説明

ホログラムシート

【課題】
ホログラムを用いたホログラムシートにおいて、その真正性を高めるために、照明光と同一の波長のホログラム再生像を再生するホログラムとは異なり、照明光とは異なる波長のホログラム再生をする新規なホログラムシートを提供する。
【解決手段】
ホログラム形成層上にフォトクロミック薄膜層を設け、フォトクロミック分子を励起する光で照明して、可視光領域にある、その発色の色調によるホログラム再生像を目視にて判定可能とし、その偽造防止性を高めたホログラムシートとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なホログラムシート、特に、位相ホログラムを呈するレリーフホログラムのレリーフ位置に、フォトクロミック薄膜を配した発色型のホログラムシートに関するものである。
【0002】
ここで、「全反射性薄膜層」の「全反射性」とは、可視光領域の光、すなわち、その波長が400nm〜800nmの光を全て反射することを意味し、可視光領域の光を透過しないことを意味する。
【0003】
但し、その波長域内のあらゆる光を100%反射する「層」を設けることは物理的には不可能であり、ここでいう「全反射性」とは、例えば、アルミニウム金属薄膜層のように、その波長域内の光を90%〜100%の反射率(測定する光の波長により値が異なる。)で反射する「層」のことを意味し、従って、この層のその波長域内での透過率が10%未満の「層」を意味する。
【0004】
このような「層」を設けることにより、本発明のホログラムシートは、「反射型」でのみホログラム再生像を観察するものとなる。
【0005】
本明細書において、配合を示す「部」は質量基準である。また、「ホログラム」はホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
【背景技術】
【0006】
(主なる用途)
本発明のホログラムシートの主なる用途としては、ホログラムそのものを装飾用として用いる美術・工芸品分野や商業用分野があるが、それにとどまらず、偽造防止分野に使用されるホログラムシートであって、具体的には、クレジットカード等の偽造されて使用されると、カード保持者やカード会社等に損害を与え得るもの、運転免許証、社員証、会員証等の身分証明書、入学試験用の受験票、パスポート等、紙幣、商品券、ポイントカード、株券、証券、抽選券、馬券、預金通帳、乗車券、通行券、航空券、種々の催事の入場券、遊戯券、交通機関や公衆電話用のプリペイドカード等がある。
【0007】
これらはいずれも、経済的、もしくは社会的な価値を有する情報を保持した情報記録体であり、偽造による損害を防止する目的で、記録体そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0008】
また、これら情報記録体以外であっても、高額商品、例えば、高級腕時計、高級皮革製品、貴金属製品、もしくは宝飾品等の、しばしば、高級ブランド品と言われるもの、または、それら高額商品の収納箱やケース等も偽造され得るものである。また、量産品でも有名ブランドのもの、例えば、オーディオ製品、電化製品等、または、それらに吊り下げられるタグも、偽造の対象となりやすい。
【0009】
さらに、著作物である音楽ソフト、映像ソフト、コンピュータソフト、もしくはゲームソフト等が記録された記憶体、またはそれらのケース等も、やはり偽造の対象となり得る。また、プリンター用のトナー、用紙など、交換する備品を純正材料に限定している製品などにも、偽造による損害を防止する目的で、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0010】
(背景技術)
従来、情報記録体や上記した種々の物品(総称して、真正性識別対象物と言う。)の偽造を防止する目的で、その構造の精密さから、製造上の困難性を有すると言われるホログラムを真正性の識別可能なものとして適用することが多く行なわれている。しかしながら、ホログラムの製造方法自体は知られており、その方法により精密な加工を施すことができることから、ホログラムが単に目視による判定だけのものであるときは、真正なホログラムと偽造されたホログラムとの区別は困難である。
【0011】
これらの真正性識別対象物、特にラベル形態や転写形態にてホログラム画像を施された物品は、ホログラム画像の目視確認という真正性識別のみでなく、新たな真正性識別方法を用いてその対象物の真正性を識別する必要が生じている。
【0012】
(先行技術)
これらの要求に応えるため、ホログラムに積層して、入射した光の内、左回り偏光もしくは、右回り偏光のいずれか一方の光のみを反射する光選択反射層を有するホログラムシートが提案された。(例えば、特許文献1参照。)
この光選択反射層として、コレステリック液晶を使用し、偏光版等を用いて確認する方法で偽造防止性を高めている。
【0013】
しかしながら、特許文献1の記載にあるように、ホログラム形成層上の反射性薄膜層の反射率が高いため、コレステリック液晶層で反射されず透過した光(選択的反射光の補色光)が、この反射性薄膜層で反射し、再びコレステリック液晶層へ戻る(以下戻り光とする)ことにより、この戻り光が、コレステリック液晶を観察する際のノイズ成分となって、選択的反射光に付加・混在し、液晶本来の色調とならず、視認・識別することすら難しくなっていた。
【0014】
また、コレステリック液晶材料そのものが高価であり、その液晶性能を引き出すためには液晶層に接して、配向膜の形成が不可欠であって煩雑であり、さらには、コレステリック液晶の光散乱性により、ホログラム画像を再生する光がその液晶層を通過するときに画像にボケ・歪みを生じる等の問題があった。
【0015】
このため、コレステリック液晶層の光散乱性を抑えたり、コレステリック液晶層そのものを薄くする等の工夫が考えられたが、コレステリック液晶層の光散乱性を抑えるために屈折率差を小さくしたり、コレステリック液晶層を薄くしたりすると、上記した光選択反射層としての機能が低下してしまい、ホログラム画像の鮮明性と偽造防止性能を確保する最適な条件を得ることが難しいという欠点を有していた。
【0016】
これらの問題を受け、本出願人は、透明基材の一方の面に、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層、及び、そのホログラムレリーフに接するように蛍光層が設けられているホログラムシートを提案している。(特許文献2参照。)
このホログラムシートは、紫外線照射により、蛍光層が発光し、一時的に可視光線を発することで、この可視光線によって再生されるホログラムが、瞬間的に出現するものである。しかし、このホログラムシートは、紫外線照射を止めるとその発光が無くなり、もはや、ホログラム再生像を視認することができなくなるものであって、鑑賞性に劣るとともに、紫外線を照射しつつ観察するため、紫外線の反射等による、観察者の眼に対する悪影響も懸念された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2007−90538号公報
【特許文献2】特開2011−95445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、位相ホログラムのホログラム形成層、すなわちホログラムレリーフを有する透明樹脂の、そのホログラムレリーフに接するようにフォトクロミック薄膜層を設け、さらにその上に、全反射性薄膜層を設けて、自然光の下では、その全反射性薄膜層による反射光によりホログラム再生像を視認でき、一見、通常のホログラムシートのように観察できるものの、定められた所定の波長を有する光源の一時的な照射により、その波長とは異なる特定の波長によるホログラム再生像を特定の方向に出現させる新規なホログラムシートを提供することである。さらに、発色後は、その照射を止めても発色した色調を維持していることから、新規な装飾性及び、これを応用する偽造防止性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、
本発明のホログラムシートの第1の態様は、
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、前記ホログラムレリーフに接するように設けられたフォトクロミック薄膜層、及び全反射性薄膜層が、この順序で設けられていることを特徴とするものである。
【0020】
上記第1の態様のホログラムシートによれば、
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、前記ホログラムレリーフに接するように設けられたフォトクロミック薄膜層、及び全反射性薄膜層が、この順序で設けられていることを特徴とするホログラムシートを提供することができ、高い意匠性と高度な偽造防止性を持つホログラムシートを提供できる。
【0021】
本発明のホログラムシートの第2の態様は、
前記フォトクロミック薄膜層が、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
上記第2の態様のホログラムシートによれば、
前記フォトクロミック薄膜層が、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成されていることを特徴とする第1の態様のホログラムシートを提供することができ、より鮮明なホログラム再生像を出現可能な、ホログラムシートを提供できる。
【0023】
本発明のホログラムシートの第3の態様は、
前記フォトクロミック薄膜層の厚さが、0.01μm以上0.1μm以下であることを特徴とするものである。
【0024】
上記第3の態様のホログラムシートによれば、
前記フォトクロミック薄膜層の厚さが、0.01μm以上0.1μm以下であることを特徴とする第2の態様のホログラムシートを提供することができ、鮮明度が著しく高いホログラム再生像を出現可能な、ホログラムシートを提供できる。
【0025】
本発明のホログラムシートの第4の態様は、
前記透明樹脂層のホログラムレリーフが、
