説明

ポリエステル樹脂の製造方法

【課題】環状アセタール骨格を有するジオールを構成単位とする、溶融成形性、機械物性、色調が優れたポリエステル樹脂を、エステル交換法で製造する方法を提供する。
【解決手段】環状アセタール骨格を有するジオール、環状アセタール骨格を有しないジオール、ジカルボン酸のエステル化物とを原料とし、ジカルボン酸のエステル化物の反応転化率が75モル%以上となるまで主にアルコールを留出させてオリゴマーを製造する工程(1)と、工程(1)以下の圧力で開始し、最終的に300Pa以下、190〜300℃の条件にて、主にジオールを留出させてオリゴマーを高分子量化する工程(2)とを含み、工程(2)において特定の触媒を使用するポリエステル樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオール単位中の1〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂の製造方法であって、触媒としてアンチモン化合物又はゲルマニウム化合物を使用する製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある)は透明性、機械的性能、溶融安定性、耐溶剤性、保香性、リサイクル性等に優れるという特長を有し、フィルム、シート、中空容器等に広く利用されている。しかしながら耐熱性は必ずしも良好でないため、共重合による改質が広く行われている。
一般に環状アセタール骨格を有する化合物によってポリマーを改質すると環状アセタールの剛直な骨格やアセタール結合に由来して耐熱性や接着性、難燃性等が向上することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン(以下「SPG」ということがある)で変性されたPETは、ガラス転移点が高く耐熱性に優れるとの記載がなされている。
【0004】
我々は特許文献2においてSPGを共重合成分とする、ガラス転移温度が高く、透明性、機械強度に優れたポリエステル樹脂について開示した。更に我々は特許文献3においてSPGを共重合成分とするポリエステル樹脂の製造方法について開示した。
【特許文献1】米国特許第2,945,008号明細書
【特許文献2】特開2003−292593号公報
【特許文献3】特開2003−212981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、環状アセタール骨格を有するジオールを構成単位とする、溶融成形性、機械物性、色調が優れたポリエステル樹脂を、エステル交換法で製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、環状アセタール骨格を有するジオールを構成単位とするポリエステル樹脂を、エステル交換法で製造する際に重縮合触媒としてアンチモン化合物又はゲルマニウム化合物を所定量使用する事で、溶融成形性、機械物性、色調が優れたポリエステル樹脂を安定して製造できる事を見い出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、ジオール単位中の1〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂の製造方法であって、環状アセタール骨格を有するジオール、環状アセタール骨格を有しないジオール、ジカルボン酸のエステル化物とを原料とし、ジカルボン酸のエステル化物の反応転化率が75モル%以上となるまで主にアルコールを留出させてオリゴマーを製造する工程(1)と、工程(1)以下の圧力で開始し、最終的に300Pa以下、190〜300℃の条件にて、主にジオールを留出させてオリゴマーを高分子量化する工程(2)とを含み、工程(2)において触媒としてアンチモン化合物をジカルボン酸のエステル化物の物質量に対するアンチモン原子の物質量が0.005〜0.08%となるように使用する、又は工程(2)において触媒としてゲルマニウム化合物をジカルボン酸のエステル化物の物質量に対してゲルマニウム原子の物質量が0.008〜0.12%となるように使用するポリエステル樹脂の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、環状アセタール骨格を有するジオール、環状アセタール骨格を有しないジオール、ジカルボン酸のエステル化物を主たる原料としたポリエステル樹脂製造の際に、機械物性の良好なポリエステル樹脂を安定して製造する方法を提供するものであり、本発明の工業的意義は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明は環状アセタール骨格を有するジオール、環状アセタール骨格を有しないジオール、ジカルボン酸のエステル化物を原料とする。
【0010】
本発明の製造方法で使用する環状アセタール骨格を有するジオールは一般式(1):
【化1】

または一般式(2):
【化2】

で表される化合物が好ましい。一般式(1)と(2)において、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。RおよびRは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの構造異性体が好ましい。これらの構造異性体としては、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基が例示される。Rは炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はこれらの構造異性体が好ましい。これらの構造異性体としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基が例示される。一般式(1)及び(2)の化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン等が特に好ましい。
【0011】
