量を変えることで実現すればよい。位相分布についても同様に、露光量により現像後の光の屈折率のかわる感光材料を塗布した後、同様に露光、現像すればよい。本実施例によれば、振幅透過率や位相変調度の分布を露光量に置き換えるため、連続的な分布が実現しやすいという効果がある。
【0016】本発明によるホトマスクにおいて、光の振幅透過率分布を実現する他の実施例について図12を用いて説明する。図12は、数層に重ねた半透明フィルム93を有するホトマスク92の断面図であり、半透明フィルムを重ねることによって光透過率の分布を実現することもできる。フィルム厚さによる位相遅れの影響がでるときは、それを考慮して位相シフタ厚さを計算すればよい。
【0017】プロキシミティ露光方式の一例を図9により説明する。図9において、高圧水銀灯光源50からの光を反射ミラー51によりロッドレンズ群52に集め、各ロッドレンズからの出射光をコリメーターレンズ54により平行光としてホトマスク55に照射する。ロッドレンズ群直後の絞り53により光を出射するロッドレンズの数を制限して、視角と呼ばれる照射光の最大傾き角57を変える。絞り53の径を小さくすると、光の分布はホトマスクに垂直な平行光だけになり、視角ゼロのコヒーレントな照明となる。
【0018】次に本発明の原理を図10に基いて説明する。即ち、図10(b)に示すように、ホトマスク2(62)と基板5(63)間で波面が図10(a)の場合と逆に伝播し、波面82、83はそれぞれ波面73、72と振幅が等しく位相を反転した波面になる。基板5(63)面上の波面84は、元のホトマスク60透過直後の波面71の再生になる。すなわち基板5(63)上では、遮光部に対応する部分の光の振幅がゼロとなり透過部では一様な振幅、位相になる。波面81が波面74の反転そのものであるような理想的な場合には、ホトマスクと基板の間のギャップがいかに大きくても元のホトマスク60透過直後の光の強度分布を再現することができる。このように、転写パターンが細かくなっても、回折の影響を受けることなく、高解像度でもって転写露光することができる。
【0019】また、プロキシミティ露光で大面積を一度に転写する場合の実施例を図13を用いて説明する。図1313は大型の本発明によるホトマスク100を用いて基板103上にパターン転写する場合を示す。ホトマスク100自体が重力によりたわむため、中央部102のギャップg1は端部101のギャップg2より小さくなるが、このギャップの分布は計算で求めることができる。そこで、所望のパターンを有するホトマスクに平行コヒーレント光を照射すると仮定して仮想面上での光の複素振幅を計算するときの、ホトマスクと仮想面のギャップをホトマスク上の位置によって変えればよい。本実施例のように計算したホトマスクを用いて露光すると、ホトマスクのたわみに影響されることなく全基板面上で所望の光強度分布が実現できる効果がある。
【0020】最後に本発明によるホトマスクを投影露光に適用する実施例を図14を用いて説明する。図14は、ホトマスク110に露光照明光113を照射して所望パターンを入射瞳115と投影レンズ114からなる投影露光系により段差のある基板面上に転写する場合を示す断面図である。段差の上面111に焦点が合っているとすると、従来のホトマスクを用いて露光すれば段差の下面112はデフォーカスとなる。そこで、面112上に結像するときの面111上での光の複素振幅分布を計算する。段差の高さgをプロキシミティギャップとみなし、本発明で用いた方法により導く。面111上でのこの光の複素振幅分布を実現するようなホトマスク透過直後の光の複素振幅分布を、投影レンズ系の伝達関数から逆計算し、本発明によるホトマスク110を用いて投影露光を行う。本実施例によれば、段差による焦点ずれの影響を排除した露光が可能になるという効果がある。
【0021】次に、本発明の原理を更に具体的に図15を用いて説明する。即ち、図15(a)は、所望の1次元遮光パターン12(以下所望パターン)に波長λの平行コヒーレント光70を照射すると仮定するときの光の波面の伝播状況を表している。図15(b)は本発明によるホトマスク(以下結像性マスクと称す。)62(2)に同じ波長λの平行コヒーレント光1を逆向きに露光するときの光の波面の伝播状況を表している。図15R>5(a)の所望パターン形成面60と仮想面61の間隔は、図15(b)の結像性マスク62(2)と被露光基板63の間隔と同じでgである。図15(a)に示すように所望パターン形成面60上に位置座標xo、仮想面61上に位置座標xiをとり、所望パターンの両端の座標をx1、x2とする。71から74および81から84は位相の等しい波面を表しており、線の太さは光の振幅の大きさを表す。例えば図15(a)の所望パターン12透過直後の波面71は、遮光部の振幅がゼロで透過部の振幅位相が一様であることを示し、波面72は中心部の位相が大きく遅れていて振幅が小さいことを表している。伝播につれ、波面74のように中心部分の振幅が大きくなり、位相の遅れが小さくなっていく。
【0022】結像性マスク62(2)透過直後の複素振幅は、仮想面上の複素振幅の位相を反転したものであるように形成されている。74では中央部の位相が遅れているので、位相反転すると81の中央部の位相は進む。光の伝播方向が反対であるため、図15(a)の遅れと図15(b)の進みは図中で対応し、液面74は液面81と同一形状になる。従って、結像性マスク5を透過した光の波面は(a)の場合と逆に伝播し、被露光基板63面上の波面84は、所望パターン12透過直後の波面71を再生する。すなわち被露光基板63上では、遮光部に対応する部分の光の振幅がゼロで、透過部に対応する部分で一様な複素振幅になる。こうして結像性マスクを用いると回折の影響をなくすことができ、所望パターン透過直後の光の強度分布が再現できる。
【0023】次に本発明による結像性マスクを用いて一次元遮光パターンを転写するプロキシミティ露光について、更に具体的に図15から図18を用いて説明する。ギャップg、パターン幅d=x2−x1は、従来のホトマスクを用いた図5の場合と同じであるが波長λは図1の場合と少し異なっている。結像性マスク62(2)上には、微小な遮光パターン3と位相シフタ4が形成されている。この結像性マスクの製造方法を図16に基いて説明する。
【0024】所望パターン(図15に示す1次元遮光パターン12)に波長λの平行コヒーレント光を照射するときのパターン透過直後の複素振幅分布uo(xo)、波長λ、ギャップgを入力データ161とし、ギャップg離れた仮想面61上の光の複素振幅分布を計算機162により計算する。光の進行方向に位相の正方向をとる。パターン寸法dは数1で表されるプロキシミティ露光の解像限界R以下であり、通常フレネル近似が成り立つ。
【0025】プロキシミティ露光の解像限界Rは、露光波長をλ、マスクと基板の間隔をgとすると数1で表される。
【0026】
【数1】
【0027】ここでk1は定数で、1.4程度である。
【0028】そして、仮想面61上の複素振幅ui(xi)は1次元のフレネル回折の式を用いて数2で表される。
【0029】
【数2】
【0030】kは波数でk=2π/λである。ギャップ、波長、パターン寸法によってはフラウンホーファ回折の式を用いてもよい。計算した複素振幅ui(xi)の複素共役をとり、結像マスク上の位置を表す座標をxmとして結像性マスク透過光の複素振幅分布um(xm)が得られる。um(xm)とui(xi)の振幅は等しく、位相の符号が反転することになる。um(xm)の振幅をa(xm)、位相をφ(xm)とすると、図15に示す所望パターン12の場合、図17(a)の実線の振幅分布16と図17(b)に示す実線の位相分布18が得られる。透過光にこのように連続的に変化する分布を与える結像性マスクを形成するのは困難なため、近似を行う。まずxm軸を十分細かい間隔pで分割する。分割された各領域で振幅分布16および位相分布18をサンプリングする。次に振幅分布を3段階に量子化すると点線で示す振幅分布17が得られ、位相分布も同様にπ/6を単位角度として量子化すると点線で示す位相分布19が得られる。さらに、振幅透過率は微小な遮光パターン3を用いて開口率分布に置き換える。透過率ゼロの部分は遮光部3とし、透過率1/3の部分は図17(c)の26のような遮光部と透過部の比率が2対1のパターンに置き換え、2/3の部分は27のような遮光部と透過部の比率が1対2のパターンに置き換え、透過率が1の部分はすべて開口とする。これらのパターンが解像しない程度に微小となるように分割の大きさpを選んでおく。図1717(c)の3に示すような遮光パターン分布が得られる。
【0031】なお、量子化の段階数は3に限られるものではなく、最大9程度で十分正確に近似することができる。
【0032】位相分布19は、図17(c)に示すように、空気に対してある屈折率差をもつ透明な材料からなる位相シフタ4により実現する。位相シフタ4が厚いほど透過光の位相が遅れることになる。先の位相分布の量子化単位π/6の遅れを透過光に与える位相シフタ厚さを計算し、その厚さを段差とする位相シフタパターンを形成すると、図17(c)の位相シフタ4となる。28aは透過光の位相をπ/6進ませる部分、29は位相変化を与えない部分、28bはπ/6遅らせる部分である。
【0033】なお、量子化単位は、π/6に限られるものでなく、π/12(以上)からπ/4(以下)の範囲であればよい。
