説明

メッキ用バレル装置

【課題】網状シートをバレルフレームの周囲側に着脱可能に取付固定するメッキ用バレル装置であって、網状シートに皺が生じることを防止して、より安定的に網状シートを取付固定可能なメッキ用バレル装置を提供することを課題とする。
【解決手段】バレルフレーム4が、一対の対向パネル部11と、一対の対向パネル部11の間を連結する連結フレーム部12とを備え、隣合う連結フレーム部12の間に、網状シート6を設けるとともに周壁パネル7を外側から嵌め込み固定したメッキ用バレル装置において、周壁パネル7の内面側に当接する当接部13,27を、対向パネル部11側と、連結フレーム部12側とに形成し、周壁パネル7の内面側との接触面28,29,33が該周壁パネル7側に突出しない非凸面になるように各当接部13,27を形成し、周壁パネル7の内面側と、該接触面28,29,33との間に網状シート6を配置して該網状シート6を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッキ処理を行うメッキ用バレル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品などの寸法の小さい被メッキ物(ワーク)にメッキを施す際に用いられるメッキ装置の一つに、被メッキ物を収容するバレルと、バレル内に設けられるカソードとを備え、回転可能に支持される該バレル内に被メッキ物を収容し、バレルをメッキ液に浸漬した状態で、メッキ液側のアノードと、前記カソードとの間に電圧を印加するとともに該バレルを回転軸回りに回転駆動させることによりメッキ処理を行うメッキ用バレル装置がある。
【0003】
このメッキ用バレル装置の中でも、特に小さい被メッキ物に対してメッキ処理を行うものとして、バレルフレームに網状シートを張ったメッキ用バレル装置が従来公知となっている。
【0004】
このようなメッキ用バレル装置では、パネルに小さな孔を形成する場合と比較して、網状シートの網目を小さく形成することが容易であるため、被メッキ物が小さい場合であっても、引っ掛かりが無く、安定的に質の高いメッキ処理を行うことができる一方で、繰返しメッキ処理を行うことにより、網状シートが劣化して撓み等が生じ、メッキ処理の質が低下するという問題がある。
【0005】
この問題を改善するため、回転軸と同一の軸心又は回転軸に対して軸心方向が偏心された角柱状のバレルフレームが、一対の対向パネル部と、一対の対向パネル部の間を連結するように上記軸方向に延びて該軸回りに複数配置される3つ以上の連結フレーム部とを備え、隣合う連結フレーム部の間に、フレキシブルに変形する網状シートを着脱可能に固定し、網状シートが交換可能な特許文献1に示すメッキ用バレル装置が公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭52−65116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記文献のメッキ用バレル装置では、嵌め込み時に周壁パネルの内面側に当接する当接部が、対向パネル部側と、連結フレーム部側とにそれぞれ形成され、周壁パネル内面側との接触箇所が周壁パネル側に突出する凸部を有するように各当接部が形成され、当接部同士を隣接させることにより、前記凸部同士が連接されて方形状の枠部を構成し、この方形状の枠部が周壁パネルの内面側に嵌め込まれることにより、周辺パネルが、固定される。このため、この凸部と、周壁パネル内面側との接当箇所において網状シートに皺が生じ、網状シートを隣合う連結フレーム部の間に安定的に固定させることができない場合がある。
【0008】
本発明は、網状シートをバレルフレームの周囲側に着脱可能に取付固定するメッキ用バレル装置であって、網状シートに皺が生じることを防止して、より安定的に網状シートを取付固定可能なメッキ用バレル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するため、第1に、回転軸Xと同一の軸心又は回転軸Xに対して軸方向が偏心された角柱状のバレルフレーム4が、一対の対向パネル部11と、一対の対向パネル部11の間を連結するように上記軸方向に延びて該軸回りに複数配置される3つ以上の連結フレーム部12とを備え、隣合う連結フレーム部12の間に、フレキシブルに変形する網状シート6を設けるとともに周壁パネル7を外側から嵌め込み固定したメッキ用バレル装置において、嵌め込み時に周壁パネル7の内面側に当接する当接部13,27を、対向パネル部11側と、連結フレーム部12側とにそれぞれ形成し、周壁パネル7の内面側との接触面28,29,33が該周壁パネル7側に突出しない非凸面になるように各当接部13,27を形成し、周壁パネル7の内面側と、当接部13,27の接触面28,29,33との間に網状シート6を配置することにより、該網状シート6を固定することを特徴としている。
