説明

モンテルカストナトリウムの多形形態

【課題】モンテルカストナトリウムの新規多形形態の提供。
【解決手段】モンテルカストナトリウムの新規多形形態ならびに使用方法および前記新規形態を含有する医薬組成物、さらに結晶性モンテルカストナトリウムの形成における中間体である、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルソルベート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
モンテルカストナトリウムは、シングレア(SINGULAIR)(登録商標)の活性製薬成分であり、喘息およびアレルギー性鼻炎の治療のために承認されている。モンテルカストの分子構造は、下に示されているとおりである。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
モンテルカストナトリウムは、米国特許第5,565,473号に記載されている。モンテルカストナトリウムの結晶形態(以後「形態A」と呼ばれる)は、米国特許第5,614,632号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,565,473号
【特許文献2】米国特許第5,614,632号
【発明の概要】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、モンテルカストナトリウムの新たな結晶形態、この調製方法、薬剤の製造におけるこの使用、ならびに新規モンテルカストナトリウム:アセトニトリル溶媒和物を提供する。
【0006】
(発明の詳細な説明)
本発明の1つの側面において、モンテルカストナトリウムの新規結晶性多形体(以後「形態B」と呼ばれる)であって、次のX線粉末回折ピーク位置(vs=非常に強い、s=強い、m=中程度、w=弱い)を特徴とする多形体が提供される。形態Aについてのピークは、比較のために示される。
【0007】
【表1】

【0008】
特に2θ=5.4、5.7、9.5、10.4、17.1、18.7、および21.6におけるピークは、形態Bに独特なものである。形態Aおよび形態Bについての代表的なX線粉末回折パターンおよび13C固体状態NMRスペクトルは、それぞれ図1および2に示されている。
【0009】
もう1つの側面において、本発明は、形態Bモンテルカストナトリウムの治療的有効量と医薬適合性のキャリヤとを含む医薬組成物を提供する。
【0010】
第三の側面において、本発明は、結晶性モンテルカストナトリウム形態Bの調製方法であって、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベートをモンテルカストナトリウム:アセトニトリルヘミソルベートへ転化する工程、および前記ヘミソルベートからアセトニトリルを除去して、モンテルカストナトリウム形態Bを調製する工程を含む方法を提供する。
【0011】
第四の側面において、本発明は、ロイコトリエンに媒介された状態の治療用薬剤の製造におけるモンテルカストナトリウム形態Bの使用を提供する。
【0012】
第五の側面において、本発明は、非晶質モンテルカストナトリウムを実質的に含まないモンテルカストナトリウム形態Aの調製方法であって、1)モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベートを収集する工程、および2)モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベートからアセトニトリルを除去して、非晶質モンテルカストナトリウムを実質的に含まない、前記モンテルカストナトリウム形態Aを調製する工程を含む方法を提供する。
【0013】
第六の側面において、本発明は、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベート[1:1アセトニトリル:モンテルカストナトリウムモル比]およびモンテルカストナトリウム:アセトニトリルヘミソルベート[2:1アセトニトリル:モンテルカストナトリウムモル比]から選択されたモンテルカストナトリウムの新規結晶性アセトニトリル溶媒和物であって、このモノソルベートおよびヘミソルベートが、下に示されている13C固体状態NMRおよびX線粉末回折ピーク位置を特徴とする溶媒和物を提供する。このモノソルベートおよびヘミソルベートの代表的なX線粉末回折パターンおよび13C固体状態NMRスペクトルは、それぞれ図1および2に示されている。