【0034】以上図16に示すように、計算機162により得られた微小遮光パターンと位相シフタパターンからなる結像性マスクデータ163をホトマスク作成部164に入力する。
【0035】結像性マスクデータ163が入力されたホトマスク作成部164において、微小遮光パターン3については、クロム等を用いて通常の電子線描画、現像、エッチングプロセスにより形成し、位相シフトパターン4については、空気に対してある屈折率差をもつ透明な材料からなる位相シフタ(厚さを変化させること)より実現する。なお位相シフタ材料としては、SiO2やホトレジスト材料が考えられる。多段階の位相シフタを形成するには、ホトマスク基板上に塗布したレジストに、位相分布に対応する露光量分布を与えて露光後現像して厚さの分布を得る方法がある。また、単位厚さの位相シフタを重ねて形成してもよい。
【0036】以上により、本発明による結像性マスク62(2)を製造することができる。
【0037】このようにして製造された結像性マスク2(62)を図9に示すプロキシミティ露光装置に設置し、結像性マスク2(62)と被露光基板5間にギャップgを設け、波長λの照明光を結像性マスク2に照射し、正規の回路パターンが高解像度で被露光用基板5に転写露光される。
【0038】視角ゼロのときの被露光基板5上の光強度分布は、図18に示す32になる。中心部分での光強度はほぼゼロであり、解像光強度しきい値Ith=0.25のとき、点線に示すようにx1、x2を境界にもつ解像パターンを得ることができる。x1、x2付近での光強度分布は急勾配をもち、高コントラストが得られる。なお、本実施例の結像性マスク2(62)は微小遮光パターン3により高次回折光を生じ、図18では示されていないさらに外側の基板上の光強度分布に高空間周波数成分からなるノイズがでる。しかしながら、パターン残りを生じる大きさではなく解像に影響はない。このノイズは図9R>9に示す視角57を増すと打ち消される。このときも図1818の光強度分布はほとんど変わらない。
【0039】2次元パターンに対する結像性マスクも同様に設計できる。図7で示したのと同じ長方形遮光パターン35を転写するための結像性マスクについて、更に具体的に図19、図20、図21に基いて説明する。図1919に示すように、所望長方形パターン41に波長λの平行コヒーレント光40を照射するときのギャップg離れた仮想面43上の光の振幅分布と位相分布を計算機162により計算する。即ち、所望パターン形成面42上の座標を(xo、yo)、所望パターン形成面42透過直後の光の複素振幅をuo(xo、yo)、仮想面43上の座標を(xi、yi)、仮想面43上の複素振幅をui(xi、yi)とする。フレネル近似を用いるときの2次元のフレネル回折式は数3で表される。
【0040】
【数3】
【0041】1次元の場合と同様に仮想面43を格子間隔pで分割し、各格子の中心点で複素振幅分布ui(xi、yi)を計算機162で計算し、位相の符号を反転することにより複素共役をとって結像性マスク透過光の複素振幅分布um(xm、ym)を得る。更に計算機162は、1次元と同様に振幅分布と位相分布を量子化し、微小パターンと位相シフタパターンを計算して図20(a)に示す微小遮光パターン44aと図20(b)に示す位相シフタパターンが得られる。図20中の長方形46aは図7の元の長方形遮光パターン35の境界を示す。図20(b)において47aはシフタの最も薄い部分で図17(c)の28aに対応し、48a、49aはそれぞれ29、28bに対応する。この結像性マスク2(62)に波長λの平行コヒーレント光を露光するときのg離れた被露光基板5上での光強度の等高線分布を図2121に示す。長方形46aは元の長方形遮光パターン35の境界である。光強度しきい値を0.3とするときのレジストパターンを斜線部で示す。パターンは角部で丸みを帯び、多少うねりが残るが図7(b)と比べるとパターンの再現性の向上は明かである。また解像光強度しきい値付近での等高線密度が大きく、高コントラストが得られている。この場合も細線に垂直な方向に光が回折して光強度分布に高周波のノイズが生じるが、視角をわずかに大きくすることで打ち消される。
【0042】同じギャップと同じ波長で、2つの隣接した長方形パターン46bを転写するための結像性マスクの微小遮光パターン44bを図22(a)に、位相シフタパターンを図22(b)に示す。長方形短辺の寸法は図20の場合の長方形の短辺の寸法と同じである。図22R>2(a)の微小遮光パターンの長手方向は、図20(a)とは直交している。図22(b)に示す長方形の位相シフタパターンの47b、48b、49bはそれぞれ図17の28a、29、28bに対応している。このマスクを用いて露光するときの基板上光強度等高線図(視角はゼロ)を図23(b)に示す。比較用に従来のホトマスクを用いる場合(視角は図7(b)の場合と同じ)を図23(a)に示す。図23(a)で斜線で示したレジストパターンは光強度しきい値0.4の場合であり、図のように所望パターンとは全く異なる3つのパターンが残る。図23(b)では図7と同様に角部が欠けて丸みを帯び、中央部にふくらみが見られるが、ほぼ所望パターンが再現し、解像光強度しきい値付近の等高線密度が大きく高コントラストが得られている。
【0043】図15から図23の実施例は、波長λ=405nm、ギャップg=120μm、パターン幅d=4.5μm、ピッチp=1.5μmの場合である。このときの視角は0.5°程度がよい。別の波長やギャップでも相似則を用いると同じ結像性マスクパターンが使えることを示す。1次元フレネル回折の数2の座標を√(gλ)で無次元化し、無次元化寸法Xo=xo/√(gλ)、Xi=xi/√(gλ)とする。さらにUo(xo)、Ui(xi)を数4、数5で定義する。
【0044】
【数4】
【0045】
【数5】
【0046】このとき数2の位相項ejkgを無視して書き換えると、数6の関係が成り立つ。
【0047】
【数6】
【0048】数6において、結像性マスクの複素振幅透過率の複素共役を表すUi(xi)はUo(xo)のみに依存し、ギャップg、波長λに依存しない。従って、無次元化した所望パターン形状が同じ場合は結像性マスクの微小遮光パターンと位相シフタパターンも相似になり、数5より寸法のみ√(gλ)倍すればよい。また無次元視角Θ=(√(g/λ))・θとおけるので、露光時の視角を無次元視角Θが等しくなるように選べば相似な基板上光強度分布が得られる。
【0049】あるパターンを転写するための結像性マスクの計算方法は前述の方法に限らない。前記実施例では、所望のパターン透過直後の光の複素振幅について、透過部の振幅と位相は一様として仮想面上の光の複素振幅分布を計算した。この振幅、位相分布にある変化を与えてもよい。たとえば1次元遮光パターンの場合、よりコントラストのよい光強度分布を得るため、所望のパターン透過直後の光の振幅分布を図24のように遮光パターンエッジ付近のコントラストを大きくする。こうして計算した結像性マスクを用いて露光すると、光強度分布の解像光強度しきい値付近の勾配がより大きくなり、高コントラストが得られる。また、近似を行うために露光後に得られるパターン寸法に誤差を生じることがある。このときは、計算に用いる元パターン寸法を修正する方法がある。たとえばレジストパターン寸法が所望より小さくなるときは、元パターン寸法を大きく修正して計算を行うとよい。さらにまた、元パターン透過直後の光の位相が一様でないとして、任意の位相分布を与えて計算してもよいことは明らかである。位相分布をうまく与えることにより、ホトマスクの形成をより簡単にしたり、露光時の基板上の光強度分布をより望ましくすることができる。
【0050】以上の実施例ではサンプリング間隔pは一定としたが、可変にして計算効率をよくする方法もある。たとえば、結像性マスクの複素振幅透過率の変化が大きい部分(たとえば角部など)でのサンプリング間隔を小さくして変化の小さい部分でのサンプリング間隔を大きくするとよい。また、以上の実施例では振幅の量子化段数を3、位相の量子化単位角をπ/6としたが、段数を増やすほどまた単位角を小さくするほど近似精度は向上すると考えられる。ただし、段数を増やすことは微小遮光パターンの寸法を小さくすることになり、単位角を小さくすることは位相シフタの段数を増やすことになるため、マスクの製造はより困難になる。さらに特公平1−51825号公報に示されたように、有限段数の位相シフタを用い、複素振幅のベクトル和により任意の複素振幅透過率の近似をする方法もある。
【0051】結像性マスクの作成方法は、遮光パターンと位相シフタだけとは限らない。振幅透過率の分布を実現するには、図25に示すように、露光量により現像後に光の透過率のかわる感光材料91たとえば銀塩感光材料やフォトポリマーをマスク基板90に塗布した後、この感光材料91に図に示すような適当な分布をもつ照明光を露光して現像する。露光量分布は、たとえば電子線やレーザーの直描で場所により照射量を変えることで実現すればよい。位相変調率分布についても同様に、露光量により現像後の光の屈折率がかわる感光材料を塗布した後、同様に露光、現像すればよい。本実施例によれば、振幅透過率や位相変調度の分布を露光量に置き換えるため、連続的な分布が実現しやすいという効果がある。また、図26はマスク基板92に半透明膜93a,93bを重ねて形成して光の振幅透過率分布を実現する場合を示す。膜厚による位相遅れの影響がでるときは、それを考慮して位相シフタ厚さを計算すればよい。半透明膜の形成は、最も厚い厚さの膜から一層ずつエッチングしてもよいし、リフトオフ法などを用いてスパッタやCVDによる薄膜を一層ずつ重ねてもよい。
