説明

ボイラ水処理剤及び水処理方法

【課題】調製時に必ずしも高温での加熱処理を行わなくとも、保管又は流通中の優れた安定性が発現し、且つボイラ水系における腐食防止作用に優れるボイラ水処理剤を提供すること。
【解決手段】ボイラ水処理剤は、(a)エリソルビン酸、アスコルビン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の脱酸素剤、(b)塩基性カリウム化合物、及び(c)酸性基を有するポリマーを含み、(a)成分の含有量が5質量%以上であり、水の含有量が60質量%以上のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ水系内のスケールを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ缶内、蒸気発生機等の蒸気を発生する装置やプラントでは、供給水に含まれる酸素や二酸化炭素、及び供給水中の炭酸塩や炭酸水素塩等が熱分解して発生する二酸化炭素が蒸気系に移行するため、蒸気及び蒸気が凝縮した復水と接触する蒸気復水系がしばしば腐食する。また、近年、缶内の処理において脱酸素処理を行わないケースが増加しており、そのような場合に、供給水中の溶存酸素がそのまま蒸気復水系に移行するため蒸気復水系が腐食する問題がある。
【0003】
このようなボイラ等における腐食の問題を抑制するために、脱酸素剤としてヒドラジンや亜硫酸塩を含む水処理剤が使用されていた。しかしヒドラジンは、変異原性を有し人体への安全性の問題があり、亜硫酸塩には酸化された後に生成する硫酸イオンが腐食性を有する問題があるため、これらの成分に代わる脱酸素剤を用いたボイラ用の水処理剤が検討されてきた。
【0004】
かかるボイラ用の水処理剤としては、アスコルビン酸、エリソルビン酸又はそれらの塩と、グリシン等のアミノ酸と、苛性アルカリとを水に溶解させた後、80℃以上で加熱処理することにより得られた水処理剤(特許文献1)や、オイゲノール又はイソオイゲノールと、中和性アミンとエリソルビン酸又はその塩を含むボイラ水処理剤(特許文献2)等が提案されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−118881号公報
【特許文献2】特開2001−131778
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されるボイラ水処理剤は、保管時の安定性や腐食防止効果こそ優れるものの、その調製時に約120℃と非常に高い温度で加熱処理しなければならず、水の沸点を越えるような高温での処理は、危険であるととともに高価な耐圧容器が必要となる点で問題がある。
【0007】
さらに、特許文献1に記載されるボイラ水処理剤は、ボイラ缶内等のスケールを生じやすい加熱される部位におけるスケール抑制効果が十分でなく、スケールの発生による二次的な腐食を十分に抑制できない場合がある点でも問題がある。
【0008】
また、特許文献2の実施例に開示されるように、エリソルビン酸塩に対して苛性アルカリとして水酸化ナトリウムを用いて調製したボイラ水処理剤では、室温で保管した場合に非常に結晶が析出しやすく、商品としての流通、使用上の問題がある。
【0009】
ここで、ボイラ用の水処理剤における析出物の発生を予防する方法としては、水処理剤のエリソルビン酸やアスコルビン酸と苛性アルカリの含有量を結晶が析出しない程度の低濃度にすることが考えられる。しかし、低濃度の水処理剤を用いる場合には、ボイラに付随する薬液タンクを従来のものより大容量のものに変更するか、従来の薬液タンクを使用する場合でも薬液タンクへ頻繁に薬液を補充する必要が生じ、また、ボイラへの処理剤の注入量が増加するため吐出量の大きなポンプを設置する必要が生じるため実用的でない。また、薬液タンク内での経時安定性が悪く、薬液の効果が経時的に大きく低下する。
【0010】
別の方法としては、エリソルビン酸やアスコルビン酸を含有する水処理剤と、苛性アルカリの水溶液からなる水処理剤の2液の処理剤とすることも考えられるが、薬液タンク、及び、ポンプ、配管等のボイラへの薬液注入設備が2系列必要になり、設備費用が高額になることや、2種類の薬液を用いることにより、ボイラ運転に係る管理、保守作業が煩雑になる点で実用的でない。
【0011】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、ボイラ水処理剤の調製時に高温での加熱処理を必ずしも行う必要がなく、ボイラ水系における優れた腐食抑制作用を有し、且つ、エリソルビン酸、アスコルビン酸等の脱酸素剤と塩基性カリウム化合物とが共存する場合にも、保管又は流通中の安定性に優れるボイラ水処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、エリソルビン酸、アスコルビン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の脱酸素剤と、苛性アルカリを含有するボイラ用水処理剤において、苛性アルカリとして塩基性カリウム化合物を用い、さらに酸性基を有するポリマーを含有させることにより、調製時に必ずしも高温での加熱処理を行わなくとも、ボイラ水系において優れた腐食抑制作用を有し、保管又は流通中の安定性に優れるボイラ水処理剤を調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0013】
