説明

ポリイミド溶液

【課題】透明性および色相が良好であり、光学部品や各種電気・電子部品の製造に好適なポリイミド溶液及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)
【化1】


(上記一般式(1)において、Arは炭素数4から24の4価の芳香族基であり、Hと記された六員環はトランス−1,4−シクロヘキサンジイル基である。)
で示される繰り返し単位から構成され、還元粘度(ηsp/C)が1.0dL/g以上であるポリイミドが有機溶剤に溶解していることを特徴としているポリイミド溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド溶液、その製造方法、および該ポリイミド溶液から得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、エレクトロニクス分野への応用に有用なものであり、携帯電話やディスプレー基板、太陽電池基板などに用いられているガラス及びセラミックスの代替材料としてフレキシブル性と透明性と良好な色相とを併せ持ち、かつ、各種有機溶剤に可溶な透明耐熱性樹脂の技術開発が急務となっている。芳香族テトラルカルボン酸無水物と非芳香族ジアミンを原料として、縮合反応により合成されるポリイミド前駆体溶液から閉環反応して得られる半脂肪族ポリイミドは、耐熱性、低熱膨張係数や機械的特性に優れており様々な検討が行われている。
【0003】
芳香族テトラカルボン酸無水物とシクロヘキシルジアミンのような非芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体溶液のポリイソイミドの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、高透明性、高ガラス転移温度、低誘電率の感光性ポリイミドとして、芳香族テトラカルボン酸無水物とトランス1,4−ジアミノシクロヘキサンのような非芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
また、低誘電率、高いハンダ耐熱性、高透明性を持つポリイミドとして、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸のような非芳香族テトラカルボン酸無水物と1,4−ジアミノシクロヘキサンのような非芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献3)。
【0006】
また、低誘電率、低線熱膨張係数、高透明性を持つポリイミドとして、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸のような非芳香族テトラカルボン酸無水物と1,4−ジアミノシクロヘキサンのような非芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献4)。
【0007】
また、高透明性、低複屈折率、高靱性を持つポリイミドとして、3,3’,4,4’−ジヘェニルスルホンテトラカルボン酸のような芳香族テトラカルボン酸無水物と1,4−ジアミノシクロヘキサンのような非芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献5)。
【0008】
また、高耐熱性を持つポリイミドとして、芳香族テトラカルボン酸無水物と1,4−ジアミノシクロヘキサンのような非芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を製造する方法が開示されている(例えば、非特許文献1)。
【0009】
さらに、低誘電率、低線熱膨張係数をもつポリイミドとして、芳香族テトラカルボン酸無水物と1,4−ジアミノシクロヘキサンのような非芳香族ジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を製造する方法が開示されている(例えば、非特許文献2、3)。しかし、該特許文献1〜5と該非特許文献1〜3で具体的に示されている、芳香族テトラカルボン酸無水物と非芳香族ジアミンを原料としたポリイミド製造方法では、熱イミド化によるポリイミドを製造するため、各種有機溶剤可溶性が乏しく、透明性が十分ではなく、透明性が要求される光学用途などに適用性がないなどの不具合がある。また、ポリイミドが溶剤可溶性ではないことから、ポリイミド前駆体溶液からプレポリマーフィルムを得た後、溶剤の揮発及びイミド化を同時に行っているため、塗布膜の表面に凸凹などが生じ、表面平滑性に欠陥が起こり易く、成形加工性に劣る上、膜厚の制御も難しいという問題を有している。更に、上記のような公知のポリイミドのフィルム等の成形体は黄色を帯びるなど色相について改善の余地を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−3314号公報
【特許文献2】特開2002−161136号公報
【特許文献3】特開2002−322274号公報
【特許文献4】特開2005−146072号公報
【特許文献5】特開2005−163012号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Polym.Sci.,PartA.Polym.Chem.,31 P2345〜2351(1993)
【非特許文献2】High Perfom.Polym.13 P93〜106(2001)
【非特許文献3】High Perfom.Polym.15 P47〜64(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
半導体素子や携帯電話機器などディスプレー基板又は太陽電池基板を、機械強度が優れ、透明性および色相が良好で、かつ高耐熱性のポリイミド製とすることを可能にするポリイミド溶液、その製造方法、および該ポリイミド溶液から得られる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意検討を行い、特定の繰り返し単位からなるポリイミドの溶液により上記課題が解決されることを見い出し、本発明を完成させた。
【0014】
即ち本発明は、下記一般式(1)
【化1】

