説明

ポリサルファイド接着剤組成物

【課題】被着体との接着性(被着性)に優れ、断熱性にも優れる複合材料を得ることができる接着剤組成物および接着剤組成物の施工方法ならびに複合材料の提供。
【解決手段】ポリサルファイドポリマー(A)を含有する基材成分と、
接着付与剤(B)を含有する硬化剤成分とからなり、
前記基材成分および/または前記硬化剤成分に、未発泡の熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有する接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリサルファイド接着剤組成物、ポリサルファイド接着剤組成物の施工方法および複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築材料、構造材料、断熱材料として発泡スチロール、発泡ポリエチレン等の各種発泡体が利用されている。
また、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコンエラストマー等の熱硬化性樹脂は、各種構造材料として使用されている。
更に、これらの熱硬化性樹脂は、軽量化、断熱付与、経済的理由により、しばしば発泡体との複合化が行われている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。
【0003】
具体的には、特許文献1には、「粒径0.01〜5mm、発泡倍率3〜100倍のポリ塩化ビニリデン系多泡質発泡粒子10〜99体積%と、熱硬化性樹脂1〜90体積%からなる複合材料。」が記載され([請求項1])、「粒径0.005〜2mmの、発泡剤を含むポリ塩化ビニリデン系未発泡ビ−ズと熱硬化性樹脂原料とを、ビ−ズ/熱硬化性樹脂原料=100/1〜1/30の重量比で混合し、熱硬化性樹脂の硬化時の反応熱及び、その反応熱と外部からの加熱により、硬化と同時に発泡させることを特徴とする請求項1記載の複合材料の製造方法。」が記載されている([請求項2])。
同様に、特許文献2には、「下記(1)、(2)、(3)を主成分とする複合材料。(1)粒径0.01〜5mm、発泡倍率3〜100倍のポリ塩化ビニリデン系多泡質発泡粒子10〜99体積%。(2)熱硬化性樹脂1〜90体積%。(3)(1)及び(2)の合計量100重量部に対して、1〜200重量部の補強材。」が記載され([請求項1])、「下記(1)、(2)、(3)を主成分とする原料を硬化時の反応熱及び、その反応熱と外部からの加熱により、硬化と同時に発泡させることを特長とする請求項1記載の複合材料の製造方法。
(1)粒径0.005〜2mmの、発泡剤を含むポリ塩化ビニリデン系未発泡ビーズ。
(2)熱硬化性樹脂原料。ただし、(1)/(2)=100/1〜1/30(重量比)
(3)(1)及び(2)の合計量100重量部に対して、1〜200重量部の補強材。」が記載されている([請求項2])。
【0004】
一方、特許文献3には、「家屋の床、壁等を形成する断熱性建築用パネルの製造方法であって、枠材を矩形に接合した周囲枠を有する枠組の一面にこの一面を覆う面材が添設されることにより面材を底面とする浅底皿状の凹所が形成されたパネル基体を前記凹所を上に向けて搬送するとともに搬送の間に、搬送されるパネル基体の少なくとも前記凹所を予備加熱するプレヒート工程と、予備加熱された凹所内に断熱用の発泡性樹脂を未発泡状態で塗着させる塗布工程と、塗着された発泡性樹脂を発泡させ発泡断熱層を形成するキュア工程とを含む処理工程を施すことを特徴とする断熱性建築用パネルの製造方法。」が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の複合材料は、被着体への接着性が劣る問題があった。
また、特許文献1〜3に記載の製造方法では、断熱性に優れる材料が得られないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−39936号公報
【特許文献2】特開平6−155606号公報
【特許文献3】特開平7−148452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、被着体との接着性(被着性)に優れ、断熱性にも優れる複合材料を得ることができるポリサルファイド接着剤組成物およびポリサルファイド接着剤組成物の施工方法ならびに複合材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、主剤および硬化剤のいずれか一方または両方に未発泡の熱発泡性マイクロカプセルを含有するポリサルファイド接着剤組成物が被着体との接着性(被着性)に優れ、断熱性にも優れる複合材料を得ることができるポリサルファイド接着剤組成物となることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、下記(1)〜(5)を提供する。
(1)ポリサルファイドポリマー(A)を含有する基材成分と、
接着付与剤(B)を含有する硬化剤成分とからなり、
上記基材成分および/または上記硬化剤成分に、未発泡の熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有するポリサルファイド接着剤組成物。
(2)上記接着付与剤(B)が、シランカップリング剤である上記(1)に記載のポリサルファイド接着剤組成物。