(1) (a)エリソルビン酸、アスコルビン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の脱酸素剤、(b)塩基性カリウム化合物、及び(c)酸性基を有するポリマーを含み、(a)成分の含有量が5質量%以上であり、水の含有量が60質量%以上である、ボイラ水処理剤。
((a)脱酸素剤としてエリソルビン酸塩及び/又はアスコルビン酸塩を用いた場合、脱酸素剤の含有量はエリソルビン酸及び/又はアスコルビン酸換算値である。)
【0014】
(2) (b)塩基性カリウム化合物が水酸化カリウムである(1)記載のボイラ水処理剤。
【0015】
(3) (b)塩基性カリウム化合物の含有量が、(a)脱酸素剤の含有量に対して質量比で0.4から3倍である(1)又は(2)記載のボイラ水処理剤。
((a)脱酸素剤としてエリソルビン酸塩及び/又はアスコルビン酸塩を用いた場合、脱酸素剤の含有量はエリソルビン酸及び/又はアスコルビン酸換算値である。)
【0016】
(4) (1)から(3)何れか記載のボイラ水処理剤をボイラ水系に供給する水処理方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、(a)エリソルビン酸、アスコルビン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の脱酸素剤と(b)塩基性カリウム化合物とともに(c)酸性基を有するポリマーを用いたので、ボイラ水処理剤の調製の際に必ずしも高温での加熱処理を行わなくとも析出物の発生を抑制でき、且つ、腐食防止効果に優れたボイラ水処理剤が得られる。
【0018】
また、本発明のボイラ水処理剤は1液の薬液であっても保管安定性に優れるため、保管時の析出物の発生による水処理剤中の溶液部分での有効成分の希薄化による腐食防止効果の低下や、ボイラ水系への薬液の注入に用いるポンプやラインの閉塞を防ぐことができる。
【0019】
さらに、本発明のボイラ水処理剤は、低温の給水配管において優れた脱酸素効果を発揮するので、ボイラ本体の前段に配置される熱交換器やエコノマイザ等の給水系配管の腐食を抑制するとともに、ボイラ本体に持ち込まれる給水系配管に由来する金属成分の量が減少する。また、前記金属成分がボイラ缶に持ち込まれた場合も、(c)酸性基を有するポリマーにより伝熱面に金属成分のスケールが付着することにより生じる二次的な腐食も低減されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を説明するが、これに本発明が限定されるものではない。
【0021】
[ボイラ水処理剤]
本発明に係るボイラ水処理剤は、ボイラ水系に添加され、腐食抑制等の作用を奏する。具体的には、ボイラ水処理剤は、水を溶媒に用いるものであって、(a)エリソルビン酸、アスコルビン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の脱酸素剤、(b)塩基性カリウム化合物、及び(c)酸性基を有するポリマーとを含有する。
【0022】
本発明のボイラ水処理剤の水の含有量は、ボイラ水処理剤の全質量に対して60質量%以上であるのが好ましい。水の含有量が過少量である場合には、析出物が発生しやすい傾向がある。
【0023】
((a)脱酸素剤)
本発明のボイラ水処理剤において、(a)脱酸素剤としては、エリソルビン酸、アスコルビン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を用いる。エリソルビン酸又はアスコルビン酸を塩として用いる場合、本発明の目的を阻害しない範囲で塩の種類は特に制限されない。好ましい塩の具体例としては、ナトリウム塩又はカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩又はトリエタノールアミン塩等の有機アミン塩が挙げられる。これらの塩の中では水溶性に優れ、ボイラサイクル内において悪影響を及ぼさないカリウム塩もしくは有機アミン塩を用いるのがより好ましい。
【0024】
本発明のボイラ水処理剤における、(a)脱酸素剤の含有量は、ボイラ水処理剤の全質量に対して5質量%以上であり、5から25質量%であるのがより好ましい。ここで(a)脱酸素剤としてエリソルビン酸塩及び/又はアスコルビン酸塩を用いた場合、(a)脱酸素剤の含有量は、エリソルビン酸及び/又はアスコルビン酸換算値を用いる。(a)脱酸素剤の含有量が過少量では、十分な腐食防止効果が得にくい点で好ましくない。
【0025】
((b)塩基性カリウム化合物)
本発明のボイラ水処理剤は、アルカリ剤として(b)塩基性カリウム化合物を用いる。アルカリ剤は、脱酸素剤による溶存酸素の除去に伴って発生する種々の有機酸化合物と反応する。これにより、ボイラ水系内のpH低下が抑制されるため、腐食をより充分に抑制できることになる。
【0026】
本発明のボイラ水処理剤において用いることができる(b)塩基性カリウム化合物の具体例としては、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、カリウムメトキシド又はカリウムエトキシド等のカリウムアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、入手が容易で安価であること等から、水酸化カリウム及び/又は炭酸カリウムを用いるのがより好ましく、ボイラ水系における部位によらず高い腐食防止効果が得られることから水酸化カリウムを用いるのが最も好ましい。
