説明

ポンプ及び洗浄装置

【課題】ケーシングを成形するための金型コストの低減及びケーシングの成形工程の容易化を図ることができるポンプと、このポンプを備えた洗浄装置とを提供する。
【解決手段】ポンプ1は、内部がポンプ室2となっており、該ポンプ室2内に流体を吸入するための吸入口3及び該ポンプ室2内から流体を吐出するための吐出口4を有したケーシング20と、該ポンプ室2内に並列に配置され、互いに噛合した1対の歯車5,6とを備えている。吸入口3及び吐出口4のうち、少なくともそれらの軸心線方向の途中部からポンプ室2側の部分は、それぞれ、該ポンプ室2側ほど大径となる拡径部3a,3bとなっている。ケーシング20は、拡径部3a,4aの周方向の前半側を構成する第1のケーシング体21と、拡径部3a,4aの周方向の後半側を構成する第2のケーシング体22とを接合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに噛合した1対の歯車の回転により流体を圧送するように構成されたポンプに係り、特に、該歯車を収容したポンプ室に流体を吸入するための吸入口及び該ポンプ室内から流体を吐出するための吐出口が、それぞれ、該ポンプ室側ほど大径となっているポンプに関する。また、本発明は、このポンプを備えた、便器使用者の臀部に洗浄ノズルから洗浄水を噴射して洗浄するための洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器に設置され、便器使用者の臀部に洗浄ノズルから洗浄水を噴射して洗浄するための洗浄装置は周知である。この洗浄ノズルに洗浄水を供給するためのポンプとして、互いに噛合した1対の歯車の回転により洗浄水を圧送するように構成された、いわゆるギヤポンプが広く用いられている。
【0003】
このギヤポンプは、内部がポンプ室となっており、該ポンプ室内に洗浄水を吸入するための吸入口及び該ポンプ室内から洗浄水を吐出するための吐出口を有したケーシングと、該ポンプ室内に並列に配置され、互いに噛合した1対の歯車とを備えており、該ポンプ室内で該歯車が回転することにより、洗浄水が該吸入口から該ポンプ室内に吸入されると共に、該ポンプ室内の洗浄水が該吐出口から吐出されるように構成されている。
【0004】
特許文献1には、吸入口及び吐出口のポンプ室側に、それぞれ、該ポンプ室側ほど大径となる拡径部を設けることが記載されている。吸入口がポンプ室側ほど大径となっていると、洗浄水が吸入口からポンプ室内に流入する際に、洗浄水が吸入口の内周面に沿って広がるように流れるため、各歯車によって洗浄水がポンプ室内をスムーズに吐出口側へ移送されるようになる。また、吐出口がポンプ室側ほど大径となっていることにより、各歯車によってポンプ室内を吐出口側へ移送されてきた洗浄水がスムーズに吐出口に流入することができる。これにより、ポンプ内における洗浄水の流通抵抗が低減され、効率よく洗浄水を洗浄ノズルに圧送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−142387
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のポンプにあっては、ケーシングを金型を用いて成形する場合、吸入口及び吐出口の拡径部がアンダーカット形状となるため、これらの拡径部を形成するために、他の部分を形成するための金型部分と別体の中子を金型内に設置する必要がある。そのため、ケーシングを成形するための金型コストが増大すると共に、ケーシングの成形工程が煩雑なものとなる。
【0007】
本発明は、ケーシングを成形するための金型コストの低減及びケーシングの成形工程の容易化を図ることができるポンプと、このポンプを備えた洗浄装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)のポンプは、内部がポンプ室となっており、該ポンプ室内に流体を吸入するための吸入口及び該ポンプ室内から流体を吐出するための吐出口を有したケーシングと、該ポンプ室内に並列に配置され、互いに噛合した1対の歯車とを備えており、該ポンプ室内で該歯車が回転することにより、流体が該吸入口から該ポンプ室内に吸入されると共に、該ポンプ室内の流体が該吐出口から吐出されるように構成されたポンプであって、該吸入口及び吐出口のうち、少なくともそれらの軸心線方向の途中部から