(3)加熱前の体積と加熱により発泡させた後の体積との比(加熱後/加熱前)が、1超100以下である上記(1)または(2)に記載のポリサルファイド接着剤組成物。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリサルファイド接着剤組成物の施工方法であって、
上記ポリサルファイド接着剤組成物を被着体に塗布する塗布工程と、
上記塗布工程により塗布された上記ポリサルファイド接着剤組成物を加熱する加熱工程とを具備する施工方法。
(5)上記(4)に記載のポリサルファイド接着剤組成物の施工方法により得られる、被着体上に該被着体に接着した断熱材が形成された複合材料。
【発明の効果】
【0010】
以下に示すように、本発明によれば、被着体との接着性(被着性)に優れ、断熱性にも優れる複合材料を得ることができるポリサルファイド接着剤組成物およびポリサルファイド接着剤組成物の施工方法ならびに複合材料を提供することができる。
また、本発明のポリサルファイド接着剤組成物を用いれば、施工方法(複合材料の製造段階)において、接着剤および断熱材の容積を減少することができ、施工工程の簡略化および施工時間の短縮化も図ることできるため非常に有用である。
更に、本発明のポリサルファイド接着剤組成物を用いれば、被着体上に断熱材を形成する際に特別な型も必要としないため、複雑な形状の被着体に対しても断熱材を形成することができるため非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリサルファイド接着剤組成物(以下、「本発明の接着剤組成物」ともいう。)は、ポリサルファイドポリマー(A)を含有する基材成分と、接着付与剤(B)を含有する硬化剤成分とからなり、
上記基材成分および/または上記硬化剤成分に、未発泡の熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有する接着剤組成物である。
以下に、ポリサルファイドポリマー(A)、接着付与剤(B)および熱発泡性マイクロカプセル(C)について詳述する。
【0012】
<ポリサルファイドポリマー(A)>
上記ポリサルファイドポリマー(A)は、ポリサルファイドポリマーの一種であり、1分子中に2個以上のチオール基(SH基)を有し、主鎖中にエーテル結合を含むものである。
【0013】
このようなポリサルファイドポリエーテルポリマー(A)としては、具体的には、
主鎖中に、(1)−(R1O)n−で表されるポリエーテル部分(ただし、R1は炭素数2〜4のアルキレン基、nは6〜200の整数を示す。)と、(2)−(C24OCH2OC24−Sx)−、および、−(CH2CH(OH)CH2−Sx)−で示される構造単位(ただし、xは1〜5の整数である。)とを含有し、
かつ末端に、(3)−C24OCH2OC24−SH、および/または、−CH2CH(OH)CH2−SHで示されるチオール基を有するもの;等が好適に例示される。
【0014】
この具体例で表されるポリサルファイドポリエーテルポリマー中、(1)のポリエーテル部分と(2)で示される構造単位は、任意の配列で結合していてよい。また、その割合は、(1)の−(R1O)n−成分が2〜95質量%、(2)の−(C24OCH2OC24−SX)−成分が3〜70質量%、および、−(CH2CH(OH)CH2−Sx)−成分が1〜50質量%となることが好ましい。
【0015】
上記ポリサルファイドポリエーテルポリマー(A)としては市販品を用いることができ、その具体例としては、実施例で使用した東レ・ファインケミカル社製(東レチオコール社製)のLP282等が挙げられる。
【0016】
本発明においては、上記ポリサルファイドポリエーテルポリマー(A)の数平均分子量は、通常600〜200,000であるのが好ましく、800〜50,000であるのがより好ましい。
【0017】
また、本発明においては、上記ポリサルファイドポリエーテルポリマー(A)は、例えば、特開平4−363325号公報に記載されているように、ポリオキシアルキレングリコールにエピハロヒドリンを付加して得られるハロゲン末端プレポリマーとポリサルファイドポリマーを、95/5〜5/95のような質量比で水硫化アルカリおよび/または多硫化アルカリとともに反応させる方法により製造することができる。
【0018】
<接着付与剤(B)>
上記接着付与剤(B)は、従来公知の接着性付与剤であれば特に限定されず、その具体例としては、シランカップリング剤、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、シランカップリング剤であるのが、得られる本発明の接着剤組成物の被着体に対する接着性がより向上する理由から好ましい。
【0019】
上記シランカップリング剤は、接着付与剤として従来公知のシランカップリング剤であれば特に限定されず、その具体例としては、アミノシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、イソシアネートシラン、ケチミンシランもしくはこれらの混合物もしくは反応物、または、これらとポリイソシアネートとの反応により得られる化合物等が挙げられる。
これらのうち、アミノシラン、メルカプトシランであるのが、得られる本発明の接着剤組成物の被着体に対する接着性が更に向上する理由から好ましい。
【0020】
