説明

モジュール機能性ロールの製造方法

【課題】 従来、機能性ロールは、吸液・吸液機能を備える構造であり、高品質の製品処理に活用される。車の製造や製鉄分野、フィルム、電子材料関係、精密機器分野における機能性の精密部品である。海外にも多数輸出されている。機能性ロール全体が長尺構造の大型となり、搬送に難渋し、コストの上昇等の問題を抱えている。殊に、輸出の場合に、問題となる。
【解決手段】 ポーラスで、重畳面に膜状の架橋弾性体が存在する不織布シートでなるモジュール機能性ロールの製造方法で、不織布シートを、プレス機の装着軸に所定枚数を積層し、対の締付け冶具とプレス機で加圧・仮締めを行ない、機能性ロール素材の1ブロックを製作し、1ブロックを複数した後に、熱湯槽を利用し、ボイルと圧着・溶着で、複数のモジュール化した機能性ロール素材を形成し、モジュール化した機能性ロール素材を解体・積層し、モジュール機能性ロールを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール機能性ロールの製造方法に関するものであり、この製造方法によるモジュール機能性ロールは、機能性ロールの製作時に、フランジ付き空胴軸に、数組重畳することで、簡易かつ精度のよい、機能性ロールの製造(製作)を可能とするものである。
【背景技術】
【0002】
この種の機能性ロールは、ロール本体に吸液(吸水)機能と、吸液(給水、洗浄水の給水)機能を備える構造であり、高品質の製品処理に活用されている。例えば、車の製造や製鉄分野、フィルム、電子材料関係、その他の精密機器分野等における機能性の精密部品である。そして、海外にも多数輸出されているのが現況である。
【0003】
そして、この機能性ロールは、機能性の精密部品であることから、その性能と品質の一定性(ロール硬度の軸方向に於ける一定性)と、その正確性等の緻密な機能(積層ロールの圧縮回復力と毛管作用であり、例えば、圧縮回復時の積層ロールの脱液状況と、毛管作用による吸引効果いわゆるスポイト効果とか、また、給液時の余剰給液を、積層ロールの圧縮回復力と毛管作用で吸引し、液垂れ防止いわゆるスポイト効果)が要求されている。従って、機能性ロールを、一体に組付け製造し、この機能性ロール(機能性ロール装置)を提供することが理想である。
【0004】
しかし、機能性ロールは、大型(機能性ロール全体が長尺構造)となり、その搬送に難渋すること、コストの上昇を招来すること、等の問題点を抱えている。殊に、輸出対象の場合には、コストの面で負担が大きく、その改良が望まれている。
【0005】
上記の改良策として、先行文献を、基に検討する。この先行文献を下記に挙げる。
【0006】
文献(1)は、特開平5−180216号公報の「高反撥、無粘性の不織布シート状物を利用する積層ロールの製作方法と、複合構造積層ロール」である。この発明は、本出願人が提出する。概要は、高反撥無粘性の不織布シート状体と、密着性のゴムシート状物等の戻り防止シート状物とを密着状に重畳して構成される。ゴムシート状物等の戻り防止シート状物を、1ブロック毎に、介在させる。発明は、原則として、モジュール機能性ロールの製造方法ではないので、内容が少し異なる。
【0007】
また、文献(2)は、特開平3−219115号公報の「弾性機能を有する不織布、ポーラスなゴムシート等のシート状物を重畳して構成されるポーラスな積層ロールの製作方法及びポーラスな積層ロール」である。この発明も、本出願人の提出に係るが、前記文献(1)の基本の構造と考えられる。
【0008】
【特許文献1】特開平5−180216号公報
【特許文献2】特開平3−219115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上で説明した文献(1)と文献(2)において、機能性ロールをモジュール化(本発明のモジュール機能性ロール)し、このモジュール機能性ロールを、そのまま搬送し、この搬送先で、フランジを備えた軸本体に、組付け一体化して、機能性ロールを構成することを意図しない。機能性ロールが大型の構造とか、その搬送先が、海外(輸出)対応の例では、搬送に難渋し、また、コストの上昇を招来する等の問題を抱えている。
【0010】
上記に鑑み、本発明は、下記の改良策(目的)を提供する。
