説明

ポリエステル樹脂、その製造方法、成形品用組成物及び成形品

【課題】耐衝撃性に優れた成形品を製造するために用いることができる、新規なポリエステル樹脂およびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂。フランジカルボン酸又はそのエステルを、エチレングリコールおよびジエチレングリコールと共重合する工程を有するポリエステル樹脂の製造方法。式中、R1は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種樹脂材料等に有用なポリエステル樹脂、その製造方法、成形品用組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリアクリレート樹脂系、ポリカーボネート樹脂系、ポリイミド樹脂系などに代表される高分子材料は、様々な産業用資材として広く利用されている。これらの汎用高分子材料は、耐熱性や耐衝撃性等の機械物性には優れているが、自然環境下ではほとんど分解しないため、埋設処理すると、半永久的に地中に残留する。
【0003】
一方、生分解性材料に近年注目が集まり、脂肪族ポリエステル樹脂などの生分解性樹脂の開発が活発に行われている。分解生成物の二酸化炭素は、もともと大気中にあった二酸化炭素を固定したものと考えられるため、植物由来樹脂はカーボンニュートラルな材料として注目されている。
【0004】
植物由来樹脂のうち、主にポリ乳酸について、OA・家電製品筐体、自動車部品、ボトル、フィルム、シート、食器等への応用が行われている。しかしながら、一般にこれらの用途では、高い耐衝撃性を必要とする場合が多い。現状では、耐衝撃性が非常に低いポリ乳酸を使用することは困難であり、実際には用途が限定されてきた。耐衝撃性が改善された植物由来樹脂は、様々な用途展開が可能なことから産業界からも強く要望されてきた。よって植物由来樹脂の耐衝撃性を改善するために様々な工夫がなされている。
【0005】
植物由来樹脂の耐衝撃性の改良として、具体的には植物由来材料を用いたポリエステル樹脂が報告されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−146153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ではフラン環を含む骨格構造を持ち、重合度を規定することにより、機械物性が改善された樹脂が得られている。しかし、特許文献1に記載される方法では、耐衝撃性の改善は必ずしも十分とは言えず、様々な用途に展開するためには耐衝撃性の一層の改善が求められる。
【0007】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性に優れた成形品を製造するために用いることができる、新規なポリエステル樹脂およびその製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、上記ポリエステル樹脂を用いることにより、耐衝撃性に優れた各種成形品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するポリエステル樹脂は、下記一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を有し、前記一般式(2)で表される構造単位を、一般式(1)および一般式(2)の合計に対して50.1モル%以上99.9モル%以下含有することを特徴とする。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。)
【0012】
【化2】

【0013】
また、上記の課題を解決するポリエステル樹脂は、下記一般式(1)および一般式(3)で表される構造単位を有することを特徴とする。
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R1は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、R2はアルキレン基を示す。mは整数を示し、2以上1140以下の範囲である。ただし、R2がエチレン基であり、かつm=2である場合を除く。)
また、上記の課題を解決する成形品用組成物は、上記のポリエステル樹脂を含むことを特徴とする。
【0018】
また、上記の課題を解決する成形品は、上記のポリエステル樹脂を含む成形品用組成物を成形してなることを特徴とする。
また、上記の課題を解決するポリエステル樹脂の製造方法は、フランジカルボン酸又はそのエステルを、エチレングリコールおよびジエチレングリコールと共重合する工程を有し、前記ジエチレングリコールの使用量が、フランジカルボン酸又はそのエステルに対し50.1モル%以上300モル%以下であることを特徴とする。
【0019】
また、上記の課題を解決するポリエステル樹脂の製造方法は、フランジカルボン酸又はそのエステルを、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールと共重合する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、耐衝撃性に優れ、各種成形品製造用材料に好適であるポリエステル樹脂およびその製造方法を提供できる。
また、本発明は、上記ポリエステル樹脂を用いることにより、耐衝撃性に優れた各種成形品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者は、鋭意検討した結果、所望の成分を共重合させることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、フラン環を有するポリエステル樹脂に関して、柔軟性を示すエーテル結合を導入することを特徴とする。