また、本発明の製造方法で使用する環状アセタール骨格を有しないジオールとしては、特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類;前記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;及び前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等のジオールが例示できる。ポリエステル樹脂の機械強度、耐熱性、及びジオールの入手の容易さを考慮するとエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。なお、環状アセタール骨格を有しないジオールは上記したものの中から1種類を使用しても、2種類以上を使用しても良い。
【0012】
本発明の製造方法で使用するジカルボン酸のエステル化物としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−1,3−ジオキサン、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル等が例示できる。中でもこれらのジカルボン酸のメチルエステルが最も好ましい。ポリエステル樹脂の機械強度、耐熱性を考慮すると芳香族ジカルボン酸のメチルエステルが好ましく、ジカルボン酸の入手の容易さを考慮するとテレフタル酸、イソフタル酸、および2,6−ナフタレンジカルボン酸のメチルエステルが特に好ましい。なお、ジカルボン酸のエステル化物は上記したものの中から1種類を使用しても、2種類以上を使用しても良い。
【0013】
本発明では、溶融粘弾性や分子量などを調整するために、本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールなどのモノアルコールやトリメチロールプロパン、グリセリン、1,3,5−ペンタントリオール、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコール、安息香酸、プロピオン酸、酪酸などのモノカルボン酸のエステル化物、トリメリット酸、ピロメリット酸など多価カルボン酸のエステル化物、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシ安息香酸などのオキシ酸のエステル化物を含んでもよい。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、ポリエステル樹脂の製造に用いられる従来既知の製造装置をそのまま用いることができる。
【0014】
次に工程(1)について説明する。工程(1)は主にモノアルコールを留出させてオリゴマーを製造する工程である。使用するジオール(環状アセタール骨格を有するジオールと環状アセタール骨格を有しないジオール)のモル数はジカルボン酸のエステル化物のモル数に対して1倍以上10倍以下である。反応系内の温度は、好ましくは80〜250℃で行う。反応時の圧力は大気圧以上でも大気圧未満であっても良いが、好ましくは0.5〜6×10Paである。原料は反応開始前に一括で仕込んでも良いし、一部を反応途中に仕込んでもよい。
【0015】
工程(1)の反応は無触媒で行っても良いし、ポリエステル樹脂に対して5〜10000ppmのエステル交換触媒を用いても良い。エステル交換触媒は従来既知のものを用いることができ、特に限定されるものではないが、例えばナトリウム、マグネシウムのアルコキサイド、亜鉛、鉛、セリウム、カドミウム、マンガン、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、アルミニウム、チタニウム、スズ等の脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物、金属マグネシウムなどが挙げられる。これらは単独で用いることもできるし、複数のものを用いることもできる。
【0016】
エステル交換触媒としては上記した中でマンガンの化合物が好ましく、中でも酢酸マンガン四水和物が最も好ましい。酢酸マンガン四水和物の物質量が、ジカルボン酸のエステル化物の物質量に対して0.005〜0.1%であると得られるポリエステル樹脂の着色が抑制される。
【0017】
工程(1)におけるジカルボン酸のエステル化物の反応転化率は75モル%以上であり、好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。反応転化率が75モル%未満では、工程(2)における反応速度が小さくなる事があり好ましくない。
【0018】
本発明の工程(2)は工程(1)で得られたオリゴマーを減圧下、更にエステル交換反応により生成するアルコール、ジオール等を留出させて高分子量化する工程である。工程(2)は工程(1)におけるジカルボン酸のエステル化物の反応転化率が75モル%以上となった後開始する。
【0019】
工程(2)の開始時における反応物の温度は好ましくは190〜300℃で行われる。工程(2)でいう減圧下とは一般には大気圧未満のことを指すが、工程(2)以前の工程を大気圧以下で行っている場合には、更にそれ以下の圧力であることを意味する。工程(2)における圧力は徐々に下げられ、最終的には300Pa以下まで下げる必要がある。
【0020】
工程(2)はアンチモン化合物又はゲルマニウム化合物を触媒として行う必要がある。アンチモン化合物はアンチモン原子の物質量がジカルボン酸のエステル化物の物質量に対して0.005〜0.08%となるように使用する。アンチモン原子の量は好ましくは0.01〜0.04%である。アンチモン原子の量が上記範囲である事で、本発明の製造方法で得られるポリエステル樹脂は分子量多分散度が小さく射出成形、押出成形等の溶融成形性が良好なものとなり、耐衝撃性等の機械物性、色調等も良好なものとなる。アンチモン化合物としてはアンチモンの脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物等が挙げられ、中でも三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエトキシド、アンチモングリコキシドが好ましく、特には三酸化アンチモンが好ましい。
【0021】
