説明

マグネタイト粒子

【課題】 飽和磁化が高く、耐酸化性に優れたマグネタイト粒子を提供する。
【解決手段】 本発明は、ケイ素化合物を粒子表面に被覆したマグネタイト粒子であって、当該マグネタイト粒子中のケイ素化合物被覆量をSiOとしてX(重量%)、測定磁場が398kA/mのときの飽和磁化をY(Am/kg)としたときに、下記(1)式を満足することを特徴とするマグネタイト粒子に関する。
【数1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマグネタイト粒子の表面に均一で高密度なシリカ層を形成して耐酸化性を付与するのと同時に、その磁気特性、特には飽和磁化を大きく損なわないことによって、レーザービームプリンター、コピー等で使用される静電潜像現像用トナーに好適なマグネタイト粒子を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
静電複写型画像形成装置はコピーやプリンターとして幅広く使用されている。これらの装置は大きくカラー用とモノクロ用に分けられる。このうちモノクロ用トナーは紙面へのトナーの搬送方式の違いにより、1成分トナーと2成分トナーに類別される。さらに1成分トナーについては、トナーが磁性体を含むか否かにより、磁性1成分トナーと非磁性1成分トナーに類別される。一方の2成分トナーはトナーと搬送体であるキャリアの2種類である。一般的にはこの方式ではトナーには非磁性トナーを用い、また、搬送体であるキャリアとしては鉄粉、フェライトキャリア、マグネタイトキャリア、及びバインダー型キャリアに類別される。
【0003】
これらのトナーのうち磁性1成分トナーには着色材料となる黒色顔料と磁性を付加するための磁性粉を含む必要があるが、一般には黒色を呈し且つ磁性を有する酸化鉄粒子すなわちマグネタイトが広く用いられている。しかしながらマグネタイトはトナーに利用する上で本質的な欠点を有している。
【0004】
マグネタイトはFeO・Feの化学式で表されるように、2価の鉄と3価の鉄により構成されている。このためマグネタイトは酸化されやすく、常温においても空気中の酸素によって徐々に酸化されてマグヘマイトに変化する。あるいは空気中で加熱すると発熱とともに速やかに酸化して、マグヘマイトあるいはヘマタイトに変化する。マグネタイトが黒色であるのに対し、一般にマグヘマイトは褐色、ヘマタイトは赤色である。
【0005】
さらには、マグヘマイトやヘマタイトは磁気特性がマグネタイトとは異なる。マグヘマイトは強磁性体であるが、マグネタイトに比べて理論上の飽和磁化が小さく、ヘマタイトは全くの非磁性体である。すなわち、マグネタイトが酸化してマグヘマイトやヘマタイトに変性すると、色や飽和磁化において磁性1成分トナーに使用するには不適な材料となる。工業的には、マグネタイト製造後からトナーを製造し終えるまでに、酸化の進行程度を一定にできないことが問題となる。
【0006】
まず、マグネタイト製造後からトナー製造前までの保存期間や保存条件が異なると、酸化のレベルは一定にできない。また、トナー製造では、磁性1成分トナーで適用される粉砕法において、樹脂を加熱溶融し、マグネタイトと混練する工程で酸化度合を制御するのは難しい。このように、マグネタイト製造からトナー製造に至るまでの酸化の進行程度が異なると、当初の設計とは異なる色や飽和磁化を有するトナーが製造されてしまう。従って、マグネタイトの酸化をいかにして抑制するかが重要な課題である。
【0007】
マグネタイトの酸化を抑止するには、空気中の酸素が接触するのを遮断するのが効果的である。しかしながら、酸素を透過しない包装材を用いたり、あるいはトナー製造において装置内を窒素雰囲気に保つことはコストや作業性の面で不利になることは否めない。
【0008】
前記の欠点を解決するものとして、マグネタイトの表面に無機、有機あるいはこれらを複合した被覆層を形成することが提案されてきた。例えば、特開平8−48524号公報(特許文献1)には、粒子表面に鉄−亜鉛酸化物の薄膜が被覆され、鉄−ケイ素酸化物の薄膜が被覆されたマグネタイト粒子が開示されており、主たる効果は流動性と磁気特性をバランスよく向上させるものであるが、当該被覆層により酸化抑制効果もあることは自明である。しかしながら、実施例によればマグネタイト粒子表面に非磁性のケイ素酸化物を被覆することで、SiO1重量%当たり飽和磁化が約1Am/kgも低下してしまうため、特に磁性1成分トナーにおいては好適な材料とはいえないものである。
【0009】