アミノシランは、アミノ基またはイミノ基と加水分解性のケイ素含有基とを有する化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、ビストリメトキシシリルプロピルアミン、ビストリエトキシシリルプロピルアミン、ビスメトキシジメトキシシリルプロピルアミン、ビスエトキシジエトキシシリルプロピルアミン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
メルカプトシランとしては、具体的には、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0022】
ビニルシランとしては、具体的には、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン等が挙げられる。
エポキシシランとしては、具体的には、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
メタクリルシランとしては、具体的には、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
イソシアネートシランとしては、具体的には、例えば、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
ケチミンシランとしては、具体的には、例えば、ケチミン化プロピルトリメトキシシラン、ケチミン化プロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0023】
本発明においては、このような接着付与剤(B)を含有することにより、得られる本発明の接着剤組成物を用いて被着体上に形成される断熱材と該被着体との接着性が良好なものとなる。
また、このような接着付与剤(B)を含有することにより、現行の施工方法、即ち、被着体上に接着剤を塗布し、断熱材を圧着させる施工方法において使用する接着剤を用いる必要がなく、施工工程の簡略化および施工時間の短縮化も図ることできる。これは、上記ポリサルファイドポリマー(A)および上記接着付与剤(B)とともに後述する未発泡の熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有する本発明の接着剤組成物を被着体上に塗布し、加熱することにより、接着剤組成物そのものが被着体に接着した断熱材となるためである。
【0024】
また、本発明においては、接着付与剤(B)としてシランカップリング剤を使用する場合、その含有量は、基材成分に含有する上記ポリサルファイドポリマー(A)100質量部に対して、0.1〜100質量部であるのが好ましく、0.1〜5質量部であるのがより好ましい。シランカップリン剤の含有量がこの範囲であると、得られる本発明の接着剤組成物を用いて被着体上に形成される断熱材と該被着体との接着性がより良好なものとなる。
【0025】
<熱発泡性マイクロカプセル(C)>
上記熱発泡性マイクロカプセル(C)は、加熱により発泡するマイクロカプセルであり、本発明においては、基材成分および硬化剤成分のいずれか一方または両方に、未発泡の状態で含有するものである。
【0026】
上記熱発泡性マイクロカプセル(C)は、従来公知のものを用いることができ、その具体例としては、低沸点溶剤とそれを内包する熱可塑性ポリマー壁材とからなる熱発泡性マイクロカプセルが好適に挙げられる。
【0027】
ここで、熱可塑性ポリマー壁材に用いられる熱可塑性ポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル等の単独重合体または共重合体が挙げられる。また、これらに、架橋剤、例えば、ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコール(ジ)メタアクリレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP)、トリアクリルホルマール(TAF)を少量加えて用いることもできる。更に、これらは樹脂の種類、用途等に基づいて適宜選択することができる。
これらのうち、より低温で発泡する観点から、塩化ビニリデンの重合体であるのが好ましい。
【0028】
次に、内包される低沸点溶剤としては、沸点が−20〜200℃の炭化水素型の溶剤が好適に用いられる。このような溶剤としては、具体的には、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、石油エーテル等の石油分留成分が挙げられる。
【0029】
また、上記熱発泡性マイクロカプセル(C)は、粒径が、通常、2〜100μm程度であるのが好ましく、5〜50μm程度であるのがより好ましい。
【0030】
更に、上記熱発泡性マイクロカプセル(C)は、従来公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、特公昭42−26524号公報に記載されている方法を用いることができる。
【0031】
本発明においては、このような熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有することにより、得られる本発明の接着剤組成物を用いて得られる複合材料の断熱性が良好となり、その容積も減少することができる。これは、本発明の接着剤組成物が未発泡の状態で熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有するため、本発明の接着剤組成物を用いて基板上に形成される断熱材が独立発泡体になりやすく、即ち、断熱材内部に存する発泡部分が非連続となりやすく、熱伝導率が低くなるためであると考えられる。
