説明

メラノサイト分化誘導促進剤及びその使用方法

【課題】幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進活性を有するメラノサイト分化誘導促進剤を提供する。
【解決手段】オオムギの抽出物を有効成分として含有するメラノサイト分化誘導促進剤、および該分化誘導促進剤の存在下で幹細胞を培養する工程を含む、メラノサイト分化誘導促進方法。さらに、該メラノサイト分化誘導促進剤を含有する色素異常症、白髪又は難聴の改善又は治療用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進剤及び当該分化誘導促進剤を含有する色素異常症、白髪又は難聴の改善又は治療用組成物並びに当該分化誘導促進剤を使用したメラノサイト分化誘導促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メラノサイトは、メラニン色素を合成し、動物の皮膚の色や毛色を決めている細胞である。メラノサイトは、脊椎動物発生の基本となる神経管から派生する神経堤細胞に由来する。神経堤細胞は、神経管から真皮内に左右対称に腹側に遊走し、増殖しながら成熟する。最終的に、神経堤細胞は毛包に定着した後、さらに分化し、且つ成熟することで、メラノサイトへと分化し、且つ成熟する。
【0003】
また、毛包内では、成熟したメラノサイトとともに、バルジ領域付近に未分化な色素幹細胞が存在する。当該未分化色素幹細胞は、自己増殖するとともに、必要に応じて未熟なメラノブラストを経て、成熟したメラノサイトを表皮や毛母に供給していると考えられている。供給された成熟メラノサイトは周辺のケラチノサイトにメラノソームを移送することで、皮膚や毛に色素を供給している。このように、メラノサイトには様々な分化段階が存在する。
【0004】
メラノサイトの分化及び増殖並びにメラニン合成機構の異常は、様々な疾患の原因となる。例えば、メラノサイトの初期分化に重要な役割を果たす遺伝子群に変異が起きると、皮膚白斑、虹彩異色症及び難聴の3つを特徴とするワーデンブルグ(Waardenburg)症候群が引き起こされる。また、メラニン合成に関わるタンパク質であるチロシナーゼに変異が起こり、当該酵素の活性が失われた場合には、メラニンが全く生成されず、その個体は全身性白皮症I型(oculocutaneous albinism type I:OCA1)に罹患する(非特許文献1)。
【0005】
さらに、尋常性白斑は、日本において100〜250万人が罹患していると推計される後天的で、且つ進行性の色素脱失症である。尋常性白斑は、臨床的に身体の一部にだけ発症する限局型、一定の神経支配領域に一致して片側性に発症する分節型、及び比較的広範囲に散在する汎発型に分類される。尋常性白斑の原因としては、メラノサイトやメラニンに対する自己免疫説や神経障害説等が考えられているが、詳細は不明である。
【0006】
これらの色素異常症に対する治療として、各種紫外線療法(長波長紫外線を照射するPUVA療法、中波長紫外線のうち治療に有効な波長(311nm)のみを選択的に照射するナローバンドUVB療法等)やステロイド剤の外用療法等が行われており、ある程度成果が得られている。しかしながら、これらの色素異常症治療法は完全な治療法とは言えず、色素異常症は未だ難治性疾患とされている。
【0007】
また、上述のように、メラノサイトは皮膚に加えて、毛にも色素を供給する。従って、加齢に伴って起こる白髪は、毛根のメラニン産生の減退に起因すると考えられている。現在までのところ、この白髪の改善は、ほとんどが染剤での染色によるものである。白髪改善用として種々の毛髪用化粧料が報告されているが、根本的な白髪改善用頭髪化粧料は従来において存在していない。
【0008】
さらに、皮膚や毛に対する色素の供給に加えて、メラノサイトの機能として、内耳における蝸牛内の電位の調節への関与が知られている。そして、その機能欠損は難聴を引き起こすことが知られている。
【0009】
以上のように、メラノサイトの発生、分化及びメラニン合成に異常が生じると、色素異常症、難聴等の重大な疾患及び白髪を生じる。色素異常症、白髪及び難聴は、いずれも患者の精神的負担が重く、QOL(生活の質)を妨げる要因の一つとなっている。従って、これらの疾患を根本的に解決できる因子の同定及び治療法の開発が不可欠である。
【0010】
一方、幹細胞は、様々な細胞に分化できる多分化能と、細胞分裂を経ても多分化能(未分化状態)を維持できる自己増殖能とを併せ持つ細胞である。幹細胞は、生体内の各組織に存在している。幹細胞は、障害若しくは疾患又は老化等に伴い組織の細胞が失われた場合に、新たな細胞を供給することにより組織の恒常性を保つ役割を果たす。近年、細胞移植治療や組織工学(再生医療や再生美容)の分野において、これらの幹細胞の性質を臓器や組織の再生に応用する活発な研究が進められている(非特許文献2)。
【0011】
また、未分化な幹細胞から特定細胞への分化誘導系を用いた解析により、これまでに種々の細胞への分化誘導促進剤が開発されている。例えば、特許文献1においては、間葉系幹細胞から心筋細胞への分化誘導系を用いて、その分化誘導促進剤としてピオグリタゾン(pioglitazone)を見出した。さらに、特許文献2においては、幹細胞から骨芽細胞への分化誘導系を用いて、その分化誘導促進剤としてカルシウム拮抗薬を見出した。その他、神経細胞や脂肪細胞等への幹細胞の分化誘導促進剤が開発されている。