【0027】
本発明のボイラ水処理剤における(b)塩基性カリウム化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されず、(a)脱酸素剤の含有量に対して質量比で0.3から3倍であるのが好ましく、0.6から2.5倍であるのがより好ましい。ここで(a)脱酸素剤としてエリソルビン酸塩及び/又はアスコルビン酸塩を用いた場合、(a)脱酸素剤の含有量は、エリソルビン酸及び/又はアスコルビン酸換算値を用いる。塩基性カリウム化合物の含有量が(a)脱酸素剤の質量に対して過少量である場合には十分な腐食防止効果を得にくく、過剰量である場合には保管時に析出物が発生しやすく、安定性の点で問題がある。また、(b)塩基性カリウム化合物の薬液中における配合率は、保管時の安定性の観点から30質量%以下とするのが好ましく、25質量%以下とするのがより好ましく、20質量%以下とするのがさらに好ましい。
【0028】
((c)酸性基を有するポリマー)
本発明のボイラ水処理剤は、(c)酸性基を有するポリマーを含有するものである。ボイラ水処理剤に、(a)脱酸素剤、及び(b)水酸化カリウムとともに(c)酸性基を有するポリマーを含有させることによって、ボイラ水処理剤の調製時に高温での加熱を行わなくとも、保管時の安定性に優れるボイラ水処理剤を調製することが可能となる。また、(c)酸性基を有するポリマーはスケールを分散させることでボイラ水系へのスケールの付着を抑制し、腐食を防止する効果も有する。
【0029】
本発明において用いる、(c)酸性基を有するポリマーは重量平均分子量3000〜70000のものを用いるのが好ましい。(c)酸性基を有するポリマーの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等の方法により測定することができる。(c)酸性基を有するポリマーの重量平均分子量が過小な場合には、ボイラ缶内等での十分なスケール防止効果を得にくい傾向があり、重量平均分子量が過大な場合にはボイラ水処理剤を調製する際に溶解しにくい場合がある。
【0030】
本発明において用いる、(c)酸性基を有するポリマーが有する酸性基としてはカルボンキシル基又はスルホン酸基であるのが好ましい。(c)酸性基を有するポリマーは塩として用いてもよく、塩の種類としては、水溶性に優れる点で、ナトリウム塩又はカリウム塩等のアルカリ金属塩であるのが好ましい。本発明において用いる(c)酸性基を有するポリマーのうち好ましいものの具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、(メタ)アクリル酸とアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のコポリマー、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸のコポリマー、カルボキシメチルセルロース、及びこれらのアルカリ金属塩からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0031】
本発明のボイラ水処理剤における(c)酸性基を有するポリマーの含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で特に制限されないが、ボイラ水処理剤の全質量に対して0.1から10質量%であるのが好ましく、1〜5質量%であるのがより好ましい。酸性基を有するポリマーの含有量が過少量であっても過剰量であっても、ボイラ水処理剤の保管時に析出物が発生しやすくなる。
【0032】
(その他)
本発明のボイラ水処理剤は、前記各成分の他、糖類、ジエチルヒドロキシアミン、1−アミノピロリジン等の他の脱酸素剤、アミノメチルプロパノール、モノイソプロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の中和性アミンやオクタデシルアミン等の長鎖脂肪族アミン等の防食剤、分散剤、キレート剤、スケール抑制剤といった任意成分をさらに含んでいてもよい。
【実施例】
【0033】
<実施例1から8及び比較例1から7>
表1に記載の種類及び量の成分を含有した薬液を室温にて調製し、薬液の混合時には配合した成分の溶解性を目視にて確認した。次いで、各実施例又は比較例の薬液100mlを容量100mlのポリエチレン製の瓶に入れ、密閉又は、直径2mmの孔を空けた蓋により栓をし、室温にて30日間静置保管し、密閉系と半開放系での混合時の及び安定性試験を行った。混合時の溶解性と30日保管後の析出物の発生の目視による判定結果を表1に記す。
【0034】
表1において(a)はエリソルビン酸であり、(b)はアルカリ剤であり、(c)は酸性基を有するポリマーである。また、表1において配合率は、薬液全量に対する各成分の質量%を表す。混合時溶解性の試験の結果については配合した成分が速やかに溶解したものを○とし、完全には溶解しなかったものを×とした。安定性試験の結果については、目視で析出物の発生が確認されなかったものを○とし、確認されたものを×とした。
【表1】

