説明

ホーム転落通知システム

【課題】固定柵の開口部での旅客の転落または転落可能性に対して駅員が転落者の迅速な救助に貢献でき、救助状況の把握を各駅員は容易かつ正確に行うことができ、固定柵のより高い安全性を保証できるホーム転落通知システムを提供する。
【解決手段】ホーム転落通知システムは、固定柵12の開口部14での旅客の転落等を検知し、転落等の検知情報を得たとき異常警報を発する検知系(センサ16、制御装置17)と、運行情報または警告情報を表示する表示部15と、異常警報を受けたときに携帯情報端末35等に同報通信で異常内容の通知を行う通信手段と、駅員から返信情報を受けたとき、当該返信情報を表示部に表示すると共に携帯情報端末に同報通信で通知する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホーム転落通知システムに関し、特に、駅ホームから線路に転落した旅客または転落しそうな旅客を迅速に検知して付近にいる駅員および駅務室に緊急に同報配信して救助に貢献させる共に、駅ホームにいる他の旅客に知らせるのに好適なホーム転落通知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、駅ホームの旅客の安全性を保証するためにホーム柵が設置されるようになってきている。ホーム柵としては、開閉ドアを備えて複雑な構造を有する可動柵(ホームドア装置)と、簡易な構造を有する固定柵が存在する。可動柵は、開閉ドア、可動機構、および制御系等を内蔵し、さらに重量物をホーム床面に設置するため、工事費も高くなり、全体として設置コストが高くなる。他方、固定柵は、駅ホームに停車した電車の乗降口に対応する箇所に開口部を有するだけの簡易で軽量な柵であるから、安価に設置することができる。固定柵では旅客安全性を高めることができるが、開口部の場所ではさらに高い安全性を保証することが求められている。
【0003】
従来の駅ホーム上の安全を支援する装置として様々な装置が提案されている。例えば可動柵としてのホームドア装置(特許文献1)や転落監視装置等が提案されている。ホームドア装置は特許文献1に記載されている。転落監視装置としては例えば特許文献2に記載されている装置が知られている。特許文献1のホームドア装置については前述した通りの問題を有している。また特許文献2に記載された転落監視装置によれば、記録だけであり、線路転落者の迅速な救助に貢献することができない。さらに、転落しそうになった旅客に対して音声による注意を促す装置は従来存在するが、音声に気がつかない人を救うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−204003号公報
【特許文献2】特開2004−58737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の通り、簡易な構造を有しかつ安価に設置できる固定柵では、開口部の場所での更なる安全性が求められている。すなわち、固定柵の開口部において駅ホームから線路へ旅客が転落した場合または転落しそうな場合には、当該転落に対して駅員や他の旅客が迅速に対応できることがシステム的に求められている。特に、駅ホームまたは駅務室にいる駅員による転落者救助の体制に係るシステムの構築が非常に重要になっている。
従来の技術によれば、固定柵を備えた駅ホームにおいて当該固定柵の開口部での旅客の転落または転落可能性に対して転落者の迅速な救助に貢献するシステムまたは装置は存在していない。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、固定柵を備えた駅ホームにおいて当該固定柵の開口部での旅客の転落または転落可能性に対して駅員が転落者の迅速な救助に貢献することができ、救助状況の把握を各駅員は容易かつ正確に行うことができ、固定柵のより高い安全性を保証し、転落状況に係る詳細な情報を得ることができ、さらに駅ホームにいる他の旅客等に対して転落事故の発生位置を正確に知らせることができるようにしたホーム転落通知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るホーム転落通知システムは、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0008】
第1のホーム転落通知システム(請求項1に対応)は、
鉄道のプラットホームの線路側縁部に設置された、開口部を備える少なくとも1台の固定柵での旅客の転落または危険区域の立入を通知するホーム転落通知システムであり、