工程(2)で使用する触媒はゲルマニウム化合物でも良い。ゲルマニウム化合物はゲルマニウム原子の物質量がジカルボン酸のエステル化物の物質量に対して0.008〜0.12%となるように使用する。ゲルマニウム原子の量は好ましくは0.015〜0.06%である。ゲルマニウム原子の量が上記範囲である事で、本発明の製造方法で得られるポリエステル樹脂は分子量多分散度が小さく射出成形、押出成形等の溶融成形性が良好なものとなり、耐衝撃性等の機械物性、色調等も良好なものとなる。ゲルマニウム化合物としてはゲルマニウムの脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物等が挙げられ、中でも二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトライソプロポキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、酢酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウムが好ましく、特には二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0022】
工程(2)はリン化合物を使用する必要がある。リン化合物はリン原子の物質量がジカルボン酸のエステル化物の物質量に対して0.01〜0.2%となるように使用する。リン原子の物質量は好ましくは0.02〜0.1%である。リン原子の量が上記範囲である事で、本発明の製造方法で得られるポリエステル樹脂は射出成形、押出成形等の溶融成形性や、耐衝撃性等の機械物性、色調等が良好なものとなる。リン化合物としてはリン酸エステル、亜リン酸エステルが挙げられ、中でもリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニルが好ましく、特にはリン酸トリエチルが好ましい。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂の製造方法では工程(2)の開始時のオリゴマー中に未反応のまま残存する環状アセタール骨格を有するジオールの量が10重量%以下である事が好ましく、5重量%以下である事が更に好ましい。環状アセタール骨格を有するジオールを反応させる為に環状アセタール骨格を有しないジオールを優先的に反応系外に留去する工程を工程(2)の開始前に行っても良い。
【0024】
また、本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、公知のエーテル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等を用いることが出来る。具体的には、エーテル化防止剤としてアミン化合物等が例示される。その他光安定剤、耐電防止剤、滑剤、酸化防止剤、離型剤等を加えても良い。
【実施例】
【0025】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例により限定するものではない。各評価は以下の様に行い、評価結果は表1、2に示した。
〔ポリエステル樹脂の評価〕
1.環状アセタール骨格を有するジオールの共重合率
得られたポリエステル樹脂中の環状アセタール骨格を有するジオールの共重合率をH−NMR測定にて算出した。測定装置は日本電子(株)製、NM−AL400で測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。
2.数平均分子量、分子量分布の評価
ポリエステル樹脂2mgを20gのクロロホルムに溶解し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定、標準ポリスチレンで検量し、数平均分子量(Mn)、分子量多分散度(Mw/Mn)を求めた。GPCは東ソー株式会社製カラムTSK GMHHR−Lを2本、TSK G5000HRを1本接続した東ソー株式会社製TOSOH 8020を用い、カラム温度40℃で測定した。溶離液はクロロホルムを1.0ml/minの流速で流し、UV検出器で測定した。
3.耐衝撃性の評価
射出成形で得られた3.2mm厚の成形体で評価した。先端が直径20mmの半球状をした、重量が19.4kgの錘を0.86mの高さから成形体に自由落下させた際に成形体を破壊する為に錘が消費したエネルギーを成形体の厚みで除して衝撃吸収エネルギーで表した。装置はPARKER CORPORATION社製 落錘衝撃測定試験機を使用した。
【0026】
実施例1〜8
充填塔式精留塔、分縮器、全縮器、コールドトラップ、攪拌翼、加熱装置、窒素導入管を備えた0.15mのポリエステル製造装置に表1、2に記載の量の原料、エステル交換触媒を仕込み、常圧、窒素雰囲気下で昇温した。内温150℃から160℃でエステル交換反応の副生成物であるメタノールの留出が始まり、主にメタノールを留出した。210℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。ジカルボン酸のエステル化物の反応転化率を85〜95モル%とした(工程(1))後、表1、2に記載量の重縮合触媒とリン酸トリエチルを加え、270℃まで昇温しながら100Pa以下の圧力となるまで徐々に減圧し、主に環状アセタール骨格を有しないジオールを留去した。徐々に反応物の粘度が上昇し、適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、ポリエステル樹脂を得た(工程(2))。
【0027】
表1中、原料を以下の様に略した。
テレフタル酸ジメチル:DMT
エチレングリコール:EG
3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン:SPG
5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン:DOG
酢酸マンガン四水和物:酢酸Mn
三酸化アンチモン:Sb
二酸化ゲルマニウム:GeO
リン酸トリエチル:TEP
【0028】
表1
実施例番号 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4
仕込み量(モル)
DMT 277.3 224.5 191.6 277.3
EG 471.4 379.5 383.1 471.4
SPG 27.7 69.6 95.8 −
DOG − − − 27.7
酢酸Mn 0.111 0.045 0.057 0.111
Sb 0.083 0.022 0.038 0.083
TEP 0.222 0.067 0.096 0.022
DMTに対する量(モル%)
SPG 10.0 31.0 50.0 10.0
酢酸Mn 0.04 0.02 0.03 0.04
Sb 0.03 0.01 0.02 0.03
TEP 0.08 0.03 0.05 0.08