【0014】
【表2】

【0015】
【表3】

【0016】
モンテルカストナトリウム形態Bは、形態A材料と同じ有用性を有し、形態A材料と同じ方法で、ロイコトリエンに媒介された疾病および障害の治療および予防のために用いることができる。ロイコトリエン拮抗剤、例えばモンテルカストは、中でも特に、喘息、アレルギー性鼻炎(季節性および通年性を包含する)、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、副鼻腔炎、鼻ポリープ、慢性閉塞性肺疾患、鼻結膜炎を包含する結膜炎、片頭痛、嚢胞性線維症、およびウイルス性(例えば呼吸器合胞体ウイルス)気管支梢炎に派生的な喘鳴の治療において有用である。
【0017】
喘息の治療のために、モンテルカストナトリウム形態Bは、成人の場合1日あたり約10mg、子供の場合1日あたり約2から約5mgの確立された用量にしたがって患者へ投与することができる。しかしながら用量の規模は、治療されることになる状態の性質および重症度、および個々の患者の年齢、体重、および応答によって様々に変えることができ、当分野において通常の技術を有する医師は、患者の個々の特徴および必要性に基づいて、適切な用量および投薬スケジュールを考え出すために、典型的な用量を上方または下方に調節することができるであろう。
【0018】
アレルギー性鼻炎(季節性および通年性を包含する)の治療のために、モンテルカストナトリウム形態Bは、成人の場合1日あたり約10mg、子供の場合1日あたり約2から約5mgの確立された用量にしたがって投与されてよい。しかしながら用量の規模は、治療されることになる状態の性質および重症度、および個々の患者の年齢、体重、および応答によって様々に変えることができ、当分野において通常の技術を有する医師は、患者の個々の特徴および必要性に基づいて、適切な用量および投薬スケジュールを考え出すために、典型的な用量を上方または下方に調節することができるであろう。
【0019】
アトピー性皮膚炎の治療のためには、モンテルカストナトリウム形態Bは、成人の場合1日あたり約10mg、子供の場合1日あたり約2から約5mgの用量で患者へ投与することができる。しかしながら用量の規模は、治療されることになる状態の性質および重症度、および個々の患者の年齢、体重、および応答によって様々に変えることができ、当分野において通常の技術を有する医師は、患者の個々の特徴および必要性に基づいて、適切な用量および投薬スケジュールを考え出すために、典型的な用量を上方または下方に調節することができるであろう。
【0020】
慢性蕁麻疹の治療のためには、モンテルカストナトリウム形態Bは、成人の場合1日あたり約10mg、子供の場合1日あたり約2から約5mgの用量で患者へ投与することができる。しかしながら用量の規模は、治療されることになる状態の性質および重症度、および個々の患者の年齢、体重、および応答によって様々に変えることができ、当分野において通常の技術を有する医師は、患者の個々の特徴および必要性に基づいて、適切な用量および投薬スケジュールを考え出すために、典型的な用量を上方または下方に調節することができるであろう。
【0021】
副鼻腔炎の治療のためには、モンテルカストナトリウム形態Bは、成人の場合1日あたり約10mg、子供の場合1日あたり約2から約5mgの用量で患者へ投与することができる。しかしながら用量の規模は、治療されることになる状態の性質および重症度、および個々の患者の年齢、体重、および応答によって様々に変えることができ、当分野において通常の技術を有する医師は、患者の個々の特徴および必要性に基づいて、適切な用量および投薬スケジュールを考え出すために、典型的な用量を上方または下方に調節することができるであろう。
【0022】
鼻ポリープの治療のためには、モンテルカストナトリウム形態Bは、成人の場合1日あたり約10mg、子供の場合1日あたり約2から約5mgの用量で患者へ投与することができる。しかしながら用量の規模は、治療されることになる状態の性質および重症度、および個々の患者の年齢、体重、および応答によって様々に変えることができ、当分野において通常の技術を有する医師は、患者の個々の特徴および必要性に基づいて、適切な用量および投薬スケジュールを考え出すために、典型的な用量を上方または下方に調節することができるであろう。