開口部に対応するホーム縁部付近での旅客の転落または危険区域の立入を検知し、転落または立入の検知情報を得たとき異常警報を発する検知系と、
通常時は運行情報を表示すると共に、検知系から異常警報を受けたときには警告情報に切り替えて表示する表示部と、
検知系から異常警報を受けたときに少なくとも1台の駅員用情報端末機器に同報通信で異常内容の通知を行う通信手段と、
通信手段がいずれかの駅員用情報端末機器から異常への応対に係る返信情報を受けたとき、当該応対に係る返信情報を表示部に表示すると共に駅員用情報端末機器に同報通信で通知する制御手段と、
を備えることによって構成される。
【0009】
上記のホーム転落通知システムでは、駅ホームに設置された固定柵の開口部にセンサを設け、当該センサの検知した信号またはデータに基づき旅客の転落や転落可能性を検知するようにし、その検知情報を表示部に表示すると共に、駅構内の複数の駅員に同報通信で通知し、さらに駅員から返信があったとき返信情報をさらに同報通信で各駅員等に通知するようにしたため、旅客の転落または転落可能性に対して駅員が転落者の迅速な救助に貢献することが可能であり、救助状況の把握を各駅員は容易かつ正確に行うことが可能となり、固定柵のより高い安全性を保証することが可能である。
【0010】
第2のホーム転落通知システム(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、駅員用情報端末機器は携帯情報端末または固定情報端末であることを特徴とする。
【0011】
第3のホーム転落通知システム(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、検知系は転落または立入の事態発生を検知する検知手段で構成されることを特徴とする。
【0012】
第4のホーム転落通知システム(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、検知系は、転落または立入の事態発生を検知する検知手段と、この検知手段が出力した検知信号に基づいて転落または立入の発生状況を撮像する撮像手段とから構成され、撮像手段は撮像情報と撮影位置情報を含む異常警報を出力し、
当該異常警報に係るデータは通信回線を介して表示部と通信手段に送信されることを特徴とする。
【0013】
第5のホーム転落通知システム(請求項5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、表示部は、固定柵の開口部の周囲の位置にて表示面がホーム側に向かうように配置されることを特徴とする。
【0014】
第6のホーム転落通知システム(請求項6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、固定柵における開口部の両側の柵壁部はホーム側に膨出し、この膨出した柵壁部のホーム側湾曲面に沿って表示部を配置したことを特徴とする。
【0015】
第7のホーム転落通知システム(請求項7に対応)は、上記の構成において、好ましくは、固定柵は複数設置されており、複数の固定柵の各表示部で表示された警告情報の表示内容は、異常警報を発した検知系を備えた固定柵との位置関係に応じて個別に決定されることを特徴とする。
【0016】
第8のホーム転落通知システム(請求項8に対応)は、上記の構成において、好ましくは、固定柵には、非常時に固定柵に付設された各種電子機器を非常時に合わせた案内表示の動作状態に保持するバッテリが付設されていることを特徴とする。
【0017】
第9のホーム転落通知システム(請求項9に対応)は、上記の構成において、好ましくは、固定柵における開口部の床面に、検知系から異常警報を受けたときに発光するライン状LEDを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るホーム転落通知システムによれば、駅ホームに設置された少なくとも1台の固定柵の開口部に測距センサ等のセンサを設け、当該センサの検知した信号またはデータに基づき旅客の転落や転落可能性を検知するようにし、その検知情報を各固定柵の表示部に表示すると共に、駅構内の複数の駅員に同報通信で通知し、さらにいずれかの駅員から返信があったときその返信情報(アンサーバック内容)をさらに同報通信で各駅員等に通知するようにしたため、旅客の転落または転落可能性に対して駅員が転落者の迅速な救助に貢献することができ、救助状況の把握を各駅員は容易かつ正確に行うことができ、固定柵のより高い安全性を保証することができる。
