説明

マスクセット

【課題】第1および第2のメタルマスクを含むメタルマスクセットを用いて基板に所定の配線パターンを成膜する際、配線パターンの寸法精度を向上させる。
【解決手段】例えば、半導体基板102に所定の配線パターンを成膜する際に用いられる複数のメタルマスクを含むメタルマスクセット100において、配線パターンの一部領域に対応した形状の開口部340を有する第1のメタルマスク110(チップ用マスク320)と、配線パターンの他の一部領域に対応した形状の開口部350を有し、さらに第1のメタルマスク110の開口部340を覆う形状の空間部360を有する第2のメタルマスク120(チップ用マスク330)とを備え、半導体基板102に順次設置される第1および第2のメタルマスク110、120を介してそれぞれ第1および第2の金属が基板に順次成膜されることにより基板に配線パターンが成膜される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に所定の配線パターンを成膜する際に用いられる複数のマスクを含むマスクセットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
集積回路などの半導体装置は、半導体基板(例えば、シリコンウェハ)上に金属性の導体からなる配線層を成膜して製造される。有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイは、ガラス基板上に有機材料からなる有機層(発光層)を成膜して製造される。液晶ディスプレイは、ガス化した酸化インジウムスズ(Indium-Tin-Oxide; ITO)を、ガラス基板上に析出させて薄膜を形成する。
【0003】
これらの製品に共通する製法は、基板上に配線層を形成すべく金属を成膜する方法である。特に有機ELディスプレイの製造工程では、有機層を形成する有機材料の耐水性が低いため、ウェットプロセスを利用できず、真空蒸着法が用いられる。金属は所定のパターン(配線パターン)で基板に成膜する必要があることから、その所定のパターンに対応した形状の開口部を有するメタルマスクを通して基板に金属を成膜する。
【0004】
配線パターンの形状は多岐にわたり、例えば折れ線や曲線といった形状になる場合がある。あるいは、複数の平行な配線(ライン)とスペースとが短いピッチで櫛歯のように繰り返される場合もある。配線パターンがこのように細緻な形状となる場合、これに対応すべく製造されるメタルマスクも当然に細緻な配線パターンを有する。しかし細緻な配線パターンを有するメタルマスクは脆弱なものとなり、撓みなどの変形が生じやすい。メタルマスクが変形すれば所定の配線パターンを精度よく形成できなくなり、絶縁不良などの問題が配線パターンに生じかねない。
【0005】
例えば特許文献1に従来技術として記載されている技術によれば、基板の裏面に永久磁石(マグネット)を密着させ、それによってメタルマスクおよびマスクホルダを基板の表面(配線層を成膜すべき面)に引き付けてメタルマスクの変形を防いでいる。しかし、配線層が小さい場合、それよりも小さいマグネットを使用しなければならないため、マグネットを大量に使用しなければならず、マスクホルダの価格が高価のものとなる。またマグネットの小型化にも限界がある。
【0006】
そこで特許文献1には、基板上に蒸着すべき配線パターンを分割し、複数のメタルマスクを用いて成膜を行う技術が開示されている。例えば元の配線パターンが、ラインとスペースとが短いピッチで繰り返される細緻な形状の場合、スペースを間引いてピッチを大きくした複数の分割パターンに分割する。これにより、分割パターンに対応する各メタルマスクの脆弱さが緩和される。パターンを2つに分割した場合、一方のパターンに対応するメタルマスクを用いて1回目の成膜を行い、一方のパターンと部分的に重なり合う残りのパターンに対応するマスクを用いて、2回目の成膜を行う。このように成膜工程を2回に分けて行うことで、マスクの剛性を保ちながら成膜し、配線パターンの精度を保持している。
【0007】
特許文献2には、2層構造のメタルマスクによって成膜を行う技術が開示されている。特許文献2によれば、基板にリング状の配線を成膜する場合、基板に密着する第1のメタルマスクに、成膜すべきリング状の開口部を形成する。これによって第1のメタルマスクは浮島状の、位置を固定できない部分を有する。第2のメタルマスクは、細かい貫通孔が開けられたメッシュから成り、このメッシュが、第1のメタルマスクのリング状の開口部の中央の浮島状マスクを周辺のマスクに固定する。メッシュは、金属が蒸着すべき領域(第1のメタルマスクのリング状の開口部)に重畳される。しかしメッシュには細かい貫通孔が開けられていて、しかも第2のメタルマスクは基板から所定の距離hをおいて離れているので、蒸着金属はメッシュを通過し、金属が成膜される。特許文献2では、かかる2層構造のメタルマスクを製造し、浮島状マスクをメッシュによって周辺のマスクに固定して、1回の成膜工程でリング状の配線を正しく成膜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭56−51571号公報
【特許文献2】特開平3−228052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献2の技術では、第1のメタルマスクの脆弱な部位すべてに、支持構造である第2のメタルマスクのメッシュを設ける必要がある。配線パターンが細緻で複雑であるほど、メッシュを作成すべき部位および数、ならびにメッシュ形状を決定するのが煩雑になる。また、第2のメタルマスクは、第1のメタルマスクの開口部と重畳するメッシュだけでなく、第1のメタルマスクの実体部分に固定されて実際に支持を行う部分も含む。そうした支持を行う部分の形状や大きさをどのようにすれば第1のメタルマスクの脆弱な部分を十分に支持可能となるかも考慮しなければならない。
【0010】
一方、特許文献1の技術によれば、決定しなければならないのは、どの部分で細緻な元の配線パターンを分割することによって、脆弱でない複数の分割パターンを実現するかということである。特許文献2のように第2のメタルマスクの設計を行う必要があるのに比較して、特許文献1のように分割の方法を決定するのは簡便と考えられる。
【0011】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、第2のメタルマスクを用いて2回目の成膜工程を実行する際、既に第1のメタルマスクを介して金属(配線層)が基板上に成膜されている。第2のメタルマスクと基板との間には、この金属以外の領域に間隙が生じ、第2のメタルマスクが基板に対してガタ(rattle)ついてしまう。このため第2のメタルマスクを介して成膜される配線パターンの寸法精度を維持できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明によるマスクセットは、貫通孔である第1の開口部を有する第1のマスクと、貫通孔である第2の開口部を有し前記第1の開口部に対応する窪んだ空間部を有する第2のマスクと、を備えることを特徴とする。
【0013】
通常、第2のマスクと基板との間には、第1のマスクを介して成膜された第1の金属以外の領域に間隙が生じ、第2のマスクが基板に対してガタつく。しかし本発明の上記の構成によれば、このガタつきが緩和または解消され、第2のマスクを基板に安定して設置可能である。これは、第1および第2のマスクを基板に順次設置して、各マスクを介してそれぞれ第1および第2の金属を基板に順次成膜した場合、先行して成膜された第1の金属に、第2のマスクに設けられた空間部が包み込むように被せられるからである。第2のマスクは、先行して成膜された第1の金属と干渉しないから、上記の間隙が低減するまたはなくすことができる。このため、基板に成膜される配線パターンの寸法精度を維持することが可能である。尚、「空間」は「空洞」と読み替えることもできる。
【0014】