また、このような熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有することにより、得られる本発明の接着剤組成物を用いて被着体上に断熱材を形成する際に特別な型も必要としないため、複雑な形状の被着体に対しても断熱材を形成することができる。
【0032】
また、本発明においては、上記熱発泡性マイクロカプセル(C)の含有量が、ポリサルファイドポリマー(A)および接着付与剤(B)の合計100質量部に対し、0.1〜10質量部であるのが好ましく、1〜5質量部であるのがより好ましい。上記熱発泡性マイクロカプセル(C)の含有量がこの範囲であると、本発明の接着剤組成物の被着体との接着性がより良好となる。
【0033】
本発明の接着剤組成物は、加熱前の体積と加熱により発泡させた後の体積との比(加熱後/加熱前)が、1超100以下であるのが好ましく、1〜50であるのがより好ましく、1〜10であるのが更に好ましい。体積比がこの範囲であると、本発明の接着剤組成物の被着体との接着性がより良好となる。
【0034】
本発明の接着剤組成物は、更に、スズ触媒、チタン触媒、亜鉛触媒等の金属触媒を含有するのが好ましい。
スズ触媒としては、具体的には、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ等のスズカルボン酸塩類;ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物;ジブチルスズジアセチルアセトナートが挙げられる。
チタン触媒としては、具体的には、例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類が挙げられる。
【0035】
本発明の接着剤組成物は、被着体上に形成される断熱材の硬度を調整する観点から、更に、ポリイソシアネート化合物を含有することができる。
このようなポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート(NCO)基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水添TDI(H6TDI)などの脂環式ポリイソシアネート;上記各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
これらのポリイソシアネート化合物のうち、MDI(例えば、クルードMDI等のような重合化したMDIも含む。)、TDIであるのが、得られる本発明の接着剤組成物の硬化制御、即ち、接着剤組成物が完全に硬化してしまう前に上記熱発泡性マイクロカプセル(D)を発泡させることが容易となる理由から好ましい。
【0037】
本発明の接着剤組成物は、被着体上に形成される断熱材の硬度を調整する観点から、更に、エポキシ樹脂を含有することができる。
このようなエポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
具体的には、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型等のビスフェニル基を有するエポキシ化合物や、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物や、ナフタレン環を有するエポキシ化合物や、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;
フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の多官能型のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;
ダイマー酸等の合成脂肪酸のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;
下記式(1)で表されるN,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン(TGDDS)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン(TGMXDA)、下記式(2)で表されるトリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン、テトラグリシジル1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(TG1,3−BAC)、トリグリシジルイソシアヌレート(TGIC)等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;
【0038】
【化1】

【0039】
下記式(3)で表されるトリシクロ〔5,2,1,02,6〕デカン環を有するエポキシ化合物、具体的には、例えば、ジシクロペンタジエンとメタクレゾール等のクレゾール類またはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる公知の製造方法によって得ることができるエポキシ化合物;
【0040】
【化2】


(式中、mは、0〜15の整数を示す。)
【0041】
