説明

メトホルミン及びロスバスチンを含む医薬組成物

本発明はメトホルミン及びロスバスタチンの経口医薬組成物に関する。詳細には、メトホルミン及びロスバスタチン、徐放性担体及び/又は賦形剤を含む本発明の医薬組成物は、スタチン系による副作用を低減させ、かつ1日1回投与の安全性、患者の利便性及びコンプライアンスを強化するものである。さらに、前記薬物の初期血中有効濃度を制御し、徐放性による生体内での安定したレベルで薬物の濃度を維持することができ、高脂血症を予防及び治療する医薬組成物として使用され得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メトホルミンとロスバスタチンの経口医薬組成物に関する。詳細には、本発明は、メトホルミン、ロスバスタチン、徐放性担体及び/又は賦形剤を含み、スタチン系薬剤による副作用を低減し、及び1日1回投与の患者の安全性、利便性及びコンプライアンスを強化する。さらに前記医薬の初期有効濃度を制御し、かつ徐放による生体内での安定したレベルで前記医薬濃度を維持することにより、高脂血症の予防及び治療のための医薬組成物として有利に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
高脂血症は、コレステロール、トリグリセリドなどの血液中の血漿脂質成分の異常な上昇により起こる一連の疾患を伴う。高脂血症又は血液中の血漿脂質の増加は、しばしば心臓血管疾患及び動脈硬化の両方の発症に関連している。詳しくは、高脂血症は、アテローム性動脈硬化症と高トリグリセリド症を惹起し発症する第1のリスク因子として作用するものであり、膵炎を引き起こす。
【0003】
一般に、脂質を低下させるスタチン系薬剤は、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈硬化により起こる心疾患を予防及び治療する最善の医薬として使用される。例えば、ロスバスタチンは、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル−CoA(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤(USP)であり、コレステロールの代謝経路を制御するものであり、主に、高脂血症及び複合脂質異常症により増加したコレステロール、LDL−コレステロール及びトリグリセリドのレベルを低下させる効果及び、同時にHDL−コレステロールの増加させる効果を持つ。
【0004】
ロスバスタチンはLDL−コレステロール及びトリグリセリドのレベルを低下させ、HDLを他の既存のスタチンよりも多く増加させる。しかしこれは、コレステロールの合成段階の律速段階における低コレステロールレベル同様、CoQ10、ドリコール及びイソプレノイドの前駆体の減少により起こる筋肉毒性を起こすものであるが、これはメバロン酸の合成を抑制して最後は筋肉痛、筋肉細胞障害及び横紋筋融解などの重篤な効果を与える結果となる(Am J.Cardiol、102、pp.1654−1662、2008;Lifescience、82、pp.969−975、2008)。
【0005】
しかし最近の研究では、ロスバスタチンを含むスタチンのよく知られた症状である横紋筋融解症はリガーゼアストロジン−1アルファに関係する、ということが明らかとなった。特に、筋肉タンパク質は、UPP(ユビキチンプロテアソーム経路)の活性と関連する細胞メカニズムを介して破壊される。ユビキチンタンパク質リガーゼE3としてのアストロジン−1(MAFbx:筋萎縮F−ボックス)及び他のリガーゼMURF1(筋リングフィンガ1)はUPP形成のための要素であり、筋萎縮を惹起する。とりわけアトロジン−1は、筋萎縮の初期段階で誘導され、筋肉減少に先立って増加することが知られている。例えば、アストロジン−1欠失マウスは筋萎縮に抵抗性を持ち、アストロジン−1が筋肉のタンパク質の重要なタンパク質を破壊するということを示す(J.Clin.Ivest.、117、pp.3940−3951、2007)。
【0006】
アストロジン−1は、PGC−1アルファと密接に結合することが知られており、これは、筋肉及び他の組織のホメオスタシス、温度制御及び糖代謝に関連する生理的反応に関与する転写コアクチベータであることが知られている(J.Clin.Ivest.、117、pp.3940−3951、2007;Proc.Nat.Acad.Sci.、103(44)、pp.16260−16265、2006)。
【0007】
PGC−1アルファがスタチンによる骨格筋肉障害を軽減するという結果は、ミトコンドリアの数及び機能が筋肉全体にとって重要な役割を果たしていることを意味する。PGC−1アルファの活性化段階を説明するために、活性化AMPK酵素が細胞中でミクロソームとともにグルコーストランスポータータンパク質を筋肉細胞膜へ輸送し、GLUT−4(グルコーストランスポーター4)の上昇を引き起こす。最後に、P38MAPKがリン酸経路を通過し最後にPCG−1が活性化される。
【0008】
活性化PGC−1アルファは、IGF−1(インスリン様成長因子−1)/PI3K/AKTシグナル系を通じてFox0−リン酸化し、核局在化及びアトロジン−1の転写を阻止する。即ち、PCG−1アルファの過剰発現はアトロジン−1の発現を抑制し、筋障害を防止することが予想される。C1C12筋管の場合、PGC−1発現は、アトロジン−1アルファの発現に低減されることが示される(J.Clin.Ivest.、117、pp.3940−3951、2007)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6、858、618号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Am J.Cardiol、102、pp.1654−1662、2008
【0011】
【非特許文献1】Life Science、82、pp.969−975、2008
【非特許文献2】J.Clin.Zvest.、117、pp.3940−3951、2007
