説明

ボトル内の液体を自動的に抽出する装置

【課題】通常の正立姿勢で保持されたボトルに不活性ガスを充填して飲料の劣化を防ぐと共に、所定の分量をボトルから自動的に抽出するための飲料のサーバー装置において、装置内に残った液体を完全に排出し、品質低下を防ぐことができるようにする。
【解決手段】装置内に通常の正立姿勢で保持されたボトルから液体をあらかじめ決められた分量だけ自動的に抽出するための抽出ブロックが、ブロック本体と、二方弁である第一の電磁バルブ10と、三方弁である第二の電磁バルブ9とを備え、不活性ガス回路は内部で分岐して一方はボトルに、他方は第一の電磁バルブ10を介して第二の電磁バルブ9に接続される。液体回路7は前記第二の電磁バルブ9を介して注ぎ口72に接続される。抽出終了時に第一の電磁バルブ10を開き第二の電磁バルブ9のガス回路6側を開くと、第二の電磁バルブ9から注ぎ口までの間に残った液体が一掃される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料のサーバー装置、特に、通常の正立姿勢で保持されたボトルを、内部に不活性ガスが充填された状態で保持して飲料の酸化を防ぐと共に、装置外部からの操作に従い所定の分量をボトルから自動的に抽出するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボトルに入った液体を自動的に抽出する公知の装置としてはボトルを上下逆さに保持しておき、液体を抽出するときには所定のバルブを開くことにより、液体が重量で装置内に設けられた液体回路を流下するようにしたものがある。また、正立状態に保持したボトルのコルク栓に2本のパイプを挿通しておき、そのうち一方のパイプを介してガスをボトル内に注入してボトル入りの液体を加圧し、その圧力により他方のパイプから液体を押し出すようにしたものがある。この型のサーバー装置は、特にボトルを倒立させておくと悪影響を受ける恐れのある飲料、例えばワイン等に好適であり、加圧ガスとして不活性ガスを用いることにより飲料の酸化を防ぐこともできる。
【0003】
従来知られている飲料サーバー装置には種々の欠点があった。ボトルを正立状態に保持するタイプの公知の装置によれば、ボトルから注ぎ口までが気密であるために液体の抽出をとめても内部の液体を完全に排出することができず、チャンネルや抽出栓の内部に数個の液体が付着して残ることがあった。この古い液体が乾燥して酸化したり、バクテリアやその他の汚染物質を呼び込んで劣化し、次に注がれる液体に混入することによって、液体の味わいを変化させる場合があった。
【0004】
特表2005−522381号公報記載の発明は、この不都合を解消せんとしたもので、正立姿勢に保持されたボトルから液体を自動的に抽出する装置に関し、電動バルブを備えた抽出栓によって、上述の欠点を解消するものである。具体的には、抽出栓に不活性ガスの導入、液体の排出及び液体抽出後における抽出栓の清浄化を可能とする好適なチャネルが設けられており、ボトルの下部に設けたリフト手段を駆動してボトル孔部を上記抽出栓に押し付けることで口部を装置と一体化する。そして電磁バルブを閉じた状態でボトル内部に不活性ガスを導入して加圧し、密閉状態で保存する。液体を抽出するときには、液体抽出回路の電動バルブを開くことによってガス圧力により液体を抽出し、注ぎ口から流出させる。抽出が終わると液体抽出回路に設けた分岐路に不活性ガス回路からガスを吹き込むことにより、注ぎ口内の液体を排出し、ボトルに残った液体は次回のために保存される。この引用発明における装置の制御方法の一例は米国特許第7611052号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−522381号公報
【特許文献2】米国特許公報第7611052号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の発明では、液体抽出回路の分岐路に不活性ガスを吹き込んで回路を一掃するものであるために、ボトル内部のパイプから分岐点までに残った液体は排出されずそのまま残り、乾燥して劣化したり、回路やバルブを詰まらせるおそれがあった。またボトルの口部に密着する栓の内部が複雑であり、抽出栓に堅固に固定してあるために洗浄が難しい欠点があった。
【0007】
