説明

ポリブチレンテレフタレートの製造装置及びその方法

【課題】
オリゴマーを製造する第1の反応器の効率化を図ったポリブチレンテレフタレートの製造装置及びその方法を提供することにある。
【解決手段】
オリゴマーを製造する第1の反応器10と、低重合度のポリマーを製造する第2の反応器20と、更に縮重合させて、高重合度のポリマーを製造する第3の反応器30とを備えたポリブチレンテレフタレートの連続製造装置であって、前記第1の反応器10は、縦型円筒状の槽で構成され、該槽内において、外周部に上部ヘッダ113と下部ヘッダ112との間に気相又は液相熱媒を流すように接続された多数の伝熱管112を配設し、中央部に前記多数の伝熱管に亘って各伝熱管の間に供給された被処理液に流れを作る攪拌翼120が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系高分子の連続製造方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと記す)樹脂は結晶化特性に優れ、機械的性質、電気特性、耐熱性などが優れているため、近年、電機、電子部品、機械部品、自動車用途等に適用され、需要が著しく伸びている。
【0003】
ところで、PBTの製造方法及びその装置としては、特開2003−64171号公報(特許文献1)において知られている。
【0004】
上記特許文献1においては、次のことが記載されている。即ち、エステル化反応槽(第1の反応器)の外周部には、処理液を反応温度に保つためにジャケット構造になっており、液の内部には液の加熱手段としてカランドリヤ式熱交換器が設置され、外部からの熱源により多管内を流動する処理液を加熱し、エステル化反応工程で生成する揮発性のガスによる密度変化と温度差による相乗効果によって、自然循環のみにより内部の液を循環しながら反応を進行させる。ここで最も望ましい反応器の型はエステル化反応により生成した副反応物の自然蒸発作用を利用して反応器内の処理液を自然循環させるカランドリア型が望ましい。しかし、本発明は、この装置に限定されるものではなく、プロセス上の理由から攪拌翼を持った反応器を使用しても差し支えない。該反応槽において反応により生成する水は水蒸気の形をとり、気化したBD蒸気及び副生するTHF蒸気と共に気相部を形成する。このときの推奨すべき反応条件としては、温度は220℃から250℃で、減圧あるいは微加圧条件が望ましい。特に圧力条件は原料のBD(1,4−ブタンジオール)とTPA(テレフタル酸)のモル比(以降B/Tという)によって最適圧力条件が決定される。B/T=2.0以上では大気圧以上の場合でも処理液中のBD濃度が確保されるために所定の滞留時間で目標のエステル化率に到達可能である。
【0005】
さらに、特許文献1には、初期重合機(第2反応器)から得られる平均重合度が20〜70のPBTを最終重合機である第3反応器に送ること、またさらに高いIV値のPBTを得るために第3反応器の後に第4反応器を設置し最終重合機を2段にすることが記載されている。
【0006】
また、仕切板を設けたメガネ翼式重合機(連続攪拌装置)については、特公平8−19241号公報(特許文献2)において知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−64171号公報
【特許文献2】特公平8−19241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された第1の反応器は、外部からの熱源により多管内を流動する処理液を加熱するカランドリヤ式熱交換器を設けて構成されるため、熱伝達効率が悪く滞留時間が長くなるという課題を有していた。
【0009】
また、第3の反応器(最終重合機)は、2つの装置で構成されるため装置コストが高くなるという課題を有していた。