前記透明基材上に、均一な厚さの透明な層を形成し、前記透明な層上に、均一な厚さのフォトクロミック薄膜層を形成した後に、前記透明な層と前記フォトクロミック薄膜層とを同時に変形させることにより設けられたものであることを特徴とするものである。
【0026】
上記第4の態様のホログラムシートによれば、
前記透明樹脂層のホログラムレリーフが、
前記透明基材上に、均一な厚さの透明な層を形成し、前記透明な層上に、均一な厚さのフォトクロミック薄膜層を形成した後に、前記透明な層と前記フォトクロミック薄膜層とを同時に変形させることにより設けられたものであることを特徴とする第2または第3のいずれかの態様のホログラムシートを提供することができ、自然光下でのホログラム再生像がより鮮明な、ホログラムシートを提供できる。
【0027】
ホログラム画像を再生する回折格子群が、ホログラムレリーフとして、透明樹脂層面上に略一平面として形成されており、このホログラムレリーフ上に、且つ、このホログラムレリーフに追従して均一な厚さでフォトクロミック薄膜層が設けられている。
【0028】
すなわち、ホログラムレリーフは、位相ホログラムとしての位相差をレリーフ形状に現しているが、この位相差を有するレリーフ形状に追従して(沿って)フォトクロミック薄膜層が設けられることにより、フォトクロミック薄膜層が呈する色調が、上記位相差を有して(含んで)観察されることになる。言い換えれば、フォトクロミック薄膜が所定の条件下において呈する「色調」を有する「光」がそのフォトクロミック薄膜層から「発する」ことになる。
【0029】
そして、そのレリーフ形状をしているフォトクロミック薄膜層のその「レリーフ形状」に追従して、さらにそのフォトクロミック薄膜層の上に、全反射性薄膜層が設けられている。
【0030】
従って、全反射性薄膜層も、「レリーフ形状」を持ち、自然光下では、このフォトクロミック薄膜層は視認されず、この全反射性薄膜層の反射面における「レリーフ形状」によって、ホログラム再生像を観察することとなる。
【0031】
しかし、このフォトクロミック薄膜層を発光させる光源、すなわち、定められた「所定の波長」を有する光源の光を照射すると、その「所定の波長」とは異なる「特定の波長」によるホログラム再生像が特定の方向にも出現して、観察者は、改めて、この「特定の波長」によるホログラム再生像をも観察することとなる。
【0032】
以下、このフォトクロミック薄膜層によるホログラム再生の原理につき解説する。
【0033】
すなわち、レリーフホログラムを再生する場合に生じるホイヘンスの2次波に対し、本発明のホログラムシートの場合において、この2次波に相当するものが、ホログラムレリーフ面に配されたフォトクロミック薄膜の呈する色調(以後、発した色として「発色」、若しくは、発色した光として、「発色光」、又は「発光光」とも表現する。)であり、この発色光がその役目を担い、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフが有する位相差を含んで発色光を観察者側に発するものである。
【0034】
この発色光が、ホログラムレリーフ面上の空間において干渉現象を起こし、その結果、特定の方向に特定のホログラム再生像を発現する。
【0035】
フォトクロミック薄膜が、その色調を変化させる様子を、フォトクロミック分子ポテンシャル曲線(図1参照。)を用いて、以下に説明する。
【0036】
フォトクロミック分子Aは、ある波長λの光照射によってエネルギーを得て、励起状態の分子A*になる。(STEP1)
このとき、励起状態となったフォトクロミック分子A*は分子内反応、例えば、cis−trance異性化反応や、閉環・開環反応、酸化・還元反応、水素移動による互変異性等を起こして、その分子の幾何構造や、電子構造を変化させる。
【0037】
この変化によって、フォトクロミック分子A*は、フォトクロミック分子Aとは違った波長の光λ′を吸収するフォトクロミック分子B へと変化する。
【0038】
そして、フォトクロミック分子B は、その吸収波長λ′の光の吸収(STEP2)、もしくは、熱エネルギーを吸収(STEP3)して、再び、フォトクロミック分子A へと戻る。
【0039】
そしてこのSTEP1〜STEP3を繰り返すことが可能である。
【0040】
このとき、フォトクロミック分子B からフォトクロミック分子A への熱戻りのしやすさは、その基底状態ポテンシャルエネルギー△E(図1:STEP3
)の大きさに依存することになる。
【0041】
熱戻りがしにくい、つまり△E が極端に大きければ暗所に保存しておけばその
まま着色体を維持し続けることになる。(このようなフォトクロミック分子は、これを光のみに依存するという意味でP 型という。)
逆に、光が当たらなくなって、すみやかに脱色、もしくは、元の色調に戻る場合には、△E は比較的小さい。(このようなフォトクロミック分子は熱依存性が
あるという意味で、T 型という。)
すなわち、フォトクロミック薄膜は、あるときはフォトクロミック分子Aで構成され、あるときは、フォトクロミック分子Bで構成されていることになる。
【0042】
フォトクロミック分子Aもしくは、Bはそれぞれ特徴のある光吸収曲線を有しており、フォトクロミック分子Aは波長λにおいて、フォトクロミック分子Bは波長λ´において大きな吸収(曲線)部分を持つ。
【0043】
一例として、フォトクロミック分子Aにおける波長λが、紫外線領域にある場合、フォトクロミック分子Aは、無色透明であって、励起状態A*を経て、フォトクロミック分子Bに変化して初めて、可視光領域にある特定の波長(これが波長λ´の場合もある。)を中心とする光の吸収により、特定の色調を呈するようになる。
【0044】
この「色調を呈する」状況は、フォトクロミック分子Bが、可視光領域において所定の光吸収曲線を有しており、このフォトクロミック分子Bに白色光を当てた際に、所定の波長を含む所定の波長領域の光を吸収し、吸収されなかった波長領域の光が発散光(特定の波長の光)として、フォトクロミック分子Bからなるホロクロミック薄膜層から発することになる。
【0045】
この例によるホログラムシートにおいては、フォトクロミック分子Bから発する発散光が、上記したホイヘンスの2次波の役割を担うことになる。
【0046】
従って、フォトクロミック薄膜層がフォトクロミック分子Aで構成されているときには、このフォトクロミック薄膜層が無色透明であって、その位置にホログラムがあるとは認識できず、そのフォトクロミック薄膜層の背景にあるものが見えているが、波長λの照明光をフォトクロミック薄膜層に当てることにより、フォトクロミック薄膜層が上記した波長領域の光を発散し、その発散光の干渉により、その発散光の「色調」によるホログラムが空中に浮かんで見えることになる。
【0047】
この発散光の「色調」によるホログラム再生像は、フォトクロミック薄膜層が、上記したP型である場合には、その「色調」をしばらく維持し、徐々に消色し、また、フォトクロミック薄膜層が、上記したT型である場合には、比較的すみやかに「色調」が消色し、再び、無色透明となる。
【0048】
また、フォトクロミック分子A、Bがいずれも可視領域の色調を呈する場合には、ホログラム再生像の色調が変わる現象が現れることになる。
【0049】
本発明のホログラムシートのこのような効果を意匠性ととらえて、鑑賞用途に採用してもよい。
【0050】
また、T型の中でも、その消色の速さを非常に早いものとして、波長λの照明をはずすと同時に消色するように設計し、ホログラム真正性判定者が、ホログラムシート(もしくはホログラムシート貼着物)保持者から、そのホログラムシート(もしくはホログラムシート貼着物)を預かり、素早く波長λの照明を僅かな時間照射し、その瞬間に、上記した発色光によるホログラム再生像を視認して、真正であることを確認し、その後、すみやかに、そのホログラムシート(もしくはホログラムシート貼着物)を、その保持者に返却するなど、その真正性判定を、その保持者に気づかれずにに行うことを可能とすることもできる。
【0051】
この場合には、消色の速さを、発色強度(発色濃度)の半減期で表現して、その半減期が、0.1秒〜数秒となるように設計する必要がある。こうすることで、波長λの光を照射すると、速やかに上記した変化が生じ、フォトクロミック分子Bの「色調」のホログラム再生像が現れ、波長λの光の照射を止めると、速やかに無色透明となる、真正性判定に優れるホログラムシートを提供することができる。
【0052】
もちろん、波長λの光を照射後、発色を確認し、速やかに波長λ´の光を照射して消色するような判定システムを用いることも好適である。
【0053】
また、単波長光源再生型であって、蛍光灯等の多波長光源による照明光下では、各波長によるホログラム再生像がダブってしまい(再生角度が僅かずつズレて再生し、「一つの鮮明な像」として観察できないことを意味する。)、ホログラム再生像を視認できないタイプのホログラムをレリーフホログラムとして記録しておくと、フォトクロミック薄膜層から発する光が「単波長」であることから、「フォトクロミック薄膜層が発光した時のみ観察可能となるようなホログラム」を含めることもでき、その意匠性及び偽造防止性を高めることを可能とする。
【0054】
そして、通常のホログラムにおいては、その再生原理から、そのホログラム再生像が出現する方向がそのホログラムを照明する方向に依存しており、ホログラム再生用の照明を真上から斜め上方へと移動させると、ホログラム再生像の出現方向がその動きに同調して移動するものであるが、本発明のホログラムシートにおいては、全反射性薄膜層において反射されて再生するホログラム再生像は、これと同様の挙動を示すものの、フォトクロミック薄膜層の発光により再生されるホログラム再生像は、その定められた「所定の波長」を有する光源の光を、どのような方向からあてても、「同一の特定の方向にのみ現れる」という特異な性質を持つことから、その偽造防止性をさらに高めることができる。
【0055】
もちろん、ホログラムを再生可能な光源の波長域が非常に狭いことに起因して、その特定の波長域を知りうる者のみがホログラム再生を果たすことができ、真正性判定用に有用なものとなる。また、上記したストークスシフトの値を知りうる者のみがホログラム再生像の色調を予測でき、その再生波長に調整したバンドパスフィルターを通して覗いて、そのバンドパスフィルターを通過できるホログラムのみが、真正であると判定することもできる。