【0012】
しかしながら、従来において、分化誘導系を用いて幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進剤を探索した報告はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009-153514号公報
【特許文献2】国際公開第06/123699号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Bennett DC,Lamoreux ML, Pigment Cell Research, 2003年, 第16巻, 第4号, pp. 333-344
【非特許文献2】西川 伸一ら, 実験医学増刊, 2008年, 第26巻, 第5号, pp. 74-80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
幹細胞からメラノサイトへの分化誘導系において、幹細胞からメラノサイトへの分化を促進する素材が見出されば、これまでにない、より根本的な色素異常症、白髪、難聴等のメラノサイトが関与する疾患の治療剤及び治療法の開発が期待される。
【0016】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、幹細胞からメラノサイトへの分化促進活性を有する素材を見出し、これまでにない根本的な色素異常症、白髪及び難聴の改善又は治療用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導系を用いることにより、メラノサイトの発生、分化、増殖及びメラニン合成の全てを試験管内(in vitro)で再現できることを確認し、さらに本誘導系をスクリーニング系として用いることにより、イネ科オオムギ属に属するオオムギ(学名:Hordeum vulgare L.)の抽出物がメラノサイトの分化を促進する優れた効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)オオムギの抽出物を有効成分として含有するメラノサイト分化誘導促進剤。
(2)前記抽出物が水及び低級アルコールから成る群より選択される溶媒により抽出された抽出物である、(1)記載のメラノサイト分化誘導促進剤。
(3)低級アルコールがエタノールである、(2)記載のメラノサイト分化誘導促進剤。
(4)オオムギがオオムギの茎、葉及び種子から成る群より選択される器官である、(1)〜(3)のいずれか1記載のメラノサイト分化誘導促進剤。
(5)(1)〜(4)のいずれか1記載のメラノサイト分化誘導促進剤を含有する色素異常症、白髪又は難聴の改善又は治療用組成物。
(6)(1)〜(4)のいずれか1記載のメラノサイト分化誘導促進剤存在下で幹細胞を培養する工程を含む、メラノサイト分化誘導促進方法。
(7)幹細胞が胚性幹細胞である、(6)記載の方法。
(8)前記培養が、幹細胞をフィーダー細胞上で培養することを含む、(6)又は(7)記載の方法。
(9)前記培養に使用する培地が、ウシ胎児血清、デキサメタゾン、塩基性線維芽細胞増殖因子、コレラトキシン及びエンドセリン3を含有する、(6)〜(8)のいずれか1記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導を顕著に促進することで幹細胞からメラノサイトの作製を極めて効率的に行うことができる。従って、本発明は、メラノサイトが関与する色素異常症、白髪又は難聴の治療、予防及び改善の分野並びにメラノサイトを使用する組織再生の分野において大きく貢献できるものであり、医学、医薬品、医薬部外品、美容及び健康分野への応用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
未分化な幹細胞からメラノサイトへの分化誘導系をスクリーニング系として用いていることにより、メラノサイトの分化を促進する素材の探索を行ったところ、イネ科オオムギ属に属するオオムギ(学名:Hordeum vulgare L.)の抽出物が、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進活性を有することを見出した。従来において、マウスメラノーマ細胞等を用いた試験により、オオムギの抽出物がメラニン合成抑制効果を有することが知られていた(特開2008-143827号公報)。しかしながら、オオムギの抽出物が幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進活性を有することは従来において知られていなかった。
【0021】
従って、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤は、オオムギの抽出物を有効成分として含有するものである。本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤によれば、幹細胞からメラノサイトへの分化を促進することで、メラノサイトの分化を制御することができる。また、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤によれば、メラノサイトの分化を制御することで、メラノサイトが関連する色素異常症、白髪及び難聴等の疾患を根本的に予防、改善及び治療することができる。さらに、幹細胞からメラノサイトへの分化を促進するための研究用試薬として、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤を使用することもできる。