(上記一般式(1)において、Arは炭素数4から24の4価の芳香族基であり、Hと記された六員環はトランス−1,4−シクロヘキサンジイル基である。)
で示される繰り返し単位から構成され、還元粘度(ηsp/C)が1.0dL/g以上であるポリイミドが有機溶剤に溶解していることを特徴としているポリイミド溶液である。
【0015】
更に、本発明は、トランス−1,4−シクロヘキサンジアミンと、
下記一般式(2)、(3)及び(4)
【化2】

【化3】

【化4】

(上記一般式(2)、(3)及び(4)において、Arは炭素数4〜24の芳香族基である。上記一般式(3)において、X、X、X、およびXはそれぞれ独立にヒドロキシ基またはクロロ基である。上記一般式(4)において、XおよびXはそれぞれ独立にヒドロキシ基またはクロロ基である。)
で表される芳香族テトラカルボン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、有機溶剤中で重合反応させることを特徴とする上記ポリイミド溶液の製造方法についてのものでもある。
また、本発明は上記ポリイミド溶液から得られる成形体に関するものでもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体素子や携帯電話機器などディスプレー基板又は太陽電池基板を、機械強度が優れ、透明で色相が良好、かつ高耐熱性のポリイミド製とすることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について例示するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
本発明のポリイミド溶液に含まれるポリイミドは、前記一般式(1)で示されるとおり、トランス−1,4−シクロヘキサンジイル基を含む繰り返し単位から構成される半芳香族ポリイミドである。
【0018】
前記一般式(1)中の炭素数4から24の4価の芳香族基であるArは、該ポリイミドの原料である芳香族テトラカルボン酸、又はその誘導体(以下、併せて芳香族テトラカルボン酸類と称することがある)を表す前記一般式(2)〜(4)におけるArと同じであり、後述の該ポリイミド溶液の製造方法において好ましい芳香族テトラカルボン酸類として列挙されている芳香族テトラカルボン酸類に由来する残基が好ましく、なかでも、以下の式(5)に示す、ピロメリット酸類、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸類(以下、その二無水物をs−BPDAと略記することがある)、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸類、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル類(以下、その二無水物をOPDAと略記することがある)、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸類、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン類(以下、その二無水物をs−BPDAと略記することがある)からなる群より選ばれる1種類以上の芳香族テトラカルボン酸類に由来する残基がより好ましい。
【0019】
【化5】