【0023】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療のためには、モンテルカストナトリウム形態Bは、成人の場合1日あたり約10mg、子供の場合1日あたり約2から約5mgの用量で患者へ投与することができる。しかしながら用量の規模は、治療されることになる状態の性質および重症度、および個々の患者の年齢、体重、および応答によって様々に変えることができ、当分野において通常の技術を有する医師は、患者の個々の特徴および必要性に基づいて、適切な用量および投薬スケジュールを考え出すために、典型的な用量を上方または下方に調節することができるであろう。
【0024】
結膜炎(鼻結膜炎を包含する)の治療のためには、モンテルカストナトリウム形態Bは、成人の場合1日あたり約10mg、子供の場合1日あたり約2から約5mgの用量で患者へ投与することができる。しかしながら用量の規模は、治療されることになる状態の性質および重症度、および個々の患者の年齢、体重、および応答によって様々に変えることができ、当分野において通常の技術を有する医師は、患者の個々の特徴および必要性に基づいて、適切な用量および投薬スケジュールを考え出すために、典型的な用量を上方または下方に調節することができるであろう。
【0025】
嚢胞性線維症の治療のためには、モンテルカストナトリウム形態Bは、成人の場合1日あたり約10mg、子供の場合1日あたり約2から約5mgの用量で患者へ投与することができる。しかしながら用量の規模は、治療されることになる状態の性質および重症度、および個々の患者の年齢、体重、および応答によって様々に変えることができ、当分野において通常の技術を有する医師は、患者の個々の特徴および必要性に基づいて、適切な用量および投薬スケジュールを考え出すために、典型的な用量を上方または下方に調節することができるであろう。
【0026】
喘鳴のある子供(wheezy kid)の症候群、またはウイルス性(例えば呼吸器合胞体ウイルス)気管支梢炎にともなう呼吸器症状の治療のためには、モンテルカストナトリウム形態Bは、成人の場合1日あたり約10mg、子供の場合1日あたり約2から約5mgの用量で患者へ投与することができる。しかしながら用量の規模は、治療されることになる状態の性質および重症度、および個々の患者の年齢、体重、および応答によって様々に変えることができ、当分野において通常の技術を有する医師は、患者の個々の特徴および必要性に基づいて、適切な用量および投薬スケジュールを考え出すために、典型的な用量を上方または下方に調節することができるであろう。
【0027】
モンテルカストナトリウム形態Bは、ロイコトリエンに媒介された疾患、例えば上記の疾患の治療への使用のための医薬品の調製に用いることができる。あらゆる適切な投与経路が、哺乳動物、特にヒトに、本発明の化合物の効果的な投薬量を供給するために用いることができる。例えば経口、直腸、局所、腸管外、眼、肺、鼻経路などを用いることができる。投薬形態には、タブレット、トローチ、分散液、縣濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアゾール、鼻スプレーなどが含まれる。モンテルカストナトリウムの好ましい投与経路は、例えばタブレット、カプセル、または経口グラニュール配合物を用いた経口投与による。
【0028】
これらの組成物には、経口、直腸、局所、腸管外(皮下、筋肉内、および静脈内を包含する)、眼(眼科的)、肺(鼻または口腔吸入)、または鼻腔内投与に適した組成物が含まれる。ただし、いずれの所定の場合においても最も適切な経路は、治療される状態の性質および重症度、および活性成分の性質によるであろう。これらは、単位投薬形態において提供されるのが便利であり、製薬分野において周知の方法のいずれによって調製されてよい。
【0029】
モンテルカストナトリウム形態Bは、吸入組成物、例えば加圧パックまたはネブライザーからのエアゾールスプレーの体裁(presentation)、または配合することができる粉末の調製のために用いることができ、この粉末組成物は、吹き込み粉末吸入器具を用いて吸入することができる。吸入に好ましい送達系は、計量式吸入器(MDI)エアゾールであり、これは、適切な推進薬、例えばフルオロカーボンまたは炭化水素、または乾燥粉末吸入器具中の活性成分の縣濁液または溶液として配合されてもよい。
【0030】