【非特許文献3】Proc.Nut.Acad.Sci.、103(44)、pp.16260−16265、2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
PGC−1アルファ活性化と密接に関連するAMPKを活性化するために、メトホルミンと呼ばれる薬剤がある。メトホルミンは化学的にはビグアニドとして分類され、その平均投与量は最大一日2500mgであり、適切な投与方法としては、500mg又は750mg錠剤を食間に一日2、3回である。これが、非インスリン依存糖尿病としての糖尿病治療を行う患者に用いられる場合、血糖値はグルコースの生成を抑制することで制御される。
【0013】
しかしこれまで、本発明の医薬組成物に関する報告はなかった。本発明の医薬組成物は、経口医薬組成物であり、メトホルミン及びロスバスタチンを含み、これにより、スタチンの副作用を低減し、一日1回投与の安全性、患者の利便性とコンプライアンスを強化することができ、前記医薬組成物の初期有効血中濃度を制御し、徐放性組成物として供され、生体中で安定したレベルを維持し、高脂血症の予防及び治療のために有用な有効量を安定して供給する、ものである。
【0014】
本発明の発明者は、前記医薬組成物を研究し、メトホルミンとロスバスタチンを含む医薬組成物が、スタチンの副作用を低減し、一日1回投与の安全性、患者の利便性とコンプライアンスを強化することができ、前記医薬組成物の初期有効血中濃度を制御し、徐放性組成物として供され、生体中で安定したレベルを維持し、高脂血症の予防及び治療のために有用な有効量を安定して供給する、ものであることを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を達成するために、本発明は、メトホルミン(メトホルミン及びその薬物的に許容される塩の治療的有効量)及びロスバスタチン(ロスバスタチン及びその薬物的に許容される塩の治療的有効量)を含み、ロスバスタチンの副作用を低減させ、高脂血症を予防及び治療する医薬組成物を提供する。
【0016】
1つの実施態様では、本発明は、(a)治療的有効量のメトホルミン又はその薬物的に許容される塩、(b)徐放性担体及び(c)治療的有効量のロスバスタチン又はその薬物的に許容される塩を含む、医薬組成物を提供する。
【0017】
他の実施態様では、本発明は、(a)治療的有効量のメトホルミン又はその薬物的に許容される塩、(b)徐放性担体、(c)治療的有効量のロスバスタチン又はその薬物的に許容される塩、及び(d)賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0018】
ここで定められる用語「メトホルミンの薬物的に許容される塩」には、メトホルミンの全ての塩を含み、薬物的に許容される塩、好ましくはメトホルミンHCl塩、メトホルミンアセチルサリチル酸塩、メトホルミンフマル酸塩、メトホルミンコハク酸塩、メトホルミンマレイン酸塩、メトホルミンマロン酸塩などであり、より好ましくはメトホルミンHCl塩が含まれるが、これらの限定されない。
【0019】
ここで定められる用語「ロスバスタチンの薬物的に許容される塩」には、薬物的に許容される全ての塩、好ましくはロスバスタチンカルシウム塩、ロスバスタチンHCl塩、ロスバスタチンアセチルサリチル酸塩、ロスバスタチンフマル酸塩、ロスバスタチンコハク酸塩、ロスバスタチンマレイン酸塩、ロスバスタチンマロン酸塩などであり、より好ましくはロスバスタチンカルシウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
ここで定められる用語「副作用」には、スタチンにより起こるものであり、好ましくは筋肉痛、筋肉細胞障害、横紋筋融解症などであり、より好ましくは横紋筋融解症が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
ここで定められる用語「徐放性担体」は、血液中濃度の急上昇による副作用を抑制し、その徐放の適切なタイミングを維持するものを含むが、これに限定されない。
【0022】
1以上の担体が以下のもの、即ち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、アルキルヒドロキシプロピリメチルセルロース、プロピレンオキシド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポビドン及びその誘導体、コーンスターチ、ポテトスターチ、前ゲル化スターチ及びその誘導体、ヒドロキシエチルスターチ、デキストリン及びその誘導体、デキストラン、マルトデキストリン、ポリデキストロース、アルギン酸及びその誘導体、グアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、シクロデキストリン、アラビアゴム、ジェランガム、カラヤゴム、カゼイン、タラガム、タマリンドガム、トラガカントゴム、ガッチガム、ゼラチン、コラーゲン、プロタミンゼイン、ゼイン、カルボマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、グルコマンナン、グルコサミン、アラビノガラクタン、フルセレラン、ポルラン、ポリウレタン、キトサン、キチン、アガー、ペクチン、カラギーナンであり、好ましくは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポビドン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、より好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、最も好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択されるが、それらに限定されない。その量は錠剤又は製品中に約1%〜80%含まれる。
【0023】