【0056】
また、このバンドパスフィルターを通過する角度(回折角度)も、そのストークスシフト量に依存し、やはり、その値を知りうる者のみがその特定の角度で判定を行うことができる。
【0057】
さらに、フォトクロミック分子を複数含めることにより、この再生像は複数の角度に異なる色調で現れることになり、意匠性の面でも、真正性判定の面でもより優れたものとなる。
【0058】
次に、ホログラフィの原理について説明する。
【0059】
物体がコヒーレント光で照明され,物体から回折された光が記録媒体(フォトレジスト等。)を照明しているとした場合、物体から回折されて記録面に到達した波面を物体波は、
F(x,y)=A(x,y)EXP[φ(x,y)]
であらわされる。ここで、
A(x,y) は物体波の振幅分布とし、
φ(x,y) は位相分布とする。
【0060】
このとき、記録媒体には、記録媒体に到達する光波の強度分布が記録される。その強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)|2=A2(x,y) (1)
となり、位相分布は記録されない。
【0061】
ここで,物体波にこれと干渉性のある光波(参照波という)を重ね合わせると,記録される光波の強度分布は、
I(x,y)=|F(x,y)+R(x,y)|2
=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+F(x,y)R*(x,y)+F*(x,y)R(x,y) (2)
となる.(*は複素共役項を表す。)
ただし,参照光が記録面に角度θで入射する平面波であるとすれば、
R(x,y)=r(x,y)EXP(2πiαx) (3)
と書け、
α = SIN(θ)/λ (4)
である。(2)の第1項と第2項はそれぞれ、物体波の強度と参照波の強度でいずれも位相情報は欠落している。第3項と第4項は干渉の項でそれぞれ
F(x,y)R*(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[i [φ(x,y)−2παx] ] (5)
F*(x,y)R(x,y)=
A(x,y)r(x,y)EXP[−i [φ(x,y)−2παx]] (6)
とあらわされ、物体の位相項 φ(x,y) が残っている。(5)、(6)は互いに複素共役であり、(4.2)の第3項は物体の複素振幅分布を含んでいる。(5)、(6)を(2)に代入すると、
I(x,y)=|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+2A(x,y)r(x,y)COS [2παx−φ(x,y)] (7)
となる.物体波と参照波が干渉して干渉縞を形成していることがわかる。
【0062】
このように、物体波に参照波を重ね合わせて干渉記録し、 物体の位相情報を欠落させずに記録する方法がホログラフィである。(7)を記録したものが「ホログラム」と呼ばれる。ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布 I(x,y)
比例し、
T(x,y)=τI(x,y) (8)
とかけるとする。このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてると、ホログラムを透過もしくは反射してきた波面は、
T(x,y)R(x,y)=τ(|F(x,y)|2+|R(x,y)|2
+τF(x,y)|R(x,y)|2
+τF*(x,y)R2(x,y) (9)
とあらわすことが出来る.この第2項は
τF(x,y)|R(x,y)|2
τA(x,y)r2(x,y)EXP[iφ(x,y)]] (10)
第3項は、
τF*(x,y)R2(x,y)=
τA(x,y)r2(x,y)EXP[−iφ(x,y)+2πiα] (11)
とかける。
【0063】
このことから、(9)の第1項は、照明光と同じ方向にホログラムを突き抜ける光束もしくは正反射する光束であり、第2項は、(10)より、物体光に比例した振幅を持つ光波であることがわかり、第3項は、(11)より、物体波と共役な位相分布を持ち、2θの方向に伝播する光波であることがわかる。
【0064】
このようにして,ホログラフィの技術を使うと複素振幅分布を記録して再生することが出来る。
【0065】
本発明の場合は、ホログラムの振幅透過率もしくは振幅反射率が、記録した強度分布に比例し、(8)の式で表されてはいるものの、このホログラムに、記録したときに用いた参照波を所定の角度であてるのではなく、(8)の振幅透過率もしくは振幅反射率と同様の空間的な分布を持つ発光波がこのホログラムから発せられることになる。
【0066】
従って、参照光にホログラムに記録された位相項を付与するという従来のホログラム再生の原理によらず、既にホログラムに記録されている位相項を保持して発光波を放射するものである。従って、理論上は、物体の位相差を含む空間関数を持つ3次元の連続曲面状の発光面を有し、その1曲面から光が放射されることになる。
【0067】
従来のホログラム再生原理を透過タイプについて、単純化して説明すると、参照光としての平行光をホログラムにあてた際、遮蔽部分では、平行光が遮蔽され、透過部分からのみその平行光を透過し、透過部分と遮蔽部分との境界において回折が起こり、物体の持つ位相項を受け取り、ホログラムを透過した成分全体が重ね合わさり、それがホログラム再生光となって観察者の目に届くものである。
【0068】
本発明の場合は、上記した参照光としての平行光が存在せず、ホログラムレリーフに接するように設けられた発光面での発光時、その放射光が物体の位相項を保持しており、その放射光同士の干渉現象により、ホログラム再生がなされるものである。
【0069】
時間的且つ空間的コヒーレンス性を持たない放射光同士の干渉効果は、レーザー光のような十分な干渉を生じないが、低コヒーレント光で ホログラムを照明した際と同様のレベルでホログラム再生が行われる。以上のような原理による再生であるため、ホログラム撮影時の参照光は平行光であることが好ましく(複雑な参照光を再現できないため。)、もしくは、「回折格子により表現されたホログラム」(回折格子は、物体光、参照光とも平行光である。)であることが好ましく、回折格子は計算機ホログラム等、電子線描画により形成したものが精密であり、好適である。
【0070】
さらに、上記の理由から、ホログラム再生像をより鮮明にするためには、放射光に、時間的若しくは空間的なコヒーレンス性に類する特性を付与することが必要であり、例えば、発光する層の厚さを薄いものとしたり、発光波長の幅を狭くすることが望ましい。さらに、励起光源も小さい形状であることが好ましく、スポット形状等が特に好適である。
【0071】
また、発光する層を励起する励起光と、発光波長との波長差は大きい方が望ましく、さらに、観察時、その励起光をフィルタリングして発光光のみを増幅することも有効である。
【0072】
励起光源として、紫外線、可視光線、電子線、X線等のエネルギー及び場合に応じて、赤外線エネルギーを放射可能な光源を用いて、発色等をさせることができるが、ホログラム観察用さらには、ホログラム認証用に用いるためには、発光する層に応じた光源を用いる必要があり、所定の強度、波長、さらには照明スポットのサイズを有する紫外線光源、可視光光源、場合により赤外線光源を用いる。
【0073】
これらの光源による照明により、ホログラムレリーフ面に接するように設けられたフォトクロミック薄膜層から、さらに言及すれば、そのフォトクロミック薄膜層に含まれる発色分子から個々に、照射光源の波長とは異なる波長の光等が発現する。その発色等が、ホログラムレリーフと同一の空間的位相を含み、且つ、照明光源とは異なる波長(発光波長。)を有することから、ホログラムレリーフによる正反射光(0次回折光)方向や、照射光波長(励起光波長)による回折方向とは異なる方向、すなわち、発光波長による回折方向へホログラム像の再生が行われる。
【0074】
但し、このフォトクロミック薄膜層の厚さが、ホログラムレリーフとは無関係にそのホログラム面上に分布している場合には、その厚さ分布に起因する発色強度分布が、場合によっては、ホログラムを再生する光と不要な干渉を生じ、ホログラム再生像を不鮮明にする要因となり得る。
【0075】
この要因を排除するため、フォトクロミック薄膜層を、ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成して、ホログラムレリーフ面のどの位置からも、同一の強度の発光が生じるようにし、ホログラム再生像の鮮明化を図ることができる。
【0076】
本発明のホログラムシートの照射光(励起光)として、可視光以外の紫外光や赤外光を使用した場合は、その光は観察者には見えず、あたかも照射光のないところからホログラム再生像が浮き上がっているように観察されるが、このホログラム再生像は、例え、照射光が、時間的・空間的なコヒーレント性を有していても、結果として、励起・発色というプロセスを経て発光するものであるため、その発光時の空間的なホログラムの位相を含んではいるとはいえ、その発光光同士の時間的及び空間的なコヒーレント性は小さく、ホログラム再生像は通常のレーザー再生レリーフホログラムのレーザー光による再生像より微弱であって且つ不鮮明となっている。
【0077】
もちろん、ビーム形状の回折光を観察するのみであれば、その色調と回折方向を確認することは容易であり、そのままでも真正性の判定に差し支えないが、このため、この微弱且つ不鮮明なホログラム再生像を観察者が認識しその存在を正確に判定可能とするために、フォトクロミック薄膜の発光性能を向上させ、且つ、回折角度を大きくとって波長―回折角依存性を強め、照明光回折角度と発光光回折角度の差を大きくし、さらには、フォトクロミック薄膜層を薄くして、フォトクロミック薄膜層厚さ方向のばらつきを抑え且つ均一なものとすることが必要となる。(発光面が位相情報を含んでいるため、その空間的な形状を正確に再現するものとする。)
