説明

ラップフィルム収納箱

【課題】消費者にわたるまでの流通段階では開封することなく、一方で消費者の使用時には開封片の取り外しが容易で、且つラップフィルム収納箱の外観品位を保ち、見苦しい剥離状態にならないラップフィルム収納箱を提供する。
【解決手段】ラップフィルム収納箱1の箱本体には、開封片20を接着する接着部30が長手方向に沿って複数設けられる。開封片20には、切り取り方向Xに対し垂直な縦型のエンボス50が設けられる。エンボス50は、少なくとも切り取り方向Xに対し最も前方にある接着部30の後方側近傍に対応する位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に食品包装用のラップフィルム、アルミホイル、クッキングシート等(以下、ラップフィルムと称す)を巻回したラップフィルム収納箱の開封片に関する。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルムは、通常、紙製の芯体に巻回された巻筒体が、紙製の直方体の箱に収納されており、糊材等でラップフィルム収納箱の前板部分に接着されている開封片を切り取ることで、ラップフィルムの使用に先立ち蓋の開閉が可能になる。ラップフィルムの切断手段としては金属、紙、樹脂製の鋸刃が知られており、上記鋸刃は掩蓋片の先端部に配置されるのが一般的であるが、底板の前板側縁部、前板の上縁部に配置される場合もある。
【0003】
このようなラップフィルム収納箱には、消費者にわたるまでの流通段階では開封することなく、一方で消費者の使用時には開封片の取り外しが容易で、且つラップフィルム収納箱の外観品位を保ち、見苦しい剥離状態にならないという、相反する要求があり、種々の提案がなされている。
【0004】
例えば図16に示すようにラップフィルム収納箱1に設けられている開封片20は、切り取り線21および半円切れ目40を有している。一方、開封片20が接着する前板14の接着部30には、円形あるいは楕円形状の半切れ線31と、その半切れ線31の内側に非ニス塗布部を有している。このような設計により、開封片20を一方の方向(図16においては右側から左側)へ剥がす(切り取る)ことで、前板14の半切れ線31部分で層間剥離(前板14は、多数層で構成されており、そのいずれかの層間での剥離。)を起こし、開封することができる。開封片20の半円切れ目40は、前板14の半切れ線31部分で層間剥離が起こらずに開封片20側で層間剥離が起こった場合にその剥離を遮断する効果がある。
【0005】
特許文献1記載の技術では、前板の半切れ線部分で層間剥離を起こしやすいように接着部の形状を偏平化した楕円形状としたものがある。また、特許文献2の技術では、古紙層に接着剤を浸透させる工程を設けるものがある。さらには、特許文献3の技術では、開封片右端に突条を設ける包装用容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3142969号公報
【特許文献2】特許第3955387号公報
【特許文献3】特開平10−230933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1記載の技術では、接着部の形状を偏平化した楕円形状とすることで、帯状に塗布する接着剤量を有効利用するのに効果的であり、局部層剥離を起こしやすくしている。これにより開封片を前板側の接着部から取り外しやすくなる。しかし、この場合でも、接着部の接着力により、開封中に開封片が局所的に折れ、その折れた部分で開封片自体の強度が低下したり、開封片が、接着剤との接着側の表層から裂け始めたりすることがあり、その結果、開封片が途中でちぎれることがある。特に、開封片の切り取りの後半では、開封片のつまみ部分と、切り取り中の部分が離れるため、切り取り操作が安定しなかったり、また開封片の切り取り角度が大きくなり、開封片が折れやすくなったりする。これにより、開封片自体の強度が低下したり、さらには開封速度が増すため、より大きな応力がかかり、開封片にちぎれが生じやすい。
【0008】
また、特許文献2の技術では、古紙層に接着剤を浸透させることで、剥離の制御を行っているが、上記と同様に、開封片のちぎれの根本的な解決には至っていない。
【0009】
