説明

ポリカーボネートウィンドウのためのコーティング

化学線照射への暴露により重合する照射硬化性成分、熱への暴露により重合する熱硬化性バインダー成分、熱硬化性架橋成分、及びポリカーボネート基材をUV照射から保護するための少なくとも1種の添加剤を含む、少なくとも1種の紫外線遮断コーティングで被覆されたポリカーボネート基材を含む光学的に透明なポリカーボネート物品が開示されるUV遮断コーティングポリカーボネート物品の製造方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学線照射及び熱エネルギーへの暴露の両方によって硬化可能である、ポリカーボネート基材コーティング組成物に関する。
【0002】
この項における記載は、単に本発明の開示に関連する基礎的な情報を提供するのみであり、先行技術を構成するものではない。
【0003】
ポリカーボネートは、極めて優れた衝撃強度、優れた寸法安定性、ガラス様の透明性、優れた熱耐性、及び低温靱性を有する材料として広範囲に受け入れられていることが知られている。ポリカーボネートは、自動車及び運送、建物及び建設業、電気及び電子、電気通信、包装、医療、光学/眼科、及び光学材料を含む、広範囲の産業において広く用いられている。
【0004】
ポリカーボネートについての新たな応用は、自動車のウィンドウシステムである。ポリカーボネートは、低重心及び低燃費をもたらす、低分子量を備えている。更に、ガラス及びアクリルと比較し、ポリカーボネートの優れた強度及び衝撃抵抗は、事故又は盗難未遂の際の破損の可能性を最小限にする。
【0005】
しかし、ポリカーボネートをガラス代替として用いる場合、ポリカーボネートは、環境の影響に対して耐久性でなければならない(すなわち、耐候性又は耐候安定性)。ウィンドウの用途に用いる場合、ポリカーボネートについては、厳密な光透過性の要件をも満たさなければならず、ポリカーボネートガラス代替は、ガラスの光学特性に厳密に適合しなければならない。紫外線(UV)照射に暴露されることが、ポリカーボネートの黄変、黒ずみ、及び白亜化を引き起こす場合、このような照射からの分解に対する耐性の上昇も、このような応用に望ましい。
【0006】
照射分解を最小限にするため、ポリカーボネートにUV安定剤を取り込むための種々の方法が、従来より試みられている。いくつかの応用のため、UV安定剤をポリカーボネートに機械的に取り込むことによって、UV耐性を達成しようとされてきた。物理的性質、例えば着色及び光透過性に不利に影響する前に、ポリカーボネートに取り込むことのできるUV安定剤の最大量があることがわかった。これは、ポリカーボネートに取り込むことのできるUV安定剤量における限定要素である。
【0007】
更に、UV安定剤の分子構造は、ポリカーボネートの分子構造と非常に異なる場合があるので、UV安定剤は、ポリカーボネート材料と適合しない場合がある。
【0008】
ポリカーボネートにUV安定剤を取り込むための別の手段は、UVを吸収する表面コーティング又はつや出し剤の使用である。これらのコーティングはUV吸収剤であり、ポリカーボネート基材をUV照射から保護しなければならないだけでなく、このようなコーティングは、ポリカーボネート基材に対して、優れた光透過性、長期耐候安定性、及び付着性を有していなければならない。UV吸収のためのコーティングは、好ましくは、例えば噴射法によって容易に塗布される。この方法のコーティングは、ポリカーボネート基材に対する付着性を向上させるための中間体プライマーコーティングを必要とする。従って、ポリカーボネートへの直接の良好な付着性は、オルガノシリコンプラズマコーティング等の引っかき抵抗性の向上のための更なるコーティングと同様、非常に望ましい。
【0009】
従って、UV吸収表面コーティングを通じたポリカーボネート物品の耐候性を改良することを持続する興味がある。
【0010】
本発明のポリカーボネート物品及び方法は、前記必要性に取り組んでいる。ポリカーボネート物品は、化学線照射への暴露により重合する照射硬化性成分、熱暴露により重合する熱硬化性バインダー成分、熱硬化性架橋成分、及びポリカーボネート基材をUV照射から保護するための少なくとも1種の添加剤を含む、少なくとも1種の紫外線遮断コーティング組成物でコーティングされたポリカーボネート基材を含む。前記物品は、実質的に清澄であり、かつ透明であり、自動車の窓として用いる場合に、光透過性及び耐候性について適用できる水準に適合する。
【0011】
紫外線遮断コーティングでコーティングされた、光学的に透明なポリカーボネート物品を製造する方法は、ポリカーボネート基材にコーティングを塗布することを含む。コーティングは種々の方法によって塗布することができ、特定の実施態様においては、噴霧技術によって塗布してもよい。コーティングは、コーティングが、化学線照射及び熱エネルギーによって硬化し得ることを意味する、二重硬化コーティングである。追加のUV吸収コーティング又は傷防止コーティングのような他のコーティングを塗布してもよい。
【0012】
驚くべきことに、本発明の方法によって得られたポリカーボネート物品が、極めて優れた光透過性を有し、本発明のコーティングされたポリカーボネート物品の耐候性が優れていることがわかった。前記物品は、予想外の優れた基材/コーティング付着性、及びコーティング/コーティング付着性を示し、コーティングを促進する中間接着の必要性を解消する。更に、本発明のコーティングされた物品及び基材は、極めて優れた亀裂抵抗、及び強化された耐久性を有している。
【0013】
本明細書で用いられる場合、単数は、そのアイテムの「少なくとも1」のものが存在し、可能な場合には、複数のそのようなアイテムが存在することを示す。値に対して適用される場合、「約」は、計算又は測定が値におけるわずかな不正確を許容することを示す(値における正確さへのいくらかの接近を伴う;おおよそ、又は値にほど近い;ほぼ)。ある理由のために、「約」によってもたらされる不正確が、この通常の意味で当該技術分野において理解されない場合には、本明細書で用いられる場合、「約」は値における5%以下の可能な変動を示す。
【0014】
更なる適用領域は、本明細書に提供される詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明及び特定の実施例が説明の目的のみを意図し、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるべきである。
【0015】
以下の詳細な説明は、事実上、単に具体例であり、本発明の開示、用途又は使用を限定することを意図しない。
【0016】
本発明は、ポリカーボネート基材、及び少なくとも1種のUV吸収コーティングを含む物品を提供する。ポリカーボネート基材は、光学的に透明であってもよく、光学的に清澄であってもよい。本発明の非限定的な具体例には、自動車の窓、ヘッドランプ、ミラー、レンズを含む物品、又は、一般的に光学的に清澄なガラスを含む他の物品が含まれる。特に、本発明のポリカーボネート物品は自動車のウィンドウシステムであってもよい。
【0017】
適切なポリカーボネート材料には、当該技術分野において周知のポリカーボネート材料が含まれるが、これらに限定されない。ポリカーボネート材料は、それらの優れた物理的、機械的、及び化学的性質のために、本発明の自動車の窓のための透明基材として好ましい。
【0018】
本発明との関連においてポリカーボネートは、脂肪族又は芳香族カーボネートポリマーであってもよい。一般に、本発明のポリカーボネートはホモポリカーボネート又はコポリカーボネートであってもよく、それらが、1種以上のジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素を用いて合成することができ、直鎖状でも分岐鎖状であってもよいことを意味する。芳香族ポリエステル−カーボネートと呼ばれる場合がある、分子鎖中に組み入れられた炭酸の酸基及び芳香族ジカルボン酸の酸基の両方を含むポリカーボネートは、ポリカーボネートの総称でも要約される。「ポリカーボネート」なる用語は、本明細書において、ポリカーボネートと、ポリエステル及び衝撃改質剤のような種々の他の材料との透明なポリマーブレンドを更に含むことを意味する。
【0019】
透明な基材を形成するために適したポリカーボネートは当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許第4,200,681号、第4,842,941号、及び第4,210,699号に開示されている。このようなポリマーは、一般に、式
【化1】

[式中、Rは二価フェノールの二価の基である]の繰り返し単位を含む。典型的な、二価フェノールの二価の基は、式
【化2】

のビスフェノールAとしても知られている、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンの基である。
【0020】
本発明の範囲内のポリカーボネートは、いくつかの周知の方法によって製造することができる。本明細書における方法は、具体例として、米国特許第5,156,882号及び第6,5488,146号、及び"Polycarbonates"in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,volume 11, 1988, second edition, 1988 pages 648−718に組み込まれている。
【0021】
例えば、ジヒドロキシル化合物を含む炭酸エステルのエステル交換によるポリカーボネートの製造は、当該技術分野において周知である。エステル交換は、ビスフェノールAのホモポリカーボネートの製造に特に適している。この目的のために、ビスフェノールAを、炭酸エステル、好ましくはジフェニルカーボネートとエステル交換する。エステル交換によりポリカーボネートを製造するための方法は、ビスフェノールA、及び共重合における関係物質としての更なるジヒドロキシ−置換芳香族炭化水素化合物をベースとするコポリカーボネートの製造にも適している。
【0022】
エステル交換によるポリカーボネートの製造においては、共反応物質(ジヒドロキシ化合物、及び炭酸エステル、及び任意の追加の補助的物質、及び分岐剤のような添加剤)は、一般に、好ましくはエステル交換触媒、又は数種のエステル交換触媒の組み合わせを添加し、炭酸エステルからヒドロキシル化合物を分離しながら、多段階の反応において一緒に反応する。通常、用いられる炭酸エステルがジフェニルカーボネートである場合、分離されるヒドロキシル化合物はフェノールである。
【0023】
更なる非限定的具体例として、ポリカーボネートポリマーは、1種以上の二価フェノールを、ホスゲン又は他のハロゲン化カルボニルのようなカーボネート前駆体と反応させることによって製造することができる。また、1種以上の二価フェノールは、ハロホルメート又はカーボネートエステルのようなカーボネート前駆体と反応し得る。
【0024】
添加剤は、ポリカーボネート物品の光学的透明性に有意に影響しないので、本発明のポリカーボネートは、更に、充填材、可塑剤、淡彩添加剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0025】