さらには、時間的なコヒーレント性を発現するため、照明用の光源として発光時間が10-15sec以下のパルスレーザーで照明して、パルスとパルスの時間的間隔をA−B分子間遷移時間以上あけて照明することも好適である。これにより、一つの照明パルスによって生じた一つの発色の発光面が、次の照明パルスによって生じた発色面とは、互いに撹乱現象を起こさず、一つのパルスによって発現した一つの発色面によって生じるホログラフィックな干渉現象により、鮮明なホログラム再生像を観察することができるようになる。もちろん、単純に秒単位でON−OFFするストロボ状の光源を使用した場合でも、観察者には、連続して発光しているようにも見えるため、このような簡易な手段であっても目視で確認する場合には、上記した効果を十分得ることができる。
【0078】
フォトクロミック薄膜層は、フォトクロミック分子を樹脂に混入させたり、溶剤(若しくは水)に分散させたりしたフォトクロミック分子含有インキを、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、ノズルコート方式さらにはインクジェット方式等でホログラムレリーフ上に形成することができる。
【0079】
このとき、インキ中のフォトクロミック分子の含有割合を調整する等により、形成したフォトクロミック薄膜層を、ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成することができる。
【0080】
ホログラムレリーフの凹凸は例えれば、1μmレベルの周期で、深さ0.01μmレベルの凹凸を持つ、ゆるやかな曲線であって略平面と見做せるため、この略平面上に適宜な粘度(0.1〜10パスカル・秒)に調整し、インキの自重によるレベリング効果を発揮させることと、インキ中の固形分を20%以下、さらには10%以下とすることで、例えば、厚さ1μmに対して、そのばらつきを1/10以下に、さらには1/20以下に抑えることができる。
【0081】
ここで、フォトクロミック薄膜層を1μmオーダーとしたが、ホログラム再生像の鮮明度を向上させるためには、フォトクロミック薄膜層を薄くすることが好ましく、このためには、フォトクロミック分子のサイズを1.0μm程度もしくはそれ以下、例えば0.1μm〜0.5μm、さらには、0.5μm〜0.1μm、より好適には、3〜10nmとし、ホログラムレリーフ面内に均一に点在させることも好適である。そして、フォトクロミック薄膜層厚さ方向には、フォトクロミック分子、もしくは、フォトクロミック分子を吸着させた微粒子を単位として1〜10分子、もしくは1〜10粒子以内で並んでいる状態とすることが好ましい。
【0082】
中でも、ノズルコート方式やインクジェット方式、さらには、化学蒸着等の物理的蒸着法では、樹脂を使用せず溶剤等とフォトクロミック分子や粒子のみで薄膜を形成可能であり、フォトクロミック薄膜層として非常に薄く形成(フォトクロミック分子や粒子1〜10分子等。)することができるため好適である。その上にそれらのフォトクロミック分子を固定するために適宜な透明樹脂を保護層として形成してもよい。
【0083】
ところで、フォトクロミック材料は、ホログラム記録材料や、光メモリ用記録材料そのものとして用いることは可能であり、そのような用途は既に公知であるが、これらは、フォトクロミック材料に直接ホログラフィックな記録(干渉縞の記録)を行うものであって、フォトクロミック材料に微細な明暗の記録を行うものである。
【0084】
この記録は、記録した領域のフォトクロミック分子に変化を与えない手法(変化を与えない波長の光を照射するなど。)を用いて、読み出されることになる。
【0085】
これに対して、本発明のホログラムシートは、均一に形成したフォトクロミック薄膜層を全て同様に(均一に)照明し、均一な発色を生じさせるだけのものであって、ホログラム撮影光学系を組んでフォトクロミック薄膜層を露光するというような複雑な工程を必要とせず、フォトクロミック薄膜層そのものが「その形状として保有」している凹凸形状に、そのホログラム情報を担持させており、フォトクロミック薄膜層を均一に形成するだけでホログラム情報を「取得する」(「ホログラム再生情報」を「獲得する」という意味。)ことができるという顕著な効果を有するものである。

そして、上記したホログラムの原理より、ホログラム再生像の鮮明度を高めるためには、フォトクロミック薄膜層の厚さは薄いことが望ましいが、薄くすればするほど、ホログラム再生時の発色強度が弱くなるため、フォトクロミック薄膜層厚さは、0.01μm以上0.1μm以下である必要がある。
【0086】
0.01μm未満では、発色強度が弱すぎて、光電子倍増管を用いて増幅したとしても、迷光等のノイズとの区別がつきにくく、0.1μmを超えると、そのフォトクロミック薄膜層の形成過程によっては、フォトクロミック薄膜層の「ホログラムレリーフを有する透明樹脂層と接していない側」の「レリーフ形状」と、フォトクロミック薄膜層の「ホログラムレリーフを有する透明樹脂層と接している側」の「レリーフ形状」とが、実質的に同一とは、なり難くなる。従って、フォトクロミック薄膜層の厚さは、2.0μm以下とし、好適には、0.1μm以下とする。
【0087】
すなわち、フォトクロミック薄膜層の厚さが厚くなると、フォトクロミック薄膜層の「ホログラムレリーフを有する透明樹脂層と接していない側」の「レリーフ形状」と、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層上に設けられている「ホログラムレリーフ」の「レリーフ形状」との間に、「ズレ」が発生することとなる。
【0088】
この「ズレ」は、「レリーフ形状」の深さ方向に発生し易く、フォトクロミック薄膜層の厚さが厚くなればなる程、その「ズレの大きさ」が大きくなる。
【0089】
ホログラムレリーフにおける「深さ方向のズレ」は、ホログラム再生像の「明るさ」に強く影響し、ホログラムレリーフの深さが「最適深さ(最も明るいホログラム再生像を再生し得る深さを意味する。)」より一様に浅くなっても、また、一様に深くなっても、その「明るさ」が低下することとなる。
【0090】
この「ズレ」を最小限に抑えるために、まず、透明基材上に、「均一な厚さの透明な層」を形成し、その透明な層の上に、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」を形成する。
【0091】
このとき、透明基材として、表面平滑性の高いもの(例えば、その表面粗さ:Raが0.01μm以下。)を用いて、その表面上に、透明な樹脂材料を用いて、1μm〜10μmで形成し、その厚さ精度を±1%以内とした「均一な厚さの透明な層」を設け、さらに、その上に、フォトクロミック薄膜層を0.01μm〜2.0μmで形成し、その厚さ精度を±5%以内とした「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」を設ける。
【0092】
この「均一な厚さの透明な層」のフォトクロミック薄膜層と接している平面が、下記する変形により、「ホログラムレリーフ」の「レリーフ形状」とされ、「均一な厚さの透明な層」が、「ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層」となる。通常は、その透明樹脂層の厚さは、1μm〜30μmの厚さで形成するところ、より均一な厚さを実現すべく、可能な限り薄く形成する。
【0093】
このような「均一さ」は、スピンコーティング方式等の精密コーティング方式により得ることができ、また、使用するインキ組成において、インキ中の固形分を0.5%〜5.0%と低く設定し、インキ塗布後に緩やかな乾燥を行うことで、その乾燥前の塗膜の厚さムラを1/20〜1/200の大きさとする手法を用いることもできる。
【0094】
例えば、3μm厚さの透明な樹脂層を、その厚さ精度±1%、すなわち、±0.03μm以下の厚さムラで設け、その上に、1.0μm厚さのフォトクロミック薄膜層を、その厚さ精度±5%、すなわち、±0.05μm以下の厚さムラで設けて、「透明基材」上に、「均一な厚さの透明な層」と、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」を重ねて形成する。
【0095】
この均一な2層に対して、そのフォトクロミック薄膜層の最表面上に、あらかじめホログラムレリーフを設けてある原版(プレス型。)を押し当て、適宜な加熱と加圧を加えて、その均一な2層を変形させ、「均一な厚さの透明な層」においては、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」と接している面側のみを、そして、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」においては、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」そのものを、「レリーフ形状」とする。
【0096】
これにより、「均一な厚さの透明な層」と「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」との界面、及び、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」の最表面に形成される「ホログラムレリーフ」が、あらかじめ金型に設けていた「ホログラムレリーフ」と高い精度で同一となり、この「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」の最表面に形成される全反射性反射層の表面形状をも、高い精度で「ホログラムレリーフ」そのものとすることができる。
【0097】
この結果、全反射性薄膜層によって反射する光は、非常に鮮明なホログラム再生像を再生する。
【0098】
その全反射性薄膜層は、蒸着や、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などにより、厚さ100nm〜2000nmで設けることができる。
【0099】