脂環型エポキシ樹脂;東レチオコール社製のフレップ10に代表されるエポキシ樹脂主鎖に硫黄原子を有するエポキシ樹脂;ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂;ポリブタジエン、液状ポリアクリロニトリル−ブタジエンゴムまたはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含有するゴム変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
これらのエポキシ樹脂のうち、ビスフェノールA型であるのが、得られる本発明の接着剤組成物を用いて被着体上に形成される断熱材の架橋密度を上げ、硬度が高くなる理由から好ましい。
【0043】
本発明の接着剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記各種成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、揺変性付与剤が挙げられる。
【0044】
充填剤としては、例えば、ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物が挙げられる。
【0045】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0046】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
揺変性付与剤としては、例えば、水添ヒマシ油、シリカ、タルク等が挙げられる。
上記の各添加剤は適宜、組み合わせて用いることができる。
【0047】
本発明においては、上記ポリサルファイドポリマー(A)を含有する基材成分は、上記ポリサルファイドポリマー(A)および上記熱発泡性マイクロカプセル(C)のみを含有する成分であってもよく、上記熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有しない場合は、上記ポリサルファイドポリマー(A)のみを含有する成分であってもよいが、必要に応じて、上述した各種の添加剤(金属触媒、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂を含む。以下同様。)を含有していてもよい。
同様に、上記接着付与剤(B)を含有する硬化剤成分は、上記接着付与剤(B)および上記熱発泡性マイクロカプセル(C)のみを含有する成分であってもよく、上記熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有しない場合は、上記接着付与剤(B)のみを含有する成分であってもよいが、必要に応じて、上述した各種の添加剤を含有していてもよい。
【0048】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記ポリサルファイドポリマー(A)を含有する基材成分と、上記接着付与剤(B)および上記未発泡の熱発泡性マイクロカプセル(C)ならびに上記各種添加剤を含有する硬化剤成分とを混合し、ロール、ニーダー、押出し機、万能撹拌機等を用いて室温下で十分に混合し、均一に分散(混練)させることにより製造することができる。
【0049】
本発明の接着剤組成物の施工方法は、上述した本発明の接着剤組成物の施工方法であって、
上記接着剤組成物を被着体に塗布する塗布工程と、
上記塗布工程により塗布された上記接着剤組成物を加熱する加熱工程とを具備する施工方法である。
以下に、塗布工程、加熱工程について詳述する。
【0050】
<塗布工程>
上記塗布工程は、本発明の接着剤組成物を断熱材を形成する被着体表面に塗布する工程である。
ここで、被着体は、断熱材が要求される用途、個所により変わるため特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フロートガラス、陽極酸化アルミニウム等が挙げられる。
また、本発明の接着剤組成物の被着体への塗布方法としては、具体的には、例えば、スプレー塗布、ディップ塗布、バーコーター塗布、回転塗布等が挙げられる。
【0051】
<加熱工程>
上記加熱工程は、上記塗布工程により塗布された本発明の接着剤組成物を加熱する工程であり、上記未発泡の熱発泡性マイクロカプセル(C)が発泡するとともに、上記ポリサルファイドポリマー(A)が硬化する工程である。
【0052】
本発明においては、上記未発泡の熱発泡性マイクロカプセル(C)が十分に発泡するまでの間、架橋性シリル基含有有機重合体(例えば、変成シリコーン)が硬化してしまうことのないよう、60〜150℃で数十分程度加熱するのが好ましく90〜120℃で10分程度で加熱するのがより好ましい。
加熱の方法としては、例えば、電磁波を用いる電磁波加熱(例えば、放射板に熱放射する方法等)、ヒーター(例えば、電気ヒーター等)を用いる方法、温風を送風する方法が挙げられる。中でも、電磁波加熱であるのが好ましい。
【0053】
本発明の接着剤組成物の施工方法により、被着体上に該被着体に接着した断熱材が形成された複合材料が得られる。
【0054】
このように本発明の接着剤組成物の施工方法によれば、現行の施工方法、即ち、被着体上に接着剤を塗布し、断熱材を圧着させる施工方法において使用する接着剤を用いる必要がなく、施工工程の簡略化および施工時間の短縮化も図ることできる。これは、上述したように、上記ポリサルファイドポリマー(A)および上記接着付与剤(B)とともに上記熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有する本発明の接着剤組成物を被着体上に塗布し、加熱することにより、接着剤組成物そのものが被着体に接着した断熱材となるためである。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1および2、比較例1〜6)