【0020】
本発明のポリイミド溶液に含まれるポリイミドの分子量は特に制限はないが、その0.12gをEゾール溶媒(40質量部の1,1,2,2−テトラクロルエタンと、60質量部のフェノールとの混合物)10mLに溶解させ、30℃においてウベローデ粘度計を用いて測定した還元粘度(ηsp/C)が1.0dL/g以上のものであり、1.5dL/g以上であると好ましく、2.0dL/g以上であるとより好ましい。還元粘度(ηsp/C)が1.0dL/g未満のポリイミドの溶液では、製膜性が悪くなったり、キャスト膜にひび割れ等が生じたりする恐れがある。電子材料用途にポリイミドを利用する場合、ポリイミド膜が十分に高靱性であることが要求されるため、本発明のポリイミド溶液に含まれるポリイミドの還元粘度の上限は特に制限はないが、有機溶剤に可溶である範囲であれば問題ないが実用的には5dL/g以下が好ましい。
【0021】
本発明のポリイミド溶液に含まれる上記ポリイミドは、本発明の目的に支障が出ない範囲で、前記一般式(1)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位、例えば、イソホロンジアミンやシス−1,4−ジアミノシクロヘキサンといったトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン以外のジアミン原料に由来する残基を含む繰り返し単位や、後述する脂肪族テトラカルボン酸類に由来する残基などを含んでもよいが、全繰り返し単位中、前記一般式(1)で示される繰り返し単位が占める割合が、90モル%以上であると好ましく、95モル%以上であるとより好ましく、98モル%以上であると更に好ましい。当該割合が90モル%未満であると、得られるポリイミド成形体の耐熱性が不十分になったり、線熱膨張係数が高くなったりすることがあり好ましくない。なお、当該割合は、当然100モル%であってもよいが、原料であるトランス−1,4−ジアミノシクロヘキサンや芳香族テトラカルボン酸類から異性体などの不純物を完全に除去するとコストが余計にかかり経済的に不利になることがある。
【0022】
本発明に用いられる上記ポリイミドは、種々の有機溶剤に対し可溶性を有する。ここで可溶性とは、該ポリイミドが有機溶剤100gに対し5g以上溶解することを言い、好ましくは10g以上溶解することを言う。有機溶剤100gに対して、該ポリイミドが5g未満しか溶けていないポリイミド溶液では成形(製膜)や加工に支障が生じる恐れがあり好ましくない。
【0023】
本発明における上記ポリイミドが可溶である有機溶剤としては、ベンジルアルコール、α−アミルシンナミルアルコール、シンナミルアルコール、クミニルアルコール、p−シメン−8−オール、デヒドロクミンアルコール、ジヒドロシンナミルアルコール、2,4−ジメチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、p−α−ジメチルベンジルアルコール、2−エトキシベンジルアルコール、4−エトキシベンジルアルコール、フルフリルアルコール、ヒドラトロピルアルコール、4−ヒドロキシベンジルアルコール、p−ヒドロキシフェネチルアルコール、α−イソブチルフェネチルアルコール、2−メトキシベンジルアルコール、3−(4−メトキシフェニル)プロパン−1−オール、メチルp−ヒドロキシフェニルカルビノール、4−メチル−2−フェニルペンタノール、2−メチル−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)プロパノール、2−メチル−4−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−5−ヒドロキシメチルピラジン、4−メチルベンジルアルコール、5−メチルフルフリルアルコール、フェネチルアルコール、フェネチルメチルエチルカルビノール、2−フェノキシエタノール、フェニルエチルカルビノール、2−フェニル−2−プロパノール、4−フェニルブタン−2−オール、ピペロニルアルコール、スチラリルアルコール、スルフロール、テニルアルコール、バニリルアルコール、バニリルアルコールメチルエーテル、1−ベンジル−2−メチル−2−プロパノール、2,3−ジメトキシベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プソイドクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、ヘミメリテン(1,2,3−トリメチルベンゼン)、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)のトリメチルベンゼン類、クメン、n−プロピルベンゼン、エチルトルエン類、インデン、インダン、シメン、ジエチルベンゼン類、エチルキシレン類、ビフェニルなどの芳香族炭化水素、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール性溶剤、ピリジン、ピコリン、ピペリジン、チオフェンなどのヘテロ環化合物、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化溶剤、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性高沸点高極性溶媒、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル溶剤などからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。上記有機溶剤のうち、芳香族アルコール、芳香族炭化水素、ヘテロ環化合物、及びフェノール性溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であると好ましい。上記芳香族アルコールとしてはベンジルアルコールが好ましい。上記芳香族炭化水素としてはトリメチルベンゼン、つまり、プソイドクメン、メシチレン、及ヘミメリテンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。上記ヘテロ環化合物としてはピリジンが好ましい。上記フェノール性溶剤としてはm−クレゾールが好ましい。また、なかでも、プソイドクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、ヘミメリテン(1,2,3−トリメチルベンゼン)、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)のトリメチルベンゼン類、クメン、n−プロピルベンゼン、エチルトルエン類、インデン、インダン、シメン、ジエチルベンゼン類、エチルキシレン類。ビフェニルなどからなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素数9〜12の芳香族炭化水素と、少なくとも1種の前記芳香族アルコールとの混合物、並びに、少なくとも1種の炭素数9〜12の上記芳香族炭化水素と、少なくとも1種の前記芳香族アルコールと、少なくとも1種の上記ヘテロ環化合物との混合物が好ましい。
【0024】
本発明のポリイミド溶液において、ポリイミドの含有量が5〜50質量%(ポリイミド溶液を100質量%とする)であると好ましく、7〜40質量%であるとより好ましく、10〜30質量%であると更に好ましい。ポリイミド含有量が5質量%未満では膜厚が薄く膜の特性の低下を招くおそれがあるので好ましくなく、ポリイミド含有量が50質量%を超えるとポリイミド溶液の粘度が高くなり過ぎて製膜が困難になるなどにより好ましくない。
【0025】
本発明のポリイミドの製造方法は、下記式(6)
【化6】