マグネタイトの飽和磁化が小さくなると、装置上必要とされる飽和磁化を有するトナーを得るためには、より多量のマグネタイトを含有させなければならなくなる。このためトナーを設計する上での自由度が狭くなり、好ましくない。例えば、トナーは最終的に加熱溶融することで紙面上に定着するが、マグネタイトを用いた磁性1成分トナーは通常でも40〜50重量%程度のマグネタイトを含有しているため、その含有率を大きくすると、トナーを加熱溶融した際に十分な流動性が得られなくなり、定着性が悪くなる。
【0010】
従って、マグネタイト表面にマグネタイトの酸化を抑止するために非磁性の被覆層を形成しても磁気特性、特に飽和磁化が変化しないか、あるいは変化しても予想される変化よりも小さいことが理想的である。しかしながら、そのような被覆層を得ることは理論的に困難であるというのが常識化しており、当該発明は未だなされていないのが実情である。
【特許文献1】特開平8−48524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記の従来技術の課題を解決すべくなされたもので、酸化による色調や磁気特性の変化を抑止するための高密度シリカ被覆層を粒子表面に有する、トナー材料として好適なマグネタイトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
【0012】
すなわち、本発明はケイ素化合物を粒子表面に被覆したマグネタイト粒子であって、当該マグネタイト中のケイ素化合物被覆量をSiOとしてX(重量%)、測定磁場が398kA/mのときの飽和磁化をY(Am/kg)としたときに、下記(1)式を満足することを特徴とするマグネタイト粒子に関する。
【数1】

【0013】
本発明のマグネタイト粒子は(1)式を満足するため、従来のケイ素化合物被覆タイプのマグネタイト粒子においてSiOとしてのケイ素化合物被覆量から予測される飽和磁化よりも大きな飽和磁化を有するものである。ここでいう、従来のケイ素化合物被覆タイプのマグネタイト粒子においてケイ素化合物被覆量から予測される飽和磁化とは、下記(2)式より計算される飽和磁化Y’のことであり、Y>Y’である。
【数2】

【0014】
上記(1)式のKはSiO被覆量1重量%当たり低下する、測定磁場が398kA/mのときの飽和磁化(Am/kg)を表し、その低下量(Kの絶対値)は0.34〜0.62Am/kgである。一方、従来のケイ素化合物被覆タイプのマグネタイト粒子では、(2)式からSiO被覆量1重量%当たり0.84〜0.88Am/kgと計算される。従って、本発明のマグネタイト粒子の方がSiO被覆量1重量%当たりの飽和磁化の低下量は小さい。すなわち、基体となるマグネタイト粒子が同じであれば、本発明の方が同じSiOとしてのケイ素化合物被覆量でも高い飽和磁化量を有しており、優れていることがわかる。(1)式は、本発明で得られた5〜6個の試料のデータから回帰相関によって得られたものであるが、実施例に示すように、マグネタイト粒子の飽和磁化はSiO被覆量が1重量%前後までは基体と同等かやや大きく、低下が認められない特徴がある。また、CはX=0のとき、即ち基体となるマグネタイト粒子の飽和磁化を表す。
【0015】
本発明でいうケイ素化合物は好ましくはシリカである。シリカとは、結晶並びに無定形の二酸化ケイ素のことであるが、本発明ではこれらに一部ケイ素の水酸化物を含有したものも含まれる。本発明のマグネタイト粒子が前記のような長所を有するのは、後述する、マグネタイト粒子に高密度シリカを被覆する製造方法に起因するものである。
【0016】
本発明のマグネタイト粒子の形状は球状、六面体、八面体、十二面体等いずれでもよいが、トナーに使用する際の流動性の面で球状であることが好ましい。
【0017】
また、本発明のマグネタイト粒子は、粒子内部にケイ素化合物をSiOとして0.5〜1.5重量%含有し、平均一次粒子径が0.10〜0.25μm、比表面積が6〜15m/gであることが好ましい。
【0018】
SiOが0.5重量%未満では球状のマグネタイトが得難くなり、流動性の面で好ましくない。また、1.5重量%を超えると遊離したケイ素化合物の存在によって、磁化率が低下したり、粒径分布および形骸分布が拡がるので好ましくない。平均一次粒子径が0.10μm未満で比表面積が15m/gを超えると、物理光学的な原因によりマグネタイト粒子が黒色を呈さなくなり、また、平均一次粒子径が0.25μmを超え、比表面積が6m/g未満では着色力が不足するため好ましくない。
【0019】