[イ] モジュール化(ブロック化)して機能性ロール素材の1ブロックを製造し、この各1ブロックを組付け一体化することで、機能性ロールを製造する。従って、長尺の機能性ロールにおいても、必要な分の機能性ロール素材の1ブロックを製造し、組付けることで、所定のロール硬度の機能性ロールを製造する。
[ロ] モジュール化して製造することで、製造過程、又は組付け過程等において、1ブロックに欠陥、例えば、汚れ・損傷等があった際にも、その1ブロックのみを交換すればよく、ロスの減少化、コストの低廉化、無駄の排除化、又は環境保全等に寄与する。
[ハ] シート積層(1ブロック製作)工程は、プレス機にシャフト(装着軸)を載置して、上から圧力を加え、また、解体工程は、このプレス機にシャフトを吊下して、下からブロック毎に分離することにより、シート積層工程と解体工程において、同じ場所・プレス機により、スムーズかつ簡便に、作業する。
[ニ] ボイル工程の熱湯槽と、乾燥工程の乾燥槽を併用することにより、同じ場所・槽により、スムーズかつ簡便に、作業する。
[ホ] ボイル工程の沸水には、薬品を添加しないため、環境に優しく、かつ特別な廃水処理(浄化処理等)なしに、スムーズかつ簡便に、処理する。
[ヘ] モジュール機能性ロールを輸出し、現地で、このモジュール機能性ロールを、フランジ(鍔体)を備えた軸本体に組付け一体化し、機能性ロール(装置)とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、前記[イ]〜[ヘ]の目的を達成することを意図する。
【0012】
請求項1は、ポーラスな不織布シートでなるモジュール機能性ロールの製造方法であって、このモジュール機能性ロールの製造方法は、次の工程により構成される。
(1) この不織布シートは、その重畳面に膜状の架橋弾性体が存在する製法(製造方法)で形成された不織布シート素材より、打抜き形成した環状、又は帯を環状とした不織布シート(後述する不織シート7、及び不織シート8か、不織シート7のみ)を形成する製作工程と、
(2) この環状の不織布シート(前記(1)参照)を、プレス機に立設した空胴部と、この空胴部に連設し、かつ表面に開口する孔を多数備えた装着軸に所定枚数を積層するとともに、この所定枚数の不織布シートを、前記装着軸に套嵌した一方の締付け冶具と、他方の締付け冶具、及びこのプレス機で加圧・仮締めを行ない、この加圧・仮締め後において、緊締具を介して、最初のモジュール化した機能性ロール素材を形成する不織布シートの最初の1ブロック製作工程と、
(3) この機能性ロール素材の1ブロック製作後に、前記装着軸に套嵌した前記他方の締付け冶具と、次の他方の締付け冶具との間に、次の環状の不織布シートを、所定枚数を積層し、このプレス機で加圧・仮締めを行ない、この加圧・仮締め後において、緊締具を介して、次のモジュール化した機能性ロール素材を形成する不織布シートの次の1ブロック製作工程と、
(4) この(3)に続いて、前記装着軸に套嵌した前記他方の締付け冶具と、さらに次の他方の締付け冶具との間に、さらに次の環状の不織布シートを、所定枚数を積層し、このプレス機で加圧・仮締めを行ない、この加圧・仮締め後において、緊締具を介して、さらに次のモジュール化した機能性ロール素材を形成する不織布シートのさらに次の1ブロック製作工程と、
(5) 以上の複数個のモジュール化した機能性ロール素材を成形する工程と、
(6) この複数個のモジュール化した機能性ロール素材を備えた装着軸を、熱湯槽へ浸漬するボイル工程と、
(7) このボイル工程後に、前記複数個のモジュール化した機能性ロール素材が重畳された装着軸に設けたホースを、ポンプに接続し、水分を吸引するバキューム工程と、
(8) このバキューム工程後に、前記熱湯槽を利用して、複数個のモジュール化した機能性ロール素材が重畳された装着軸を、強制乾燥、又は自然乾燥と、冷却を図る乾燥・冷却工程と、
(9) この乾燥・冷却工程後に、前記複数個のモジュール化した機能性ロール素材を、装着軸より取外し、個別に、仮締めを解体し、モジュール機能性ロールを成形する工程。
【0013】
請求項2・3の発明は、請求項1と同じ目的を達成することを意図する。
【0014】