【0010】
第2に、周壁パネル7の内面側に、網状シート6を予め取付けた周壁パネル7を連結フレーム部12の間に嵌め込み固定することを特徴としている。
【0011】
第3に、単一の網状シート6を、3つ以上の連結フレーム部12に亘って巻き回し、該網状シート6を、周壁パネル7によって当接部13,27に押圧固定したことを特徴としている。
【0012】
第4に、請求項2又は請求項3に記載の網状シート6の固定方法を選択することができることを特徴としている。
【0013】
第5に、周壁パネル7の外面側から連結フレーム部12に設けられる固定具9によって、網状シート6を連結フレーム部12側へ固定することを特徴としている。
【0014】
第6に、前記対向パネル部11側に、隣合う連結フレーム部12の一方側から他方側に至る前記当接部を設けて対向パネル側当接部13とし、該対向パネル側当接部13の外面側に周壁パネル7との接触面33を形成したことを特徴としている。
【0015】
第7に、前記対向パネル側当接部13の内面に、近い側の対向パネル部11の対向面に向って軸心側に傾斜する傾斜面21を形成したことを特徴としている。
【0016】
第8に、前記傾斜面21を、周壁パネル7内面から対向パネル部11の対向面に至る範囲に形成したことを特徴としている。
【0017】
第9に、連結フレーム部12の間にそれぞれ形成された全ての対向パネル側当接部13を、隣接する端部同士で連接することにより、リング状に形成したことを特徴としている。
【0018】
第10に、隣合う連結フレーム部12の対向部の少なくとも一部を前記接触面29とし、該対向する一対の接触面29を、互いの距離が嵌め込み方向に向って短くなるようテーパ状にそれぞれ形成し、該テーパー状をなす一対の接触面29の間に嵌合されるように前記周壁パネル7の連結フレーム部12側の両端部をテーパ状に形成したことを特徴としている。
【0019】
第11に、前記対向パネル部11と、前記連結フレーム部12とを別体成形し、前記バレルフレーム4を組立可能に構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記構成によれば、周壁パネルの内面側との接触面が非凸面に形成されるため、該接触面と周壁パネルとの間に網状シートを配置して固定するにあたり、接触面が周壁パネル側に凸状に突出している場合と比較して、網状シートに皺が生じ難くなり、網状シートを安定的に取付固定可能になる。
【0021】
また、周壁パネルの内面側に、網状シートを予め一体的に取付けた周壁パネルを連結フレーム部の間に嵌め込み固定することにより、網状シートの固定作業がさらに簡素化される他、網状シートを予め取付けておかず、周壁パネルの設置時に併せて網状シートを取付固定することも依然として可能であるため、網状シートの複数の取付手段に対応可能であり、汎用性が向上する。
【0022】
また、単一の網状シートを、3つ以上の連結フレーム部に亘って巻き回し、該網状シートを、周壁パネルによって当接部に押圧固定したことにより、単一の網状シートを、2以上の周壁パネルを用いて、まとめてバレルフレーム側に取付固定できるため、設置の手間が簡素化される。
【0023】
さらに、周壁パネルの外面側から連結フレーム部に設けられる固定具によって、網状シートを連結フレーム部側へ固定するため、単一の網状シートを、3つ以上の連結フレーム部に亘って巻き回すにあたり、網状シートをより強固にバレルフレーム側へ取付固定することができる。
【0024】
なお、前記対向パネル部側に、隣合う連結フレーム部の一方側から他方側に至る前記当接部を設けて対向パネル側当接部とし、該対向パネル側当接部の外面側に周壁パネルとの接触面を形成し、前記対向パネル側当接部の内面に、近い側の対向パネル部の対向面に向って軸心側に傾斜する傾斜面を形成すれば、バレルの内周面側と、対向パネル部とが、傾斜面によって、滑らかに連接されるため、バレル内周面と対向パネルとの連接箇所に被メッキ物が引っ掛ることが防止され、さらに質の良いメッキ処理を行うことが可能になる他、当接部に該機能を持たせるため、部品点数が増加することも防止される。