また、「全反射性薄膜層」の形成厚さ精度が非常に高く、また、その形成厚さそのものが非常に薄いため、上記した「均一な2層」を形成後、その上に「全反射性薄膜層」を設け、この「全反射性薄膜層」の最表面から、上記と同様に、あらかじめホログラムレリーフを設けてある原版(プレス型。)を押し当て、適宜な加熱と加圧を加えて、その3層を変形させ、「均一な厚さの透明な層」の「フォトクロミック薄膜層」と接している面側と、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」そのもの、及び、全反射性薄膜層そのものを、同時に、その「レリーフ形状」とすることも好適である。この方法を用いると、既にホログラムレリーフ状となっているフォトクロミック薄膜層上へ、全反射性薄膜層を形成する際に生じやすい、フォトクロミック薄膜層の「レリーフ形状」の乱れや、原版へのフォトクロミック薄膜層の一部付着(一部取られ。)等のホログラムレリーフ劣化要因を解消することができ、好適である。
【0100】
本発明のホログラムシートは、フォトクロミック薄膜層からの発光が、全反射性薄膜層において遮断され、且つ、紫外線等も遮断するため、ホログラムシートの一方の面からしか、発色によるホログラム再生像を観察することができないものとしているが、敢えて、全反射性薄膜層上に、さらに、フォトクロミック薄膜層をもう一層設けることで、ホログラムシートの他方の面からも、発色によるホログラム再生像を観察できるようにすることも可能であり、その際、その2つのフォトクロミック薄膜層が設けられる位置(領域)を異なるものとし、それぞれの発色によるホログラム再生像を異なるものとすることも、その意匠性や偽造防止性を高めるため、好適である。
【0101】
そして、全反射性薄膜層上に、さらに、適宜な粘着層を形成して「ラベル」として用いたり、適宜な基材上に、適宜な剥離層を設け、その上に、ホログラムレリーフを有する透明樹脂層、フォトクロミック薄膜層、全反射性薄膜層、及び、適宜な接着剤層を設けた、「転写箔」として用いることも好適である。
【発明の効果】
【0102】
本発明のホログラムシートによれば、
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、及び、そのホログラムレリーフに接するように設けられたフォトクロミック薄膜層、及び全反射性薄膜層が、この順序で設けられているホログラムシートが提供され、自然光の下では、その全反射性薄膜層による反射光によりホログラム再生像を視認でき、一見、通常のホログラムシートのように観察できるものの、定められた所定の波長を有する光源の照射により、その波長とは異なる特定の波長によるホログラム再生像を特定の方向に出現させる新規なホログラムシートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】は、フォトクロミック分子ポテンシャル曲線を説明する図である。
【図2】は、本発明の一実施例を示すホログラムシートAの断面図である。
【0104】
(フォトクロミック薄膜層が、「ホログラムレリーフを形成する凹凸 に追従して均一な厚さで形成されている」例であり、接するように フォトクロミック薄膜層が設けられている場合の図は省略している 。)
【図3】は、本発明の一実施例を判定するプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0106】
(透明基材)本発明で使用される透明基材1は、厚みを薄くすることが可能であって、機械的強度や、ホログラムシートAを製造する際の加工に耐える耐溶剤性および耐熱性を有するものが好ましい。使用目的にもよるので、限定されるものではないが、フィルム状もしくはシート状のプラスチックが好ましい。(図2参照。)
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、ポリエチレン/ビニルアルコール等の各種のプラスチックフィルムを例示することができる。
【0107】
その中でも、紫外線等の励起光に対する耐性を有するもの、例えば、紫外線吸収剤を含むものであってもよい。紫外線吸収剤を含むものは、自然光等の中に含まれる紫外線により微かではあるが、予定外のホログラム再生を防ぐ効果も有する。
【0108】
透明基材1の厚さは、通常5〜100μmであるが、ホログラム再生像の視認性を配慮する場合には、5〜50μm、特に5〜25μmとすることが望ましい。
【0109】
(ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層:ホログラム形成層ともいう。)
本発明のホログラム形成層2を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、もしくは電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。(図2参照。)
熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等が挙げられる。
【0110】
これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの樹脂の1種もしくは2種以上は、各種イソシアネート樹脂を用いて架橋させてもよいし、あるいは、各種の硬化触媒、例えば、ナフテン酸コバルト、もしくはナフテン酸亜鉛等の金属石鹸を配合するか、または、熱もしくは紫外線で重合を開始させるためのベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、もしくはジフェニルスルフィド等を配合しても良い。
【0111】
また、電離放射線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等を挙げることができ、このような電離放射線硬化性樹脂に架橋構造を導入するか、もしくは粘度を調整する目的で、単官能モノマーもしくは多官能モノマー、またはオリゴマー等を配合して用いてもよい。
【0112】
上記の樹脂材料を用いてホログラム形成層2を形成するには、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行なって現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作成したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料の層に押し付けることにより、賦型を行なうのがよい。
【0113】
熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱もしくは電離放射線照射により、硬化を行わせ、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層も光回折構造として使用できる。
【0114】
ホログラム形成層2の厚さは、1μm〜30μm、特には、3μm〜10μmとする。
【0115】
この厚さが、1μm未満では、「レリーフ形状」を形成し難く、30μmを超えると、ホログラムシートの処理工程や使用環境等による、ホログラム形成層2の熱膨張や、熱変形による「レリーフ形状」の劣化が起こり易くなる。そして、ホログラム形成層2の厚さが、3μm〜10μmであると、その処理工程中や使用の際の取扱い適性に優れる上、その均一性を向上させることができる。
【0116】
ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラムなどのレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラムなどの白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。また、マシンリーダブルホログラムのように、その再生光を受光部でデータに変換し所定の情報として伝達したり、真偽判定を行うものであってもよい。(ホログラム形成プロセスは図示せず。)
特に、白色光再生ホログラム等の自然光や蛍光灯などの通常の照明光においてホログラム再生像A1を観察できるホログラムH1と、フレネルホログラム等の単波長光でのみホログラム再生像A2を再生可能なホログラムH2を、一つのホログラムレリーフとして多重記録することで、本発明のホログラムシートを通常照明光で観察する際にはホログラム再生像A1のみが視認でき、所定の波長の照明光を当てた際には、別のホログラムであるホログラム再生像A2を視認できるようにすることも好適である。
【0117】
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。
【0118】
また、カラーホログラム画像を、回折格子線からなる回折格子画素(同一の回折格子線からなる単一回折格子エリアの最小単位。これら画素から回折光としてでてくる光の集合が一つのカラーホログラム画像を形成する。このようなホログラムレリーフは、ホログラム画像に対応した回折格子群を含む典型的な例である。)に要素分解し、所定の画素のサイズ、格子線ピッチ、格子線角度をその各要素に割り当てて再現するという画像処理方法を用いて形成することも可能である。
【0119】
凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm〜数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.01μm〜0.5μmである。
【0120】
単一回折格子のように、全く同一形状の凹凸の繰り返しであるものは、隣り合う凹凸が同じ形状であればある程、反射する光の干渉度合いが増しその強度が強くなり、最大値へと収束する。回折方向のぶれも最小となる。立体像のように、画像の個々の点が焦点に収束するものは、その焦点への収束精度が向上し、再現もしくは再生画像が鮮明となる。
【0121】
ホログラムレリーフ形状を賦形(複製ともいう。)する方法は、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパとも呼ばれる。)として用い、上記ホログラム形成層2上に、前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。