本発明の物品のために有用なポリカーボネートの非限定的な具体例は、Bayer MaterialScience社によって製造されるMAKROLON(登録商標)、General Electric Company社によって製造されるLEXAN(登録商標)である。一般に、ポリカーボネートの種類又は組成物の選択は、最終的に、コーティングされる物品について意図される用途によって決定される。
【0026】
本発明のポリカーボネート基材は、微孔性、多孔性、又は発泡性ポリカーボネートと対照的に固体であることを理解すべきである。本発明のポリカーボネート物品の硬さは光学的透明性を促進する。
【0027】
本発明のポリカーボネート物品は、続いて硬化し、ポリカーボネート物品上にUV遮断コーティングをもたらす「二重硬化」コーティング組成物でコーティングされている。本明細書で定義される場合、「二重硬化」は、架橋度を達成し、所望の性能特性を達成するために、化学線照射及び熱エネルギーへの暴露を必要とする硬化性コーティング組成物を意味する。従って、一態様においては、本発明のコーティング組成物は、いくらかの電磁放射スペクトルへの暴露によって少なくとも部分的に硬化又は重合可能である。本発明の他の態様においては、本発明のコーティング組成物は、熱又は熱エネルギーへの暴露によって、少なくとも部分的に熱硬化又は重合可能である。コーティングは、実質的に清澄、かつ透明であることが好ましい。
【0028】
照射硬化及び熱硬化は、連続的又は同時に起こってもよい。好ましい実施態様においては、本発明のコーティング組成物は、第一段階の硬化、次いで第二段階の硬化を受ける。照射硬化又は熱硬化のいずれが最初に起こってもよい。最も好ましい実施態様においては、本発明のコーティング組成物は、最初に化学照射、特にUV照射を受け、次いで、第二段階の硬化を受け、すでに化学照射を受けているコーティング組成物が熱硬化を受ける。
【0029】
第二段階の硬化を第一段階の直後に続ける必要がなく、次に塗布するコーティングを1層以上塗布した後に実施してもよいことは本発明の範囲内である。例えば、本発明の照射硬化したコーティングに1種以上の追加のコーティング組成物を塗布し、次いで、追加的に塗布した1層以上のコーティングを本発明の照射硬化したコーティングと一緒に同時に熱で硬化させることは本発明の範囲内である。
【0030】
本明細書で用いられる場合、化学線照射は、500nm未満の波長を有するエネルギー、及び電子線のような粒子線を意味する。好ましい化学線は、180〜450nm、すなわちUV領域における波長を有する。更に好ましくは、化学線照射は、225〜450nmの波長を有するUV照射である。最も好ましい化学線照射は、250〜425nmの波長を有するUV照射である。
【0031】
本明細書で用いられる場合、熱又は熱エネルギーは、分子振動又は特定のタイプの照射のいずれかによる接触によるエネルギーの伝達を意味する。
【0032】
本明細書で用いられる場合、照射により伝達される熱エネルギーは、一般に赤外(IR)又は近赤外(NIR)、すなわち、約800nm〜10-3mの波長を有するエネルギーとして記述される電磁エネルギーの使用を意味する。
【0033】
本明細書で用いられる場合、熱は、対流又は伝導によって伝達されるエネルギーをも包含する。対流は、加熱された液体又は気体が上昇し、冷却された部分が低い位置に移動することによる熱の伝達を意味する。伝導は、物質又はエネルギーの伝達として定義することができる。対流による熱エネルギーの伝達が特に好ましい。
【0034】
本発明のコーティング組成物は、少なくとも4種類の成分、すなわち、化学線照射、特にUV照射への暴露により重合する照射硬化性成分(a1)、熱暴露により重合する熱硬化性バインダー成分(a2)、1分子あたり少なくとも2個のイソシアネート基を有する熱硬化性架橋成分(a3)、及び紫外線照射を吸収するか、伝達を防止するための少なくとも1種の添加剤(a4)を含む。
【0035】
照射硬化性成分(a1)は、1分子あたり、平均少なくとも2個の官能基、好ましくは少なくとも3個の官能基を含む。それぞれの官能基は、架橋するために、好ましくは、化学線照射、特にUV照射への暴露によって活性化可能である少なくとも1個の結合を有している。特に好ましい実施態様においては、それぞれの官能基は、UVで活性化可能な結合を1個有している。
【0036】
好ましい実施態様においては、本発明の照射硬化性成分(a1)は、1分子あたり平均6個以下の官能基、最も好ましくは、1分子あたり平均5個以下の官能基を有している。
【0037】
化学線照射、特にUV照射で活性化可能であり得る適切な結合の具体例は、炭素−水素単結合、炭素−炭素単結合、炭素−酸素単結合、炭素−窒素単結合、炭素−リン単結合、炭素−ケイ素単結合、炭素−炭素二重結合、炭素−酸素二重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−リン二重結合、炭素−ケイ素二重結合、又は炭素−炭素三重結合である。これらの中でも、二重結合が好ましく、炭素−炭素二重結合が最も好ましい。
【0038】
非常に適切な炭素−炭素二重結合は、例えば、(メタ)アクリレート基、エタクリレート基、クロトネート基、シンナメート基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、エテニルアリーレン基、ジシクロペンタジエニル基、ノルボルネニル基、イソプレニル基、イソプロペニル基、アリル基、ブテニル基、エテニルアリーレンエーテル基、ジシクロペンタジエニルエーテル基、ノルボルネニルエーテル基、イソプレニルエーテル基、イソプロペニルエーテル基、アリルエーテル基、ブテニルエーテル基、エテニルアリーレンエステル基、ジシクロペンタジエニルエステル基、ノルボルネニルエステル基、イソプレニルエステル基、イソプロペニルエステル基、アリルエステル基及びブテニルエステル基の少なくとも1種に存在する。(メタ)アクリル及び(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレート、並びにアクリル及びメタクリルを意味することが理解されるであろう。これらの中で、(メタ)アクリレート基が好ましく、アクリレート基が最も好ましい。
【0039】
照射硬化性成分(a1)は、熱硬化性架橋成分(a3)のイソシアネート基と反応性である少なくとも1個の官能基を更に含んでいてもよい。
【0040】
適切なイソシアネート−反応性基の具体例には、チオール基、一級アミノ基、二級アミノ基、イミノ基、及びヒドロキシル基が含まれるが、これらに限定されず、ヒドロキシル基が最も好ましい。
【0041】
照射硬化性成分(a1)は、ヒドロキシル反応性官能基である、少なくとも1個の官能基を更に有していてもよい。適切なヒドロキシル反応性官能基の具体例には、イソシアネート、アミノプラスト、エポキシ基、シラン基、環状無水物、及び環状ラクトンが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
照射硬化性成分(a1)は、オリゴマー又はポリマーであってもよい。本発明との関連で、オリゴマーは、一般に、平均2〜15個のモノマー単位を含む化合物である。それとは対照的に、ポリマーは、一般に、平均10個以上のモノマー単位を含む化合物である。このような化合物は、バインダー又は樹脂と呼んでもよい。それとは対照的に、本発明との関連で、低分子量の化合物は、実質的に1個のみの基本的構造又はモノマー単位のみに由来する化合物を意味する。この種の化合物は反応性希釈剤と呼んでもよく、任意の反応性希釈剤成分(a5)に関して以下に検討する。
【0043】
照射硬化性成分(a1)は一般に、500〜50,000、好ましくは1000〜5000の数平均分子量を有する。本発明の好ましい態様においては、照射硬化性成分(a1)とあらゆる任意の反応性希釈剤(a5)との合計は、好ましくは400〜2000、更に好ましくは500〜900の二重結合当量質量を有する。更に、照射硬化性成分(a1)とあらゆる任意の反応性希釈剤(a5)との組み合わせは、23℃で、好ましくは250〜11,000mPasの粘度を有する。
【0044】
照射硬化性成分(a1)は、各場合、本発明のコーティング組成物の塗膜形成成分の不揮発性固体の総量を基準とし、1〜50質量%、好ましくは3〜45質量%、最も好ましくは5〜20質量%の量で用いることができる。本明細書で用いられる場合、塗膜形成成分は、照射硬化性成分(a1)、熱硬化性バインダー成分(a2)、熱硬化性架橋成分(a3)、任意の反応性希釈剤(a5)、及び成分(a1)、(a2)、又は(a3)のいずれかと化学的に反応して、結果として重合ネットワークの中に入り込む、あらゆる他の単量体、オリゴマー、又はポリマー成分を意味する。
【0045】
照射硬化性成分(a1)として用いるのに適したバインダー又は樹脂の具体例には、(メタ)アクリロイル官能(メタ)アクリルコポリマー、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アミノアクリレート、メラミンアクリレート、シリコンアクリレート及びホスファゼンアクリレート、対応する(メタ)アクリレート、ビニルエーテル及びビニルエステルのオリゴマー及び/又はポリマーのクラスが含まれるが、これらに限定されない。しかし、アクリル及びアクリレート種が、メタクリル及びメタアクリレート種よりも好ましい。
【0046】
照射硬化性成分(a1)は、好ましくは、芳香族構造単位を含まない。好ましくは、ウレタン(メタ)アクリレート、ホスファゼン(メタ)アクリレート及び/又はポリエステル(メタ)アクリレートが用いられ、ウレタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタンアクリレートが最も好ましい。
【0047】
照射硬化性成分(a1)として用いるのに適したウレタン(メタ)アクリレートは、ジイソシアネート又はポリイソシアネートを、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン、ジチオール、ポリチオール、及びアルカノールアミンの少なくとも1種である鎖伸長剤と反応させ、次いで、残りの遊離イソシアネート基を、少なくとも1種のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、又は1種以上のエチレン系不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルと反応させることによって得ることができる。この場合における、鎖伸長剤、ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート、及びヒドロキシルアルキルエステルの量は、好ましくは、1)前記伸長剤の反応性基(ヒドロキシル、アミノ及び/又はメルカプチル基)に対するイソシアネート(NCO)基の当量比が3:1〜1:2、最も好ましくは2:1である、2)前記エチレン系不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルのヒドロキシル(OH)基が、イソシアネートと鎖伸長剤から形成されたプレポリマーの残存遊離イソシアネート基に対して化学量論的であるように選択される。