【0025】
また、前記傾斜面を、周壁パネル内面から対向パネル部の対向面に至る範囲に形成したことにより、バレル内の容量が増加する。
【0026】
なお、隣合う連結フレーム部の対向部の少なくとも一部を前記接触面とし、該対向する一対の接触面を、互いの距離が嵌め込み方向に向って短くなるようテーパ状にそれぞれ形成し、該テーパー状をなす一対の接触面の間に嵌合されるように前記周壁パネルの連結フレーム部側の両端部をテーパ状に形成すれば、周壁パネルをバレルフレーム側へ嵌め込む際、嵌め込む位置を容易に位置決めすることができるため、周壁パネルの取付作業をより効率的に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用したメッキ用バレル装置のバレルを示す平面図である。
【図2】バレル軸心方向視における要部側面図である。
【図3】バレルフレームを外側から見た場合の要部分解正面図である。
【図4】バレルフレームを内側から見た場合の要部分解正面図である。
【図5】バレルフレームの正面図である。
【図6】バレルフレームを軸心方向から見た場合の要部側面図である。
【図7】(A)乃至(C)は、押圧固定手段を用いて網状シートをバレルフレームに固定する状態を段階的に示した要部断面図である。
【図8】(A),(B)は、それぞれ、取付固定手段を用いるにあたって周壁パネル内面に網状シートを予め取付けた状態を示す取付状態図である。
【図9】(A)は、開閉蓋のロック解除状態を示す平面図であり、(B)は、開閉蓋のロック状態を示す平面図であり、
【図10】図9(B)のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明を適用したメッキ用バレル装置のバレルを示す平面図である。
メッキ用バレル装置は、角柱状(図示する例では六角柱状)に形成されるバレル1と、バレル1内に設けられるカソード(図示しない)と、該バレル1を支持する支持機構(図示しない)とを備えている。
【0029】
バレル1は、絶縁体であって且つ腐食し難い合成樹脂製であり、このバレル1の軸心Y方向に対して偏心された横方向の回転軸Xを形成する一対の軸受け部2を全長方向両端側に有する一方で、前記支持機構は、回転軸Xと同一軸心となる一対の図示しない支持軸を備えている。そして、該一対の支持軸が、別々の軸受け部2,2に挿入されることにより、バレル1が、回転軸X回りに回転駆動可能に支持機構に支持される。ちなみに、回転軸Xは、バレル1の軸心Yに対して、バレル1の中央側を支点に所定角度傾いた方向に形成されている。
【0030】
このメッキ用バレル装置は、開口部3からバレル1内に被メッキ物(ワーク)を収容して該開口部3を閉じた後、該バレル1をメッキ槽(図示しない)に位置させ、バレル内の被メッキ物をメッキ液で浸すとともに、メッキ浴槽内のアノード(図示しない)と、前記カソードの間に電圧を印加した状態で、前記支持機構によって、バレル1を、メッキ液の液面に沿って回転軸Xと交差する方向(具体的には直交する方向)に移動させながら、該バレル1を回転軸X回りに回転駆動させることにより、バレル1内の被メッキ物の電気的なメッキ処理を行う。
【0031】
この際、回転軸Xが、バレル1の軸心Yに対して偏心されているため、バレル1がすりこ木運動しながら回転するため、バレル1内の被メッキ物が効率的に撹拌され、質の高いメッキ処理を行うことが可能になる。なお、該バレル1の回転軸Xをバレル1の軸心Yと同一軸心として、支持機構の負荷を軽減させてもよい。この場合には、上記一対の軸受部2,2が軸心Y上に配置されている。
【0032】
次に、図1乃至6に基づき、バレル1の構成を詳細に説明する。
図2は、バレル軸心方向視における要部側面図である。同図より、バレル1は、複数の部材から組立てられてバレル1の外形を形成する角柱状のバレルフレーム4と、バレル1の周壁側を覆うように取付固定される網状シート(網)6と、該バレルフレーム4の周囲側に嵌め込み固定される周壁パネル7と、被メッキ物の出し入れを行う開口部3と、該開口部3を開閉自在に閉塞する開閉蓋8とを備えている。
【0033】
前記周壁パネル7を用いて網状シート6をバレルフレーム4側に取付固定し、該網状シート6及び周壁パネル7を固定具9等によってバレルフレーム4側に固定することによりバレル1が構成されている。ちなみに、周壁パネル7には、軸心Y方向に対して垂直な方向に長い液孔7a(図8参照)が、軸心Y方向に沿って、多数並列された状態で、穿設されている。この周壁パネル7の液孔7aと、網状シート6の網目とを通過して、バレル1内にメッキ液が供給されるとともに、バレル1内からメッキ液が排出される。
