説明

ポリマー光変調器の製造方法

【課題】低温プロセスでゾルゲルガラスからなるクラッド・コア材の作製、屈折率の任意制御、光損失の極小制御が可能なポリマー光変調器の製造方法の提供。
【解決手段】下記式(1)
Si(OR4−n (1)
で表されるシリコンアルコキシド、その加水分解・縮合物、またはこれらの混合物と、光酸発生剤とを含む硬化性組成物を調製する工程と、
該硬化性組成物を基板上に塗布・硬化し、更にパターン形成を行い、ゾルゲルガラスから形成される下部クラッド層、コア層、側部クラッド層及び上部クラッド層を形成する工程と、
上部クラッド層中に、電気光学ポリマーから形成されるコア層を、該ゾルゲルガラスから形成されるコア層の上部に接触して埋設する工程とを含み、且つ、上部クラッド層と電気光学ポリマーから形成されるコア層との接続部の一部が、導波光の進行方向に対しテーパー構造を有する、ポリマー光変調器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー光変調器の製造方法に関する。更に詳しくは、光硬化が可能なゾルゲル材料を用いることにより、低温プロセスでのゾルゲルガラスから形成されるクラッド・コア材の作製が容易であり、屈折率を任意に制御可能であり、また、光の導波部分にテーパー構造を設置することにより、光損失を極めて小さく抑えることのできるポリマー光変調器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットに代表される情報通信ネットワークは、経済活動、社会活動に不可欠なものとなっており、情報通信の高速化、大容量化の必要性から、光通信システムが急速に伸長しつつある。また、大容量の情報処理のためのコンピュータ間の光インターコネクト、光ファイバー通信網を利用した情報携帯端末の情報伝送など、光を伝送媒体とする通信システムが、その応用範囲を広げつつある。これに伴い、光通信用デバイスの高性能化が求められている。中でも、光変調器は、電気信号を光信号に変換するデバイスとして、光通信システムの中で極めて重要な位置を占めている。
【0003】
ニオブ酸リチウム(LN)型光変調器は、最も広く使用されているものであり、デバイス寿命が長く、光損失が小さいなど長所がある一方、帯域幅は十分なものではなくなっており、駆動電圧が高く、無機バルク結晶である為小型化・集積化が難しいなど課題も抱えている。
【0004】
また、非特許文献1〜2では、構成材料が全て有機ポリマーである全ポリマー型光変調器が開示されている。全ポリマー型は帯域幅が前述のLN型より広く、また、小型化・集積化が可能である。一方で、デバイス寿命はLN型より劣り、光損失もLN型より大きいなど課題がある。
【0005】
一方、特許文献1、非特許文献3では、屈折率変調を行う電気光学ポリマーのみが有機ポリマーであり、その他の構成材料がゾルゲルガラスであり、更にデバイス内部にテーパー構造を有する有機無機ハイブリッド型光導波路スイッチ、変調器が開示されている。有機無機ハイブリッド型は、帯域幅が広く、駆動電圧が低く、またデバイス寿命が長く、小型化・集積化が可能であるなど、LN型、全ポリマー型の長所を併せ持っており、更に、テーパー構造を設けることにより、光損失を抑えている。しかしながら、クラッド部のゾルゲルガラスの屈折率が高く、光の封じ込め効果が十分であるとは言えない。
【0006】
更に、特許文献2では、感光性ゾルゲル材料の光硬化により、ゾルゲルガラスを形成する、光導波路の製造方法が開示されている。しかしながら、この光導波路にはテーパー構造などの光損失を抑える構造は設けられておらず、光損失が十分とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−169945号公報
【特許文献2】特許第3867409号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Applied Physics Letters 76,3525−3527(2000)
【非特許文献2】Applied Physics Letters 78,3136−3138(2001)
【非特許文献3】Nature Photonics Vol.1,180−185,(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ポリマー光変調器においては、光硬化による低温プロセスで短時間でのゾルゲルガラスの作製と伴に、ゾルゲルガラスの屈折率の十分な制御が求められていた。そして作製したポリマー光変調器の光損失を効果的に抑えることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、本発明の態様により上記課題を解決できることを見いだした。
【0011】
本発明の一態様は、下記一般式(1)
Si(OR4−n (1)
(Rは炭素数1〜10の有機基、もしくはフッ素化アルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、アシル基、nは1〜3の整数)
で表されるシリコンアルコキシド、その加水分解・縮合物、またはこれらの混合物と、光酸発生剤とを含有する硬化性組成物を調製する工程と、