【0052】結像性マスクを用いる効果として、結像性マスクと被露光用基板間のギャップが一様でない場合も全面で合焦点露光ができることがある。予想される露光時のギャップ変化を考慮して、光の回折計算のギャップgを場所によって変える。たとえば大面積を一度に、テーブル104上に載置された被露光用基板103(5)に転写する場合、図27(a)のように結像性マスク100自体が重力によりたわむため、中央部のギャップg1は端部のギャップg2より小さくなる。このギャップの分布は、予め測定手段による測定または計算によって求めることができる。こうして結像性マスク100のたわみによる影響をなくすことができる。また、図27(b)のように基板103(5)に段差がある場合も同様に、g3、g4を用いて仮想面上の光の複素振幅分布を求めればよい。
【0053】縮小投影露光法により段差のある基板116上にパターンを転写するときも同様の方法が応用できる。図28は、結像レンズ114と瞳115からなる結像系により結像性マスク110の回路パターンを、段差のある基板116に転写する場合を示す。従来のホトマスクを用いると、面111に焦点が合っているとき、面112はgのデフォーカスとなる。この場合は、面112上で結像する面111上の光の複素振幅分布を計算する。段差の高さgをギャップとみなし、前述の方法により111上の複素振幅分布um(xm、ym)を計算する。この複素振幅分布の座標を結像系の倍率の逆数倍でスケーリングして、結像性マスク110透過光の複素振幅分布が得られる。ただし、112上で結像させるためには照明光の視角はある程度小さくせねばならず、コヒーレント性の高い照明系が必要になる。こうして、段差によるデフォーカスの影響を排除できる。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、結像性マスクを上記のように構成できるので、従来のプロキシミティ露光装置の照明系のコヒーレント性を少し変えるだけで、従来のホトマスクによるプロキシミティ露光の解像限界以下の微小回路パターンの転写が、再現性よく、高コントラストに行なうことができる効果を奏する。また、段差のある基板上への転写も可能になる効果を奏する。
【0055】また、本発明によれば、容易に結像性マスクを設計して製造することが可能になる効果を奏する。
【0056】また、本発明によれば、従来不可能であった所望の微小レジストパターンが、コヒーレントに近い照明系を用いるだけで、正確にしかもパターン線幅のばらつきが小さく形成できる効果を奏する。
【0057】更に本発明によれば、結像性マスクと基板の接触が問題となった密着露光と同様の解像性能がプロキシミティ露光で実現することができ、高スループット、低価格、高歩留まり、そして高解像度が得られる露光を実現できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の結像性マスクを用いてプロキシミティ露光する一実施例を示す断面図である。
【図2】従来のホトマスクによる露光を示す断面図である。
【図3】光の振幅分布及び位相分布、並びに細線パターンを示す図である。
【図4】基板上の光強度分布図である。
【図5】基板上の光強度分布図である。
【図6】光の振幅分布を示す図である。
【図7】従来のホトマスクにおける基板上の光強度分布の等高線分布を示す図である。
【図8】(a)は所望パターンを有するホトマスクにコヒーレント光を照射する図、(b)、(c)は格子内の細線パターンを示す図、(d)はホトマスク細線パターンの平面図、(e)は位相シフタ配置の平面図、(f)は基板上の光強度分布の等高線分布を示す図である。
【図9】本発明に係るプロキシミティ露光系を示す断面図である。
【図10】本発明に係るホトマスクの原理を説明するための図である。
【図11】本発明に係る感光材料を用いたホトマスクを示す断面図である。
【図12】本発明に係る半透明フィルムを用いたホトマスクを示す断面図である。
【図13】本発明に係る大型ホトマスクと基板を示す断面図である。
【図14】本発明に係る投影レンズ系を示す断面図である。
【図15】本発明に係る結像性マスクの原理を示す図である。
【図16】本発明に係る結像性マスクの製造方法の一実施例を示す図である。
【図17】本発明に係る1次元の結像性マスクについての説明図である。
【図18】本発明に係る結像性マスクを用いた場合の被露光用基板上の光強度分布を表す図である。
【図19】本発明に係る長方形パターン転写用結像性マスクを設計するための説明図である。
【図20】本発明に係る長方形パターン転写用結像性マスクの遮光パターンと位相シフタパターンの一実施例を示す図である。
【図21】本発明に係る結像性マスクを用いた場合の被露光用基板上での光強度の等高線分布を表す図である。
【図22】本発明に係る隣接パターン転写用結像性マスクの遮光パターンと位相シフタパターンの一実施例を示す図である。
【図23】従来のホトマスクを用いる場合の基板上の光強度の等高線分布と本発明の隣接パターン転写用結像性マスクの同じく等高線分布とを表す図である。
【図24】コントラストを強調する場合の所望パターン透過光の振幅を表す図である。
【図25】本発明に係る感光材料への露光量を制御して結像性マスクを製造する方法を説明するための断面図である。
【図26】本発明に係る半透明膜により振幅透過率分布を得て結像性マスクを製造する方法を説明するための断面図である。
【図27】本発明に係るギャップが一定でない場合のプロキシミティ露光を説明するための図である。
【図28】本発明に係る段差のある基板上に縮小投影露光をする場合について説明するための図である。
【符号の説明】
1…平行コヒーレント光、2,62…ホトマスク(結像性マスク)、3…クロム細線パターン(遮光パターン)、4…位相シフタ、5,63…被露光用基板、12…所望パターン、60…所望パターン形成面、61…仮想面、71〜74…計算時の等位相面、81〜84…露光時の等位相面。
【0001】
【発明の利用分野】本発明は、ホトマスクとウェハまたはプリント板等の基板を微小ギャップ離して露光するプロキシミティ露光法等において、高解像性能を得るためのホトマスク及びその製造方法並びに露光方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ホトマスク上の所望のパターンをウェハまたはプリント板等の基板上に転写する露光方法は、投影露光方法、密着露光法、プロキシミティ露光方法の3つに大きく分けることができる。各露光方法の性能を評価する基準として解像度、歩留まり、露光速度、装置価格を考える。解像度は、より細かいパターンを転写できるほどよく、歩留まりは、パターン転写欠陥の起こる確率が小さいほど良い。
【0003】レンズ系やミラー系を用いた投影露光方式は、解像度や歩留まりはよいが、装置構成が複雑なため高価格であり、ホトマスクや基板を移動させるため比較的露光速度は遅い。ホトマスクと基板を密着させて露光する密着露光方式は、解像度はよく露光速度も速く装置も低価格であるが、接触によりホトマスクや基板の損傷が起こり、歩留まりが低い。
【0004】ホトマスクと基板を微小ギャップあけて露光するプロキシミティ露光方式は、装置は低価格で露光速度も速く、ホトマスクと基板の接触による損傷はないため歩留まりはよいが、微小ギャップあけるために光が回折し、高解像度は得られない。
【0005】また、従来技術として、特公平1−51825号公報が知られている。即ち、この従来技術には、「リソグラフィ用マスクがリソグラフィの分解能よりも小さな複数の透明要素及び不透明要素(ハーフトーン)を含むリソグラフィ方法」により、解像度が向上することが示されている。また、透過光の位相をシフトさせる位相シフトを併用し、有限段数の位相シフタとハーフトーンにより任意の複素振幅透過率分布を実現することが示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】上記従来のプロキシミティ露光方法で用いられたホトマスクは、光の回折により解像度が低下するという課題があった。この課題について、図2、図5を用いて説明する。図2は、孤立遮光パターンを露光するための従来のホトマスクの断面図であり、ホトマスク11上には遮光パターン12が形成されている。横軸xは基板13上の位置を示す座標であり、x1、x2は遮光パターン12境界の座標である。gは、ホトマスクと基板間のギャップである。このホトマスク11に露光照明光10を照射して露光をおこなうときの基板13上の光強度Iの分布を図5に示す。ポジレジストを基板上に塗布して露光および現像をするとき、基板上の光強度Iがあるしきい値以下の部分にパターンが残ることになる。実線31は照明光10が平行コヒーレント光であるとき(視角ゼロのとき)の光強度分布であり、回折光の影響でパターン中心部で光強度が大きくなる。光強度しきい値をどのようにとっても、解像パターンの境界をx1とx2にとることはできない。一点鎖線30は図9の視角57を大きくするときの光強度分布で、パターン中心部の光強度が小さくなってx1とx2を境界にもつ所望のパターンが得られるが、解像する光強度しきい値付近の光強度分布の勾配が非常に小さくなっている。この勾配が小さいと、露光量のばらつきやプロセスばらつきに対するパターン線幅の変化が大きくなり、安定な解像パターン線幅が得られないという課題を有していた。