【0122】
上記の極微細な形状を精密に再現するため、また、複製後の熱収縮などの歪みや変形を最小とするため、原版は金属を使用し、低温・高圧下で複製を行う。
原版は、Niなどの硬度の高い金属を用いる。光学的撮影もしくは、電子線描画などにより形成したガラスマスターなどの表面にCr、Ni薄膜層を真空蒸着法、スパッタリングなどにより5〜50nm形成後、Niなどを電着法(電気めっき、無電解めっき、さらには複合めっきなど)により50〜1000μm形成した後、金属を剥離することで作ることができる。
【0123】
複製方式は、平板式もしくは、回転式を用い、線圧0.1トン/m〜10トン/m、複製温度は、通常60℃〜200℃とする。(複製プロセスは図示せず。)
そして、上記した、ホログラムレリーフ形状を賦形(複製)する方法を用いて、あらかじめ、透明基材1上に、「均一な厚さの透明な層」(図示せず。この「透明な層」が本発明のホログラムシートAのホログラム形成層2となる。)を形成し、その透明な層の上に、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」(図示せず。このフォトクロミック薄膜層が本発明のホログラムシートAのフォトクロミック薄膜層3となる。)を形成したものの、その均一な厚さのフォトクロミック薄膜層上から、上記した原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、加熱、加圧することにより、原版の凹凸模様を、「均一な厚さの透明な層」に設けてホログラム形成層2とし、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」に設けてフォトクロミック薄膜層3とすることも好適である。
【0124】
この際、透明基材1は、耐熱性や、耐圧力性が高く、この加熱、加圧によっては、何らの変形も受けない。
【0125】
さらには、あらかじめ、透明基材1上に、「均一な厚さの透明な層」、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」及び、「全反射性を有する金属薄膜層」を形成したものの(4層構成のシートとなる。)、その金属薄膜層上から、同様に、ホログラムレリーフ形状を賦形して、ホログラム形成層2、フォトクロミック薄膜層3、及び全反射性薄膜層4を設ける方法も好適である。
【0126】
(フォトクロミック薄膜層)
本発明では、ホログラム形成層2のホログラムレリーフ面に、フォトクロミック薄膜層3を形成する。(図2参照。)
このフォトクロミック薄膜層に用いられる、フォトクロミック分子(フォトクロミック材料)としては、有機化合物系と、無機化合物系があり、
有機化合物系としては、
アゾベンゼン類(cis−trance異性):ジメチルアミノアゾベンゼン類等、
スピロピラン類(分子内開環―閉環):スピロベンゾチオピラン,スピロセレナゾリノベンゾピラン,スピロベンゾセレナゾリノナフトオキサジン等、より具体的には、1,3,3−トリメチルインドリノ−6'−ニトロベンゾピリロスピラン、1',3'−ジヒドロ−8−メトキシ−1',3',3'−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2',2'−(2H)−インドール]、1,3,3−トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−6'−ブロモベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−8'−メトキシベンゾピリロスピラン、1,3,3−トリメチルインドリノ−β−ナフトピリロスピラン等、
スピロオキサジン類(分子内開環―閉環):スピロキノオキサジン類、スピロナフトオキサジン類、スピロフェナントロオキサジン類、スピロビピリドオキサジン類等、分子内に窒素原子を含む複素環構造を有する化合物等(赤紫〜青色。「着色」が速やかに消色。)、
スピロペリミジン類:2,3−ジヒドロ−2−スピロ−4‘−[8’−アミノナフタレン−1‘(4’H)-オン]ペリミジン、2,3−ジヒドロ−2−スピロ−7‘−[8’−イミノ−7,8−ジヒドロナフタレン−1‘−アミン]ペリミジン等、
アリールエテン類:対称型ジアリールエテン、非対称型2,3−ジアリールマレイン酸無水物、非対称ジアリールペルフルオロシクロペンテン等、
1,2−ビス(2,4−ジメチル−5−フェニル−3−チエニル)−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1−シクロペンテン、1,2−ビス[2−メチルベンゾ[b]チオフェン−3−イル]−3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1−シクロペンテン、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイン酸無水物、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイミド、cis−1,2−ジシアノ−1,2−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル) エテン等、より具体的には、発色波長:425nm、469nm、526nm、534nm、550nm、562nm、578nm、583nm、611nm、620nm、628nm、665nm、680nm、828nm等(構造により、青色、緑色、黄色、赤色等に発色。)、
フルギド類:ジフェニルフルギド、トリフェニルフルギド等、
クロメン類:6−モルホリノ−3,3−ビス(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(4−メトキシフェニル)−3−(4−トリフルオロメトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−ピペリジノ−3−メチル−3−(2−ナフチル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−ピペリジノ−3−メチル−3−フェニル−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3,3−ビス(4−メトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−ヘキサメチレンイミノ−3−メチル−3−(4−メトキシフェニル)−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(2−フリル)−3−メチル−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(2−チエニル)−3−メチル−3H−ベンゾ(f)クロメン、6−モルホリノ−3−(2−ベンゾフリル)−3−メチル−3H−ベンゾ(f)クロメン等(橙色〜黄色に発色。)、
シクロファン類:アントラセノファン、アントラセノナフタレノファン、アントラセノパラシクロファン等のアントラセン含有シクロファンやメタシクロファン等、
カルコン(1,3−ジフェニル−2−プロペン−1−オン)―フラビリウム系等、
フルギミド化合物類:N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−6,7−ジヒドロ−2−(4'−メトキシフェニル)−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−6,7−ジヒドロ−4−メチルルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕フランジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕フランジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノ−6,7−ジヒドロ−4−メチルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−2−(4'−メトキシフェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−シアノメチル−4−シクロプロピル−6,7−ジヒドロ−2−フェニルスピロ(5,6−ベンゾ〔b〕チオフェンジカルボキシイミド−7,2−トリシクロ〔3.3.1.13,7〕デカン)、N−(3'−シアノフェニル)−6,7−ジヒドロ−4−メチル−2−(4'−メトキシフェニル)スピロベンゾチオフェンカルボキシイミド−7,2'−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(橙色〜青色に発色。)、
チオインジゴ類(cis−trance異性)、サリチリデンアニリン類(分子内水素移動:結晶タイプ。)、ニトロベンジルピリジン類(分子内水素移動:結晶タイプ。)、テトラクロル−α−ケトジヒドロナフタリン類、ビス(トリフェニルイミダゾリル)類、テトラフェニルヒドラジン類、ビアンスロン類、ピリジルシドノン類、アントラセン誘導体(光二量化)、メチレンブルー(光酸化還元)、トリフェニルメタン類(イオン解離)、ヘキサフェニルビイミダゾル(ラジカル解離)、多環芳香族化合物(酸素付加)等、
を用いることができる。

特に、ジアリールエテン類を透明樹脂に分散させたもの、ジアリールエテン類の結晶化物は、物理特性、耐候性に優れる。
また、無機化合物系としては、
AgBr、AgCl、AgI、CuBr2、CuCl2、CuCl、CuI2、CuI、Ag単体、Cu単体等の中から選択した三成分系化合物等、
銀ナノ粒子-酸化チタン系等、
を用いることができる。
【0127】
さらに、これらのフォトクロミック分子(材料)の中で、フォトクロミック分子Bとしての発光強度曲線(波長を横軸として。)が、可視領域において、一つのみのピークを持つものが好適であり、さらには、そのピークの半値幅が、10〜50nmであるものが、より鮮明なホログラム再生像を与えるため好適である。