また、本発明のマグネタイト粒子は、Fe2+含有量が17〜22重量%であって、空気中200℃×1時間の加熱処理後のFe2+含有量保持率が40%以上である。Fe2+含有量が17重量%未満では黒色度に劣り、また、22重量%を超えると酸化の抑制が困難となるので好ましくない。空気中200℃×1時間の加熱処理後のFe2+含有量保持率が40%以上であるのは、本発明のマグネタイト粒子が前記の大きな飽和磁化と合わせて優れた耐酸化性をも有することを意味するものである。
【0020】
本発明のマグネタイト粒子は、基体となるマグネタイト粒子に高密度シリカを被覆することで得られるものであるが、代表的には以下の方法で製造される。
【0021】
まず、第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリとを中和反応することにより水酸化第一鉄沈殿を生成させ、pH、温度および空気吹き込み量を調整しながら酸化反応を進めることにより基体とするマグネタイト粒子が得られる。第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリとの比率、pH、酸化速度、鉄濃度、添加成分の種類や量によって、得られるマグネタイト粒子の大きさや形状を任意に調整することができる。得られる形状は多面体、八面体、六面体、球形、針状、鱗片状などであるが、前述したように流動性の面で球形であることが好ましい。また、大きさは実用的には平均一次粒子径が0.10〜0.25μmのものが好ましい。
【0022】
第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硝酸第一鉄等があげられるが、一般的に硫酸法酸化チタン製造時に副生する硫酸鉄、鋼板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄を使用する。また、水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物並びに水酸化アンモニウム、アンモニアガス等を用いることができる。
【0023】
第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリとを中和反応することにより水酸化第一鉄沈殿を生成させるが、球状のマグネタイト粒子を得るには、第一鉄塩に対する水酸化アルカリの量は第一鉄塩水溶液中のFe2+に対し、0.90〜1.0当量であることが好ましい。0.90当量未満では球状粒子の生成率が低くなり、ゲーサイトが副生してくるので好ましくない。また、1.0当量を超えると立方体、八面体、多面体が生成し易い領域となり、球状マグネタイト粒子は得られ難い。
【0024】
本発明における水酸化第一鉄を酸化する際の反応温度は60〜100℃である。60℃未満では、飽和磁化が小さくなる。100℃を超えてもマグネタイト粒子は得られるが、工業的でない。
【0025】
酸化方法としては空気等の酸素含有ガスや酸素ガスを液中に通気することや、過酸化水素等の酸化剤を添加する方法等があるが、酸素含有ガスを通気させる方法が一般的である。
【0026】
次に、前記基体マグネタイトに対する高密度シリカの被覆方法について述べる。
【0027】
前記基体マグネタイトの懸濁液を適当な方法で濃縮し、その顔料濃度を50g/Lから200g/Lとする。50g/Lよりも小さいと、同量の産物を得るのにより容量の大きな処理装置を必要とするので好ましくなく、また200g/Lより大きいと懸濁液の粘度が上昇して均一な撹拌状態になりにくいので好ましくない。
【0028】
この懸濁液を分散し、懸濁液の温度を80〜90℃に昇温して、pHを9.5〜11に調整した後、シリカ源としての珪酸ナトリウムや珪酸カリウムのような珪酸アルカリを添加して前記pHの範囲で撹拌保持する。次いでpHを段階的に8〜9に調整して基体のマグネタイト粒子表面に均一な高密度シリカを被覆させる。
【0029】
前記の温度が80℃未満では高密度シリカ層を被覆させることが困難であり、90℃を超えても本発明のマグネタイトを得ることはできるものの、高温に保持するためのエネルギー費用の面で経済的ではない。次に、珪酸アルカリのpH調整剤としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような水酸化アルカリ水溶液が使用できるが、水酸化マグネシウムや水酸化カルシウムのようなアルカリ土類金属を使用すると、珪酸アルカリのアルカリ金属イオンがアルカリ土類金属イオンとイオン交換して、溶解度により直ちにシリカが沈殿してしまうので好ましくない。また、珪酸アルカリの添加時のpHが9.5未満でもシリカの溶解度が著しく小さくなり、11を超えると本発明のマグネタイト粒子を得ることはできるが、使用する水酸化アルカリ量が多くなるために工業的に好ましくない。
