説明

ポリアミドマスターバッチペレット

【課題】本発明は、ポリアミド樹脂の耐熱エージング性を大きく改良し、押出機や成形機内での金属銅析出を抑制することにより加工時の安定性が優れることに加え、製品の機械物性を低下させることなく、得られる成形品の吸水による外観色変化が極めて少なく、更に効率的に生産できるポリアミドマスターバッチペレットあるいはそれを用いた成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】銅化合物(a)、ハロゲン化アルカリ(b)、酸化が0.05〜30mg/gの範囲にある高級脂肪酸金属塩,高級脂肪酸エステル,高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1つの化合物(c)からなる造粒物(A)とポリアミド樹脂(B)を溶融混練して得られるポリアミドマスターバッチペレットであり、該ポリアミドマスターバッチ中に含まれるハロゲン原子と銅原子のモル比(ハロゲン原子/銅原子)が12〜40であり、かつ、該マスターバッチ中の銅濃度が1ppm〜10重量%であることを特徴とするポリアミドマスターバッチペレット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工中に金属が析出するトラブルを解消し、耐熱性と外観が優れたポリアミド成形品を提供し得るポリアミドマスターバッチペレットまたはそれを用いたポリアミド成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、その優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性、難燃性などを活かして、自動車、電気電子分野用途に数多く使用されている。中でもポリアミド樹脂は、他の樹脂に見られないほど長期耐熱エージング性が優れているため、自動車エンジンルーム内等の極めて高温度の熱がかかる部分の部品に使用されている。特に近年、自動車エンジンルームの部品の高密度化とエンジン出力の増加にともない、エンジンルーム内の環境温度は増々高くなり、これまで以上の高い長期耐熱エージング性がポリアミド樹脂に求められるようになってきた。
これに応えて、これまで数々の技術的な改良が試みられ、例えば、銅ハロゲン化合物を配合したポリアミド樹脂組成物、芳香族アミン、ヒンダードフェノール系の酸化劣化防止剤を配合したポリアミド樹脂組成物等が挙げられる。これらの中でも、特に銅化合物とハロゲン化合物の混合物による耐熱エージング性向上技術がコストパフォーマンス的に最も優れ、現在でも広範囲に使用されている。
【0003】
銅化合物とハロゲン化合物をポリアミド樹脂に配合する方法としては、銅化合物とハロゲン化合物を含有する水溶液を調整し、ポリアミドの重合前、重合中あるいは重合後の任意の時期(ポリアミド樹脂とのブレンド、溶融混練など)に添加する方法が挙げられている。重合前または重合中に添加する方法は、銅化合物やハロゲン化合物を均一に分散させる上では望ましい方法であるが、銘柄切替時に中間品が発生したり、重合装置を洗浄する必要が生じるなどの生産効率低下の原因となる。生産効率を向上させるために銅化合物とハロゲン化合物を含有するマスターバッチペレットも提案されているが、従来の方法では重合工程で添加する方法に比べ分散性が低下するため、機械的物性を低下させるという問題が生じる。更に、成形品がその後徐々に吸水していく過程で白色系から緑色系に変色することにより成形品の外観を損ねる上、その変色度も銅濃度を高めるに従い大きくなるという問題があった。
【0004】
銅析出やハロゲン化合物の分散性を向上させるために、種々の化合物を併用する組成物が提案されてきた。特にハロゲン化合物は凝集固化しやすい化合物であることは知られているが、粉砕などにより微粉化したハロゲン化合物に予め滑剤を加えることにより、凝集固化を抑制し、微粉末状態で添加することができ、外観を向上させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ポリアミド樹脂、銅化合物、ハロゲン化銅以外のハロゲン化合物からなるマスターバッチを、ポリアミドに対し配合することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、銅化合物とハロゲン化合物の分散性への効果は不充分であり、銅析出物や凝集体等により機械物性が損なわれ、充分満足された耐熱エージング性を有するポリアミド樹脂組成物を得ることは出来なかった。
【特許文献1】特開昭50−148461号公報