【0022】
本発明においては、先ずオオムギの抽出物を準備する。本発明において使用するオオムギとしては、例えば頴や頴果が紫色、黒色、白色(有色ではない)等であるオオムギが挙げられる。場合によっては、茎や葉も有色であるオオムギも本発明において使用することができる。例えば、紫色の品種としては、OUC321、CI158、CI244等が挙げられる。黒色の品種としては、PI232、SV43等が挙げられる。白色の品種としては、OUJ042、OUJ332、OUJ392、OUJ625等が挙げられる。これらのオオムギの品種は、岡山大学資源生物科学研究所 大麦野生植物資源研究センターから入手することができる。以下においては、紫色の系統のオオムギを紫麦、黒色の系統のオオムギを黒麦、有色でない系統のオオムギを白麦と称する。
【0023】
また、オオムギの抽出物の調製において、使用するオオムギの部位としては、特に限定されるものではないが、例えば植物体全体、器官(花、葉、茎、根、樹皮、果実、果皮若しくは種子又はこれらの混合物等)等が挙げられ、特に茎、葉及び種子等の器官を使用することが好ましい。さらに、抽出にオオムギの植物体そのままを使用してよく、あるいは乾燥、粉砕、細切等の処理により得られたオオムギの調製物を使用することもできる。例えば、オオムギの茎葉、種子、根及び発芽種子(麦芽)等の植物の一部又は全草の乾燥物を、オオムギの抽出物の調製に使用することができる。
【0024】
オオムギを溶媒抽出に供することで、オオムギの抽出物を得ることができる。抽出に使用する溶媒としては、例えば、水(熱水)、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)、無機酸(塩酸等)等が挙げられる。水、低級アルコール及び液状多価アルコールが好ましく、水及びエタノールが特に好ましい。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いても良い。また、これら溶媒に酸やアルカリを添加してpH調整を行うこともできる。特に、エタノールを溶媒として使用する場合には、例えば50〜100%(v/v)、好ましくは50〜60%(v/v)の濃度のエタノールを使用することができる。
【0025】
上述の溶媒を用いて、オオムギを溶媒抽出に供する。オオムギに対する溶媒の割合は、例えば1〜50%(w/v)、好ましくは5〜20%(w/v)が挙げられる。溶媒抽出方法は、特に限定されないが、加熱による抽出が好ましい。例えば、オオムギ(茎葉、種子等)に水を加え、95〜100℃における熱水抽出を行うことで、オオムギ抽出物を得ることができる。あるいは、オオムギ(茎葉、種子等)に低級アルコール(例えば、エタノール等)を添加し、常温(例えば5〜35℃)で抽出を行うことで、オオムギ抽出物を得ることができる。
【0026】
溶媒抽出後、得られた溶媒相自体をオオムギ抽出物とすることができる。あるいは、必要に応じて、得られた溶媒相を、濃縮、希釈、濾過、乾燥等の処理及び活性炭等による脱色処理、脱臭処理等に供して、得られた生成物をオオムギ抽出物とすることができる。特に、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理に供し、得られた乾燥物をオオムギ抽出物として用いることが好ましい。
【0027】
このようにして得られたオオムギ抽出物を本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤の有効成分とする。本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤は、医薬、医薬部外品、化粧料又は飲食品として使用することができる。また、上述のオオムギ抽出物を、医薬、医薬部外品、化粧料又は飲食品の製造のために使用することもできる。特に、本発明に係る分化誘導促進剤は、色素異常症、白髪又は難聴の改善又は治療用組成物として、又は当該組成物の製造のために使用することができる。さらに、本発明に係る分化誘導促進剤は、例えば細胞培養用添加剤、研究用試薬、医療用試薬、細胞移植剤等として使用することができる。
【0028】
ここで、色素異常症としては、例えばワーデンブルグ(Waardenburg)症候群、全身性白皮症I型(oculocutaneous albinism type I:OCA1)、尋常性白斑、限局性白皮症、遠心性後天性白斑、Vogt・小柳・原田病、老人性白斑、脱色素性母斑、偽梅毒性白斑等が挙げられる。
【0029】
さらに、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤を医薬、医薬部外品、化粧料又は飲食品として利用する場合には、その取扱い説明書又はパッケージに、オオムギ抽出物を含有し、メラノサイト分化誘導促進活性を有することを特徴とする旨を表示することができる。
【0030】