【0007】図7(a)、(b)はホトマスク上に長方形遮光パターン35が形成されているときの被露光基板上の光強度の等高線分布を示す図である。長方形の短辺の長さは、1次元の場合のパターン幅dと同じであり、35は長方形の境界も示す。図7(a)は視角ゼロの場合で、光強度しきい値をどのようにとっても、回路パターン形状は大きく変化してしまい、しきい値0.4のときのレジストパターンは斜線に示すようになる。図7(b)は1次元の場合と同じく視角を大きくする場合であるが、やはり所望の回路パターン形状は得られないという課題を有するものである。
【0008】また、特公平1−51825号公報には、波面を逆に再生し、基板上で結像させて、プロキシミティ露光の解像度を向上させようとする課題については、考慮されていない。
【0009】本発明の目的は、上記課題を解決すべく、プロキシミティ露光方式等では解像できなかった微小パターンを正確に解像し、しかもパターン寸法の変化を小さくして露光できるようにしたホトマスク及びその製造方法並びに露光方法を提供することにある。
【0010】
【問題点を解決するための手段】本発明においては、上記目的を達成するために、基板上で望ましい光強度分布が得られるようなホトマスクを設計する。その設計方法の1つは以下のとおりである。照明光波長をλ、露光時のホトマスクと基板との間のギャップをgとする。所望の転写パターンが波長λの平行コヒーレント光によって照射されるときの回路パターンから光軸方向にz離れた仮想平面上での光の複素振幅分布を、光の回折の式等を用いて計算機により計算して求める。なお、光の回折の式を用いる場合には、フレネル回折やフラウンホーファ回折の近似式によるのがよい。そしてこの複素振幅分布の複素共役に等しい位相分布および振幅透過率分布を透過光に与えるようなホトマスクを形成すればよい。すなわち、透過光の位相と実効的な光振幅透過率の両方が連続的または離散的に変化するようなホトマスクを用いる。実際の露光では、図9に示す露光系を用いて、波長λを主な波長成分とする照明光をこのホトマスクに照射して基板上にパターンを転写する。
【0011】
【作用】本発明による作用を図10により説明する。図1010(a)は、所望の転写パターンを有するホトマスク60に平行コヒーレント光を照射するときの光の波面の伝播状況を表している。図10(b)は本発明によるホトマスク62に平行コヒーレント光を照射して露光するときの光の波面の伝播状況を表している。図10(a)のホトマスク60と基板61の間隔と、図10(b)のホトマスク62と基板63間の間隔は同じである。70から74および80から84は位相の等しい波面を表しており、線の太さは光の振幅の大きさを表す。例えば、図10(a)の透過直後の波面71は、遮光部の振幅がゼロで透過部の振幅、位相が等しいことを示し、波面72はパターン部の位相が大きく遅れていて振幅が小さいことを表している。伝播するにつれ、波面74のようにパターン部にあたる部分の振幅が大きくなり、位相の遅れが小さくなっていく。ホトマスク透過直後の波面81が、波面74の振幅と同一で位相を反転した波面となるようにホトマスク62を形成する。ホトマスク62と基板63間で波面が(a)の場合と逆に伝播し、波面82、83はそれぞれ波面73、72と振幅が等しく位相を反転した波面になる。基板63面上の波面84は、元のホトマスク60透過直後の波面71の再生になる。すなわち基板63上では、遮光部に対応する部分の光の振幅がゼロとなり透過部では一様な振幅、位相になる。波面81が波面74の反転そのものであるような理想的な場合には、ホトマスクと基板の間のギャップがいかに大きくても元のホトマスク60透過直後の光の強度分布が再現できる。
【0012】
【実施例】本発明によるホトマスクを用いたプロキシミティ露光の実施例を図1を用いて説明する。図1は本発明によるホトマスクの一実現方法(実施例)を表す断面図である。1は平行なコヒーレント光、2はホトマスク、3はホトマスク上に形成された微小なクロムの細線パターン、4は位相シフタ、5は基板である。このホトマスクは、以下のようにして得られる。図2に示す所望のパターン12を有するホトマスク11への露光照明光10を平行コヒーレント光とする。このときホトマスク透過直後の光の振幅分布は図3(a)に示す分布15をもつ。ギャップgだけホトマスク11から離れた基板13上の回折光の複素振幅分布を求め、その複素共役をとると図3(b)に示す実線の振幅分布16と図3(c)に示す実線の位相分布18になる。基板上の位置を示すx軸を十分細かい間隔で分割し、各領域で振幅分布16を3段階に離散化すると点線で示す振幅分布17が得られる。透過度1/3の部分は図3(d)のように開口部と遮光部の比を1対2に、2/3の部分は図3(e)のように2対1にして図1に示す細線パターン3を得る。この細線パターンが解像しないようにx軸の分割間隔を選んでおく。この細線パターン3は、クロム等を用いて通常の露光、現像、エッチングプロセスにより形成できる。また、位相分布18も同様に離散化して点線で示す位相分布19をえる。この分布を実現するには、空気に対してある屈折率差をもつ透明な材料からなる位相シフタを設ける。位相シフタのある開口部の位相が遅れることになる。位相シフタ材料としては、SiO2やホトレジスト材料が考えられる。先の位相分布の離散化単位の遅れを透過光に与える位相シフタ厚さを計算し、位相シフタをその厚さを単位として3層に重ね、図1に示す位相シフタ4を形成する。図4に、このホトマスクに平行コヒーレント光を照射して露光を行うときの基板5上の光強度分布25を示す。遮光パターンに対応する中心部分での光強度はほぼゼロで、点線に示すようにもとのパターン境界のx1、x2を境界にもつ解像パターンが得られる。また、解像する光強度しきい値付近での光強度分布は急勾配をもち、露光量の変動や現像プロセスのばらつきに対する解像パターン幅の変化が小さい。一方、本実施例で用いたような細線パターン3は回折格子として働き、図4では示されていないさらに外側の基板上の光強度分布に、高空間周波数成分からなるノイズが生じることがある。しかし、照明系の視角57を増やすことでノイズを打ち消すことができる。図には示さないが、ノイズが打ち消される程度に視角を増やしても図4の光強度分布はほとんど変わらない。
【0013】同じ1次元孤立遮光パターンのプロキシミティ露光に用いるホトマスクの計算方法は、以上の1通りだけではない。図6を用いて説明する。これまでは、所望のパターン透過直後の光は振幅位相とも一様として微小ギャップ離れた基板面上の光の振幅および位相分布を計算した。よりコントラストのよい光強度分布を得るための方法は、所望のパターン透過直後の光の振幅分布が図3(a)の振幅分布15ではなく、図6のような遮光パターンエッジx1、x2付近のコントラストを大きくした振幅分布33であると仮定して、基板面上の光の複素振幅分布を計算することである。こうして計算したホトマスクを用いて露光を行うと、解像する光強度しきい値付近の勾配のより大きい光強度分布となり、パターン線幅の変動が小さくなる。また、露光時の基板上の光強度分布だけが所望の分布になればよく、その位相は問われない。前の実施例では、所望のパターンに照射する光の位相は一様として基板上の光の振幅および位相分布を計算したが、任意の位相分布を与えても良いことは明らかである。位相分布をうまく与えることにより、ホトマスクの形成をより簡単にしたり、露光時の基板上の光強度分布をより望ましくすることができる。
【0014】2次元の場合の長方形パターンのプロキシミティ露光の実施例を図8を用いて説明する。図8(a)に示すように、所望の長方形パターン41の形成されたホトマスク42と、そのホトマスクから露光ギャップg離れており、かつ格子上に区切られた仮想面43を考える。このホトマスク42に平行コヒーレント光40を照射するときの仮想面43上の各格子内での光の振幅分布と位相分布を計算する。その振幅分布を3段階に離散化し、透過率ゼロの格子はすべて遮光部とし、透過率1/3の格子は図8(b)のような斜線で示す遮光部と空白の透過部の比率が2対1のパターンに置き換え、2/3の格子は図8(c)のように遮光部と透過部の比率が1対2のパターンに置き換え、透過率が1の格子はすべて開口とする。これらのパターンが解像しない程度に微小となるように格子の大きさをあらかじめ決めておく。図8(d)は、その結果得られたホトマスク上の細線パターン44を上方から見た図である。図8(d)、(e)、(f)とも点線は図8(a)の元の長方形遮光パターン41の境界を示す。一方、位相分布は正負逆にしたのちある離散化単位で離散化し、位相を遅らせる格子ほど厚い位相シフタに置き換える。そのときの位相シフタ配置図をホトマスク上方から見たものを図8図(e)に示す。45はシフタのない部分、46、47、48はそれぞれ単位シフタ厚さの1倍、2倍、3倍の厚さの領域を表している。この細線パターン44と位相シフタ配置を有するホトマスクに平行コヒーレント光を照射して露光するときのギャップg離れた基板上の光強度の等高線分布を図8(f)に示す。図7(b)と同様に斜線部は、光強度が解像光強度しきい値より小さい部分であり、元のパターンに近いレジストパターンが得られている。さらに解像する光強度しきい値付近での等高線密度が大きく光強度分布の勾配が大きいため、線幅ばらつきが小さくなっている。なお、この場合も細線に垂直な方向に光が回折して光強度分布に高周波のノイズが生じるため、視角を少し増す必要がある。