【0022】
ジオール成分としてジエチレングリコールを用いた場合、ポリエステル中のジオールのうち、ジエチレングリコール含有量が50.1モル%以上99.9モル%以下のとき、エーテル結合の柔軟性により耐衝撃性が改善されることが分かった。すなわち、ジカルボン酸成分としてフラン環を有し、さらにジオール成分のうち、ジエチレングリコール含有量が50.1モル%以上99.9モル%以下のとき、柔軟性を示すエーテル結合を有する構造を持つことで、耐衝撃性の改善されたポリエステル樹脂とすることができる知見を得た。
【0023】
また、ジカルボン酸成分としてフラン環を持つジカルボン酸を用い、ジオール成分としてポリアルキレンエーテルを導入することで耐衝撃性が改善されることが分かった。すなわち、ジカルボン酸成分としてフラン環を有し、さらに柔軟性を示すエーテル結合を有する構造を持つことで、耐衝撃性の改善されたポリエステル樹脂とすることができる知見を得た。
【0024】
また、上記ポリエステル樹脂を成形品用組成物として用いると、優れた耐衝撃性を持った成形品となることを見出し、かかる知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
本発明に係るポリエステル樹脂は、下記一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を有し、前記一般式(2)で表される構造単位を、一般式(1)および一般式(2)の合計に対して50.1モル%以上99.9モル%以下含有することを特徴とする。
【0025】
【化5】

【0026】
(式中、R1は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。)
【0027】
【化6】

【0028】
また、本発明に係ポリエステル樹脂は、下記一般式(1)および一般式(3)で表される構造単位を有することを特徴とする。
【0029】
【化7】

【0030】
(式中、R1は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。)
【0031】
【化8】

【0032】
(式中、R2はアルキレン基を示す。mは整数を示し、2以上1140以下の範囲である。ただし、R2がエチレン基であり、かつm=2である場合を除く。)
本発明にかかるポリエステル樹脂は、前記R1がエチレン基であることを特徴とする。
【0033】
本発明にかかるポリエステル樹脂は、前記R1がエチレン基であり、R2がエチレン基であることを特徴とする。
本発明に係る成形品用組成物は、上記のポリエステル樹脂を含むことを特徴とする。
【0034】
本発明に係る成形品は、上記のポリエステル樹脂を含む成形品用組成物を成形してなることを特徴とする。
本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法は、フランジカルボン酸又はそのエステルを、エチレングリコールおよびジエチレングリコールと共重合する工程を有し、前記ジエチレングリコールの使用量が、フランジカルボン酸又はそのエステルに対し50.1モル%以上300モル%以下であることを特徴とする。
【0035】
また、本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法は、フランジカルボン酸又はそのエステルを、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールと共重合する工程を有することを特徴とする。
【0036】
上記一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂は、柔軟性を示すエーテル結合を有する部分を含有し、これを用いて得られる成形体に高い耐衝撃性を付与する。
【0037】
また、上記一般式(1)および一般式(3)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂は、柔軟性を示すエーテル結合を有する部分を含有し、これを用いて得られる成形体に高い耐衝撃性を付与する。
【0038】
フラン環を有するジカルボン酸としては、2,5−フランジカルボン酸を原料として用いる。2,5−フランジカルボン酸はセルロースやグルコース,フルクトース、粘液酸などのバイオマスから公知の方法で変換して得たものを用いることができる。そのためフラン環を用いると、耐熱性に寄与する芳香族環として植物由来の材料を用いることができる。
【0039】
一般式(1)におけるR1は、それぞれ、芳香族炭化水素基、直鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基を示し、これらは置換基を有していてもよい。上記芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ビフェニル環及びビス(フェニル)アルカンの他、ナフタレン環、インデン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合環や、複素環の2価の基を挙げることができる。上記ビス(フェニル)アルカンとしては、例えば、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。一方、上記複素環としては、例えばフラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール等の五員環。ピラン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の六員環。インドール、カルバゾール、クマリン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、ベンゾチアゾール、キノリキサン、プリン等の縮合環を挙げることができる。