さらにカメラを併設した構成によれば、より正確かつ詳しい現場状況を各駅員等に提供することができ、救助の迅速性に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るホーム転落通知システムの要部を示す正面図である。
【図2】本実施形態に係るホーム転落通知システムのシステム構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係るホーム転落通知システムでの処理に流れ(機器の動作フロー(A)と駅員の動作フロー(B))の例を示すフローチャートである。
【図4】駅員応答後の対応例を説明する図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るホーム転落通知システムの要部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るホーム転落通知システムの1つの固定柵を示している。図1において、11は駅のプラットホーム(以下「駅ホーム」と記す)、12は駅ホーム11に設置された1つの固定柵、13は固定柵12の柵部、14は固定柵12の開口部(乗降口)、15は固定柵12における柵部13の上側に配置された表示部、16は開口部14の上側に配置されたセンサ、17は制御装置、18はバッテリ(蓄電池)である。
【0022】
駅ホーム11は、本来的には停車する電車(列車)の長さに応じた長さを有するものであるが、図1ではその一部を示している。図1中、駅ホーム11の向こう側が電車が入線しかつ停車する場所になっており、線路軌道が設けられている。固定柵12の2箇所の柵部13は、簡易の構造を有し、一例として、縦方向に立てて設けられた複数本のフレームとこれを連結する横方向の1本のフレームとから構成されている。固定柵12の中央箇所には開口部14が設けられ、開口部14の両側に柵部13が形成される。開口部14の位置は、駅ホーム11に電車が停車したときにその車両ドアの位置に対応して設定されている。開口部14の上方に水平フレーム19に設置されたセンサ16は、開口部14として設定された駅ホームの床面領域を検知・監視できるように、その検知範囲20が設定されている。センサ16は、駅ホーム11の端から線路側に転落した旅客、または転落しそうな旅客を監視し検知するための検知手段である。転落しそうな旅客の検知は、旅客が立入禁止の危険区域に立ち入ることを検知することにより行われる。センサ16としては、例えば、測距センサ、光、レーザ光、超音波、赤外線等を利用した物体検知センサ、画像を取得して画像処理を行う撮像センサ装置等の検知系が用いられる。表示部15は、例えば、2つの柵部14の各々の上方に2本の支柱21により固定されて配置される。表示部15は例えばドット発光画素で構成される液晶等の表示画面であり、駅ホーム11に入線する電車に関する運行情報(通常時)または警告・通報情報(転落時等の異常時)が表示される。
【0023】
制御装置17は通常的には固定柵12の筐体部分に収容されて設置される。制御装置17はマイコンで構成され、固定柵12に付設されたセンサ16の検知する監視画像に係る信号やデータを受信して処理し、外部から提供される電車の運行情報を取得し、表示部15の各種の電気機器の動作等を制御し、さらに通信回線を通して通報を行う機能を有している。制御装置17は、センサ16から送られる検知範囲20についての検知情報に基づいて旅客の転落または転落可能性の情報を取得する。
【0024】
さらに、固定柵12に対しては、開口部14の駅ホーム床面にはライン状LED(ライン状発光部)22を設置することもでき、または回転灯23を設置することもできる。
【0025】
上記の構成を有する固定柵12は電車の車両ドアごとに設けられるので、駅ホーム11の縁に沿って複数の固定柵12が設置されている。
【0026】
表示部15、センサ16、制御装置17、ライン状LED22、回転灯23には、通常的に、図示しない商用の電力供給系を通して給電され、能動状態に保持される。さらに、固定柵12には非常用の上記バッテリ18が付設されている。バッテリ18も固定柵12の筐体部分に収容されて設置される。このバッテリ18によれば、停電や地震等の災害が発生した場合に、表示部15、センサ16、制御装置17等への給電を維持が可能となる。これによって停電や災害時等にも避難誘導を行うことができる。
【0027】
次に図2を参照して、本実施形態に係るホーム転落通知システムのシステム構成を説明する。
【0028】
上記の通り固定柵12には制御装置17が付設されている。図2では、制御装置17を中心にして、入力側には上記のセンサ16、電車位置検知装置31、運行情報サーバ32が設けられ、出力側には2台の表示部15、ライン状LED22、回転灯23が設けられて、さらに制御装置17は通信装置33を介して通信回線34に接続されている。制御装置17にはバッテリ18に接続され、非常時にはバッテリ18により給電が行われる。