モンテルカストナトリウム形態Bは、当分野において周知の従来の製薬配合慣行にしたがって、局所組成物、例えば経皮器具、エアゾール、クリーム、軟膏、ローション、粉剤、鼻スプレーなどの調製に用いることができる。
【0031】
実際の使用において、モンテルカスト形態Bは、活性成分として、従来の製薬的混合技術にしたがって製薬キャリヤと、均質混合で組合わせることができる。キャリヤは、例えば経口または腸管外(静脈内を包含する)投与のために望まれる調製形態に応じて、多様な形態を取ってよい。経口投薬形態用の組成物の調製において、通常の製薬媒質のいずれを用いてもよく、経口液体調製物(例えば縣濁液、エリキシルおよび溶液)の場合、例えば水、グリコール、油、アルコール、風味料、防腐剤、着色剤など、またはキャリヤ、例えば経口固体調製物(例えば粉末、カプセルおよびタブレット)の場合、デンプン、糖、微晶質セルロース、希釈剤、グラニュール化剤、潤滑剤、バインダー、崩壊剤などであり、固体経口調製物は、液体調製物よりも好ましい。これらの投与の容易さによって、タブレットおよびカプセルは、最も有利な経口投薬単位形態を表わし、この場合、固体製薬キャリヤが用いられるのは明らかである。所望であれば、タブレットは、標準的水性または非水性技術によって被覆されてもよい。
【0032】
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、個別単位、例えば各々が、活性成分の所定の量を含んでいるカプセル、カシェ剤、またはタブレットとして、粉末またはグラニュールとして、または水性液体中の溶液または縣濁液、非水性液体、水中油エマルジョン、または油中水液体エマルジョンとして提供されてよい。このような組成物は、製薬方法のいずれによって調製されてもよいが、すべての方法は、活性成分を、1つまたはそれ以上の必要な成分を構成するキャリヤと組合わせる工程を含む。一般にこれらの組成物は、活性成分を、液体キャリヤ、または細かく分割された固体キャリヤ、または両方と、均一および均質混合し、ついで必要であれば、この生成物を所望の体裁に造形することによって調製される。例えばタブレットは、場合により1つまたはそれ以上の補助成分とともに圧縮または成形することによって調製することができる。圧縮タブレットは、自由に流れる形態にある、例えば粉末またはグラニュールの活性成分を適切な機械で圧縮し、場合によりバインダー、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤、または分散剤と混合することによって調製することができる。成形タブレットは、湿潤された粉末化合物と不活性液体希釈剤との混合物を、適切な機械で成形することによって製造することができる。望ましくは各タブレットは、約2.5mgから約20mgの活性成分を含有し、各カシェ剤またはカプセルは、約2.5mgから約20mgの活性成分を含んでいる。
【0033】
モンテルカストナトリウム形態Bは、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルヘミソルベートから、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベートを介して得られる。モノソルベートは、溶液状、固体非晶質形態、形態A、またはこれらのあらゆる組合わせのモンテルカストナトリウムとアセトニトリルとを、ほとんどまたはまったくかき混ぜまたは攪拌をともなわずに接触させることによって生産することができる。したがって非晶質モンテルカストナトリウム、または非晶質モンテルカストナトリウムと形態Aモンテルカストナトリウムとの混合物を、かき混ぜまたは攪拌をともなわずに、または限定されたかき混ぜまたは攪拌しかともなわずに液体アセトニトリル中に入れることによって、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベートが提供される。この転換は、生成物形成につながるあらゆる温度において、例えば周囲温度から約80℃で実施されてよい。これの下位部分(subset)は、約55から約75℃である。もう1つの方法では、室温または高温でアセトニトリル蒸気へ、この飽和圧力の30%またはそれ以上において暴露された形態Aは、結晶性モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベートをもたらす。モンテルカストナトリウム形態Bの調製において、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベートは、上記手順を用いてインサイチュで生成されてもよく、単離されることなく直接、ヘミソルベートへ転換されてよい。