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸と1,4−ブタジオールを主成分とするグリコール類とを反応させて平均重合度2〜5程度のオリゴマーを製造する第1の反応器の効率化を図ったポリブチレンテレフタレートの製造装置及びその方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、最終重合機を1段にして、粘度0.1〜45Pa・s(又は重合度20〜70)程度のPBTから粘度500〜2500Pa・s(又は重合度150〜200)程度のPBTを製造することができるようにして装置コストの低減およびPBTの製造原価の低減を図ったポリブチレンテレフタレートの製造装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするグリコール類とからなる被処理液を反応させてオリゴマーを製造する第1の反応器と、該第1の反応器からのオリゴマーを縮重合させて、平均重合度20〜70の低重合度のポリマーを製造する第2の反応器と、該第2の反応器からの平均重合度20〜70の低重合度のポリマーを更に縮重合させて、平均重合度150〜200の高重合度のポリマーを製造する第3の反応器(最終重合機)とを備えたポリブチレンテレフタレートの連続製造装置及びその方法であって、前記第3の反応器は、一台の横形の反応容器で構成し、該反応容器内に水平方向に向けて対向するように設置された2つの攪拌軸の各々により互いに90度の位相差を付けて逆方向に回転するメガネ形状の攪拌翼を設けてメガネ翼式重合機で構成し、平均重合度20〜70の低重合度のポリマーが供給される入口側を少なくとも2つの領域に仕切り、且つ通過できる穴又はスリットを形成した仕切板を設けて構成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記仕切板に熱媒を通すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の連続製造装置(システム)を構成する第1の反応器(エステル化反応槽)において、加熱手段による被処理液への熱交換効率を向上させて滞留時間の短縮を図ることができ、その結果、品質の良好なポリブチレンテレフタレートを効率よく連続生産できる。
【0015】
また、本発明によれば、粘度0.1〜45Pa・s(又は重合度20〜70)の処理液から粘度500〜2500Pa・s(又は重合度150〜200)のPBT(ポリブチレンテレフタレート)を連続重合する連続製造装置(システム)を構成する最終重合機(第3の反応器)を1台の装置で構成でき、装置コストの低減を図り、ポリブチレンテレフタレートの製造原価の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るPBT(ポリブチレンテレフタレート)の連続製造プロセスの一実施の形態を示す全体装置(システム)構成図である。
【図2】本発明に係る第1の反応器(エステル化反応槽)の一実施例を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る第1の反応器(エステル化反応槽)において多数の伝熱管を一重に配設した場合を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る第1の反応器(エステル化反応槽)の一実施例について被処理液の流動状態も含めて示す図で、(a)はその平面図、(b)はその縦断面図である。
【図5】本発明に係わる第2の反応器(初期重合槽)の一実施例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る一台で構成した最終重合機(第3の反応器)の一実施例を示す図で、(a)は平面一部断面図、(b)は正面一部断面図である。
【図7】図6に示す最終重合機(第3の反応器)の一実施例の側面断面図(仕切板図示省略)である。
【図8】(a)(b)は、各々仕切板の実施例を示す側面図である。
【図9】(a)(b)は、各々仕切板の他の実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(PBT)の製造装置及びその方法の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るPBTの連続製造プロセスの一実施の形態を示す全体装置(システム)構成図である。工業的なポリエステルの製造方法として、直接エステル化法が、経済的に非常に有利であるので、最近ではポリエステルの製造には直接エステル化方法が多く採用されている。図において、1は、PBTの原料であるTPA(テレフタル酸)とBD(1,4−ブタンジオール)を所定の割合で混合、攪拌する原料調整槽である。原料調整槽1から得られる原料は、原料供給ライン2から原料入口105からエステル化反応槽(第1の反応器)10へ供給される。