請求項2は、請求項1に記載のモジュール機能性ロールの製造方法において、
前記不織布シートは、ポーラス状の高密度の不織布シートを複数枚積層し、この複数枚の高密度の不織布シート間に、この高密度の不織布シートに比して、低密度となるポーラス状の低密度の不織布シートが、一枚、又は数枚積層する構成としたことを特徴とするモジュール機能性ロールの製造方法。
【0015】
請求項3は、請求項1に記載のモジュール機能性ロールの製造方法において、
前記(2)〜(4)の三製作工程は、プレス機に載置、又は吊下して行う、モジュール機能性ロールの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、ポーラスな不織布シートでなるモジュール機能性ロールの製造方法であって、このモジュール機能性ロールの製造方法は、次の工程により構成される。
(1) 不織布シートは、重畳面に膜状の架橋弾性体が存在する製法で形成された不織布シート素材より、打抜き形成した環状、又は帯を環状とした不織布シートを形成する製作工程と、
(2) 環状の不織布シートを、プレス機に立設した空胴部と、空胴部に連設し、かつ表面に開口する孔を多数備えた装着軸に所定枚数を積層するとともに、所定枚数の不織布シートを、前記装着軸に套嵌した一方の締付け冶具と、他方の締付け冶具、及びプレス機で加圧・仮締めを行ない、加圧・仮締め後において、緊締具を介して、最初のモジュール化した機能性ロール素材を形成する不織布シートの最初の1ブロック製作工程と、
(3) 機能性ロール素材の1ブロック製作後に、装着軸に套嵌した前記他方の締付け冶具と、次の他方の締付け冶具との間に、環状の不織布シートを、所定枚数を積層し、プレス機で加圧・仮締めを行ない、加圧・仮締め後において、緊締具を介して、次のモジュール化した機能性ロール素材を形成する不織布シートの次の1ブロック製作工程と、
(4) (3)に続いて、装着軸に套嵌した他方の締付け冶具と、さらに次の他方の締付け冶具との間に、環状の不織布シートを、所定枚数を積層し、プレス機で加圧・仮締めを行ない、加圧・仮締め後において、緊締具を介して、さらに次のモジュール化した機能性ロール素材を形成する不織布シートのさらに次の1ブロック製作工程と、
(5) 以上の複数個のモジュール化した機能性ロール素材を成形する工程と、
(6) 複数個のモジュール化した機能性ロール素材を備えた装着軸を、熱湯槽へ浸漬するボイル工程と、
(7) ボイル工程後に、複数個のモジュール化した機能性ロール素材が重畳された装着軸に設けたホースを、ポンプに接続し、水分を吸引するバキューム工程と、
(8) バキューム工程後に、熱湯槽を利用して、複数個のモジュール化した機能性ロール素材が重畳された装着軸を、強制乾燥、又は自然乾燥と、冷却を図る乾燥・冷却工程と、
(9) 乾燥・冷却工程後に、複数個のモジュール化した機能性ロール素材を、装着軸より取外し、個別に、仮締めを解体し、モジュール機能性ロールを成形する工程。
【0017】
従って、請求項1は、下記の特徴を有する。
[イ] モジュール化して機能性ロール素材の1ブロックを製造し、この各1ブロックを組付け一体化することで、機能性ロールを製造する。従って、長尺の機能性ロールにおいても、必要な分の機能性ロール素材の1ブロックを製造し、組付けることで、所定のロール硬度の機能性ロールを製造できる。
[ロ] モジュール化して製造することで、製造過程、又は組付け過程等において、1ブロックに欠陥、例えば、汚れ・損傷等があった際にも、その1ブロックのみを交換すればよく、ロスの減少化、コストの低廉化、無駄の排除化、又は環境保全等に寄与できる。
[ハ] シート積層(1ブロック製作)工程は、プレス機にシャフトを載置して、上から圧力を加え、また、解体工程は、このプレス機にシャフトを吊下して、下からブロック毎に分離することにより、シート積層工程と解体工程において、同じ場所・プレス機により、スムーズかつ簡便に、作業できる。
[ニ] ボイル工程の熱湯槽と、乾燥工程の乾燥槽を併用することにより、同じ場所・槽により、スムーズかつ簡便に、作業できる。
[ホ] ボイル工程の沸水には、薬品を添加しないため、環境に優しく、かつ特別な廃水処理(浄化処理等)なしに、スムーズかつ簡便に、処理できる。