本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤を、医薬又は医薬部外品として使用する場合には、剤形としては、特に限定されるものではないが、例えば、内服剤(錠剤、カプセル剤等)、外用剤(軟膏(クリーム)、水剤、エキス剤、ローション剤、乳剤等)並びに注射剤が挙げられる。当該医薬又は医薬部外品には、オオムギ抽出物の他に、助剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、吸収促進剤及び界面活性剤等の薬学的に許容される担体を任意に組合せて配合することができる。
【0031】
本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤を化粧料として使用する場合には、剤形としては、特に限定されるものではないが、例えば、クリーム、ローション、フォーム、エッセンス、ファンデーション、パック、スティック及びパウダー等が挙げられる。当該化粧料には、オオムギ抽出物の他に、化粧料成分として一般に使用されている油分、界面活性剤、紫外線吸収剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素類、香料等を任意に組合せて配合することができる。
【0032】
本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤におけるオオムギ抽出物の配合量は、特に限定されるものではないが、乾燥物として計算して、全組成の0.00001〜10重量%とすることが好ましく、0.0001〜1重量%とすることが最も好ましい。全組成の0.00001重量%未満とすると、メラノサイト分化誘導促進効果が十分に発揮されにくい場合がある。
【0033】
以上に説明した本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤を、ヒトを含めた動物に適用することで、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導を促進できる。また、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤を、生体内の(in vivoで)幹細胞に対して直接作用させることで、メラノサイトへの分化促進が有効な疾患を治療することができる。特に、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤によれば、色素異常症、白髪及び難聴を治療、予防又は改善することができる。さらに、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤を生体内の(in vivoで)幹細胞に対して直接作用させることで、生体外で(in vitroで)幹細胞をメラノサイトへ分化させて移植する必要がないことにより、メラノサイトへの分化に要する時間を短縮することができ、移植に必要とされる細胞数を減らすことができる。
【0034】
なお、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤の幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進活性は、下記の本発明に係るメラノサイト分化誘導促進方法に関して記載する評価方法に準じて評価することができる。
【0035】
一方、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進方法(以下、「本方法」と称する)は、上述の本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤存在下で幹細胞を培養することで、当該幹細胞からメラノサイトへの分化誘導を促進する方法である。本方法によれば、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導を促進することで、メラノサイトを製造することができる。換言すれば、本方法は、メラノサイトの製造方法とすることもできる。
【0036】
本方法で使用する幹細胞としては、メラノサイトに分化する幹細胞であればいずれのものであってよく、例えば胚性幹細胞(ES細胞);骨髄、血液、皮膚、脂肪、脳、肝臓、膵臓、腎臓、筋肉やその他の組織に存在する未分化な状態の細胞(総称して、体性幹細胞と称する)(Young H.E. et al., The Anatomical Record Part A, 2004, 276A:75-102;Alison M.R. et al., Journal of Pathology 2009, 217:144-160);遺伝子導入等により人工的に作製された幹細胞等が挙げられる。これら幹細胞は、初代培養細胞、継代培養細胞、凍結細胞のいずれであってもよい。好ましくは、ES細胞又は骨髄、血液、皮膚若しくは脂肪組織由来の幹細胞を使用することができる。例えばiPS細胞(人工多能性幹細胞:induced pluripotent stem cell)(Yang R. et al., Generation of Melanocytes from Induced Pluripotent Stem Cells, Journal of Investigative Dermatology, advance online publication, 11 August 2011)、真皮組織由来幹細胞(Li L. et al., Journal of Cell Science, 2010, 123(Pt 6):853-60)及び脂肪組織由来幹細胞からメラノサイトへの分化誘導が知られており、これら幹細胞を本方法で使用する幹細胞とすることができる。また、幹細胞の分化の方向性及び分化の過程等について同等の特性を持っていれば、全ての哺乳動物由来の幹細胞を使用することができる。例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物由来の幹細胞を使用することができる。