で表されるトランス−1,4−シクロヘキサンジアミンと、前記一般式(2)〜(4)で表される芳香族テトラカルボン類からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、有機溶剤中で重合反応させることを特徴とするものである。
【0026】
上記芳香族テトラカルボン酸類としては、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル(別名、4,4’−オキシジフタル酸)、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン(以下、ジフェニルスルホン酸と略称することがある)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4 −ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジンなどの芳香族テトラカルボン酸(複素芳香族テトラカルボン酸を含む)といいた各種芳香族テトラカルボン酸、以上列挙した各種芳香族テトラカルボン酸の二無水物、該各種芳香族テトラカルボン酸の塩化物(一カルボン酸三酸塩化物、ニカルボン酸二酸塩化物、三カルボン酸一酸ハロゲン化物、四塩素化物)、該各種芳香族テトラカルボン酸の一無水物、該各種芳香族テトラカルボン酸の一無水物一酸塩化物、及び該各種芳香族テトラカルボン酸の一無水二酸塩化物よりなる群から選ばれる1種類以上が好ましいものとして挙げられる。なお、上記から明らかなとおり、本願において芳香族テトラカルボン酸類との語が包含する芳香族テトラカルボン酸誘導体とは、該芳香族テトラカルボン酸の二無水物(前記一般式(2))、塩化物
【化7】

一無水物
【化8】

一無水物一酸塩化物
【化9】

及び、一無水物二酸塩化物
【化10】

(上記の芳香族テトラカルボン酸の塩化物〜一無水物二酸塩化物の各一般式において、Arの定義は前記一般式(2)、(3)及び(4)におけるArに同じである)
を含むものである。
【0027】
上記の芳香族テトラカルボン酸類のうち、ピロメリット酸類、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸類、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸類、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル類、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸類、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン類からなる群より選ばれる1種類以上の芳香族テトラカルボン酸類が好ましく、芳香族これらテトラカルボン酸の二無水物からなる群より選ばれる1種類以上がより好ましく、ピロメリット酸二無水物(PMDAと略)
【化11】

3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDAと略)
【化12】

4,4’−オキシジフタル酸無水物(OPDA)
【化13】

または、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン類二無水物(別名、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物。DSDAと略記することがある。)
【化14】