該硬化性組成物を基板上に塗布・硬化し、更にパターン形成を行うことにより、ゾルゲルガラスから形成される下部クラッド層、コア層、側部クラッド層及び上部クラッド層を形成する工程と、
上部クラッド層中に、電気光学ポリマーから形成されるコア層を、該ゾルゲルガラスから形成されるコア層の上部に接触して埋設する工程とを含み、且つ、上部クラッド層と電気光学ポリマーから形成されるコア層との接続部の一部が、導波光の進行方向に対してテーパー構造を有する、ポリマー光変調器の製造方法である。
【0012】
本発明の一態様は、上記硬化性組成物が、下記一般式(2)
【化1】

(Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子、ジルコニウム原子、Rは炭素数1〜4のアルキル基、アシル基、nは1〜10の整数)
で表される金属アルコキシド、その加水分解・縮合物、またはこれらの混合物をさらに含有する、ポリマー光変調器の製造方法である。
【0013】
本発明の一態様は、上部クラッド層を形成する硬化性組成物に、グレイスケールマスクを介して活性エネルギー線を露光し、未露光部を除去してクラッド層の一部にテーパー構造を有する、ポリマー光変調器の製造方法である。
【0014】
本発明の一態様は、ゾルゲルガラスから形成される下部・上部クラッド層の屈折率がn1であり、ゾルゲルガラスから形成されるコア層の屈折率がn2であり、電気光学ポリマーから形成されるコア層の屈折率がn3であり、且つ、n1<n2<n3である、ポリマー光変調器の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様により、ポリマー光変調器において、光硬化による低温プロセスで短時間でのゾルゲルガラスの作製と伴に、ゾルゲルガラスの屈折率の十分な制御が可能となる。そして作製したポリマー光変調器の光損失を効果的に抑えること可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)〜(h)は、本発明に係るポリマー光変調器の製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書中において、
「上部クラッド層と電気光学ポリマーから形成されるコア層との接続部の一部が、導波光の進行方向に対してテーパー構造を有する」とは、例えば、図1(g)中において、上部クラッド層9中に示されているように、上部クラッド層7の一部が、電気光学ポリマーから形成されるコア層10の側に向かって傾斜した構造を有していることをいう。そして、電気光学ポリマーから形成されるコア層10の平面とテーパー構造の斜面とがなす角度を、テーパー角度という。テーパー角度は、0.5〜5°であることができる。
「ゾルゲルガラス」とは、シロキサン系化合物に、熱又は活性エネルギー線等の照射を行うことにより、ゾル−ゲル反応を進行させて得られるポリシロキサン系の無機膜をいう。
「電気光学ポリマー」とは、有機色素を透明な有機ポリマー中に含有させたものをいい、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のマトリクス樹脂中にドープしたものが挙げられる。ここで、マトリクス樹脂中の色素の濃度は、0.1質量%〜80質量%であることができる。
【0018】
硬化性組成物の調製工程
本発明に係る硬化性組成物は、一般式(1)で示されるシラン化合物(以下、化合物A)、その加水分解・縮合物、あるいはこれらの混合物、又は、該化合物A、その加水分解・縮合物。あるいはこれらの混合物と、一般式(2)で示される金属アルコキシド(以下、化合物B)、その加水分解・縮合物、あるいはこれらの混合物に、光酸発生剤を添加することにより調製される。
【0019】
一般式(1)で表される化合物Aとしては、例えば、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中で、特にメチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランが好適である。
【0020】
また、化合物Bとしては、例えば、テトラメトキシシランおよびこのn量体、テトラエトキシシランおよびこのn量体、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラn−プロポキシド、チタニウムテトラi−プロポキシド、チタニウムテトラn−ブトキシド、チタニウムテトラsec−ブトキシド、チタニウムテトラtert−ブトキシド、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトラi−プロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラsec−ブトキシド、ジルコニウムテトラtert−ブトキシド、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラn−プロポキシド、ゲルマニウムテトラi−プロポキシド、ゲルマニウムテトラn−ブトキシド、ゲルマニウムテトラsec−ブトキシド、ゲルマニウムテトラtert−ブトキシドなどが挙げられる。これらの中で、特にテトラメトキシシランおよびこのn量体、テトラエトキシシランおよびこのn量体、チタニウムテトラn−プロポキシド、チタニウムテトラi−プロポキシド、チタニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトラi−プロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシドが好適である。