【0048】
照射硬化性成分(a1)として用いるのに適したウレタン(メタ)アクリレートは、最初にジイソシアネート又はポリイソシアネートのいくらかのイソシアネート基を、少なくとも1種のヒドロキシアルキルエステルと反応させ、次いで、残りのイソシアネート基を鎖伸長剤と反応させることによって製造することも可能である。鎖伸長剤、イソシアネート、及びヒドロキシアルキルエステルの量は、ヒドロキシアルキルエステルの反応基に対するNCO基の当量比が3:1〜1:2、好ましくは2:1であり、鎖伸長剤のOH基に対する残存NCO基の当量比が1:1であるようにも選択すべきである。
【0049】
他の反応メカニズムに由来するウレタン(メタ)アクリレートも、本発明において照射硬化性成分(a1)として用いるのに適切であり得ることは理解されるであろう。例えば、ジイソシアネートのイソシアネート基のいくらかをジオールと反応させた後に、イソシアネート基の更なる部分をヒドロキシアルキルエステルと反応させ、次いで残りのイソシアネート基をジアミンと反応させることができる。
【0050】
照射硬化性成分(a1)として用いるのに適したウレタン(メタ)アクリレートの具体例には、Croda Resins Ltd(イギリス、ケント州)のCRODAMER(登録商標)UVU 300、Rahn Chemie(スイス)のGENOMER(登録商標)4302、4235、4297、又は4316、UCB(ベルギー、ドロゲンボス)のEBECRYL(登録商標)284、294、IRR 351、5129、又は1290、Bayer AG(ドイツ)のROSKYDAL(登録商標)LS 2989又はLS 2545又はV94−504、Vianova(オーストリア)のVIAKTIN(登録商標)VTE 6160、又はBASF AGのLAROMER(登録商標)8861のような、材料の分野で市販されている、多官能性脂肪族ウレタンアクリレート、及びそれを修飾した実験製品が含まれる。
【0051】
照射硬化性成分(a1)として用いるのに適した、ヒドロキシル含有ウレタン(メタ)アクリレートは、米国特許第4,634,602A号及び米国特許第4,424,252A号に開示されている。適切なポリホスファゼン(メタ)アクリレートの具体例は、出光(日本)のホスファゼンジメタクリレートである。
【0052】
前記コーティング材料は、少なくとも2個のイソシアネート−反応性基を含む、少なくとも1種の熱硬化性バインダー成分(a2)を更に含む。適切なイソシアネート反応性基の具体例は、照射硬化性成分(a1)に関して前述したものである。最も好ましくは、イソシアネート反応性基はヒドロキシル基である。
【0053】
固体質量によるバインダー成分(a2)の少なくとも5%〜100%は成分(X)である。成分(X)は、少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基、0℃未満のガラス転移温度(Tg)、及び1当量あたり225グラムを超える当量質量を有するポリマーである。好ましくは、ホモポリマーのTgは−20℃未満であり、最も好ましくは−50℃未満である。好ましくは、当量質量は265を超える。好ましくは、成分(X)は、ポリエーテルジオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルジオール及びポリエステルポリオールの少なくとも1種である。好ましくは、量は20%〜40%である。
【0054】
ポリエーテルジオールの具体例には、ポリオキシアルキレンが含まれるが、これに限定されない。ポリオキシアルキレンの具体例には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びポリテトラヒドロフランが含まれるが、これらに限定されない。一般に、ポリエーテルジオール中には、少なくとも4個の繰り返し単位又はモノマー単位がある。好ましくは、7〜50個の繰り返し単位がある。
【0055】
ポリエーテルポリオールの具体例には、BASFからLUPRANOL(登録商標)、PLURACOL(登録商標)、PLURONIC(登録商標)及びTETRONIC(登録商標)の商標で、BayerからARCOL(登録商標)、DESMOPHEN(登録商標)及びMULTRANOL(登録商標)の商標で、DowからVORANOL(登録商標)の商標で、E.R.CarpenterからCARPOL(登録商標)の商標で、Hannam,KoreaからPORANOL(登録商標)の商標で、及びKorea PolyolからKONIX(登録商標)の商標で市販されているポリエーテルポリオールが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
適切なポリエステルジオールの具体例には、ポリラクトン(例えば、ポリ(ε−カプロラクトン))及び脂肪酸二量体、イソフタル酸、及び1,6−ヘキサンジオール由来のポリエステルが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、ポリエステルジオールは、Dow ChemicalのTONE(登録商標)201又はTONE(登録商標)301として得られるポリ(ε−カプロラクトン)である。一般に、ポリエステルジオール又はトリオール中には少なくとも4個の繰り返し単位がある。好ましくは、4〜50個の繰り返し単位がある。ポリエステルジオールの具体例は、参考として本明細書に組み込まれる米国特許第5,610,224号に見ることができる。
【0057】
ポリエステルポリオールは、3個以上のOH基を有するポリオールである、より高い官能性ポリオールのラクトン伸長物から製造することができる。ポリエステルポリオールの具体例は、ペンタエリスリトールのε−カプロラクトン伸長物である。一般に、ポリオールにはOH基1個あたり平均で少なくとも2個のラクトンモノマー単位がある。好ましくは、OH1個あたり平均2〜25個のラクトンがある。このポリエステルポリオールは、低分子量のアルコールと、例えば、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、これらの酸の無水物、及びこれらの酸及び/又は酸無水物の混合物のような多塩基性カルボン酸とから製造することができる。ポリエステルポリオールの製造に適したポリオールには、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール、エチルブチルプロパンジオール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、並びにこれらの組み合わせのような多価アルコールが含まれるが、これらに限定されない。所望であれば、前記ポリオール成分は、例えば、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、及びエトキシル化及びプロポキシル化フェノールのような一価アルコールを少量含有していてもよい。他の実施態様においては、ポリエステルポリオールは、ラクトンとの反応によって修飾され得る。ポリエステルジオールの更なる具体例は、いずれも参考として本明細書に組み込まれる米国特許第6,436,477号及び5,610,224号に見ることができる。
【0058】
ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール又はトリオール、及びポリエステルポリオールの少なくとも1種をコーティング組成物中に少なくとも5%含有させることにより、このコーティング組成物から製造されるコーティングの柔軟性が、それらを含有しないコーティング組成物から製造されるコーティングの柔軟性よりも高くなる。柔軟性は、8mm×4mm×0.04mmのフィルムを0.0074秒-1の速度で引き延ばすことによって測定される、伸長%により測定される。その測定は、Rheometric Scientific DMTA Vを用いて、室温で実施される。この方法は、Loren Hill, Progress in Organic Coatings, Volume 24, 1994, page 147及びMark Nichols, Polymer Degradation and Stabilization, Volume 60, 1998, page 291に開示されている。
【0059】
少なくとも1種の熱硬化性バインダー成分(a2)は、少なくとも2個のイソシアネート−反応性基を有するべきであるが、2個以上のイソシアネート基は本発明の範囲内である。特に好ましい実施態様においては、熱硬化性バインダー成分(a2)は、1分子あたり2〜10個のイソシアネート−反応性基を、特に好ましくは1分子あたり2〜7個のイソシアネート−反応性基を有する。
【0060】
熱硬化性バインダー成分(a2)は、前記に定義したように、オリゴマー又はポリマーである。500〜50,000の数平均分子量が適切であり、500〜4000の数平均分子量が好ましく、500〜2000が最も好ましい。
【0061】
熱硬化性バインダー成分(a2)として用いるのに一般的に適したオリゴマー及びポリマーは、(メタ)アクリレートコポリマー、ポリエステル、アルキド、アミノ樹脂、ポリウレタン、ポリラクトン、ポリエステルポリオール、ポリカーボネート、ポリエーテル、エポキシ樹脂−アミン付加物、(メタ)アクリレートジオール、ポリ尿素の部分けん化ポリビニルエステル、及びこれらの混合物である。成分(a2)として用いるのに適した、特に好ましいオリゴマー及びポリマー材料は、(メタ)アクリレートコポリマー、ポリエステル、ポリウレタン及びエポキシ樹脂−アミン付加物である。
【0062】
ヒドロキシル基のような活性水素基を有するポリエステルは、熱硬化性バインダー成分(a2)として用いるのに特に適している。このようなポリエステルは、有機ポリカルボン酸(例えば、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、マレイン酸)又はこれらの無水物と、一級又は二級ヒドロキシル基を含む有機ポリオール(例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール)とのポリエステル重縮合によって製造することができる。
【0063】
適切なポリエステルは、ポリカルボン酸又はその無水物と、ポリオール及び/又はエポキシドとのエステル化によって製造することができる。ポリエステルの製造に用いられるポリカルボン酸は、主として、1分子あたり2〜18個の炭素原子を有する単量体性ポリカルボン酸又はその無水物からなる。前記の中で有用な酸はフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、セバシン酸、及び種々の他のジカルボン酸である。反応混合物中に、少量の一塩基酸、例えば、安息香酸、ステアリン酸、酢酸、及びオレイン酸を含有させることができる。また、例えば、トリメリット酸及びトリカルバリル酸のような高級カルボン酸を用いることもできる。前記酸の無水物が存在する場合は、前記酸に代えて用いることができる。また、例えば、グルタミン酸ジメチル及びテレフタル酸ジメチルのような酸の低級アルキルエステルを用いることができる。
