説明

モルホリン誘導体の化学合成

【課題】治療薬として有用な式(I)のモルホリン誘導体の新規な製造方法の提供。


【解決手段】室温での3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンによる1段階アルキル化を利用し、従来技術の2段階合成より高い収率で式(I)の化合物を製造する、高温環化を回避する簡便で有効な方法。中間体である3−ヒドロキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オン並びに3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンの新規な製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルホリン誘導体、詳細には治療薬として有用である化合物2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願WO95/16679号(1995年6月22日公開)に記載の下記の式(I)の化合物は、強力かつ選択的なサブスタンスP(またはニューロキニン−1)受容体拮抗薬である。
【0003】
【化1】

式中、
およびRは独立に、
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、
(3)C2−6アルケニルおよび
(4)フェニル
からなる群から選択され;
、RおよびRは独立に、
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、
(3)フッ素、
(4)塩素、
(5)臭素、
(6)ヨウ素および
(7)−CF
からなる群から選択され;
11、R12およびR13は独立に、
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、
(3)フッ素、
(4)塩素、
(5)臭素、
(6)ヨウ素および
(7)−CF
からなる群から選択され;
ZはC1−4アルキルである。
【0004】
特に、化合物2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリンは嘔吐、抑鬱および不安の治療において可能性を有することを示している。サブスタンスP拮抗薬は、双極性障害および精神分裂症などの他の神経精神病ならびに帯状疱疹後神経痛および疼痛に関しても研究されている。
【0005】
国際特許出願WO95/16679号には、2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)モルホリンを出発原料とする2段階法による、下記式
【0006】
【化2】

の構造を有する2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン(以下、化合物Aと称する)の製造が記載されている。
【0007】
WO95/16679号における実施例70および75に関して、化合物Aは以下のように製造される。
【0008】
【化3】

この先行技術および特にそれの高温環化段階での必要条件のために、実務上の問題が多くあることから、比較的少量以外で試みる場合には、その方法は不便なものとなる。従って、大量化を容易に行うことができ、従って製造工場への実務的応用が可能となる方法を開発することが必要とされている。
【0009】
従って本発明は、室温での3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンによる1段階アルキル化を利用し、従来技術の2段階合成より高い収率で式(I)の化合物、特には化合物Aを製造する、高温環化を回避する簡便で有効な方法を提供するものである。本発明の新規な方法は、エネルギー効率が良いだけではなく(加熱を必要としないことから)、生産性も高くなって、大規模での時間サイクルを短くし、運転濃度を高くすることができる。所望の生成物が室温で反応混合物から結晶化する1個の反応容器中で本発明の方法を実施できるという点は、先行技術の合成にまさる明瞭な利点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第95/16679号
【発明の概要】
【0011】
そこで本発明の第1の態様では、下記式(I)の化合物
【0012】
【化4】

(式中、
およびRは独立に、
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、
(3)C2−6アルケニルおよび
(4)フェニル
からなる群から選択され;
、RおよびRは独立に、
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、
(3)フッ素、
(4)塩素、
(5)臭素、
(6)ヨウ素および
(7)−CF
からなる群から選択され;
11、R12およびR13は独立に、
(1)水素、
(2)C1−6アルキル、
(3)フッ素、
(4)塩素、
(5)臭素、
(6)ヨウ素および
(7)−CF
からなる群から選択され;
ZはC1−4アルキルである)の製造方法において、
(i)下記式(II)の化合物
【0013】
【化5】

(式中、R、R、R、R、R、R11、R12、R13およびZは前記で定義した通りである)またはそれの塩と、下記式(III)の化合物
【0014】
【化6】

(式中、LGはハロゲン(例:臭素、塩素またはヨウ素)またはアルキルもしくはアリールスルホン酸エステル基(例:メシレートまたはトシレート)から選択される脱離基である)とを、有機溶媒中、塩基の存在下に反応させる段階;ならびに
(ii)得られた式(I)の結晶化合物を回収する段階
を有することを特徴とする方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特に好ましい態様では、化合物2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリンの製造方法において、
(i)2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)モルホリンまたはそれの塩と、前記で定義した通りの下記式(III)の化合物
【0016】
【化7】