【0040】
上記直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基等を挙げることができる。これらのうち、エチレン基、プロピレン基及びn−ブチレン基の炭素数が2から4の直鎖状アルキレン基が好ましく、エチレン基およびn−ブチレン基を特に好ましいものとして挙げることができる。
【0041】
一般式(3)におけるR2はアルキレン基であり、エチレン基、プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基等を挙げることができる。これらのうち、エチレン基を特に好ましいものとして挙げることができる。
【0042】
一般式(3)におけるmは整数を示し、2以上1140以下の範囲である。
ただし、一般式(3)において、R2がエチレン基であり、かつm=2である場合を除く。
【0043】
本発明のポリエステル樹脂の分子量としては、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に溶解させたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、数平均分子量が1000以上160000以下、好ましくは1200以上140000以下の範囲が望ましい。この分子量の範囲では、優れた機械特性を示すともに、成型加工が容易であるため好ましい。
【0044】
本発明の一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂を合成するには、多価アルコール過剰下で、エチレングリコールおよびジエチレングリコールと、フランジカルボン酸又はそのエステルを縮重合させることにより得ることができる。
また、本発明の一般式(1)および一般式(3)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂を合成するには、多価アルコール過剰下で、エチレングリコールおよびポリアルキレンエーテルと、フランジカルボン酸又はそのエステルを縮重合させることにより得ることができる。
【0045】
フラン環を有するジカルボン酸として、具体的には、2,5−フランジカルボン酸、2,4−フランジカルボン酸、又は3,4−フランジカルボン酸を挙げることができる。特に、2,5−フランジカルボン酸を用いることが好ましい。2,5−フランジカルボン酸はセルロースやグルコース,フルクトース、粘液酸などのバイオマスから公知の方法で変換して得たものを用いることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0046】
また、フランジカルボン酸のエステルとしては、先に挙げたフラン環を有するジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル等を挙げることができる。具体的には2,5−フランジカルボン酸ジメチル、2,5−フランジカルボン酸ジエチル、2,5−フランジカルボン酸エチルメチル、2,5−フランジカルボン酸ジプロピル、2,5−フランジカルボン酸ジブチル、2,4−フランジカルボン酸ジメチル、2,4−フランジカルボン酸ジエチル、3,4−フランジカルボン酸ジメチル、3,4−フランジカルボン酸ジエチルなどを例示することができる。また、上記の混合物等も挙げることができる。
【0047】
また、多価アルコールとしては、下記の式(4)で示すものを挙げることができる。
【0048】
【化9】

【0049】
式(4)中、aは2以上の整数であってもよいが、一般式(1)から(3)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂を得るために、2を示すことが好ましい。式中、R’は、具体的には、一般式(1)から(3)中のR1、R2が示す基や、その置換基として具体的に例示した置換基と同じ置換基を有するR1、R2が示す基を挙げることができる。すなわち、R’は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。
【0050】
このような2価のアルコールとしては、具体的には、以下のものを例示することができる。鎖状又は環状脂肪族ジオールとしてエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール。ジヒドロキシベンゼンとして1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン。ビスフェノールとしてビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−スルホン。グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、糖類。ヒドロキシ安息香酸など。これらは適宜組み合わせて使用してもよい。
【0051】
これらのうち、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールが好ましい。