また、基板上に成膜すべき細緻な配線パターンを分割し、第1および第2の複数のマスクに、それぞれ、頑健性(ロバスト性)のある分割パターンに対応した開口部を形成することができる。かかるロバスト性の高い複数のマスクを用いて複数回の成膜を行うことにより、各マスクに撓みなどの変形を生じさせずに配線パターンを成膜可能である。この点でも、配線パターンの寸法精度を向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1および第2のマスクを含むマスクセットを用いて基板に所定の配線パターンを成膜する際、配線パターンの寸法精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるマスクセットの第1の実施形態であるメタルマスクを示す概略鳥瞰図である。
【図2】図1の分解図である。
【図3】図2のチップ用マスクの拡大平面図である。
【図4】本発明にかかるマスクセットの第2の実施形態であるメタルマスクを示す図である。
【図5】本発明によるマスクセットの第1および第2の実施形態と比較される単一のメタルマスクを比較例として例示する図である。
【図6】本発明によるマスクセットの第1および第2の実施形態と比較される他の比較例を示す図である。
【図7】本発明によるマスクセットの第1および第2の実施形態と比較されるさらに他の比較例を示す図である。
【図8】図3および図4のメタルマスクセットのいずれにも適用可能な、第1の配線パターン成膜方法を示すフローチャートである。
【図9】図3に示した、マスクセットの第1の実施形態を用いて図8の方法を実行した際の各断面図である。
【図10】図3に示した、マスクセットの第1の実施形態を用いて図8の方法を実行した際の各断面図である。
【図11】図4に示した、マスクセットの第2の実施形態を用いて図8の方法を実行した際の各断面図である。
【図12】図4に示した、マスクセットの第2の実施形態を用いて図8の方法を実行した際の各断面図である。
【図13】図11のように重畳する分割パターンを有する2枚のチップ用マスクを用いて金属の成膜が完了した配線パターンの断面図である。
【図14】図3および図4のメタルマスクセットのいずれにも適用可能な、第2の配線パターン成膜方法を示すフローチャートである。
【図15】図14のフローチャートの途中の状態の一例を示す断面図である。
【図16】図3および図4のメタルマスクセットのいずれにも適用可能な、第3の配線パターン成膜方法を示すフローチャートである。
【図17】図16のフローチャートの途中の状態を例示する断面図である。
【図18】本発明によるマスクセットの他の分割パターンを例示する図である。
【図19】本発明によるマスクセットの実施形態の最上位概念を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
課題を解決し、発明を実施する本発明の技術思想の少なくとも一つの代表例は、以下に示される。但し、本願の請求内容はこの技術思想に制限されないことは言うまでもない。
【0018】
本発明は、細緻な配線パターンを基板上に成膜するため、ロバスト性のある分割パターンに対応した複数枚のマスクを用いて複数回の成膜工程を行い、配線パターンの寸法精度を向上させている。しかし、複数枚のマスクを用いて複数回の成膜を行う場合、必ず発生する問題が、先行して成膜された配線層と、後続のマスクとの段差干渉によるマスクのガタつきである。即ち、第2のマスクと、第1のマスクによって既に形成された配線を含む基板と、の視点において、第2のマスクの設置の安定性(stabilization)が問題となる。第2のマスクのガタつき(rattle)によって配線パターンの寸法精度が低下してしまえば、ロバスト性のある複数枚のマスクを用意して寸法精度を向上させたことが無意味になってしまう。
【0019】
そこで本発明では、第2のマスクは、第1のマスクの開口部(第1のマスクによって形成された配線パターン)に対応した第1の領域、ならびに第2の領域を有し、第1の領域は第2の領域よりも厚みが薄い。そして例えば、先行して成膜された配線層(第1の金属)に、第2のマスクに設けられた空間部(凹部)を包み込むように被せた。言い換えれば、第2のマスクに設けられた空間部は、先行して成膜された配線層(第1の金属)を包み込む様に基板に対してセッティングされる。これによりガタつきが緩和または解消され、第2のマスクを基板に安定して設置可能である。このため、分割パターンによって向上させた配線パターンの寸法精度を低下させることなく、維持することが可能である。
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
以下の実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
(マスクセットの第1の実施形態)
図1は本発明にかかるマスクセットの第1の実施形態であるメタルマスクセットを示す概略鳥瞰図である。図2は図1の分解図である。メタルマスクセット100は第1のメタルマスク110と第2のメタルマスク120とを含み、これらは、半導体基板(例えばシリコンウェハ)102に所定の配線パターンを成膜する際に用いられる。本実施形態におけるメタルマスクセット100は2枚のメタルマスク110、120を含むが、メタルマスクの枚数は任意の複数としてよい。図2の矢印121、123に示すように、メタルマスク110、120は、半導体基板102に交代で順次設置される。
【0023】
第1のメタルマスク110と第2のメタルマスク120は、それを構成する材料が金属性の材料であれば、例えばインバー材からなる。インバー材の組成は重量%で、ニッケル36%、鉄64%である。インバー材は所定の環境条件において熱膨張率が半導体基板102(シリコン)と実質的に等しく、3.2×10−6(1/K)程度(100℃から200℃の平均値)の線膨張係数を有する。第1のメタルマスク110と第2のメタルマスク120は、42アロイ(42Alloy)で製造してもよい。42アロイもインバー材と同様にシリコンと同等の線膨張係数を有する素材である。その組成は例えば、重量%でニッケル42%、鉄57%である。微量の銅やマンガンが添加されることもある。
【0024】
第1のメタルマスク110と第2のメタルマスク120の少なくともいずれか一方は、シリコン材から成っていてもよい。本文ではシリコンを金属と解釈しているが、非金属であるとの見解もある。さらに、第1のメタルマスク110と第2のメタルマスク120の少なくともいずれか一方を構成する材料を非金属性の材料としてもよい。その場合もはや「メタルマスク」とは言えないが、本発明によるマスクセットに含まれる「マスク」は金属材料製のものに限られない趣旨である。金属製または非金属製の第2のマスクに設けられた空間部は、先行して成膜された配線層(第1の金属)を包み込む様に基板に対してセッティングされる。これによりガタつきが緩和または解消され、第2のマスクを基板に安定して設置可能である。
【0025】
図2に示すように、半導体基板102は、X方向およびY方向に延在する格子状の複数のスクライブライン106で包囲されている多角形の複数のチップを有する、物理的に1枚の基板である。より厳密に言えば、半導体基板102は、最終的にスクライブライン106に沿って複数のチップに分割されることが予定されているものである。スクライブライン106は仮想的なラインであり、実際に半導体基板102にスクライブライン106が描かれているわけではない。
【0026】
チップの形状は本実施形態では正方形である。ただし多角形であればよく、四角形に限られない。例えば、正方形のほか、長方形、それ以上の複数の頂点を有する多角形が含まれる。半導体基板102全体は、本実施形態では円形であるが、円形でなくともよく、多角形でもよい。
【0027】
半導体基板102は、最終製品として有効な複数のチップが獲得される製品有効領域108を中央に有する。半導体基板102から製品有効領域108を除く製品無効領域に含まれる複数のチップは製品として採用されない部分である。これは信頼性の視点からの品質管理、その他の視点から定義される。
【0028】
各メタルマスク110、120のそれぞれは、半導体基板102が含む複数のチップに対応した複数のチップ用マスクを含み、図2ではそれらの代表としてチップ用マスク112、122を示している。チップ用マスク112、122は、各メタルマスク110、120の互いに対応する位置にあり、半導体基板102上の1つのチップ132とも形状・位置が対応している。したがって、メタルマスク110または120を半導体基板102に設置すると、チップ用マスク112または122がチップ132に重なる。
【0029】