【0030】
珪酸アルカリ添加後の懸濁液を液相の珪酸アルカリと固相のシリカが平衡状態になるまで撹拌保持する。平衡状態に達したか否かは懸濁液のpHを計測することによって検知することができる。溶液中の珪酸アルカリが固相のシリカとして析出する際にアルカリイオンを放出するため、十分に平衡に達していない場合には、時間とともに懸濁液のpHが大きくなる。経験的にはpHが頭打ちとなって変化しなくなるまでには、30分から2時間を要する。
【0031】
次いで無機酸でpHを段階的に8〜9まで調整する。このときの無機酸は硫酸や塩酸の水溶液が使用できるが、硝酸のような酸化作用のある化合物を使用するのはマグネタイトを酸化してしまうため好ましくない。無機酸を添加してpHを0.2〜0.5ずつ低下させ、30分程度撹拌保持して液相の珪酸アルカリと固相のシリカが平衡状態になるまで、すなわちpHの上昇がなくなるまで撹拌保持する。以下、同じ操作を繰り返してpHを段階的に8〜9まで調整することで、マグネタイト粒子表面に均一な高密度シリカ層が被覆形成される。前記のpH調整を一度で行ってしまったり、あるいは、後述の比較例に記載されたようなゲル状のシリカを粒子表面に形成させたものでは、シリカ層が不均一になったり緻密でなくなくなるので、好ましくない。また、pHが8未満では懸濁液中のシリカの溶解度は概略一定になるので無意味であり、9を超えると懸濁液中に珪酸アルカリが残存するので好ましくない。
【0032】
その後、例えば顔料pHを中性付近に設定したい場合は、さらにpHを6〜7に調整してもよい。前記の懸濁液を洗浄、ろ別、乾燥して本発明の高密度シリカを被覆したマグネタイト粒子を得る。粉体としての性状を調整したい場合は、後工程で粉砕、解砕、圧密等の操作を付加してもよい。以上により、耐酸化性に優れかつシリカ非磁性無機被覆層を有するにもかかわらず磁気特性、特に飽和磁化の大きいマグネタイト粒子を得ることができる。高密度シリカを被覆することで飽和磁化の低下が抑制される理由については定かではないが、後述する比較例でゲル状のシリカ被覆をしたものの低下幅がほぼ計算値通りであることから、マグネタイト表面のシリカの被覆状態が影響しているのではないかと推定している。
【0033】
以下に、各特性の測定方法について説明する。
【0034】
(平均一次粒子径)
透過型電子顕微鏡(JEOL製「JEM−200CX」(商品名))を用い、倍率30,000倍にて試料粒子の形状観察、及び300個の粒子について円相当径の粒子径測定を行い、体積平均粒子径を平均一次粒子径として算出した。
【0035】
(磁気特性)
振動試料型磁力計(東英工業製「VSM−3」(商品名))を使用し、外部磁場398kA/mにて飽和磁化、及び残留磁化を測定した。
【0036】
(SiOおよびAl含有量)
試験粉末を溶解し、ICP(Nippon Jarrell−Ash製「ICAP−5
75」(商品名))にて測定した。被覆処理後の被覆量はあらかじめ被覆処理していない基体マグネタイトのSiOおよびAl含有量を分析しておき、被覆処理後の含有量分析値から被覆処理前の含有量を差し引くことにより求めた。
(耐熱性試験)
被験試料3gを直径60mm、高さ10mmのアルミパン上に拡げ、200℃に保持したオーブンに投入して1時間後に取り出した。この加熱処理前後の試料をそれぞれ希硫酸溶液に溶解し、過マンガン酸カリウムを用いた酸化還元滴定により、Fe2+含有量を求めた。また加熱処理後のFe2+含有量を加熱処理後のFe2+含有量で除して、100を乗ずることにより、Fe2+含有量保持率を求めた。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の効果を示す実施例について説明するが、以下の実施例は単に例示のために示すものであり、発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。
(実施例1)