【0064】
ポリエステルの製造に用いることのできるポリオールには、アルキレングリコールのようなジオールが含まれる。特定の具体例には、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートが含まれる。他の適切なグリコールには、水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ε−カプロラクトンとエチレングリコールとの反応生成物のようなカプロラクトンをベースとするジオール、ヒドロキシ−アルキル化ビスフェノール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールのようなポリエーテル等が含まれる。ポリオール成分は全てのジオールを含んでいてもよいが、より高い官能性のポリオールを用いることもできる。より高い官能性のポリオールの具体例には、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が含まれる。
【0065】
本発明において用いるのに適しているいくつかの熱硬化性バインダー(a2)は、BayerからDESMOPHEN(登録商標)650、2089、1100、670、1200又は2017ポリエステルポリオールの商標で、Uniquemaから、PRIPLAST(登録商標)二量体をベースとするポリエステルポリオール、又はPRIPOL(登録商標)脂肪酸二量体樹脂の商標で、CCPからChempol(登録商標)ポリエステル又はポリアクリレート−ポリオールの商標で、Cray ValleyからCRODAPOL(登録商標)ポリエステルポリオール樹脂の商標で、又はCreanovaからLTSポリエステルポリオール接着樹脂の商標で市販されている。
【0066】
しかし、熱硬化性バインダー成分(a2)がUV照射によって活性化可能な結合を有する官能基を実質的に有しない場合に、特に有利な性能特性のバランスを達成することができることが見出された。このような官能基は、照射硬化性成分(a1)の官能基に関して前述されたような官能基であり得る。最も好ましくは、熱硬化性バインダー成分(a2)は完全飽和化合物である。
【0067】
場合によっては、4.0未満、好ましくは3.5未満の多分散性(PD)、更に好ましくは1.5〜3.5未満の多分散性、最も好ましくは1.5〜3.0未満の多分散性を有するように熱硬化性成分(a2)を選択することもできる。多分散性は、以下の式:(質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))から決定される。単分散のポリマーは1.0のPDを有する。更に、本明細書で用いられる場合、Mn及びMwは、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィーから測定される。
【0068】
本発明の任意の態様においては、前記熱硬化性バインダー成分(a2)は、全て、熱硬化性バインダー成分(a2)の不揮発物質量を基準とし、5質量%未満の芳香環部分、好ましくは2質量%未満の芳香環部分、最も好ましくは0質量%〜2質量%の芳香環部分を有するように選択してもよい。
【0069】
熱硬化性バインダー成分(a2)として用いるのに特に好ましいポリエステルは、Nuplex of Louisville, Kyから市販されているSETAL(登録商標)26−1615である。
【0070】
本発明のコーティング組成物中の成分(a2)の量は広く変化し得、個々のケースの要求によって誘導される。しかし、熱硬化性バインダー成分(a2)は、好ましくは、各場合、コーティング組成物の塗膜形成成分の全不揮発性固体を基準とし、5質量%〜90質量%、更に好ましくは6質量%〜80質量%、特に好ましくは7質量%〜70質量%、非常に特に好ましくは8質量%〜60質量%、特には9質量%〜50質量%の量で用いられる。
【0071】
本発明の二重硬化コーティング組成物は、少なくとも1種の熱硬化性架橋成分(a3)をも含む。最も好ましくは、熱硬化性架橋成分(a3)は、ジ−及び/又はポリイソシアネートであり、ポリイソシアネートが最も好ましい。このようなジ−及び/又はポリイソシアネートはブロックされているか、又はブロックされていなくてもよい。
【0072】
熱硬化性架橋成分(a3)は、1分子あたり、好ましくは少なくとも平均2.0個、好ましくは2.0個を超える、特には3.0個を超えるイソシアネート基を含む。基本的にイソシアネート基の数に上限はないが、本発明によれば、その数が15を超えない、好ましくは12を超えない、特に好ましくは10を超えない、非常に特に好ましくは8.0を超えない、特には6.0を超えないことが好都合である。最も好ましくは、熱硬化性架橋成分(a3)は、1分しあたり、平均2.5〜3.5個のイソシアネート基を有する。
【0073】
適切なジイソシアネートの具体例は、イソホロンジイソシアネート(すなわち、5−イソシアナートi−イソシアナートメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン)、5−イソシアナート1−(2−イソシアナートエタ−1−イル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソシアナート1−(3−イソシアナートプロパ−1−イル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソシアナート(4−イソシアナートブタ−1−イル)−1,3,3−トリ−メチルシクロヘキサン、1−イソシアナート2−(3−イソシアナートプロパ−1−イル)シクロヘキサン、1−イソシアナート2−(3−イソシアナートエタ−1−イル)シクロヘキサン、1−イソシアナート2−(4−イソシアナートブタ−1−イル)シクロヘキサン、1,2−ジイソシアナートシクロブタン、1,3−ジイソシアナートシクロブタン、1,2−ジイソシアナートシクロペンタン、1,3−ジイソシアナートシクロペンタン、1,2−ジイソシアナートシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナートシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−2,4−ジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、エチルエチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、メチルペンチルジイソシアネート(MPDI)、ノナントリイソシアネート(NTI)、又は脂肪酸二量体由来のジイソシアネート、例えば、HenkelがDDI 1410の商標で市販しており、特許公開WO97/49745及びWO97/49747に開示されているジイソシアネート、特に2−ヘプチル−3,4−ビス(9−イソシアナートノニル)−1−ペンチル−シクロヘキサン、又は1,2−、1,4−もしくは1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−もしくは1,3−ビス(2−イソシアナートエチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(3−イソシアナートプロピル)シクロヘキサン、1,2−、1,4−もしくは1,3−ビス(4−イソシアナートブチル)シクロヘキサン、又は特許出願DE4414032A1、GB1220717A1、DE1618795A1及びDE1793785A1に開示されているような、トランス/トランス含有量が30質量%以下、好ましくは25質量%以下、特には20質量%以下の液状ビス(4−イソシアナートシクロヘキシル)メタン、好ましくはイソホロンジイソシアネート、5−イソシアナート1−(2−イソシアナートエチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソシアナート1−(3−イソシアナートプロピル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、5−イソシアナート(4−イソシアナートブチル)−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン、1−イソシアナート2−(3−イソシアナートプロピル)シクロヘキサン、1−イソシアナート2−(3−イソシアナートエチル)シクロヘキサン、1−イソシアナート2−(4−イソシアナートブタ−1−イル)シクロヘキサン、又はHDIであり、HDIが特に好ましい。
【0074】
適切なポリイソシアネートの具体例は、ポリオールを過剰量のジイソシアネートと反応させることにより製造することができるイソシアネート含有ポリウレタンプレポリマーであり、これは、好ましくは低粘度である。
【0075】
通常、前記ジイソシアネートから製造される、イソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、イミノオキサジアジンジオン、ウレタン、尿素、カルボジイミド及び/又はウレトジオン基を含むポリイソシアネートを用いることも可能である。適切な製造方法及びポリイソシアネートの具体例は、例えば、特許、CA2,163,591A、米国特許第4,419,513号、米国特許第4,454,317A号、EP0646608A、米国特許第4,801,675A号、EP0183976A1、DE4015155A1、EP0303150A1、EP0496208A1、EP0524500A1、EP0566037A1、米国特許第5,258,482A1号、米国特許第5,290,902A1号、EP0649806A1、DE4229183A1及びEP0531820A1から公知であり、又は欧州特許出願公開EP1122273A3に開示されている。HDIのイソシアヌレートは、熱硬化性架橋成分(a3)として用いるのに特に好ましい。
【0076】
ドイツ特許出願DE19828935A1に開示されている高粘度のポリイソシアネート、又は欧州特許出願EP0922720A1、EP1013690A1及びEP1029879A1のような、尿素形成及び/又はブロッキングにより表面を不活性化したポリイソシアネート粒子も、熱硬化性架橋成分(a3)として適している。
【0077】
更に、ドイツ特許出願DE19609617A1に開示された、イソシアネート反応性官能基を含み、かつ遊離のイソシアネート基を含むポリイソシアネートと、ジオキサン、ジオキソラン及びオキサゾリジンとの付加物が適している。
【0078】