[ヘ] モジュール機能性ロールを輸出し、現地で、このモジュール機能性ロールを、フランジを備えた軸本体に組付け一体化し、機能性ロールができ、極めて合理的である。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1に記載のモジュール機能性ロールの製造方法において、
不織布シートは、ポーラス状の高密度の不織布シートを複数枚積層し、複数枚の高密度の不織布シート間に、高密度の不織布シートに比して、低密度となるポーラス状の低密度の不織布シートが、一枚、又は数枚積層する構成としたことを特徴とするモジュール機能性ロールの製造方法。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1に記載のモジュール機能性ロールの製造方法において、
(2)〜(4)の三製作工程は、プレス機に載置、又は吊下して行う、モジュール機能性ロールの製造方法。
【0020】
従って、請求項2・3は、請求項1と同じ特徴を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1−1】重畳面に膜状の架橋弾性体が存在する製法で形成された不織布シート素材の製作工程の前半分を示した要部の平面模式図
【図1−2】重畳面に膜状の架橋弾性体が存在する製法で形成された不織布シート素材の製作工程の後半分を示した要部の平面模式図
【図2】重畳面に膜状の架橋弾性体が存在する不織布シート素材の要部の拡大斜視図
【図2−1】図2の不織布シート素材の重畳面の要部を示した写真
【図2−2】図2の不織布シート素材の断面の要部を示した写真
【図3−1】不織布シート素材を切断し、機能性ロールに採用する高密度でポーラスな環状(中心に装着軸、又は軸本体が挿設される穴を備えた、ドーナツ形状)の不織布シートを示した積層斜視図
【図3−2】不織布シートの要部の拡大斜視図
【図4−1】前記の複数枚の不織布シートに、一枚、又は数枚される、機能性ロールに必要時に採用する低密度のポーラス(前記高密度でポーラスに比し)な環状(中心に装着軸、又は軸本体が挿設される穴を備えた、小径(高密度でポーラスな不織布シートに比し)のドーナツ形状)の不織布シートを示した積層斜視図
【図4−2】不織布シートの要部の拡大斜視図
【図5】プレス機の一例を示した一部省略の概略側面図
【図6−1】最初の機能性ロール素材の1ブロックを製作するに際して、空胴部と多数の孔を備えた装着軸に套嵌した一方の締付け冶具を示した一部を欠截した要部の斜視図
【図6−2】図6−1の装着軸に套嵌した一方の締付け冶具を介して、所定枚数を積層する最初の状態を示した要部の側面図
【図6−3】図6−2の装着軸に套嵌した一方の締付け冶具を介して、所定枚数を積層した後に、この装着軸に他方の締付け冶具を套嵌する状態を示した要部の側面図
【図6−4】図6−3の装着軸に套嵌した一方の締付け冶具に積層した不織布シートの上に、他方の締付け冶具を載せて、仮加圧・仮締めする状態を示した要部の側面図
【図6−5】図6−4の装着軸に套嵌した一方・他方の締付け冶具間に、複数本の緊締具(ボルトとナット)を差込み、一方・他方の締付け冶具の連結・固定(尚、少なくとも、ボルトの軸に対して、他方の締付け冶具が移動可能なように緊締する)する状態を示した要部の側面図
【図6−6】図6−5の装着軸に套嵌した一方・他方の締付け冶具と、積層した不織布シートとを、複数本の緊締具を介して、加圧・仮締めする状態を示した要部の側面図
【図7−1】最後の機能性ロール素材の1ブロックを製作するに際して、空胴部と多数の孔を備えた装着軸に套嵌した一方の締付け冶具を示した要部の斜視図
【図7−2】図7−1の装着軸に套嵌した一方の締付け冶具を介して、所定枚数を積層する最初の状態を示した要部の側面図
【図7−3】図7−2の装着軸に套嵌した一方の締付け冶具を介して、所定枚数を積層した後に、この装着軸に他方の締付け冶具を套嵌する状態を示した側面図
【図7−4】図7−3の装着軸に套嵌した一方の締付け冶具に積層した不織布シートの上に、他方の締付け冶具を載せて、仮加圧・仮締めする状態を示した要部の側面図