一方、特許文献3の技術では、開封片に設けた突条は、目の不自由な者への正しい開封方向の誘導であり、開封片のちぎれや外観不良といった問題に対する効果の言及はされていない。
【0010】
本発明は、開封時の開封片のちぎれを防止して、ラップフィルム収納箱の外観品位を保ち、見苦しい切り取り状態にならないラップフィルム収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、開封片にエンボス加工を配することで上記の種々の課題が解決されることを見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は下記(1)〜(7)を提供する。
(1)箱本体の長手方向に沿って開封片を切り取ることによって箱本体を開封可能なラップフィルム収納箱であって、前記箱本体には、前記開封片を接着する接着部が長手方向に沿って複数設けられ、前記開封片には、切り取り方向に対し垂直な縦型のエンボスが設けられ、前記エンボスは、少なくとも前記切り取り方向に対し最も前方にある前記接着部の後方側近傍に対応する位置に設けられている、ラップフィルム収納箱。なお、本明細書において、切り取り方向に対し前方とは、切り取り終了側であり、後方とは、切り取り開始側である。
(2)前記エンボスは、前記各接着部の後方側近傍に対応する位置に設けられている、(1)に記載のラップフィルム収納箱。
(3)箱本体の長手方向に沿って開封片を切り取ることによって箱本体を開封可能なラップフィルム収納箱であって、前記箱本体には、前記開封片を接着する接着部が長手方向に沿って複数設けられ、前記開封片には、切り取り方向に沿った横型のエンボスが設けられ、前記エンボスは、少なくとも前記接着部の前記切り取り方向の後方端を跨ぐような位置に設けられている、ラップフィルム収納箱。
(4)前記エンボスは、少なくとも前記接着部の前記切り取り方向の後方側近傍から前方側近傍に亘る位置に設けられている、(3)に記載のラップフィルム収納箱。
(5)前記エンボスは、前記切り取り方向に対し最も後方の前記接着部より後方側から最も前方の前記接着部より前方側に亘る位置に設けられている、(4)に記載のラップフィルム収納箱。
(6)前記エンボスは、複数本の線状の凹みからなる、(1)〜(5)のいずれかに記載のラップフィルム収納箱。
(7)前記エンボスは、前記開封片の前面側が凹み、裏面側が突出するように形成されている、(1)〜(6)のいずれかに記載のラップフィルム収納箱。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、開封時の開封片のちぎれを防止できるので、開封不良で見苦しい状態にならず、開封後の外観品位は非常に良好なものである。また開封片のちぎれを防止することで、再度開封を試みる場合の、ラップフィルム収納箱に固定した切断具近傍での操作を抑制できるため、安全性も高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ラップフィルム収納箱を示す概略斜視図である。
【図2】ラップフィルム収納箱の展開図を示す概略平面図である。
【図3】縦型のエンボスを有するラップフィルム収納箱の正面図である。
【図4】開封片のエンボスの拡大断面図である。
【図5】ラップフィルム収納箱の開封時の状態を示す概略斜視図である。
【図6】開封時の開封片の状態を示す説明図である。
【図7】従来の開封時の開封片の状態を示す説明図である。
【図8】各接着部に対しエンボスがある場合のラップフィルム収納箱の正面図である。
【図9】接着部の両側にエンボスがある場合のラップフィルム収納箱の正面図である。
【図10】接着部の内側にエンボスがある場合のラップフィルム収納箱の正面図である。
【図11】横型のエンボスを有するラップフィルム収納箱の正面図である。
【図12】開封時の開封片の状態を示す説明図である。
【図13】接着部を横断するエンボスがある場合のラップフィルム収納箱の正面図である。
【図14】開封片の全幅に亘りエンボスを有するラップフィルム収納箱の正面図である。
【図15】実施例と比較例の評価を示す表である。