本発明は、通常の正立姿勢で保持されたボトルを、内部に不活性ガスが充填された状態で保持して飲料の酸化を防ぐと共に、装置外部からの操作に従い所定の分量をボトルから自動的に抽出するための飲料のサーバー装置において、装置内に残った液体をより完全に排出し、抽出される液体の劣化を防ぐことのできる改良された抽出手段を提案することを目的とする。またボトル口部に密着する部分を容易に洗浄することのできるサーバー装置を提案することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、飲料を充填したボトルをリフト手段の上で正立状態で保持し、内部に(例えば窒素ガス)不活性ガスを導入して飲料の変質を防ぐと共に、ボトル内のガス圧力によりボトル内の液体を自動的に抽出する装置において、特に回路内に残った液体を排出する機能を有する抽出ブロックを具備した装置によって、上記の欠点を解消する。
【0009】
より具体的には、請求項1記載の発明は、装置内に通常の正立姿勢で保持されたボトルから液体をあらかじめ決められた分量だけ自動的に抽出するための抽出ブロックを備え、この抽出ブロックは、ブロック本体と、二方弁である第一の電磁バルブと、三方弁である第二の電磁バルブとを備えている。不活性ガスをボトルに導入するガス回路は、内部で分岐して、その一方はボトルに接続され、他方は第一の電磁バルブを介して第二の電磁バルブの第一の入口に接続される。ボトル内の液体を抽出する液体回路は前記第二の電磁バルブを介して注ぎ口への排出路に接続される。
【0010】
前記第二の電磁バルブは装置のプログラムに従ってガス回路側とボトル側を選択的に閉じる。前記第三の電磁バルブはプログラムに従って第一の入口(ガス回路側)と第二の入口(ボトル側)を選択的に閉じる。通常は第一の電磁バルブ及び第二の電磁バルブのボトル側は閉じられており、ボトル内にはガス回路から不活性ガスが導入されて加圧される。液体抽出時には、前記第一の電磁バルブを閉じた状態で第二の電磁バルブのガス回路側を閉じボトル側を開くことにより、ボトル内の不活性ガスの圧力で液体が抽出される。抽出が終了すると前記第一の電磁バルブを開いた状態で第二の電磁バルブのガス回路側を開きボトル側を閉じると、第二の電磁バルブから注ぎ口までの間に残った液体が一掃される。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記液体回路の排出路が分岐し、第三の電磁バルブを介して空気導入路に接続されており、電磁バルブを開くことにより空気を排出路に導入できることを特徴とする。特にワインの抽出のときに、ユーザが好みにより装置を操作して液体に空気を混入させデカンティングを行うことができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記抽出ブロックが、簡単に取り外し可能なボトルアタッチメントを有し、該ボトルアタッチメントを上下に貫通して、前記第一の分岐路とボトル内部を連通させるガス孔と、パイプとが設けられていることを特徴とする。かかる構成により、ビン口部に当接する部分を簡単に取り外して洗浄することができ、またビンの口径等に応じて容易に交換することができる。好ましくは、抽出ブロックの下面にパイプを保護する円筒形の突出部が設けられ、その周囲に円筒状の凹部が設けられ、環状断面を有するボトルアタッチメントが下方から装着される。ボトルアタッチメントの側面には環状のガスケットが嵌装される。
【0013】
前記本体に2組以上のリフト手段と抽出ブロックを備えることにより、2本以上のボトルを収納可能とすることができ、例えば銘柄の異なるワインや、醸造年の異なる同一銘柄のワインを収納することができる。それぞれのボトルに応じた飲料代のケイ酸及び請求方法には、特許文献2に記載された方法を用いることができる。
【0014】
本装置はさらに、電動バルブ等を付勢するための電気回路、ガス圧を所定の所要値に制御しかつ安定化させるための手段、それらを制御する制御回路、スイッチ及びソフトウエア、飲料代を示す液晶ディスプレイ又は発光表示機、個人用の非接触式のチップカードを介して制御回路を駆動させるためのカード読み取り装置などを備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の一実施例に係る装置の正面図であり、図2は図1の断面A−Aにおける縦断面図である。また図3は同じ断面における抽出ブロック3の詳細を示す図である。この装置は、本体1内部に、ボトル1本又は複数本を正立した状態で収容できる貯蔵庫15を有している。貯蔵庫15の正面側には透明な材料からなる開閉可能なディスプレイ窓16が設けられており、その上方には各ボトル毎に液体の抽出に用いるガス回路及び電気回路を操作するための操作スイッチ17が設けられ、さらに上方に飲料代等を表示する液晶ディスプレイ18が設けられている。ディスプレイ窓16の側方には不活性ガス源であるボンベを交換するための扉19が設けられている。
【0016】