【図7−5】図7−4の装着軸に套嵌した一方・他方の締付け冶具間に、複数本の緊締具(ボルトとナット)を差込み、一方・他方の締付け冶具の連結・固定(尚、少なくとも、ボルトの軸に対して、他方の締付け冶具が移動可能なように緊締する)する状態を示した要部の側面図
【図7−6】図7−5の装着軸に套嵌した一方・他方の締付け冶具と、積層した不織布シートとを、複数本の緊締具を介して、加圧・仮締めする状態を示した要部の側面図
【図8−1】装着軸に最終の機能性ロール素材の1ブロックを仮加圧・仮締めした後に、吊下げ冶具を取付ける状態の要部の側面図
【図8−2】図8−1の完了した状態を示す要部の側面図
【図8−3】図8−2の完了の状態で吊下げ初期の状態を示す一部省略の側面図と、その拡大図
【図8−4】図8−2の完了の状態で吊下げ移動開始時の状態を示す一部省略の側面図
【図9−1】装着軸に夫々機能性ロール素材の1ブロックを仮加圧・仮締めし、かつ吊下げ冶具を外し、この装着軸に設けた複数のモジュール化した機能性ロール素材を浸漬する熱湯槽の側面図
【図9−2】装着軸に夫々機能性ロール素材の1ブロックを仮加圧・仮締めし、かつ吊下げ冶具を外し、複数のモジュール化した機能性ロール素材を備えた装着軸の両端側を開放した状態で、熱湯槽に浸漬する前の状態の側面図
【図9−3】図9−2の複数のモジュール化した機能性ロール素材を備えた装着軸を、熱湯槽に浸漬し、ボイルする状態の側面図
【図10−1】前記熱湯槽の熱湯を排湯し、この熱湯槽を乾燥槽として利用する過程を示した側面図
【図10−2】乾燥を終了した、複数のモジュール化した機能性ロール素材を備えた装着軸を、吊架する状態の側面図
【図11−1】乾燥を終了した、複数のモジュール化した機能性ロール素材を備えた装着軸を吊架し、解体する前の状態の一部省略の側面図
【図11−2】図11−1の解体の過程を示す一部省略の側面図
【図12−1】モジュール化した機能性ロールを示した拡大斜視図
【図12−2】図12−1の端部から、その一部を拡大して示した斜視図
【図12−3】図12−1の内部の一部を拡大して示した斜視図
【図13】機能性ロールの全体を示した一部省略・欠截の正面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の一例を説明する。
【0023】
図1−1と、図1−2は、重畳面1a、1bに膜状の架橋弾性体100が存在する不織布シート素材1を製造する一例であり、搬送コンベアA上に、帯状の不織布素材Bを、襞状に積層重畳して、幅を有する不織布Cを生成する。この不織布Cを、架橋弾性材貯留槽Dに浸漬し、その全体に架橋弾性材Eを添着する。この際に、不織布Cの表裏面に架橋弾性材E(架橋弾性体100)を添着することで、この表裏面(重畳面1a、1b)に架橋弾性材Eの添着が多くなる。その後、洗浄、乾燥等の後処理Fを行うことで、不織布シート素材1が製造できる。その詳細が、図2に示されている。
【0024】
この不織布シート素材1を利用して、図3−1、図3−2の如く、装着軸2、又は機能性ロール3の軸本体300の挿設を許す穴5を有し、かつ機能性ロール3の外周面を形成する円形周面6を有する環状の高密度のポーラスな不織布シート7を形成する。尚、図示しないが、帯を環状とした不織布シートを利用して、形成することもあり得る。また、図4−1、図4−2の如く、前述の不織布Cのみを絡合し、かつ不織布シート7に対して、低密度のポーラスな不織布シート8を採用する場合もあり得る。例えば、複数枚の不織布シート7に対して、一枚の不織布シート8(不織布Cのシート)を1パターンとする構造である。そして、望ましくは、不織布シート7の円形周面6の寸法(不織布シート7の径)に対して、この不織布シート8の円形周面10の寸法(不織布シート8の径)は、小径とする。また、図示しないが、この不織シート8は、不織布シート7と同じ材質も可能である。但し、望ましくは、少し、製造方法を異にすることが良いが、一例である。
【0025】