【特許文献2】特開2004−211083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリアミド樹脂の耐熱エージング性を大きく改良し、押出機や成形機内での金属銅析出を抑制することにより加工時の安定性が優れることに加え、製品の機械物性を低下させることなく、得られる成形品の吸水による外観色変化が極めて少なく、更に効率的に生産できるポリアミドマスターバッチペレットあるいはそれを用いた成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、銅とハロゲンの配合比率が特定の範囲になるように銅化合物、ハロゲン化アルカリ、更に特定範囲の酸化を有する高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも一つである高級脂肪酸化合物を配合し造粒物を作成し、この造粒物をポリアミド樹脂と溶融混練することにより得られたポリアミドマスターバッチペレットにより前記課題を特異的に解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)銅化合物(a)、ハロゲン化アルカリ(b)、酸価が0.01〜500mg/gの範囲にある高級脂肪酸金属塩,高級脂肪酸エステル,高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1つの化合物(c)からなる造粒物(A)とポリアミド樹脂(B)を溶融混練して得られるポリアミドマスターバッチペレットであり、該ポリアミドマスターバッチ中に含まれるハロゲン原子と銅原子のモル比(ハロゲン原子/銅原子)が5〜40であり、かつ、該マスターバッチ中の銅濃度が1ppm〜10重量%であることを特徴とするポリアミドマスターバッチペレット、
(2)ハロゲン化アルカリ(b)粉粒体の平均粒径が200μm以下であることを特徴とする上記(1)記載のポリアミドマスターバッチペレット、
(3)化合物(c)が高級脂肪酸と周期律表第I族、第II族金属、Cu、Zn、Alより選ばれる少なくとも1つの金属との塩であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のポリアミドマスターバッチペレット、
(4)造粒物(A)中の化合物(c)の濃度が2〜50重量%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミドマスターバッチペレット、
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載したポリアミドマスターバッチペレット99.9〜0.1重量%をポリアミド樹脂ペレット0.1〜99.9重量%に混合し、成形して得られることを特徴とするポリアミド樹脂成形品、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法で作成した銅化合物とハロゲン化合物を含有するポリアミドマスターバッチペレットは、従来法のマスターバッチに比べ、分散性が向上していると考えられ、特異的な高耐熱エージング性と高外観を有する。更に驚くべきことに、重合工程で銅化合物とハロゲン化合物を添加する方法と比べても、高い耐熱エージング性と外観に優れた成形品を得ることができる。また、加工時の銅析出を大幅に低減する効果を有する。本発明の方法によれば、ポリアミド樹脂への銅化合物とハロゲン化合物の添加を、生産効率の高いマスターバッチ方式で行い、重合工程での添加と同等以上の高耐熱エージング性と高外観を持つ製品を得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明について、以下具体的に説明する。
以下、本発明の内容を詳細に説明すると、本発明で用いられるポリアミド樹脂(B)とは、公知のポリアミド樹脂であれば特に制限はなく、ホモポリアミド、共重合ポリアミド、ブレンドポリアミドの何れであっても良い。代表例として、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム類、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)プロパン、イソホロンジアミン等のジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ダイマー酸等のジカルボン酸から得られるポリアミドがある。
【0010】
具体例として、Ny6、Ny11、Ny12、Ny66、Ny46、Ny610、Ny612、Ny6I等のホモポリマー、Ny66/6(/はコポリマーであることを示す)、Ny66/610、Ny66/612、Ny66/6I、Ny66/6T、Ny66/6T/6I、Ny66/6T/612、Ny6T/6I、Ny6T/6I/612、Ny6T/6等のコポリマー、Ny66‖Ny6(‖はブレンドであることを示す)、Ny66/6I‖Ny6、Ny66/6T‖Ny66、Ny66/6T‖Ny6、Ny66/6‖Ny6等のブレンドポリマーがある。本発明で用いられるポリアミドは公知の重合技術によって得られ、溶融重合、固相重合、溶液重合、界面重合等何れであってもよく、また、ポリマーの分子量は制限なく公知の分子量範囲のものを使用できる。
【0011】