本体1の貯蔵庫15の各ボトルの収納位置の下方には、リフト手段2がそれぞれ収容されている。リフト手段2は不図示の制御回路により駆動される電動モータにより昇降する陳列台であって、上面には適当な滑り止めが施されている。リフト手段2は図2では最も下降した位置にあり、新しいボトルを所定位置に設置した時にユーザが操作スイッチ17を操作することにより上昇させられる。そしてボトルが図2の点線で示される位置(ボトル口部が図3の抽出ブロック3のボトルアタッチメント11のガスケット14に密着する位置)まで上昇すると、装置上部に設けられた不図示のマイクロスイッチ等により停止するように構成されている。古いボトルを取り出すときには別のスイッチ操作によりボトルをパイプ12から容易に外せるような下限位置まで降下する。貯蔵庫15の各ボトルの収納位置の上方には、抽出ブロック3がそれぞれ設置され、装置上部に納められたガス回路及び電気回路に接続されている。貯蔵庫15の背面側には貯蔵庫を液体の貯蔵に適した温度に維持するための冷却装置5及び循環ファン6が収容されている。
【0017】
抽出ブロック3の本体はアクリルブロックからなる略直方体の部品であり、上面に第一の電磁バルブ10及び第二の電磁バルブ9が設けられ、内部には後述のガス回路及び液体回路が形成されている。抽出ブロック3の下面には液体回路7の下端が円筒形に突出しており、その周囲に大きい円筒状の凹部が設けられ、ここに補形の環状断面を有するボトルアタッチメント11が下方から装着できるようになっている。ボトルアタッチメント11の側面には、不活性ガスの漏れを防ぐため本体ガスケット13が嵌装される。ボトルアタッチメント11の下面のボトル口部が当接する部分には口部ガスケット14が設けられている。
【0018】
抽出ブロック3の内部には、一方で逆流防止弁51及び電磁バルブ52を介して不活性ガス源50に接続され、不活性ガスをボトル内に導入するガス回路6と、パイプ12を介してボトルから抽出された液体を第二の電磁バルブ9を介して外部の注ぎ口72に供給するための液体回路9とが設けられている。可撓性材料等からなるパイプ12は、ボトルアタッチメント11を挿通する液体回路7の先端の孔部に内嵌され、下端部はボトルの口部に挿入されて、ボトル内部から液体回路7へ液体を抽出する。好適な実施例によれば、リフト手段4が作動しボトルアタッチメント11が上方へ移動したときに、マイクロスイッチにより電磁バルブ52が付勢され、ガス回路6からボトル内に不活性ガスが自動的に導入される。
【0019】
抽出ブロック3の上面には、ガス回路6を中継するダイヤフラム式の電動バルブ(10、9)が設置されている。第一の電動バルブ10は二方バルブであり、抽出ブロック3のガス回路6から分岐した第ニの分岐路62に介装されている。ガス回路6の第二の分岐路は62は、分岐部からボトルに到る第一の分岐路61より極端に細くなっている。第二の電動バルブ9は三方バルブであり、チャンバー94の第一の入口91は前記ガス回路の第二の分岐路62につながり、第二の入口92は液体回路7を介してパイプ12につながり、第三の入口93は排出路71を介して注ぎ口72につながっている。すなわち第一の電動バルブ10を介して、ガス回路6と第二の電動バルブ9が接続されており、第一の電動バルブ10を開くと液体の排出路71に不活性ガスが供給される。
【0020】
本実施例では排出路71が上方に分岐し、逆流防止弁81及び第三の電磁バルブ82を介して空気導入路83に接続されているため、第三の電磁バルブ82を開くことにより外気を排出路71に導入できる。この機能は特にワインの抽出のときに好みにより飲料内に空気を混入させるデカンティング作用に用いられる。
【0021】
本実施例に係る装置の使用方法を以下に説明する。まず、貯蔵庫内の対応するリフト手段2が下降した状態で、本体のディスプレイ窓16を開け、ボトルをリフト手段2上に配置する。窓が閉じられたことを検知する適当なマイクロスイッチ若しくは操作スイッチ17に対するユーザの操作により、リフト手段2が自動的に上昇し、ボトルの口部が口部ガスケット14に密着するまでボトルを上昇させる。図示しないマイクロスイッチの作用によりボトルの密着が検知されると、リフト手段2の上昇は自動的に停止し、同時に電磁バルブ52が開放されて、不活性ガス(窒素)がボトルに充填され、ボトル内の液体に所要の圧力が加えられる。
【0022】