この段階で重合反応触媒(CAT)や安定剤、品質調整剤などの添加物(ADD)を加える場合があるが、本実施例では重合反応触媒や添加剤はエステル化反応槽10へ触媒投入ライン14から触媒供給口108を通して投入される。重合反応触媒としては有機チタン、有機錫、有機ジルコニア等の公知の金属化合物が挙げられ、使用する触媒の種類や組み合わせにより、反応速度が異なるだけでなく、生成するPBTの色相及び熱安定性等の品質に大きな影響を及ぼすことが良く知られている。触媒としては現在最も多く工業的に使用されている有機チタンが価格や性能面で優れている。しかし、この触媒を用いても生成したポリエステル重合物の着色は避けられない。このために安定剤として燐系安定剤(例えば、リン酸、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等)を併用して改善している。また、別のプロセスにおいては重合触媒や安定剤の投入位置を工夫して品質を安定させている。通常のプロセスでは触媒の量はチタン金属換算濃度で20から100ppmとすることが好ましく、また安定剤の量は必要に応じてP金属濃度で0から600ppmとすることが好ましい。
【0019】
次に、本発明の特徴とするエステル化反応槽(第1の反応器)10について具体的に説明する。即ち、エステル化反応槽10の外周部は、図2に示すように被処理液を反応温度に保つために熱媒ジャケット101を用いた構造になっている。熱媒ジャケット101には、ジャケット液相熱媒出口または気相熱媒入口102とジャケット液相熱媒入口または気相熱媒出口103が接続される。105は原料入口、106はオリゴマー出口である。107はBD供給口、108は触媒供給口である。130は蒸気出口である。
【0020】
さらに、図2乃至図4に示すようにエステル化反応槽10内で被処理液104に浸漬される部分には、多重のリング状の伝熱管下部ヘッダ111と多重のリング状の伝熱管上部ヘッダ113との間を数千本のマルチ伝熱管(直径が20mm程度で、長さが100〜150cm程度の伝熱管)112を接続して構成される加熱手段11が設置される。225〜255℃の温度の熱媒が液相熱媒の場合には、液相熱媒が外部から伝熱管液相熱媒入口110より上記伝熱管下部ヘッダ111に供給され、該供給された液相熱媒がマルチ伝熱管112内を下部から上部へ流動し、上記伝熱管上部ヘッダ113から伝熱管液相熱媒出口114を介して外部に流出される。熱媒が油等の気相熱媒(スチームガス)の場合には、気相熱媒が外部から伝熱管気相熱媒入口114より上記伝熱管上部ヘッダ113に供給され、該供給された液相熱媒がマルチ伝熱管112内を上部から下部へ流動し、上記伝熱管下部ヘッダ111から伝熱管液相熱媒出口110を介して外部に流出される。さらに、エステル化反応槽10内において、攪拌駆動源122によって駆動される攪拌軸121の下部に設けられた攪拌翼120で攪拌することによって、図4(b)に示すように、中央部の処理液は上部から下部に下降する流れとなり、下部においては図4(a)に示すように外周方向へ流れ、更に図4(b)に示すように、下部から上部に向かってリング状に配列された数千本のマルチ伝熱管112の間を通って上昇する流れとなる。その結果、マルチ伝熱管112により効率よく処理液を加熱し、エステル化反応工程で生成する揮発性のガスによる密度変化と温度差による相乗効果によって、反応を進行させる。上記加熱手段11の熱交換量Qは、次の(1)式で表される。
【0021】
Q=U・A・ΔT (1)
Uは熱通過率[W/(m・K)]、Aはマルチ伝熱管112の伝熱面積(m)、ΔTは所定の対数平均温度差(K)。
【0022】
このように直径が20mm程度の数千本のマルチ伝熱管112をリング状に配列することによって伝熱面積を増大させると共に、被処理液の中にマルチ伝熱管112を通し、中心に攪拌翼120を設けることによって処理液が伝熱管112の間を絡むように下部から上部に流れるので熱通過率Uを400程度に大幅に向上させることができ、その結果加熱手段11の熱交換量Qを大幅に向上させて被処理液の滞留時間を2時間程度に大幅に短縮することが可能となる。
【0023】
また、マルチ伝熱管112を平面的に千鳥状に配列すれば、マルチ伝熱管112をさらに高密度に配列でき、本数増加による伝熱面積Aの増加および伝熱管の間の間隙の減少による熱通過率Uの向上を図ることが可能となる。
【0024】