本発明の一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂を合成する時には、ジエチレングリコールを導入量に応じて用いることができる。また、エチレングリコールから重合過程の副生成物として、わずかにジエチレングリコールが生じることもある。
【0052】
本発明の一般式(1)および一般式(3)で表される構造単位を有するポリエステル樹脂を合成する時に用いるポリアルキレンエーテルとしては、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサンエーテル、ポリオクタンエーテル等やこれら2種以上からなる共重合物又は混合物等を挙げることができる。
【0053】
ポリアルキレンエーテルの重量平均分子量に関しては、200以上50,000以下の範囲であり、1,000以上40,000以下の範囲が好ましく、2,000以上30,000以下の範囲がより好ましい。
【0054】
ポリアルキレンエーテルの重量平均重合度に関しては、3以上1140以下の範囲であり、22以上910の範囲が好ましく、44以上680以下の範囲がより好ましい。
ジエチレングリコールまたはポリアルキレンエーテルと、上記2価アルコールとフランジカルボン酸の縮重合方法としては、これらを直接縮重合する方法が挙げられる。また、ジエチレングリコールまたはポリアルキレンエーテルと、上記2価アルコールとフランジカルボン酸とのエステルを合成した後、これを縮重合する方法(エステル交換法)等を挙げることができる。ジエチレングリコールまたはポリアルキレンエーテルと、上記2価アルコールとフランジカルボン酸を縮重合方法する方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等を挙げることができ、成形する成形品に応じて適宜選択することができる。重合温度、重合触媒、溶剤などの媒体等についてはそれぞれの重合方法により適宜選択することができる。
【0055】
ジエチレングリコールまたはポリアルキレンエーテルと、上記2価アルコールとフランジカルボン酸の縮重合方法としては、エステル化工程と、その後のエステル化合物の重縮合工程によることが好ましい。
【0056】
上記エステル化工程においては、ジエチレングリコールまたはポリアルキレンエーテルと、2価アルコールとフランジカルボン酸、触媒とを撹拌しながら徐々に110℃から200℃、好ましくは150℃から180℃に加熱し、エステル化合物を得る。
【0057】
ジエチレングリコールの使用量としては、モル比で、フランジカルボン酸又はそのエステルに対し、50.1モル%以上300モル%以下、好ましくは51モル%以上290モル%以下の範囲であることが好ましい。
【0058】
ポリアルキレンエーテルの使用量としては、モル比で、フランジカルボン酸又はそのエステルに対し、0.1モル%以上80モル%以下、好ましくは0.5モル%以上70モル%以下の範囲であることが好ましい。
【0059】
また、2価アルコールの使用量としては、フランジカルボン酸又はそのエステル及びのモル数に対し、2価アルコールが1倍から3倍のモル数であることが好ましい。過剰な2価アルコールや、重縮合反応が進行するにつれて生成する2価アルコールは、反応系を減圧下にすることで留去するか、または他の溶媒と共沸させ留去するか、または他の方法により反応系外へ除去することができる。
【0060】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法において、フランジカルボン酸又はそのエステル、ジエチレングリコールまたはポリアルキレンエーテル、および多価アルコール以外のその他のモノマーを用いることができる。
その他のモノマーとしてはジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸のような芳香環を有する脂肪族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ジグリコール酸などの脂肪族ジカルボン酸など、以上のジカルボン酸のエステルも挙げることができる。また、ヒドロキシカルボン酸成分として、p−ヒドロキシ安息香酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、グリコール酸、乳酸などを挙げることができる。また、ラクトン類としてカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0061】
脂肪族ジアミンとして、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン及びデカメチレンジアミンなどを挙げることができる。
【0062】
ヒドロキシルアミンとして、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノールなどを挙げることができる。
【0063】
芳香族ヒドロキシルアミン、芳香族ジアミン系化合物として、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノジフェノキシエタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン)などを挙げることができる。
【0064】
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ビニルナフタレン、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル化合物およびジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルシアヌレート等のアリル化合物も挙げることができる。