図3は図2のチップ用マスク112および122の拡大平面図である。半導体基板102に成膜すべき配線パターンは、後述する本願の比較例としての図5(a)に示す配線パターン140と同じである。第1のメタルマスク110のチップ用マスク112は、配線パターン140の一部領域に対応した形状の開口部150(第1の開口部)を有する。ここでいう「一部領域」とは、図5(a)の配線パターン140のうち、短いピッチで繰り返される配線(ライン140a〜140e)の領域である。一方、第2のメタルマスク120のチップ用マスク122は、配線パターン140の他の一部領域に対応した形状の開口部152(第2の開口部)を有する。ここでいう「他の一部領域」とは、図5(a)の配線パターン140のうち、櫛歯のように繰り返されるライン140a〜140eを結合する領域143である。本実施形態では、第1の開口部150、第2の開口部152は、両方とも長方形である。
【0030】
図3のチップ用マスク112、122のそれぞれの開口部150、152は、配線パターン140を分割したものとみなせるため、以下、これらを便宜的に「分割パターン」とも呼ぶ。分割パターンは、開口部150のような離散したパターンでもよいし、開口部152のような連続した1領域のパターンでもよい。半導体基板102に順次設置される第1および第2のメタルマスク110、120を介してそれぞれ第1および第2の金属が半導体基板102に順次成膜されることにより、半導体基板102に配線パターン140が成膜されることとなる。本実施形態では、第1および第2の開口部150、152の輪郭は、互いに接している。よって、複数の開口部150で形成される基板上の複数の第1の金属パターンと、開口部152で形成される基板上の第2の金属パターンとは、互いに電気的に接続され、電気的に一つのノードを形成する。
【0031】
図3の分割パターンの開口部150、152がそうであるように、分割パターンの開口部は、平面の視点、即ち2次元の視点おいて、凸図形であるのが望ましい。凸図形とは、図形上の任意の2点(例えば開口部150内の点151、153)を結ぶ線分上の点も図形上の点となる図形をいう。すなわち凹んでいない(窪みのない)図形を意味する。開口部が凸図形であれば、各メタルマスク110、120(チップ用マスク112、122)のロバスト性が保たれるからである。後述の図5(b)の比較例の開口部144は凹図形であり、凹んだ部分が片持ち梁(1点支持。点145によって支持)のような細長い実体部分146で形成されている。かかる開口部144は脆弱であり、配線パターン140の寸法精度に悪影響を及ぼすため、本実施形態では、図3のように凸図形の開口部150、152だけで構成される分割パターンに分割して、別々のメタルマスクに担当させている。
【0032】
ただし、開口部は必ずしも凸形状である必要はない。少々の凹みがある形状の開口部であっても、ロバスト性が保てるからである。
【0033】
図3に示すように、第2のメタルマスク120のチップ用マスク122はさらに、本願の特徴である第1のメタルマスク110の開口部150を覆う形状の空間部(凹部)154を有する。尚、「凹部」は、第2のメタルマスク120の厚み方向の断面の視点での呼称ある。図3では、凹部154はチップ用マスク122の裏面側にあるため表面側から示した図3において直接には見えず、裏面側から見た凹部154を破線にて示している。第2のメタルマスク120が有する凹部154は、第1のメタルマスク11が有する開口部150を介して先に成膜される金属に対応して包み込む様に被せる部分(窪んだ部分)であるため、開口部150と等しい形状か、あるいは、開口部150に所定数値のマージンを加えた開口部150よりも大きめの形状としてもよい。
【0034】
第1および第2のメタルマスク110、120のチップ用マスク112、122は、半導体基板102が含む単一のチップ132を被覆する大きさを有するにすぎない。しかし図2に示すように、第1および第2のメタルマスク110、120は、チップ用マスク112、122の他にも、半導体基板102(ウェハ)の他の複数のチップに対応するチップ用マスクを含んでいる。これら他の複数のチップ用マスクも、チップ用マスク112、122と同様に、半導体基板102に成膜すべき配線パターンを分割した分割パターンを有していてよい。したがって分割パターンを有する複数のチップ用マスクが、ウェハ全体を被覆する大きさを有することもある。
【0035】
一方、あるチップの配線パターンが、分割パターンを形成する必要のない、頑健性(ロバスト性)のあるものの場合もある。その場合は、第1または第2のメタルマスク110または120のいずれか一方の、対応するチップ用マスクにのみ、配線パターン全体に対応する開口部を設ければよい。
【0036】
基板ホルダ130には半導体基板102と形状が同一の孔(窪み)124が設けられている。図1に示すように、半導体基板102はこの孔124に部分的に埋設され、その上から、メタルマスク110または120が半導体基板102の表面に設置され、蒸着源101から金属による蒸着が行われる。
【0037】
メタルマスク110または120、半導体基板102および基板ホルダ130は、本実施形態では真空蒸着装置の真空チャンバ内に配備されるが、真空蒸着装置の図示は省略している。メタルマスク110または120は真空蒸着法で用いられ、金属が加熱されて蒸発する蒸発源101と半導体基板102との間に設置される。本実施形態では真空蒸着法としてイオンプレーティングを用いる。メタルマスク110が用いられるときには、蒸発源101から第1の金属104が開口部150を介して半導体基板102の表面に蒸着し、メタルマスク120が用いられるときには、蒸発源101から第2の金属105が開口部152を介して半導体基板102の表面に蒸着する。尚、各メタルマスク110、120表面にもそれぞれ対応する第1の金属104、第2の金属105が蒸着する。第2のメタルマスク120が有する空間部154にも第2の金属105が蒸着する。空間部154は開口部のような貫通孔ではないからである。
【0038】
(マスクセットの第2の実施形態)
図4は本発明にかかるマスクセットの第2の実施形態であるメタルマスクを示す図である。以下、第1の実施形態との相違点のみ説明する。第1の実施形態では第2のメタルマスク120がチップ用マスク122を備えていたが、本実施形態ではこれに代えて、第2のメタルマスク120がチップ用マスク156を備えている。チップ用マスク156は、チップ用マスク122と同じ形状の空間部154を有するが、開口部158(第2の開口部)の幅が、開口部152より広くなっている。その結果、図4に示す通り、2つのチップ用マスク112、156を重ねると、開口部150、158が平面の視点、即ち2次元の視点おいて、重畳する。言い換えれば、各チップ用マスク112、156の分割パターンの一部の領域が重畳する。
【0039】
上記の構成によれば、各メタルマスクを介して成膜される金属104、105が互いに重畳する一部の領域の全面において接触し、電気的に同一なノードとなる。これにより、第1の金属104と第2の金属105との三次元の視点おいて段差を含む電気的な接合面積を確保および増大させ、電気的な接合抵抗を低減させる。
【0040】
また、分割パターンが重畳していない第1の実施形態と比較すると、第1および第2のメタルマスク110、120の半導体基板102にそれぞれ対する製造上の目合わせのズレがある程度許容される。さらに、第2の金属105の蒸着の条件を緩和させ、第2の金属105の厚さを第1の金属104の厚さよりも薄く成膜させても、確実に電気的に同一のノードを形成することができる。
【0041】
(比較例)
図5は第1および第2の実施形態のメタルマスクセットと比較される単一のメタルマスクを比較例として例示する図である。図5(a)はチップ132に成膜すべき配線パターン140を示す。なおこの配線パターン140はチップ132に成膜すべき配線の一部であり、すべてのパターンを示す訳ではない。本文で以下に例示する配線パターンもすべて同様である。
【0042】