下記表1に示す各組成成分を、下記表1に示す質量部となるように混合し、接着剤組成物を調製した。
次いで、調製した各接着剤組成物を、被着体であるフロートガラス(50mm×50mm×5mm厚)上に塗布した後、140℃で10分間の条件で加熱乾燥させ、被着体上に断熱材が形成された複合材料を作製した。
また、同様の条件で、調製した各接着剤組成物を、陽極酸化アルミニウム板(50mm×50mm×3mm厚)、アクリル樹脂板(50mm×50mm×3mm厚)およびポリエステル板(50mm×50mm×3mm厚)上に塗布し、乾燥させ、被着体上に断熱材が形成された複合材料を作製した。
【0057】
得られた各複合材料について、以下の方法により接着性を測定した。その結果を表1に示す。
【0058】
<接着性>
各被着体に対する断熱材の接着性の評価は、作製した各複合材料を23℃、55%RHの条件下で3日間放置して養生した後、ナイフカットによる手はく離試験を行い、破壊の状態を目視で観察した。
なお、表1中、CFは接着剤組成物である断熱材が凝集破壊したこと示し、TCFは接着剤組成物である断熱材が薄層凝集破壊したこと示し、AFは接着剤組成物である断熱材が接着破壊(界面破壊)したことを示す。
【0059】
上記と同様の方法で調製した各接着剤組成物を、離型処理した金属性の型(150mm×100mm×15mm厚)に入れ、120℃で10分間の条件で加熱乾燥した後に型から取り出し、断熱材のみからなる試験片を作製した。
得られた各試験片について、以下の方法により熱伝導率および体積比を測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
<熱伝導率>
得られた各試験片の表面の熱伝導率を熱伝導率計(京都電子社製)を用いて測定した。
【0061】
<体積比>
試験片を作製する際に型に入れた各接着剤組成物の体積(150mm×100mm×15mm=225cm3)と、試験片(断熱材)の体積との比(試験片/接着剤組成物)を算出した。その結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1中の各組成成分は、以下に示す通りである。
・ポリサルファイドポリマーA1:LP282(東レ・ファインケミカル社製)
・ポリイソシアネート化合物1:HDI(タケネート700、三井武田ケミカル社製)
・ポリイソシアネート化合物2:MDI(PAPI、ダウ・ケミカル社製)
・接着付与剤B1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(Y9669、日本ユニカー社製)
・未発泡マイクロカプセルC1:未発泡の熱発泡性マイクロカプセル(マツモトマイクロスフェアーF−2、松本油脂社製、平均粒径:10〜20μm、壁材:ビニルクロライド系コポリマー、固形分:70質量%以上)
・スズ触媒:ジ−n−ブチルスズジラウリン酸塩(Stann−BL、三共有機合成社製)
【0064】
表1に示す結果から、実施例1および2で調製した接着剤組成物から作製した複合材料は、接着付与剤(B)ないし未発泡の熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有しない比較例1〜6で調製した接着剤組成物から作製した複合材料に比べて接着性が良好であることが分かった。
また、実施例1および2で調製した接着剤組成物から作製した断熱材のみからなる試験片は、比較例1〜6で調製した接着剤組成物から作製した試験片と同等以上に低い熱伝導率を示すことから断熱性に優れることが分かった。
更に、実施例1および2で調製した接着剤組成物から作製した断熱材は、1超100以下であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリサルファイドポリマー(A)を含有する基材成分と、
接着付与剤(B)を含有する硬化剤成分とからなり、
前記基材成分および/または前記硬化剤成分に、未発泡の熱発泡性マイクロカプセル(C)を含有するポリサルファイド接着剤組成物。
【請求項2】
前記接着付与剤(B)が、シランカップリング剤である請求項1に記載のポリサルファイド接着剤組成物。
【請求項3】
加熱前の体積と加熱により発泡させた後の体積との比(加熱後/加熱前)が、1超100以下である請求項1または2に記載のポリサルファイド接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリサルファイド接着剤組成物の施工方法であって、
前記ポリサルファイド接着剤組成物を被着体に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程により塗布された前記ポリサルファイド接着剤組成物を加熱する加熱工程とを具備する施工方法。
【請求項5】
請求項4に記載のポリサルファイド接着剤組成物の施工方法により得られる、被着体上に該被着体に接着した断熱材が形成された複合材料。

【公開番号】特開2008−133399(P2008−133399A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322046(P2006−322046)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】