アミノプラスト樹脂も、熱硬化性架橋成分(a3)として用いるのに適している。適切なアミノプラスト樹脂の具体例には、メラミンホルムアルデヒド樹脂(単量体性又はポリマー性メラミン樹脂、及び高イミノメラミンを含む部分的もしくは完全アルキル化メラミン樹脂)、尿素樹脂(例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂のようなメチロール尿素、ブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂のようなアルコキシ尿素)等が含まれる。米国特許第5,300,328号に開示されているように、150℃未満の硬化温度を用いる方法においては、アミノ窒素の1個以上がカルバメート基で置換されているアミノプラスト樹脂も有用である。
【0079】
適切なトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンの具体例は、米国特許第4,939,213号及び第5,084,541号、及び欧州特許第0624577号に開示されている。トリス(メトキシ−、トリス(ブトキシ−及び/又はトリス(2−エチルヘキソキシカルボニルアミノ)トリアジンが好ましい。
【0080】
しかし、最も好ましくは、熱硬化性架橋成分(a3)は、HDIのイソシアヌレートのようなポリイソシアネートである。特に好ましい実施態様においては、熱硬化性架橋成分(a3)は、化学線照射、特にUV照射への暴露によって活性化可能である結合を有する官能基を実質的に有しない。このような結合は、成分(a1)の官能基に関して前述した。最も好ましくは、熱硬化性架橋成分(a3)は、炭素−炭素二重結合を実質的に有しないHDIのポリイソシアヌレートである。
【0081】
本発明のコーティング組成物中の熱硬化性架橋成分(a3)の量は、一般に、各場合、本発明のコーティング組成物の塗膜形成成分の全不揮発性分を基準とし、5質量%〜70質量%、更に好ましくは10質量%〜60質量%、特に好ましくは15質量%〜55質量%、非常に特に好ましくは20質量%〜50質量%、特には25質量%〜45質量%である。
【0082】
本発明の最も好ましい態様においては、成分(a1)及び(a2)中のイソシアネート反応性官能基の合計に対する成分(a3)のイソシアネート(NCO)基の比率は、1.30以下であり、好ましくは0.50〜1.25、更に好ましくは0.75〜1.10、非常に特には1.00未満、最も好ましくは0.75〜1.00である。特に、成分(a1)及び(a2)中のイソシアネート反応性官能基の合計に対するNCO基の比率が1.30以下、好ましくは0.50〜1.25、更に好ましくは0.75〜1.10、非常に好ましくは1.00未満、最も好ましくは0.75〜1.00であり、熱硬化性バインダー成分(a2)が、UV照射に対する暴露によって活性化可能な結合を有する官能基を実質的に含まない場合に、所望の接着性が得られる。
【0083】
本発明のコーティング組成物は、UV照射からポリカーボネート基材の保護に効果的な量で、添加剤(a4)を更に含む。UV照射、特に近紫外線域における照射に対するポリカーボネートの暴露が、光沢の減少、ひび割れ、白亜化、変色(黄変)、脆化、及び分解のような変化を引き起こし得るので、このような添加剤(a4)は必要である。
【0084】
好ましい添加剤(a4)には、紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤、及びUVAと光安定剤との配合物が含まれる。紫外線吸収剤は、UV照射によって引き起こされる分解(光酸化)を減少するためにUV光を吸収する分子である。紫外線吸収剤は、入射UV照射を優先的に吸収し、より長波長、及びより少ないエネルギー放射への変換のような、安全な方法で関連エネルギーを分散することでUVの影響から保護する。一般に、可視光に対する光学的清澄及び透明度に有意に影響を与えない紫外線吸収剤が、透明コーティングにとって好ましい。このようなUV吸収剤は、350〜370nm以下に強い吸収を有するが、可視域においては透明である、安定剤のクラスである。紫外線吸収剤(UVAs)は、UVスクリーニング剤及びUV安定剤としても知られている。
【0085】
光安定剤には、ヒンダードアミン(又はアミド)光安定剤(一般にHALSと省略される)として知られているものが含まれる。それらは、紫外線誘起の分解に対する非常に効率的な安定剤である。UV吸収剤と異なり、このクラスの化合物は、UV照射に対する物質の暴露による光酸化工程において形成される過酸化物及び遊離基中間体と反応し、それらを"除去"し、その結果、それらの有害な効果を中和する。
【0086】
コーティング組成物中に含まれるUVAsは、それらの多くが当該技術分野において周知である、あらゆる添加剤、又はUVAの混合物であってもよい。適切なUV吸収物質の具体例は、UV光を吸収し、UV照射によって引き起こされる分解(光酸化)を減少するために用いられる、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジン又はベンゾエート、オキサラニリド、及びサリチレートのようなUV吸収剤である。UVAの非限定的な具体例は、全て、Ciba Specialty Chemicalsによって製造される、液状トリアジン、TINUVIN 400(登録商標)、液状ベンゾトリアゾール、TINUVIN 1130(登録商標)、TINUVIN 328(登録商標)、TINUVIN 234(登録商標)、TINUVIN 1577(登録商標)、及びTINUVIN 384−2(登録商標)である。
【0087】
適切な光安定剤の具体例は、HALS化合物、及び遊離基捕捉剤、一般的には2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの誘導体である。HALSの非限定的な具体例は、全てCiba Specialty Chemicalsによって製造される、アミノエーテル官能性をベースとする液状HALS、TINUVIN 123(登録商標)、アミノエーテル官能性をベースとする固体の反応性HALS、TINUVIN 152(登録商標)、及び液状HALS、TINUVIN 292(登録商標)である。
【0088】
HALSが作用するメカニズムはUVAと異なっているので、それらを一緒に用いた場合に、相乗的な特性の向上が見られる場合がある。同時使用、又はUV吸収剤と一緒のヒンダードアミン光安定剤は、G.Berner and M.Rembold, New Light Stabilizers for High Solids Coatings, Organic Coatings and Science and Technology, Vol.6, Dekkar, New York, pp 55−85によって要約されているように、多くのポリマーにおいて優れた安定性をもたらす。UVA及びHALSの配合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから市販されている。
【0089】
本発明のコーティング組成物は、場合により、化学線及び/又は熱によって硬化する反応性希釈剤(a5)を更に含有していてもよい。反応性希釈剤(a5)を用いる場合、それは、好ましくは化学線照射、最も好ましくはUV照射で硬化する。最も好ましくは、このような反応性希釈剤は、更に、熱硬化性架橋成分(a3)と反応する1個以上の官能基を含む。最も好ましい実施態様においては、反応性希釈剤(a5)は、UV照射のような化学線により硬化し、更に、イソシアネート基と反応する官能基、例えば、成分(a1)及び(a2)に関して前述したような官能基を複数含有する。
【0090】
適切な熱硬化性反応性希釈剤の具体例には、特許出願DE19809643A1、DE19840605A1及びDE19805421A1に開示されているような、位置異性体であるジエチルオクタンジオール、又はヒドロキシル含有超分岐化合物又はデンドリマーが含まれる。
【0091】
適切な反応性希釈剤の更なる具体例は、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリレートジオール又はヒドロキシル含有ポリ付加物である。
【0092】
反応性希釈剤として用いることができる適切な反応性溶媒の具体例には、ブチルグリコール、2−メトキシプロパノール、n−ブタノール、メトキシブタノール、n−プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールプロパンジオールエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリメチロールプロパン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル又は3−メチル−3−メトキシブタノール、及び、またプロピオン酸エトキシエチルのようなプロピレングリコールをベースとする誘導体、イソプロポキシプロパノール又は酢酸メトキシプロピルが含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
化学線によって架橋し得る最も好ましい反応希釈剤(a5)は、例えば、(メタ)アクリル酸及びそれらのエステル、マレイン酸及びそのエステル(モノエステルを含む)、酢酸ビニル、ビニルエーテル、ビニル尿素等である。挙げられる具体例には、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ペンタエリスリトール、トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジシクロペンチルアクリレート、EP0250631A1に開示されている400〜4000、好ましくは600〜2500の分子量を有する長鎖直鎖ジアクリレートが含まれる。例えば、2個のアクリレート基は、ポリオキシブチレン構造で分離されていてもよい。1,12−ドデシルプロパンジオール、及び2モルのアクリル酸と、一般的に36個の炭素原子を有する1モルの脂肪酸アルコール二量体との反応生成物を用いることも可能である。前述した単量体の混合物も適切である。
【0094】
化学線によって硬化する適切な反応性希釈剤の更なる具体例は、Rompp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, New York, 1998, 491頁の「Reactive diluents」の項目に開示されているものである。
【0095】
本発明のコーティング組成物は、場合により、1種以上の透明顔料及び/又は充填材を更に含有していてもよい。適切な透明充填材の具体例は、シリカ、アルミニウム又は酸化ジルコニウムがベースとなったもの、特にこれらの物質のナノ粒子である。
【0096】
粘度及びレオロジーに関しては、タルク又は雲母のような透明な血小板形状の無機充填材の混合物、及びタルク、ドロマイト、硫酸カルシウム又は硫酸バリウムのような透明の結晶板形状でない無機充填材の使用が特に有利である。
【0097】
本発明のコーティング組成物中の前記顔料及び/又は充填材の量は、全てコーティング組成物の全不揮発分を基準とし、一般的に0質量%〜50質量%、好ましくは5質量%〜50質量%、更に好ましくは5質量%〜45質量%、特に好ましくは5質量%〜40質量%、非常に特に好ましくは5質量%〜35質量%、最も好ましくは5質量%〜30質量%である。