ここで薬物コーティング層、簡単な医薬組成物又は追加のマトリクス層として定められる用語「賦形剤」は、以下のものを含むがそれらに限定されない。即ち、ミクロ結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、アルキルヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートナフタレート、プロピレンオキシド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポビドン及びその誘導体、コーンスターチ、ポテトスターチ及びその誘導体、ヒドロキシメチルスターチ、デキストリン及びその誘導体、デキストラン、マルトデキストリン、ポリデキストロース、グアガム、ロカストビーンガム、キサンタンガム、シクロデキストリン、アラビアゴム、ジェランゴム、カラヤゴム、カゼイン、タラガム、タマリンドガム、トラガカントガム、ガッチガム、ゼラチン、コラーゲン、プロタミン、カルボマー、ポリアクリリアミド、カルナウバワックス、ビイーズワックス、スクロース、脂質スクロース、ラクトース、ポリビニルアセテート、ジエチルアミノアセテート、さらに、ポリウレタン、キトサン、キチン、アガー、ペクチン、カラギーナン又はシェレックが含まれ、好ましくはポリビニルアルコール、セルロースアセテート、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコール、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコール、さらに好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルアルコールであり、その量は錠剤中に0.01〜50%が含まれる。
【0024】
以下、製造プロセスの例を示す:
ステップ(1)は、メトホルミン、徐放性担体及び/又は賦形剤を混合した後の乾燥顆粒を製造する。
【0025】
ステップ(2)は、ステップ(1)の混合顆粒及び/又は活性成分(ロスバスタチン又はロスバスタチン乾燥顆粒)との錠剤を調製する。
【0026】
ステップ(3)はステップ(2)の錠剤をコーティング剤及び/又は活性成分(ロスバスタチン又はロスバスタチン乾燥顆粒)でコーティングする。
【0027】
ステップ(4)は、ステップ(3)のコーティングされた錠剤をさらに、フィルム形成賦形剤でコーティングする。上述のプロセスを通じて、本発明の「メトホルミン及びロスバスタチンを含む医薬組成物」が製造され得る。
【0028】
本発明は、経口医薬組成物に関し、その活性成分がメトホルミン及びロスバスタチンであり、これにより、スタチン系による副作用を低減し、一日1投与の安全性、患者の便利性及びコンプライアンスを強化するものである。さらに、これは、前記医薬の初期有効血中濃度を制御し、制御された徐放性医薬組成物として供され、前記薬物の血中の濃度を安定に維持し、安定した効果を与えることができる。
【0029】
以下本発明の製品の成分及び原理についてより詳細に記載する。
【0030】
本発明の製品は、メトホルミン、1つのビグアニド及びロスバスタチン、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル−CoA(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤を医薬活性成分として含み、特に前記製品は1日1回投与される。
【0031】
とくに前記医薬組成物の主成分のロスバスタチンの有効投与量は、約1mg〜100mg、好ましくは約3mg〜50mg、より好ましくは約5mg〜30mgの範囲である。メトホルミンについては、約100mg〜約2500mg、好ましくは約150mg〜1500mg、より好ましくは約200mg〜1100mgの範囲である。さらに好ましくは、ロスバスタチン/メトホルミン系の有効投与量については、以下の投与量が1日1回投与される;5mg/250mg、5mg/500mg、5mg/1000mg、10mg/250mg、10mg/500mg、10mg/1000mg、20mg/250mg、20mg/500mg、20mg/1000mgである。
【0032】
好ましい実施態様では、(a)メトホルミン(治療的に有効なメトホルミン又はその医薬的に許容される塩の量)、(b)徐放性担体及び(c)ロスバスタチン(治療的に有効なロスバスタチン又はその医薬的に許容される塩の量)の混合物の比は、1:0.01〜5:0.001〜0.5、好ましくは1:0.05〜2:0.005〜2:0.005〜0.025;であり、(a)メトホルミン(治療的に有効なメトホルミン又はその医薬的に許容される塩の量)、(b)徐放性担体、(c)ロスバスタチン(治療的に有効なロスバスタチン又はその医薬的に許容される塩の量)及び(d)賦形剤の混合物の比は、1:0.01〜5:0.001〜0.5:0.01〜5、好ましくは、1:0.05〜2:0.005〜0.025:0.005〜0.025である。
【0033】
本発明の医薬医薬組成物の構成は、メトホルミンが徐放性パターンを示し、2〜24時間の間、好ましくは4〜20時間の間、より好ましくは6〜16時間の間に水又は生理的pH溶解媒体中に一定に溶出され、ロスバスタチンが即時放出パターン又は徐放パターンを示す。即時放出パターンを示す場合には、50〜100%、又は好ましくは70〜90%が水又は生理的pH溶解媒体中に、約10〜60分、好ましくは約20〜50分、より好ましくは約25〜40分で溶出される。徐放性を示す場合は、約1〜24時間、好ましくは約4〜20時間、より好ましくは約6〜16時間又はそれ以上の間一定に放出される。
【0034】
活性成分としてメトホルミン及びロスバスタチンを含む本発明の医薬組成物は、それらを同時に活性成分、徐放性担体及び賦形剤と共に用いることで、副作用を抑制し、投与量の徐放性を制御し、かつ前記薬物の安定レベルの溶出速度を維持する効果を持つ。
【0035】
本発明の医薬組成物中に1部分として含まれ得る担体、賦形剤及び希釈剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトトール、スターチ、アカシア、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ミクロ結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルから選択される。処方される場合には、噴射剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製される。