該ポンプ室側の部分は、それぞれ、該ポンプ室側ほど大径となる拡径部となっているポンプにおいて、該ケーシングは、少なくとも、該拡径部の周方向の一部を構成する第1のケーシング体と、該拡径部の周方向の他部を構成する第2のケーシング体とを接合してなることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2のポンプは、請求項1において、前記吸入口及び吐出口の軸心線に沿う断面内において、該吸入口及び吐出口の前記拡径部の内周面は、それぞれ、該吸入口及び吐出口の内方に凸に湾曲した形状となっていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明(請求項3)の洗浄装置は、便器に設置され、便器使用者の臀部を洗浄するための洗浄装置であって、便器使用者の臀部に洗浄水を噴射するための洗浄ノズルと、該洗浄ノズルに洗浄水を供給するためのポンプとを備えた洗浄装置において、該ポンプは、請求項1又は2に記載のポンプであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明(請求項1)のポンプにあっては、吸入口及び吐出口のうち、少なくともそれらの軸心線方向の途中部からポンプ室側の部分は、それぞれ、該ポンプ室側ほど大径となる拡径部となっているが、ケーシングは、少なくとも、各拡径部の周方向の一部を構成する第1のケーシング体と、各拡径部の周方向の他部を構成する第2のケーシング体とを接合してなる。そのため、これらのケーシング体を金型を用いて成形する際に、該金型内において各拡径部がアンダーカット形状とならない。これにより、各拡径部を形成するために、該拡径部以外の部分を形成するための金型部分と別体の中子を金型内に設置することが不要であるため、ケーシングを成形するための金型コストの低減及びケーシングの成形工程の容易化を図ることができる。
【0012】
なお、請求項1の「該ケーシングは、少なくとも、該拡径部の周方向の一部を構成する第1のケーシング体と、該拡径部の周方向の他部を構成する第2のケーシング体とを接合してなる」との記載は、拡径部が2個のケーシング体により構成されることだけでなく、3個以上のケーシング体により構成されてもよいことも示している。具体的には、例えば拡径部を3個のケーシング体により構成する場合、ケーシングは、少なくとも、拡径部の周方向の一部を構成する第1のケーシング体と、該拡径部の周方向の他の一部を構成する第2のケーシング体と、該拡径部の周方向の残部を構成する第3のケーシング体とを備えたものとされ、これらのケーシング体を接合することにより、3個に分割されていた拡径部の各部が合体して拡径部が完成する。もちろん、拡径部は、4個以上のケーシング体により構成されてもよい。拡径部は、周方向に等間隔に分割されてもよく、不等間隔に分割されてもよい。ケーシングは、拡径部を構成しないケーシング体を含んでいてもよい。
【0013】
本発明のポンプにあっては、吸入口がポンプ室側ほど大径となっていることにより、流体が吸入口からポンプ室内に流入する際に、流体が吸入口の内周面に沿って広がるように流れるため、各歯車によって洗浄水がポンプ室内をスムーズに吐出口側へ移送されるようになる。また、吐出口がポンプ室側ほど大径となっていることにより、各歯車によってポンプ室内を吐出口側へ移送されてきた流体がスムーズに吐出口に流入することができる。これにより、ポンプ内における流体の流通抵抗が低減され、効率よく流体を圧送することができる。
【0014】
請求項2の通り、吸入口及び吐出口の軸心線に沿う断面内において、該吸入口及び吐出口の拡径部の内周面を、それぞれ、該吸入口及び吐出口の内方に凸に湾曲した形状とすることにより、ポンプ内における流体の流通抵抗をより効果的に低減することができる。
【0015】
本発明(請求項3)の洗浄装置は、かかる本発明のポンプを備えているので、低コストにて効率よく洗浄ノズルに洗浄水を供給することが可能な洗浄装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係るポンプの縦断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1のポンプの分解断面図である。
【図5】図1のポンプの分解断面図である。
【図6】図1のポンプの第1のケーシング体の斜視図である。