からなる群より選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
【0028】
なお、本発明のポリイミド溶液の目的に支障が出ない程度であれば、テトラカルボン酸類として上記の芳香族テトラカルボン酸類のほか、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸などの脂環式テトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸といった非芳香族テトラカルボン酸類も共重合させたポリイミドの溶液としても良い。
【0029】
また、 本発明のポリイミド溶液の目的に支障がない程度でアミン基を表面修飾したジアミノクレイ、ジアミノシリカ、ジアミノセラミックスナノファイバー、ジアミノセルロース、変性ジアミノセルロース等よりなる群から選ばれる1種類以上混合してもよい。
【0030】
本発明のポリイミド溶液の製造方法における重合反応にて、芳香族テトラカルボン酸類の全モル数と、トランス1,4−シクロヘキサンジアミンの全モル数との比率は、1:0.9〜1.1であると好ましく、1:0.95〜1.05であるとより好ましく、1:0.98〜1.02であると特に好ましい。
【0031】
本発明のポリイミド溶液の製造方法における重合反応としては、ポリイミドを得るための、公知の溶液重合による重合反応の条件を採用することができる。当該重合反応の際に用いる溶媒としては、本発明のポリイミド溶液に用いられる有機溶剤として前述したものから選ばれる少なくとも1種を用いることができ、なかでも、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プソイドクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、ヘミメリテン(1,2,3−トリメチルベンゼン)、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)のトリメチルベンゼン類、クメン、n−プロピルベンゼン、エチルトルエン類、インデン、インダン、シメン、ジエチルベンゼン類、エチルキシレン類などからなる群より選ばれる少なくとも1種の芳香族炭化水素と、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等から選ばれる少なくとも1種の非プロトン性高沸点高極性溶媒との混合物であると好ましい。また、重合反応時の溶媒として用いる有機溶剤として、前述した化合物から選ばれる少なくとも1種の芳香族アルコールと、上に列挙した化合物から選ばれる少なくとも1種の芳香族炭化水素との混合物も好ましい。なお、重合反応の溶媒として用いられる有機溶剤は、ポリイミド溶液の溶媒とである有機溶剤と同じであっても異なっても良い。つまり、重合反応物をそのまま本発明のポリイミド溶液としても良く、また、重合反応溶媒とは別の有機溶剤を添加してもよく、後述のようにポリイミドを単離してから、重合反応溶媒とは別の有機溶剤にポリイミドを再溶解させてもよい。
【0032】
本発明のポリイミド溶液の製造方法における重合反応は、前記のトランス−1,4−シクロヘキサンジアミンと、前記の芳香族テトラカルボン酸類とを、室温または氷冷下にて上記有機混合溶媒に溶解させ、必要に応じて混合溶媒を過熱還流させながら、所定の時間反応をさせることによって実施される。反応温度としては150℃〜400℃が好ましく、180℃〜350℃であるとより好ましい。反応時間としては0.1時間〜72時間であると好ましく、0.2時間〜12時間であるとより好ましく、0.3時間〜5時間であると特に好ましい。
【0033】
上記の重合反応において、用途によっては触媒が微量残存することによりポリイミドの安定性や着色などの観点から無触媒下で該反応を行うことが好ましいが、公知の触媒を使用しても良い。そのような触媒としては、キノリン、イソキノリン、α−ピコリン、β−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、とりプロピルアミン、トリブチルアミン、イミダゾール、N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジンなどの有機塩基触媒、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩基触媒、安息香酸、メチル安息香酸、オキシ安息香酸、テレフタル酸、桂皮酸、クロトン酸、アクリル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの酸触媒を例示することができる。
【0034】
上記重合反応の際のモノマー濃度(反応溶液全量に対する、前記トランス−1,4−シクロヘキサンジアミンと前記芳香族テトラカルボン酸類との合計量の割合)は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。このモノマー濃度の範囲で重合を行うことにより、より均一で高重合度のポリイミドの溶液を得ることができる。モノマー濃度5質量%以下で重合を行う場合、ポリイミドの重合度が上がらずポリイミド重合体が脆くなることがあり好ましくない。また、モノマー濃度50質量%を超えて重合反応を行う場合、アミン塩が形成され、アミン塩が溶解、消失するまでにより長い反応時間を必要とし、生産性が低下するなどの問題が生じることがあり好ましくない。