【図16】従来のラップフィルム収納箱を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明について、以下具体的に説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0015】
図1はラップフィルム収納箱を示す概略斜視図であり、図2は図1のラップフィルム収納箱を展開した表面を示す展開図である。
【0016】
図1及び図2に示すようにラップフィルム収納箱1は、全体が直方体形状を有し、例えば掩蓋片10、蓋板11、脇掩蓋片12等からなる蓋部13と、前板14、底板15、後板16、脇板17、折り返し板18等からなるフィルム収容部19を有している。折り返し板18は、前板14の上縁に接続され収納箱1の内側に折り返す部分である。フィルム収容部19には、例えば円筒状の芯体に巻かれたラップフィルムを収容できる。
【0017】
なお、ラップフィルム収納箱1を構成する原紙としては、例えば、ボール紙、コートボール紙、段ボール等が挙げられるが、これらに限定されず、当業界で公知の紙類を適宜選択して用いることができる。原紙は、これらの素材に、エンボス加工、印刷加工、ポリエチレン等を用いたラミネート加工が施されたものであっても構わない。
【0018】
ラップフィルム収納箱1の前面には、使用前に蓋部13を封鎖し使用時に開封するための開封片20が設けられている。開封片20は、収納箱1の長手方向に沿った帯状に形成され、掩蓋片10の先端に切り取り線21を介して接続されている。掩蓋片10の先端部の裏面側には、収納箱1の長手方向に沿って金属製鋸刃22がカシメ爪でカシメ固定されている。使用時にフィルム収納部19から所望量引き出されたラップフィルムは、この金属製鋸刃22により切断される。なお、このラップフィルムの切断具の材質は金属、プラスチック、バルカナイズドファイバー等、切断具の形状は直線状、V状、アーチ状等従来公知のものであれば特に制限はない。また、切断具が配備されている部位は、掩蓋片10の先端縁部、その他前板14の上縁部、底板15と前板14の間の稜線部いずれでも構わない。
【0019】
図2及び図3に示すように前板14の下部には、開封片20を接着する複数の接着部30が長手方向に沿って並べて設けられている。接着部30は、その外縁に円形あるいは楕円形状の半切れ線31が形成されている。接着部30の半切れ線31の内側が、開封片20の裏面に塗布された接着剤により開封片20に接着される。開封片20に対応する前板14の接着部30以外の部分には、ニスが塗布されており、開封片20の接着剤には接着しない。
【0020】
図3に示すように開封片20には、エンボス加工により、切り取り方向Xに対し垂直な縦型のエンボス50が設けられている。エンボス50は、切り取り方向Xの最も前方の接着部30(以下、「最前接着部30A」とする。)の後方側近傍に対応する位置に設けられている。エンボス50と接着部30の後方端30bとの距離は、2cm以内が好ましい。エンボス50は、複数、例えば2本の直線状の凹部からなり、例えば図4に示すように表面側が凹み、裏面側が突出している。エンボス50は、裏面側に他の部分よりも0.05mm以上突出することが好ましい。より好ましくは、0.10mm以上であり、原紙が破れない程度に深くすることで、よりエンボス50による効果が得られやすい。
【0021】
エンボス50の形状等は特に限定されるものではないが、長方形か楕円形状でもよい。長方形の場合、その四隅は丸くなっていてもよい。
【0022】
開封片20には、前板14の接着部30に対応する位置に、半円切れ目40が形成されていてもよく、かかる場合、仮に開封片20の接着部分に層関剥離が起きた場合にその半円切れ目40で剥離が止められる。なお、この半円切れ目40はなくてもよい。
【0023】
以上のラップフィルム収納箱1を開封する際には、図5に示すように開封片20が一端から切り取り方向Xに沿って切り取られる。この際開封片20のつまみ側が切り取り方向Xに折り返されて引っ張られる。このとき前板14の接着部30では、半切れ線31によりその内側に層間剥離が生じ、接着部30の表面層30C側が開封片20と共に前板14側から離れて、開封片20が切り取られていく。開封片20の切り取り部分が、接着部30に差し掛かるときに、その接着力により開封片20に応力(抵抗)がかかる。特に最前接着部30Aに差し掛かるときには、開封片20の切り取り部分がつまみ部分と離れており、切り取り操作が安定しなかったり、また開封片の切り取り角度が大きくなるため、開封片が折れやすく、開封片自体の強度が低下したり、さらには切り取り速度が増すため、より大きな応力がかかったりする。