【0098】
本発明の二重硬化コーティング組成物は、更に1種以上の粘着付与剤を含有していてもよい。用語「粘着付与剤」は、これに穏やかに圧力を短時間かけた後に、表面にしっかりと接着するように、その粘着性、すなわち、固有の粘性又は自己接着性を向上させるポリマー性接着性添加剤を意味する(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, CD−ROM, Wiley VCH, Weinheim, 1997, "Tackifiers"を参照されたい)。
【0099】
本発明のコーティング組成物は、1種以上の光開始剤を有していてもよく、最も好ましくは、少なくとも1種の光開始剤を有する。コーティング組成物をUV照射により架橋させる場合、一般に光開始剤を用いることが好ましい。光開始剤を用いる場合、各場合、コーティング組成物の固体を基準とし、好ましくは0.1質量%〜10質量%、更に好ましくは0.2質量%〜8質量%、特に好ましくは0.3質量%〜7質量%、最も好ましくは0.5質量%〜5質量%の量でコーティング物質中に存在させる。
【0100】
その作用メカニズムが、光化学反応の場合に多様に起こるような水素引き抜き反応の分子内変形をベースとするノーリッシュII型の光開始剤(例として、Rompp Chemie Lexikon 9th,拡張及び改定版,Georg Thieme Verlag, Stuttgart, Vol.4, 1991が参考になり得る)、又はカチオン性光開始剤(例として、Rompp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1998、 pages 444〜446が参考になり得る)、特に、ベンゾフェノン、ベンゾイン又はベンゾインエーテル、又はホスフィンオキシドである。また、例えば、Ciba GeigyからIRGACURE(登録商標)184、IRGACURE(登録商標)819、IRGACURE(登録商標)1800及びIRGACURE(登録商標)500の商標で、RahnからGENOCURE(登録商標)MBFの商標で、及びBASF AGからLUCIRIN(登録商標)TPO及びLUCIRIN(登録商標)TPO−Lの商標で市販されている製品を用いることも可能である。前記光開始剤に加えて、アントラセン等の通常の増感剤を有効量で用いてもよい。
【0101】
本発明の二重硬化コーティング組成物は、場合により、80℃〜120℃でラジカルを形成する、少なくとも1種の熱架橋開始剤を含んでいてもよい。熱に不安定な遊離基開始剤の具体例は、有機過酸化物、有機アゾ化合物、又はC−C開裂開始剤、例えば、ジアルキルパーオキサイド、ペルオキソカルボン酸、ペルオキソジカーボネート、パーオキサイドエステル、ヒドロパーオキシド、ケトンパーオキシド、アゾジニトリル又はベンズピナコールシリルエーテルである。C−C開裂開始剤が特に好ましい。このような熱開始剤は、各場合、コーティング物質の固体を基準とし、0〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%、特には1〜5質量%存在させてもよい。
【0102】
コーティング材料は、更に水及び/又は少なくとも1種の不活性な有機又は無機溶媒を含んでいてもよい。無機溶媒の具体例は、液体窒素及び超臨界二酸化炭素である。適切な有機溶媒の具体例は、コーティングにおいて通常に用いられる高沸点(「長鎖」)溶媒又は低沸点溶媒、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン又はメチルイソブチルケトンのようなケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルエトキシプロピオネート、酢酸メトキシプロピル又はブチルグリコールアセテートのようなエステル、ジブチルエーテルのようなエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール又はジブチレングリコールジメチル、ジエチル又はジブチルエーテル、N−メチルピロリドン、又はキシレン、SOLVENTNAPHTHA(登録商標)、石油スピリット−135/180、ジペンテン又はSOLVESSO(登録商標)のような芳香族及び/又は脂肪族炭化水素の混合物である("Paints, Coatings and Solvents", Dieter Stoye and Werner Freitag(editors), Wiley−VCH,2nd edition, 1998, pages 327〜349も参照されたい)。
【0103】
本発明のコーティング組成物は、場合によって、1種以上のコーティング添加剤を有効量、すなわち、各場合、本発明のコーティング組成物の固体を基準とし、40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下、特に10質量%の量で更に含んでいてもよい。適切なコーティング添加剤の具体例は、遮断スルホン酸触媒、ジブチル錫ジラウレート、又はリチウムデカノエートのような架橋触媒;スリップ剤;重合阻害剤;消泡剤;乳化剤、特に、アルコキシル化アルカノール及びポリオール、フェノール、及びアルキルフェノールのような非イオン性乳化剤、アルカンカルボン酸、アルカンスルホン酸、及びアルコキシル化アルカノール及びポリオールのスルホ酸、フェノール及びアルキルフェノールのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩のような陰イオン性乳化剤;シロキサン、フッ素化合物、カルボン酸モノエステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸及びそれらのコポリマー、ポリウレタン又はアクリレートコポリマー(MODAFLOW(登録商標)又はDISPARLON(登録商標)で市販されている)のような湿潤剤;トリシクロデカンジメタノールのような接着促進剤;レベリング剤;セルロース誘導体のような塗膜形成助剤;難燃剤;例えば、参考文献DE19924172A1、DE19924171A1、EP0192304A1、DE2359923A1、DE1805693A1、WO94/22968、DE2751761C1、WO97/12945及び"Farbe+Lack",November 1992, pages829以降に開示されているような、尿素、修飾尿素、及び/又はシリカのようなたるみ制御剤;特許WO94/22968、EP0276501A1、EP0249201A1及びWO97/12945から公知であるようなレオロジー制御添加剤;例えば、EP0038127A1に開示されているような架橋ポリマー性微小粒子;ケイ酸アルミニウムマグネシウム、フィロケイ酸ナトリウムマグネシウム及びモントモリロナイト型のフィロケイ酸ナトリウムマグネシウムフッ素リチウムのような無機フィロケイ酸塩;AEROSILS(商標)シリカのようなシリカ;ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸、又はエチレン−無水マレイン酸コポリマー、及びそれらの誘導体、又は疎水的修飾されたエトキシル化ポリウレタンもしくはポリアクリレートのようなイオン性及び/又は結合基を含む合成ポリマー;ステアリン酸マグネシウムのようなつや消し剤;及び/又は加水分解性の有機金属化合物、特にシリコン及びアルミニウムの有機金属化合物のような有機修飾セラミック材料の前駆体である。適切なコーティング添加剤の更なる具体例は、テキスト"Lackadditive"[Additives for coatings], by Johan Bieleman, Wiley−VCH, Weinheim, New York, 1998に記載されている。
【0104】
自動車のウィンドウシステムのような、透明なポリカーボネート物品上のコーティングとして塗布された場合、本発明のコーティング組成物の重要な特徴は、コーティングが実質的に清澄かつ透明であることである。従って、本発明のコーティング組成物の前記材料及び添加剤は、清澄かつ透明なポリカーボネート基材に塗布した場合に、光透過性に著しく影響を及ぼさない添加剤のみを含むことを理解すべきである。コーティングの光透過性は、コーティング物品の実用的な寿命の間に著しく変化しないことを更に理解すべきである。
【0105】
本発明のコーティング組成物が、種々の形態で本発明の方法において用いることができることが理解されるであろう。例えば、前述の成分(a1)、(a2)及び(a3)、及び存在させてもよい更なる成分を適切に選択すれば、本発明のコーティング組成物は、有機溶媒及び/又は水を実質的に含まない液状のコーティング組成物であってもよい。また、本発明のコーティング組成物は、前記構成成分の水及び/又は有機溶媒中の溶液又は分散液を含んでもよい。本発明のコーティング組成物を基準にして固体含有量が80質量%以下であるように配合し得ることは、本発明のコーティング組成物の更なる利点である。更に、本発明のコーティング組成物の構成成分を、前述したように適切に選択すれば、粉末コーティング組成物であってもよい。更に、このような粉末コーティング組成物を水中に分散させ、粉体スラリーコーティング組成物を得ることができる。
【0106】
本発明のコーティング組成物は、所望のように、1成分又は2成分系であってもよい。本発明のコーティング組成物が1成分系である場合、保存中の早すぎる架橋を防止するために、ある場合においては、熱硬化性架橋成分(a3)を阻害しておく必要があり得る。本発明のコーティング組成物が2成分系である場合、熱硬化性架橋成分を他の成分と別々に保存し、使用直前までそれらに添加しない。
【0107】
本発明のコーティング組成物の製造方法は、一般に、撹拌槽、溶解機、Ultraturrex、インライン溶解機、歯車分散機、圧力解放ホモジナイザー、微小流動装置、撹拌ミル又は押出機のような適切な混合装置を用いて、前記成分を通常に混合して実施することができる。放射線活性化架橋を最小化するための適切な手段を用いる、すなわち、放射線源を除去すべきであることは理解されるであろう。
【0108】
本発明のコーティング組成物は、ポリカーボネート物品のコーティングのために用いることができる。
【0109】
必要であれば、UV耐性層を塗布する前に、ポリカーボネート基材表面を、イソプロパノールのようなアルコール溶媒で洗浄し、きれいにしてもよい。この工程は、表面から、ほこり、混入物質、及び湿潤剤等の添加剤を除去する。
【0110】
本発明のコーティング組成物は、ポリカーボネート基材に1回以上、及びポリカーボネート基材の1以上の表面に塗布してもよい。このような場合、本発明の塗布されるコーティングは同一も異なっていてもよい。コーティング組成物は、ポリカーボネート表面に直接塗布してもよく、又はポリカーボネート表面に既に塗布されたプライマーコーティングに塗布してもよい。コーティング組成物が、ポリカーボネート表面への接着のためのプライマーコーティングを必要としないことは、本発明の特に重要な特徴である。
【0111】