図5(b)は、図5(a)の配線パターン140を成膜するためのメタルマスクに含まれるチップ用マスク142であり、本発明の各実施形態と比較される比較例である。チップ用マスク142の開口部144は配線パターン140と完全に同一の形状を有する。しかし図5(a)の配線パターン140は、複数の平行な配線(ライン140a〜140e)とスペース141a〜141dとが短いピッチで櫛歯のように繰り返されるパターンである。したがってチップ用マスク142は、図5(b)を側方から見た図(断面図)である図5(c)に示すように、脆弱な実体部分146が撓み、これを他の部分と平行に保つことができない。チップ用マスク142にかかる変形が生じるため、成膜される配線パターン140の寸法精度が低下するおそれがある。
【0043】
図6は、本発明の第1および第2の実施形態と比較される他の比較例を示す図であり、図5(b)に示したチップ用マスク142の撓みの問題を改善する1つの手法を例示する図である。図6では、半導体基板102の裏面に永久磁石(マグネット162)を密着させ、それによってチップ用マスク142を半導体基板102の表面(配線パターンを成膜すべき面)に引き付けてメタルマスクの変形を防いでいる。このようなマグネットを用いたメタルマスクの変形防止方法は、本発明の各実施形態にも適用可能である。しかし比較例では、配線パターンのピッチが小さい場合、マグネットを使用しても細長い脆弱な実体部分146がよじれてしまう場合がある。更に、メタルマスクのリフトオフ時やメタルマスクの洗浄時に、片持ち梁(1点支持。点145によって支持)のような細長い脆弱な実体部分146に機械的なストレスが掛かり、メタルマスクが欠損する場合がある。片持ち梁では剛性が弱いからである。一方、本発明の各実施形態では、2点支持であるから、それらのような問題は生じない。比較例で使用するマグネット構造よりも簡易なマグネット構造でコストを抑制することもできるし、マグネット構造自体を使用しなくてもよい場合がある。
【0044】
図7は、本発明の第1および第2の実施形態と比較されるさらに他の比較例を示す図であり、図5(b)に示したチップ用マスク142の撓みの問題を改善する他の1つの手法を例示する図である。この比較例では2つのメタルマスクを用い、図7(a)に示すように、それらのチップ用マスク164、166に分割パターンとして開口部168、170を設けている。この点で本発明の第1の実施形態と同様である。これによってメタルマスクの変形の問題は回避できる。
【0045】
しかしチップ用マスク166を側方から見た断面図である図7(b)に示すように、2枚目のメタルマスク(チップ用マスク166)を用いて2回目の成膜工程を実行する際、既に1枚目のメタルマスク(チップ用マスク164)を介して金属(配線層)172が半導体基板102上に成膜されている。チップ用マスク166と半導体基板102との間には、この金属172以外の領域に間隙dが生じ、2枚目のメタルマスク(チップ用マスク166)が半導体基板102に対してガタついてしまう。このため2枚目のメタルマスクを介して成膜される配線パターンが間隙dを介して形成されてしまい、配線パターンの寸法精度を維持できないおそれがある。
【0046】
(第1の配線パターン成膜方法)
以下、本発明によるマスクの実施形態であるメタルマスクを用いた第1の配線パターン成膜方法を説明する。本方法によれば、図5〜図7の各比較例で生じていた問題をすべて解決可能である。図8は、図3および図4のメタルマスクセットのいずれにも適用可能な、第1の配線パターン成膜方法を示すフローチャートである。図9および図10は、図3に示した、マスクセットの第1の実施形態(チップ用マスク112、122)を用いて図8の方法を実行した際の各断面図である。図9(a)〜(c)、図10(a)〜(b)はそれぞれ、図3のチップ用マスク112、122を半導体基板102にセットした際のA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図、D−D断面図、E−E断面図である。
【0047】
図3のメタルマスクセットを用いて図8の方法を実行するときは、まず第1のメタルマスク110を半導体基板102(被成膜基板)にセットする(工程180)。このとき図9(a)(図3のA−A断面図)および図10(a)(図3のD−D断面図)に示すように、チップ用マスク112が半導体基板102にセットされる。
【0048】
次に第1のメタルマスク110を介して、図1に示すように第1の金属104を半導体基板102にイオンプレーティングで蒸着して成膜する(第1成膜工程182)。これにより、第1のメタルマスク110(チップ用マスク112)の開口部150に対応する分割パターンが基板102上に成膜される。
【0049】
続いて、第1のメタルマスク110をリフトオフし(工程184)、これに代えて、図9(b)(c)および図10(b)に示すように、第2のメタルマスク120(チップ用マスク122)をセットする(工程186)。このチップ用マスク122を介して第2の金属105を半導体基板102にイオンプレーティングで蒸着して成膜する(第2成膜工程188)。なお第1成膜工程182および第2成膜工程188では、イオンプレーティングに代えてスパッタリングを用いてもよい。第2成膜工程188後、第2のメタルマスク120をリフトオフすることによって除去する。また、第1成膜工程182および第2成膜工程188は、それぞれ異なる成膜原理を用いてもよい。
【0050】
本方法の特徴は、第2成膜工程188において、図9(b)(c)および図10(b)に示すように、チップ用マスク112の開口部150を覆う形状のチップ用マスク122の空間部154を、既に成膜した第1の金属104に包み込ませる様に被せることである。
【0051】
別の観点から言えば、2枚目のチップ用マスク122には、厚みに厚薄の差があり、1枚目のチップ用マスク112の開口部150を覆う薄い第1の領域(空間部154。厚みt21)と、第1の領域(空間部154)より厚い第2の領域(空間部154および開口部152を除いた領域。厚みt22)とを有する。
【0052】
そして、図9(b)に示すように、第1の領域と第2の領域との厚みの差(空間部154の深さ)d1は、第1の金属104の厚みd2以上である(d1≧d2)。かかる深さd1の空間部154を第1の金属104による配線層に包み込む様に被せることで、図7の比較例で生じていた間隙dによる2枚目のメタルマスクが、半導体基板102に対してガタつく問題を、完全に解消可能である。
【0053】
尚、空間部154の深さd1は、第1のメタルマスク110の厚み(1枚目のチップ用マスク112の厚みt1)よりも薄くても問題ない。第1の領域(空間部154)の剛性は第2の領域の剛性よりも低下するが、第1の領域(空間部154)は貫通孔ではなく第2の領域とともに一つのメタルマスクを形成しているので、前述の図5(c)及び前述の図6のようなメタルマスクの浮き(撓み)は生じない。更に、第1の領域(空間部154)は第1の金属104の3次元の形状にマッチングしているので、第2の領域とともに第1の金属104を包み込むように覆っている。よって、仮に第1の領域(空間部154)に若干の剛性不足があったとしても、半導体基板102との目合わせのズレが生ずることもない。第1のメタルマスク110の開口部150を介して形成する金属104の厚さ及び第2のメタルマスク120の開口部152を介して形成する金属105の厚さを、共に2つのメタルマスクに比して薄くする場合に有用である。この場合、2つのメタルマスクの製造上の管理の観点から、第1のメタルマスク110の厚み(1枚目のチップ用マスク112の厚みt1)と、第2のメタルマスク120の厚み(2枚目のチップ用マスク122の第2の領域の厚みt22)とは、同一の厚みであることが望ましい(t22=t1)。第1のメタルマスク110、第2のメタルマスク120の両方を、同じ厚さの材料から製造可能だからである。このとき、当然ながら、第2のメタルマスク120(2枚目のチップ用マスク122)の第1の領域の厚みt21は、第1のメタルマスク110(1枚目のチップ用マスク112)の厚みt1よりも小さくなる(t21<t1)。
【0054】
尚、空間部154の深さd1は、第1のメタルマスク110の厚み(1枚目のチップ用マスク112の厚みt1)とすることもできる(d1=t1)し、第2のメタルマスク120の第1の領域(空間部154)の厚みt21を第1のメタルマスク110の厚み(1枚目のチップ用マスク112の厚みt1)としてもよい(t21=t1)。これらの場合、第2のメタルマスク120の厚み(2枚目のチップ用マスク122の第2の領域の厚みt22)は、第1のメタルマスク110の厚み(1枚目のチップ用マスク112の厚みt1)よりも厚い(t22>t1)。これによって、第1の領域(空間部154)の剛性及び第2の領域の剛性が強化される。第2のメタルマスク120の開口部152を介して形成する金属105の厚さを、第2のメタルマスク120に比して厚くしたい場合に有用である。特に図4のようなメタルマスクのセットには有用である。更に、第1のメタルマスク110の開口部150を介して形成する金属104の厚さ及び第2のメタルマスク120の開口部152を介して形成する金属105の厚さを、共に厚くしたい場合に有用である。