この不織布シート7、8を採用し、モジュール機能性ロールXを製造する方法を説明する。先ず、図5に示したプレス機12と、このプレス機12のフレーム12aのベースに立設した空胴部2a(軸方向の開口部)を備えた装着軸2を利用する。このプレス機12は、ベースの下方にシリンダ1200を有し、またフレーム12aの上方に移動可能で、かつ装着軸2の挿入穴を備えた押え鍔1201を有する固定手段を有する構造である。この押え鍔1201で、後述する他方の締付け冶具17を押えた状態で、シリンダ1200により、一方の締付け冶具及び積層した不織布シート7(必要により、不織布シート8)を、仮加圧・仮締めする。この仮加圧・仮締めの過程で、緊締具のボルトをガイドとして、他方の締付け冶具17が押下げられるとともに、積層した不織布シート7及び一方の締付け冶具16が、押上げられる。その後、他方の締付け冶具17に螺着したナット(符号付さず)の締付けを介して、この他方の締付け冶具17と不織布シート7及び一方の締付け冶具16との仮加圧・仮締めが行われる。尚、前記装着軸2の周壁には、空胴部2aに連通する複数個の貫通細孔2b(孔)を有する。また、この周壁には、軸方向に向かって係止溝2cを多数条有する。尚、この係止溝2cには、不織布シート7の内周面に設けた突片が、挿入かつ係止される構造である。また、この突片は、後述する、図13に示した機能性ロール3を成形する際に、軸本体300に設けた軸方向の溝に挿入係止され、この不織布シート7の円周方向のズレ防止と、変形防止等に役立てる。尚、この突片を備えない構造の不織布シート7もあり得る。
【0026】
図6−1〜図6−6は、最初の不織シート7の1ブロックを仮加圧・仮締めし、最初の(以下省略)のモジュール化した機能性ロール素材15を製造する過程を示したものであり、以下、順に説明する。図6−1、図6−2の如く、装着具13の下方に一方の締付け冶具16を套嵌し、この装着軸2に、順次、不織布シート7を套嵌するとともに、一方の締付け冶具16に、順次、不織布シート7を積層する。その後、図6−3の如く、所定枚数積層した不織布シート7に、装着軸2に套嵌した他方の締付け冶具17を添設する。この添設後、図6−4の如く、一方の締付け冶具16と他方の締付け冶具17とを、複数本の緊締具18で連結する。この緊締具18(ボルトの自由端)は、他方の締付け冶具17の孔に遊嵌されており、この他方の締付け冶具17は、プレス機12で締付け時に、押下げられる構造である。そして、この押下げ時に、他方の締付け冶具17の螺子部に、緊締具18のナットを螺着しての締付けと、プレス機12による加圧と、前記不織布シート素材1の表裏面1a、1bに点在する、複数枚の帯状の架橋弾性体100相互間における圧着とにより、仮加圧・仮締めが終了し、前記のモジュール化した機能性ロール素材15が成形される(図6−5と図6−6参照)。
【0027】
この図6−1〜図6−6で説明した作業を数回繰り返し、図7−1〜図7−6は、最後の不織シート7の1ブロックを仮加圧・仮締めし、最後の(以下省略)モジュール化した機能性ロール素材15を製造する過程を示したものであり、以下、順に説明する。図7−1、図7−2の如く、前の加圧・仮締めが終了した他方の締付け冶具17を、一方の締付け冶具16の代替(兼用)とし、この前の加圧・仮締めが終了した他方の締付け冶具17の上に、順次、不織布シート7を套嵌するとともに、一方の締付け冶具16に、順次、不織布シート7を積層する。その後、図7−3の如く、所定枚数積層した不織布シート7に、装着軸2に套嵌した他方の締付け冶具17を添設する。この添設後、図7−4の如く、一方の締付け冶具16と他方の締付け冶具17とを、複数本の緊締具18で連結する。この緊締具18(ボルトの自由端)は、他方の締付け冶具17の孔に遊嵌されており、この他方の締付け冶具17は、プレス機12で締付け時に、押下げられる構造である。そして、この押下げ時に、他方の締付け冶具17の螺子部に、緊締具18のナットを螺着しての締付けと、プレス機12による加圧と、前記不織布シート素材1の表裏面1a、1bに点在する、複数枚の帯状の架橋弾性体100相互間における圧着とにより、仮加圧・仮締めが終了し、前記モジュール化した機能性ロール素材15が成形される(図7−5と図7−6参照)。
【0028】