【0021】
本発明に係る硬化性組成物は、化合物Aを単独で用いても、2種類以上を組み合わせ用いてもよく、また、化合物Aを単独で加水分解・縮合したもの、もしくは2種類以上を組み合わせたものを加水分解・共縮合させたものを用いてもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。更に、化合物Aに化合物Bを混合したもの、あるいは化合物Aと化合物Bを加水分解・共縮合させたものを用いてもよい。化合物Aと化合物Bを共縮合させる場合のモル比は、化合物A:化合物B=100:0〜10:90の範囲ならば、任意のモル比を選択できる。
【0022】
化合物A、化合物Bの加水分解・(共)縮合の触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸およびフッ化水素酸などの無機酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸などの有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属類、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、ピペリジンなどのアミン化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩などが好適である。
【0023】
触媒量は、化合物A、あるいは化合物Aと化合物Bの合計100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。0.01質量部以上では十分な触媒活性を得ることができる。また、20質量部以下ならば、残留触媒の硬化物性への影響を低く抑えることができる。
【0024】
化合物A、あるいは化合物Aおよび化合物Bの加水分解に使用する水の量は、加水分解性アルコキシ基のモル数の理論量合計の0.1〜10倍が好ましく、1〜3倍がより好ましい。
【0025】
加水分解共縮合の反応温度は、0〜100℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。0℃以上ならば十分に反応が進行する。100℃以下ならば副反応の誘発やゲル化の可能性が少ない。
【0026】
加水分解共縮合反応時には、有機溶媒を使用することが好ましい。有機溶媒としては、化合物A、あるいは化合物Aおよび化合物Bを溶解できるものであれば特に限定はないが、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独でも、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0027】
本発明に係る硬化性組成物には、重合・硬化を促進させるために、光酸発生剤を含有させることが好ましい。光酸発生剤は特に限定はないが、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。これらのうち、特にヨードニウム塩およびスルホニウム塩が好ましい。
【0028】
ヨードニウム塩の具体例としては、(トリクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム・テトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム・テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・テトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0029】
また、スルホニウム塩の具体例としては、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・テトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・ビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウム四フッ化ホウ素、トリフェニルスルホニウム六フッ化アンチモン、トリフェニルスルホニウム六フッ化ヒ素、トリ(4−メトキシフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウム六フッ化ヒ素等が挙げられる。
【0030】
本発明に係る硬化性組成物には、ラジカル重合性官能基あるいはカチオン重合性官能基を有する化合物を併用することができる。
【0031】