【0036】
本発明の医薬組成物の好ましい投与量は患者の状態及び体重、疾患の状況、薬物のタイプ、投与経路及び投与期間に依存するが、それは当業者により適切に選択され得ることである。
【0037】
メトホルミン及びロスバスタチンを含む本発明の医薬組成物の成分及び原理は以下詳細に説明される。
【0038】
この医薬組成物の製造手順の例は次のステップを含む。
【0039】
第1のステップ(a)は、(1)メトホルミン及び(2)1以上のカルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒトヂキシメチルセルロース、 ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの徐放性担体を適切な比で混合して後乾燥顆粒を製造することである。
【0040】
第2のステップ(b)は、ステップ(a)からの顆粒に賦形剤及び/又は活性成分(ロスバスタチン又はロスバスタチン乾燥顆粒)を添加し、錠剤プレスを用いて錠剤を調製することである。
【0041】
第3のステップ(c)は、ステップ(b)の錠剤をコーティング剤及び/又は活性成分(ロスバスタチン又はロスバスタチン乾燥顆粒)でコーティングすることである。
【0042】
最後のステップ(d)は、ステップ(c)でコーティングされた錠剤を最終的にフィルムコーティングするプロセスを含むことで、本発明の医薬組成物の製造方法を提供する。本発明の医薬組成物の製造に関与する全ての手順は通常のプロセスに従い実施され得る。
【0043】
医薬的に許容される賦形剤は、前記顆粒製造(ステップ(a))の手順の間、錠剤製造(ステップ(b))の手順の間、混合手順(ステップ(c))の間に添加され得る。
【0044】
さらに、錠剤の表面のフィルム層形成(ステップ(d))は、ステップ(a)の顆粒生成へ、ステップ(b)の錠剤形成へ及び/又はステップ(c)の錠剤コーティングへ追加され得る。
【0045】
さらに、本発明は、医薬組成物の製造方法を提供することを含み、これは上述のプロセスを用いて製造される(a)乾燥顆粒を添加する追加のステップを含み、(b)上述の徐放性担体、(c)ロスバスタチン(ロスバスタチン又はロスバスタチンの医薬的に許容される塩の治療的有効量)及び(d)医薬的に許容される賦形剤を含む。
【0046】
医薬産業で知られる賦形剤は、前記医薬組成物に添加され得るものであり、次のものが含まれる:バインダ、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、保存剤、甘味剤、芳香剤、安定化剤、湿潤剤、 緩衝液、抗微生物剤、増量剤、酸化防止剤又は希釈剤などである。
【0047】
本発明で使用され得る1以上のバインダは、さらに次の共通するバインダ:好ましくは水、有機溶媒、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ミクロ結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ゲル化前スターチ又はアラビアゴムから選択される。
【0048】
崩壊剤は、以下の共通する崩壊剤:好ましくはスターチグリコレートナトリウム、 クロスポビドン、クロスリンク化カルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、スターチ、カルボキシメチルセルロースカルシウム及びそれらの混合物、から選択され得る。
【0049】
潤滑剤は、共通する以下の潤滑剤:好ましくはステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸、軽無水珪酸及びそれらの混合物から選択され得る。
【0050】
湿潤剤は、共通する以下の湿潤剤:好ましくはポリエチレングリコール、分子量が20000未満で構造中にアルコール性ヒドロキシ基を有する化合物又はそれらの混合物、から選択され得る。
【0051】
必要な場合には、1以上の以下の着色剤:二酸化チタン、鉄酸化物、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、アルミニウムレーキなど、が錠剤に添加され得る。
【0052】
本発明の1以上の保存剤は、安息香酸、メチルパラベン又はプロピルパラベンなどから選択され得る。これらの他に甘味剤、芳香剤、安定化剤及び希釈剤もまた添加され得る。
【0053】
本発明の医薬組成物を用いて一連の経口組成物が製造され得る。例えば、メトホルミン及びロスバスタチンを活性成分として含み、かつ医薬的に許容される塩である上述の賦形剤との組合せで、直接圧縮錠剤、圧縮コーティング錠剤、二層錠剤及び三層錠剤を製造可能である。
【0054】
上述のように、メトホルミン、ロスバスタチン、徐放性担体及び/又は賦形剤を含む本発明の経口医薬組成は、スタチンによる副作用を低減し、1日1回投与の安全性、患者の利便性及びコンプライアンスを強化する。さらに、前記薬物の初期有効血中濃度を制御し、徐放性により生体内で安定したレベルで前記薬物の濃度を維持し、高脂血症を予防し治療するための医薬組成物として有利に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、実施例2〜4、及び比較実施例1(「AstraZeneca」社製品「Crestor(R)」)でのロスバスタチンの溶解試験の結果を示す。
【図2】図2は、実施例2〜4、及び比較実施例2(「Merck」社製品「Glucophage XR(R)」)でのロスバスタチンの溶解試験の結果を示す。
【図3】図3は、ロスバスタチン(A)の濃度に依存するアトロジン−1の発現レベル、及びメトホルミン(B)の濃度に依存するPGC−1の発現レベルを示す。
【図4】図4は、ロスバスタチン及び/又はメトホルミンが以下の方法でラット筋芽細胞株L6で処置された際の細胞数を示す:ここで、A: ネガティブコントロール;B: 20μMのロスバスタチン;C: 20μMのロスバスタチン及び1μMののメトホルミン;D: 20μMのロスバスタチン及び10μMののメトホルミン;E: 20μMのロスバスタチン及び20μMののメトホルミン;F: 20μMのロスバスタチン及び100μMののメトホルミンを示す。