【0034】
このヘミソルベートは、生成物形成につながる温度において、例えば周囲温度から約80℃、または約25から約75℃で、液体アセトニトリル中のモノソルベート(単離された、またはインサイチュで生成されたもの)をかき混ぜるか、または攪拌することによって生成される。このヘミソルベートは、濾過によって収集されてよい。例えば乾燥、例えば室温における空気中の乾燥による、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルヘミソルベートからのアセトニトリルの除去は、モンテルカストナトリウム形態Bを生じる。形態Bは、アセトニトリル液体またはアセトニトリル蒸気への、この飽和圧の5%またはそれ以上における暴露により、ヘミソルベートに転換されて戻され得る。
【0035】
本発明はまた、非晶質モンテルカストナトリウムを実質的に含まない、モンテルカストナトリウム形態Aの生産方法であって、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベートの収集工程、およびモノソルベートからのアセトニトリルの除去によって、非晶質材料を実質的に含まないモンテルカストナトリウム形態Aを生成する工程を含む方法も提供する。したがって、アセトニトリル中のモンテルカストナトリウム(非晶質、または非晶質と形態Aとの組合わせ)は、例えば1時間またはそれ以下の時間かき混ぜることによって、短時間攪拌されて固体が分散される。形成されたモノソルベートは収集され、乾燥による、例えば室温における空気中の乾燥によるアセトニトリルの除去により、非晶質モンテルカストナトリウムを実質的に含まないモンテルカストナトリウム形態Aが生成する。モノソルベートの乾燥から得られた形態Aは、29(+/−2)J/gの融解エンタルピーを示す。
【0036】
モンテルカストナトリウム多形体および溶媒和物の特徴決定
モンテルカストナトリウムの多形体の形態Aおよび形態B、ならびにモンテルカストナトリウムアセトニトリルモノソルベートおよびヘミソルベートを、次の方法を用いて特徴決定した。
【0037】
(a)環境走査電子顕微鏡法(ESEM)
サンプルを、フィリップス−エレクトロスキャン(Philips−Electroscan)2010ESEMにおいて試験した。モンテルカストナトリウム粉末を、両面カーボンテープを用いて、標準アルミニウムスタブに付着させた。サンプルを、18mA(チャンバー圧力、2mバール)で10秒間、SPI−モジュールスパッターコーターで、空気中に金被覆した。次の条件を用いて画像化を実施した:ビーム電圧=15kV、フィラメント電流=1.75mA、放出電流=39uA、作動距離=7から14mm、およびチャンバー圧力=3.5から5.0トール。
【0038】
どちらの形態も、針形態を有していた。より高い倍率において、形態Aの針状体は、形態Bのものよりも厚く、より剛性であるように見えた。
【0039】
(b)粉末X線回折(XRD)
粉末XRDパターンは、平行ビーム光学部品(optics)およびアントン−パール(Anton−Paar)TTK段階を備えたブルッカー−ジーメンス(Bruker−Siemens)D5000回折計を用いて収集した。サンプルを、標準的Cr/Cuサンプルホルダーにゆるく詰め込み、ガラススライドで平滑にした。パターンを、次のパラメーターを用いて収集した:管電圧=40KV、管電流=40mA、ロックドカップル走査(locked−couple scan)、2θ範囲=4から40°、ステップサイズ=0.02°、およびステップ時間=10秒。
【0040】
これら4つの形態についての代表的な粉末X線回折パターンが、図1に示されている。4つのパターンすべてが明確である。4つの形態についての選ばれた(select)ピークの位置が、上に示されている。
【0041】
(c)核磁気共鳴
固体状態室温MAS NMRスペクトルが、ナローボア(narrow bore)マグネット、超音速ドティー(Doty)プローブ、および13Cについて50.28MHz、23Naについて52.89MHzで作動するバリアン・ユニティー(Varian Unity)分光計を用いて得られた。サンプルを、Kel−Fキャップを有する4−mmジルコニアまたはSiNローターに詰め込んだ。マジック角を、KBr、およびグリシンで最適化したH周波数で設定した。MASスピン速度を、5Hz以内に積極的に制御した。