【0034】
図3は、バレルフレームを外側から見た場合の要部分解正面図であり、図4は、バレルフレームを内側から見た場合の要部分解正面図であり、図5は、バレルフレームの正面図であり、図6は、バレルフレームを軸心方向から見た場合の要部側面図である。これらの図より、前記バレルフレーム4は、所定間隔を介して互いが平行に対向するように配置される一対の円盤状の端板(対向パネル部)11,11と、該一対の端板11,11を対向面同士で連結固定する棒状部材である複数の連結フレーム(連結フレーム部)12と、各端板11の対向面側に位置してバレル1の内周に沿うリング部材13とを、それぞれ別体で備えている。
【0035】
各連結フレーム12は、バレル1の軸心Y方向に沿って(さらに具体的には、バレル1の軸心Y方向に対して平行に)それぞれ形成され、この複数(図示する例では6つ)の連結フレーム12を、バレル1の軸心Y回りに所定間隔(図示する例では等間隔)毎に並列させることにより、バレルフレーム4を角柱状(さらに具体的には六角柱状)に成形している。
【0036】
また、該バレルフレーム4では、図3及び図4に示されるように、リング部材13を、一対の端板11の対向面に凹設されたリング状の溝部14に嵌め込み、溶接等で連結フレーム12や端板11に溶着固定している。この際、リング部材13の外周の断面形状は、バレル1の内周の断面形状と略同一の多角形状に成形されており、この多角形状をなす環状のリング部材13における各屈曲箇所に対応する連結フレーム12が位置した状態になり、この各連結フレーム12の両側端部が、近い側の端板11にそれぞれボルト固定されることにより、角柱状のバレルフレーム4を組立てる。
【0037】
該ボルト固定の際、端板11の対向面と反対側の面である非対向面側から、端板11の挿通孔16に挿通されたボルト18が、連結フレーム12の端側に形成されたネジ孔17に係合挿入され、ボルト締めされることにより、端板11に連結フレーム12が取付固定される。
【0038】
上記連結フレーム12には、隣接して配置される2本の開口部用連結フレーム12A,12Aと、その他の(具体的には4本の)周壁用連結フレーム12B,12B,12B,12Bとが用意され、上記バレルフレーム4の組立時、隣合う連結フレーム部12同士と、一対の端板11とによって、バレル1の角数と同数(具体的には6つ)の枠が形成される。このうち、2本の開口部用連結フレーム12Aの間に形成される枠は開口部3となって、後述する開閉蓋8が設置可能に形成され、それ以外の残りの枠は、周壁パネル7が嵌め込まれて閉塞される周壁枠19となり、特に、このうち、開口部3に隣接する周壁枠19を開口部側周壁枠19Aとするとともに、該開口部側周壁枠19Aに嵌め込まれる周壁パネル7を、開口部側周壁パネル7Aとする。
【0039】
上記リング部材13は、バレル1の軸心Yに向って、近い側の端板11に傾斜する傾斜面21を周方向全体に有しており、この傾斜面21が、該端板11からリング部材13外周に至る範囲に形成されているため、傾斜面21が、バレル部1の内周面と、端板11の対向面とを滑らかに連接する部材として機能している(図4及び図6参照)。
【0040】
前記周壁パネル7は、外側から上記バレルフレーム4の周壁枠19内に嵌め込み可能な方形状に成形されており、該周壁パネル7を用いて網状シート6を周壁枠19内(隣合う連結フレーム部12の間)に取付ける。
【0041】
具体的には、周壁パネル7の内面が、周壁パネル7がバレルフレーム4に嵌め込まれた際にバレル1の内周面の一部を構成するフラットな内壁面22と、内壁面22を挟むように連結フレーム12側に位置した一対のテーパ面23,23とによって構成されている。この一対のテーパ面23,23は、嵌め込み方向である軸心Y側に向かって互いの距離が近づく傾斜面によって構成されている。
【0042】
そして、周壁パネル7が周壁枠19に嵌め込まれると、前記内壁面22の連結フレーム12,12側両端部及び一対のテーパ面23とが、連結フレーム12に当接するとともに、前記内壁面22のリング部材13,13側両端部が、該リング部材13の外周面(外面)に当接する。
【0043】
すなわち、リング部材13が、周壁パネル7の内面(内壁面)と当接する当接部(対向パネル側当接部)としても機能するとともに、連結フレーム12には、周壁パネル7の内面と当接する当接部27が形成される。