本発明のコーティング組成物を塗布するのに適した具体的な塗布方法には、噴霧、ブラッシング、ナイフコーティング、流し塗り、浸漬、及び圧延等が含まれる。圧縮空気噴霧、無気噴霧、高速回転のような噴霧塗布方法を単独で、又は例えば、温風噴霧のようなホットスプレー塗布を併用することが好ましい。
【0112】
本発明のコーティング組成物は、一般に、湿潤した膜の厚みが硬化後に、5〜75μm、好ましくは5〜35μm、更に好ましくは10〜25μm、最も好ましくは20〜25μmの乾燥塗膜厚になるように塗布される。
【0113】
本発明のコーティング組成物は、熱応力がかかる短期間の間に、本発明のコーティング組成物が少しも変化も損傷もせず、塗りすぎないように(再処理を意図する)、適切な塗布粘度を実現するように、93℃(200°F)以下の温度で基材に塗布することができる。例えば、ホットスプレーは、本発明のコーティング組成物がスプレーノズル中で加熱される時間が非常に短いか、又はスプレーノズルの直前のみであるように構成してもよい。更に好ましくは、本発明のコーティング組成物を、21℃〜57℃(70〜135°F)、最も好ましくは26.7℃〜43℃(80〜110°F)の温度で塗布する。
【0114】
塗布のために用いられるスプレーブースは、例えば、温度制御可能な循環装置を用いて操作してもよく、重ね塗りに適切な吸収媒体(このような媒体の具体例は本発明のコーティング組成物である)を用いて操作される。
【0115】
本発明のコーティング組成物の処理及び塗布は、電磁スペクトルにおける波長が照射硬化性成分(a1)又は任意の反応希釈剤(a5)を活性化することができるか否かにかかわらず、可視光下で実施することができる。しかし、照射硬化性成分(a1)又は任意の反応性希釈剤(a5)を活性化することのできる波長を有する照射を用いて塗布及び/又は処理を実施する場合、本発明のコーティング組成物を含む全ての容器又はラインを覆い、前記照射からコーティングを保護することは理解されるであろう。このようにして、本発明のコーティング組成物が前もってゲル化することを回避することができる。
【0116】
本発明によれば、本発明のコーティング組成物を塗布したポリカーボネート基材に、次いで化学線照射し、最も好ましくはUV照射し、次いで熱エネルギーに暴露し、コーティングを硬化する。
【0117】
特定の休止期間後に硬化することもできる。この期間は0秒〜2時間、好ましくは1分〜1時間、最も好ましくは5分以上〜30分以内であってもよい。休止期間は、例えば、本発明のコーティング組成物が溶媒として超臨界二酸化炭素を用いて塗布される場合、本発明のコーティング組成物の被膜を平らにして液化し、溶媒、水又は二酸化炭素のような揮発性成分を蒸発させるために用いられる。休止期間中の行われる乾燥は、60°(140°F)未満、更に好ましくは49℃(120°)未満の高温の塗布により、乾燥時間を短くし、及び/又は補助できるが、ただし、そのことが本発明のコーティング組成物の被膜にいかなる損傷も変化を起こさない、例えば早すぎる熱架橋等を起こさないことを条件とする。
【0118】
好ましくは、硬化を、UV照射又は電子ビームのような化学線照射を用いて硬化させる。所望であれば、他の照射線源からの化学線を用いて、それを補うか又は実施することができる。最も好ましくは、このような第一段階の硬化は、不活性ガス雰囲気下で、例えば、二酸化炭素及び/又は窒素を、塗布した本発明のコーティング組成物の表面に直接供給することによって実施される。UV硬化の場合には、不活性ガスはオゾンの発生を防止する。
【0119】
化学線を用いた硬化は、通常の、公知の照射線源及び光学的補助装置を用いて実施することができる。適切な照射線源の具体例は、照射領域を450nmまで広げるために、鉛、鉄又はガリウムを封入するか、又は封入していない高又は低圧水銀ランプ、又は電子ビーム源である。メタルハライド照射体も用いることができる。最も好ましくは、UV照射源である。これらの源の配列は原則として公知であり、製造工程にある製品の環境及びプロセスパラメーターに適合させることができる。製造工程にある製品が複雑な形状である場合、一部の自動車の窓について予想されるように、空洞部のような、照射線に直接接近しない領域(陰影領域)、折り目及び他の構造の刻み目は、空洞部又は縁に照射するために、点別の小領域又は全方位照射体を、自動移動手段と併せて用いて(部分的に)硬化させることができる。塗布した本発明のコーティング組成物の照射硬化は、塗布したコーティングを、1.5〜15.0J/cm2、好ましくは1.0〜10.0J/cm2、最も好ましくは2.0〜7.0J/cm2の量で化学線に暴露することにより実施することができる。
【0120】
コーティング組成物の架橋密度、すなわち架橋の程度は、完全架橋の約5%〜約100%の範囲である。特定の実施態様においては、コーティングの密度は、約35%〜約85%の範囲である。更なる特定の実施態様においては、架橋密度は、完全架橋の約50%〜約85%の範囲である。架橋の存在及び程度は、種々の方法、例えば、動的機械的熱分析(DMTA)により測定することができることを理解すべきである。この方法は、コーティング又はポリマーの遊離膜のガラス転移温度及び架橋密度を測定する。例えば、接線係数δ又は動的係数のような測定可能な物性は、架橋ネットワークの構造及び密度と関連づけられる。
【0121】
本発明のコーティング組成物は、照射硬化性成分(a1)及び任意の反応性希釈剤(a5)由来の照射硬化性基の総数を基準として、成分(a1)及び任意成分(a5)由来の照射硬化性基の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、更に好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が架橋する場合に、照射硬化したと言うことができる。C=C基のような照射硬化性基に対応するピークは、架橋が増加するにつれ減少するので、照射硬化性基の架橋の割合は、RAMAN顕微鏡により測定することができる。コーティング組成物の硬化中に変化しない基準ピークを選択する。基準ピークの位置は、特定のコーティング組成物の化学的性質に依存し、当業者によって選択することができることは理解されるであろう。
【0122】
これらの硬化方法のための装置及び条件は、例えば、R Holmes, UV and E B.Curing Formulations for Printing Inks, Coatings and Paints, SITA Technology, Academic Press, London, United Kingdom 1984に記載されている。
【0123】
硬化は、段階的に、すなわち、複数の化学線照射によって実施することができる。これを、交互に、すなわち、UV照射と電子ビームによる硬化を交互に実施してもよい。
【0124】
熱硬化は、熱風乾燥機内での加熱、又はIRもしくはNIRランプへの暴露のような、通常の公知の方法によって実施される。化学線照射を用いた硬化と同様に、熱硬化も段階的に実施することができる。有利には、熱硬化は、49℃〜177℃(120°F〜350°F)、好ましくは65.6℃〜149℃(150°F〜300°F)、更に好ましくは93℃〜149℃(200〜300°F)、最も好ましくは107℃〜135℃(225°F〜275°F)の温度で実施される。本発明のコーティングは、1分〜2時間、好ましくは2分〜1時間、特には5分〜30分間で熱硬化される。
【0125】
照射硬化及び熱硬化は、同時又は交互に用いることができる。2種類の硬化方法を交互に用いる場合、例えば、熱硬化で開始し、化学線照射で終了することが可能である。他の場合、化学線照射で開始し、それにより終了することが有利であるかもしれない。
【0126】
本発明の他の態様においては、本発明の方法は、本発明のコーティング組成物を塗布し、塗布したコーティング組成物を照射線硬化し、照射線硬化したコーティング組成物に1種以上の他のコーティング組成物を塗布し、照射線硬化した本発明のコーティング組成物及び塗布した1種以上の他のコーティング組成物の両方を一緒に熱硬化させることを含んでもよい。
【0127】
本発明のコーティング組成物でコーティングし、次いで乾燥し化学線照射に暴露し、好ましくは不完全な状態に硬化したポリカーボネート基材を、直ちに追加のコーティングで上塗りすることが、本発明の方法の非常に特に有利である。追加のコーティングは、他のUV遮断コーティング、又は追加の所望の特徴をもたらすコーティングを含み得る。例えば、部分的に硬化したUV遮断コーティングは、更に、耐摩耗プラズマコーティングのような、傷防止又は摩耗抵抗性のコーティングでコーティングされてもよい。傷防止コーティングには、塗膜がプラズマ重合された、プラズマ適合オルガノシロキサン及び酸化オルガノシリコンコーティングが含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
更に、乾燥及び化学線照射への暴露後に、本発明のコーティング組成物でコーティングされた物品は熱後硬化され、その後、本発明のコーティングされた物品は、粘着又は変形の危険なく、更なる処理を待つためにスタック内に保存され得る。
【0129】
本発明のコーティング方法は、基材としてのポリカーボネート物品の全ての面において実施することができる。本発明によりコーティングされた物品、及び特にポリカーボネートの窓は、物品の一方の面にのみ、又は1以上の面にコーティングを有していてもよい。
【0130】
本発明の方法によって得られるコーティングされた物品は、極めて優れた光透過性を有する。本発明のコーティングされたポリカーボネート物品の耐候性は良好である。付着性も、当該技術分野のクリアコートを超え、実質的に改善されている。特に、本発明のコーティング組成物のUV硬化塗膜は、ポリカーボネート基材に対して、並びに傷防止プラズマコーティングに対して優れた付着性を有し、コーティングを促進する中間接着の必要性を解消する。結果として、本発明の方法によって得られた物品及び基材は、表面欠陥が著しく少ない。このような欠陥は、空隙率、微細気泡、気泡、ポッピング、ポップ又は亀裂と呼ばれる場合がある。
【0131】
実施例
本発明を、以下の実施例において更に説明する。実施例は単に説明であり、開示及び請求の範囲に記載の本発明の範囲を多少なりとも限定するものではない。異なる基準によることを特に示さない限り、全ての部は質量部である。
【0132】
試験用のコーティングされたポリカーボネートの窓板(window plaque)を、以下のようにして製造した:以下の表1を参考にし、ウレタンアクリレート(a1)、ポリエステルポリオール樹脂(a2)、及び界面活性剤を、1クオートの缶で均一になるまで約5分間混合した。次いで、光開始剤溶液を加えた。光開始剤溶液は、加える前に、光開始剤及び酢酸n−ブチルの両方から製造した。次いで、UV保護溶液を加えた。UV保護溶液は前もって製造され、イソプロパノール及び無臭の石油スピリット(OMS)溶媒中のUV吸収剤(a4)及びヒンダードアミン光安定剤(a4)からなる。非還元コーティング組成物を、2種類の網目状の円錐体(mesh cones)を通してろ過し、ほこり及び/又は他の粒子を除去し、塗布するまで1クオートの鋼製の缶に保存した。次いで、熱硬化性架橋成分(a3)を試験用のポリカーボネート基材/板に塗布する前にコーティングと混合した。