【0037】
本方法において、幹細胞培養培地又は幹細胞からメラノサイトへの分化誘導培地、また、これら培地と同時に用いる添加剤としては、限定されるものではないが、例えば以下のものが挙げられる。
【0038】
培地としては、増殖因子として白血球遊走阻止因子(LIF)の少なくともいずれか1種(好ましくは、これら増殖因子の全て)を添加した、細胞の生存に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン等)を含む基本培地が挙げられる。当該基本培地としては、例えば、Dulbecco's Modified Eagle Medium(D-MEM)、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI 1640、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco's Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12(D-MEM/F-12)、Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM)、ハンクス液(Hank's balanced salt solution)、MCDB153培地等が挙げられる。また、必要に応じて、培地は、上皮細胞増殖因子(EGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、ビタミン類、インターロイキン類、インスリン、トランスフェリン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コラーゲン、フィブロネクチン、プロゲステロン、セレナイト、B27-サプリメント、N2-サプリメント、ITS-サプリメント、抗生物質等を含有してもよい。
【0039】
また、上記以外には、1〜20%の含有率でFBS(ウシ胎児血清)等の血清が培地に含まれることが好ましい。しかしながら、血清はロットの違いにより成分が異なり、その効果にバラツキがあるため、ロットチェックを行った後に使用することが好ましい。
【0040】
なお、幹細胞培養又は幹細胞からメラノサイトへの分化誘導における培地の交換は2〜3日に1回行うことが好ましく、より好ましくは毎日行うことが好ましい。
【0041】
幹細胞培養又は幹細胞からメラノサイトへの分化誘導に使用する容器としては、例えば使い捨てのシャーレ、マイクロタイタープレート等が挙げられる。
【0042】
本方法においては、先ず幹細胞を準備する。幹細胞の培養(前培養)においては、未分化状態を保つために、マイトマイシンCで処理したMEF細胞(マウス胎児線維芽細胞)等をフィーダー細胞として使用する。培地は、LIF、L-グルタミン等を含有することが好ましい。例えば、培地含有容器底面上にフィーダー細胞をコンフルエントの状態まで培養し、その上に幹細胞を播種し、幹細胞を、所定の時間及び培養温度で培養する。培養後、フィーダー細胞から分離した幹細胞を回収し、メラノサイト分化誘導に使用する。
【0043】
次いで、本方法では、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤存在下で幹細胞を培養し、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導を促進する。特に、培養は、メラノサイト分化誘導系において行われる。メラノサイト分化誘導系としては、例えばフィーダー細胞(フィーダー細胞単層)上への幹細胞の播種、及びFBS、DEX(デキサメタゾン)、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)、CT(コレラトキシン)、EDN3(エンドセリン3)等のメラノサイトの分化を促す因子を添加した培地の使用が挙げられる(Yamane T., Hayashi S., Mizoguchi M., Yamazaki H., Kunisada T., Developmental Dynamics, 1999年, Vol. 216, Issue 4-5, pp. 450-458)。フィーダー細胞としては、例えばマウスやヒトのストローマ細胞であるST2細胞、OP9細胞、PA6細胞、StromaNKtertや繊維芽細胞等が挙げられる。コンフルエント状態のフィーダー細胞上への幹細胞の播種個数は、24wellプレートの1穴当たり、例えば100〜1000個、好ましくは300〜600個が挙げられる。また、FBSは、培地に対して例えば1〜20(v/v)%の濃度、好ましくは5〜15(v/v)%の濃度で添加する。DEX(デキサメタゾン)は、培地に対して例えば10〜500nMの濃度、好ましくは50〜200nMの濃度で添加する。bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)は、培地に対して例えば1〜100pMの濃度、好ましくは10〜40pMの濃度で添加する。CT(コレラトキシン)は、培地に対して例えば1〜100pMの濃度、好ましくは5〜20pMの濃度で添加する。EDN3(エンドセリン3)は、培地に対して例えば10〜1000ng/mLの濃度、好ましくは50〜200ng/mLの濃度で添加する。