【0029】
制御装置17には、センサ16での検知動作で取得された検知範囲に係る情報(信号またはデータ)が入力される。センサ16から提供される検知範囲20に係る情報は、旅客の転落または危険区域への立入に関する情報である。また制御装置17には、電車位置検知装置31から電車位置情報が提供され、運行情報サーバ32から電車の運行情報が提供されている。前述の通り、表示部15には通常時に駅ホーム11に入線する電車に関する運行情報が表示されるので、当該運行情報の表示のために電車位置検知装置31からの電車位置情報および運行情報サーバ32からの電車運行情報が用いられる。制御装置17は、通常時には、取得した電車位置情報と電車運行情報に基づいて表示部15に運行情報(電車入線情報も含む)を表示する。また制御装置17は、センサ16から入力された検知範囲に係る情報に基づいて旅客の転落等の情報を取得したとき、表示部15の表示内容を通常時から異常時に変更し、旅客の転落等に係る警告・通報情報を表示する。なお、電車事故、電車故障、人身事故、地震、火事、災害等が発生した場合にも、例えば運行情報サーバ等からこれらの情報の提供を受け、表示部15に表示することも可能となっている。
【0030】
表示部15に旅客の転落等に係る警告・通報の異常情報が表示されると、その付近にいる旅客や駅員に異常発生状況を知らせる。
【0031】
制御装置17は、センサ16から旅客の転落等に係る情報等(異常情報)を入手すると、さらに通信装置33および通信回路34(構内LANまたはインターネット)を経由して少なくとも1台の駅員用情報端末機器に対して通報を行い、異常内容の通知を行う。図2の図示例において、駅員用情報端末機器は、複数の携帯情報端末35(図2中「携帯端末」と記す)と複数の固定情報端末36(図2中「駅端末」と記す)である。携帯情報端末35を通して駅ホーム等にいる各駅員に対して異常発生状況を通報し、固定情報端末36を通して駅務室にいる各駅員に対して異常発生状況を通報する。このようにして駅構内にいる複数の駅員に対して異常を通知するための同報通信が行われる。
【0032】
次に、図3に示したフローチャートを参照して、ホーム転落通知システムにおける機器の動作フロー(A)と駅員の動作フロー(B)を説明する。
【0033】
最初の判断ステップS11では、停電か否かが判断される。判断ステップS11で災害等が原因になって停電であると判断された場合には、バッテリ18での起動が行われ、表示部15では災害等の状況に応じて案内表示を行い(ステップS12)、処理を終了する。判断ステップS11で停電ではないと判断された場合には、通常電源のモードでの起動が行われる(ステップS13)。
【0034】
上記において、ステップS12が実行されたとき、駅員の動作フロー(B)において、駅員は表示部15での表示内容と災害等の内容が一致しているか否かを確認する(ステップS101)。
【0035】
ステップS13の後、ホーム転落通知システムを構成する各機器の起動の初期化が行われる(ステップS14)。その後、各機器に異常がないか否かが判断され、セルフチェックが行われる(判断ステップS15)。判断ステップS15で、異常がある場合にはステップS16に移行し、異常がない場合には判断ステップS17に移行する。
【0036】
ステップS16では複数の駅員に対して同報通信が行われる。この同報通信が行われた後、判断ステップS18でいずれかの駅員から返事があったか否かが判断される。判断ステップS16で駅員の返事がない場合にはステップS16に戻り、駅員の返事がある場合には、ステップS19,S20を経由して最初の判断ステップS11に戻る。ステップS19では接続されている他の機器の適正化の処理が行われ、ステップS20では駅員からの応答内容を機器に反映する処理が行われる。ステップS19の「接続されている他の機器の適正化の処理」、およびステップS20の「駅員からの応答内容を機器に反映する処理」の各々の具体的な内容については後で詳述する。またステップS16で複数の駅員のすべてに同報通信が行われたとき、駅員の側では、通信内容に応じて、発生した異常事態が直ぐに正常化できるか否かが判断される(判断ステップS102)。判断ステップS102においてできない場合には、修理の手配を行って機器を止め、駅務室へ報告する(ステップS103)。判断ステップS102においてできる場合には、正常化して機器の再起動を行う(ステップS104)。
【0037】