【0133】
第1表
【表1】

【0134】
コーティングを、以下のように9インチ×9インチのポリカーボネート板に塗布した:ポリカーボネート基材をイソプロパノールで拭いて、次いで乾燥させた。きれいにしたポリカーボネート基材に直接、空気噴霧サイフォンスプレーにより、又はドローダウン(drawn down)法のいずれかによりコーティングを塗布した。大気条件で10分間、溶媒を流した。次いで、コーティングしたポリカーボネート板を、合計3.0ジュール/cm2のUV量で、UVA及びUVB紫外線照射により硬化した。UV硬化に次いで、熱硬化を実施した。板を対流式オーブン中に置き、250°Fで30分間焼いた。次いで、板を通常の傷防止(SiO2)プラズマコーティングで被覆した。
【0135】
表2に見られるように、付着性及び亀裂に関して、耐候性及び耐久性を試験するために、板を10日間の湿度試験にかけた。UVA及びHALSを有しない、通常のクリアコートを対照として用いた。6日後、本発明のポリカーボネート板は、ポリカーボネート基材及び傷防止プラズマコーティングの両方に対して、驚くべきことに優れた接着性を示した。観察された亀裂は非常に軽く、ポリカーボネート板のいくつかにわずかな剥離が観察されたのみである。亀裂について評価した場合、実施例の板は、平均1.6の平均評点で、対照よりも約50%良好であると評価された。なお、1の割合が最も良好である。
【0136】
第2表
【表2】

【0137】
本発明のコーティングで被覆されたポリカーボネート板の光透過性を主観的に評価した。本発明の組成物で被覆された板の優れた光透過性が示された。
【0138】
本発明を、好ましい実施態様を参照して、本明細書に開示した。しかし、本発明の趣旨及び範囲内で、変形及び修飾できることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有するポリカーボネート基材を含み、
前記ポリカーボネート基材が、
(a1)化学線照射への暴露により活性化可能な少なくとも1個の結合を含む少なくとも2個の官能基を含む、化学線照射への暴露により重合する照射硬化性成分;
(a2)成分(a3)の官能基と反応する少なくとも2個の官能基を含む、熱暴露により重合する熱硬化性バインダー成分;
(a3)成分(a2)の官能基と反応する少なくとも2個の官能基を含む、熱硬化性架橋成分;及び
(a4)ポリカーボネート基材をUV照射から保護するための少なくとも1種の添加剤を含む組成物を硬化させることにより製造される少なくとも1層のコーティングでコーティングされており、
前記コーティング組成物が、化学線照射及び熱エネルギー暴露の両方により硬化し、コーティング組成物が、ポリカーボネート基材の紫外線照射に対する暴露を減少する、ポリカーボネート物品。
【請求項2】
照射硬化性成分が、更に少なくとも1個のイソシアネート反応性官能基を含む、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項3】
照射硬化性成分が、更に少なくとも1個のヒドロキシル反応性官能基を含む、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項4】
前記組成物が、更に少なくとも1種の反応性希釈剤(a5)を含む、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項5】
前記コーティングが、実質的に清澄で透明である、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項6】
成分(a2)の不揮発物質量を基準とし、少なくとも5質量%〜100質量%が、少なくとも2個の官能基、0℃未満のガラス転移温度を有し、かつ1当量あたり225グラムを超える当量質量を有するポリマーである成分(X)である、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項7】
成分(X)が、ポリエーテルジオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルジオール、及びポリエステルポリオールの少なくとも1種を含む、請求項6に記載のポリカーボネート物品。
【請求項8】
前記ポリエーテルジオールが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びポリテトラヒドロフランの少なくとも1種を含む、請求項7に記載のポリカーボネート物品。
【請求項9】
前記ポリエステルジオールがポリラクトンである、請求項7に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記ポリエステルポリオールが、ペンタエリスリトールのε−カプロラクトン伸長物である、請求項7に記載のポリカーボネート物品。
【請求項11】
成分(X)が、−20℃未満のガラス転移温度を有する、請求項6に記載のポリカーボネート物品。
【請求項12】
成分(X)が、−50℃未満のガラス転移温度を有する、請求項6に記載のポリカーボネート物品。
【請求項13】
成分(X)が、1当量あたり265グラムを超える当量質量を有する、請求項6に記載のポリカーボネート物品。
【請求項14】
成分(X)がポリテトラヒドロフランである、請求項8に記載のポリカーボネート物品。
【請求項15】
前記照射硬化性成分(a1)が、紫外線照射への暴露により重合する、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項16】
前記熱硬化性バインダー成分(a2)が、少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基を含む、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項17】
少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基がヒドロキシル基である、請求項16に記載のポリカーボネート物品。
【請求項18】
前記熱硬化性架橋成分(a3)が、少なくとも2個のイソシアネート基を含む、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項19】
前記成分(a3)の少なくとも2個の官能基がイソシアネート基であり、成分(a1)及び(a2)の官能基の合計に対するイソシアネート基の比率が1.3未満である、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項20】
前記比率が1.0未満である、請求項19に記載のポリカーボネート物品。
【請求項21】
前記比率が、0.5〜1.25である、請求項19に記載のポリカーボネート物品。
【請求項22】
前記比率が、0.75〜1.0である、請求項19に記載のポリカーボネート物品。
【請求項23】
熱硬化性バインダー成分(a2)が、前記熱硬化性バインダー成分(a2)の不揮発物質量を基準とし、5質量%未満の芳香環部分を含む、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項24】
成分(a1)の前記イソシアネート反応性官能基が、チオール基、一級アミノ基、二級アミノ基、及びイミノ基、及びヒドロキシル基の少なくとも1種である、請求項2に記載のポリカーボネート物品。
【請求項25】
成分(a1)の前記ヒドロキシル反応性官能基が、イソシアネート、アミノプラスト、エポキシド、シラン、環状無水物及び環状ラクトンの少なくとも1種である、請求項3に記載のポリカーボネート物品。
【請求項26】
前記ヒドロキシル反応性官能基がイソシアネートである、請求項25に記載のポリカーボネート物品。
【請求項27】
傷防止コーティングを更に含む、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項28】
前記傷防止コーティングが、プラズマ重合及び酸化オルガノシリコンコーティングである、請求項27に記載のポリカーボネート物品。
【請求項29】
前記ポリカーボネート基材が窓である、請求項1に記載のポリカーボネート物品。
【請求項30】
前記ポリカーボネート基材が自動車の窓である、請求項30に記載のポリカーボネート物品。
【請求項31】
ポリカーボネート物品の製造方法において、
光学的に透明なポリカーボネート物品にコーティング組成物を塗布する工程と、前記コーティングされた物品を、コーティング組成物を硬化するのに十分な化学線照射及び熱エネルギーに暴露する工程とを含み、
前記コーティング組成物が、
(a1)化学線照射への暴露により活性化可能な少なくとも1個の結合を含む少なくとも2個の官能基を含む、化学線照射への暴露により重合する照射硬化性成分;
(a2)成分(a3)の官能基と反応する少なくとも2個の官能基を含む、熱暴露により重合する熱硬化性バインダー成分;
(a3)成分(a2)の官能基と反応する少なくとも2個の官能基を含む、熱硬化性架橋成分;及び
(a4)ポリカーボネート基材をUV照射から保護するための少なくとも1種の添加剤を含む方法。
【請求項32】
前記化学線照射がUV照射である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記コーティングが、噴霧、ブラッシング、ナイフコーティング、流し塗り、浸漬、及び圧延からなる群から選択される方法によって塗布される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記コーティングが、圧縮空気噴霧、無気噴霧、高速回転、又は温風噴霧を含む、少なくとも1種の噴霧塗布方法によって塗布される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1種の追加のコーティングを塗布することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1種の追加のコーティングが傷防止コーティングである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記コーティング組成物を塗布する前に洗浄し、前記表面から、ほこり、混入物質及び添加剤を除去することを更に含む、請求項31に記載の方法。

【公表番号】特表2009−532229(P2009−532229A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503154(P2009−503154)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/064493
【国際公開番号】WO2007/117907
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, New Jersey 07932, USA
【Fターム(参考)】