説明

ポリプロピレン製延伸フィルム

【課題】
従来の延伸ポリプロピレンフィルムに比べ、強度、耐熱性が向上した延伸ポリプロピレンフィルムの提供。
【解決手段】
【請求項1】
ペンタッド分率の値が92%以上のポリプロピレンから選ばれる2種類ロピレンを含み、両者のポリプロピレンのペンタッド分率の値の差が1%〜5%であるポリプロピレン組成物からなることを特徴とする少なくとも一方向に延伸されたフィルム。ペンタッド分率の値が92%から98.5%のポリプロピレン(a)とメソペンタッドの値が93%から99.5%のポリプロピレン(b)を含み、ポリプロピレン(a)とポリプロピレン(b)のペンタッド分率の差が1%〜5%であるポリプロピレン組成物であることを特徴とする少なくとも一方向に延伸されたフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリプロピレン組成物からなる二軸延伸フィルム等のポリプロピレン製延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム等の延伸フィルムは、その優れた透明性、機械的強度、防湿性、剛性等を活かして包装材料をはじめ種々の用途に広く用いられている。また、ポリプロピレン二軸延伸フィルムの強度、透明度をさらに改良して更に広い用途への利用が期待される。
【0003】
本発明は、ポリプロピレン二軸延伸フィルム等の延伸フィルムの機械的強度の向上および耐熱性の向上を目的とするものであり、特定の関係にある2成分のポリプロピレンを含む組成物からなる二軸延伸フィルムを用いることにこの目的を達成することができることを見いだしたものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はペンタッド分率の値が92%以上のポリプロピレンから選ばれる2種類のポリプロピレン成分を含み、両者のポリプロピレン成分のペンタッド分率の値の差が1%〜5%であるポリプロピレン組成物からなることを特徴とする少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムに関する。
また、本発明は、ペンタッド分率の値が92%から98.5%のポリプロピレン成分(a)とペンタッド分率の値が93%から99.5%のポリプロピレン成分(b)を含み、ポリプロピレン成分(a)とポリプロピレン成分(b)のペンタッド分率の差が1%〜5%であるポリプロピレン組成物であることを特徴とする少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムに関する。
さらに本発明の少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムは、ポリプロピレン成分(a)が30〜70質量%およびポリプロピレン(b)が70〜30質量%((a)と(b)の合計で100質量%とする。)を含むポリプロピレン組成物からなることが好適である。
本発明によれば、引張弾性率がタテ方向2.5〜6GPaであり、ヨコ方向4.8〜7GPaである二軸延伸フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、従来の二軸延伸ポリプロピレンフィルム等の延伸フィルムに比べ強度、耐熱性に優れた二軸延伸フィルム等の延伸フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
ポリプロピレン
少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムのポリプロピレンは、特定の2成分を含むことを特徴としている。
これらのポリプロピレンの成分は、従来公知のポリプロピレンから選択して用いることができる。また、並列あるは直列の多段重合によってこれらの成分を調製しポリプロピレン組成物を調製することも行われる。
これらポリプロピレンの成分は、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されているプロピレンを主体とする重合体であり、通常、密度が0.890〜0.930g/cm、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)が0.001〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと他の少量例えば、1質量%以下のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン、ヘキセン−1等との共重合体、あるいは単独重合体と共重合体との組成物である。
本発明の延伸フィルムは、ペンタッド分率の値が92%以上のポリプロピレンから選ばれる2成分のポリプロピレンを含み、それら両者のポリプロピレン成分のペンタッド分率の値の差は1%〜5%、中でも好ましくは1%〜4%、更に好ましくは2%〜4%のものが用いられる。
【0007】
なお、ポリプロピレンのペンタッド分率の値は、エイ・ザンベリー(A.Zambelli)がMacromolecules,6巻,925頁(1973)に発表した方法に従って、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)の測定によりポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。
アイソタクチックのペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位の分率である。
但し、ピークの帰属に関しては、Macromolecules、8巻、687頁(1975)に記載の上記文献の訂正版に基づいて行った。
具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中mmmmピークの強度分率をアイソタクチックのペンタッド単位とする。
これらの特定の2成分を含むポリプロピレンとしては、ペンタッド分率の値が92%から98.5%のポリプロピレン成分(a)とペンタッド分率の値が93%から99.5%のポリプロピレン成分(b)を含み、ポリプロピレン成分(a)とポリプロピレン成分(b)のペンタッド分率の差が1%〜5%、中でも好ましくは1%〜4%、更に好ましくは2%〜4%であるポリプロピレン組成物が好適である。
このペンタッド分率の差が小さいと延伸性の改良効果が不十分となり、差が大きくなり過ぎると優れた機械物性を維持できなくなる場合がある。