本発明で用いられる銅化合物(a)としては、ハロゲン化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅、ステアリン酸銅などや、エチレンジアミン(en)、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に配位した銅錯塩等でも良い。これら銅化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合しても良い。この中でも、好ましいものとしてはヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅、酢酸銅を挙げることができる。
銅化合物の添加量は、マスターバッチ中の銅濃度で1ppm〜10重量%である。銅濃度を1ppm以上にすることにより充分な耐熱効果が得られ、銅濃度が10重量%以下であれば充分な耐熱エージング性の向上が得られることに加え、銅の析出と成形品の変色を抑制することができる。マスターバッチ中の銅濃度を10ppm〜5重量%にすることが好ましく、20ppm〜1重量%にすることがより好ましい。
【0012】
本発明で用いられるハロゲン化アルカリ(b)は、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。ポリアミドマスターバッチ中に含まれるハロゲン原子と銅原子のモル比(ハロゲン原子/銅原子)は5〜40であり、好ましくは11〜30である。ハロゲン原子と銅原子のモル比が5以上の場合には銅の析出と成形品の変色を抑制することができて好ましい。ハロゲン原子と銅原子のモル比が40以下であれば充分な改善効果が得られることに加え、成形機のスクリューなどを腐食するという問題を抑制することができる。また、造粒物(A)中に含まれるハロゲン原子と銅原子のモル比(ハロゲン原子/銅原子)は、5〜40であり、好ましくは11〜40である。ハロゲン原子と銅原子のモル比が5以上の場合は造粒物(A)とポリアミド樹脂(B)と溶融混練する際に銅の析出とポリアミドマスターバッチペレットの変色を抑制することができる。ハロゲン原子と銅原子のモル比が40以下であれば充分な改善効果が得られ、造粒物(A)とポリアミド樹脂(B)を溶融混練する装置を腐食するといった問題を抑制することができる。造粒物(A)とポリアミド樹脂(B)を溶融混練する際にハロゲン化アルカリまたは銅化合物を追加調合することにより、ポリアミドマスターバッチ中のハロゲン原子と銅原子のモル比を調整することが出来る。
【0013】
また、造粒物を形成させる前のハロゲン化アルカリの平均粒径は200μm以下であることが好ましい。200μm以下であると、造粒物(A)とポリアミド樹脂(B)を溶融混練する際にハロゲン化アルカリを充分に分散させることができ、銅析出防止効果が充分になるうえに、成形品の機械物性の低下を抑制することができる。ハロゲン化アルカリの平均粒径は、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0014】
本発明で用いられる化合物(c)を以下に例示する。高級脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸リチウム、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸リチウム、モンタン酸亜鉛等があり、ステアリン酸リチウム、モノステアリン酸アルミニウム、ジステアリン酸アルミニウム、トリステアリン酸アルミニウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸リチウム、モンタン酸亜鉛であれば溶融混練や成形時に機器類の腐食を抑制する効果が高く、好ましい。高級脂肪酸エステルとしては、ステアリルステアレート、モンタン酸1,3ブタンジオールエステルおよびその部分ケン化物、ベヘニルベヘネート、ネオベンチルポリオールの脂肪酸エステル、トリメチロールプロパントリラウレート、ステアリン酸オクチル、ブチルステアレート、モンタン酸ジエタノールアミンエステル、モンタン酸グリセリンエステル、モンタン酸ポリオールエステル、トリメチロールプロパンのモンタン酸エステル等が挙げられる。高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、パルミチン酸アミド、ベヘニン酸とステアリルアミドのモノアミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、キシリレンビスステアリル尿素等が挙げられる。これら化合物(c)は単独で用いても2種以上用いても良い。これら化合物(c)は酸価が0.01〜500mg/gであれば、加工時にハロゲン化アルカリが凝集固化することを抑制でき、好ましい。化合物(c)の酸価は、0.01〜350mg/gであることが好ましく、0.01〜150mg/gであることがより好ましい。