【0015】本発明によるホトマスクにおいて、光の振幅透過率分布や位相分布を実現する他の実施例について図11を用いて説明する。まず振幅透過率の場合は、図1111に示すように露光量により現像後に光の透過率のかわる感光材料91、たとえば銀塩感光材料やフォトポリマーをホトマスク90に塗布した後、この感光材料91に図に示すように適当な露光量分布をもつ露光をして現像する。露光量分布は、たとえばレーザー直描で場所により照射量を変えることで実現すればよい。位相分布についても同様に、露光量により現像後の光の屈折率のかわる感光材料を塗布した後、同様に露光、現像すればよい。本実施例によれば、振幅透過率や位相変調度の分布を露光量に置き換えるため、連続的な分布が実現しやすいという効果がある。
【0016】本発明によるホトマスクにおいて、光の振幅透過率分布を実現する他の実施例について図12を用いて説明する。図12は、数層に重ねた半透明フィルム93を有するホトマスク92の断面図であり、半透明フィルムを重ねることによって光透過率の分布を実現することもできる。フィルム厚さによる位相遅れの影響がでるときは、それを考慮して位相シフタ厚さを計算すればよい。
【0017】プロキシミティ露光方式の一例を図9により説明する。図9において、高圧水銀灯光源50からの光を反射ミラー51によりロッドレンズ群52に集め、各ロッドレンズからの出射光をコリメーターレンズ54により平行光としてホトマスク55に照射する。ロッドレンズ群直後の絞り53により光を出射するロッドレンズの数を制限して、視角と呼ばれる照射光の最大傾き角57を変える。絞り53の径を小さくすると、光の分布はホトマスクに垂直な平行光だけになり、視角ゼロのコヒーレントな照明となる。
【0018】次に本発明の原理を図10に基いて説明する。即ち、図10(b)に示すように、ホトマスク2(62)と基板5(63)間で波面が図10(a)の場合と逆に伝播し、波面82、83はそれぞれ波面73、72と振幅が等しく位相を反転した波面になる。基板5(63)面上の波面84は、元のホトマスク60透過直後の波面71の再生になる。すなわち基板5(63)上では、遮光部に対応する部分の光の振幅がゼロとなり透過部では一様な振幅、位相になる。波面81が波面74の反転そのものであるような理想的な場合には、ホトマスクと基板の間のギャップがいかに大きくても元のホトマスク60透過直後の光の強度分布を再現することができる。このように、転写パターンが細かくなっても、回折の影響を受けることなく、高解像度でもって転写露光することができる。
【0019】また、プロキシミティ露光で大面積を一度に転写する場合の実施例を図13を用いて説明する。図1313は大型の本発明によるホトマスク100を用いて基板103上にパターン転写する場合を示す。ホトマスク100自体が重力によりたわむため、中央部102のギャップg1は端部101のギャップg2より小さくなるが、このギャップの分布は計算で求めることができる。そこで、所望のパターンを有するホトマスクに平行コヒーレント光を照射すると仮定して仮想面上での光の複素振幅を計算するときの、ホトマスクと仮想面のギャップをホトマスク上の位置によって変えればよい。本実施例のように計算したホトマスクを用いて露光すると、ホトマスクのたわみに影響されることなく全基板面上で所望の光強度分布が実現できる効果がある。
【0020】最後に本発明によるホトマスクを投影露光に適用する実施例を図14を用いて説明する。図14は、ホトマスク110に露光照明光113を照射して所望パターンを入射瞳115と投影レンズ114からなる投影露光系により段差のある基板面上に転写する場合を示す断面図である。段差の上面111に焦点が合っているとすると、従来のホトマスクを用いて露光すれば段差の下面112はデフォーカスとなる。そこで、面112上に結像するときの面111上での光の複素振幅分布を計算する。段差の高さgをプロキシミティギャップとみなし、本発明で用いた方法により導く。面111上でのこの光の複素振幅分布を実現するようなホトマスク透過直後の光の複素振幅分布を、投影レンズ系の伝達関数から逆計算し、本発明によるホトマスク110を用いて投影露光を行う。本実施例によれば、段差による焦点ずれの影響を排除した露光が可能になるという効果がある。
【0021】次に、本発明の原理を更に具体的に図15を用いて説明する。即ち、図15(a)は、所望の1次元遮光パターン12(以下所望パターン)に波長λの平行コヒーレント光70を照射すると仮定するときの光の波面の伝播状況を表している。図15(b)は本発明によるホトマスク(以下結像性マスクと称す。)62(2)に同じ波長λの平行コヒーレント光1を逆向きに露光するときの光の波面の伝播状況を表している。図15R>5(a)の所望パターン形成面60と仮想面61の間隔は、図15(b)の結像性マスク62(2)と被露光基板63の間隔と同じでgである。図15(a)に示すように所望パターン形成面60上に位置座標xo、仮想面61上に位置座標xiをとり、所望パターンの両端の座標をx1、x2とする。71から74および81から84は位相の等しい波面を表しており、線の太さは光の振幅の大きさを表す。例えば図15(a)の所望パターン12透過直後の波面71は、遮光部の振幅がゼロで透過部の振幅位相が一様であることを示し、波面72は中心部の位相が大きく遅れていて振幅が小さいことを表している。伝播につれ、波面74のように中心部分の振幅が大きくなり、位相の遅れが小さくなっていく。
【0022】結像性マスク62(2)透過直後の複素振幅は、仮想面上の複素振幅の位相を反転したものであるように形成されている。74では中央部の位相が遅れているので、位相反転すると81の中央部の位相は進む。光の伝播方向が反対であるため、図15(a)の遅れと図15(b)の進みは図中で対応し、液面74は液面81と同一形状になる。従って、結像性マスク5を透過した光の波面は(a)の場合と逆に伝播し、被露光基板63面上の波面84は、所望パターン12透過直後の波面71を再生する。すなわち被露光基板63上では、遮光部に対応する部分の光の振幅がゼロで、透過部に対応する部分で一様な複素振幅になる。こうして結像性マスクを用いると回折の影響をなくすことができ、所望パターン透過直後の光の強度分布が再現できる。
【0023】次に本発明による結像性マスクを用いて一次元遮光パターンを転写するプロキシミティ露光について、更に具体的に図15から図18を用いて説明する。ギャップg、パターン幅d=x2−x1は、従来のホトマスクを用いた図5の場合と同じであるが波長λは図1の場合と少し異なっている。結像性マスク62(2)上には、微小な遮光パターン3と位相シフタ4が形成されている。この結像性マスクの製造方法を図16に基いて説明する。
【0024】所望パターン(図15に示す1次元遮光パターン12)に波長λの平行コヒーレント光を照射するときのパターン透過直後の複素振幅分布uo(xo)、波長λ、ギャップgを入力データ161とし、ギャップg離れた仮想面61上の光の複素振幅分布を計算機162により計算する。光の進行方向に位相の正方向をとる。パターン寸法dは数1で表されるプロキシミティ露光の解像限界R以下であり、通常フレネル近似が成り立つ。
【0025】プロキシミティ露光の解像限界Rは、露光波長をλ、マスクと基板の間隔をgとすると数1で表される。
【0026】
【数1】
【0027】ここでk1は定数で、1.4程度である。
【0028】そして、仮想面61上の複素振幅ui(xi)は1次元のフレネル回折の式を用いて数2で表される。
【0029】
【数2】
【0030】kは波数でk=2π/λである。ギャップ、波長、パターン寸法によってはフラウンホーファ回折の式を用いてもよい。計算した複素振幅ui(xi)の複素共役をとり、結像マスク上の位置を表す座標をxmとして結像性マスク透過光の複素振幅分布um(xm)が得られる。um(xm)とui(xi)の振幅は等しく、位相の符号が反転することになる。um(xm)の振幅をa(xm)、位相をφ(xm)とすると、図15に示す所望パターン12の場合、図17(a)の実線の振幅分布16と図17(b)に示す実線の位相分布18が得られる。透過光にこのように連続的に変化する分布を与える結像性マスクを形成するのは困難なため、近似を行う。まずxm軸を十分細かい間隔pで分割する。分割された各領域で振幅分布16および位相分布18をサンプリングする。次に振幅分布を3段階に量子化すると点線で示す振幅分布17が得られ、位相分布も同様にπ/6を単位角度として量子化すると点線で示す位相分布19が得られる。さらに、振幅透過率は微小な遮光パターン3を用いて開口率分布に置き換える。透過率ゼロの部分は遮光部3とし、透過率1/3の部分は図17(c)の26のような遮光部と透過部の比率が2対1のパターンに置き換え、2/3の部分は27のような遮光部と透過部の比率が1対2のパターンに置き換え、透過率が1の部分はすべて開口とする。これらのパターンが解像しない程度に微小となるように分割の大きさpを選んでおく。図1717(c)の3に示すような遮光パターン分布が得られる。