【0044】
上記連結フレーム12側の当接部27は、周壁パネル7の内壁面22との接触面であるパネル受面28と、周壁パネル7のテーパ面23との接触面であるテーパ状受面29との2種類の接触面を有している。開口部用連結フレーム12Aの当接部27は、テーパ面29のみによって構成される一方で、周壁用連結フレーム12Bの当接部27は、パネル受面28及びテーパ面29によって構成される。
【0045】
テーパ状受面29は、隣合う連結フレーム12における互いに向い合う対向部(さらに具体的には対向部の軸心Yに近い側)に、それぞれ形成されており、この対向する一対のテーパ状受面29,29同士は、周壁パネル7の一対のテーパ面23,23と面状に当接するように、周壁パネル7の嵌め込み方向である軸心Y側に向かって互いに距離が近づくように傾斜形成されている。一方、パネル受面28は、対向するテーパ状受面29,29の軸心Yに近い側の端部から、上記内壁面22に平行に、互いに近づく側に、それぞれ一体的に延出されている。
【0046】
これにより、開口部用連結フレーム12Aの当接部27と、周壁用連結フレーム12Bの当接部27とは、共に、非凸状に周壁パネル7と接触するように構成されている。
【0047】
上記リング部材からなる当接部13は、開口部3及び各周壁枠19内において、隣接する連結フレーム部12,12の間を連接しており、この当接部13の外周面は、各周壁枠19において、連結フレーム12のパネル受面28と同一の平面上に位置するフラットな接触面33を構成している。
【0048】
以上の構成により、連結フレーム12の当接部27における周壁パネル7内面との接触面28,29は、非凸状面をなすとともに、リング部材13における周壁パネル7内面との接触面33は、非凸状面になしているため、当接部13,27の接触面28,29,33と、周壁パネル7の内面との間に、網状シート6が挟持固定されるように、周壁パネル7を、バレルフレーム4外側から周壁枠19に嵌め込み固定した場合に、該網状シート6にシワが生じることを効率的に防止できる。ちなみに、周壁パネル7を周壁枠19に嵌め込んだ後、固定ボルト37を、周壁パネル7の外面側からリング部材13に向けて、係合挿入させて締付けることにより、該周壁パネル7をリング部材13(バレルフレーム4)にネジ固定させる。
【0049】
次に、図7及び図8に基づいて網状シート6の取付け態様について説明する。
フレキシブルに変形する網状シート6のバレルフレーム4側への固定手段には、バレルフレーム4の外側から巻き回した網状シート6を周壁パネル19により押圧固定する押圧固定手段と、網状シート6を予め周壁パネル7の内面側に一体的に取付ける取付固定手段との2種類が存在する。
【0050】
図7(A)乃至(C)は、押圧固定手段を用いて網状シートをバレルフレームに固定する状態を段階的に示した要部断面図である。この押圧固定手段では、前記バレルフレーム4の開口部3の一方側の連結フレーム12側から、周壁枠19の外側を通過して、開口部3の他方側の連結フレーム12側に至る範囲に、円弧状に、単一網状シート6を巻き回す(同図(A)参照)。
【0051】
続いて、このように、全て(6本)の支持フレーム12に亘って巻き回された網状シート6の外周面側に位置する各周壁パネル7を、対応する周壁枠19に嵌め込んでボルト固定すると、周壁パネル7の内面によって、網状シート6が、上記当接部13,27の接触面28,29,33に押圧される(同図(B)参照)。
【0052】
続いて、各連結フレーム部12に、外側から固定具9を、嵌め込んで固定することにより、該固定具9と、連結フレーム12との間に、網状シート6が挟持固定され、網状シート6の組付けが完了する(同図(C)参照)。
【0053】
ちなみに、この固定具9は、開口部用連結フレーム12Aに嵌め込まれる開口部側固定具9Aと、周壁用連結フレーム12Bに嵌め込まれる周壁側固定具9Bとの2種類がある。
【0054】
開口部側固定具9Aは、開口部用連結フレーム12Aにおける当接部27側の面と、該面に隣接する外側の面とに接当する断面視L字状のアングル部材であって、外側から係合挿入される複数のボルト43によって、該連結フレーム12Aにボルト固定される。この開口部側固定具9Aの当接部27側に臨んでいる全長方向の端部によって、周壁パネル7を当接部27に押圧固定している。
【0055】