ラジカル重合性官能基を有する化合物としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート及びフォスフォエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3−フェニルフェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニルプロパン]、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−クロロスチレン、m−クロロスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メトキシスチレン、α−メチル−m−メトキシスチレン、α−メチル−p−クロロスチレン、α−メチル−m−クロロスチレンなどスチレン化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテル、ブチルプロペニルエーテル、メチルブテニルエーテル、エチルブテニルエーテル、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカルバゾール、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテルなどのビニル化合物、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル、ジアリルエーテル、ジエチレングリコールビスアリルエーテル、アリルアセテート、アリルブチラート、アリルヘキサノエート、アリルカプロエート、アリルクロルアセテート、アリルメタクリレート、ジアリルマレート、ジアリルスクシネート、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメレテート、1,3,5-トリアリルベンゼンカルボン酸、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル化合物、フェニルグリシジルエーテル、p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-ドデシレンオキサイド、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシデカン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3-アクロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3-ビニルシクロヘキセンオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンオキサイド、1,1,3-テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-(3,4-エポキシシクロヘキシル)カルボシキレート、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、3,3-ジメチルオキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、2-ヒドロキシメチルオキセタン、3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-メトキシメチルオキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、レゾルシノールビス(3-メチル-3-オキセタニルエチル)エーテル、m-キシリレンビス(3-エチル-3-オキセタニルエチルエーテル)等のオキセタン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルシリケート(テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)、エチルシリケート(テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物)、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、これらの化合物を加水分解・縮合して得られる、アルコキシシリル基および/またはシラノール基を有するシリコーン化合物などが挙げられる。
【0032】
本発明に係る硬化性組成物において、ラジカル重合性官能基を有する化合物を併用する場合は、重合・硬化反応を促進させる為に、ラジカル重合開始剤を含有させることが好ましい。ラジカル重合開始剤は、特に限定はないが、例えば2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビス(イソブチレート)、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルブチレート)及びジメチル−2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルペンタノエート)、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過炭酸ナトリウム等であり、また有機過酸化物としてはt−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ターシャリジブチルなどの熱ラジカル重合開始剤、あるいは、3,3−ジメチル−4−メトキシ−ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1,2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0033】