【図5】図5は、20μMのロスバスタチン及び種々の濃度のメトホルミンにおける細胞生存数を示す。
【図6】図6は、ネガティブコントロール、20μMのロスバスタチン及び20μMのロスバスタチンと20μMのメトホルミン、でのアトロジン−1の発現レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下の記載及び実施例は本発明の選択された実施態様を説明する。これらに基づき、変法・変更などが当業者に示唆され、それらは全て本発明の本質及び範囲に含まれる。
【0057】
実施例1:徐放性顆粒の調製
1−1.徐放性乾燥メトホルミン顆粒の調製
メトホルミン塩酸塩(Granules、India)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208(Metolose 90SH−100000SR、Shin−Etsu Chemical)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2901(Pharmacoat603、Shin−Etsu)、ミクロ結晶セルロース(Avicel102、FMC Biopolymer)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(Blanose 7HF、Aqualon)を高速ミキサ(SPG−2、Dalton)中で5分間混合し;その後湿式顆粒方法で生成された混合物を約1時間乾燥オーブン中で50〜70℃で乾燥し、シーブメッシュ番号3で篩分けした。最後に前記混合物から、下表1の組成物に従って徐放性を持つ乾燥メトホルミン顆粒を製造した。
【0058】
【表1】

1−2.ロスバスタチン顆粒の調製
ロスバスタチンカルシウム(Biocon、India)、リン酸カルシウム(Calipharm T、Innophos)、ミクロ結晶セルロース(Avicel102、FMC Biopolymer)及びラクトース(Pharmatose、DMV−Fonterra)を5分間混合し、シーブメッシュ番号40で篩分けし、その後これとクロスポビドン(Kollidon CL、BASF)及びステアリン酸マグネシウム(Junsei)と混合し、これをシーブメッシュ番号30で高速ミキサー(SPG−2、Dalton)中で5分間篩分けした。最後に前記乾燥ロスバスタチン顆粒を、下表2の組成物に従って製造した。
【0059】
【表2】

実施例2:医薬組成物(1)の調製
2−1.錠剤の調製
実施例1−1で調製された徐放性を持つ乾燥メトホルミン顆粒を、ステアリン酸マグネシウム(錠剤当たり10mg、表1と同量)と完全に混合し、シーブメッシュ番号30で篩分けし、その混合物を錠剤プレス (Ek0、Korsch)を用いて通常の圧力で錠剤に錠剤化した。その後1錠剤当たりメトホルミン1030mgを含む白色徐放性錠剤を100製造した。
【0060】
2−2.錠剤のコーティング
実施例2−1で調製された徐放性錠剤をコーティングパン(Hi−coater、Sejong Pharma Tech)上に置き、空気で満たして30〜45℃に維持した。表3の組成に従い、ロスバスタチン及びオパドライ(Opadry、PVAが45.52%含まれるコーティング剤、Colorcon)とを4倍量の水中で懸濁させ、その後得られた懸濁液を前記乾燥錠剤上に、空気厚を用いてスプレー装置で噴霧し、その後約10分間乾燥させた。オパドライ(Opadry、PVAが45.52%含まれるコーティング剤、Colorcon)の量は錠剤の全量に対して5%であった。さらに、錠剤の安定性を保証するために、追加のフィルムコーティング手順が、上述のコーティングの前/後で実施され得る。ただしここでは行わなかった。
【0061】
【表3】

実施例3:医薬組成物(2)の調製
3−1.二層錠剤の調製
実施例1−1で調製された徐放性を持つ乾燥メトホルミン顆粒をステアリン酸マグネシウム(錠剤当たり10mg、表と同じ量)と完全に混合し、シーブメッシュ番号30で篩分けし、得られた混合物と実施例1−2で調製された乾燥ロスバスタチン顆粒とを錠剤プレス(Ek0、Korsch)を用いて、韓国薬局方に記載された製造方法により二層錠剤に錠剤化した。
【0062】
3−2.錠剤のコーティング
上述の実施例3−1から得られた二層錠剤を、空気で満たされ30〜45℃に維持されたコーティングパン(Hi−coater、Sejong Pharma Tech)に置いた。コーティング剤を表4の組成に従い調製した。その後コーティング剤を前記乾燥錠剤上に空気圧を用いて操作されたスプレー装置で噴霧した。その後約10分間室温で乾燥させた。コーティング剤の量は、錠剤の全量に対して約4%であった。
【0063】
【表4】

実施例4:医薬組成物(3)の調製
4−1.単純医薬組成物の調製
実施例1−1から得られた徐放性を持つ乾燥メトホルミン顆粒を、ステアリン酸マグネシウム(錠剤当たり10mg、表1と同じ量)と完全に混合し、シーブメッシュ30で篩分けした。混合物を60回回転させ、その後実施例1−2で得られた乾燥ロスバスタチン錠剤とともに60回回転させた。その後混合物を錠剤プレス(Ek0、Korsch)を用いて平均厚で錠剤へ錠剤化した。最後に単純医薬組成物が製造された。
【0064】
4−2.錠剤のコーティング
上述の実施例4−1から得られた錠剤をコーティングパン(Hi−coater、Sejong Pharma Tech)に置き、空気で満たし20〜45℃に維持した。コーティング剤を上の表4の組成に従い調製し、それを前記乾燥錠剤に空気圧で操作されるスプレー装置で噴霧した。それを約10分間室温で乾燥した。コーティング剤の量は、全錠剤に対して約4%であった。
【0065】
参考実施例1:細胞培養