【0055】
第2のメタルマスク120には、このように、第1のメタルマスク110の開口部150を覆う形状の空間部154が設けられている。そのため、図9(b)に示すように、第2のメタルマスク120が基板102に設置されたとき、チップ用マスク122は、既に成膜された第1の金属104による分割パターンと段差干渉しない。すなわち、第2のメタルマスク120(チップ用マスク122)を安定して半導体基板102に設置可能であるため、第2の金属105の配線層の寸法に問題は生じない。
【0056】
また、基板102上に成膜すべき細緻な配線パターン140を分割し、第1および第2のメタルマスク110、120に、それぞれ、頑健性(ロバスト性)のある分割パターンに対応した開口部150、152を形成することができる。かかるロバスト性の高い複数のメタルマスクを用いて複数回の成膜を行うことにより、各メタルマスクに撓みなどの変形を生じさせずに配線パターンを成膜可能である。この点でも、配線パターンの寸法精度を向上させることが可能である。
【0057】
更に、第2のメタルマスク120を半導体基板102に設置する製造上の目合わせ(位置合わせ)が改善される。第2のメタルマスク120は、第1の金属104の形状に対応した空間部154によって、半導体基板102上との位置ずれが補正されるからである。例えば、第2のメタルマスク120を半導体基板102にセッティングする場合、多少の目合わせのズレがあっても、第2のメタルマスク120が有する空間部154が、立体的な構造である第1の金属104を包み込む様にセッティングされるので、前記ズレは解消する。つまり、空間部154は、目合わせのズレ量をゼロにする機能をも有する。
【0058】
図11および図12は、図4に示した、マスクセットの第2の実施形態(チップ用マスク112、156)を用いて図8の方法を実行した際の各断面図である。図11(a)〜(c)、図12(a)〜(b)はそれぞれ、図4のチップ用マスク112、156を半導体基板102にセットした際のF−F断面図、G−G断面図、H−H断面図、I−I断面図、J−J断面図である。以下、図3のメタルマスクセットを用いた場合との相違点のみについて説明する。
【0059】
図4のメタルマスクについて説明したように、2つのチップ用マスク112、156の分割パターンは重畳する。したがって図11(b)に示すように、第2成膜工程188で2枚目のチップ用マスク156を介して第2の金属105を成膜する際、第2の金属105は、開口部158を介して既に成膜されている第1の金属104にも蒸着する。
【0060】
図13は、図11のように重畳する分割パターンを有する2枚のチップ用マスク112、156を用いて金属の成膜が完了した配線パターンの断面図である。図13(a)はスパッタリングを用いて成膜した場合を示し、図13(b)はイオンプレーティングを用いて成膜した場合を示す。図13では成膜方法を対比する便宜上、半導体基板102上に成膜された後の第1の金属104および第2の金属105を、スパッタリングを用いた場合にはそれぞれ符号104A、105Aで示し、イオンプレーティングを用いた場合にはそれぞれ符号104B、105Bで示す。
【0061】
図13(a)に示すように、スパッタリングを用いて成膜された第1の金属104A、第2の金属105Aのエッジ部は、ほぼ鉛直(半導体基板102の面を基準とする水平方向に対して90°)になっている。これに対し、図13(b)に示すように、イオンプレーティングを用いて成膜された第1の金属104B、第2の金属105Bのエッジ部は、水平方向に対して55°以下の角度をなしている。本願の実施例において、スパッタリングとイオンプレーティングのいずれの成膜方法を用いてもよいが、イオンプレーティングを用いれば、パッケージ化した場合に、エッジ部における応力が緩和され、配線層と保護絶縁膜(図示しない)との密着性もスパッタリングによる密着性よりも更に向上する利点が得られる。尚、開口部150で形成される基板上の第1の金属パターン104A(または104B)と、開口部152で形成される基板上の第2の金属パターン105A(または105B)とは、互いに電気的に接続され、電気的に一つのノードを形成する。
【0062】
(第2の配線パターン成膜方法)
図14は、図3および図4のメタルマスクセットのいずれにも適用可能な、第2の配線パターン成膜方法を示すフローチャートである。以下、図4のメタルマスクセットの第2の実施形態(チップ用マスク112、156)を用いる場合について、図14の方法を説明する。
【0063】
まず半導体基板102(被成膜基板)に第1のポジ型レジスト(図示省略)を塗布する(工程200)。第1のポジ型レジストは、その名の通り、ポジ型のレジストである。ポジ型のレジストは、ネガ型のレジストとは逆に、露光されると現像液に対して溶解性が増大し、露光部が除去される。現像はアルカリ溶液で行われ、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)が最も良く用いられる。
【0064】
次に第1のメタルマスク110(チップ用マスク112)を第1のポジ型レジスト上にセットし(工程202)、露光を行い、第1のメタルマスク110をリフトオフする(工程204)。続いて第1ポジ型レジストを現像液にてエッチングする(工程206)と、第1ポジ型レジストのうち、図4のチップ用マスク112の開口部150に対応する領域(露光した領域)が溶解し、半導体基板102の表面が露出する。
【0065】
本方法では、このように、第1の配線パターン成膜方法と異なり、メタルマスクを金属の成膜に直接用いるのではなく、メタルマスクをレジストのエッチング用のマスクとして用いている。
【0066】
次に第1の金属104を半導体基板102にイオンプレーティングで蒸着して成膜する(第1成膜工程208)。これにより、第1のメタルマスク110(チップ用マスク112)の開口部150に対応する分割パターンが基板102上に成膜される。分割パターンの成膜後、第1ポジ型レジストを半導体基板102から剥離する(工程210)。
【0067】
この後の手順は、上記の分割パターンを成膜するまでと同様である。既に成膜された第1金属105上に第2のポジ型レジスト192を塗布し(工程212)、第2のメタルマスク120(チップ用マスク156)を第2のポジ型レジスト192上にセットする(工程214)。
【0068】
図15は図14のフローチャートの途中の状態の一例を示す断面図であり、図15(a)は、工程214を行った直後の状態を示している。図15(a)に示すように、既に分割パターンとして第1の金属104が半導体基板102上に成膜されている。その上に第2のポジ型レジスト192が塗布され、さらにその上に第2のメタルマスク120(チップ用マスク156)がセットされている。
【0069】
図15(a)に示すように、第2のポジ型レジスト192は、第1の金属104上に塗布される範囲と、それ以外に塗布される範囲とで、高さに差ができ、段差状に塗布される。本方法では、空間部154は、第2のポジ型レジスト192の上段部分に被せられることとなる。したがって、本方法では、空間部154は、第2のポジ型レジスト192の上段部分と等しい形状か、あるいは、それより多少のマージンを有する大きめの形状としてもよい。
【0070】
また、空間部154は以下の条件を充足する。すなわち、第1の金属104の厚みd2と、第1の金属104上に塗布される第2のポジ型レジスト192の厚みd3と、チップ用マスク156の第1の領域(空間部154)の厚みd4との和は、半導体基板102上に塗布される第2のポジ型レジスト192の厚みd5と、チップ用マスク156の第2の領域(空間部154および開口部158を除いた領域)の厚みd6との和以下である(d2+d3+d4≦d5+d6)。かかる条件を満たす空間部154を第2のポジ型レジスト192の上段部分に包み込む様に被せることで、第2のポジ型レジスト192が段差状に塗布されるものの、それによって2枚目のメタルマスク120(チップ用マスク156)がガタつくことがない。