とを、有機溶媒中、塩基の存在下に反応させる段階;ならびに
(ii)得られた結晶性の2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリンを回収する段階
を有することを特徴とする方法が提供される。
【0017】
式(I)および(II)の化合物において、好ましくはRおよびRは、いずれも独立に水素である。
【0018】
式(I)および(II)の化合物において、好ましくはRおよびRは独立に、フッ素および−CFから選択される。特に、RおよびRはいずれも独立に−CFである。
【0019】
式(I)および(II)の化合物において、好ましくはRは水素である。
【0020】
式(I)および(II)の化合物において、好ましくはR11は水素またはフッ素である。
【0021】
式(I)および(II)の化合物において、好ましくはR12およびR13はいずれも独立に水素である。
【0022】
式(I)および(II)の化合物において、好ましくはZは−CHである。
【0023】
式(III)の化合物において、好ましくは脱離基LGは塩素である。
【0024】
上記の反応で使用される好適な塩基には、有機塩基またはより好ましくは無機塩基などがある。好適な有機塩基には、ジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンなどがある。好適な無機塩基には、水素化ナトリウムまたは炭酸カリウムなどがある。
【0025】
上記の反応で使用される好適な有機溶媒には、ジメチルホルムアミド(特に無機塩基を用いる場合)およびアセトニトリル(特に有機塩基を用いる場合)などがある。
【0026】
最も好ましくは上記反応は、炭酸カリウムの存在下に、ジメチルホルムアミド中で行う。
【0027】
簡便には上記反応は室温で行う。
【0028】
簡便には式(II)の化合物、特には上記反応の段階(i)で使用される2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)モルホリンは、それの遊離塩基の形である。好ましくは式(II)の化合物、特には上記反応の段階(i)で使用される2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)モルホリンは、それの(R)−カンファースルホン酸塩の形である。さらに好ましくは式(II)の化合物、特には上記反応の段階(i)で使用される2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)モルホリンは、それのp−トルエンスルホン酸塩の形である。
【0029】
本発明のさらに別の態様によれば、3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンの製造方法であって、
(i)ショッテン−バウマン条件下にセミカルバジド塩酸塩をベンジルオキシアセチルクロライドで処理して、ベンジルオキシアセチルセミカルバジドを得る段階;
(ii)塩基性条件下に段階(i)の生成物を環化させて、3−ベンジルオキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンを得る段階;
(iii)段階(ii)の生成物を水素化することで、3−ヒドロキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンを得る段階;ならびに
(iv)段階(iii)の生成物を塩素化剤で処理して、3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンを得る段階
を有してなる方法が提供される。
【0030】
本発明のさらに別の態様によれば、前述の段階(i)〜(iii)を有する、3−ヒドロキシメチル−1,2,4−トリアゾール−5−オンの製造方法が提供される。
【0031】
上記の段階(i)で、ショッテン−バウマン条件は好ましくは、エーテル(例:テトラヒドロフラン)などの好適な溶媒中、例えば−10℃〜+10℃、好ましくは0℃という低温でのアルカリ水溶液の使用が関与する。特に好適なアルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液である。
【0032】
上記の段階(ii)では、環化は好ましくは、高温で、好ましくは還流下に、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物などの塩基存在下に行う。
【0033】
上記の段階(iii)では、水素化は、活性炭などの担体上のパラジウムもしくは白金またはそれらの酸化物のような貴金属触媒の存在下、簡便には室温・常圧で、メタノールのようなアルコールなどの好適な有機溶媒中で、水素を用いる接触水素化(transfer hydrogenation)によって行うことができる。より好ましくは水素化は、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸トリエチルアンモニウム、ギ酸カリウム、ギ酸アンモニウムまたはシクロヘキセンなどの水素供与体存在下に、水素化触媒、特にはパラジウム/活性炭を用いて、メタノールのようなアルコールなどの好適な有機溶媒中で、移動水素化によって行う。ギ酸アンモニウム水溶液が特に好ましい。移動水素化は好ましくは、例えば50℃〜70℃、好ましくは55℃〜60℃の高温で行う。
【0034】
上記の段階(iv)では、塩素化剤は例えば、SOCl、PCl、PClおよびPOClなどの無機酸塩化物である。塩化チオニル(SOCl)が特に好ましい。反応は好ましくは、アセトニトリルなどの有機溶媒中、簡便には室温・常圧で行う。
【0035】
以下の実施例は本発明による方法を説明するものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0036】
2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリンの製造。
【0037】
3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オン(3.18g)のDMF(30mL)溶液を、2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)モルホリン(R)−カンファースルホン酸塩(15g)および炭酸カリウム(7.71g)のDMF(100mL)中スラリーに22℃で1時間かけて加えた。反応混合物を22℃で20分間熟成させ、水(400mL)を30分間かけて加えた。結晶性混合物を氷浴で冷却し、30分間熟成させ、生成物を濾取した。固体標題化合物を水(400mL)で洗浄し、風乾し、45〜50℃で真空乾燥した。収量=11.4g:98.1%HPLCw/wアッセイ:93.2%アッセイ収率:(97.1A%HPLCプロファイル)。
【実施例2】
【0038】