以上説明した構成の第1の反応器(エステル化反応槽)10において、反応により生成する水は水蒸気の形をとり、気化したBD蒸気及び副生するTHF蒸気と共に気相部12を形成する。このときの推奨すべき反応条件としては、温度は225℃から255℃で、減圧あるいは微加圧条件が望ましい。特に圧力条件は原料のBD(1,4−ブタンジオール)とTPA(テレフタル酸)のモル比(以降B/Tという)によって最適圧力条件が決定される。B/T=2.5以上では、大気圧以上の場合でも被処理液中のBD濃度が確保され、2時間程度の滞留時間で目標のエステル化率に到達可能となる。このようにエステル化反応速度が向上することによりエステル化反応時間が短縮され、副反応生成物であるTHF生成量を大幅に低減できる。このときの推奨すべき反応温度は225℃〜255℃である。この時のTHF生成量は、原料TPAのモル分率で15〜25mol%/h程度である。被処理液中から出た揮発分である気相部12のガスは、その第1の反応器であるエステル化反応槽10の上方に設けられた蒸留塔(図示せず)により水とTHF及びBDとに分離され、水とTHFは系外に除去され、BDは精製工程等を経て再び系内あるいは原料用として蒸留塔下部よりBD循環ライン42によりBDタンク40に戻される。循環BDはBDタンク40からBD供給ライン41により原料調整槽1に供給されるが、BDタンク40内の循環BDは必要に応じてBD精製処理(図示せず)を行い原料BDの純度を調整する。さらに必要に応じて、初期重合槽(第2の反応器)20および最終重合槽(第3の反応器)30に設置される減圧装置の湿式コンデンサ(図示せず)から排出された循環BDをBD循環ライン43よりBDタンク40に戻し、BD原単位をさらに向上させる。この場合、新BDは、最終重合槽30の湿式コンデンサへ新BD供給ライン45より供給し、BD循環ライン44から第2反応器20の湿式コンデンサへ供給し、BD循環ライン43よりBDタンク40に供給する。
【0025】
エステル化反応槽10で所定のエステル化率に到達した被処理液は、連絡管13を経由して初期重合槽(第2の反応器)20に供給される。即ち、被処理液は、エステル化反応槽10で所定のエステル化率に到達したとき、連絡管13の途中に設けたオリゴマーポンプ15により初期重合槽(第2の反応器)20に供給される。
【0026】
次に、第2の反応器(初期重合槽)20について図1及び図5を用いて簡単に説明する。図1において、初期重合槽20は堅長円筒状の容器本体の外周を熱媒ジャケット202で覆われており、容器本体中央上部に回転軸203及び駆動装置204が取り付けられている。容器本体内は円筒状の仕切板205により2室に分けられており、ドーナツ状の第1室206と円筒状の第2室207を形成し、それぞれの攪拌室206、207内を回転して攪拌する攪拌翼208及び209が1本の共通の半長の回転軸203に取り付けられている。さらに、それぞれの攪拌室206、207内の攪拌翼208、209の外側には伝熱管210、211が取り付けられ、この伝熱管210、211への熱媒入口ノズル214、213、出口ノズル212、215が容器本体を貫通して取り付けられている。また、容器本体の第1室206の下部には、被処理液の入口ノズル216が取り付けられ、容器本体の第2室207の下部中央には、被処理液の出口ノズル217が取り付けられている。さらに、容器本体の上部に揮発物の出口ノズル218が設けられ、配管で凝縮器及び真空引き装置(図示せず)に接続される。
【0027】
ここで第1室206内の攪拌翼208は、第2室207内の攪拌翼209に比べて周速が高いため、攪拌抵抗の小さいスリムな形状となっており、第2室207内の攪拌翼209は、周速が低いため、攪拌抵抗の大きい幅の広い形状となっている。これにより、同一の回転数でまわる両攪拌翼208及び209が両攪拌室206及び207で同程度の攪拌効果を得ることができる。
【0028】
このような装置において、入口ノズル216より連続して供給された被処理液は、まず第1室206内に入り、伝熱管210で加熱され、攪拌翼208で攪拌される間に重縮合反応が進み、生成した1,4−ブタンジオール等の揮発物は蒸発して揮発物の出口ノズル218より凝縮器に捕集される。このようにして反応が進んだ被処理液は第1室206の上部より仕切板205の上端を乗り越えて第2室207に入る。被処理液は第2室207においても第1室と同様に、伝熱管211で加熱され、攪拌翼209で攪拌される間にさらに重縮合反応が進み、生成した1,4−ブタンジオール等の揮発物は蒸発して揮発物の出口ノズル218より凝縮器に捕集される。