【0071】
図15(a)のように、安定して半導体基板102にセットされた2枚目のメタルマスク120(チップ用マスク156)を介して、第2のポジ型レジスト192を露光し、第2のメタルマスク120をリフトオフによって除去する(工程216)。続いて第2のポジ型レジスト192を現像液にてエッチングする(工程218)。
【0072】
図15(b)は、工程218を行った直後の状態を示している。エッチングにより、第2のポジ型レジスト192のうち、図4のチップ用マスク156の開口部158に対応する領域が溶解し、第1の金属104と、半導体基板102の表面とが露出する。ここで第2の金属105を半導体基板102にイオンプレーティングで蒸着して成膜する(第2成膜工程220)。なお第1成膜工程208および第2成膜工程220では、イオンプレーティングに代えてスパッタリングを用いてもよい。第2成膜工程220後、第2のポジ型レジスト192を半導体基板102から剥離する(工程222)。
【0073】
本方法でも、第1の配線パターン成膜方法と同様に、スパッタリングを用いて成膜が完了した配線パターンの断面図は、図13(a)のようになり、イオンプレーティングを用いて成膜が完了した配線パターンの断面図は、図13(b)のようになる。
【0074】
(第3の配線パターン成膜方法)
図16は図3および図4のメタルマスクセットのいずれにも適用可能な、第3の配線パターン成膜方法を示すフローチャートである。以下、図4のメタルマスクセットの第2の実施形態(チップ用マスク112、156)を用いる場合について、図16の方法を説明する。本方法で用いるレジストは、露光されると現像液に対して溶解性が低下し、現像後に露光部分が残るネガ型のレジストである。
【0075】
まず半導体基板102(被成膜基板)に第1の金属104をイオンプレーティングで蒸着して成膜し(工程250)、その上に第1のレジスト(図示省略)を塗布し(工程252)、さらにその上に第1のメタルマスク110(チップ用マスク112)をセットする(工程254)。工程250では、イオンプレーティングに代えてスパッタリングを用いてもよい。第1のメタルマスク110を介して第1のネガ型レジスト230を露光し、第1のメタルマスク110をリフトオフして除去する(工程256)。
【0076】
続いて第1ネガ型レジスト230を現像液にてエッチングする(工程258)と、第1ネガ型レジスト230のうち、図4のチップ用マスク112の開口部150以外の部分に対応する領域(露光しなかった領域)が溶解し、その下に成膜されている第1の金属104の表面が露出する。本方法は第2の配線パターン成膜方法と異なりネガ型のレジストを使用しているが、本方法でも、このように、メタルマスクをレジストのエッチング用のマスクとして用いている。
【0077】
図17は図16のフローチャートの途中の状態を例示する断面図である。本方法では、工程258によって露出した第1の金属104を、所定の現像液で溶解してエッチングする(第1成膜工程260)。図17(a)はこのエッチングが完了した状態を示す。このように、第1の金属104による分割パターンは、エッチングされることで完成する。この後、第1ネガ型レジスト230を剥離する(第1成膜工程260)。
【0078】
図17(b)は図16の工程262、264および266が完了した結果を示す断面図である。成膜された第1の金属104上にエッチングストッパ膜280を成膜し、さらにその上に第2の金属105を成膜する(工程262)。第2の金属の成膜も、イオンプレーティングまたはスパッタリングのいずれで行ってもよい。エッチングストッパ膜280によって、第2の金属のエッチング(後述)が行われても、その下にある第1の金属はエッチングされないこととなる。
【0079】
図17(b)のように段差状に成膜される第2の金属105上に、さらに第2のネガ型レジスト232を塗布する(工程264)。同様に段差状に塗布される第2のネガ型レジスト232の上から、第2のメタルマスク120(チップ用マスク156)をセットする(工程266)。
【0080】
本方法では、チップ用マスク156の空間部154は、第2のネガ型レジスト232の上段部分に被せられることとなる。したがって、本方法では、空間部154は、第2のネガ型レジスト232の上段部分と等しい形状か、あるいは、それより多少の遊びを有する大きめの形状としてもよい。
【0081】
また、空間部154は以下の条件を充足する。すなわち、第1の金属104の厚みd2(エッチングストッパ膜280の厚みは無視している)と、第1の金属104上に成膜される第2の金属105の厚みd7と、第1の金属104上の第2の金属105上に塗布される第2のネガ型レジスト232の厚みd3と、第1の領域(空間部154)の厚みd4との和は、半導体基板102上に成膜される第2の金属105の厚みd8と、半導体基板102上の第2の金属105上に塗布される第2のネガ型レジスト232の厚みd9と、第2の領域(空間部154および開口部158を除いた領域)の厚みd6との和以下である(d2+d7+d3+d4≦d8+d9+d6)。
【0082】
かかる条件を満たす空間部154を第2のネガ型レジスト232の上段部分に包み込む様に被せることで、第2のネガ型レジスト232が段差状に塗布されるものの、それによって2枚目のメタルマスク120(チップ用マスク156)がガタつくことがない。
【0083】
第2のメタルマスク120(チップ用マスク156)を介して第2のネガ型レジスト232を露光し、第2のメタルマスク120をリフトオフする(工程268)。第2のネガ型レジスト232をエッチングする(工程270)と、第2のネガ型レジスト232のうち、図4のチップ用マスク156の開口部158以外の部分に対応する領域(露光しなかった領域)が溶解し、その下に成膜されている第2の金属105の表面が露出する。
【0084】
さらに第2の金属105をエッチングする(工程272)。このとき、第1の金属104上にはエッチングストッパ膜280が存在するため、第1の金属104は、第2の金属105と接しているにも拘らず、エッチングされない。図17(c)は、工程272におけるエッチングが終了した段階の状態を示す断面図である。このように、第2の金属105による分割パターンも、エッチングされることで完成する。
【0085】
エッチングストッパ膜280は、第1の金属104と第2の金属105とが同一の金属の場合や、互いに異なる金属であっても同一の現像液によって溶解されてしまう場合は、必須である。一方、第1および第2の金属104、105が互いに異なる導電体であり、第2の金属105をエッチングする現像液によって第1の金属104はエッチングされない場合には、エッチングストッパ膜280は不要である。
【0086】
最後に第2のネガ型レジスト232を剥離する(工程272)。図17(d)は、この剥離後の状態を示していて、配線パターン全体が完成している。
【0087】
(マスクセットの分割パターン例)
図18は、本発明によるマスクセットの他の分割パターンを例示する図である。図18(c)は、半導体基板102に成膜すべき配線パターン300を例示している。配線パターン300は、環状の配線305の中に島状の配線303を有している。かかる配線パターン300を成膜するために、第1および第2のメタルマスク110、120に含まれるチップ用マスク302、304は、それぞれ、複数の開口部306(第1の開口部)、複数の開口部308(第2の開口部)を有する。これらマスク302、404を重ねることによって、第1および第2の開口部306、308が、環状の領域および島状の領域を構成する。本実施形態では第1および第2の開口部306、308の両方が、環状の領域のさらに内側に存在して島状の領域を構成している。ただし第1の開口部306または複数の第2の開口部308のいずれか一方だけで島状の領域を構成してもよい。2枚目のチップ用マスク304は、1枚目のチップ用マスク302によって成膜される第1の金属104を包み込むように覆う空間部310(第1の配線パターン成膜方法を用いる場合)を備えている。尚、環状の配線305は、多角形でも円形でもよい。
【0088】