次に上記の判断ステップS17では、電車(列車)が駅ホーム11に停車しているか否かが判断される。判断ステップS17で電車が停車している場合(「いる」)には判断ステップS21に移行し、電車が停車していない場合(「いない」)には判断ステップS22に移行する。
【0038】
判断ステップS21では車両ドアの開閉状態が判断される。判断ステップS21で「開」である場合にはステップS23に移行し、「閉」である場合には判断ステップS24に移行する。ステップS23では、車両ドアは開いているので、特に何も行わず、その後最初の判断ステップS11に戻る。その際、ステップS19,S20を経由するが、駅員からの返事はないので特に動作を行うことなくそのまま通過する。
【0039】
判断ステップS24では、駅ホーム11に電車が停車しかつ車両ドアが閉じていという前提で、センサ16による検知範囲20に関する検知情報に基づき当該検知範囲20に電車がいるか否かということが再び判断される。判断ステップS24で「いる」場合には判断ステップS25に移行し、「いない」場合には判断ステップS26に移行する。
【0040】
判断ステップS26では、さらにセンサ16の検知情報に基づいて開口部14の駅ホーム11の縁部の付近において線路に旅客が転落しているか否かまたは危険区域に立ち入っているか否かが判断される。判断ステップS26で何も起きていないと判断された場合にはステップS19,20を経由して最初の判断ステップ11に戻る。判断ステップS26で旅客の転落等が起きていると判断された場合には、現場の撮影情報に基づき属性情報を得て、転落等の事故発生に関する警報を表示部15に表示すると共に各駅員に対して同報通信を行う(ステップS27)。その後の判断ステップS28では駅員から返事があったか否かが判断される。判断ステップS28でNOである場合にはステップS27に戻り、YESである場合にはステップS19,20を経由して最初の判断ステップS11に戻る。
【0041】
判断ステップS25では、開口部14に旅客(人)が電車に接近しているか否かが判断される。判断ステップS25で「接近していない」と判断された場合にはステップS19,S20を経由して最初の判断ステップS11に戻る。判断ステップS25で「接近している」と判断された場合には、現場の撮影情報に基づき属性情報を得て、転落等の事故発生に関する警報を表示部15に表示すると共に各駅員に対して同報通信を行う(ステップS29)。その後の判断ステップS30では駅員から返事があったか否かが判断される。判断ステップS30でNOである場合にはステップS29に戻り、YESである場合にはステップS19,20を経由して最初の判断ステップS11に戻る。
【0042】
次に上記の判断ステップS22以降を説明する。判断ステップS22では、電車の接近情報があるか否かが判断される。判断ステップS22で「ある」と判断された場合には判断ステップS31に移行し、「ない」と判断された場合には判断ステップS32に移行する。
【0043】
判断ステップS32では、センサ16の検知情報に基づいて開口部14の駅ホーム11の縁部の付近において線路に旅客が転落しているか否かまたは危険区域に立ち入っているか否かが判断される。判断ステップS32で何も起きていないと判断された場合にはステップS19,20を経由して最初の判断ステップ11に戻る。判断ステップS32で旅客の転落等が起きていると判断された場合には、現場の撮影情報に基づき属性情報を得て、転落等の事故発生に関する警報を表示部15に表示すると共に各駅員に対して同報通信を行う(ステップS33)。その後の判断ステップS34では駅員から返事があったか否かが判断される。判断ステップS34でNOである場合にはステップS33に戻り、YESである場合にはステップS19,20を経由して最初の判断ステップS11に戻る。
【0044】
判断ステップS31では、開口部14に旅客(人)が電車に接近しているか否かが判断される。判断ステップS31で「接近していない」と判断された場合にはステップS19,S20を経由して最初の判断ステップS11に戻る。判断ステップS31で「接近している」と判断された場合には、現場の撮影情報に基づき属性情報を得て、転落等の事故発生に関する警報を表示部15に表示すると共に各駅員に対して同報通信を行う(ステップS35)。その後の判断ステップS36では駅員から返事があったか否かが判断される。判断ステップS36でNOである場合にはステップS35に戻り、YESである場合にはステップS19,20を経由して最初の判断ステップS11に戻る。
【0045】