【0042】
H−13C CPMASスペクトルが、高結晶性モンテルカストサンプルについて得られた。すべてのスペクトルは、グリシンカルボニルを176.08ppmに設定することによって参照された。処理は、一次相修正を含み、アポディゼーションを含まなかった。パラメーター:再循環遅延=3秒、接触時間=2ms、MAS速度=7200Hz、H90°=3.7μs、CP電力=67kHz、デカップリング=125kHz、掃引幅=25kHz、走査=4096から8192、獲得時間=50ms。
【0043】
図2は、4つの形態についての代表的な13C固体状態NMR CPMASスペクトルを示している。これらのパターンはすべて明確である。しかしながら、溶媒和物スペクトルのみが、優れた配座順序を有する結晶形態について予想される、相対的に狭い線を有する。これらの溶媒和物についての0から1ppmに近いピークは、アセトニトリルである。このヘミソルベートは、ほかの形態のスペクトルから良好に分離した、27および55ppmにおけるピークを示している。すべてのスペクトルは、1化学部位につき多重共鳴を有するピークを示し、これは、多重分子配座(コンフォーマー)を有する複合単位格子を示している。例えばこのモノソルベートは、アルコールカーボンのところで(72から77ppm)3つのピークを示す。この部位は、他の形態について2つの良好に分離したピークを有する。
【0044】
形態AおよびBについての狭いピークの欠如は、これらの形態が、単位格子のすべての部分において有意の配座無秩序を有することを示している。これは、デソルベート結晶形態に共通である。ヘミソルベートスペクトルにおけるピークは、狭い成分および広い成分の両方を有する。このことは、この特定のサンプルが、ヘミソルベートと形態Bとの混合物であるか、またはヘミソルベートの単位格子において限定された無秩序があることを示唆している。NMRサンプル管中でCHCN(および水)蒸気圧/湿度を制御することは難しかった。必要なスピン速度を達成するために、すべての液体CHCNは、粉末から除去されなければならなかったし、これらの管は、蒸気に対して浸透性があった。このため、これらのサンプルは、データ収集の間、未知量のCHCNおよび水を有していたかもしれない。形態A、形態B、およびヘミソルベート結晶形態における限定された局部的配座無秩序の存在は、23Na固体状態NMR MASスペクトルによって確認された。
【0045】
(d)動的蒸気吸着
アセトニトリル蒸気吸着等温を、表面測定装置DVS−1000重量測定ガス吸着天秤を用いて、20および40℃で測定した。約20から30mgのモンテルカストナトリウム形態AまたはBを、微量天秤上に載せ、1分あたり100ccで、窒素中のアセトニトリル蒸気に暴露した。アセトニトリル蒸気圧を、飽和圧の0から95%へ離散的に(discretely)傾斜させ、ついで0%に戻した。各圧力値において、平衡アセトニトリル吸着を記録した。平衡は、サンプル質量が1分あたり0.002から0.003%未満だけ変化する時点として規定した。
【0046】
図3(a)は、気体CHCNの吸着および脱着によるモノソルベートおよび形態Aの相互転化を示している。形態Aから始めると(CHCNをともなわない)、蒸気圧の増加は、着実に増加する吸着を生じ、約50から60%相対圧力においてはっきり区別できる急上昇(jump)をともない、これは溶媒和物の形成を示す。脱着の間、約20%において逆急上昇が発生する。0%への溶媒和物吸着データセグメントの外挿により、1.1CHCN/モンテルカストナトリウムの比を生じる。
【0047】
同様に図3(b)は、気体CHCNの吸着および脱着によるヘミソルベートおよび形態Bの相互転化を示している。形態Bから始めると(CHCNをともなわない)、蒸気圧の増加は、着実に増加する吸着を生じる。吸着の間、離散急上昇はない。しかしながら有意な脱着ヒステリシスがあり、5%相対圧力以下で、有意な離散損失をともない、これは、以前の溶媒和物形成を示す。0%への溶媒和物吸着データセグメントの外挿により、0.45CHCN/モンテルカストナトリウムの比を生じる。
【0048】
形態Aおよび形態Bは、デソルベート結晶形態と考えることができる。
【0049】
(e)熱分析