【図7】図1のポンプの第2のケーシング体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、上下方向及び左右方向とは、それぞれ、第1図における上下方向及び左右方向をいい、前方とは、第1図における紙面手前側(表側)をいい、後方とは、第1図における紙面奥側(裏側)をいう。なお、当然ながら、現実にポンプを使用する際のポンプの向きは、第1図における上下方向、左右方向及び前後方向に限定されない。
【0018】
第1図は実施の形態に係るポンプの縦断面図(図2のI−I線に沿う断面図)であり、第2図及び第3図はそれぞれ第1図のII−II線及びIII−III線に沿う断面図である。第4図及び第5図はこのポンプの分解断面図であり、それぞれ第2図及び第3図と同様部分の断面を示している。第6図は、このポンプのケーシングを構成する第1のケーシング体を後方から見た斜視図であり、第7図は、このポンプのケーシングを構成する第2のケーシング体を前方から斜視図である。なお、第2〜5図においては、このポンプの構成部品のうち歯車と、該歯車の回転軸との図示が省略されている。
【0019】
この実施の形態では、ポンプ1は、便器(図示略)に設置され、便器使用者の臀部を洗浄するための洗浄装置の洗浄ノズル(図示略)に洗浄水タンク(図示略)から温水等の洗浄水(請求項1における流体に相当する。)を供給するためのものである。なお、ポンプ1の用途はこれに限定されない。
【0020】
ポンプ1は、内部がポンプ室2となっており、該ポンプ室2内に洗浄水を吸入するための吸入口3及び該ポンプ室2内から洗浄水を吐出するための吐出口4を有したケーシング20と、該ポンプ室2内に並列に配置され、互いに噛合した1対の歯車5,6等を備えている。この実施の形態では、第1図の通り、ケーシング20の上面の左右方向の中央付近に吸入口3が設けられ、ケーシング20の下面の左右方向の中央付近に吐出口4が設けられている。この実施の形態では、吸入口3及び吐出口4は、それぞれ略円筒形状となっており、吸入口3はケーシング20の上面から上方へ突出し、吐出口4はケーシング20の下面から下方へ突出している。これらの吸入口3と吐出口4とは、互いに同軸状に配置されている。なお、吸入口3及び吐出口4の形状や配置はこれに限定されない。この吸入口3に配管(図示略)等を介して洗浄水タンクが接続され、吐出口4に配管(図示略)等を介して洗浄ノズルが接続される。
【0021】
歯車5,6は、それぞれ、ポンプ室2内において、回転軸7,8により回転可能に支持されている。回転軸7,8は、それぞれ軸心線方向を前後方向とし、且つ左右方向に互いに間隔をおいて配設されている。左右の回転軸7,8同士の軸心間距離は、実質的に各歯車5,6の基準円半径を合計した距離となっている。各回転軸7,8の前端側及び後端側は、それぞれ、ポンプ室2内の前側及び後側の壁面にそれぞれ設けられた回転軸保持孔9a,9b及び10a,10b(第2図)に回転可能に保持されている。歯車5,6は、第1図の通り、ポンプ室2内において、これらの回転軸7,8に支持されて左右方向に並列に配置され、該ポンプ室2内の左右方向の中央付近において互いに噛合している。
【0022】
第1図の通り、ポンプ室2の上下左右を取り囲む周壁(後述の第2のケーシング体22の周壁構成部22b)のうち、左側の歯車5の略左半周を取り囲んでいる部分の内周面、及び、右側の歯車5の略右半周を取り囲んでいる部分の内周面は、それぞれ、実質的に各歯車5,6の歯先円に沿う略半円筒状の湾曲面となっている。
【0023】
この実施の形態では、第2図の通り、ポンプ室2の前側の壁の一方の回転軸保持孔9bは、ケーシング20(後述の第1のケーシング体21の前側壁構成部21a)を貫通した貫通孔となっており、この回転軸保持孔9bに保持された一方の回転軸8の前端側は、この回転軸保持孔9bを通ってケーシング20の外部に延出している。この回転軸8の前端側にモータ等の駆動手段(図示略)が接続されている。
【0024】