【0029】
このようにして反応が進んだ被処理液は、第2室207の下部より被処理液の出口ノズル217を通って次の最終重合機30へ送られる。このとき、被処理液は初期重合槽20内の2つの攪拌室206、207でそれぞれ完全混合状態で効率良く反応が進み、ショートパスすること無く、また第1、2室間では密閉配管内での熱分解も無く、品質の良い重合物を連続して生産することができる。
【0030】
このような装置でPBTを重合する場合には、平均重合度2から5までのビスヒドロキシブチルテレフタレートを入口ノズル216より連続供給して重縮合反応を進め、生成した1,4−ブタンジオール及び水の蒸気を初期重合槽20内で分離し、初期重合槽20中央部の出口ノズル217より平均重合度20から70までの間のPBTの重合物を得ることができる。操作条件は例えば液温度230〜255℃、圧力0.5〜20kPa、攪拌翼の回転数5〜100回/分の範囲で行われる。
【0031】
本発明の推奨される実施例によれば、図5に示すように、初期重合槽20内を円筒状の仕切板205A及び205Bにより3室に分けて、ドーナツ状の第1室206A及び第2室206Bと円筒状の第3室207を形成し、それぞれの攪拌室206A、206B及び207内を回転して攪拌する攪拌翼208A、208B及び209が回転軸203に取り付けられ、さらにそれぞれの攪拌室206A、206B及び207内に伝熱管210A、210B、211が取り付けられて構成される。このように、初期重合槽20内を完全混合槽3槽と構成することにより、さらに短時間で重合反応を進めることができ、熱劣化が少ない品質の良いPBTの重合物を連続して生産することができる。
【0032】
初期重合槽(第2の反応器)20で所定の反応時間を経過した処理液は、連絡管21を経てプレポリマーポンプ22により最終重合機(第3の反応器)30に供給される。
【0033】
次に、本発明の特徴である最終重合機30について具体的に図1、図6、図7および図8を用いて説明する。最終重合機(第3の反応器)30は、初期重合機(第2の反応器)20から得られる平均重合度が20〜70の低重合度ポリマー(プレポリマー)である粘度0.1〜45Pa・s程度のPBTから、一度に平均重合度が150〜200の高重合度ポリマーである粘度500〜2500Pa・s程度のPBT50を製造できるようにしたことにある。このように処理液の粘度は、0.1〜45Pa・sの低粘度から500〜2500Pa・s程度の高粘度の範囲に亘って使用できる高粘度液処理用の攪拌装置をもった反応器を用いなければならない。この反応器として最適な装置としては、特公平8−19241号公報に記載の連続攪拌装置(メガネ翼式重合機)をさらに改良し、これを用いて実現できるようにした。最終重合機(第3の反応器)30はメガネ形状の攪拌翼(図7に示すように、1枚または複数枚のまゆ形板状部材311と該まゆ形板状部材の先端部に取り付けられた掻き取り板312とから構成される)31a、31bを90度の位相差をつけて、所定の間隔で外部動力源35に駆動される攪拌軸32a、32bに取り付け、この攪拌軸32a、32bを2本、90度の位相差をつけて構成した二軸式の重合装置である。なお、一つのメガネ形状の攪拌翼を、複数枚のまゆ形板状部材311とその先端部に取り付けられた掻き取り板312とで構成した方が、ポリマーを効率よく攪拌することが可能となる。
【0034】
このときの反応条件としては、230℃から255℃で、圧力は0.665kPaから0.067kPaで反応させる。特にPBTの品質の評価項目の1つであるポリマー酸価の値を出来るだけ低くするには、反応温度を250℃以下(250℃を含む)にすることが望ましい。従って、最終重合機30の外周も、図6及び図7に示すように、ポリマーを反応温度に保つために、断面がメガネ形状をした熱媒ジャケット構造301になっている。3011は熱媒ジャケット301に対する熱媒入口、3012は該熱媒出口である。302はプレポリマー入口、303はポリマー出口である。304は蒸気出口である。321a、321bは攪拌軸32a、32bの各々の軸受である。
【0035】