メトラー・トレド(Mettler−Toledo)DSC30モジュールを用いて、示差走査熱量測定(DSC)を実施した。乾燥サンプルの場合、モンテルカストナトリウムを、フタにピンホールがある40μl標準密封アルミニウム鍋に加えた。すべての場合、約3から8mgのサンプルを用いた。加熱順序は、100℃への5℃/分の加熱[乾燥、およびTg以上の緩和]、30℃への5℃/分の冷却、最後に170℃への5℃/分の加熱からなっていた。融点(開始およびピーク)および融解エンタルピーを、最終加熱走査における溶融吸熱から決定した。ガラス転移温度を、遷移の中点から選んだ。Mettler STARv.6.0ソフトウエアを、データ収集および分析のために用いた。
【0050】
形態Aおよび形態Bサンプルについての溶融トレースは、一貫して形態Bについてよりも形態Aについて、より高い融解エンタルピーを示す。形態Aは通常、形態Bの温度よりも高い溶融開始温度を示す。しかしながら結果は、溶融温度が結晶粒子サイズによって影響されるという事実によって複雑である。全体として結果は、形態Aが形態Bよりも熱力学的により安定であることを示唆している。
【0051】
溶媒和物サンプルを評価するために、モンテルカスト粉末(形態Aまたは形態B)を、7mmステンレス鋼中圧鍋に加えた。過剰なアセトニトリルを加え、この鍋を密封した[ビトンo−リング(viton o−ring)]。この手順は、インサイチュで各々の溶媒和物を形成する。加熱順序は、最初の乾燥工程が省かれること以外、上記と同一であった。エンタルピーをモンテルカスト質量について正規化した(renormalized to)。
【0052】
調製された、溶媒和物形態についての溶融トレースは、このヘミソルベートがすべての意味のある温度において、モノソルベートよりも安定であることを示している。このヘミソルベートは、モノソルベートよりも高い溶融開始温度を示す。融解エンタルピーも同様である。ここでもまた、融解温度が、結晶サイズの強力な関数でありうることに注目することが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、モンテルカストナトリウム形態A、モンテルカストナトリウム形態B、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベート、およびモンテルカストナトリウム:アセトニトリルヘミソルベートについてのX線粉末回折パターンを示している。
【図2】図2は、モンテルカストナトリウム形態A、モンテルカストナトリウム形態B、モンテルカストナトリウム:アセトニトリルモノソルベート、およびモンテルカストナトリウム:アセトニトリルヘミソルベートの13C CPMAS NMRスペクトルを示している。
【図3】図3は、窒素中のCHCN分圧の関数としてのモンテルカスト形態A(図3(a))および形態B(図3(b))のCHCN吸着等温線を示している。20℃(円)および40℃(三角形)における測定値が示されている。吸着されたCHCN質量は、モル比に転換されており、溶媒和物含量への外挿が示されている。
【実施例1】
【0054】
モンテルカストナトリウム形態Bの調製
卵形磁気攪拌棒を有する1,000mL厚肉丸底フラスコに、〜1.5gのモンテルカストナトリウム形態Aおよび〜400mLのCHCNを装入した。このフラスコを、攪拌棒/ホットプレートで70℃に加熱された油浴中に浸漬した。温度を、温度計で監視した。生じた白色縣濁液を、4時間等温的に攪拌した。この混合物を室温に冷ましておき、固体を、中程度のフリット漏斗を用いて、ハウス窒素(house nitrogen)流下、濾過によって収集した。形態Bは、固体を室温において空気中で乾燥して、残留CHCNを除去することによって生成した。
【実施例2】
【0055】
モンテルカストナトリウム−アセトニトリルモノソルベート[1:1アセトニトリル:モンテルカストナトリウムモル比]の調製
方法A
1,000mL厚肉丸底フラスコに、〜1.5gのモンテルカストナトリウム(形態A)および〜400mLのCHCNを装入した。このフラスコを、50℃で1から4時間油浴中に浸漬した。混合物を室温に冷ましておき、モンテルカストモノソルベート固体を、中程度のフリット漏斗を用いて、ハウス窒素流下、濾過によって収集した。
【0056】
方法B
このモノソルベートは、同様に、上に示された蒸気吸着特徴決定セクションに記載されているように、30から60%またはそれ以上の相対CHCN圧力で、形態Aを室温でCHCN蒸気へ暴露することによって生成した。
【実施例3】
【0057】