ポンプ1の作動時には、この駆動手段からの駆動力により回転軸8を介して歯車6が第1図の矢印R方向(第1図における時計方向)に回転駆動され、これに従動するようにして歯車5が第1図の矢印R方向(第1図における反時計方向)に回転する。この歯車5,6の回転に伴い、ポンプ室2内のうち該歯車5,6同士の噛合部よりも吸入口3側の空間2a(第1図)内の洗浄水は、各歯車5,6の歯によって該空間2a内から左右に掻き出され、ポンプ室2の周壁の内周面に沿って該歯車5,6同士の噛合部よりも吐出口4側の空間2b(第1図)へ移送される。これが繰り返されることにより、順次、吸入口3からポンプ室2(空間2a)内に洗浄水が吸入されると共に、吐出口4からポンプ室2(空間2b)外ヘ洗浄水が吐出される。
【0025】
この実施の形態では、第1,3図の通り、吸入口3及び吐出口4のうちそれらの軸心線方向の途中部からポンプ室2側の部分は、それぞれ、該ポンプ室2側ほど大径となる拡径部3a,4aとなっている。吸入口3及び吐出口4のうち、この拡径部3a,4aよりもポンプ外方側(ポンプ室2と反対側)の部分は、内径が略一定となっている。なお、吸入口3及び吐出口4は、それぞれ、全体として、ポンプ室2側ほど大径となる形状となっていてもよい。
【0026】
このように吸入口3がポンプ室2側ほど大径となっていることにより、洗浄水が吸入口3からポンプ室2内の空間2aに流入する際に、洗浄水が吸入口3の内周面に沿って左右に広がるように流れるため、R,R方向に回転する左右の歯車5,6によって洗浄水がスムーズに空間2aから掻き出されて空間2bへ移送されるようになる。また、吐出口4がポンプ室2側ほど大径となっていることにより、歯車5,6によって空間2bへ移送されてきた洗浄水がスムーズに吐出口4に流入することができる。これにより、ポンプ1内における洗浄水の流通抵抗が低減され、効率よく洗浄水を洗浄水タンクから洗浄ノズルに供給することができる。
【0027】
この実施の形態では、第3図の通り、吸入口3及び吐出口4の軸心線に沿う断面内において、拡径部3a,4aの内周面は、それぞれ、該吸入口3及び吐出口4の内方に凸に湾曲している。拡径部3a,4aの内周面をこのような形状とすることにより、ポンプ1内における洗浄水の流通抵抗をより効果的に低減することができる。なお、拡径部3a,4aの内周面の形状はこれに限定されるものではなく、例えばポンプ室2に向かって一定の角度で拡開した形状であってもよく、段階的に径が大きくなる階段状の形状であってもよい。
【0028】
この実施の形態では、ケーシング20は、その前半側を構成する第1のケーシング体21と、その後半側を構成する第2のケーシング体22とを接合してなる。
【0029】
この実施の形態では、第1のケーシング体21は、ポンプ室2の前側の壁を構成する前側壁構成部21aと、吸入口3の拡径部3aの周方向の前半側(以下、単に前半側ということがある。)を構成する吸入口用拡径部前半側構成部21bと、吐出口4の拡径部4aの周方向の前半側を構成する吐出口用拡径部前半側構成部21cとを有している。前側壁構成部21aの外周側には、第1のケーシング体21と第2のケーシング体22とを連結するボルト23が挿通されるボス部21dが設けられている。また、前側壁構成部21aの外周側には、第1のケーシング体21と第2のケーシング体22とを接合させたときに、後述の第2のケーシング体22の位置決め突起22hが係合する凹部21eが設けられている。
【0030】
この実施の形態では、第4,5図の通り、吸入口用拡径部前半側構成部21bは、ポンプ室2内の上側の壁面のうち、吸入口3の拡径部3aの前半側の周縁部から該上側の壁面の前縁までの部分を構成するものである。また、吐出口用拡径部前半側構成部21cは、ポンプ室2内の下側の壁面のうち、吐出口4の拡径部4aの前半側の周縁部から該下側の壁面の前縁までの部分を構成するものである。吸入口用拡径部前半側構成部21b及び吐出口用拡径部前半側構成部21cの前端側は、それぞれ、前側壁構成部21aの後面に連なっている。
【0031】
吸入口用拡径部前半側構成部21b及び吐出口用拡径部前半側構成部21cの後端面の一部を半円形に切り欠くようにして吸入口3及び吐出口4の前半側がそれぞれ形成され、これらを取り巻くように、吸入口用拡径部前半側構成部21bの下面及び吐出口用拡径部前半側構成部21cの上面に、それぞれ、拡径部3a,4aの前半側の略半周分が形成されている。この拡径部3a,4aの前半側の周方向の両端は、それぞれ、吸入口用拡径部前半側構成部21b及び吐出口用拡径部前半側構成部21cの後端面に臨んでいる。
【0032】