本発明に係る硬化性組成物は、固形分濃度調整、塗布性向上、基材への密着性向上等を目的として、有機溶媒を含有できる。有機溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、セロソルブ類及び芳香族化合物類が挙げられる。
【0034】
具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2−メトキシエチルアルコール、2−エトキシエチルアルコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0035】
また、本発明に係る硬化性組成物は、その他、必要に応じて、無機微粒子、染料、顔料、顔料分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を含有できる。
【0036】
ポリマー光変調器作製工程
本発明に係るポリマー光変調器は、基板に、ゾルゲルガラスから形成される下部クラッド層、コア層、側部クラッド層及び上部クラッド層、電気光学効果(電界を印加することにより、屈折率が変化する現象)を示す電気光学ポリマー(有機色素を透明な有機ポリマー中に含有させたもの)、更に、低屈折率の有機ポリマーもしくはゾルゲルガラスから形成されるバッファ層を順次塗布、硬化させ、これらを形成させることにより作製される。尚、ゾルゲルガラスから形成される層は、前述の硬化性組成物を硬化させることにより形成することができる。
【0037】
硬化性組成物もしくは有機ポリマーの塗布方法としては、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、フローコート法、グラビアコート法、ロールコート法など公知の方法を用いることができるが、特にスピンコート法が好適である。
硬化性組成物を塗布した後、加熱(プレベーク)することにより、薄膜を形成することができる。加熱温度は50〜200℃が好ましく、70〜120℃が更に好ましい。また、加熱時間は1〜30分が好ましく、5〜10分が更に好ましい。
【0038】
形成した薄膜に活性エネルギー線を照射することにより、薄膜を硬化させ、ゾルゲルガラスから形成される層を得ることができる。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、α線、β線、γ線などを用いることができる。光源としては特に制限はないが、例えば、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、LEDランプなどが使用できる。活性エネルギー線により得られたゾルゲルガラスから形成される層を更に加熱(ポストベーク)することにより、硬化をより進行させることもできる。ポストベークの条件は、プレベークのそれと同様である。
【0039】
コア層、クラッド層を、所定のパターンで形成する時は、所定の開口形状を有するフォトマスクを使用することが好ましい。また、本発明の一態様では、クラッド層の一部にテーパー構造を形成するため、フォトマスクの両端から徐々に透過光が減少し、中央部は全く光を通さないグレイスケールマスクを使用することを特徴としている。
【0040】
フォトマスクを介して光照射を行った場合、露光部は硬化し、未露光部は未硬化のままである。したがって、露光部と未露光部の溶解度差を利用し、未露光部を有機溶剤またはアルカリ溶液などで溶解除去することで、露光部のパターンを現像することができる。
【0041】
使用される現像液としては、前述の硬化性組成物に含有できる有機溶媒、あるいはシラン化合物の加水分解・縮合の触媒に用いられるアルカリ金属、アミン化合物、第4級アンモニウム塩のアルカリ水溶液などが好適である。これらアルカリ水溶液の濃度は、0.1〜10重量%が好適であり、0.5〜5重量%が更に好適である。また、これらアルカリ水溶液に、水溶性のアルコールやケトン、環状エーテルなどの有機溶媒を適量混合した溶液を用いることもできる。
【0042】
現像方法は、現像液を噴霧する方法、現像液で洗い流す方法、現像液に浸漬する方法など、どのような方法を用いてもよいが、浸漬法が簡便である。現像時間は10〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましい。
【0043】
現像によりパターン形成されたゾルゲルガラスから形成される層を更に加熱し、架橋をより進行させることができる。この時の加熱条件は、前述のプレベーク、ポストベークの加熱条件と同様である。
クラッド層とコア層のゾルゲルガラスの屈折率差(n2−n1)は、1550nmの波長に対して好ましくは0.001〜0.5であり、より好ましくは0.003〜0.3である。屈折率差がこの範囲ならば、デバイス内への十分な光閉じ込め効果を得ることができ、光損失を低く抑えることができる。
【0044】