以上の操作で、装着軸2に最後のモジュール化した機能性ロール素材15が形成された後に、この装着軸2の空洞部2aの上方開口に、吊下げ冶具20を取付ける(図8−1参照)。その後、図8−2と図8−3の如く、クレーンとワイヤ21を利用して吊下げ、ボイル工程に移る。このボイル工程は、図9−1〜図9−3における熱湯槽22を利用する構造であり、熱湯槽22の熱湯内に、装着軸2に夫々設けたモジュール化した機能性ロール素材15を浸漬する。この浸漬時間は、1時間〜2時間程度とする。この熱湯槽22における熱処理と、不織布シート素材1の表裏面1a、1bに点在する、帯状の架橋弾性体100の熱溶融による溶着で、モジュール化した機能性ロール素材15の一体化を図る。この際に、装着軸2の空洞部13aと細孔13bとを利用して、万遍なく、熱湯を浸漬し、熱処理と溶着の効率化と実効性を確保する。尚、このボイル工程後に、複数個のモジュール化した機能性ロール素材15が重畳された装着軸2に設けたホース(符号を付さず)を、ポンプ(符号を付さず)に接続し、水分を吸引するバキューム工程を行うことが望ましい。
【0029】
その後、この熱湯槽22を利用して、乾燥する。具体的には、この熱湯槽22の熱湯を排湯(廃湯)し、この熱湯槽22を乾燥槽として利用する。即ち、この熱湯槽22に、ホースを介して、バキューム用のポンプを接続し、前記処理済のモジュール化した機能性ロール素材15の乾燥、及び/又は、冷却を図る。また、この乾燥と冷却に、前記装着軸2の空洞部2aと細孔2bとを利用する(図10−1と図10−2参照)。尚、この乾燥と冷却は、一例として、略80°の熱風を、略10時間程度送り、その後、冷却する。また、乾燥槽が別の例もあり得る。
【0030】
前記乾燥と冷却が終了した、図11−1の如く、モジュール化した機能性ロール素材15は、装着軸2とともに、吊下げ冶具20を利用して、再び、プレス機12に吊下する。そして、図11−2の如く、最初のモジュール化した機能性ロール素材15を逆さにして、緊締具18の複数のナットを螺戻し、そのボルトより他方の締付け冶具17を取外し、モジュール化した機能性ロール素材15を取外す(解体し)。この解体で、図12−1〜図12−3に示した、モジュール機能性ロールXが形成される。そして、図示しないが、解体したモジュール機能性ロールXの表面の研磨処理、清澄処理等の最終処理を行い終了する。
【0031】
そして、図13に示した機能性ロール3は、前記解体したモジュール機能性ロールXを軸本体300に積層した後、この軸本体300の両側にフランジ302を嵌合することで、両端部に軸受け301が、それぞれ形成される。
【0032】
このモジュール機能性ロール25は、そのまま梱包され、工場、加工所等の顧客先に搬送される。そして、工場等において、図13に示した機能性ロール3を成形するには、解体したモジュール機能性ロールXを、複数個用意する。そして、このモジュール機能性ロールXを、細孔2bと空胴部2aとを備えた軸本体300に順次積層し、組付け一体化した後、この軸本体300の両側にフランジ302を嵌合し、両端部に軸受け301が、それぞれ形成される。以上の作業で機能性ロール3を製造できる(取替えも同じと考えられる)。従って、顧客先において、例えば、不織布シート7、8の解体、組付け、又は取替えすることで、その他、プレス機12、並びに各種装置、例えば、装着具13、一方・他方の締付け冶具16、17と、熱湯槽22、ポンプ等を持込むことなく、組付け一体化の作業でよく、簡単かつ短時間で、かつそれ程の熟練を要することなく、機能性ロール3を製造できる特徴がある。
【0033】
以上の実施例は、この不織布シート7、8を採用し、モジュール機能性ロールXを製造する方法を説明した。しかし、必要により、他の実施例として、不織布シート7のみを採用し、モジュール機能性ロールXを製造する方法も、略、前述の実施例に準ずる。但し、プレス圧、ボイル時間の減少化と、モジュール機能性ロールXの耐久性向上等に役立つこと等が考えられる。尚、この他の実施例は、高コスト化と、精密処理の分野での使用の如く、一部の利用分野と考えられるが、実用性はあり得る。
【0034】
以上は本発明の好ましい一実施例を説明したものであり、同じ目的と、特徴を奏し得る、別の実施例も当然に、本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0035】
1 不織布シート素材
1a 重畳面
1b 重畳面
100 架橋弾性体
2 装着軸
2a 空胴部
2b 細孔
2c 係止溝
3 機能性ロール
300 軸本体
301 軸受け
302 フランジ
5 穴