なお、第2〜5図の通り、この実施の形態では、吸入口用拡径部前半側構成部21b及び吐出口用拡径部前半側構成部21cの上下方向の厚さは、各拡径部3a,4aの上下方向(=吸入口3及び吐出口4の軸心線方向)の長さと略同等となっているが、これに限定されない。例えば、吸入口用拡径部前半側構成部21b及び吐出口用拡径部前半側構成部21cの上下方向の厚さを各拡径部3a,4aの上下方向の長さよりも大きくし、吸入口3及び吐出口4のうち該拡径部3a,4aよりもポンプ外方側の部分も、少なくとも部分的に、該吸入口用拡径部前半側構成部21b及び吐出口用拡径部前半側構成部21cによって構成するようにしてもよい。
【0033】
第2のケーシング体22は、ポンプ室2の後側の壁を構成する後側壁構成部22aと、ポンプ室2の上下左右を取り囲む周壁を構成する周壁構成部22bとを有している。この周壁構成部22bの外周側の上面及び下面に、それぞれ、略円筒形状の吸入口3及び吐出口4の基端が連なっており、吸入口3及び吐出口4は、この周壁構成部22bを貫通してポンプ室2内に連通している。
【0034】
第1のケーシング体21と第2のケーシング体22とを接合させたときには、周壁構成部22bの前端面が全周にわたって前側壁構成部21aの後面の周縁部に重なる。周壁構成部22bの前端面には、全周にわたってパッキン収容溝22cが周設されており、このパッキン収容溝22cに沿って、該周壁構成部22bと前側壁構成部21aとの接合面をシールするパッキン22dが配設されている。周壁構成部22bの外周側には、該前側壁構成部21aのボス部21dと重なるように、前記ボルト23が挿通されるボス部22eが設けられている。また、周壁構成部22bの外周側には、第1のケーシング体21の凹部21eに係合する位置決め突起22hが設けられている。
【0035】
周壁構成部22bの内周側の上面及び下面には、それぞれ、吸入口用拡径部前半側構成部21b及び吐出口用拡径部前半側構成部21cが係合する凹所22f,22gが設けられている。凹所22f,22gの上下方向の深さは、それぞれ、吸入口用拡径部前半側構成部21b及び吐出口用拡径部前半側構成部21cの上下方向の厚さと略同等となっている。
【0036】
凹所22f,22gの前端側は、それぞれ、周壁構成部22bの前端面に臨んでいる。第4,5図の通り、凹所22f,22gの後端は、それぞれ、周壁構成部22bの前端面から吸入口3及び吐出口4の軸心線と略等距離に位置している。これにより、吸入口3及び吐出口4は、それぞれ、周方向の前半側が凹所22f,22gの底面に露呈し、周方向の後半側(以下、単に後半側ということがある。)は、凹所22f,22gの後端側の段差面を半円形に切り欠くようにして、周壁構成部22bの内周側の上面及び下面のうち、凹所22f,22gよりも該上面及び下面の後縁側の部分に露呈している。
【0037】
各凹所22f,22gの底面に露呈しているのは、吸入口3及び吐出口4のうち、拡径部3a,4aよりもポンプ外方側の部分である。即ち、周壁構成部22bの内周面には、拡径部3a,4aの前半側は存在しない。
【0038】
周壁構成部22bの内周側の上面及び下面のうち、凹所22f,22gよりも該上面及び下面の後縁側の部分には、それぞれ、吸入口3及び吐出口4の後半側を取り巻くように、拡径部3a,4aの後半側の略半周分が形成されている。この拡径部3a,4aの後半側の周方向の両端は、それぞれ、凹所22f,22gの後端側の段差面に臨んでいる。
【0039】
第1のケーシング体21及び第2のケーシング体22は、それぞれ、成形用金型(図示略)内に、溶融した合成樹脂や金属等の成形材料を供給して成形したものである。
【0040】
ポンプ1を組み立てる場合、第2のケーシング体22の周壁構成部22bの内側に歯車5,6及び回転軸7,8を配置し、その前面側に第1のケーシング体21の前側壁構成部21aを被せる。この際、吸入口用拡径部前半側構成部21b及び吐出口用拡径部前半側構成部21cをそれぞれ周壁構成部22bの内側に入り込ませ、各凹所22f,22gに係合させる。これにより、第2,3図の通り、吸入口用拡径部前半側構成部21b及び吐出口用拡径部前半側構成部21cに形成された拡径部3a,4aの前半側部分と、周壁構成部22bの内周側の上面及び下面に形成された拡径部3a,4aの後半側部分とがそれぞれ合体し、拡径部3a,4aは、それぞれ、吸入口3及び吐出口4を周回したものとなる。
【0041】