【0128】
形成方法としては、一般的印刷方法、コーティング方法等も用いることは可能であるが、より精密な薄膜を形成する方法として、回転塗布法、キャスト法、スクリーン印刷法、ブレードコーティング法、ロール塗布法、水面展開法、LB(ラングミュア・ブロジェット)法等が挙げられ、ドライ・プロセスとしては真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等が挙げられる。
【0129】
特に、有機化合物系を均一に、且つ、分子レベルで薄膜形成するには、化学蒸着法が好適である。
【0130】
より具体的には、フォトクロミック分子を透明な樹脂に均一に分散した樹脂分散型のインキや、水又は溶剤にフォトクロミック分子を分散した溶媒分散型のインキを作製し、それらを用いて、印刷方式や、コーティング方式さらには、インクジェット方式等の種々の形成方法を用いて、ホログラム形成層2に、そのホログラムレリーフに接するように、また、追従するよう均一に、若しくは凹部に部分的に、フォトクロミック薄膜層3を形成することができる。(ホログラムシートA)
また、ホログラム形成層2のホログラムレリーフ面上に、直接、フォトクロミック分子を化学蒸着法によりフォトクロミック薄膜層3を形成することも、そのホログラムレリーフ追従性や、その均一性から好適であるとともに、電子ビーム加熱真空蒸着法における高温の電子ビームや、スパッタリング法におけるアルゴン原子の衝突がなく、分子の構造を維持しやすいため好適である。
【0131】
また、ホログラム形成層2上にフォトクロミック薄膜層3を形成した後、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー法により、回折格子パターンに位置合わせして露光、現像、不要部除去によりフォトレジストのパターンを回折格子パターンの凹部に同調させ、エッチングによりフォトクロミック薄膜層を除去して、凹部のみにフォトクロミック薄膜層を残すことができる。(ホログラムシートA´)
逆に、ホログラム形成層2上にフォトレジスト層を形成し、回折格子パターンに位置合わせして露光、現像、不要部除去により、凸部にフォトレジストを残し、凹部を露出させて、この上にフォトクロミック薄膜層を形成後、凸部上のフォトレジストを除去すると同時に、その真上にあるフォトクロミック薄膜層を部分的に除去することにより、凹部のみにフォトクロミック薄膜層3を残すことができる。(ホログラムシートA´)
樹脂分散型のインキは、上記したフォトクロミック分子を、透明樹脂、例えば、熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、もしくはポリスチレン樹脂等が、また、熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、もしくはフェノール樹脂等に混入し、2次凝集を少なくするように、ガラスビーズやスチールビーズを用いたボールミル、ニーダー、ロールミル等による混練りを十分行い、溶剤等で粘度調整をして、グラビア方式、オフセット方式、シルクスクリーン方式、カーテンコート方式、ノズルコート方式、さらには、インクジェット方式を適宜用いて均一な厚さに形成することができる。
【0132】
但し、フォトクロミック薄膜層3の厚さを、0.003μm以上1.0μm以下、さらには、0.01μm以上0.5μm以下とするためには、樹脂分散型インキの固形分を1〜10%とし、溶剤若しくは水を溶媒とした塗布膜が、例えば、5μmであったときに、溶媒を蒸発させた後の厚さ(フォトクロミック薄膜層の厚さ)がその1/10乃至は1/100となるようにし、0.5μm〜0.05μmとする。
【0133】
溶媒分散型のインキは、樹脂成分を含まず、フォトクロミック分子と溶媒のみであるため、樹脂分散型よりフォトクロミック薄膜層3の厚さを薄くすることができる。
【0134】
溶媒としては、使用するフォトクロミック分子の極性に合わせ、水やアルコール系溶剤、若しくは、セルソルブ系、パラフィン系溶剤を用いて、フォトクロミック分子を溶解・保持させ、攪拌しながらカーテンコート、ノズルコート等によりホログラム形成層2上に設けることができる。
【0135】
さらには、ホログラムレリーフ面を形成している樹脂に対して、溶解性を有する遅い揮発性の溶剤を数μm塗布し(アクリル・塩ビ・酢ビ樹脂や、ポリエステル樹脂等に対するケトン系溶剤、例えばシクロヘキサノン等。この溶剤を非溶解性の溶剤で希釈して使用し、残留する成分を0.1μm以下にすることも可能である。)、そのホログラムレリーフ面の最表面のみを溶解して、その最表面に粘着性を付与し、その上に、フォトクロミック分子を霧状として吹きかけて、その粘着性の面に接するフォトクロミック分子のみがホログラムレリーフ面上に残るようにするフォトクロミック薄膜層形成方法も好適である。
【0136】
この方法によると、フォトクロミック薄膜層3がLB膜のように分子レベルの膜となり、ホログラムレリーフ面上に(フォログラムレリーフの大きさに比較して)均一に形成され、ホログラム形成層2側から励起光を当てた場合の発光面が、ホログラムレリーフ面と「同一」となる。
【0137】
いずれにしても、ホログラムレリーフの凹凸が非常に小さい為、フォトクロミック薄膜層3を均一厚さで、且つ、その中のフォトクロミック分子が均一な密度となるように、もしくは、ホログラムレリーフ面上に均一に(部分形成の場合には形成してある部分同士が均一に)形成するためには、フォトクロミック分子が凝集して2次粒子状とならないようにする必要があり、溶剤(溶媒)へ溶解する方法や、ナノ粒子の表面に吸着させて、ナノ粒子顔料として薄膜形成することが好適である。
【0138】
さらに、このような非常に薄いフォトクロミック薄膜層3を物理的に保護するために、上記した透明な樹脂を適宜な形成方法を用いて、1.0μm〜3.0μmの厚さで設けてもよい。
【0139】
また、ホログラム形成層2、フォトクロミック薄膜層3、及び上記保護のための層の互いの屈折率差を、0.3以内、さらには、0.03以内とすることで、励起前における不要なホログラム再生像の出現を防ぎ、より偽造防止性を高めることが可能となる。
【0140】
この様にして作成したホログラムシートに、使用したフォトクロミック分子に適した励起光、例えば、紫外線(波長365nmや、波長245nm等。)を、10μW/cm2〜10mW/cm2の強度で、1.0秒〜100秒間照射するか、もしくは、可視領域内での色調変化をするものについては、所定波長に近いLED光や、半導体レーザー光を照射して、特定の色調に発色させ、もしくは、色調変化させ、その色調におけるホログラム再生像を視認して、その真正性を判定することができる。
【0141】
このとき、特定のフィルターや、再生光増幅装置等を用いて、その視認性を高めたり、機械的判定を行ってもよい。
【0142】
また、特定の色調のホログラム再生像の存在を、ホログラムシートを所持している者、すなわち、ホログラムシートを転写形成、又は、貼付した真正性識別対象物を所持している者に悟られないよう、真正性確認後、速やかに(数秒〜数十秒以内。)その色調が消えるか、又は、元の色調に戻るよう工夫することも好適である。
(全反射性薄膜層)
フォトクロミック薄膜層3の上に全反射性薄膜層4を形成し、本発明のホログラムシートAを形成する。(図2参照。)
この全反射性薄膜層4は、入射した可視光を十分に反射する必要があるため、可視光反射率が90%〜100%の金属薄膜を用いる。
【0143】
全反射性薄膜層4としては、真空薄膜法などにより形成される金属薄膜などの金属光沢反射層を設けるが、金属光沢反射層を部分的に設けた場合は、その金属光沢反射層の無い部分を通して、本発明のホログラムシートの向こう側を視認することができるようになる。
【0144】
具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、AL、Sn、In、Te、Ti、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、W、Auなどが例示でき、フォトクロミック薄膜層3との接着性に優れるものを用いる。
【0145】
また、可視光波長のほぼ全域にわたる高い反射、すなわち、「全反射」性を有する金属薄膜も、その厚さによって、すなわち、その厚さが100nm未満になると、透明性が出てくるため(すなわち、反射率が低下して、自然光下で観察されるホログラム再生像の明るさが低下するとともに、ホログラムシートの背景がホログラムシートを通して再生像と重なり、ホログラム再生像の鮮明度が低下するため。)、その厚さは、100nm〜2000nmとする。
【0146】
厚さが、2000nmを超えると、その薄膜形成工程におけるフォトクロミック薄膜層3への熱的ダメージが大きくなりフォトクロミック薄膜層3の有する「レリーフ形状」を歪める要因となる。
【0147】
反射性薄膜層4の形成方法としては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(化学蒸着法)などの真空薄膜法などを用いることができる。特にCVD法は、フォトクロミック薄膜層3への熱的ダメージが少ない。また、他の薄膜形成法を用いても、形成する薄膜層を薄くしておくと、その熱的ダメージを少なくすることができる。
【0148】
このホログラムシートAに、蛍光灯等の照明光5を照射すると、その全反射性薄膜層4による反射光によってホログラム再生像6(例えば、レインボーホログラム。)を視認することができる。
【0149】
さらに、このホログラムシートAにフォトクロミック薄膜層3のフォトクロミック分子を発色させる所定の波長の光、例えば、365nm波長の紫外線7を照射すると、「赤色」単色のホログラム再生像8が特定の方向に定常的に出現する。(図3参照。)
この紫外線7の照射方向を変化させても、「赤色」単色のホログラム再生像8の再生方向(上記の特定の方向。)は左右されず、高い偽造防止性があると認識できるものである。(図示せず。)