【0024】
本実施の形態によれば、少なくとも最前接着部30Aの後方側近傍にエンボス50が形成されているので、開封片20の切り取り時に、接着部30の直前で開封片20に応力が働いても、エンボス50部分で応力が分散され、開封片が折れても開封片に亀裂が生じたり、裂けたりするような状態にはならず、開封片20のちぎれが防止される。
【0025】
特に図6に示すように、エンボス50を複数本形成すると、開封片20の切り取り時に比較的緩やかな曲がりが生じて、開封片20全体の折り返し角度が確保され、各エンボス50部分での応力は小さくできるため、開封片20の亀裂の発生等をより効果的に防止できる。この結果、例えば図7に示すように開封片20が局所的に鋭角に折れて亀裂が生じたり裂けたりするようなことがなく、開封片20のちぎれが防止される。よって、開封後もラップフィルム収納箱1の外観品位が維持され、また使い勝手も良い。
【0026】
また、エンボス50は、開封片20の前面側が凹み、裏面側が突出するように形成されている。この場合エンボス50の強度と曲がりが十分に確保され、後述の実施例でも示されるように開封片20のちぎれがより効果的に防止される。
【0027】
前記実施の形態において、エンボス50が最前接着部30Aの後方側の近傍にのみ設けられていたが、図8に示すようにすべての接着部30の後方側の近傍に対してそれぞれ設けられていてもよい。この場合、各接着部30において開封片20が裂けてちぎれることが防止される。
【0028】
なお、エンボス50は、全部の接着部30に対して設けられていなくてもよく、少なくとも最前接着部30Aの後方側近傍を含む複数の接着部30に対して設けられていてもよい。また、開封片20が両側から切り取り可能に構成されている場合、図9に示すように開封片20に沿った両方向が切り取り方向Xとなるため、切り取り方向Xに対し接着部30の後方側近傍、つまり接着部30の両側の近傍に対してエンボス50が設けられていてもよい。また、図10に示すようにエンボス50は、接着部30の外側だけでなく、接着部30の内に対応する位置にも設けられていてもよい。さらに、エンボス50は、2本に限られず、単数であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0029】
以上の実施の形態では、開封片20に縦型のエンボス50が形成されていたが、開封片20の切り取り方向Xに沿った横型のエンボスが形成されていてもよい。
【0030】
例えば図11に示すようにエンボス60は、接着部30の切り取り方向Xの後方端30bを跨ぐような開封片20の位置に設けられる。エンボス60のある部分は強度が高くなり曲がりが抑制されるため、図12に示すように開封片20の切り取りが、最も抵抗のある接着部30の後方端30bに差し掛かるときに、開封片20の折れが抑制される。このため、接着部30において開封片20が裂けてちぎれることが防止される。
【0031】
前記実施の形態において、横型のエンボス60は、図13に示すように接着部30に対し切り取り方向Xの後方側近傍から前方側近傍に亘る位置に設けられていてもよい。こうすることにより、開封が接着部30に差し掛かり通り過ぎるときに、開封片20の折れが確実に防止され、開封片20のちぎれが防止される。
【0032】
また、前記実施の形態において、図14に示すように横型のエンボス60が、最も切り取り開始側に近い最後接着部30Bの後方側から、最前接着部30Aの前方側に亘って、開封片20の長手方向のほぼ全幅に形成されていてもよい。この場合、開封片20の折れがより確実に防止される。
【0033】
なお、横型のエンボス60の本数も任意に選択できる。また、横型のエンボス60も開封片20の前面側が凹み、裏面側が突出するように形成されていてもよい。
【0034】