【0031】なお、量子化の段階数は3に限られるものではなく、最大9程度で十分正確に近似することができる。
【0032】位相分布19は、図17(c)に示すように、空気に対してある屈折率差をもつ透明な材料からなる位相シフタ4により実現する。位相シフタ4が厚いほど透過光の位相が遅れることになる。先の位相分布の量子化単位π/6の遅れを透過光に与える位相シフタ厚さを計算し、その厚さを段差とする位相シフタパターンを形成すると、図17(c)の位相シフタ4となる。28aは透過光の位相をπ/6進ませる部分、29は位相変化を与えない部分、28bはπ/6遅らせる部分である。
【0033】なお、量子化単位は、π/6に限られるものでなく、π/12(以上)からπ/4(以下)の範囲であればよい。
【0034】以上図16に示すように、計算機162により得られた微小遮光パターンと位相シフタパターンからなる結像性マスクデータ163をホトマスク作成部164に入力する。
【0035】結像性マスクデータ163が入力されたホトマスク作成部164において、微小遮光パターン3については、クロム等を用いて通常の電子線描画、現像、エッチングプロセスにより形成し、位相シフトパターン4については、空気に対してある屈折率差をもつ透明な材料からなる位相シフタ(厚さを変化させること)より実現する。なお位相シフタ材料としては、SiO2やホトレジスト材料が考えられる。多段階の位相シフタを形成するには、ホトマスク基板上に塗布したレジストに、位相分布に対応する露光量分布を与えて露光後現像して厚さの分布を得る方法がある。また、単位厚さの位相シフタを重ねて形成してもよい。
【0036】以上により、本発明による結像性マスク62(2)を製造することができる。
【0037】このようにして製造された結像性マスク2(62)を図9に示すプロキシミティ露光装置に設置し、結像性マスク2(62)と被露光基板5間にギャップgを設け、波長λの照明光を結像性マスク2に照射し、正規の回路パターンが高解像度で被露光用基板5に転写露光される。
【0038】視角ゼロのときの被露光基板5上の光強度分布は、図18に示す32になる。中心部分での光強度はほぼゼロであり、解像光強度しきい値Ith=0.25のとき、点線に示すようにx1、x2を境界にもつ解像パターンを得ることができる。x1、x2付近での光強度分布は急勾配をもち、高コントラストが得られる。なお、本実施例の結像性マスク2(62)は微小遮光パターン3により高次回折光を生じ、図18では示されていないさらに外側の基板上の光強度分布に高空間周波数成分からなるノイズがでる。しかしながら、パターン残りを生じる大きさではなく解像に影響はない。このノイズは図9R>9に示す視角57を増すと打ち消される。このときも図1818の光強度分布はほとんど変わらない。
【0039】2次元パターンに対する結像性マスクも同様に設計できる。図7で示したのと同じ長方形遮光パターン35を転写するための結像性マスクについて、更に具体的に図19、図20、図21に基いて説明する。図1919に示すように、所望長方形パターン41に波長λの平行コヒーレント光40を照射するときのギャップg離れた仮想面43上の光の振幅分布と位相分布を計算機162により計算する。即ち、所望パターン形成面42上の座標を(xo、yo)、所望パターン形成面42透過直後の光の複素振幅をuo(xo、yo)、仮想面43上の座標を(xi、yi)、仮想面43上の複素振幅をui(xi、yi)とする。フレネル近似を用いるときの2次元のフレネル回折式は数3で表される。
【0040】
【数3】
【0041】1次元の場合と同様に仮想面43を格子間隔pで分割し、各格子の中心点で複素振幅分布ui(xi、yi)を計算機162で計算し、位相の符号を反転することにより複素共役をとって結像性マスク透過光の複素振幅分布um(xm、ym)を得る。更に計算機162は、1次元と同様に振幅分布と位相分布を量子化し、微小パターンと位相シフタパターンを計算して図20(a)に示す微小遮光パターン44aと図20(b)に示す位相シフタパターンが得られる。図20中の長方形46aは図7の元の長方形遮光パターン35の境界を示す。図20(b)において47aはシフタの最も薄い部分で図17(c)の28aに対応し、48a、49aはそれぞれ29、28bに対応する。この結像性マスク2(62)に波長λの平行コヒーレント光を露光するときのg離れた被露光基板5上での光強度の等高線分布を図2121に示す。長方形46aは元の長方形遮光パターン35の境界である。光強度しきい値を0.3とするときのレジストパターンを斜線部で示す。パターンは角部で丸みを帯び、多少うねりが残るが図7(b)と比べるとパターンの再現性の向上は明かである。また解像光強度しきい値付近での等高線密度が大きく、高コントラストが得られている。この場合も細線に垂直な方向に光が回折して光強度分布に高周波のノイズが生じるが、視角をわずかに大きくすることで打ち消される。
【0042】同じギャップと同じ波長で、2つの隣接した長方形パターン46bを転写するための結像性マスクの微小遮光パターン44bを図22(a)に、位相シフタパターンを図22(b)に示す。長方形短辺の寸法は図20の場合の長方形の短辺の寸法と同じである。図22R>2(a)の微小遮光パターンの長手方向は、図20(a)とは直交している。図22(b)に示す長方形の位相シフタパターンの47b、48b、49bはそれぞれ図17の28a、29、28bに対応している。このマスクを用いて露光するときの基板上光強度等高線図(視角はゼロ)を図23(b)に示す。比較用に従来のホトマスクを用いる場合(視角は図7(b)の場合と同じ)を図23(a)に示す。図23(a)で斜線で示したレジストパターンは光強度しきい値0.4の場合であり、図のように所望パターンとは全く異なる3つのパターンが残る。図23(b)では図7と同様に角部が欠けて丸みを帯び、中央部にふくらみが見られるが、ほぼ所望パターンが再現し、解像光強度しきい値付近の等高線密度が大きく高コントラストが得られている。
【0043】図15から図23の実施例は、波長λ=405nm、ギャップg=120μm、パターン幅d=4.5μm、ピッチp=1.5μmの場合である。このときの視角は0.5°程度がよい。別の波長やギャップでも相似則を用いると同じ結像性マスクパターンが使えることを示す。1次元フレネル回折の数2の座標を√(gλ)で無次元化し、無次元化寸法Xo=xo/√(gλ)、Xi=xi/√(gλ)とする。さらにUo(xo)、Ui(xi)を数4、数5で定義する。
【0044】
【数4】
【0045】
【数5】
【0046】このとき数2の位相項ejkgを無視して書き換えると、数6の関係が成り立つ。
【0047】
【数6】
【0048】数6において、結像性マスクの複素振幅透過率の複素共役を表すUi(xi)はUo(xo)のみに依存し、ギャップg、波長λに依存しない。従って、無次元化した所望パターン形状が同じ場合は結像性マスクの微小遮光パターンと位相シフタパターンも相似になり、数5より寸法のみ√(gλ)倍すればよい。また無次元視角Θ=(√(g/λ))・θとおけるので、露光時の視角を無次元視角Θが等しくなるように選べば相似な基板上光強度分布が得られる。
【0049】あるパターンを転写するための結像性マスクの計算方法は前述の方法に限らない。前記実施例では、所望のパターン透過直後の光の複素振幅について、透過部の振幅と位相は一様として仮想面上の光の複素振幅分布を計算した。この振幅、位相分布にある変化を与えてもよい。たとえば1次元遮光パターンの場合、よりコントラストのよい光強度分布を得るため、所望のパターン透過直後の光の振幅分布を図24のように遮光パターンエッジ付近のコントラストを大きくする。こうして計算した結像性マスクを用いて露光すると、光強度分布の解像光強度しきい値付近の勾配がより大きくなり、高コントラストが得られる。また、近似を行うために露光後に得られるパターン寸法に誤差を生じることがある。このときは、計算に用いる元パターン寸法を修正する方法がある。たとえばレジストパターン寸法が所望より小さくなるときは、元パターン寸法を大きく修正して計算を行うとよい。さらにまた、元パターン透過直後の光の位相が一様でないとして、任意の位相分布を与えて計算してもよいことは明らかである。位相分布をうまく与えることにより、ホトマスクの形成をより簡単にしたり、露光時の基板上の光強度分布をより望ましくすることができる。
【0050】以上の実施例ではサンプリング間隔pは一定としたが、可変にして計算効率をよくする方法もある。たとえば、結像性マスクの複素振幅透過率の変化が大きい部分(たとえば角部など)でのサンプリング間隔を小さくして変化の小さい部分でのサンプリング間隔を大きくするとよい。また、以上の実施例では振幅の量子化段数を3、位相の量子化単位角をπ/6としたが、段数を増やすほどまた単位角を小さくするほど近似精度は向上すると考えられる。ただし、段数を増やすことは微小遮光パターンの寸法を小さくすることになり、単位角を小さくすることは位相シフタの段数を増やすことになるため、マスクの製造はより困難になる。さらに特公平1−51825号公報に示されたように、有限段数の位相シフタを用い、複素振幅のベクトル和により任意の複素振幅透過率の近似をする方法もある。