一方、周壁側固定具9Bは、周壁用連結フレーム12Bにおける当接部27側の両面と、該両面に隣接する外側の面とに接当する断面視U字状のチャネル部材であって、外側から係合挿入される複数のボルト43によって、該連結フレーム12Bにボルト固定される。この周壁側固定具9Bの当接部27側に臨んでいる全長方向の端部によって、周壁パネル7を当接部27に押圧固定している。
【0056】
また、このように、固定具9を、チャネル状又はアングル状に成形することにより、巻き回されてフレキシブルに変形する網状シート6を、連結フレーム12に密着させて、確実に固定せしめることが可能になる。
【0057】
図8(A),(B)は、それぞれ、取付固定手段を用いるにあたって周壁パネル内面に網状シートを予め取付けた状態を示す取付状態図である。取付固定手段では、各周壁パネル7の内壁面22に網状シート6を接着又は溶着等により一体的に固定し、この周壁パネル7を、周壁枠19に嵌め込んで、固定具9等によって固定する。
【0058】
次に、バレルの開口部に設けた開閉蓋の構成について説明する。
図9(A)は、開閉蓋のロック解除状態を示す平面図であり、図9(B)は、開閉蓋のロック状態を示す平面図であり、図10は、図9(B)のA−A断面図である。
【0059】
図より、隣合う開口部用連結フレーム12Aの間に開口部3が形成され、該開口部3に開閉蓋8を嵌め込むことにより、該開口部3を閉じることができるとともに、該状態をロックすることができる。以下、開閉蓋8及び開口部6の構成について説明する。
【0060】
前記開口部3を閉じることのできる開閉蓋8は、開口部3を塞ぐ板状の蓋部46と、該蓋部46の内面側に突設された枠状の突起部47と、蓋部46の外面側中央に配置されて回動操作可能に設けられた操作ノブ48と、該操作ノブ48の回動操作と連動して回動する回動部材49を介して一体的にスライド移動する長手方向に延びる一対のロック部材51とを備えている。
【0061】
また、開口部3は、開口部3の内周縁に形成される蓋受けフランジと52と、該蓋受けフランジ52の外縁から立上る状態の一対の縁部53と、該縁部53の向かい合う面側であって開閉蓋8が嵌め込まれる側に凹設されて前記ロック部材51に複数設けたロック片54が嵌合挿入される嵌入溝56と、該嵌入溝56の底部から開口部長手方向に凹設されたロック溝57とが設けられている。すなわち、該嵌入溝56とロック溝57とはL字型につながるように形成されている(図4参照)。
【0062】
また、前記操作ノブ48の回動操作に伴って一体的にスライドするロック部材51にはスライド方向に長い長孔58が穿設されており、該長孔58に係止ピン59が設けられている。これにより、係止ピン59が長孔58の中を動く範囲内でのみ操作ノブ48を回動操作することができるようになり、ロック部材51のスライドする範囲が限定される。図示する例においては、操作ノブ48を反時計回りに限界位置まで回動させた位置をロック解除操作位置、時計回りに限界位置まで回動させた位置をロック操作位置とする(図9(A)及び(B)参照)。
【0063】
このとき、開口部3側の前記嵌入溝56は、操作ノブ48をロック解除位置に操作した際におけるロック片54の位置によって、該ロック片54が嵌入溝56に嵌入可能となるように構成されており、該ロック解除操作位置に操作することにより、開閉蓋8を開口部3内に嵌め込んで設置しただけの状態であるロック解除状態(図9(A)参照)又は、開閉蓋8を開口部3から取外した開口状態にすることができる。
【0064】
当該ロック解除状態では、前記受けフランジ52の上面側に、該蓋部46の内面側の前記突起部47と嵌り合う凹凸状の嵌合部61を形成し、開閉蓋8が開口部3に嵌め込まれた状態においては、蓋部46の内面側と開口部3の蓋受けフランジ52との間に隙間が生じないように形成されている(図10参照)。
【0065】
さらに、前記ロック解除状態において、操作ノブ48を時計回りに操作することによって、前記ロック部材51に設けられたロック片54を、嵌入溝56に嵌入した位置からスライドさせて前記ロック溝57内に嵌め込むロック状態に切換えることができる(図9(B)参照)。
【0066】
当該ロック状態では、ロック片54がロック溝57内に嵌め込まれるため、開閉蓋を開口部3から取外そうとすると、ロック片54がロック溝57の上面側に当接して開閉蓋8が開口部3から取外されることが出来なくなるように構成される(図9参照)。
【0067】
なお、前記蓋部46の操作ノブ48を挟んだ両側にはメッキ液が通過するネット枠62を形成しているため、該ロック状態において、開口部3が閉じた状態でロックされた場合であっても、バレル部1をメッキ液で浸漬した際に該メッキ液が開閉蓋8側からも通過するように構成されている。