段階(i)および(ii):3−ベンジルオキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンの製造
セミカルバジド塩酸塩(15.1g)の水(10mL)/THF(50mL)溶液を窒素雰囲気下で冷却しながら(0℃)高撹拌し、それに水酸化ナトリウムペレット(10.83g)を加えた。ベンジルオキシアセチルクロライド(25g)のTHF(100mL)溶液を5分間かけて加え、混合物を0℃で2時間熟成させた(HPLCで反応完了)。
【0039】
THFを減圧下に除去し、2M水酸化ナトリウム(60mL)を加え、溶液を還流温度まで加熱して5時間経過させた。反応混合物を冷却して室温とし、18時間静置した。溶液を6M塩酸で中和し、スラリーを氷浴で1時間冷却した。生成物を濾取し、冷水(10mL)で洗浄し、真空乾燥した。3−ベンジルオキシ−メチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オン(16.7g)を白色結晶固体として収率60%で得た。
【0040】
融点:190〜192℃;
DMSO中でのH NMR:δ=4.20(2H、s、PhC)、4.42(2H、s、OC=N)、7.25(5H、s、Ph)、11.34(1H、s、N)および11.50(1H、s、N)ppm;
DMSO中での13C NMR:δ=64.1(O=N)、72.4(PhO)、128.5(Ph)、128.6(Ph)、129.1(Ph)、138.5(Ph)、145.4(=N)および157.1(NHONH)ppm;
質量分析M+H=206、M+NH=223。
【0041】
段階(iii):3−ヒドロキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンの製造
3−ベンジルオキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オン(31g)および10%パラジウム/活性炭(3.1g)を、窒素雰囲気下にメタノール(200mL)中でスラリーとした。ギ酸アンモニウム(47.7g)の水溶液(水20mL)を加え、混合物を高撹拌し、加熱して55〜60℃とした。10%パラジウム/活性炭(3.1g)を2時間後に加え、3時間目に、触媒(1.55g)およびギ酸アンモニウム(9.5g)の水溶液(水4mL)を加えた。4時間後、反応混合物を冷却して室温とし、終夜放置した。メタノール溶液を減圧下に溶媒留去して少量とし、50〜55℃でメタノール(3リットル)を連続添加することで洗浄して、過剰のギ酸アンモニウムを除去した。熱混合物をソルカフロック(solka floc)(15g)で濾過し、濾液を濃縮して少量とし、溶媒をアセトニトリルに切り換えた(400mLで2回)。スラリーを濃縮して約100mLとし、生成物を濾取し、真空乾燥した。3−ヒドロキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オン(17.1g)を収率98.3%で得た。
【0042】
融点:187〜189℃(文献値=187℃);
DMSO中でのH NMR:δ=4.34(2H、s、HOC)および11.42(2H、bs、N)ppm;
DMSO中での13C NMR:δ=56.3(HO)、148.5(CH=N)および157.1(NHONH)ppm;
質量分析M+H=116、M+NH=133。
【実施例3】
【0043】
3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンの製造。
【0044】
3−ヒドロキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オン’(17g)のアセトニトリル(170mL)中スラリーに窒素雰囲気下で20℃にて、塩化チオニル(19.9g)を5分間かけて加えた。反応混合物を20℃で18時間熟成した(注:30分後、原料が全て消失した。1時間目に、生成物が結晶化し始めた。)。TLC分析(SiO:酢酸エチル/メタノール(9/1);I)で、反応が完結していることが示された。ヘキサン(510mL)を一気に加え、反応液を氷浴で1時間冷却し、生成物を濾取した。固体をヘキサン(100mL)で洗浄し、真空乾燥した。3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オン(17.2g)を収率87.4%で白色固体として得た。
【0045】
融点:197〜199℃;
DMSO中でのH NMR:δ=4.43(2H、s、C)、11.48(1H、s、N)および11.64(1H、s、N)ppm;
DMSO中での13C NMR:δ=37.0(Cl)、144.4(CH=N)および156.8(NHONH)ppm。
【実施例4】
【0046】
2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリンの別途製造。
【0047】
(1)N,N−ジイソプロピルエチルアミン/DMFを用いる別途法
3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オン(2.56g)のDMF(20mL)溶液を、2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)モルホリンp−トルエンスルホン酸塩(12g)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(5.15g)のDMF(40mL)中スラリーに21℃で1時間かけて加えた。反応液を21〜23℃で30分間熟成させ、水(120mL)を20分間かけて加えた。結晶性混合物を氷浴で冷却し、30分間熟成させ、生成物を濾取した。固体標題化合物を水(96mL)で洗浄し、風乾し、50℃で真空乾燥した。収量=9.65g:単離収率99.7%。
【0048】
(2)炭酸カリウム/DMFを用いる別途法
3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オン(1.40g)のDMF(13.5mL)溶液を、2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)モルホリンp−トルエンスルホン酸塩(6.77g)および炭酸カリウム(1.55g)のDMF(27mL)中スラリーに19℃で1時間かけて加えた。反応液を19〜21℃で30分間熟成させ、水(81mL)を20分間かけて加えた。結晶性混合物を氷浴で冷却し、30分間熟成させ、生成物を濾取した。固体標題化合物を水(54mL)で洗浄し、風乾し、50℃で真空乾燥した。収量=5.37g:98.0%HPLCw/wアッセイ;アッセイ収率96.4%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンの製造方法において、