そして、低粘度から高粘度の広い範囲に亘って縮重合させるため、プレポリマーの入口301に近い数段のメガネ形状の攪拌翼31a、31bについては、図1、図8及び図9に示すような約下半分に仕切板33a、33bを設け、滞留時間を増やすように構成した。しかし、単に仕切板33a及び33bを設けただけでは、0.1〜45Pa・s程度の粘度を有する低重合ポリマー(プレポリマー)が仕切板33a及び33bを越えることによって進むことになるので、抵抗が高すぎることになる。そのため、図8(a)に示すように、仕切板33a及び33bの底部に穴331を設けることによって低重合ポリマー(プレポリマー)が該穴331を通して進むことが可能となり、抵抗を幾分低くすることが可能となる。また、図8(b)に示すように、仕切板33a及び33bにスリット332を設けることによっても、低重合ポリマー(プレポリマー)が該スリット332を通して進むことが可能となり、抵抗を幾分低くすることが可能となる。さらに、好ましい実施例は、図9(a)及び(b)に示すように、縮重合を促進するために仕切板33a及び33bに熱媒334を入口335から出口336に向って通すことにある。図9(b)に示す実施例の場合、スリット332を設けるため、熱媒334の通路を管337によって接続する必要がある。
【0036】
このように、低重合プレポリマーは、仕切板33a及び33bで仕切られた領域で攪拌されて穴331又はスリット332及び仕切板33a及び33bを越えて進むことになり、滞留時間が確保されることになり、その後高重合のポリマーを得るための仕切板のない領域のメガネ攪拌翼に入れることが可能となる。勿論、入口側のメガネ攪拌翼の軸方向の間隔を狭めることによって低粘度のプレポリマーを持ち上げる量を増やして縮重合を増やすことが可能となる。逆に、出口側のメガネ攪拌翼の軸方向の間隔を広げることによって高粘度のポリマーに対応させることが可能となる。
【0037】
即ち、入口302より供給された低粘度のプレポリマーは、図7に示すように、お互いの攪拌翼31a、31bが互いに逆方向に中央から外側へ回転する構成のために外側に引き伸ばされながら、順次仕切板33a及び仕切板33bで仕切られた領域毎に滞留しながら、良好な表面更新作用を受け、プレポリマーの内部から揮発成分を蒸発させて反応が促進されて粘度が徐々に上昇する。続いて、粘度が徐々に上昇したポリマーは、図7に示すように、お互いの攪拌翼31a、31bが中央から外側へ回転する構成のために外側に引き伸ばされながら、良好な表面更新作用を受け、プレポリマーの内部から揮発成分を蒸発させて反応が促進されて500〜2500Pa・s程度の高粘度を有する高重合度のポリマー50が出口303から排出される。
【0038】
その結果、最終重合機30は一台の装置で縮重合が可能となり大幅な装置コストの低減が可能となる。第1〜第3反応器の滞留時間は4〜7.5時間であるが、品質面から、重合工程全体の滞留時間は2から4時間が最適な範囲である。また、滞留時間は必要に応じて、温度と圧力を調整することにより長くすることが可能であり、例えば生産量を減少させる場合に、品質の変動を最小限に保つために実施されることがある。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の連続製造装置(システム)を構成する第1の反応器(エステル化反応槽)において、加熱手段による被処理液への熱交換効率を向上させて滞留時間の短縮を図ることができ、その結果、品質の良好なポリブチレンテレフタレートを効率よく連続生産できる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の連続製造装置(システム)を構成する最終重合機(第3の反応器)を1台の装置で構成でき、装置コストの低減を図り、ポリブチレンテレフタレートの製造原価の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…原料調整槽、2…原料供給ライン、10…エステル化反応槽(第1の反応器)、101…熱媒ジャケット、102…ジャケット液相熱媒出口またはジャケット気相熱媒入口、103…ジャケット液相熱媒入口またはジャケット気相熱媒出口、104…被処理液、105…原料入口、106…オリゴマー出口、107…BD供給口、108…触媒供給口、110…伝熱管液相熱媒入口または伝熱管気相熱媒出口、111…伝熱管下部ヘッダ、112…マルチ伝熱管、113…伝熱管上部ヘッダ、114…伝熱管液相熱媒出口または伝熱管気相熱媒入口、120…攪拌翼、121