【符号の説明】
【0068】
4 バレルフレーム
6 網状シート
7 周壁パネル
9 固定具
11 端板(対向パネル部)
12 連結フレーム部
13 リング部材(対向パネル側当接部)
21 傾斜面
27 当接部
28 パネル受面(接触面)
29 テーパ状受面(接触面)
33 接触面(接触面)
X 回転軸
Y 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(X)と同一の軸心(Y)又は回転軸(X)に対して軸心(Y)方向が偏心された角柱状のバレルフレーム(4)が、一対の対向パネル部(11)と、一対の対向パネル部(11)の間を連結するように上記軸方向に延びて該軸回りに複数配置される3つ以上の連結フレーム部(12)とを備え、隣合う連結フレーム部(12)の間に、フレキシブルに変形する網状シート(6)を設けるとともに周壁パネル(7)を外側から嵌め込み固定したメッキ用バレル装置において、嵌め込み時に周壁パネル(7)の内面側に当接する当接部(13,27)を、対向パネル部(11)側と、連結フレーム部(12)側とにそれぞれ形成し、周壁パネル(7)の内面側との接触面(28,29,33)が該周壁パネル(7)側に突出しない非凸面になるように各当接部(13,27)を形成し、周壁パネル(7)の内面側と、当接部(13,27)の接触面(28,29,33)との間に網状シート(6)を配置することにより、該網状シート(6)を固定するメッキ用バレル装置。
【請求項2】
周壁パネル(7)の内面側に、網状シート(6)を予め取付けた周壁パネル(7)を連結フレーム部(12)の間に嵌め込み固定する請求項1のメッキ用バレル装置。
【請求項3】
単一の網状シート(6)を、3つ以上の連結フレーム部(12)に亘って巻き回し、該網状シート(6)を、周壁パネル(7)によって当接部(13,27)に押圧固定した請求項1のメッキ用バレル装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の網状シート(6)の固定方法を選択することができるメッキ用バレル装置。
【請求項5】
周壁パネル(7)の外面側から連結フレーム部(12)に設けられる固定具(9)によって、網状シート(6)を連結フレーム部(12)側へ固定する請求項3又は4のめっき用バレル装置。
【請求項6】
前記対向パネル部(11)側に、隣合う連結フレーム部(12)の一方側から他方側に至る前記当接部を設けて対向パネル側当接部(13)とし、該対向パネル側当接部(13)の外面側に周壁パネル(7)との接触面(33)を形成した請求項1乃至5の何れかに記載のメッキ用バレル装置。
【請求項7】
前記対向パネル側当接部(13)の内面に、近い側の対向パネル部(11)の対向面に向って軸心側に傾斜する傾斜面(21)を形成した請求項6に記載のメッキ用バレル装置。
【請求項8】
前記傾斜面(21)を、周壁パネル(7)内面から対向パネル部(11)の対向面に至る範囲に形成した請求項7に記載のメッキ用バレル装置。
【請求項9】
連結フレーム部(12)の間にそれぞれ形成された全ての対向パネル側当接部(13)を、隣接する端部同士で連接することにより、リング状に形成した請求項6乃至8の何れかに記載のメッキ用バレル装置。
【請求項10】
隣合う連結フレーム部(12)の対向部の少なくとも一部を前記接触面(29)とし、該対向する一対の接触面(29)を、互いの距離が嵌め込み方向に向って短くなるようテーパ状にそれぞれ形成し、該テーパ状をなす一対の接触面(29)の間に嵌合されるように前記周壁パネル(7)の連結フレーム部(12)側の両端部をテーパ状に形成した請求項1乃至9の何れかに記載のメッキ用バレル装置。
【請求項11】
前記対向パネル部(11)と、前記連結フレーム部(12)とを別体成形し、前記バレルフレーム(4)を組立可能に構成した請求項1乃至10の何れかに記載のメッキ用バレル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−132069(P2012−132069A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285308(P2010−285308)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(502394335)