以上の実施形態における接着部30の数は、特に限定されないが、前板14の下部のニス塗布部に2〜10個の接着部を設けていることが好ましい。こうすることで、流通段階での封止性を十分に確保できる。また、接着部30を複数個所設けることで、各接着部30の接着強度を必要以上に上げる必要がないため、開封片20で開封する際の抵抗を極力抑えることができる。さらには、接着部30の痕も制限しているため、外観品位の低下にはつながりにくい。接着部30の形態としても、面積を制限する方法、あるいは前板14の接着部30の周囲に半切れ加工を施す方法、前板14の接着部30の周囲に切れ線を施し刳り貫く方法等のいずれの方法であっても構わない。また、接着部30の形状も、特に限定されないが、円形、楕円形、三角形、四角形、偏平化した楕円形、ラップフィルムの収納箱1の幅方向で非対称に偏平化した楕円形、開封片20の剥がし開始側が広い状態に倒した三角形や涙形あるいは開封片20の剥がし開始側を狭い状態に倒した三角形や涙形等でもよい。
【0035】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
まず、実施例及び比較例で用いた評価方法について説明する。
[評価方法]
各実施例と比較例のサンプルの開封片の切り取り(剥離)を行った。条件としては、開封片のつまみ位置から切り取り点と、前板とのなす角は90°および180°の2種類とし、切り取り速度は20cm/秒程度のゆっくりとした速度で各々50回実施した。この開封後のサンプルを観察し、下記のような評価を行い、その結果を図15の表に示した。
(1)各接着部状況比率
A:きれいに剥離
B:一部残る
C:ほとんど残る/剥がれない
(2)総合評価
◎:非常に良好
○:良好(2割以下の不具合発生)
△:不良(2割以上、5割以下の不具合発生)
×:非常に不良(5割以上の不具合発生)
【0038】
[実施例1]
原紙はコートボール紙(王子板紙(株)社製サンコート(登録商標))の坪量550g/m2を用い、基本設計を旭化成ホームプロダクツ(株)社製サランラップ(登録商標)の銘柄30cm×50mとした。この開封片の両端5mmの位置から横方向に幅2mmの横型のエンボスを1本配し、エンボスの深さは裏面突出を0.10mmとした。その長手方向各面を折り曲げて開封片を前板上に糊材(ヘンケルジャパン(株)社製インスタントロック(登録商標))で貼り付け、その後側面部も糊材で貼り付けて直方体状のラップフィルム収納箱を組み立てた。
【0039】
[実施例2]
実施例1と同様の設計で相違は、開封片の接着部と一致する位置4箇所に、横方向で、幅2mm、長さ21mm(左右に3mmずつ伸ばす)の横型のエンボスを配した。エンボスの深さは裏面突出を0.10mmとした。
【0040】
[実施例3]
原紙はコートボール紙(王子板紙(株)社製サンコート(登録商標))の坪量550g/m2を用い、基本設計を旭化成ホームプロダクツ(株)社製サランラップ(登録商標)の銘柄30cm×50mとした。また、エンボス加工は縦方向とし、開封片の接着部と一致する箇所の剥がし開始側の端を基準に左右8mmの位置に幅2mm、長さ8mmの縦型のエンボスを配した。エンボス加工の深さは裏面突出を0.10mmとした。その長手方向各面を折り曲げて開封片を前板上に糊材(ヘンケルジャパン(株)社製インスタントロック(登録商標))で貼り付け、その後側面部も糊材で貼り付けて直方体状のラップフィルム収納箱を組み立てた。
【0041】
[実施例4]
実施例1と同様の設計で相違は、エンボスの深さは裏面突出を0.04mmとした。
【0042】
[比較例1]
原紙はコートボール紙(王子板紙(株)社製サンコート(登録商標))の坪量550g/m2を用いた、旭化成ホームプロダクツ(株)社製サランラップ(登録商標)の銘柄30cm×50mを使用した。すなわち、開封片にはエンボス加工はしなかった。その長手方向各面を折り曲げて開封片を前板上に糊材(ヘンケルジャパン(株)社製インスタントロック(登録商標))で貼り付け、その後側面部も糊材で貼り付けて直方体状のラップフィルム収納箱を組み立てた。
【0043】
[比較例2]
原紙はコートボール紙(王子板紙(株)社製サンコート(登録商標))の坪量550g/m2を用いた、旭化成ホームプロダクツ(株)社製サランラップ(登録商標)の銘柄30cm×50mを使用した。また、エンボス加工は縦方向とし、開封片のつまみ側の端から5mmに幅2mm、長さ8mmの縦型のエンボスを5mm間隔で3本配した。エンボス加工の深さは裏面突出0.10mmとした。その長手方向各面を折り曲げて開封片を前板上に糊材(ヘンケルジャパン(株)社製インスタントロック(登録商標))で貼り付け、その後側面部も糊材で貼り付けて直方体状のラップフィルム収納箱を組み立てた。