【0044】
一方、メラノサイト分化誘導系に使用される培地に対する本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤の添加濃度は、上述の本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤におけるオオムギ抽出物の配合量に準じて適宜決定することができるが、例えば1〜500μg/mL、好ましくは10〜100μg/mLの濃度が挙げられる。また、メラノサイト分化誘導期間中、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤を、例えば1日〜5日に1回(好ましくは1日1回)、定期的に培地に添加する。
【0045】
メラノサイト分化誘導系における培養条件としては、例えば35〜38℃(好ましくは36〜37℃)で20〜30日間(好ましくは22〜26日間)が挙げられる。
【0046】
幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進は、例えば、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤非存在下での幹細胞と比較して、該促進剤存在下で培養した該幹細胞においてメラニン合成量又はメラノサイトマーカー遺伝子の発現が増加されているか否かを決定することで評価することができる。メラニン合成及びメラノサイトマーカー遺伝子の発現は、幹細胞からメラノサイトへの分化の指標である。ここで、メラノサイトマーカー遺伝子の発現の増加とは、幹細胞におけるmRNAレベル又はタンパク質レベルでのメラノサイトマーカー遺伝子発現の増加を意味する。メラノサイトマーカー遺伝子としては、例えばMitf-M(メラノサイト特異的小眼球症関連転写因子:Melanocyte-specific Microphthalmia-associated transcription factor)(Tachibana M. Pigment Cell Res.(2000)13(4):230-40.)及びTyrp1(チロシナーゼ関連タンパク質1:Tyrosinase-related protein 1)(Sarangarajan R, Boissy RE. Pigment Cell Res. (2001) 14(6):437-44.)が挙げられる。
【0047】
メラニン合成量の評価方法では、培養後、メラニン合成量と細胞数とを定量し、細胞数当たりのメラニン合成量を算出する。細胞数測定において、例えば市販品のCell Counting Kit-8(同仁化学研究所製)等の測定後も細胞を回収できるキットを用いることが望ましい。また、メラニンの定量方法としては、例えば分化誘導後に細胞数を測定した細胞を2N NaOHで60℃で2時間溶解し、溶解物を475nmの吸光度で測定する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。次いで、得られた細胞数当たりのメラニン合成量を、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤不在下で培養した幹細胞における細胞数当たりのメラニン合成量と比較する。
【0048】
一方、メラノサイトマーカー遺伝子発現の評価方法では、培養後の細胞からmRNA又はタンパク質を抽出する。次いで、得られたmRNA又はタンパク質中のメラノサイトマーカー遺伝子発現量を、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤不在下で培養した幹細胞における当該遺伝子発現量と比較する。mRNAレベルでは、例えばメラノサイトマーカー遺伝子に特異的なプライマーやプローブを用いたRT-PCR、定量PCRやノーザンブロッティングによって確認する方法が挙げられる。また、タンパク質レベルでは、例えばメラノサイトマーカー遺伝子によりコードされるタンパク質に特異的な抗体を用いたELISA、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッテイング等の免疫学的方法が挙げられる。
【0049】
本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤不在下で培養した幹細胞に比べて、本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤存在下で培養した幹細胞において、メラニン合成量又はメラノサイトマーカー遺伝子の発現が有意(例えば、1.5〜100倍、好ましくは2〜5倍)に増加した場合に、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導が促進され、メラノサイトを製造することができたと判定することができる。
【0050】