【0035】
上記の重合反応の際、反応によって生成する水を反応溶液中から除去することが高分子量のポリイミドを効率的に得る上で好ましい。水の除去方法としては、反応系中にモレキュラーシーブを存在させる方法、加熱還流蒸気をモレキュラーシーブなどと接触させ反応溶液中に戻す方法、加熱還流蒸気を冷却して生成する凝縮液をモレキュラーシーブなどと接触させ反応溶液中に戻す方法、加熱還流蒸気を冷却後分離槽またはディーンスターク装置等により水を分離し溶媒だけを反応溶液中に戻す方法などが挙げられる。
【0036】
本発明のポリイミド溶液の製造方法として、上記重合反応後の混合液を加熱、減圧、または加熱及び減圧下で有機溶剤を留去して単離したポリイミドを減圧下で更に溶融熱処理することことにより、ポリイミドをさらに高重合度のものとし、これを再度前記の混合溶媒に溶解する方法も挙げられる。このときの溶融熱処理温度はポリイミドの熱分解温度以下であり、結晶性ポリイミドの場合は融点の10℃以上、非晶性ポリイミドの場合はガラス転移温度の10℃以上の温度が好ましい。より好ましくは結晶性ポリイミドの場合は融点の30℃以上、非晶性ポリイミドの場合はガラス転移温度の30℃以上の温度である。上記温度差が10℃未満である場合、ポリイミドの粘度が高すぎて熱処理による高重合度化の効果が得られにくく好ましくない。
【0037】
本発明のポリイミド溶液の製造方法として、上記の重合反応物を貧溶媒中に添加するなどの方法によってポリイミドを固体状に析出させ単離した後に、該ポリイミドを有機溶剤に再溶解して本発明のポリイミド溶液とすることもできる。さらに、上記のように単離された固体状のポリイミドをそのまま溶融熱処理することによって、更に高重合度のポリイミドとし、これを有機溶剤に再溶解させ、本発明のポリイミド溶液を得ることもできる。この再溶解させる際の有機溶剤としては、本発明のポリイミド溶液に用いられる有機溶剤として前述したものから選ばれる少なくとも1種を用いることができ、好ましい溶媒の例についても前述したとおりである。なお、再溶解させる際の有機溶剤は重合反応において溶剤として用いた有機溶剤と同じであっても良く、異なっていても良い。
【0038】
更に、本発明のポリイミド溶液には、必要に応じて例えば、シランカップリング剤、クレイ、フィラー、セルロース、植物由来のバイオポリマー粉末又は繊維、紫外吸収剤、酸化防止剤、感光剤、光重合開始剤及び増感剤などの他、公知の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができ、それら添加物を混合して用いることもできる。また、溶解性、耐熱性など用途に併せ、前記のポリイミド以外のポリマーを本発明の効果を損なわない範囲で添加することもできる。
【0039】
本発明のポリイミド溶液から、以下に述べるように成形体を得ることができる。特に本発明のポリイミド溶液は、ポリイミドワニスとして塗膜やプラスチック基板の形成に好適である。上記のポリイミド溶液から、各種成形体を得る方法としては、特に制限なく従来公知の方法が使用でき、溶液成形、溶液キャスティング、乾式紡糸、湿式紡糸などが代表的なものとして挙げられる。
成形体の形態には、特に限定はないが、膜、フィルム、シート、繊維、中空繊維、チューブ、パイプ、ボトル等が例示される。
【0040】
本発明のポリイミド成形体は、液晶ディスプレー用、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用、電子ペーパー用、太陽電池用、電子デバイスの電気絶縁膜用などのガラス基板代替用プラスチック基板、更には、太陽電池保護膜、カラーフィルター用保護膜などガラス基板代替プラスチック、透明伝導フィルム基板、TFT基板、光ディスク基板、光ファイバー、レンズ、タッチパネルなどの電気・電子部品や光学材料として好適である。これら電気・電子部品や光学材料への使用には、膜、フィルム、又はシートの形態である本発明のポリイミド成形体が好適であり、本願発明のポリイミド成形体よりなる電気・電子部品としては電気絶縁膜が特に有用である。
【0041】
上記の膜、フィルム、又はシートの形態の成形体を製造する方法としては、ポリイミド溶液を基材上に塗布し、溶媒を除去することを特徴とする製造方法が好ましく、具体的には、
・ ポリイミド溶液を、基材にスクリーン印刷、スピンコート法、スプレイコート法スピンコート等で塗布した(塗布工程)後、乾燥させることにより(乾燥工程)、膜であるポリイミド成形体を得る方法、
・ ポリイミド溶液を、スリット状ノズルから押し出したり、バーコーターを用いたりして基材に塗布し(塗布工程)、乾燥させ(乾燥工程)、次いでその基材からポリイミド成形体を剥離させる(剥離工程)ことにより、フィルム又はシートであるポリイミド成形体を得る方法、
などが例示される。
【0042】
上記の塗布工程において、本発明のポリイミド溶液が塗布される厚みは、目的とする成形体の寸法に応じて適宜調整されるものであるが、通常0.01〜1000μm程度であり、より好ましくは0.1〜500μmであり、更に好ましくは0.3〜100μmであり、特に好ましくは0.5〜50μmである。塗布工程は、通常室温で実施されるが、粘度を下げて操作性を良くする目的でポリイミドワニスを40〜80℃の範囲で加温して実施してもよい。
【0043】