ステップS27,S29,S33,S35の各々において転落等の事故発生に関する警報を表示部15に表示すると共に各駅員に対して同報通信を行った場合に、駅員側では、状況に応じて対応し、フィードバックをかける処理が行われる(ステップS105)。対応の仕方としては、例えば、駅員が実際に転落が起きていることを確認したときには非常停止を実行して対応する。また転落が起きていないと確認したときには他の旅客に注意を促すという対応を行い、表示部15での警報表示を変更する。
【0046】
次に、図4を参照して、ステップS19の「接続されている他の機器の適正化の処理」およびステップS20の「駅員からの応答内容を機器に反映する処理」の具体的な内容について説明する。図4の(A)は「駅員からの応答内容を機器に反映する処理」の具体例(駅員同士の連係性等)を示し、図4の(B)は「接続されている他の機器の適正化の処理」の具体例(他の機器との連係性)を示している。
【0047】
図4(A)の(1)では、携帯情報端末(携帯端末)35および固定情報端末(駅端末)36の各々の表示部41に誰(係員)が現場に向かったかという内容42を表示する。また表示部41の中に非常ボタン43を表示する。
図4(A)の(2)では、旅客の転落等の異常事態が生じた場所の位置情報44を取得し、当該場所に近い固定柵12の表示部15に表示する。
図4(A)の(3)では、異常事態に対する駅員の対応状況の情報45を、電車内の端末画面46に表示し、電車の運転士に状況を自動的に知らせる。
【0048】
図4(B)では、例えば3つの固定柵12A,12B,12Cが簡略して図示されている。各固定柵12A〜12Cには表示部15が備えられているものとする。
図4(B)の(1)では、例えば6号車で故障(または転落事故等)が発生した場合に、例えば6号車の故障場所以外の場所に対応する固定柵12A〜12Cにおいて、それらの表示部15に「6号車付近の○○が故障しています。6号車以外の他の車両ドアをご利用ください」というメッセージ表示47を行う。
図4(B)の(2)では、固定柵12Bで機器の故障が生じている場合に、その他の固定柵12A,12Cにおいて、固定柵12Aの表示部15では「←←近くの乗り場に迂回してください」というメッセージ表示48が行われ、固定柵12Cの表示部15では「近くの乗り場に迂回してください→→」というメッセージ表示49が行われる。
【0049】
上記の実施形態に係るホーム転落通知システムによれば、少なくとも1台の、好ましくは複数台の固定柵12を備えた駅ホーム11において、各固定柵12の開口部14での旅客の転落または転落可能性(危険区域への立入)に対して測距センサ等のセンサ16で高い精度で検知できるように構成し、かつこの異常事態を各固定柵12の表示部12に連係させて表示すると共に複数の駅員に同報通信を行い、さらにいずれかの駅員が異常事態に対する対処で返信した場合に当該アンサーバックを再び表示部15に表示かつ他の駅員等に同報通信するように構成したため、駅員が転落者の迅速な救助に貢献することができ、救助状況の把握を各駅員は容易かつ正確に行うことができ、固定柵12についてのより高い安全性を保証し、転落状況に係る詳細な情報を得ることができ、さらに駅ホームにいる他の旅客等に対して転落事故の発生位置を正確に知らせることができる。
【0050】
図5に、他の実施形態に係るホーム転落通知システムを示す。この実施形態の構成は図1で説明したホーム転落通知システムにおいて、測距センサ等のセンサ16の他に、さらにカメラ51を追加した構成になっている。この場合には、センサ16は撮像センサ装置以外のセンサである。
このため、図2に示したシステム構成において、制御装置17の入力側にはカメラ51が付加される。本実施形態によるホーム転落通知システムでは、センサ16で出力した検知信号に基づいて旅客の転落等が制御装置17によって検知された場合に、制御装置17はセンサ16の当該検知信号をトリガーにしてカメラ51に撮像動作を行わせ、カメラ51によって転落した旅客についての詳細な画像情報を取得する。制御装置17は、さらに当該画像情報にカメラ51に関する位置情報を付加して、通信装置33および通信回路34を通して、表示部15、携帯情報端末35および固定情報端末36に同報通信で当該画像情報を通知する。
この実施形態に係るホーム転落通知システムの構成によれば、転落した旅客の顔表情等のより詳しい画像情報を各駅員等に知らせることができる。
【0051】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
例えば、固定柵12の壁部を形成する柵部13の形状は図1に示したものに限定されない。例えば、比較的な軽量なプレート状部材で形成することもでき、その場合にホーム側に膨出する湾曲形状に形成することもできる。