【0065】
これらは単独あるいは併用で使用してもよい。
また、その他のモノマーの添加量は、原料の合計量100重量部に対して50重量部以下、好ましくは5重量部以下が好ましい。
【0066】
触媒は、ジカルボン酸の自己触媒作用のために添加しなくとも反応は進行するが、反応の進行に伴いジカルボン酸の濃度が低下するため、添加することが好ましい。使用する触媒としては、金属酸化物や塩、スズ、鉛、チタン等の有機金属化合物や、塩化ハフニウム(IV)、塩化ハフニウム(IV)・(THF)等の四価のハフニウム化合物が好ましい。
【0067】
このエステル化工程の終点は、反応混合物が透明になった時点であり、容易に確認することができる。
その後の重縮合工程においては、反応系の温度を180℃から280℃、好ましくは180℃から240℃の範囲に加熱し、重縮合反応を開始させる。重縮合反応は真空下で行うことが好ましい。この重縮合に最適な触媒として、具体的には以下の例示のものを挙げることができる。鉛、亜鉛、マンガン、カルシウム、コバルト、マグネシウム等の酢酸塩や炭酸塩、又はマグネシウム、亜鉛、鉛、アンチモン等の金属酸化物やスズ、鉛、チタン等の有機金属化合物。また、両工程に有効な触媒としてチタンアルコキシドを用いることもできる。触媒の添加時期としては、エステル化工程と重縮合工程において、それぞれ別途に加えても、また、重縮合工程における触媒を当初から添加してもよい。触媒の添加に当たり、必要に応じてフランジカルボン酸と2価アルコールを加熱してもよく、複数回に分割して添加してもよい。
【0068】
エステル化に続く重縮合反応においては、エステル化工程で消費されなかった余剰の2価アルコールや副生成物として生成する2価アルコ−ルを反応系から除去することにより重縮合反応を促進させることができる。2価アルコールの除去は反応系を減圧して留去するか、又は他の溶媒と共沸させ留去する等の方法により反応系外へ除去する方法によることができる。また、重縮合反応により高分子を得た後に、公知の方法で固相重合を行うこともできる。
【0069】
このような重縮合工程において得られる本発明のポリエステル樹脂の数平均の重合度は5以上700以下、好ましくは6以上600以下である。
また、本発明のポリエステル樹脂の分子量としては、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に溶解させたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、数平均分子量が1000以上160000以下、好ましくは1500以上140000以下である。
【0070】
本発明のポリエステル樹脂は、一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を含むことを特徴とする。ポリエステル樹脂に含有され一般式(1)で表される構造単位の含有量は一般式(1)および一般式(2)の合計に対して、0.1モル%以上49.9モル%以下、好ましくは0.1モル%以上49.0モル%以下の範囲である。また、ポリエステル樹脂に含有され一般式(2)で表される構造単位の含有量は一般式(1)および一般式(2)の合計に対して、50.1モル%以上99.9モル%以下、好ましくは51.0モル%以上99.9モル%以下の範囲である。
【0071】
本発明のポリエステル樹脂は、一般式(1)および一般式(3)で表される構造単位を含むことを特徴とする。本発明のポリエステル樹脂について、一般式(1)および一般式(3)の含有量は特に制限されないが、ポリエステル樹脂に含有され一般式(1)で表される構造単位の含有量は一般式(1)および一般式(3)の合計に対して、20.0モル%以上99.9モル%以下が好ましく、特に30.0モル%以上99.5モル%以下の範囲であることが好ましい。また、ポリエステル樹脂に含有され一般式(3)で表される構造単位の含有量は一般式(1)および一般式(3)の合計に対して、0.1モル%以上80.0モル%以下が好ましく、特に0.5モル%以上70.0モル%以下の範囲であることが好ましい。
【0072】
本発明のポリエステル樹脂には、上記一般式(1)および一般式(2)あるいは一般式(1)および一般式(3)で表される構造単位以外の他の構造単位を含んでいてもよい。
他の構造単位としては、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸のような芳香環を有する脂肪族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ジグリコール酸などの脂肪族ジカルボン酸など、以上のジカルボン酸のエステルも挙げることができる。また、ヒドロキシカルボン酸成分として、p−ヒドロキシ安息香酸、4−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、グリコール酸、乳酸などを挙げることができる。また、ラクトン類としてカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0073】
脂肪族ジアミンとして、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン及びデカメチレンジアミンなどを挙げることができる。
【0074】