…攪拌軸、122…攪拌駆動軸、130…蒸気出口、11…加熱手段、12…気相部、13…連絡管、14…触媒投入ライン、15…オリゴマーポンプ、20…初期重合槽(第2の反応器)、202…熱媒ジャケット、203…回転軸、204…駆動装置M、205…円筒状の仕切板、206…攪拌室(第1室)、207…攪拌室(第2室)、208…攪拌翼、209…攪拌翼、210、211…伝熱管、213,214…熱媒入口ノズル、212,215…熱媒出口ノズル、216…被処理液の入口ノズル、217…被処理液の出口ノズル、218…揮発物の出口ノズル、30…最終重合機(第3の反応器)、301…熱媒ジャケット、302…プレポリマー入口、303…ポリマー出口、304…蒸気出口、311…まゆ形板状部材、312…掻き取り板、321a、321b…軸受、31a、31b…メガネ形状の攪拌翼、32a、32b…攪拌軸、33a、33b…仕切板、331…穴、332…スリット、334…熱媒、335…熱媒入口、336…熱媒出口、337…管、40…BDタンク、43、44…BD循環ライン、45…新BD供給ライン、50…ポリマー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするグリコール類とからなる被処理液を反応させてオリゴマーを製造する第1の反応器と、
該第1の反応器からのオリゴマーを縮重合させて、平均重合度20〜70の低重合度のポリマーを製造する第2の反応器と、
該第2の反応器からの平均重合度20〜70の低重合度のポリマーを更に縮重合させて、平均重合度150〜200の高重合度のポリマーを製造する第3の反応器とを備えたポリブチレンテレフタレートの連続製造装置であって、
前記第3の反応器は、一台の横形の反応容器で構成し、該反応容器内に水平方向に向けて対向するように設置された2つの攪拌軸の各々により互いに90度の位相差を付けて逆方向に回転するメガネ形状の攪拌翼を設けてメガネ翼式重合機で構成し、平均重合度20〜70の低重合度のポリマーが供給される入口側を少なくとも2つの領域に仕切り、且つ通過できる穴又はスリットを形成した仕切板を設けて構成することを特徴とするポリブチレンテレフタレートの連続製造装置。
【請求項2】
前記仕切板に熱媒を通すことを特徴とする請求項1記載のポリブチレンテレフタレートの連続製造装置。
【請求項3】
テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするグリコール類とからなる被処理液を第1の反応器を用いて反応させてオリゴマーを製造する第1の工程と、
該第1の工程で製造されたオリゴマーを第2の反応器を用いて縮重合させて、平均重合度20〜70の低重合度のポリマーを製造する第2の工程と、
該第2の工程で製造された平均重合度20〜70の低重合度のポリマーを第3の反応器を用いて更に縮重合させて、平均重合度150〜200の高重合度のポリマーを製造する第3の工程とを有するポリブチレンテレフタレートの連続製造方法であって、
前記第3の工程において用いる前記第3の反応器は、一台の横形の反応容器と、該反応容器内に水平方向に向けて対向するように設置された2つの攪拌軸と、該攪拌軸の各々に設けられ互いに90度の位相差を付けて逆方向に回転するメガネ形状の攪拌翼を設けてなるメガネ翼式重合機で構成され、前記反応容器内の平均重合度20〜70の低重合度のポリマーが供給される入口側を少なくとも2つの領域に仕切り、且つ通過できる穴又はスリットを形成した仕切板を設けて成ることを特徴とするポリブチレンテレフタレートの連続製造方法。
【請求項4】
前記第3の工程において用いる第3の反応器に設けられた前記仕切板に熱媒を通すことを特徴とする請求項3記載のポリブチレンテレフタレートの連続製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−248531(P2010−248531A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178399(P2010−178399)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【分割の表示】特願2004−297196(P2004−297196)の分割
【原出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】