このポンプ1にあっては、吸入口3及び吐出口4のうち、それらの軸心線方向の途中部からポンプ室2側の部分は、それぞれ、該ポンプ室2側ほど大径となる拡径部3a,4aとなっているが、ケーシング20は、拡径部3a,4aの前半側を構成する第1のケーシング体21と、拡径部3a,4aの後半側を構成する第2のケーシング体22とを接合してなる。そのため、各ケーシング体21,22を金型を用いて成形する際に、該金型内において拡径部3a,4aがアンダーカット形状とならない。これにより、拡径部3a,4aを形成するために、該拡径部3a,4a以外の部分を形成するための金型部分と別体の中子を金型内に設置することが不要であるため、ケーシング20を成形するための金型コストの低減及びケーシング20の成形工程の容易化を図ることができる。
【0042】
上記の実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の構成とされてもよい。
【0043】
例えば、上記の実施の形態では、ケーシング20は、その前半側を構成する第1のケーシング体21と、その後半側を構成する第2のケーシング体22とを接合してなるものであるが、ケーシング20の構成はこれに限定されない。例えば、ケーシング20は、その左半側を構成する第1のケーシング体と、その右半側を構成する第2のケーシング体とを接合してなるものであってもよい。その場合、吸入口3及び吐出口4の拡径部3a,4aは、それぞれ、その周方向の左半側が第1のケーシング体に設けられ、右半側が第2のケーシング体に設けられる。
【0044】
ケーシング20は、3個以上のケーシング体を接合してなるものであってもよい。その場合、拡径部3a,4aを3個以上に分割し、この分割した各部を、互いに接合される別々のケーシング体により構成するようにしてもよい。なお、吸入口3の拡径部3aを構成するケーシング体の組み合わせと、吐出口4の拡径部4aを構成するケーシング体の組み合わせとが異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 ポンプ
2 ポンプ室
3 吸入口
3a 拡径部
4 吐出口
4a 拡径部
5,6 歯車
7,8 回転軸
20 ケーシング
21 第1のケーシング体
21a 前側壁構成部
21b 吸入口用拡径部前半側構成部
21c 吐出口用拡径部前半側構成部
22 第2のケーシング体
22a 後側壁構成部
22b 周壁構成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部がポンプ室となっており、該ポンプ室内に流体を吸入するための吸入口及び該ポンプ室内から流体を吐出するための吐出口を有したケーシングと、
該ポンプ室内に並列に配置され、互いに噛合した1対の歯車と
を備えており、
該ポンプ室内で該歯車が回転することにより、流体が該吸入口から該ポンプ室内に吸入されると共に、該ポンプ室内の流体が該吐出口から吐出されるように構成されたポンプであって、
該吸入口及び吐出口のうち、少なくともそれらの軸心線方向の途中部から該ポンプ室側の部分は、それぞれ、該ポンプ室側ほど大径となる拡径部となっているポンプにおいて、
該ケーシングは、少なくとも、該拡径部の周方向の一部を構成する第1のケーシング体と、該拡径部の周方向の他部を構成する第2のケーシング体とを接合してなることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
請求項1において、
前記吸入口及び吐出口の軸心線に沿う断面内において、該吸入口及び吐出口の前記拡径部の内周面は、それぞれ、該吸入口及び吐出口の内方に凸に湾曲した形状となっていることを特徴とするポンプ。
【請求項3】
便器に設置され、便器使用者の臀部を洗浄するための洗浄装置であって、
便器使用者の臀部に洗浄水を噴射するための洗浄ノズルと、
該洗浄ノズルに洗浄水を供給するためのポンプと
を備えた洗浄装置において、
該ポンプは、請求項1又は2に記載のポンプであることを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76385(P2013−76385A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217464(P2011−217464)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】