ヒドロキシルアミンとして、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノールなどを挙げることができる。
【0075】
芳香族ヒドロキシルアミン、芳香族ジアミン系化合物として、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノジフェノキシエタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン)などを挙げることができる。
【0076】
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ビニルナフタレン、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル化合物およびジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルシアヌレート等のアリル化合物も挙げることができる。
【0077】
ジカルボン酸、ジアミン、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類として、以上に挙げたものを導入するときには公知の重縮合反応を用いることができる。ビニル化合物、アリル化合物など以上に挙げたものを用いるときには公知のラジカル重合反応を用いるなど、他の構造単位を導入する方法に応じた重合方法によればよい。
【0078】
また、他の構造単位の導入は、フランジカルボン酸又はそのエステルと、多価アルコールの存在下で共重合するとき、共重合したのちのいずれであってもよい。
ポリエステル樹脂に含有され他の構造単位の含有量はポリエステル樹脂の合計量100重量部に対して50重量部以下、好ましくは5重量部以下の範囲である。
【0079】
本発明の成形品用組成物は、上記ポリエステル樹脂を含む。本発明の成形品用組成物に含有されるポリエステル樹脂の含有量は、50重量%以上100重量%以下が好ましい。
更に、本発明の成形品用組成物は上記ポリエステル樹脂の機能を阻害しない範囲で、必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。具体的には、難燃剤、着色剤、内部離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種フィラー等を挙げることができる。本発明の成形品用組成物に含有される添加剤の含有量は、0.5重量%以上50重量%以下が好ましい。
【0080】
上記成形品用組成物を用いて成形可能な成形品としては、耐衝撃性に優れることから、繊維・フィルム、シート、各種成形品等、広い分野における成形品を挙げることができる。例えば、ボトル等の容器や、パイプ、チューブ、シート、板、フィルム等である。特に、好ましい成形品としては、インクジェットプリンターのインクタンク、電子写真のトナー容器、包装用樹脂や複写機、プリンター等の事務機又はカメラの筐体等の構成材料を挙げることができる。
【0081】
上記成形品用組成物を用いた成形品の成形方法としては、熱可塑性樹脂の成形方法と同様の方法を使用挙げることができ、例えば、圧縮成形、押出成形又は射出成形等を利用することができる。
【実施例】
【0082】
本発明のポリエステル樹脂を、具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例のポリエステル樹脂の評価は以下の測定方法を用いて行った。
【0083】
[分子量測定]
分析機器:Waters社製アライアンス2695
検出器:示差屈折検出器
溶離液:5mMトリフルオロ酢酸ナトリウムの濃度のヘキサフルオロイソプロパノール溶液
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
分子量:PMMAの標準を用いて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、多分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0084】
[FT−IR測定]
装置名:株式会社堀場製作所製フーリエ変換赤外分光光度計FT−710
測定分解能:2cm−1
スキャン回数:10回
測定ゲイン:1
測定波数範囲:4000から400cm−1
【0085】
[NMR測定]
装置名:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置JNM−ECA−400
測定条件:1H−NMR
溶媒:CFCOOD
【0086】
[ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)測定]
装置名:ティー・エイ・インスツルメント製示差走査熱量測定装置Q1000
パン:プラチナパン
試料重量:3mg
昇温開始温度:30℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素
【0087】
[熱分解温度(Td)測定]
装置名:ティー・エイ・インスツルメント製熱重量測定装置Q500
パン:プラチナパン
試料重量:3mg
測定温度:50から500℃
昇温速度:50℃/min
測定モード:高分解能ダイナミック
雰囲気:窒素
熱分解温度;10%重量減少温度を熱分解温度とした。
【0088】
[試料成形]
試料を粉砕して、住友重機械工業株式会社製全電動射出成形機SE18DUを用いて、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの短冊試験片を成形した。
【0089】
[耐衝撃性の測定]