そして、ホログラム再生像8を、十分確認し、もしくは、十分鑑賞した後は、フォトクロミック薄膜層3の色調を消失させる波長の光を照射することにより、そのホログラム再生像8を消失させ、元の状態に戻すことも可能であり、ホログラム再生像8の存在を秘匿でき、高い偽造防止性を有する。(図示せず。)
【実施例】
【0150】
(実施例1)
透明基材1として、12μmのPETフィルムの表面に、メラミン樹脂組成物を塗布し、ホログラム画像位置検知パターン付きのレリーフホログラム(「発光」の文字画像:図3参照)の複製用型の型面を、接触させたまま加熱硬化させることにより、レリーフホログラムの形成を行ない、厚さ3μmのホログラム形成層2を得た。
【0151】
このホログラム形成層2上に、下記組成の樹脂分散型のフォトクロミック分子含有インキをグラビアコーティング方式により、コーティングし乾燥して、フォトクロミック薄膜層3を15μm厚さで、ホログラムレリーフに接するように形成し、乾燥して、3.0μm厚さとした。(図示せず。)
・<インキ組成物>
1,2−ビス[2−メチルベンゾ[b]チオフェン−3−イル]−
3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1−シクロペンテン
東京化成工業株式会社製結晶性材料B2629 1質量部
塩ビ樹脂 19質量部
メチルエチルケトン 30質量部
トルエン 50質量部
そのフォトクロミック薄膜層3上に、アルバック社製真空蒸着機にて、200nm厚さのアルミニウム薄膜からなる全反射性薄膜層4を形成し、本発明のホログラムシート(図示せず。)を作製した。
【0152】
このホログラムシートを、図3のように、蛍光灯照明光(図3における5に相当する。)下に置くと、ホログラム再生像(図3における6に相当する。)を視認できた。
【0153】
このホログラムシートを365nm波長の光源(浜松ホトニクス製UV-LEDモジュール LC―L2。図3における7に相当する。)を用いて照明したところ、図3のホログラムシートAと同様に、この紫外線は目視では見えず、赤色のホログラム再生像「発光」(図3における8に相当する。)がさらに特定の方向へ浮かび上がり、意外性及び意匠性に優れるものであった。(図3参照。)
このホログラムシートに適宜な粘着剤を塗付して、3cm角に切り出し、パスポートに貼付して、ブラックライト発光管40W照明(照明形状を小さくするため、3mmφ穴を持つカバー装着。)したところ、新たに浮かび上がる赤色のホログラム再生像を認識することができた。(図示せず。)
(実施例2)
フォトクロミック分子含有インキをホログラムレリーフ上に形成する方式を、スピンコート方式とし、均一な塗膜厚さを2μmとし、乾燥後のフォトクロミック薄膜層3を0.4μm厚さで形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の本発明のホログラムシートAを作製した。(図2参照。)
このとき、フォトクロミック薄膜層3は、ホログラム形成層2のホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成されていた。
【0154】
このホログラムシートAを、可視光線(照明光)5を用いて照明したところ、非常に鮮明なホログラム再生像6が出現し、さらに、このホログラムシートAを365nm波長の光源7(浜松ホトニクス製UV−LEDモジュール LC―L2)を用いて照明したところ、この紫外線は目視では見えず、より鮮明な赤色のホログラム再生像8「発光」を確認することができたこと以外は、実施例1と同様に良好な結果を得た。(図3参照。)
(実施例3)
フォトクロミック分子として、下記組成の樹脂分散型のフォトクロミック分子含有インキを用い、乾燥後のフォトクロミック薄膜層3を0.1μm厚さで形成したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例3の本発明のホログラムシートAを作製した。(図2参照。)
・<インキ組成物>
2,3−ジヒドロ−2−スピロ−4‘−
[8’−アミノナフタレン−1‘(4’H)−
オン]ペリミジン東京化成工業株式会社製D3618 0.5質量部
塩ビ樹脂 4.5質量部
メチルエチルケトン 25質量部
トルエン 50質量部
励起光として、オムロン社製UV−LEDを用いたこと以外は、実施例2と同様にして観察したところ、黄色から青色へ色調が変化し、実施例2より、鮮明で且つ発光強度の強い青色のホログラム再生像8を確認することができたこと以外は、実施例2と同様に良好な結果を得た。
【0155】
(図3において、励起光7照射前の状態において、ホログラム再生像6とは別に、「黄色」のホログラム再生像も再生されている状態である〈図示せず。〉。励起光7の照射後は、図3の「発光」8が、「赤色」でなく「青色」となり、且つ、その再生方向を変えて視認される。)
(実施例4)
透明基材1として、12μmの高平滑性PETフィルム(表面粗さRa:10nm)を用い、下記組成の均一な厚さの透明な層用組成物を用いて、スピンコーティング方式により、均一な厚さの透明な層を、乾燥後の厚さ2.0μmで形成し、
・<均一な厚さの透明な層用組成物>
メラミン樹脂 10質量部
トルエン 10質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
メチルエチルケトン 30質量部
酢酸エチル 40質量部
その上に、下記組成の均一な厚さのフォトクロミック薄膜層用組成物を用いて、同様に、スピンコーティング方式により、均一な厚さのフォトクロミック薄膜層3を、乾燥後の厚さ0.1μmで形成し、
・<均一な厚さのフォトクロミック薄膜層用組成物>
2,3−ジヒドロ−2−スピロ−4‘−
[8’−アミノナフタレン−1‘(4’H)−
オン]ペリミジン東京化成工業株式会社製D3618 0.5質量部
塩ビ樹脂 4.5質量部
メチルエチルケトン 45質量部
トルエン 50質量部
その透明基材1、「均一な厚さの透明な層」及び、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」の3層構成のシートを形成した。(図示せず。)
その3層構成のシートの「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」最表面に、実施例1で用いたレリーフホログラム(「発光」の文字画像:図3参照)の複製用型の型面を接触させ、熱ロールプレス方式により、80℃、1トン/m、2m/分の条件にて、レリーフホログラムの形成を行ない、「均一な厚さの透明な層」と「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」との界面の形状、及び、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」の最表面の形状を、いずれも「ホログラムレリーフ」の「レリーフ形状」とした(実質的に同一の形状という意味。)こと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のホログラムシートAを得た。このレリーフホログラムの形成により、「均一な厚さの透明な層」がホログラム形成層2に、「均一な厚さのフォトクロミック薄膜層」がフォトクロミック薄膜層3となっている。(図2参照。)
このホログラムシートAを、実施例1と同様に評価したところ、著しく鮮明なホログラム再生像6が出現し、さらに、著しく鮮明な赤色のホログラム再生像8「発光」を確認することができたこと以外は、実施例1と同様に良好な結果を得た。(図3参照。)
(比較例)
フォトクロミック薄膜層を形成せず、ホログラムシートを形成し、比較例とした。
【0156】
実施例1と同様に観察したところ、蛍光灯の下で目視にて認識できるホログラム再生像を確認することができたが、紫外線を照射しても、新たなホログラム再生像は現れなかった。
【0157】
このことにより、このホログラムシートが真正なものでなく、このパスポートが偽物であると判断できた。
【符号の説明】
【0158】
A ホログラムシート
1 透明基材
2 ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフ を有する透明樹脂層(ホログラム形成層)
3 フォトクロミック薄膜層(連続的な形成若しくは部分形成)
4 全反射性薄膜層
5 観察状態の例示:可視光線(照明光)
6 同上 :全反射性薄膜層による再生像
7 同上 :紫外線(照明光)
8 同上 :赤色の再生像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に、ホログラム画像に対応した回折格子群を含むホログラムレリーフを有する透明樹脂層、前記ホログラムレリーフに接するように設けられたフォトクロミック薄膜層、及び全反射性薄膜層が、この順序で設けられていることを特徴とするホログラムシート。
【請求項2】
前記フォトクロミック薄膜層が、前記ホログラムレリーフを形成する凹凸に追従して均一な厚さで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のホログラムシート。
【請求項3】
前記フォトクロミック薄膜層の厚さが、0.01μm以上0.1μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のホログラムシート。
【請求項4】
前記透明樹脂層のホログラムレリーフが、
前記透明基材上に、均一な厚さの透明な層を形成し、前記透明な層上に、均一な厚さのフォトクロミック薄膜層を形成した後に、前記透明な層と前記フォトクロミック薄膜層とを同時に変形させることにより設けられたものであることを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載のホログラムシート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−76800(P2013−76800A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215878(P2011−215878)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】