以上に説明する本方法により得られたメラノサイトは、一般的に体外で培養した後、創傷部や組織を再生させたい部位に直接注射等で移植することが可能である。すなわち、得られたメラノサイトは、細胞医薬品や医薬組成物として使用され、例えば白斑、白髪、その他の色素異常症等の治療に用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
〔実施例1〕オオムギからの溶媒抽出物の製造例
以下に、オオムギを用いた溶媒抽出物の製造例を示す。
1.製造例1 紫麦(茎葉)の熱水抽出物
紫麦の茎葉5gに精製水50mLを加え、95〜100℃で1時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥に供することで、紫麦(茎葉)の熱水抽出物を1.53g得た。
【0053】
2.製造例2 紫麦(茎葉)の50%エタノール抽出物
紫麦の茎葉5gに50(v/v)%エタノール50mLを加え、常温で5日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮乾固に供することで、紫麦(茎葉)の50%エタノール抽出物を1.16g得た。
【0054】
3.製造例3 紫麦(種子)の熱水抽出物
紫麦の種子5gに精製水50mLを加え、95〜100℃で1時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥に供することで、紫麦(種子)の熱水抽出物を0.92g得た。
【0055】
4.製造例4 紫麦(種子)の50%エタノール抽出物
紫麦の種子5gに50(v/v)%エタノール50mLを加え、常温で5日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮乾固に供することで、紫麦(種子)の50%エタノール抽出物を0.38g得た。
【0056】
5.製造例5 黒麦(茎葉)の熱水抽出物
黒麦の茎葉5gに精製水50mLを加え、95〜100℃で1時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥に供することで、黒麦(茎葉)の熱水抽出物を0.95g得た。
【0057】
6.製造例6 黒麦(茎葉)の50%エタノール抽出物
黒麦の茎葉5gに50(v/v)%エタノール50mLを加え、常温で5日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮乾固に供することで、黒麦(茎葉)の50%エタノール抽出物を0.80g得た。
【0058】
7.製造例7 黒麦(種子)の熱水抽出物
黒麦の種子5gに精製水50mLを加え、95〜100℃で1時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥に供することで、黒麦(種子)の熱水抽出物を0.53g得た。
【0059】
8.製造例8 黒麦(種子)の50%エタノール抽出物
黒麦の種子5gに50(v/v)%エタノール50mLを加え、常温で5日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮乾固に供することで、黒麦(種子)の50%エタノール抽出物を0.41g得た。
【0060】
9.製造例9 白麦(茎葉)の熱水抽出物
白麦の茎葉5gに精製水50mLを加え、95〜100℃で1時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥に供することで、白麦(茎葉)の熱水抽出物を1.25g得た。
【0061】
10.製造例10 白麦(茎葉)の50%エタノール抽出物
白麦の茎葉5gに50(v/v)%エタノール50mLを加え、常温で5日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮乾固に供することで、白麦(茎葉)の50%エタノール抽出物を0.98g得た。
【0062】
11.製造例11 白麦(種子)の熱水抽出物
白麦の種子5gに精製水50mLを加え、95〜100℃で1時間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮及び凍結乾燥に供することで、白麦(種子)の熱水抽出物を0.74g得た。
【0063】
12.製造例12 白麦(種子)の50%エタノール抽出物
白麦の種子5gに50(v/v)%エタノール50mLを加え、常温で5日間抽出を行った。抽出後、抽出液を濾過に供し、得られた濾液を濃縮乾固に供することで、白麦(種子)の50%エタノール抽出物を0.53g得た。
【0064】
〔実施例2〕幹細胞からメラノサイトへのオオムギ抽出物の分化誘導促進効果の評価
以下に、実施例1において製造した製造例1〜12のオオムギ抽出物を用いて、幹細胞からメラノサイトへの分化誘導促進効果を評価し、該抽出物のメラノサイトへの分化誘導促進剤としての効果について確認した。
【0065】
本実施例では、過去に山根らが開発したマウス胚性幹細胞(ES cell:embryonic stem cell)からのメラノサイト分化誘導系(Yamane T., Hayashi S., Mizoguchi M., Yamazaki H., Kunisada T., Developmental Dynamics, 1999年, Vol. 216, Issue 4-5, pp. 450-458)を用いて、オオムギ抽出物の効果を検討した。本誘導系を用いることで、メラノサイトの発生から成熟までの全ての段階において素材の評価を行うことが可能となる。以下に詳細を説明する。