成型した短冊試験片について、株式会社東洋精機製作所製デジタル衝撃試験機DG−UBを用いて、シャルピー衝撃試験を行った。
試験方法:ISO179/1eA(試験片1号Aノッチ,打撃方向エッジワイズ)ハンマー:4J
【0090】
以下の実施例および比較例において、DEGはジエチレングリコール、PEFはポリエチレン−2,5−フランジカルボキシレート、PEGはポリエチレングリコールを示す。また、DEG、PEF、PEGの%はモル%を示す。
【0091】
実施例1
[ポリ(エチレン−2,5−フランジカルボキシレート)とポリ(ジエチレン−2,5−フランジカルボキシレート)からなるポリエステル樹脂(DEG(52%)−PEF)の調製]
温度計、SUS製撹拌羽根を取り付けた1LのSUS製反応容器を用意した。このSUS製反応容器に、2,5−フランジカルボン酸に対してジエチレングリコールが52モル%となるように仕込んだ。すなわち、2,5−フランジカルボン酸(312.2g)、エチレングリコール(309.4g)、ジエチレングリコール(110.9g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.59g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.59g)を加えた。
【0092】
SUS製反応容器内にて窒素を導入しながら撹拌を開始するとともに、マントルヒーターによりこれら内容物を昇温させた。内温が160℃に達した後、1時間保持し、さらに165℃で1時間、185℃で2時間保持した。
【0093】
185℃で減圧を開始した。約一時間かけて約133Paとし、さらに230℃まで昇温させた。約133Pa、230℃で4.5時間反応を続けた。DEG(52%)−PEFを調製した。
【0094】
実施例2
[ポリ(エチレン−2,5−フランジカルボキシレート)とポリ(ジエチレン−2,5−フランジカルボキシレート)からなるポリエステル樹脂(DEG(80%)−PEF)の調製]
原料の仕込み量が、2,5−フランジカルボン酸に対してジエチレングリコールが80モル%となるように仕込んだ。すなわち、2,5−フランジカルボン酸(312.2g)、エチレングリコール(274.5g)、ジエチレングリコール(170.6g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.61g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.61g)とした以外は実施例1の調製と同様に行った。DEG(80%)−PEFを調製した。
【0095】
実施例3
[ポリ(エチレン−2,5−フランジカルボキシレート)とポリ(ポリエチレン−2,5−フランジカルボキシレート)からなるポリエステル樹脂(PEG(4%)−PEF)の調製]
原料の仕込み量が、2,5−フランジカルボン酸に対してポリエチレングリコールが4モル%となるように仕込んだ。すなわち、2,5−フランジカルボン酸(327.8g)、エチレングリコール(387.8g)、重量平均分子量600のポリエチレングリコール(50.4g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.61g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.61g)とした以外は実施例1の調製と同様に行った。PEG(4%)−PEFを調製した。
【0096】
比較例1
[ポリエチレン−2,5−フランジカルボキシレート(PEF)の調製]
原料の仕込み量を2,5−フランジカルボン酸(312.2g)、エチレングリコール(374.3g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.55g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.55g)とした以外は実施例1の調製と同様に行った。PEFを調製した。
【0097】
比較例2
[ポリ(エチレン−2,5−フランジカルボキシレート)とポリ(ジエチレン−2,5−フランジカルボキシレート)からなるポリエステル樹脂(DEG(20%)−PEF)の調製]
原料の仕込み量が、2,5−フランジカルボン酸に対してジエチレングリコールが20モル%となるように仕込んだ。すなわち、2,5−フランジカルボン酸(312.2g)、エチレングリコール(349.3g)、ジエチレングリコール(42.65g)、モノブチルスズオキシド触媒(0.56g)、チタニウム−n−ブトキシド触媒(0.56g)とした以外は実施例1の調製と同様に行った。DEG(20%)−PEFを調製した。
【0098】
実施例1のDEG(52%)−PEFの1H−NMRスペクトルを図1に示す。
実施例2のDEG(80%)−PEFの1H−NMRスペクトルを図2に示す。
実施例3のPEG(4%)−PEFの1H−NMRスペクトルを図3に示す。
【0099】
比較例1のPEFの1H−NMRスペクトルを図4に示す。
比較例2のDEG(20%)−PEFの1H−NMRスペクトルを図5に示す。
実施例1のDEG(52%)−PEFのFT−IRスペクトルを図6に示す。
【0100】
実施例2のDEG(80%)−PEFのFT−IRスペクトルを図7に示す。
実施例3のPEG(4%)−PEFのFT−IRスペクトルを図8に示す。
比較例1のPEFのFT−IRスペクトルを図9に示す。
【0101】
比較例2のDEG(20%)−PEFのFT−IRスペクトルを図10に示す。