DMTのモル数に対するジオール成分のモル数(仕込み時)
1.8 2.0 2.5 1.8
環状アセタール骨格を有するジオールの共重合率(モル%)
実測共重合率 10.0 30.5 48.5 10.0
理論共重合率 10.0 31.0 50.0 10.0
数平均分子量、分子量多分散度の評価
Mn 17500 17000 16500 17500
Mw/Mn 3.9 4.0 4.0 3.9
耐衝撃性の評価
衝撃吸収エネルギー(kJ/m)
45 48 35 45
【0029】
表2
実施例番号 実施例5 実施例6 実施例7 実施例8
仕込み量(モル)
DMT 277.3 224.5 191.6 277.3
EG 471.4 379.5 383.1 471.4
SPG 27.7 69.6 95.8 −
DOG − − − 27.7
酢酸Mn 0.111 0.045 0.057 0.111
GeO 0.125 0.034 0.057 0.125
TEP 0.222 0.067 0.096 0.022
DMTに対する量(モル%)
SPG 10.0 31.0 50.0 10.0
酢酸Mn 0.04 0.02 0.03 0.04
Sb 0.05 0.02 0.03 0.05
TEP 0.08 0.03 0.05 0.08
DMTのモル数に対するジオール成分のモル数(仕込み時)
1.8 2.0 2.5 1.8
環状アセタール骨格を有するジオールの共重合率(モル%)
実測共重合率 10.0 30.5 48.5 10.0
理論共重合率 10.0 31.0 50.0 10.0
数平均分子量、分子量多分散度の評価
Mn 17000 17000 16000 17000
Mw/Mn 3.9 4.1 4.0 3.8
耐衝撃性の評価
衝撃吸収エネルギー(kJ/m)
40 44 34 46

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオール単位中の1〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂の製造方法であって、環状アセタール骨格を有するジオール、環状アセタール骨格を有しないジオール、ジカルボン酸のエステル化物とを原料とし、ジカルボン酸のエステル化物の反応転化率が75モル%以上となるまで主にアルコールを留出させてオリゴマーを製造する工程(1)と、工程(1)以下の圧力で開始し、最終的に300Pa以下、190〜300℃の条件にて、主にジオールを留出させてオリゴマーを高分子量化する工程(2)とを含み、工程(2)において触媒としてアンチモン化合物をジカルボン酸のエステル化物の物質量に対してアンチモン原子の物質量が0.005〜0.08%となるように使用する、又は工程(2)において触媒としてゲルマニウム化合物をジカルボン酸のエステル化物の物質量に対してゲルマニウム原子の物質量が0.008〜0.12%となるように使用するポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
環状アセタール骨格を有するジオール単位が一般式(1):
【化1】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
または一般式(2):
【化2】

(式中、Rは前記と同様であり、Rは炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる炭化水素基を表す。)
で表されるジオールに由来するジオール単位である請求項1記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項3】
環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、または5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジオール単位である請求項1ないし2のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項4】
アンチモン化合物が、アンチモンの脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1ないし3のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項5】
アンチモン化合物が三酸化アンチモンである請求項1ないし4のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項6】
工程(1)において触媒としてマンガン化合物をジカルボン酸のエステル化物の物質量に対してマンガン原子の物質量が0.005〜0.1%となるように使用し、工程(2)においてアンチモン化合物の他にリン化合物をジカルボン酸のエステル化物の物質量に対してリン原子の物質量が0.01〜0.2%となるように使用する請求項1ないし5のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項7】
ゲルマニウム化合物が、ゲルマニウムの脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1ないし3のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項8】
ゲルマニウム化合物が二酸化ゲルマニウムである請求項1ないし4のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項9】
工程(1)において触媒としてマンガン化合物をジカルボン酸のエステル化物の物質量に対してマンガン原子の物質量が0.005〜0.1%となるように使用し、工程(2)においてゲルマニウム化合物の他にリン化合物をジカルボン酸のエステル化物の物質量に対してリン原子の物質量が0.01〜0.2%となるように使用する請求項1ないし5のいずれかに記載のポリエステル樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2008−169260(P2008−169260A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2050(P2007−2050)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】