【0015】
化合物(c)を高級脂肪酸金属塩より選択する場合は、高級脂肪酸と周期律表第I族、第II族金属、Cu、Zn、Alより選ばれる少なくとも一つの金属塩とすることが好ましく、これにより本発明の効果をより一層高めることができる。高級脂肪酸と周期律表第I族、第II族金属、Cu、Alより選ばれる少なくとも一つの金属塩とすることがより好ましい。
造粒物(A)中の化合物(c)の含有量は、2〜50重量%であることが好ましい。化合物(c)の含有量が2重量%以上であれば、銅の析出防止に対する効果が大きいだけでなく、造粒物(A)とポリアミド樹脂(B)の溶融混練時に銅化合物(a)とハロゲン化アルカリが充分に分散させることができ、機械物性低下を抑制できる。化合物(c)の含有量が50重量%以下であれば、銅析出防止の効果が望める。造粒物(A)中の化合物(c)の含有量は、2〜30重量%であることがより好ましい。
【0016】
本発明において、これら銅化合物(a)、ハロゲン化アルカリ(b)、化合物(c)の造粒物(A)は公知の造粒技術によって得られ、圧縮造粒法、打錠成形法、乾式押出造粒法、溶融押出造粒法などの何れでもよい。更に成形体を粉砕し所望の粒径に調整することも出来る。この際の粉砕法も公知の粉砕技術であり、ハンマーミル、ナイフミル、ボールミル、ジョークラッシャー、コーンクラッシャー、ローラミル、ジェットミル、碾臼などの何れでもかまわない。得られた造粒物の比重は0.3〜1.0g/ccの範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜0.8g/ccである。比重が0.3g/cc以上であると造粒物取扱時に解砕することによる微粉発生を抑え取り扱いが容易であるとともに、微粉の分級により溶融混練後の分散が不均一なることを抑制できる。また、比重が1.0g/cc以下であれば溶融混練時に造粒物が完全に解砕されてポリアミド樹脂中で均一になるととも、樹脂中に残った凝集体により機械物性が低下することもない。
【0017】
造粒物(A)とポリアミド樹脂(B)の混合は、溶融混練前に行うことも出来るし、溶融混練する際ポリアミド樹脂(B)とは別にフィードすることも出来る。溶融混練前に混合する場合は周知の混合装置であれば特に限定されるものではなく、例えばタンブラー、ヘンシェル、プロシェアミキサー、ナウターミキサー、フロージェットミキサー等が挙げられる。
造粒物(A)とポリアミド樹脂(B)を溶融混練する装置は、公知の技術であれば特に限定されない。例えば単軸あるいは2軸押出機、バンバリーミキサーおよびミキシングロール等の溶融混練機が好ましく用いられる。
【0018】
本発明のポリアミドマスターバッチペレットは他のポリアミド樹脂と混合して用いることができる。混合比率は本発明のポリアミドマスターバッチペレット99.9〜0.1重量%に対し他のポリアミド樹脂ペレット0.1〜99.9重量%を混合し成形すれば、成形中に銅が析出したり、成形機のスクリューが腐食したりすることなく、耐熱エージング性が優れ、変色の少ない成形品を得ることができる。ポリアミドマスターバッチペレット70〜0.2重量%に対し他のポリアミド樹脂ペレット30〜99.8重量%にすることが好ましく、ポリアミドマスターバッチペレット50〜0.5重量%に対し他のポリアミド樹脂ペレット50〜99.5重量%にすることがより好ましい。
【実施例】
【0019】
本発明を実施例に基づいて説明する。実施例および比較例において成形品の長期耐熱エージング性、銅析出率、色調変化は以下の方法により測定した。
(1)長期耐熱エージング性
下記の成形条件によって得られたテストピースを熱風オーブン中で180℃、所定時間処理した後、ASTM−D638に準じて引張強度を測定した。そして熱処理前に測定した引張強度に対する熱処理後の引張強度を引張強度保持率として算出した。引張強度保持率が50%となる熱処理時間を半減期とした。
【0020】
(2)色調変化
下記成形条件によって得られたテストピースを23℃の水中に240時間浸漬し、浸漬後のテストピースの色調を色差計(日本電色(株)製ND−K6B型)で測定した。測定条件は以下の通りである。
測定項目:L(明度)、a(赤色度)、b(黄色度)、ΔE(色差)
計 算:ΔE=√{(L−L+(a−a+(b−b
、b、L吸水処理前のa、b、L
、b、L吸水処理前のa、b、L
吸水前の成形品の色調との色差(ΔE)を色調変化とした。
【0021】
(成形条件)
射出成形機 :日精樹脂製PS−40e
金型 :ASTM−D638テストピース型
シリンダー温度 :280℃フラット
金型温度 :80℃
可塑化ストローク :63mm
スクリュー回転数 :200rpm
射出時間 :10秒
冷却時間 :15秒
【0022】
[実施例1]
ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩水溶液(50重量%濃度)を用い、公知の溶融重合を行い、ペレット状のポリアミド66樹脂を得た。ヨウ化カリウム:85重量%、ヨウ化銅:5重量%、モンタン酸カルシウム:10重量%を撹拌混合した後、顆粒状の造粒物を作成した。ペレット状のポリアミド66樹脂:70重量%とヨウ化カリウム/ヨウ化銅/モンタン酸カルシウムの顆粒状造粒物:30重量%をタンブラー型ブレンダーにて混合した。得られた混合物を二軸押出機により溶融混練し、ポリアミドマスターバッチペレットを得た。該ポリアミドマスターバッチペレット:2重量%とポリアミド66樹脂:98重量%をタンブラー型ブレンダーにて混合し、混合物を二軸押出機にて溶融混練し、銅含有ポリアミド66樹脂ペレットを得た。得られた銅含有ポリアミド66樹脂ペレットより、ASTM−D638テストピースを成形した。長期耐熱エージング性、色調変化を測定し、表1に示す物性を得た。
【0023】
[実施例2]
予めジェットミルにて平均粒径:20μmに粉砕したヨウ化カリウムを用いること以外は実施例1と同様の方法でASTM−D638テストピースを作成し、長期耐熱エージング性、色調変化を測定した結果を表1に合わせて記載した。
【0024】
[比較例1]
ポリアミドマスターバッチペレットを作成する際に、溶融重合で得られたペレット状のポリアミド66樹脂に、予め微細化し平均粒径:20μmのヨウ化カリウム:25.5重量%、ヨウ化銅:1.5重量%、モンタン酸カルシウム:3.0重量%を混合し、二軸押出機にて溶融混錬したこと以外は実施例1と同様に方法でASTM−D638テストピースを成形した。長期耐熱エージング性、色調変化を測定した結果を表1に合わせて記載した。
【0025】
[比較例2]
ポリアミド66樹脂を溶融重合する際、原料のヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩水溶液(50重量%濃度)に対し、ヨウ化カリウム:41.0重量%とヨウ化銅:12.0重量%を含む水溶液:0.25重量%を配合し、公知の溶融重合を行い、ペレット状のポリアミド66樹脂を得た。得られた重合物のみを実施例1と同様に二軸押出機にて溶融混錬して、銅含有ポリアミド66樹脂ペレットを得た。得られた銅含有ポリアミド66樹脂ペレットよりASTM−D638テストピースを成形した。長期耐熱エージング性、色調変化を測定した結果を表1に合わせて記載した。
【0026】
[比較例3]
ポリアミド66のみを用い、実施例1と同様に二軸押出機にて溶融混錬して、得られた銅を含有しないポリアミド66樹脂ペレットより、ASTM−D638テストピースを成形した。長期耐熱エージング性、色調変化を測定した結果を表1に合わせて記載した。
【0027】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のポリアミドマスターバッチペレットは、耐熱用途で使用されるポリアミド樹脂の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅化合物(a)、ハロゲン化アルカリ(b)、酸価が0.01〜500mg/gの範囲にある高級脂肪酸金属塩,高級脂肪酸エステル,高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも1つの化合物(c)からなる造粒物(A)とポリアミド樹脂(B)を溶融混練して得られるポリアミドマスターバッチペレットであり、該ポリアミドマスターバッチ中に含まれるハロゲン原子と銅原子のモル比(ハロゲン原子/銅原子)が5〜40であり、かつ、該マスターバッチ中の銅濃度が1ppm〜10重量%であることを特徴とするポリアミドマスターバッチペレット。
【請求項2】
ハロゲン化アルカリ(b)粉粒体の平均粒径が200μm以下であることを特徴とする請求項1記載のポリアミドマスターバッチペレット。
【請求項3】
化合物(c)が高級脂肪酸と周期律表第I族、第II族金属、Cu、Zn、Alより選ばれる少なくとも1つの金属との塩であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミドマスターバッチペレット。
【請求項4】
造粒物(A)中の化合物(c)の濃度が2〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミドマスターバッチペレット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載したポリアミドマスターバッチペレット99.9〜0.1重量%をポリアミド樹脂ペレット0.1〜99.9重量%に混合し、成形して得られることを特徴とするポリアミド樹脂成形品。

【公開番号】特開2006−96802(P2006−96802A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281650(P2004−281650)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】