実施例1のDEG(52%)−PEFのGPCクロマトグラムを図11に示す。
実施例2のDEG(80%)−PEFのGPCクロマトグラムを図12に示す。
【0102】
実施例3のPEG(4%)−PEFのGPCクロマトグラムを図13に示す。
比較例1のPEFのGPCクロマトグラムを図14に示す。
比較例2のDEG(20%)−PEFのGPCクロマトグラムを図15に示す。
【0103】
次に、実施例1、2、3及び比較例1、2のガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、熱分解温度(Td)の測定結果、分子量測定結果、衝撃強度を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
実施例のポリエステル樹脂は比較例にくらべ衝撃強度の値が大きく、耐衝撃性が改善されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のポリエステル樹脂は、耐衝撃性に優れた成形品を製造するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施例1のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。
【図2】本発明の実施例2のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。
【図3】本発明の実施例3のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。
【図4】本発明の比較例1のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。
【図5】本発明の比較例2のポリエステル樹脂の1H−NMR測定によるスペクトルを示す図である。
【図6】本発明の実施例1のポリエステル樹脂のFT−IR測定によるスペクトルを示す図である。
【図7】本発明の実施例2のポリエステル樹脂のFT−IR測定によるスペクトルを示す図である。
【図8】本発明の実施例3のポリエステル樹脂のFT−IR測定によるスペクトルを示す図である。
【図9】本発明の比較例1のポリエステル樹脂のFT−IR測定によるスペクトルを示す図である。
【図10】本発明の比較例2のポリエステル樹脂のFT−IR測定によるスペクトルを示す図である。
【図11】本発明の実施例1のポリエステル樹脂のGPC測定によるクロマトグラムを示す図である。
【図12】本発明の実施例2のポリエステル樹脂のGPC測定によるクロマトグラムを示す図である。
【図13】本発明の実施例3のポリエステル樹脂のGPC測定によるクロマトグラムを示す図である。
【図14】本発明の比較例1のポリエステル樹脂のGPC測定によるクロマトグラムを示す図である。
【図15】本発明の比較例2のポリエステル樹脂のGPC測定によるクロマトグラムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を有し、前記一般式(2)で表される構造単位を、一般式(1)および一般式(2)の合計に対して50.1モル%以上99.9モル%以下含有することを特徴とするポリエステル樹脂。
【化1】

(式中、R1は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。)
【化2】

【請求項2】
前記R1がエチレン基であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
下記一般式(1)および一般式(3)で表される構造単位を有することを特徴とするポリエステル樹脂。
【化3】

(式中、R1は置換されていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい脂肪族炭化水素基を示す。)
【化4】

(式中、R2はアルキレン基を示す。mは整数を示し、2以上1140以下の範囲である。ただし、R2がエチレン基であり、かつm=2である場合を除く。)
【請求項4】
前記R1がエチレン基であり、R2がエチレン基であることを特徴とする請求項3に記載のポリエステル樹脂。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のポリエステル樹脂を含むことを特徴とする成形品用組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のポリエステル樹脂を含む成形品用組成物を成形してなることを特徴とする成形品。
【請求項7】
フランジカルボン酸又はそのエステルを、エチレングリコールおよびジエチレングリコールと共重合する工程を有し、前記ジエチレングリコールの使用量が、フランジカルボン酸又はそのエステルに対し50.1モル%以上300モル%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項8】
フランジカルボン酸又はそのエステルを、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールと共重合する工程を有することを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−197110(P2009−197110A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39360(P2008−39360)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】