上記の乾燥工程において、乾燥温度は、混合溶媒の種類にもよるが、通常50〜250℃、好ましくは60〜230℃、より好ましくは100〜190℃が推奨され、複数の温度設定にて段階的に乾燥してもよい。尚、250℃を超える乾燥温度は、本発明のポリイミド成形体の黄変や透明性の低下を招くことがある。乾燥工程で使用される加熱方法としては、温風加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱、EB加熱などの方法が挙げられる。乾燥工程は空気雰囲気下でも行えるが、安全性及び酸化防止の観点から、不活性ガス雰囲気下で行うことが推奨される。不活性ガスとしては窒素、アルゴンなどが挙げられる。また、減圧下に乾燥を行うことも可能である。
【0044】
上記の剥離工程は、通常、基材上の該成形体を室温〜50℃程度まで冷却後に実施される。本発明のポリイミド溶液は接着性が高いので、剥離作業を容易に実施するため、本発明のポリイミド溶液を塗布する前に、必要に応じて基材へ離型剤を塗布してもよい。係る離型剤としては、植物油系、シリコン系、フッ素系などを挙げることができる。
【0045】
本発明のポリイミド組成物を用いて、上記のように形成された膜は基材に接着した状態になっているため、接着材の成分としても有効であり、本発明のポリイミド組成物を含む接着材は、電気・電子部品を接着して電気・電子部品装置とするのに好適であり、特に、半導体3次元実装時に使用される半導体ウェハ間の接着剤として好適である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。各実施例及び比較例における測定は以下の方法により求めた。
【0047】
[還元粘度:ηsp/C
30℃においてウベローデ粘度計を用いて、Eゾール溶媒(40質量部の1,1,2,2−テトラクロルエタンと、60質量部のフェノールとの混合物)10mLにポリマー0.12gを溶解させ、ポリイミド溶液の30℃における還元粘度(ηsp/C)を求めた。
【0048】
[溶解性]
室温にてポリイミドの溶解性評価を実施した。
◎:完全溶解
○:溶解(極微小の変化の微白濁)
△:微量の沈殿
X:変化なし
【0049】
[実施例1]
0.5Lのセパラタブルフラスコ中にトランス−1,4−シクロヘキサンジアミン(t−CHDA)2.8548質量部(0.025mol部)のN−メチル2−ピロリドン36.7571質量部/トルエン(和光純薬工業製)4.084質量部(質量比90:10)の混合溶媒にビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)7.3555質量部(0.025mol部)を仕込んだ。まず、室温において窒素雰囲気下、攪拌回転数50rpmで0.5hr攪拌しがら反応の発熱を確認し、その反応溶液を190℃まで6.5hrかけて加温し、留出する水はディーンスターク装置を用いて系外に除去した。反応中に留出した水の量は環化反応によるイミド結合生成の理論量どおりであり、ポリイミドの生成が確認された。その後、攪拌回転数150rpmで200℃まで0.5hrかけて昇温し、同温度で0.5hr保持させた後放冷し、反応溶液が80℃に下がったところで反応溶液を水/アセトン(体積比3/2)200質量部にあけ、析出した白色固体のポリイミドを濾集した。得られたポリイミドの還元粘度を測定し、かつ、該ポリイミド1質量部をm−クレゾール溶媒10質量部中に再溶解させポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液におけるポリイミドの溶解性を目視で評価した。また、得られたポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、80℃で1時間乾燥してポリイミド膜を形成した後、180℃で0.5時間、220℃で1時間熱処理を行うことにより18μm厚のポリイミド膜を得て、このポリイミド膜の色相や透明性を目視で評価した。上記の測定・評価結果を表1に示す。
【0050】
[実施例2]
再溶解させる有機溶剤をm−クレゾールからピリジンに変更した以外は実施例1と同様に操作を行った。得られたポリイミドの評価結果を表1に示した。
【0051】
[実施例3]
再溶解させる有機溶剤をm−クレゾールから、ピリジン/ベンジルアルコール/トリメチルベンゼンの質量比50:30:20の混合物に変更した以外は実施例1と同様に操作を行った。測定・評価結果を表1に示す。
【0052】
[実施例4]
再溶解させる有機溶剤をm−クレゾールから、ピリジン/ベンジルアルコール/トリメチルベンゼンの質量比40:35:25の混合物に変更した以外は実施例1と同様に操作を行った。測定・評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例5]
再溶解させる有機溶剤をm−クレゾールから、ピリジン/ベンジルアルコール/トリメチルベンゼンの質量比30:40:30の混合物に変更した以外は実施例1と同様に操作を行った。測定・評価結果を表1に示す。
【0054】
[実施例6]
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)をジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)に変更した以外は実施例1と同様に操作を行った。測定・評価結果を表1に示す。
【0055】
[実施例7]