基体にはケイ素化合物をSiOとして0.90重量%含有し、平均一次粒子径0.16μm、飽和磁化が86.9Am/kgのマグネタイト粉末を用いた。なお、このマグネタイト粒子の耐熱性は、前記の耐熱性試験の結果、Fe2+含有量保持率が22%であった。このマグネタイト6kgを顔料濃度100g/L、容量60Lの懸濁液とし、特殊機化製TKホモミキサーで30分間分散した。この懸濁液を85℃に昇温し、50g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH10に調整した。ついでSiOとして400g/Lの3号水ガラスを0.21Lを添加し、30分間撹拌保持した後、1.8mol/Lの希硫酸溶液を加えて懸濁液のpHを9.75とし、さらに30分間撹拌保持した後、1.8mol/Lの希硫酸溶液を加え、懸濁液のpHを9.50とした。この操作を懸濁液のpHが8.50になるまで繰り返した。pH8.50における30分間の撹拌保持が終了した後、再度1.8mol/Lの希硫酸溶液を加え、懸濁液のpHを6.0とし、さらに30分間撹拌保持した。この懸濁液を洗浄、ろ別後、乾燥してマグネタイト粉末を得た。得られたマグネタイト粉末は0.86重量%の高密度シリカ被覆層を有し、飽和磁化87.0Am/kg、耐熱性試験によるFe2+含有量保持率が60%であり、耐熱性に優れ、なおかつ飽和磁化の低下の全くないマグネタイト粉末であった。
【0038】
(実施例2〜5)
3号水ガラスの添加量を変えたこと以外は実施例1と同様にしてマグネタイト粉末を得た。
【0039】
(実施例6〜10)
基体にケイ素化合物をSiOとして0.90重量%含有し、平均一次粒子径0.14μm、比表面積11.4m/g、飽和磁化が85.9Am/kgのマグネタイト粉末を用い、3号水ガラスの添加量を変えたこと以外は実施例1と同様にしてマグネタイト粉末を得た。
【0040】
(実施例11〜15)
基体にケイ素化合物をSiOとして0.92重量%含有し、平均一次粒子径0.12μm、比表面積12.7m/g、飽和磁化が86.1Am/kgのマグネタイト粉末を用い、3号水ガラスの添加量を変えたこと以外は実施例1と同様にしてマグネタイト粉末を得た。
【0041】
(実施例16〜20)
基体にケイ素化合物をSiOとして1.16重量%含有し、平均一次粒子径0.25μm、比表面積7.9m/g、飽和磁化が85.4Am/kgのマグネタイト粉末を用い、3号水ガラスの添加量を変えたこと以外は実施例1と同様にしてマグネタイト粉末を得た。
【0042】
(比較例1)
3号水ガラスを添加しない以外は実施例1と同様にしてマグネタイト粉末を得た。
【0043】
(比較例2〜5)
実施例1のマグネタイトの懸濁液に40℃の下で、3号水ガラスと1.8mol/Lの希硫酸溶液を懸濁液のpHが5〜7を保持するように同時に滴下してゲル状のシリカを被覆処理したものである。
【0044】
(比較例6〜9)
3号水ガラスの代わりにアルミン酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様にしてマグネタイト粉末を得た。
【0045】
実施例及び比較例で得られたマグネタイト粉末の物性を表1に示した。
【表1】

【0046】
表1のK(被覆物1重量%当たりのσsの低下幅(Am/kg))を見てもわかるように、実施例のものは−0.60〜−0.36と小さく飽和磁化σsを大きく保っており、耐熱試験によるFe2+含有量保持率も40%以上と耐熱性に優れている。これに対して比較例はKが−0.82よりマイナス側に大きく、計算値よりもσsが低下している。
【0047】
[発明の効果]
以上説明したように、本発明のマグネタイト粒子は粒子表面に高密度シリカを有することにより、SiOとしての単位被覆量当たりの飽和磁化の低下量が小さく、かつ、耐酸化性に優れているので静電潜像現像用トナー、特に磁性1成分トナーに好適に使用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素化合物を粒子表面に被覆したマグネタイト粒子であって、当該マグネタイト粒子中のケイ素化合物被覆量をSiOとしてX(重量%)、測定磁場が398kA/mのときの飽和磁化をY(Am/kg)としたときに、下記(1)式を満足することを特徴とするマグネタイト粒子。
【数1】

【請求項2】
粒子内部にケイ素化合物をSiOとして0.5〜1.5重量%含有し、平均一次粒子径が0.10〜0.25μmであることを特徴とする請求項1のマグネタイト粒子。
【請求項3】
Fe2+含有量が17〜22重量%であって、空気中200℃×1時間の加熱処理後のFe2+含有量保持率が40%以上であることを特徴とする請求項1または2のマグネタイト粒子。

【公開番号】特開2006−104036(P2006−104036A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296133(P2004−296133)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000109255)チタン工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】