6 円形周面
7 不織布シート
8 不織布シート
10 円形周面
12 プレス機
12a フレーム
1200 シリンダ
1201 押え鍔
13 装着具
15 モジュール化した機能性ロール素材
16 一方の締付け冶具
17 他方の締付け冶具
18 緊締具
20 吊下げ冶具
21 ワイヤ
22 熱湯槽
A 搬送コンベア
B 不織布素材
C 不織布
D 架橋弾性材貯留槽
E 架橋弾性材
F 後処理
X モジュール機能性ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーラスな不織布シートでなるモジュール機能性ロールの製造方法であって、このモジュール機能性ロールの製造方法は、次の工程により構成される。
(1) この不織布シートは、その重畳面に膜状の架橋弾性体が存在する製法で形成された不織布シート素材より、打抜き形成した環状、又は帯を環状とした不織布シートを形成する製作工程と、
(2) この環状の不織布シートを、プレス機に立設した空胴部と、この空胴部に連設し、かつ表面に開口する孔を多数備えた装着軸に所定枚数を積層するとともに、この所定枚数の不織布シートを、前記装着軸に套嵌した一方の締付け冶具と、他方の締付け冶具、及びこのプレス機で加圧・仮締めを行ない、この加圧・仮締め後において、緊締具を介して、最初のモジュール化した機能性ロール素材を形成する不織布シートの最初の1ブロック製作工程と、
(3) この機能性ロール素材の1ブロック製作後に、前記装着軸に套嵌した前記他方の締付け冶具と、次の他方の締付け冶具との間に、環状の不織布シートを、所定枚数を積層し、このプレス機で加圧・仮締めを行ない、この加圧・仮締め後において、緊締具を介して、次のモジュール化した機能性ロール素材を形成する不織布シートの次の1ブロック製作工程と、
(4) この(3)に続いて、前記装着軸に套嵌した前記他方の締付け冶具と、さらに次の他方の締付け冶具との間に、環状の不織布シートを、所定枚数を積層し、このプレス機で加圧・仮締めを行ない、この加圧・仮締め後において、緊締具を介して、さらに次のモジュール化した機能性ロール素材を形成する不織布シートのさらに次の1ブロック製作工程と、
(5) 以上の複数個のモジュール化した機能性ロール素材を成形する工程と、
(6) この複数個のモジュール化した機能性ロール素材を備えた装着軸を、熱湯槽へ浸漬するボイル工程と、
(7) このボイル工程後に、前記複数個のモジュール化した機能性ロール素材が重畳された装着軸に設けたホースを、ポンプに接続し、水分を吸引するバキューム工程と、
(8) このバキューム工程後に、前記熱湯槽を利用して、複数個のモジュール化した機能性ロール素材が重畳された装着軸を、強制乾燥、又は自然乾燥と、冷却を図る乾燥・冷却工程と、
(9) この乾燥・冷却工程後に、前記複数個のモジュール化した機能性ロール素材を、装着軸より取外し、個別に、仮締めを解体し、モジュール機能性ロールを成形する工程。
【請求項2】
請求項1に記載のモジュール機能性ロールの製造方法において、
前記不織布シートは、ポーラス状の高密度の不織布シートを複数枚積層し、この複数枚の高密度の不織布シート間に、この高密度の不織布シートに比して、低密度となるポーラス状の低密度の不織布シートが、一枚、又は数枚積層する構成としたことを特徴とするモジュール機能性ロールの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のモジュール機能性ロールの製造方法において、
前記(2)〜(4)の三製作工程は、プレス機に載置、又は吊下して行う、モジュール機能性ロールの製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−53663(P2013−53663A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192052(P2011−192052)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(390021603)株式会社増田製作所 (3)
【出願人】(509228411)マスロールシステムズ 株式会社 (3)
【Fターム(参考)】