最終的に成膜される配線パターン300は環状の配線305と島状の配線303とを含んでいるが、少なくとも環状の配線305を単一のメタルマスクで成膜するのは不可能である。正確には、単一のメタルマスクの開口部を介して環状の配線305を形成するように金属(配線パターン300)の成膜に直接用いることは不可能である。環状の配線305の内側に対応するメタルマスクを環状の配線305の外側から支持する部分が形成できないからである。そこで、図18(a)(b)に示すように、開口部306、308は、島状の領域を含まないよう、配線パターン300を分割したものである。もとより開口部は、環状の配線305の内側の領域を固定(支持)する何らかの固定構造(指示構造)を設けない限り、少なくとも環状の配線305の領域を形成ことができないからである。尚、島状の配線303は、第1のメタルマスク110と第2のメタルマスク120の少なくともいずれか一方の開口部のみで形成することもできる。
【0089】
図19は、本発明によるマスクセットの実施形態の最上位概念を例示する図である。図19に示すように、メタルマスクセットに含まれる複数枚のメタルマスク320、330の複数の開口部340(第1の開口部)、複数の開口部350(第2の開口部)は、図19のように離れていてよく、重畳している必要はない。メタルマスク320、330を重ねた時に、複数の第1の開口部340と複数の第2の開口部350は、交互に配置されている。2枚目のチップ対応マスク330には、1枚目のチップ対応マスク320の開口部340を覆う形状の空間部360が設けられている。
【0090】
このように分割パターン(開口部340、350)が重畳していず、互いに離れているメタルマスク320、330を用いて基板上に金属を成膜する場合には、基板102の表面から第1の金属と第2の金属がそれぞれ成膜される。つまり、第1の金属と第2の金属は、同一のレイヤとなる。なお基板102は、ほぼ全面が絶縁性のパッシベーション膜(絶縁膜)で覆われている場合があり、その場合、パッシベーション膜も含めて基板102とみなす。パッシベーション膜が無い領域は、半導体ウェハであれば、周知のスクライブラインである。また、基板が機能回路を含む場合、パッシベーション膜が無い領域は、その機能回路が入出力する周知のチップパッド(内部端子電極)の領域である。したがって基板102の表面とは、パッシベーション膜の表面を意味する。
【0091】
尚、開口部340、350を夫々介して形成される複数の多角形の金属パターンについて、それら複数の多角形の金属パターンは上面から見て、少なくともそれぞれが対応する開口部340、350のパターンと相似なパターンであればよい。多様な製造法方法によってそれら複数の多角形の金属パターンの寸法値は、それぞれが対応する開口部340、350の寸法値と異なる場合がある。このことは、これまで開示したすべての実施形態において同様である。複数の開口部340で形成される基板上の複数の第1の金属パターンと、複数の開口部350で形成される基板上の複数の第2の金属パターンとは、共に同じ組成の材料で構成されてもよいし、互いに異なる組成の材料で構成されてもよい。第1のメタルマスク110と第2のメタルマスク120をそれぞれ適用した第1の金属と第2の金属の形成において、それらの最適な製造条件が異なる場合、第1の金属と第2の金属の組成を決定できる効果がある。このことは、これまで開示したすべての実施形態において同様である。また、複数の開口部340で形成される基板上の複数の第1の金属パターンと、複数の開口部350で形成される基板上の複数の第2の金属パターンとは、互いに電気的に分離されて、それぞれ独立した電気的な複数のノードを形成する。
【0092】
なお、本明細書の配線パターン成膜方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、その他の工程を含んでもよい。
【0093】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。特許請求の範囲内において、追加、変更し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。また、特許請求の範囲内において、複数の開示要素の組み合わせ乃至選択が可能であり、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得る各種変形、修正を含むことは勿論である。
【0094】
本願の技術思想のメタルマスクセットは、実施例で開示したシリコンを基板とするウェハに適用されることに限られず、例えば、有機EL(Organic Electro-Luminescence)、液晶(liquid crystal)等の製造に使用するメタルマスクにも適用できる。特に、液晶の基板は、半導体ウェハの面積(口径)よりも遥かに大きく、本願の作用、効果がより一層発揮できる。
【0095】
本願の技術思想のメタルマスク(第1のメタルマスク110と第2のメタルマスク120)は、実施例で開示した金属性の材料(インバー材または42アロイ材)に限られず、例えば、シリコン材で形成されていてもよい。基板製造上の管理において基板の線膨張係数とマスクの線膨張係数との関連視点を重視する場合、例えばシリコンでそれぞれ構成される2つのマスクは最良の選択である。尚、金属材としてのシリコンの開示は例示であって、インバー材の温度依存性よりも広い温度範囲において、基板と実質的に同じ線膨張係数を有する金属材であればよいことは言うまでもない。故に、マスクを構成する材料とその線膨張係数は、基板を構成する材料とその線膨張係数とマッチングされていることが望ましい。図18で開示した環状の配線305を形成するにあたって、第2のメタルマスク120に含まれる空間部310は、メタルマスクが金属材であっても非金属材であっても、これまで説明してきた本願の作用、効果と同様に発揮できることは、当該事業者であれば容易に理解できる。よって、本明細書においては、マスクを組成する材質によらずメタルマスクと呼ぶ。更に、第1のメタルマスク110と第2のメタルマスク120は、共に同じ組成の材料で構成されていても、互いに異なる組成の材料で構成されていてもよい。空間部360を有する第2のメタルマスク120の最適な製造条件は、空間部360を有しない第1のメタルマスク110の最適な製造条件と異なる場合があるからである。
【0096】
(付記)
以下、本発明による複数のマスクを用いたパターン形成方法について、まとめて付記しておく。
(1)パターン形成方法は、
貫通孔である第1の開口部を有する第1のマスクを基板上にセッティングする第1の設置工程と、
前記第1のマスクが有する第1の開口部を適用して前記第1の開口部の形状に対応した第1の金属を、基板に形成する第1の形成工程と、
貫通孔である第2の開口部を有し前記第1の開口部に対応する窪んだ空間部を有する第2のマスクを、前記空間部へ前記第1の金属を包み込みながら前記基板上にセッティングする第2の設置工程と、
第2のマスクが有する第2の開口部を適用して前記第2の開口部の形状に対応した第2の金属を、前記基板に形成する第2の形成工程と、を備えることを特徴とする付記1。
【0097】
(2)付記1において、
前記第1の設置工程にて位置決めされる前記第1の開口部と、前記第2の設置工程にて位置決めされる前記第2の開口部とは、前記基板の表面において互いに離れており、
前記第1と第2の形成工程では、前記基板の表面から前記第1の金属と前記第2の金属を、それぞれ形成する、ことを特徴とする付記2。
【0098】
(3)付記1において、
前記第1の設置工程にて位置決めされる前記第1の開口部の輪郭の少なくとも一部は、前記第2の設置工程にて位置決めされる前記第2の開口部の輪郭と接しており、
前記第1と第2の形成工程では、前記基板の断面を基準として前記基板から互いに同一な距離の前記第1の金属と前記第2の金属をそれぞれ形成し、且つ前記基板の断面を基準として前記第1の金属と前記第2の金属が電気的に接続する同一のノードを形成することを特徴とする付記3。
【0099】
(4)付記1において、
前記第1の設置工程において位置決めされる前記第1の開口部の一部の領域は、前記第2の設置工程にて位置決めされる前記第2の開口部の一部の領域と重畳しており、
前記第1と第2の形成工程は、前記基板の断面を基準として、前記第1の金属と、前記第1の金属上に一部が乗り上げる前記第2の金属と、をそれぞれ形成し、且つ前記基板の断面を基準として前記第1の金属と前記第2の金属が電気的に接続する同一のノードを形成する、ことを特徴とする付記4。