【0044】
実施例1、2では、開封片へのエンボス加工を横方向に配したことで、開封片が折り曲がりにくく、開封片の折れによる極端な強度低下が見られず、開封片ちぎれは発生しなかった。また、これに伴う、各接着部の外観も良好なものとなった。実施例3では、開封片へのエンボス加工を縦方向に配したことで、開封片が折り曲がっても開封片の裂けが生じず、かつ切り取るときの角度を制御するため、開封条件の影響を受けにくく、開封片ちぎれは発生しなかった。実施例4では、実施例1と同様の効果が見られるものの、エンボスの深さが浅いため、全体として効果は低い傾向にあった。一方、比較例1では、開封条件の影響を大きく受け、開封角度が180°の場合に、開封片ちぎれが発生した。また、比較例2では、開封片のつまみ部にエンボス加工を配しているので、つまみ位置の視認性は上がるものの、局所的なエンボス加工では、全体として開封性の向上には効果が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上詳述したとおり、本発明のラップフィルム収納箱は、流通段階での封止性に優れ、かつ消費者の使用時には良好な開封性を示すラップフィルム収納箱として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 ラップフィルム収納箱
10 掩蓋片
11 蓋板
12 脇掩蓋片
13 蓋部
14 前板
15 底板
16 後板
17 脇板
18 折り返し板
19 フィルム収容部
20 開封片
21 切り取り線
22 鋸刃
30 接着部
31 半切れ線
40 半円切れ目
50、60 エンボス
X 切り取り方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱本体の長手方向に沿って開封片を切り取ることによって箱本体を開封可能なラップフィルム収納箱であって、
前記箱本体には、前記開封片を接着する接着部が長手方向に沿って複数設けられ、
前記開封片には、切り取り方向に対し垂直な縦型のエンボスが設けられ、
前記エンボスは、少なくとも前記切り取り方向に対し最も前方にある前記接着部の後方側近傍に対応する位置に設けられている、ラップフィルム収納箱。
【請求項2】
前記エンボスは、前記各接着部の後方側近傍に対応する位置に設けられている、請求項1に記載のラップフィルム収納箱。
【請求項3】
箱本体の長手方向に沿って開封片を切り取ることによって箱本体を開封可能なラップフィルム収納箱であって、
前記箱本体には、前記開封片を接着する接着部が長手方向に沿って複数設けられ、
前記開封片には、切り取り方向に沿った横型のエンボスが設けられ、
前記エンボスは、少なくとも前記接着部の前記切り取り方向の後方端を跨ぐような位置に設けられている、ラップフィルム収納箱。
【請求項4】
前記エンボスは、少なくとも前記接着部の前記切り取り方向の後方側近傍から前方側近傍に亘る位置に設けられている、請求項3に記載のラップフィルム収納箱。
【請求項5】
前記エンボスは、前記切り取り方向に対し最も後方の前記接着部より後方側から最も前方の前記接着部より前方側に亘る位置に設けられている、請求項4に記載のラップフィルム収納箱。
【請求項6】
前記エンボスは、複数本の線状の凹みからなる、請求項1〜5のいずれかに記載のラップフィルム収納箱。
【請求項7】
前記エンボスは、前記開封片の前面側が凹み、裏面側が突出するように形成されている、請求項1〜6のいずれかに記載のラップフィルム収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−111545(P2012−111545A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264034(P2010−264034)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】