電気光学効果を有する有機色素を有機ポリマー中に含有させた電気光学ポリマーを、有機溶剤などに溶解した溶液を塗布し、乾燥させることにより電気光学ポリマーから形成される層を形成することができる。
尚、電気光学ポリマーとは、電場を変化させることにより、その屈折率を可逆的に変化させることができるポリマーのことを指す。
【0045】
電気光学ポリマーの屈折率n3は、1550nmの波長に対して1.60以上2.50未満であることが好ましい。n3がこの範囲であれば、光損失を低く抑えることができる。
【0046】
電気光学ポリマー中に含有される有機色素は、電気光学効果を有する化合物であれば特に限定されないが、共役系の化学構造を有し、更に、分子内に電子供与性基及び電子求引性基を有する化合物が好ましい。ここで、共役系の化学構造の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ペリレン、ビフェニル、インデン、スチルベン等の芳香族化合物、フラン、ピラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、クマリン等の複素環式化合物、これらの化合物同士が炭素―炭素あるいは窒素―窒素不飽和結合を介して結合したもの等が挙げられる。
【0047】
電子供与性基としては、例えばアルキル基、アリール基又はアシル基で置換されてもよいアミノ基、アルコキシ基、アリルオキシ基並びにチオエーテル基等が挙げられる。電子求引性基としては、例えばニトロ基、シアノ基、ジシアノビニル基、トリシアノビニル基、ハロゲン原子、カルボニル基、スルホン基、ペルフルオロアルキル等が挙げられる。
【0048】
有機色素を具体的に例示すると、p−ジブチルアミノニトロベンゼン、パラニトロアニリン、2−メトキシ−5−ニトロフェノール、2−メチル−4−ニトロアニリン、4−ジメチルアミノ−4’−ニトロスチルベン、4−ニトロ−4’−アミノスチルベン、1−[p−(ジブチルアミノ)フェニルビニル−4−トリシアノビニル]チオフェン、1−(p−ジブチルアミノフェニル)−4−トリシアノビニル−エチレン、4−ニトロ−4’−(N−エチル−N−ヒドロキシエチル)アミノアゾベンゼン、4−ジシアノビニル−4’−(N−エチル−N−ヒドロキシエチル)アミノアゾベンゼン、4−ジシアノビニル−4’−(N,N−ジメチル)アミノアゾベンゼン、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−(ジメチルアミノ)スチリル)−4H−ピラン、3−メチル−4−ニトロピリジン−N−オキシド、2−シクロオクチルアミノ−5−ニトロピリジン、3,5−ジメチル−1−(4−ニトロフェニル)ピラゾール、4−(イソポロパキシカルボニル)アミノニトロベンゼン、N−メトキシメチル−4−ニトロアニリンなどが挙げられる。
尚、本発明の一態様において、特に式(3)の有機色素が好適に用いられる。
【0049】
【化2】

,R:炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、
O−シリル化アルキル基
:水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシアルキル基
:炭素数1〜8のフルオロアルキル基
:アリール基、チオフェニル基、芳香族置換チオフェニル基
【0050】
有機色素を含有させるマトリクス樹脂は、透明性の高いものであれば特に限定はないが、例えばメタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、シリコーン樹脂、これらの共重合体やブレンド物などが挙げられる。これらの中で、特にメタクリル樹脂、アクリル系樹脂が好適である。
【0051】
電気光学ポリマー中の有機色素の含有量は、電気光学ポリマー100質量部当たり、0.1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がさらに好ましい。該含有量がこの範囲ならば、透明性が維持され、かつ十分な電気光学効果を得ることが可能である。
【0052】
高い電気光学効果を得るためには、電気光学ポリマー中の有機色素を配向させる必要がある。これを、ポーリング処理という。ポーリング処理は、電気光学ポリマーをガラス転移点近傍まで加熱し電界を印加する方法、電気光学ポリマーに対しコロナ放電を行う方法、電気光学ポリマーを加熱しながらレーザー光を照射する方法などが挙げられ、ポリマーや有機色素の性質により、好ましい方法を選択することができる。
【0053】
クラッド層のゾルゲルガラスの屈折率n1、コア層のゾルゲルガラスの屈折率n2、電気光学ポリマーの屈折率n3は、n1<n2<n3であることが好ましい。屈折率がこのような関係であれば、デバイス内部への光の閉じ込め効果が高くなり、光損失を低く抑えることができる。
【0054】
この後、電気光学ポリマーを含むデバイス上面全体に低屈折率の有機ポリマー、もしくはシリカ系ゾルを塗布・乾燥し、必要に応じてUV照射を行うことにより、バッファ層を形成することができる。バッファ層の屈折率は、1.50未満であることが好ましく、1.40未満であることが更に好ましい。バッファ層の屈折率が1.50未満ならば、デバイス内部への十分な光の閉じ込め効果を得ることができ、光損失を低く抑えることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の態様を実施例により説明する。但し、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、特に記載のない限り、以下の手順を室温室湿度下で行っている。