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を、ピロメリットテトラカルボン酸二無水物(PMDA)に変更した以外は実施例1と同様に操作を行った。測定・評価結果を表1に示す。
【0056】
[実施例8]
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)に変更した以外は実施例1と同様に操作を行った。測定・評価結果を表1に示す。
【0057】
[比較例1]
0.5Lのセパラタブルフラスコ中にトランス−1,4−シクロヘキサンジアミン(CHDA)2.8548質量部(0.025mol部)のN−メチル2−ピロリドン40.842質量部(和光製)溶媒にビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)7.3555質量部(0.025mol部)を仕込んだ。形成された白色の錯体塩溶液をオイルバスにて120℃で10分間激しく攪拌しながら加熱すると、塩の一部が溶解はじめ、反応溶液をオイルバスからはずして室温で数時間攪拌することにより、透明で粘調なポリイミド前駆体溶液を得た。得られたポリイミド前駆体溶液を水/アセトン(体積比3/2)200質量部にあけ、析出した白色固体を濾集した。分子量の指標であるηsp/Cを測定し表1に示した。また、得られたポリイミド前駆体溶液をガラス基板に塗布し、80℃で1時間乾燥してポリイミド前駆体膜を形成した後、250℃で0.5時間、350℃で1時間、熱的イミド化を行うことにより15μm厚のポリイミド膜を得た。得られたポリイミド膜の色相や透明性を確認したが、表1に示したとおり黄色であり電気・電子部品などの用途には不適切なものであった。
【0058】
[比較例2]
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を1,4−ビス(アミンメチル)シクロヘキサン(シス、トランス混合物)に変更した以外は比較例1と同様に操作を行った。得られたポリイミド膜の色相および透明性を確認したが、表1に示したとおり黄色であり電気・電子部品などの用途には不適切なものであった。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のポリイミド溶液は、電気・電子部品分野で使用されているガラス基板の代替用として、液晶ディスプレー用、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用、電子ペーパー用、太陽電池用などのガラス基板代替用プラスチック基板、電子デバイスの電気絶縁膜、光学材料、太陽電池パネル等の保護フィルム、光導波路など種々の用途に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(上記一般式(1)において、Arは炭素数4から24の4価の芳香族基であり、Hと記された六員環はトランス−1,4−シクロヘキサンジイル基である。)
で示される繰り返し単位から構成され、還元粘度(ηsp/C)が1.0dL/g以上であるポリイミドが有機溶剤に溶解していることを特徴としているポリイミド溶液。
【請求項2】
ポリイミドの含有量が5〜50質量%である請求項1記載のポリイミド溶液。
【請求項3】
有機溶剤が、芳香族アルコール、芳香族炭化水素、ヘテロ環化合物及びフェノール性溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載のポリイミド溶液。
【請求項4】
芳香族アルコールがベンジルアルコールである請求項3に記載のポリイミド溶液。
【請求項5】
芳香族炭化水素がトリメチルベンゼンである請求項3に記載のポリイミド溶液。
【請求項6】
ヘテロ環化合物がピリジンである請求項3に記載のポリイミド溶液。
【請求項7】
フェノール性溶剤がm−クレゾールである請求項3に記載のポリイミド溶液。
【請求項8】
トランス−1,4−シクロヘキサンジアミンと、
下記一般式(2)、(3)及び(4)
【化2】

【化3】

【化4】

(上記一般式(2)、(3)及び(4)において、Arは炭素数4〜24の芳香族基である。上記一般式(3)において、X、X、X、およびXはそれぞれ独立にヒドロキシ基またはクロロ基である。上記一般式(4)において、XおよびXはそれぞれ独立にヒドロキシ基またはクロロ基である。)
で表される芳香族テトラカルボン酸類からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、有機溶剤中で重合反応させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリイミド溶液の製造方法。
【請求項9】
重合反応させた後、更に溶融熱処理することを特徴とする請求項8に記載のポリイミド溶液の製造方法。
【請求項10】
重合反応物からポリイミドを単離し、単離したポリイミドを更に有機溶剤に再溶解させることを特徴とする請求項8記載のポリイミド溶液の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜7記載のポリイミド溶液から得られる成形体。

【公開番号】特開2012−188614(P2012−188614A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55239(P2011−55239)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】