【0051】結像性マスクの作成方法は、遮光パターンと位相シフタだけとは限らない。振幅透過率の分布を実現するには、図25に示すように、露光量により現像後に光の透過率のかわる感光材料91たとえば銀塩感光材料やフォトポリマーをマスク基板90に塗布した後、この感光材料91に図に示すような適当な分布をもつ照明光を露光して現像する。露光量分布は、たとえば電子線やレーザーの直描で場所により照射量を変えることで実現すればよい。位相変調率分布についても同様に、露光量により現像後の光の屈折率がかわる感光材料を塗布した後、同様に露光、現像すればよい。本実施例によれば、振幅透過率や位相変調度の分布を露光量に置き換えるため、連続的な分布が実現しやすいという効果がある。また、図26はマスク基板92に半透明膜93a,93bを重ねて形成して光の振幅透過率分布を実現する場合を示す。膜厚による位相遅れの影響がでるときは、それを考慮して位相シフタ厚さを計算すればよい。半透明膜の形成は、最も厚い厚さの膜から一層ずつエッチングしてもよいし、リフトオフ法などを用いてスパッタやCVDによる薄膜を一層ずつ重ねてもよい。
【0052】結像性マスクを用いる効果として、結像性マスクと被露光用基板間のギャップが一様でない場合も全面で合焦点露光ができることがある。予想される露光時のギャップ変化を考慮して、光の回折計算のギャップgを場所によって変える。たとえば大面積を一度に、テーブル104上に載置された被露光用基板103(5)に転写する場合、図27(a)のように結像性マスク100自体が重力によりたわむため、中央部のギャップg1は端部のギャップg2より小さくなる。このギャップの分布は、予め測定手段による測定または計算によって求めることができる。こうして結像性マスク100のたわみによる影響をなくすことができる。また、図27(b)のように基板103(5)に段差がある場合も同様に、g3、g4を用いて仮想面上の光の複素振幅分布を求めればよい。
【0053】縮小投影露光法により段差のある基板116上にパターンを転写するときも同様の方法が応用できる。図28は、結像レンズ114と瞳115からなる結像系により結像性マスク110の回路パターンを、段差のある基板116に転写する場合を示す。従来のホトマスクを用いると、面111に焦点が合っているとき、面112はgのデフォーカスとなる。この場合は、面112上で結像する面111上の光の複素振幅分布を計算する。段差の高さgをギャップとみなし、前述の方法により111上の複素振幅分布um(xm、ym)を計算する。この複素振幅分布の座標を結像系の倍率の逆数倍でスケーリングして、結像性マスク110透過光の複素振幅分布が得られる。ただし、112上で結像させるためには照明光の視角はある程度小さくせねばならず、コヒーレント性の高い照明系が必要になる。こうして、段差によるデフォーカスの影響を排除できる。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、結像性マスクを上記のように構成できるので、従来のプロキシミティ露光装置の照明系のコヒーレント性を少し変えるだけで、従来のホトマスクによるプロキシミティ露光の解像限界以下の微小回路パターンの転写が、再現性よく、高コントラストに行なうことができる効果を奏する。また、段差のある基板上への転写も可能になる効果を奏する。
【0055】また、本発明によれば、容易に結像性マスクを設計して製造することが可能になる効果を奏する。
【0056】また、本発明によれば、従来不可能であった所望の微小レジストパターンが、コヒーレントに近い照明系を用いるだけで、正確にしかもパターン線幅のばらつきが小さく形成できる効果を奏する。
【0057】更に本発明によれば、結像性マスクと基板の接触が問題となった密着露光と同様の解像性能がプロキシミティ露光で実現することができ、高スループット、低価格、高歩留まり、そして高解像度が得られる露光を実現できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の結像性マスクを用いてプロキシミティ露光する一実施例を示す断面図である。
【図2】従来のホトマスクによる露光を示す断面図である。
【図3】光の振幅分布及び位相分布、並びに細線パターンを示す図である。
【図4】基板上の光強度分布図である。
【図5】基板上の光強度分布図である。
【図6】光の振幅分布を示す図である。
【図7】従来のホトマスクにおける基板上の光強度分布の等高線分布を示す図である。
【図8】(a)は所望パターンを有するホトマスクにコヒーレント光を照射する図、(b)、(c)は格子内の細線パターンを示す図、(d)はホトマスク細線パターンの平面図、(e)は位相シフタ配置の平面図、(f)は基板上の光強度分布の等高線分布を示す図である。
【図9】本発明に係るプロキシミティ露光系を示す断面図である。
【図10】本発明に係るホトマスクの原理を説明するための図である。
【図11】本発明に係る感光材料を用いたホトマスクを示す断面図である。
【図12】本発明に係る半透明フィルムを用いたホトマスクを示す断面図である。
【図13】本発明に係る大型ホトマスクと基板を示す断面図である。
【図14】本発明に係る投影レンズ系を示す断面図である。
【図15】本発明に係る結像性マスクの原理を示す図である。
【図16】本発明に係る結像性マスクの製造方法の一実施例を示す図である。
【図17】本発明に係る1次元の結像性マスクについての説明図である。
【図18】本発明に係る結像性マスクを用いた場合の被露光用基板上の光強度分布を表す図である。
【図19】本発明に係る長方形パターン転写用結像性マスクを設計するための説明図である。
【図20】本発明に係る長方形パターン転写用結像性マスクの遮光パターンと位相シフタパターンの一実施例を示す図である。
【図21】本発明に係る結像性マスクを用いた場合の被露光用基板上での光強度の等高線分布を表す図である。
【図22】本発明に係る隣接パターン転写用結像性マスクの遮光パターンと位相シフタパターンの一実施例を示す図である。
【図23】従来のホトマスクを用いる場合の基板上の光強度の等高線分布と本発明の隣接パターン転写用結像性マスクの同じく等高線分布とを表す図である。
【図24】コントラストを強調する場合の所望パターン透過光の振幅を表す図である。
【図25】本発明に係る感光材料への露光量を制御して結像性マスクを製造する方法を説明するための断面図である。
【図26】本発明に係る半透明膜により振幅透過率分布を得て結像性マスクを製造する方法を説明するための断面図である。
【図27】本発明に係るギャップが一定でない場合のプロキシミティ露光を説明するための図である。
【図28】本発明に係る段差のある基板上に縮小投影露光をする場合について説明するための図である。
【符号の説明】
1…平行コヒーレント光、2,62…ホトマスク(結像性マスク)、3…クロム細線パターン(遮光パターン)、4…位相シフタ、5,63…被露光用基板、12…所望パターン、60…所望パターン形成面、61…仮想面、71〜74…計算時の等位相面、81〜84…露光時の等位相面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】光の振幅と位相とを2次元的に変調する複素透過率分布を持つ2次元光変調部を有するプロキシミテイ露光用のホトマスクであって、前記2次元光変調部を透過した単波長コヒーレント光の複素振幅分布が、プロキシミテイ露光時のギャップに相当する距離だけ前記ホトマスクから離れた面上に形成された所望のパターンに単波長コヒーレント光を照射したときに前記ホトマスクの面上で得られる複素振幅分布の複素共役分布、またはそれを離散化した分布、または離散化した後振幅もしくは位相もしくはその両方をある単位で有限段数に量子化した分布の何れかとほぼ同じであるように前記2次元光変調部が形成されていることを特徴とするホトマスク。
【請求項2】前記複素共役分布を、光の回折の式を用いて求めたことを特徴とする請求項1記載のホトマスク。
【請求項3】前記ホトマスクの複素透過係数分布の位相分布がπ/12以上でπ/4以下の単位で変化することを特徴とする請求項1記載のホトマスク。
【請求項4】単波長コヒーレント光を被照射部に照射することにより、前記被照射部を透過したほぼ全ての光または反射したほぼ全ての光が、前記被照射部から所望のギャップ離れた面であって前記被照射部と光学的に共役な位置関係にない面上に所望の転写パターンを形成するように、前記単波長コヒーレント光の振幅と位相とを2次元変調する2次元変調部分を上記被照射部に形成したことを特徴とするホトマスク。
【請求項5】光の振幅と位相を2次元的に変調する2次元光変調部を有するホトマスクの製造方法であって、所望の転写パターンを仮想マスクとして該所望の転写パターンに短波長コヒーレント光を照射したときに該所望の転写パターンから所望のギャップ離れた面上で得られる複素振幅分布の複素共役分布、またはそれを離散化した分布、または離散化した後振幅もしくは位相もしくはその両方をある単位で有限段数に量子化した分布を算出し、該算出した複素振幅分布の複素共役分布、またはそれを離散化した分布、または離散化した後振幅もしくは位相もしくはその両方をある単位で有限段数に量子化した分布を複素透過係数分布として持つ2次元光変調部を有するマスクパターンを形成することを特徴とするホトマスクの製造方法。