【0056】
(製造例1)シロキサンオリゴマー1の製造
撹拌装置、温度制御装置、コンデンサーを備えた反応容器に、メチルシリケート7.9g(0.01mol)、メチルトリメトキシシラン13.6g(0.1mol)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン31.6g(0.0725mol)、1−メトキシ−2−プロパノール59g、脱イオン水12.2g(0.68mol)を仕込み、80℃で6時間加水分解・縮合させ、シロキサンオリゴマー1を製造した。
【0057】
(製造例2)シロキサンオリゴマー2の製造
製造例1と同様の装置に、メチルトリメトキシシラン21.5g(0.158mol)、
フェニルトリメトキシシラン8.3g(0.042mol)、1−メトキシ−2−プロパノール12.7g、脱イオン水10.8g(0.6mol)を仕込み、80℃で6時間加水分解・縮合させ、シロキサンオリゴマー2を製造した。
【0058】
(製造例3)シロキサンオリゴマー3の製造
製造例1と同様の装置に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン24.8g(0.1mol)、1−メトキシ−2−プロパノール30g、脱イオン水5.4g(0.3mol)を仕込み、80℃で6時間加水分解・縮合させ、シロキサンオリゴマー3を製造した。
【0059】
(調製例1)クラッド層形成用硬化性組成物CL1の調製
シロキサンオリゴマー1 100質量部に、光酸発生剤(メーカー名;BASF、品番:IRGACURE250)1質量部、レべリング剤(メーカー名;東レダウコーニング製、品番:L7001)0.1質量部を添加し、均一になるまで混合して、硬化性組成物CL1を調製した。
【0060】
(調製例2)コア層形成用硬化性組成物CO1の調製
調製例1のシロキサンオリゴマー1の代わりに2を使用した以外は同様の手順で、硬化性組成物CO1を調製した。
【0061】
(調製例3)クラッド層形成用硬化性組成物CL2の調製
調製例1のシロキサンオリゴマー1の代わりに3を使用した以外は同様の手順で、硬化性組成物CL2を調製した。
【0062】
(実施例1)
下部電極を形成した熱酸化膜付きシリコン基板1(寸法:4インチ角)のSiO膜上に、硬化性組成物CL1をスピンコート(回転数:2000回転/分、時間:30秒、機器名:ミカサMSA−100)で塗布した後、100℃で10分間プレベークし、照射強度11mW/cmで5分間紫外線照射(波長:365nm)(メーカー名;ユニオン光学、型番: EMA−400)を行い、4μmの膜厚の下部クラッド層2を形成した。下部クラッド層2の屈折率を測定したところ(測定方法名:プリズムカプラ法、測定波長:1550nm、メーカー名:メトリコン社、型番:Model 2010)、1.394であった。
【0063】
下部クラッド層2の全面に硬化性組成物CO1をスピンコート(回転数:2000回転/分、時間:30秒、機器名:ミカサMSA−100)で塗布した後、100℃で5分間プレベークし、フォトマスク3(メーカー名:HOYA(株))を介して照射強度11mW/cmで5分間紫外線照射を行い(図1(a))、2.5質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に30〜60秒間浸漬することにより、未露光部を除去し、4μm厚のゾルゲルコア層4を下部クラッド層2上に形成した(図1(b))。ゾルゲルコア層4の屈折率を測定したところ、1.463であった。
【0064】
ゾルゲルコア層4の側面が埋まるようにCL1をスピンコート(回転数:2000回転/分、時間:30秒、機器名:ミカサMSA−100)で塗布した後、100℃で10分間プレベークし、照射強度11mW/cmで5分間紫外線照射を行い、4μm厚の側部クラッド層5を形成した(図1(c))。
【0065】
ゾルゲルコア層4、側部クラッド層5からなる全面に、CL1をスピンコート(回転数:2000回転/分、時間:30秒、機器名:ミカサMSA−100)で塗布した後、100℃で5分間プレベークし、フォトマスク6(メーカー名:HOYA(株))を介して照射強度11mW/cmで5分間紫外線照射を行い(図1(d))、更に、100℃で1分間ポストベークして得られた基板を、2.5%質量テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に30〜60秒間浸漬することにより、未露光部を除去し、4μm厚の上部クラッド層7を形成した(図1(e))。
【0066】