さらに本発明の延伸フィルムにおけるポリプロピレン成分(a)は30〜70質量%、中でも40から60質量%、およびポリプロピレン成分(b)が70〜30質量%、中でも60〜40質量%((a)と(b)の合計で100質量%とする。)であることが好適である。
本発明によれば、引張弾性率がタテ方向2.5〜6GPa、中でも3〜6GPaであり、ヨコ方向4.8〜7GPa、中でも5〜7GPaと優れた機械的物性を有する二軸延伸フィルムが提供される。
なお、本発明の延伸フィルムには、上記の二種類のポリプロピレン成分の他に延伸フィルムの優れた機械的物性を損なわない範囲で、他のポリマー、その他の添加剤を配合してもよい。
例えば、さらにアイソタクシティシティの異なるポリプロピレンを併用することも行われるが、その場合は、さらに併用されるポリプロピレン成分はその目的に応じて上記のポリプロピレン成分(a)あるいはポリプロピレン成分(b)のいずれかの追加分として加算して、上記の規定の範囲内であればよい。
これらのポリプロピレンの各成分は、ラメラ状その他に配置されていてもよいが、好ましくはギロイド状等のミクロ構造となるように混練されることが望ましい。
本発明の延伸フィルムのポリプロピレン組成物のペンタッド分率は92%以上、中でも93%、その中でも95%以上であることが望ましい。
更に本発明の延伸フィルムには、必要に応じて石油樹脂などの炭化水素樹脂、高メルトテンションのポリプロピレン、核剤等を配合することが行われる。
【0008】
本発明の延伸フィルムのポリプロピレンには、チーグラー・ナッタ系触媒に限らず、シングルサイト触媒(メタロセン触媒等)を始め種々公知の触媒を用いて重合されたものを用いることができる。
また、ポリプロピレン組成物には、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、ベンジリデンソルビトール等の核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常、ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0009】
少なくとも一方向に延伸されたフィルム
本発明に用いられる少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムには、タテ方向に一軸延伸された延伸フィルム、ヨコ方向に一軸延伸された延伸フィルム、逐次二軸延伸された延伸フィルム、同時二軸延伸フィルム等がある。
タテ方向(MD方向)に一軸延伸された延伸フィルムを成形する方法としては従来から知られている方法を採用することができる。一般には未延伸フィルムのタテ方向だけをロール、テンター等を用いて延伸する方法が採用される。このタテ方向(MD方向)の延伸倍率は通常2〜6倍であり、一軸延伸フィルムの厚みは通常20〜800ミクロン(μm)である。
ヨコ方向(TD方向)に一軸延伸された延伸フィルムを成形する方法としては従来から知られている方法を採用することができる。一般には未延伸フィルムのヨコ方向(TD方向)だけをテンターを用いて延伸する方法が採用される。このヨコ方向(TD方向)の延伸倍率は通常1.5倍〜15倍であり、一軸延伸フィルムの厚みは通常20〜800ミクロン(μm)である。
また、逐次二軸延伸する成形方法には従来から知られている方法を採用することができる。一般にはタテ方向(MD方向)の延伸倍率は2〜7倍、ヨコ方向(TD方向)の延伸倍率は3〜13倍である。逐次二軸延伸されたフィルムの厚みは通常20〜500ミクロン(μm)である。
同時二軸延伸されたフィルムは、従来公知の種々の方法で成形することができる。その延伸倍率は、タテ方向(MD)が通常7〜12倍、好ましくは8〜11倍、ヨコ方向(TD)が通常7〜12倍、好ましくは8〜11倍の範囲である。延伸の際のテンター内温度は通常140〜200℃、好ましくは150〜190℃の範囲である。同時二軸延伸フィルムの厚さは通常30〜500ミクロン(μm)程度である。
これら延伸成形においては、通常の逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸を行った後、さらに引き続いて、タテ方向に延伸したり、ヨコ方向に延伸することも必要に応じて行われる。また、タテ方向を二段で延伸した後に、ヨコ方向に延伸することも行われる。さらに同時二軸延伸を行った後に、さらにタテ方向に再度延伸したり、予めタテ方向に延伸した後に同時二軸延伸を行うことも行われる。
【0010】
一般には、同時二軸延伸等の延伸の際のフィルムの中心付近の温度は、150℃〜190℃の範囲が通常であり、フィルムの両端の部分(テンタークリップで把持される部分)の温度はその温度より約1℃〜約100℃低い温度にコントロールすることが望ましい
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0011】
なお、物性値などは、以下の評価方法により求めた。
(1)弾性率(MPa)
二軸延伸ポリプロピレンフィルムからタテ方向(MD)及びヨコ方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機[(株)オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225]を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:5mm/分の条件で引張試験を行い、弾性率(MPa)を求めた。
【0012】
実施例1ないし5
逐次二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造
プライムポリマー社製F300SV[密度:910Kg/m3、MFR:3.0g/10分(230℃)、ペンタッド分率98%]50質量%及びプライムポリマー社製F102W[密度:910Kg/m3、MFR:2g/10分(230℃)、ペンタッド分率95%]50質量%を用い、スクリュー押出機で溶融押出し、逐次二軸延伸フィルム成形装置を用い、テンター(予熱温度:193℃、延伸温度:164℃及び熱セット温度:170℃並びに緩和率;タテ方向:4%及びヨコ方向:4%)を用い、タテ方向(MD)及びヨコ方向に表1に示す倍率で延伸して、厚さ30ミクロン(μm)の逐次二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
結果を表1に示す。
【0013】
比較例 1および2
原料のポリプロピレンとしてプライムポリマー社製F300SVのみ(比較例1)あるいは、プライムポリマー社製F102Wのみ(比較例2)を用いる以外は実施例1と同様にして行った。
結果を表2に示す。
【0014】
表 1