(i)ショッテン−バウマン条件下にセミカルバジド塩酸塩をベンジルオキシアセチルクロライドで処理して、ベンジルオキシアセチルセミカルバジドを得る段階;
(ii)塩基性条件下に段階(i)の生成物を環化させて、3−ベンジルオキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンを得る段階;
(iii)段階(ii)の生成物を水素化することで、3−ヒドロキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンを得る段階;ならびに
(iv)段階(iii)の生成物を塩素化剤で処理して、3−クロロメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンを得る段階
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項2】
3−ヒドロキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンの製造方法において、
(i)ショッテン−バウマン条件下にセミカルバジド塩酸塩をベンジルオキシアセチルクロライドで処理して、ベンジルオキシアセチルセミカルバジドを得る段階;
(ii)塩基性条件下に段階(i)の生成物を環化させて、3−ベンジルオキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンを得る段階;ならびに
(iii)段階(ii)の生成物を水素化することで、3−ヒドロキシメチル−1,2,4−トリアゾリン−5−オンを得る段階
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項3】
段階(i)で、ショッテン−バウマン条件において、エーテル中で低温でのアルカリ水溶液の使用が関与する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ水溶液が水酸化ナトリウム水溶液である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エーテルがテトラヒドロフランである請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ショッテン−バウマン反応を−10℃〜+10℃で行う請求項3ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
段階(ii)で、環化を高温で塩基存在下に行う請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基がアルカリ金属水酸化物である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記反応を還流下に行う請求項7ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
段階(iii)で、水素化を、有機溶媒中、担体上の貴金属触媒の存在下での水素を用いる接触水素化によって行う請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記有機溶媒がアルコールである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコールがメタノールである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記貴金属触媒がパラジウムもしくは白金またはそれらの酸化物である請求項11ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記担体が活性炭である請求項11ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記反応を室温・常圧で行う請求項11ないし15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
段階(iii)で、水素化を、水素供与体存在下に、水素化触媒を用いて、有機溶媒中での移動水素化によって行う請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記有機溶媒がアルコールである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アルコールがメタノールである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記水素化触媒が、パラジウム/活性炭である請求項17〜19に記載の方法。
【請求項21】
前記水素供与体が、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸トリエチルアンモニウム、ギ酸カリウム、ギ酸アンモニウムおよびシクロヘキセンから選択される請求項17ないし20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記水素供与体が、ギ酸アンモニウム水溶液である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記移動水素化を高温で行う請求項17ないし22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記反応を50℃〜70℃の温度で行う請求項23に記載の方法。
【請求項25】
段階(iv)で、塩素化剤が無機酸塩化物である請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記無機酸塩化物がSOCl、PCl、PClおよびPOClから選択される請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記反応を好ましくは有機溶媒中で行う請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記有機溶媒がアセトニトリルである請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記反応を室温・常圧で行う請求項25ないし28のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2010−195808(P2010−195808A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−92803(P2010−92803)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【分割の表示】特願2000−554725(P2000−554725)の分割
【原出願日】平成11年6月10日(1999.6.10)
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】