上部クラッド層7、ゾルゲルコア層4上部の空間部をCL−1で埋め、100℃で10分間プレベークし、グレイスケールマスク8(メーカー名:Benchmark(株))を介して照射強度11mW/cmで5分間紫外線照射を行い(図1(f))、更に100℃で1分間ポストベークして得られた基板を、2.5質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に30〜60秒間浸漬することにより、未露光部を除去し、テーパー角度2°でテーパー構造を有する上部クラッド層9を形成した(図1(g))。上部クラッド層7およびテーパー構造を有する上部クラッド層9に囲まれた空間の底部は、ゾルゲルコア層4の上面になっている。この空間に、非特許文献3に準じて合成した電気光学ポリマーを8質量%の濃度になるように調製したトリクロロエタン溶液をスピンコート(回転数:2000 回転/分、時間:30 秒、機器名:ミカサMSA−100)により塗布し、真空オーブン中で80℃、133Pa以下の減圧下で一昼夜加熱し、溶媒を除去して1μm厚の電気光学ポリマーから形成される層を形成した。その後、スパッタリングにより電気光学ポリマーから形成される層上に金電極を形成し、150℃で加熱しながら200〜400Vの電圧をかけ、ポーリング処理を行い電気光学ポリマーから形成されるコア層10を形成した。ポーリング処理終了後、電気光学ポリマー上の金電極はエッチングにより除去した。(電気光学ポリマーの屈折率:1.643)
【0067】
更に、電気光学ポリマーから形成される層の上部に、フッ素系ポリマー(メーカー名:旭硝子(株)、品番:CYTOP−809M)をスピンコート(回転数:2000回転/分、時間:30秒、機器名:ミカサMSA−100)によって塗布、乾燥し、1.8μm厚のバッファ層11を形成した。バッファ層11の上にスパッタリングにより金の上部電極12を形成し、ポリマー光変調器を完成させた。光伝播損失値を測定したところ、0.1dB/cm未満であった。
【0068】
(比較例1)
実施例1において、硬化性組成物CL1の代わりに、化合物Aを含まないCL2を硬化性組成物として使用して下部クラッド層を作製したところ、硬化までに紫外線照射15分間を要し、製膜性が不良であった。また、1550nmでの屈折率は1.500であった。
【0069】
(比較例2)
実施例1において、グレイスケールマスクの代わりに、通常のフォトマスクを使用し、テーパー構造のない上部クラッド層を形成し、その後は同様の手順でポリマー光変調器を作製した。光伝播損失値を測定したところ、3dB/cm以上であった。
【符号の説明】
【0070】
1 下部電極付シリコン基板
2 下部クラッド層
3 フォトマスク
4 ゾルゲルコア層
5 側部クラッド層
6 フォトマスク
7 上部クラッド層
8 グレイスケールマスク
9 テーパー構造を有する上部クラッド層
10 電気光学ポリマーから形成されるコア層
11 バッファ層+上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
Si(OR4−n (1)
(Rは炭素数1〜10の有機基、もしくはフッ素化アルキル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基、アシル基、nは1〜3の整数)で表されるシリコンアルコキシド、その加水分解・縮合物、またはこれらの混合物と、光酸発生剤とを含有する硬化性組成物を調製する工程と、
該硬化性組成物を基板上に塗布・硬化し、更にパターン形成を行うことにより、ゾルゲルガラスから形成される下部クラッド層、コア層、側部クラッド層及び上部クラッド層を形成する工程と、
上部クラッド層中に、電気光学ポリマーから形成されるコア層を、該ゾルゲルガラスから形成されるコア層の上部に接触して埋設する工程とを含み、且つ、上部クラッド層と電気光学ポリマーから形成されるコア層との接続部の一部が、導波光の進行方向に対してテーパー構造を有する、ポリマー光変調器の製造方法。
【請求項2】
該硬化性組成物が、下記一般式(2)
【化1】

(Mはケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子、ジルコニウム原子、Rは炭素数1〜4のアルキル基、アシル基、nは1〜10の整数)で表される金属アルコキシド、その加水分解・縮合物、またはこれらの混合物をさらに含有する、請求項1に記載のポリマー光変調器の製造方法。
【請求項3】
上部クラッド層を形成する硬化性組成物に、グレイスケールマスクを介して活性エネルギー線を露光し、未露光部を除去してクラッド層の一部にテーパー構造を設ける、請求項1または2に記載のポリマー光変調器の製造方法。
【請求項4】
ゾルゲルガラスから形成される下部・上部クラッド層の屈折率がn1であり、ゾルゲルガラスから形成されるコア層の屈折率がn2であり、電気光学ポリマーから形成されるコア層の屈折率がn3であり、且つ、n1<n2<n3である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー光変調器の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−25261(P2013−25261A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162418(P2011−162418)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】