項 目 単位 実施例1 実施例2 実施例3 実施例4 実施例5
延伸
倍率
タテ 倍 5 6 7 7 7.5
ヨコ 倍 12 12.6 7.6 10 7.7

弾性率
タテ GPa 2.7 2.6 2.8 2.9 2.7
ヨコ GPa 4.8 5.3 5.2 6.0 4.9



表 2

項 目 単位 比較例1 比較例2

延伸
倍率
タテ 倍 5 5
ヨコ 倍 12 12

弾性率
タテ GPa 2.4 2.4
ヨコ GPa 4.8 4.2

本発明の延伸フィルムは、上記の表1に示すように高倍率の延伸が可能となり、その結果高弾性率の物性を有する延伸フィルムが得られる。
【0015】
実施例6ないし8
逐次二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造
プライムポリマー社製F300SV[密度:910Kg/m3、MFR:3.0g/10分(230℃)、ペンタッド分率98%]50質量%及びプライムポリマー社製F113G[密度:910Kg/m3、MFR:3g/10分(230℃)、ペンタッド分率92%]50質量%を用い、スクリュー押出機で溶融押出し、逐次二軸延伸フィルム成形装置を用い、テンター(予熱温度:188℃、延伸温度:166℃及び熱セット温度:170℃並びに緩和率;タテ方向:4%及びヨコ方向:4%)を用い、タテ方向(MD)及びヨコ方向に表3に示す倍率で延伸して、厚さ30ミクロン(μm)の逐次二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
結果を表3に示す。
【0016】
比較例 3
原料のポリプロピレンとしてプライムポリマー社製F113Gのみ(比較例3)を用いる以外は実施例6と同様にして行った。
結果を表3に示す。
【0017】
表 3

項 目 単位 実施例6 実施例7 実施例8 比較例3

延伸倍率
タテ 倍 5 6 7 6
ヨコ 倍 11 11 11 10

弾性率
タテ GPa 2.7 2.7 3.3 2.3
ヨコ GPa 5.3 5.3 6.3 5.1
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によれば、延伸性に優れたポリプロピレン組成物により機械的物性に優れ、耐熱性に優れた延伸フィルムを得ることができ、包装材料としてばかりでなく、離型フィルム等の種々の産業材用途への利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタッド分率の値が92%以上のポリプロピレンから選ばれる2成分のポリプロピレンを含み、両者のポリプロピレン成分のペンタッド分率の値の差が1%〜5%であるポリプロピレン組成物からなることを特徴とする少なくとも一方向に延伸されたフィルム。
【請求項2】
ペンタッド分率の値が92%から98.5%のポリプロピレン成分(a)とペンタッド分率の値が93%から99.5%のポリプロピレン成分(b)を含み、ポリプロピレン成分(a)とポリプロピレン成分(b)のペンタッド分率の差が1%〜5%であるポリプロピレン組成物であることを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一方向に延伸されたフィルム。
【請求項3】
ポリプロピレン成分(a)が30〜70質量%およびポリプロピレン成分(b)が70〜30質量%((a)と(b)の合計で100質量%とする。)を含むポリプロピレン組成物からなることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の少なくとも一方向に延伸されたフィルム。
【請求項4】
引張弾性率がタテ方向2.5〜6GPaであり、ヨコ方向4.8〜7GPaであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸フィルム。

【公開番号】特開2009−235228(P2009−235228A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82660(P2008−82660)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】