【請求項6】前記単波長コヒーレント光が、単波長平行コヒーレント光であることを特徴とする請求項5記載のホトマスクの製造方法。
【請求項7】前記複素共役分布を、光の回折の式を用いて求めたことを特徴とする請求項5記載のホトマスクの製造方法。
【請求項8】前記ホトマスクの複素透過係数分布の位相分布がπ/12以上でπ/4以下の単位で変化することを特徴とする請求項4記載のホトマスクの製造方法。
【請求項9】光の振幅と位相を2次元的に変調する2次元光変調部を有するホトマスクに露光光を照射して基板表面に塗布したレジストに所望のパターンを露光する露光方法であって、所望の転写パターンを仮想マスクとして該所望の転写パターンに短波長コヒーレント光を照射したときに該所望の転写パターンから所望のギャップ離れた面上で得られる複素振幅分布の複素共役分布、またはそれを離散化した分布、または離散化した後振幅もしくは位相もしくはその両方をある単位で有限段数に量子化した分布を算出し、該算出した複素振幅分布の複素共役分布、またはそれを離散化した分布、または離散化した後振幅もしくは位相もしくはその両方をある単位で有限段数に量子化した分布を複素透過係数分布として持つ2次元光変調部を有するマスクパターンを形成し、該マスクパターンに短波長コヒーレント光を照射して基板表面に塗布したレジストに所望のパターンを露光することを特徴とする露光方法。
【請求項10】上記所望のギャップ離れた面に上記基板表面に塗布したレジストの表面を設置することを特徴とする請求項9記載の露光方法。
【請求項11】上記ホトマスクと上記所望のギャップ離れた面に位置づけられた基板上の塗布レジスト表面とを共役関係で結ぶ結像光学系を介さずに、所望の転写パターンを形成し、露光することことを特徴とする請求項10記載の露光方法。
【請求項12】上記ホトマスクと上記所望のギャップ離れた面に位置づけられた基板上の塗布レジスト表面との間には結像光学系が存在し、該ホトマスクの面又は該ホトマスクの該結像光学系による像形成面と該塗布レジスト表面とは互いに共役関係にないことを特徴とする請求項9記載の露光方法。
【請求項13】該ホトマスクの面又はホトマスクの該結像光学系による像形成面と該塗布レジスト表面との距離は上記所望のギャップに相当することを特徴とする請求項12記載の露光方法。
【請求項1】光の振幅と位相とを2次元的に変調する複素透過率分布を持つ2次元光変調部を有するプロキシミテイ露光用のホトマスクであって、前記2次元光変調部を透過した単波長コヒーレント光の複素振幅分布が、プロキシミテイ露光時のギャップに相当する距離だけ前記ホトマスクから離れた面上に形成された所望のパターンに単波長コヒーレント光を照射したときに前記ホトマスクの面上で得られる複素振幅分布の複素共役分布、またはそれを離散化した分布、または離散化した後振幅もしくは位相もしくはその両方をある単位で有限段数に量子化した分布の何れかとほぼ同じであるように前記2次元光変調部が形成されていることを特徴とするホトマスク。
【請求項2】前記複素共役分布を、光の回折の式を用いて求めたことを特徴とする請求項1記載のホトマスク。
【請求項3】前記ホトマスクの複素透過係数分布の位相分布がπ/12以上でπ/4以下の単位で変化することを特徴とする請求項1記載のホトマスク。
【請求項4】単波長コヒーレント光を被照射部に照射することにより、前記被照射部を透過したほぼ全ての光または反射したほぼ全ての光が、前記被照射部から所望のギャップ離れた面であって前記被照射部と光学的に共役な位置関係にない面上に所望の転写パターンを形成するように、前記単波長コヒーレント光の振幅と位相とを2次元変調する2次元変調部分を上記被照射部に形成したことを特徴とするホトマスク。
【請求項5】光の振幅と位相を2次元的に変調する2次元光変調部を有するホトマスクの製造方法であって、所望の転写パターンを仮想マスクとして該所望の転写パターンに短波長コヒーレント光を照射したときに該所望の転写パターンから所望のギャップ離れた面上で得られる複素振幅分布の複素共役分布、またはそれを離散化した分布、または離散化した後振幅もしくは位相もしくはその両方をある単位で有限段数に量子化した分布を算出し、該算出した複素振幅分布の複素共役分布、またはそれを離散化した分布、または離散化した後振幅もしくは位相もしくはその両方をある単位で有限段数に量子化した分布を複素透過係数分布として持つ2次元光変調部を有するマスクパターンを形成することを特徴とするホトマスクの製造方法。
【請求項6】前記単波長コヒーレント光が、単波長平行コヒーレント光であることを特徴とする請求項5記載のホトマスクの製造方法。
【請求項7】前記複素共役分布を、光の回折の式を用いて求めたことを特徴とする請求項5記載のホトマスクの製造方法。
【請求項8】前記ホトマスクの複素透過係数分布の位相分布がπ/12以上でπ/4以下の単位で変化することを特徴とする請求項4記載のホトマスクの製造方法。
【請求項9】光の振幅と位相を2次元的に変調する2次元光変調部を有するホトマスクに露光光を照射して基板表面に塗布したレジストに所望のパターンを露光する露光方法であって、所望の転写パターンを仮想マスクとして該所望の転写パターンに短波長コヒーレント光を照射したときに該所望の転写パターンから所望のギャップ離れた面上で得られる複素振幅分布の複素共役分布、またはそれを離散化した分布、または離散化した後振幅もしくは位相もしくはその両方をある単位で有限段数に量子化した分布を算出し、該算出した複素振幅分布の複素共役分布、またはそれを離散化した分布、または離散化した後振幅もしくは位相もしくはその両方をある単位で有限段数に量子化した分布を複素透過係数分布として持つ2次元光変調部を有するマスクパターンを形成し、該マスクパターンに短波長コヒーレント光を照射して基板表面に塗布したレジストに所望のパターンを露光することを特徴とする露光方法。
【請求項10】上記所望のギャップ離れた面に上記基板表面に塗布したレジストの表面を設置することを特徴とする請求項9記載の露光方法。
【請求項11】上記ホトマスクと上記所望のギャップ離れた面に位置づけられた基板上の塗布レジスト表面とを共役関係で結ぶ結像光学系を介さずに、所望の転写パターンを形成し、露光することことを特徴とする請求項10記載の露光方法。
【請求項12】上記ホトマスクと上記所望のギャップ離れた面に位置づけられた基板上の塗布レジスト表面との間には結像光学系が存在し、該ホトマスクの面又は該ホトマスクの該結像光学系による像形成面と該塗布レジスト表面とは互いに共役関係にないことを特徴とする請求項9記載の露光方法。
【請求項13】該ホトマスクの面又はホトマスクの該結像光学系による像形成面と該塗布レジスト表面との距離は上記所望のギャップに相当することを特徴とする請求項12記載の露光方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11】
【図12】
【図7】
【図8】
【図10】
【図13】
【図14】
【図18】
【図19】
【図21】
【図26】
【図15】
【図16】
【図17】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図11】
【図12】
【図7】
【図8】
【図10】
【図13】
【図14】
【図18】
【図19】
【図21】
【図26】
【図15】
【図16】
【図17】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図28】
【特許番号】特許第3216888号(P3216888)
【登録日】平成13年8月3日(2001.8.3)
【発行日】平成13年10月9日(2001.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−32611
【出願日】平成3年2月27日(1991.2.27)
【公開番号】特開平4−212155
【公開日】平成4年8月3日(1992.8.3)
【審査請求日】平成8年8月30日(1996.8.30)
【審判番号】不服2000−5514(P2000−5514/J1)
【審判請求日】平成12年3月15日(2000.3.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 昭63−304257(JP,A)
【登録日】平成13年8月3日(2001.8.3)
【発行日】平成13年10月9日(2001.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成3年2月27日(1991.2.27)
【公開番号】特開平4−212155
【公開日】平成4年8月3日(1992.8.3)
【審査請求日】平成8年8月30日(1996.8.30)
【審判番号】不服2000−5514(P2000−5514/J1)
【審判請求日】平成12年3月15日(2000.3.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 昭63−304257(JP,A)
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