ここで使用されたラット筋芽細胞株L6は韓国細胞株バンクから得た。細胞は、4.5g/LのD−グルコース、L−グルタミン、0.11g/Lのピルビン酸ナトリウム及び10%のFBS(ウシ胎児血清、Gibco;Invitrogen Corp.、CA、USA)を添加したDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle medium)を用いて、T−75フラスコ(BD Biosciences)内で細胞数が1x10に達するまで培養した。細胞を分化させるために、細胞を2%HS(馬血清、Gibco;Invitrogen Corp.、CA、USA)を含む培地に接種し、37℃で5%COインキュベーター(Forma scientific、Germany)でインキュベートした。培地を2日毎に交換し、3、4日毎に継体培養した。さらに、この実施例で使用した前記筋芽細胞は、使用する前には6ウェルプレート(BD biosciences)中に0.3×10まで分化した。PBS(Gibco;Invitrogen Corp.、CA、USA)で洗浄ステップの後、前記細胞はELISA、MTT及びPCR分析に使用された。
【0066】
参考実施例2:実験準備
2−1.試薬
L6株(骨格筋細胞)は韓国細胞株バンクから入手し、PGC−1及びアトロジン−1α抗体はサンタクルーズバイオテクノロジ(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA、USA)及びアブカム(Abcam、Cambridge science Park、UK)からそれぞれ入手し、さらにウサギIgG−H&Lに対する山羊ポリクローナル抗体第2抗体をアブカムから入手した。
【0067】
細胞培地のために使用されたDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)はInvitrogenから入手した。トリプシン、ウシ胎児血清及び馬血清は全てGenDEPOTから入手した。タンパク質アッセイ試薬はBio−radから入手した。
【0068】
ELISAで使用されるブロッキング緩衝液、TMB溶液及びストップ溶液はGenDEPOTから入手し、PBSはInvitrogenから入手した。イムノ96ウェルプレートはNunc(MaxiSorp U16 Nunc、Roskilde、Denmark)から入手し、MTTアッセイ用のMTT溶液はSigma Aldrich(St.Louis、Mo、USA)から入手し、最後にDMSOはInvitrogenから入手した。
【0069】
2−2.実験装置
実験には、ミクロプレート発光ジニアス(Microplate fluorescence Genious、Molercular devices、Austria)、遠心分離(Eppendorf)、顕微鏡(IS−70、Olympus)及びPCR(ポリメラーゼ連鎖反応、Bio−rad)を用いた。
【0070】
参考実施例3:統計分析
統計及び比較分析は、グラフパッドPRISM統計パッケージ(GraphPad PRISM statistical package、Version 2.00、 Graphpadsoftware Inc.、San Diego、USA)を用いて実施し、トルコの事後テスト(Turkey’s post−hoc test)により再確認した。全ての報告データは、平均±S.D.である。
【0071】
実験例1:溶解試験
1−1.錠剤(1)の溶解試験
実施例2〜4で製造されたロスバスタチンの溶解試験が、韓国薬局方の溶解試験方法No.2により、表5で示される同じ条件に基づき実施された。
【0072】
【表5】

アッセイ:ロスバスタチンを分析するために、サンプル溶液を表6に従って、HPLC(MD−2010 plus、Jasco)を用いて行った。メトホルミンを分析するためにサンプル溶液を20倍に希釈し、232nmで分析した。
【0073】
さらに、比較実施例1(製品「AstraZeneca」社の「Crestor(R)」)及び比較実施例2(製品「Merch」社の「Glucophage XR(R)」)を、本発明の製品の溶解速度と比較のために同じ条件で実施した。
【0074】
【表6】

表7及び図1で示される結果によると、実施例2及び3で調製したロスバスタチンの溶解速度は、比較実施例1と同様に中間的パターンを示した。しかしロスバスタチンの溶解速度は12時間一定を維持した。その徐放性が、初期段階に(表7及び図1を参照)薬物の急激な増加を抑制し得ることが証明される。
【0075】
【表7】

1−2.錠剤(2)の溶解試験
実施例2〜4でのメトホルミンの溶解速度を決定するために、実験例1−1と同じ方法で溶解試験を行った。実施例2〜4のメトホルミンの溶解速度は比較実施例2(表8及び図2を参照)と類似して12時間一定であった。
【0076】
【表8】

実験例2:ELISAによる抗体の識別
ロスバスタチン及びメトホルミンにおいてアトロジン−1及びPGC−1αの発現を確かめるために、それぞれの抗体を処理し分析した。アッセイ希釈緩衝液で10μl/mLに希釈された血清サンプルの100μlを96ウェルプレート(Nunc、Roskilde、Denmark)のそれぞれのウェルに分配し、4℃で一晩(12時間)インキュベートした。非結合材料を、0.2%Tween20(PBS−T)含むリン酸緩衝生理的食塩水で4回洗浄して除去した。
【0077】
前記プレートを0.2%Tween20(PBS−T)含むリン酸緩衝生理的食塩水で4回洗浄し;PBSに1%BSA(Bovine Serum Albumin)を含む200μlのブロッキング溶液(GenDEPOT)をそれぞれのウェル上に播種し、4℃で2時間インキュベートした。
【0078】
PBS−T及びアッセイ希釈緩衝液中で1:1000希釈された第1抗体(Abcam)で4回洗浄し;その後それぞれのウェルが、ウェル当たり100μlを重複して試験され、室温で4時間インキュベートされた。
【0079】
PBS−Tで4回洗浄後、アッセイ希釈緩衝液で1:1000希釈された100μlのウサギ抗ウシIgG−HRPを全てのウェルに添加して、前記プレートを室温で1時間ゆっくりと撹拌しながらインキュベートした。30%Hを含む0.1M酢酸ナトリウム緩衝液中の新たに調製したテトラメチルベンジジン(TMB)溶液をそれぞれのウェルに添加した。室温で15分後、50μlの2MのHSOを添加して反応を止めた。その後ELISAリーダーを用いて450nmでの吸収を測定した。