【0066】
35mmシャーレにMMC(mitomycin C)処理済みのMEF細胞(Mouse embryonic fibroblast)をコンフルエントの状態で培養し、その上にマウスES細胞を10×104〜20×104個播種し、37℃において5%CO2インキュベーターで前培養した。使用した培地は、DMEMにchemicon社製のES細胞用添加因子(L-グルタミン液、2-メルカプトエタノール液、ヌクレオシド液、非必須アミノ酸液及びESGRO)を推奨濃度で添加した後、FBSを15%添加したものであった。
【0067】
次いで、ST2細胞を24wellプレート上でコンフルエントになるまで培養し、そこにMEF細胞から分離した上述の培養ES細胞を250〜500個播種した。当該培養物を、α-MEMに10%ウシ胎児血清、100nM デキサメタゾン、20pM 塩基性線維芽細胞増殖因子、10pM コレラトキシン及び100ng/mL エンドセリン3を添加した分化誘導培地で培養し、ES細胞をメラノサイトへ分化誘導した。顕微鏡観察により、誘導後6日目にはST2細胞上に形成されたES細胞のコロニーが広がり始め、18日目前後でコロニーの周りにメラノサイトが出現した。誘導後24日目までに、出現したメラノサイトがさらにメラニン合成を行う様子が観察された。以上より、本誘導系を用いることにより、メラノサイトの発生、分化及びメラニン合成の全てを再現できることを確認した。
【0068】
本誘導系において、上述の分化誘導培地に各濃度(12.5、25.0、50.0μg/mL)でオオムギ抽出物を継続して添加し、24日間の分化誘導を実施した。その後、Cell Counting Kit-8(同仁化学研究所)を用いて相対細胞数を定量した。一方、細胞数定量後、細胞をPBS(-)で3回洗浄した後、2N NaOHを用いて60℃で2時間溶解し、溶解物について475nmの吸光度を測定した。その結果、細胞数当たりのメラニン合成量は濃度依存的に増加した。
これらの試験結果を以下の表1〜表3に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
表1〜表3に示すように、オオムギ抽出物(製造例1〜12)の全てに、陽性対照であるエンドセリン-1(Gilchrest BA, Park HY, Eller MS, Yaar M. Photochem Photobiol.(1996) 63(1):1-10.)と同様の顕著なメラノサイト分化誘導促進効果が認められた。以上より、オオムギ抽出物が極めて優れた幹細胞からのメラノサイト分化誘導促進効果を有することが明らかとなり、オオムギ抽出物のメラノサイト分化誘導促進剤としての効果を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係るメラノサイト分化誘導促進剤によれば、色素異常症、白髪及び難聴等のメラノサイトが関与する疾患を治療、予防及び改善することができる。例えば、本発明において見出されたオオムギ抽出物を用いることにより根本からの色素異常症及び色素斑の解決に繋がる。また、本発明で見出されたオオムギ抽出物を、経口投与、直接注入、塗布、貼付等により導入し、組織に存在する幹細胞に直接作用させることで、幹細胞からメラノサイトへの分化を促進させることができる。さらに、当該促進によれば、直接的な皮膚組織の再生も期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オオムギの抽出物を有効成分として含有するメラノサイト分化誘導促進剤。
【請求項2】
前記抽出物が水及び低級アルコールから成る群より選択される溶媒により抽出された抽出物である、請求項1記載のメラノサイト分化誘導促進剤。
【請求項3】
低級アルコールがエタノールである、請求項2記載のメラノサイト分化誘導促進剤。
【請求項4】
オオムギがオオムギの茎、葉及び種子から成る群より選択される器官である、請求項1〜3のいずれか1項記載のメラノサイト分化誘導促進剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のメラノサイト分化誘導促進剤を含有する色素異常症、白髪又は難聴の改善又は治療用組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載のメラノサイト分化誘導促進剤存在下で幹細胞を培養する工程を含む、メラノサイト分化誘導促進方法。
【請求項7】
幹細胞が胚性幹細胞である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記培養が、幹細胞をフィーダー細胞上で培養することを含む、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記培養に使用する培地が、ウシ胎児血清、デキサメタゾン、塩基性線維芽細胞増殖因子、コレラトキシン及びエンドセリン3を含有する、請求項6〜8のいずれか1項記載の方法。

【公開番号】特開2013−102752(P2013−102752A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250985(P2011−250985)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】