(b)・・・A:水酸化カリウム、B:炭酸カリウム、C:水酸化ナトリウム、D:炭酸ナトリウム。
(c)・・・a:ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量:約4000)、b:アクリル酸とアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のコポリマーのナトリウム塩(重量平均分子量:約13000)。
【0035】
表1の混合時溶解性より、エリソルビン酸、塩基性カリウム化合物、及び酸性基含有ポリマーを含有し、水の含有量が60質量%以上である本願発明の実施例1から8のボイラ水処理剤については、室温で速やかに溶解し、調製が容易であることが確認された。また比較例4及び比較例5から水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムを用いた場合には、ボイラ水処理剤の調製時に処理剤の成分が完全に溶解しない場合があることが確認された。
【0036】
また、表1より、脱酸素剤が酸化を受けにくい密閉系においても、脱酸素剤が酸化されやすい半開放系においても、塩基性カリウム化合物を用いる実施例1から8の本発明のボイラ水処理剤は保管安定性に優れるものであることが確認された。しかし、比較例6のように塩基性カリウム化合物を用いても、水の配合率が58%と60%未満となるような場合には、長期保管により析出物が発生し、保管安定に劣ることが確認された。
【0037】
また、アルカリ剤として水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いた比較例1から5について、希薄な液である比較例1でこそ析出物の発生は観測されなかったものの、比較例2から5の薬液では何れの条件においても析出物の発生が観測され、アルカリ剤として水酸化ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いた場合には薬液の保管安定性が劣ることが確認された。
【0038】
<実施例9から11及び比較例8、9>
ステンレス製の自然循環型テストボイラ(保有水量5L)を用い、軟化水(Mアルカリ度15mg/CaCO)を給水として運転した。ボイラ運転条件は、圧力1.0MPa(G)、蒸発量7.2L/h、ブロー量0.8L/h、濃縮10倍とした。ボイラ水処理剤は、表2に示す実施例又は比較例において調製された、室温にて半開放条件で30日間静置保管された薬液を、各給水に対するエリソルビン酸の添加濃度が25mg/Lとなるように給水添加した。このときのボイラ入口給水と蒸気凝縮水の溶存酸素濃度を測定し、ボイラの入口の給水配管、ボイラ缶内、及び蒸気復水配管に鋼材のテストピースを設置して、一週間連続運転後の腐食速度(mdd:mg/dm/day)を求めた。なお、ボイラ水のpHは11.0から11.8の間で推移した。溶存酸素濃度及び腐食速度の測定結果を表2に記す。
【0039】
【表2】

【0040】
表1及び表2から、5質量%以上のエリソルビン酸、水酸化カリウム、酸性基を有するポリマー、及び60質量%以上の水を含むボイラ水を用いた実施例9及び10の本発明のボイラ水処理剤を用いた場合にはボイラの各部位における腐食を充分に抑制できることが確認された。また、塩基性カリウム化合物として炭酸カリウムを用いた実施例11では、蒸気復水配管による腐食抑制効果こそやや低いものも、ボイラの各部位において腐食を抑制できることが確認された。
【0041】
比較例8から、薬液中のエリソルビン酸の含有量が2.0質量%と少ない場合には、水系の酸素を有効に除去することができず、腐食を充分に抑制できないことが確認された。また比較例9から、薬液中に酸性基を有するポリマーが含有されていない場合には、特にボイラ缶内等のスケールの生じやすい加熱される部位において腐食を充分に抑制できないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エリソルビン酸、アスコルビン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の脱酸素剤、(b)塩基性カリウム化合物、及び(c)酸性基を有するポリマーを含み、(a)成分の含有量が5質量%以上であり、水の含有量が60質量%以上である、ボイラ水処理剤。
((a)脱酸素剤としてエリソルビン酸塩及び/又はアスコルビン酸塩を用いた場合、脱酸素剤の含有量はエリソルビン酸及び/又はアスコルビン酸換算値である。)
【請求項2】
(b)塩基性カリウム化合物が水酸化カリウムである請求項1記載のボイラ水処理剤。
【請求項3】
(b)塩基性カリウム化合物の含有量が、(a)脱酸素剤の含有量に対して質量比で0.3から3倍である請求項1又は2記載のボイラ水処理剤。
((a)脱酸素剤としてエリソルビン酸塩及び/又はアスコルビン酸塩を用いた場合、脱酸素剤の含有量はエリソルビン酸及び/又はアスコルビン酸換算値である。)
【請求項4】
請求項1から3何れか記載のボイラ水処理剤をボイラ水系に供給する水処理方法。

【公開番号】特開2010−168619(P2010−168619A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11738(P2009−11738)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】