【0100】
(5)付記1〜4のいずれか一項において、
更に、前記第1の形成工程と前記第2の形成工程の少なくともいずれか一方は、前記第1の開口部および前記第2の開口部にそれぞれ対応する前記第1の金属及び前記第2の金属を通過させる、ことを特徴とする付記5。
【0101】
(6)付記1〜5のいずれか一項において、前記第1の金属と前記第2の金属は、互いに異なる組成の材料である、ことを特徴とする付記6。
【0102】
(7)付記1〜4のいずれか一項において、
更に、前記第2の設置工程の前に、レジストを塗布するレジスト工程を備え、
前記第2の設置工程は、前記窪んだ空間部へ前記第1の金属及び前記レジストを包み込みながら前記基板上にセッティングし、
前記第2の形成工程は、
前記第2の開口部を介して、前記レジストを感光する感光工程と、
前記第2のマスクをリフトオフするリフトオフ工程と、
前記レジストの一部をエッチングするエッチング工程と、
前記第2の金属を前記基板の全面に形成する第3の形成工程と、
残りの前記レジストを剥離する剥離工程と、を含むことを特徴とする付記7。
【0103】
(8)付記7において、前記レジストはポジ型レジストである、ことを特徴とする付記8。
【0104】
(9)付記1〜4のいずれか一項において、
更に、前記第2の設置工程の前に、前記第2の金属を前記基板の全面に形成する第4の形成工程と、
前記前記第2の金属の全面にレジストを塗布するレジスト工程と、を備え、
前記第2の設置工程は、前記窪んだ空間部へ前記第1の金属及び前記第2の金属並びに前記レジストを包み込みながら前記基板上にセッティングし、
前記第2の形成工程は、
前記第2の開口部を介して、前記レジストを感光する感光工程と、
前記第2のマスクをリフトオフするリフトオフ工程と、
前記レジストの一部をエッチングする第1のエッチング工程と、
前記第2の金属の一部をエッチングする第2のエッチング工程と、
残りの前記レジストを剥離する剥離工程と、を含むことを特徴とする付記9。
【0105】
(10)付記9において、前記第1および第2の金属は、互いに異なる組成の材料である、ことを特徴とする付記10。
【0106】
(11)付記10において、前記第2の金属の一部をエッチングする現像液によっても前記第1の金属はエッチングされない、ことを特徴とする付記11。
【0107】
(12)付記11において、前記レジストはネガ型レジストである、ことを特徴とする付記12。
【0108】
(13)付記9において、更に、前記第4の形成工程の前に、前記第1の開口部の形状の第1の金属に対応したエッチングストッパ膜を形成する第5の形成工程を備え、
前記第2の設置工程は、前記第1の金属、前記エッチングストッパ膜及び前記第2の金属並びに前記レジストを、前記窪んだ空間部へ包み込みながら前記基板上にセッティングする、ことを特徴とする付記13。
【0109】
(14)付記1〜13のいずれか一項において、前記第1の金属および前記第2の金属の少なくともいずれか一方は、スパッタリングまたはイオンプレーティングによって加速された金属である、ことを特徴とする付記14。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、基板に所定の配線パターンを成膜する際に用いられる複数のマスクを含むマスクセットに利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
100 …メタルマスクセット
102 …半導体基板
110、120 …メタルマスク
112、122、156、302、304 …チップ用マスク
130 …基板ホルダ
132 …チップ
140、300、303、305 …配線パターン
150、152、158 …開口部
154 …空間部
192 …第2のポジ型レジスト
232 …第2のネガ型レジスト
280 …エッチングストッパ膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔である第1の開口部を有する第1のマスクと、
貫通孔である第2の開口部を有し前記第1の開口部に対応する窪んだ空間部を有する第2のマスクと、を備えることを特徴とするマスクセット。
【請求項2】
前記第2のマスクは、前記空間部に対応する第1の領域、及び前記第1の領域と前記第2の開口部とを除く第2の領域に区分され、
第1の領域は第2の領域よりも厚みが薄い、ことを特徴とする請求項1に記載のマスクセット。
【請求項3】
前記第2のマスクの第1の領域の厚みは、前記第1のマスクの厚みよりも薄いことを特徴とする請求項2に記載のマスクセット。
【請求項4】
前記第2のマスクの第2の領域の厚みは、前記第1のマスクの厚みと同じであることを特徴とする請求項3に記載のマスクセット。
【請求項5】
前記第2のマスクの第2の領域の厚みは、前記第1のマスクの厚みよりも厚いことを特徴とする請求項2に記載のマスクセット。
【請求項6】
前記第2のマスクの第1の領域の厚みは、前記第1のマスクの厚みと同じであることを特徴とする請求項5に記載のマスクセット。
【請求項7】
前記第1のマスクは、複数の前記第1の開口部を含み、
前記第2のマスクは、複数の前記第2の開口部を含み、
前記第1のマスクと前記第2のマスクとを重ねた時に、前記複数の第1の開口部と前記複数の第2の開口部は、交互に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマスクセット。
【請求項8】
前記複数の第1の開口部、および前記複数の第2の開口部は、平面の視点において窪みのない形状である、ことを特徴とする請求項7に記載のメタルマスクセット。
【請求項9】
前記複数の第1の開口部は、少なくとも第1の方向の第1の線分と前記第1の方向の線分よりも長い第2の方向の第2の線分を含み、
前記複数の第2の開口部は、少なくとも前記第1の方向の第3の線分と前記第1の方向の線分よりも長い前記第2の方向の第4の線分を含む、ことを特徴とする請求項7に記載のメタルマスクセット。
【請求項10】
前記第1のマスクと前記第2のマスクとを重ねた時に、前記第1の開口部の輪郭の少なくとも一部は、前記第2の開口部の輪郭と接することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマスクセット。
【請求項11】
前記第1のマスクと前記第2のマスクとを重ねた時に、前記第1の開口部の一部の領域は、前記第2の開口部の一部の領域と重畳することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマスクセット。
【請求項12】
前記第1のマスクは、複数の前記第1の開口部を含み、
前記第2のマスクは、複数の前記第2の開口部を含み、
前記第1のマスクと前記第2のマスクとを重ねた時に、前記複数の第1の開口部と前記複数の第2の開口部とで環状の領域を構成することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のマスクセット。
【請求項13】
前記環状の領域の更に内側に、前記第1の開口部と前記第2の開口部の少なくともいずれか一方が存在することを特徴とする請求項12に記載のマスクセット。
【請求項14】
前記第1のマスク及び前記第2のマスクの少なくともいずれか一方は、インバー材または42アロイで構成される金属材であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のマスクセット。
【請求項15】
前記第1のマスク及び前記第2のマスクの少なくともいずれか一方は、非金属材であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のマスクセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−22941(P2012−22941A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161107(P2010−161107)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(709006507)株式会社SKLink (14)
【Fターム(参考)】