【0080】
図3Aに示されるように、ロスバスタチン濃度が増加するに従い、アトロジン−1のタンパク質発現が増加した。
【0081】
図3Bに示されるように、0.1μMのメトホルミンの処理は、ネガティブコントロールと比べて有意差を示さなかったが、一方1μMを超えるメトホルミンの処理はPGC−1αの増加を起こした(図3参照)。
【0082】
実験例3:細胞形態
メトホルミンの濃度によるL6細胞株の形態を比較するために、0.5x10筋細胞を6ウェルプレート(Falcon)のそれぞれに播種し、5%COインキュベーター中で24時間37℃でインキュベーターした。20μlのロスバスタチンで処理し、0、1、10、20及び100μMのメトホルミンでそれぞれ処理した。48時間後、それらの全てを顕微鏡で観察した(IS−70、Olympus)。
【0083】
図4に示されるように、ロスバスタチンの20μMで処理されたL6細胞のコンフルエンスは、処置のされていないグループに比較して大きく減少していた。しかしL6細胞のコンフルエンスはメトホルミンの増加とともに増加した。従って、ロスバスタチンによる筋肉障害がメトホルミンを添加することで低減することが予想される(図4参照)。
【0084】
実験例4:MTTアッセイ
MTTアッセイは、L6筋細胞の生存率を決定することで実施された。1x10細胞が96ウェルプレートのそれぞれに播種し、5%COインキュベーターで24時間37℃でインキュベートした。
【0085】
ロスバスタチンは20μMで処理し、メトホルミンは0、10、20及び100μMで処理した。それらを48時間インキュベーター内でインキュベートし、それぞれのウェルを1mg/1mlのMTT溶液で処理し、さらに2時間インキュベーター内でインキュベートした。その後それぞれのウェルをDMSOで処理し、ホルマザンを溶解するために10分間ホイルでカバーした。最後に、ホルマザンの光学密度をELISAリーダーを用いて570nmで測定した。
【0086】
図5に示されるように、20μMのロスバスタチンのみで処理したグループは細胞の生存率の有意な減少が見られた。しかし、ロスバスタチンとメトホルミンとの組合せ処理では、メトホルミン濃度が増加するにつれて細胞生存率は増加した。特にロスバスタチンのみのグループと比較して、20μMのロスバスタチンと20μMのメトホルミンで処理したグループは31.6%の増加が見られ、20μMのロスバスタチンと100μMのメトホルミンで処理したグループでは39.99%増加した。これにより、メトホルミンをロスバスタチンへ添加することは細胞生存率を増加させ、その結果ロスバスタチンによる細胞障害を抑制する、ということが示唆された(図5参照)。
【0087】
実験例5:RT−PCR(逆転写)
メトホルミンの濃度に依存する筋細胞中のアトロジン−1のmRNAレベルを測定するために、前記細胞を500μlのトリゾール(Trizol、Invitrogen)中でホモジナイズし、及び3μgの全RNAを細胞スクラパーを用いて集めた。筋細胞から抽出した全RNAを2μlの5X緩衝液RT、1μlのdNTP混合物(それぞれのdNTP5mM)、0.5μlのRnase阻害剤(10ユニット/μl)、2ユニットのオムニスクリプト逆転写酵素(Omniscript Reverse Transcriptase)、及び20μlのRnaseフリー水(DEPC)の混合物中に入れ;逆転写反応を、37℃で60分及び72℃で15分実施してcDNAを合成した。ミニサイクラ(Bio−rad、USA)を用いてPCRを行った。3μlの合成cDNAを2μlの10x緩衝液(Cosmo−Gentec)、1μlのdNTP混合物(それぞれのdNTP5mM)、0.3μlの1ユニットのTaqDNAポリメラーゼ(Cosmo−Gentec)混合物中に入れ;2μlのそれぞれのプライマ(Macrogen製)及び水を添加して全容量を20μlにし;増幅させた。
【0088】
PCRでは、最初の変性を96℃で3分間行い、30秒間96℃、30秒間55℃及び30秒間72℃の30サイクルを行い;伸長反応を72℃で5分間実施した。さらにβアクチンでは26サイクル行った。RT−PCRで使用されたプライマは下表9に示される。
【0089】
【表9】

図6に示されるように、アトロジン−1のmRNA発現は、ネガティブコントロールに比較して20μMのロスバスタチンで処理されたグループで増加が見られた。しかし、20μMのロスバスタチンと20μMのメトホルミンで処理されたグループはアトロジン−1のmRNA発現の減少が見られた。従ってこのことは、メトホルミンをロスバスタチンへ添加することで、アトロジン−1のmRNA発現がブロックされたということであり、ロスバスタチンによるL6筋細胞障害が抑制される、ということを示唆する(図6参照)。
【0090】
参考実施例、実施例及び実験例に関連して説明された本発明は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0091】
本発明はメトホルミン及びロスバスタチンの経口医薬組成物に関する。詳細には、メトホルミン及びロスバスタチン、徐放性担体及び/又は賦形剤を含む本発明の医薬組成物は、スタチン系による副作用を低減させ、かつ1日1回投与の安全性、患者の利便性及びコンプライアンスを強化するものである。さらに、前記薬物の初期血中有効濃度を制御し、徐放性による生体内での安定したレベルで薬物の濃度を維持することができ、高脂血症を予防及び治療する医薬産業分野において適用される得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロスバスタチンの副作用を低減させる高脂血症の予防及び治療のための医薬組成物であり、前記医薬組成物は:(a)治療的有効量のメトホルミン又はその薬物的許容される塩、及び(b)治療的有効量のロスバスタチン又はその薬物的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項2】