飲料の抽出時には、ユーザは、所望のボトルの収納位置の上に設けられた操作スイッチ17を操作して第一の電動バルブ10及び第二の電動バルブ9を動作させ、必要な場合には空気導入路の電動バルブ82を動作させてデカンティングを指定する。まず第二の電磁バルブ9のガス回路6に通じる第一の入口91を閉じボトルに通じる第二の入口92を開くと、ボトル内の不活性ガスの圧力で液体が抽出されてチャンバー94に流入し、そのまま排出路71を経由して注ぎ口まで押し出される。デカンティングが指定されている場合には同時に第三の電磁バルブ82を開くことにより排出路に空気を混入させる。ユーザは注ぎ口にかざしたグラス等によりこの液体を受け取る。あらかじめスイッチ毎に設定されている所定量の液体が注がれ、排出路71内の液体が流れるのに必要な所定時間が経過すると、前記第一の電磁バルブ10が開放され、同時に第二の電磁バルブ9の第一の入口91を開き第二の入口92を閉じることにより、第二の電磁バルブ9から注ぎ口までの間に残った液体が一掃される。ボトルから失われた飲料の容積分だけガス回路6から不活性ガスが供給され、次の飲料の注ぎ出しの準備が行われる。
【0023】
好ましくは、さらにカード読取装置を設け、必要なID若しくはクレジットが記録された非接触チップカードを使用して必要な認証又はクレジットの減算を行ったときのみ操作スイッチ17が操作可能となるようにしてもよい。
【0024】
ボトルが空になると、操作スイッチ17の操作によりリフト手段2が下動し、ボトルがパイプ12から取り外しうる位置まで下降する。ユーザはボトルの口部からパイプ12を取り外し、新たなボトルの栓を外して設置する。従ってボトルの交換中、パイプ12がボトル以外の汚染源に接触することが防止される。さらにパイプ12及びボトルアタッチメント11を抽出ブロック3から取り外して洗浄することにより、ボトル内の液体の付着や残留を防ぐことができる。またこれらが取り外し可能であるため、ボトルに合わせて最適なサイズ・形状の部品を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1に係る装置の正面図である。
【図2】図1の装置のA−Aにおける縦断面図である。
【図3】図2の抽出ブロック3の詳細を示す縦断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料を補完したボトルを正立状態で保持し、内部に不活性ガスを充填して飲料の変質を防ぐと共に、ボトル内に圧力を加えてボトル内の液体を自動的に抽出する装置において、
装置が、本体(1)と、ボトルを収納する貯蔵庫(15)と、本体に配置されたリフト手段(2)と、抽出ブロック(3)と、本体庫内冷却装置(4)とを備え、
前記抽出ブロック(3)は、ブロック本体と、二方弁である第一の電磁バルブ(10)と、三方弁である第二の電磁バルブ(9)と、不活性ガスを導くガス回路(6)と、抽出された液体を導く液体回路(7)とを含み、
前記ガス回路(6)は、一方で逆流防止弁(51)及び電磁バルブ(52)を介して不活性ガス源(50)に接続され、他方は分岐して、その第一の分岐路(61)はボトルに接続されボトル内を不活性ガスにより加圧し、第一の分岐路(61)より極端に細い第二の分岐路(62)は、第一の電磁バルブ(10)を介して第二の電磁バルブ(9)の第一の入口(91)に接続され、第一の電磁バルブ(10)により選択的に開閉され、
前記液体回路(7)は、一方でボトルから液体を抽出するパイプ(12)に接続され、他方で前記第二の電磁バルブ(9)の第二の入口(92)に接続され、
前記第二の電磁バルブ(9)の第三の入口(93)は排出路(71)を介して注ぎ口(72)に接続され、前記第二の電磁バルブ(9)が前記第一の入口(91)と第三の入口(92)を選択的に閉じることにより前記第二の分岐路(62)又は前記液体回路(7)が前記排出路(71)に選択的に連通され、
液体抽出時には前記第一の電磁バルブ(10)と第二の電磁バルブ(9)の第三の入口(93)を開くことにより、前記排出路(71)と注ぎ口(72)内の液体を排出するための不活性ガスを前記ガス回路(6)からを受入れることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記前記液体回路(7)の排出路(71)が分岐し、逆流防止弁(81)及び電磁バルブ(82)を介して空気導入路(83)に接続されており、電磁バルブ(82)を開くことにより外気を排出路(71)に導入できることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記抽出ブロック(3)が、簡単に取り外し可能なボトルアタッチメント(11)を有し、該ボトルアタッチメント(11)を上下に貫通して、前記第一の分岐路(61)とボトル内部を連通させるガス孔(63)と、パイプ(12)とが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記本体(1)がリフト手段(2)と、抽出ブロック(3)を2組以上備え、2本以上のボトルを収納可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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