また固定柵12の表示部15の設置位置は図1に示された位置に限定されず、固定柵12の任意の箇所に設けることができる。また上記のごとくプレート状部材で柵部13を形成する場合に、当該プレート状部材の表面を表示画面として表示部を設けることもできる。またプレート状部材を湾曲させた場合に、ホーム側湾曲面に表示部を設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係るホーム転落通知システムは、駅ホームに設置される軽量でかつ簡易な構造を有する固定柵で旅客の転落や転落のおそれが発生した場合に、固定柵の表示部に迅速に表示し、さらに複数の駅員に対してより正確な異常時の情報を迅速に同報通信で送り、駅員の迅速な対応を促し、応答状況も迅速に同報通信されるシステムに利用される。
【符号の説明】
【0053】
11 駅ホーム
12 固定柵
13 柵部
14 開口部(乗降口)
15 センサ
17 制御装置
18 バッテリ(蓄電池)
20 検知範囲
22 ライン状LED
31 電車位置検知装置
32 運転情報サーバ
33 通信装置
34 通信回線
35 携帯情報端末(携帯端末)
36 固定情報端末(駅端末)
51 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道のプラットホームの線路側縁部に設置された、開口部を備える少なくとも1台の固定柵での旅客の転落または危険区域の立入を通知するホーム転落通知システムであり、
前記開口部に対応するホーム縁部付近での前記の旅客の転落または危険区域の立入を検知し、前記転落または前記立入の検知情報を得たとき異常警報を発する検知系と、
通常時は運行情報を表示すると共に、前記検知系から前記異常警報を受けたときには警告情報に切り替えて表示する表示部と、
前記検知系から前記異常警報を受けたときに少なくとも1台の駅員用情報端末機器に同報通信で異常内容の通知を行う通信手段と、
前記通信手段がいずれかの前記駅員用情報端末機器から異常への応対に係る返信情報を受けたとき、当該応対に係る返信情報を前記表示部に表示すると共に前記駅員用情報端末機器に同報通信で通知する制御手段と、
を備えることを特徴とするホーム転落通知システム。
【請求項2】
前記駅員用情報端末機器は携帯情報端末または固定情報端末であることを特徴とする請求項1記載のホーム転落通知システム。
【請求項3】
前記検知系は前記転落または前記立入の事態発生を検知する検知手段で構成されることを特徴とする請求項1記載のホーム転落通知システム。
【請求項4】
前記検知系は、前記転落または前記立入の事態発生を検知する検知手段と、この検知手段が出力した検知信号に基づいて前記転落または前記立入の発生状況を撮像する撮像手段とから構成され、前記撮像手段は撮像情報と撮影位置情報を含む前記異常警報を出力し、
当該異常警報に係るデータは通信回線を介して前記表示部と前記通信手段に送信されることを特徴とする請求項1記載のホーム転落通知システム。
【請求項5】
前記表示部は、前記固定柵の前記開口部の周囲の位置にて表示面がホーム側に向かうように配置されることを特徴とする請求項1記載のホーム転落通知システム。
【請求項6】
前記固定柵における前記開口部の両側の柵壁部はホーム側に膨出し、この膨出した柵壁部のホーム側湾曲面に沿って前記表示部を配置したことを特徴とする請求項5記載のホーム転落通知システム。
【請求項7】
前記固定柵は複数設置されており、前記複数の固定柵の各表示部で表示された前記警告情報の表示内容は、前記異常警報を発した前記検知系を備えた固定柵との位置関係に応じて個別に決定されることを特徴とする請求項1記載のホーム転落通知システム。
【請求項8】
前記固定柵には、非常時に前記固定柵に付設された各種電子機器を非常時に合わせた案内表示の動作状態に保持するバッテリが付設されていることを特徴とする請求項1記載のホーム転落通知システム。
【請求項9】
前記固定柵における前記開口部の床面に、前記検知系から前記異常警報を受けたときに発光するライン状LEDを設けたことを特徴とする請求項1記載のホーム転落通知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−100009(P2013−100009A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244640(P2011−244640)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】