ロスバスタチンの副作用を低減させる高脂血症の予防及び治療のための医薬組成物であり、前記医薬組成物は:(a)治療的有効量のメトホルミン又はその薬物的許容される塩、(b)徐放性担体及び(c)高脂血症予防及び治療の有効量のロスバスタチン又はその薬物的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項3】
ロスバスタチンの副作用を低減させる高脂血症の予防及び治療のための医薬組成物であり、前記医薬組成物は:(a)治療的有効量のメトホルミン又はその薬物的許容される塩、(b)徐放性担体(c)高脂血症予防及び治療の有効量のロスバスタチン又はその薬物的に許容される塩、及び(d)高脂血症の予防及び治療の効果を持つ賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項4】
請求項1に記載された医薬組成物であり、前記メトホルミンの薬物的に許容される塩が、メトホルミンHCl塩、メトホルミンアセチルサリチル酸塩、メトホルミンフマル酸塩、メトホルミンコハク酸塩、メトホルミンマレイン酸塩、メトホルミンマロン酸塩を含む群から選択される少なくとも1つである、医薬組成物。
【請求項5】
請求項1に記載された医薬組成物であり、ロスバスタチンの薬物的に許容される塩が、ロスバスタチンカルシウム塩、ロスバスタチンHCl塩、ロスバスタチンアセチルサリチル酸塩、ロスバスタチンフマル酸塩、ロスバスタチンコハク酸塩、ロスバスタチンマレイン酸塩、ロスバスタチンマロン酸塩を含む群から選択される少なくとも1つである、医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載された医薬組成物であり、前記副作用が、筋肉痛、筋肉細胞障害及び横紋筋融解症を含む群から選択される少なくとも1つである、医薬組成物。
【請求項7】
請求項2又は3のいずれか一項に記載された医薬組成物であり、前記徐放性担体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、アルキルヒドロキシプロピリメチルセルロース、プロピレンオキシド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポビドン及びその誘導体、コーンスターチ、ポテトスターチ、前ゲル化スターチ及びその誘導体、ヒドロキシエチルスターチ、デキストリン及びその誘導体、デキストラン、マルトデキストリン、ポリデキストロース、アルギン酸及びその誘導体、グアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、シクロデキストリン、アラビアゴム、ジェランガム、カラヤゴム、カゼイン、タラガム、タマリンドガム、トラガカントゴム、ガッチガム、ゼラチン、コラーゲン、プロタミン、ゼイン、カルボマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、グルコマンナン、グルコサミン、アラビノガラクタン、フルセレラン、ポルラン、ポリウレタン、キトサン、キチン、アガー、ペクチン、カラギーナンを含む群から選択される少なくとも1つである、医薬組成物。
【請求項8】
請求項3に記載された医薬組成物であり、前記賦形剤が、ミクロ結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、アルキルヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテート、セルロースアセテートナフタレート、プロピレンオキシド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポビドン及びその誘導体、コーンスターチ、ポテトスターチ及びその誘導体、ヒドロキシメチルスターチ、デキストリン及びその誘導体、デキストラン、マルトデキストリン、ポリデキストロース、グアガム、ロカストビーンガム、キサンタンガム、シクロデキストリン、アラビアゴム、ジェランゴム、カラヤゴム、カゼイン、タラガム、タマリンドガム、トラガカントガム、ガッチガム、ゼラチン、コラーゲン、プロタミン、カルボマー、ポリアクリリアミド、カルナウバワックス、ビイーズワックス、スクロース、脂質スクロース、ラクトース、ポリビニルアセテート、ジエチルアミノアセテート、ポリウレタン、キトサン、キチン、アガー、ペクチン、カラギーナン又はシェレックを含む群から選択される少なくとも1つである、医薬組成物。
【請求項9】
請求項2に記載された医薬組成物であり、(a)メトホルミン:(b)徐放性担体:(c)ロスバスタチンの混合物の重量比が、1:0.01〜5:0.001〜0.5である、医薬組成物。
【請求項10】
請求項3に記載された医薬組成物であり、(a)メトホルミン:(b)徐放性担体:(c)ロスバスタチン:(d)賦形剤の混合物の重量比が、1:0.01〜5:0.001〜0.5:0.01〜5である、医薬組成物。
【請求項11】
請求項9又は10のいずれか一項に記載された医薬組成物であり、前記メトホルミンが、水又は生理的pH溶解媒体中で約2〜24時間一定に放出される、医薬組成物。
【請求項12】
請求項9又は10のいずれか一項に記載された医薬組成物であり、前記ロスバスタチンの50〜100%が、水又は生理的pH溶解媒体中で約10〜60分間で即時に放出される、医薬組成物。
【請求項13】
請求項9又は10のいずれか一項に記載された医薬組成物であり、前記ロスバスタチンが、水又は生理的pH溶解媒体中で約1〜24時間以上一定に放出される、医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−516409(P2013−516409A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547034(P2012−547034)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009606
【国際公開番号】WO2011/081493
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512141596)ビーシーワールド ファーム. カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】