モンテルカストナトリウム−アセトニトリルヘミソルベート[1:2アセトニトリル:モンテルカストナトリウムモル比]の調製
方法A
1,000mL厚肉丸底フラスコに、〜1.5gのモンテルカストナトリウム(形態A)および〜400mLのCHCNを装入した。このフラスコを、50℃で油浴中に浸漬し、1から4時間かき混ぜた。混合物を室温に冷ましておき、モンテルカストヘミソルベート固体を、中程度のフリット漏斗を用いて、ハウス窒素流下、濾過によって収集した。
【0058】
方法B
このヘミソルベートは同様に、上に示された蒸気吸着特徴決定セクションに記載されているように、30から60%またはそれ以上の相対CHCN圧力で、形態Bを室温でCHCN蒸気へ暴露することによって生成する。
【実施例4】
【0059】
非晶質と形態Aとの混合物からのモンテルカストナトリウム形態Aの調製
非晶質モンテルカストナトリウムと形態Aモンテルカストナトリウムとの混合物を、75℃CHCN中に24時間縣濁した。攪拌は限定され、先ず粉末を縣濁するために用いられ、1時間を超えなかった。ついで粉末を収集し、アセトニトリルを除去した。実験の詳細は、既に記載されているものと同様であった。このサンプルは、鋭化された(sharpened)形態A XRDパターンを示し、増加した結晶性が、融解エンタルピーによって証明された。これは、15.7J/gから28.7J/gへ増加した。焼き戻されたサンプルは、100%に近い結晶含量を有するように見えた。29(+/−2)J/gのエンタルピーが、非晶質またはほかの相を実質的に含まないように見える形態Aサンプルについて得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に下に示されているようなX線粉末回折パターンピーク位置を有するものとして特徴づけられる、形態Bモンテルカストナトリウム。
【表1】

【請求項2】
請求項1に記載のモンテルカストナトリウム形態Bの治療的有効量と、医薬適合性のキャリヤとを含んでいる医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のモンテルカストナトリウム形態Bの治療的有効量を、喘息またはアレルギー性鼻炎の治療を必要としている哺乳動物へ投与することを含む、喘息またはアレルギー性鼻炎の治療方法。
【請求項4】
請求項1に記載のモンテルカストナトリウム形態Bの治療的有効量を、ウイルス性気管支梢炎にともなう呼吸器症状の治療を必要としている哺乳動物へ投与することを含む、ウイルス性気管支梢炎にともなう呼吸器症状の治療方法。
【請求項5】
請求項1に記載のモンテルカストナトリウム形態Bの治療的有効量を、慢性蕁麻疹の治療を必要としている哺乳動物へ投与することを含む、慢性蕁麻疹の治療方法。
【請求項6】
請求項1に記載のモンテルカストナトリウム形態Bの治療的有効量を、結膜炎の治療を必要としている哺乳動物へ投与することを含む、結膜炎の治療方法。
【請求項7】
請求項1に記載のモンテルカストナトリウム形態Bの治療的有効量を、副鼻腔炎の治療を必要としている哺乳動物へ投与することを含む、副鼻腔炎の治療方法。
【請求項8】
モンテルカストナトリウム:アセトニトリルヘミソルベート。
【請求項9】
グリシンのカルボニル共鳴を176.08に設定することによって参照された場合、27(良好な分離(well resolved))、および55(良好な分離)のppmの13C固体状態CPMAS NMR化学シフトを有することを特徴とする、請求項8に記載のモンテルカストナトリウム:アセトニトリルヘミソルベート。
【請求項10】
実質的に下に示されているようなX線粉末回折ピークを有することを特徴とする、請求項8に記載のモンテルカストナトリウム:アセトニトリルヘミソルベート。
【表2】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−132668(P2010−132668A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−907(P2010−907)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【分割の表示】特願2006−509926(P2006−509926)の分割
【原出願日】平成16年4月12日(2004.4.12)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】