説明

ラテラルフロー用テストストリップ

【課題】コンジュゲートパッドとメンブレンとの界面に標識生体分子集積が生じにくいラテラルフロー用テストストリップの提供。
【解決手段】
ガラス繊維と有機高分子繊維よりなる複合繊維材料に、標的物質と結合する標識された第1生体分子が保持されたコンジュゲートパッドと、
前記コンジュゲートパッドに連結されており、前記の標識された第1の生体分子と前記標的物質とを含む複合体を捕捉するための第2生体分子が固定化された判定部を有するメンブレンと
を含むラテラルフロー用テストストリップであって、
前記複合繊維材料は水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間が20〜70秒であり、
前記コンジュゲートパッドの、水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間と、前記メンブレンの、水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間との差が220秒以下である、
ラテラルフロー用テストストリップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテラルフロー用テストストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
ラテラルフロー法は、検体液中の標的物質(被検物質)を簡易・迅速に検出できるため、臨床分野、食品分野、環境検査分野等において広く用いられている。このラテラルフロー法には、一般に、試料添加用部材であるサンプルパッドと、標的物質と特異的に結合する標識された生体分子(標識生体分子)が存在するコンジュゲートパッドと、標的物質と標識生体分子とを含む複合体を捕捉するための別の生体分子(捕捉分子)が局所的に固定化された多孔質支持体からなるメンブレンと、検体液を一定の方向に流すためにメンブレンから検体液を吸い上げる吸収パッドとがこの順に連結されたテストストリップが用いられる。
【0003】
ラテラルフロー法の一形態としてイムノクロマトグラフィー(イムノクロマト法)が汎用されている。イムノクロマト法の代表的な形態では、2種類の抗体で標的物質を挟み込むサンドイッチ法の原理が用いられる。具体的には、前記標識生体分子としての標識抗体がコンジュゲートパッドに含まれており、ここに標的物質(抗原)を含む検体液が流入すると、標識抗体と抗原との免疫複合体が形成される。この免疫複合体は毛細管現象によりメンブレンを移動し、メンブレンに局所的(例えば、ライン状)に固定化された免疫複合体捕捉用抗体に効率良く接触し、標的物質を介して捕捉される。これにより、メンブレンに局所的に免疫複合体が濃縮され、この複合体に含まれる標識を検出することによって標的物質の有無等を判定する。
【0004】
上記イムノクロマト法は下記(a)〜(c)の特徴を有するとされる。
(a)判定までに要する時間が通常20分以下であり迅速な検査が可能である。
(b)通常のイムノアッセイで行われるB/F分離等の操作を要しないため、検体液を滴下するだけで測定できる。したがって検体数が多くても測定が容易である。
(c)特別な検出装置を必要とせず判定が容易なため、被検者が自身で検査することもできる。
【0005】
臨床検査においては、近年、ポイント オブ ケア テスティング(POCT)と呼ばれる、ベッドサイドや診療現場で行われる迅速且つ高感度な検査の重要性が高まっている。患者検体を採取し、その場で測定を行って迅速に結果を出すことが求められるPOCTの手法として上記の特徴を備えたイムノクロマト法が注目されてきており、実際に妊娠検査薬やインフルエンザ検査薬等として実用化されている。
また、食品検査においても、例えば食物アレルゲンの検査試薬等として広く利用されている。
【0006】
ラテラルフロー法で用いられるテストストリップの一般的な構造を図1に示す。一般にテストストリップは、サンプルパッド(2)とコンジュゲートパッド(3)、コンジュゲートパッド(3)とメンブレン(4)、メンブレン(4)と吸収パッド(5)がそれぞれ部分的に重ね合うように連結された構造となっている。サンプルパッド(2)に検体液を滴下すると、順にコンジュゲートパッド(3)、メンブレン(4)、吸収パッド(5)へと検体液が毛細管現象(毛管力)により移動していく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
使用済のテストストリップでは、コンジュゲートパッドとメンブレンとの境界付近に標識生体分子(この標識生体分子には標的物質との複合体も含まれる。)の集積が認められる。この現象は、特に、標識物質としてシリカ粒子や金コロイド等のナノ粒子を用いた場合に顕著となる。
本発明者らは、標識生体分子あるいは標的物質と標識生体分子とを含む複合体を、コンジュゲートパッド側からメンブレン側へと滞りなくスムーズに移動させることができれば、標的物質と標識生体分子とを含む複合体を、メンブレンに固定化された前記複合体を捕捉するための生体分子へより多く捕捉させることができ、結果としてより高感度な標的物質の検出が可能になると考えた。ここで、メンブレンに固定化された生体分子とは、例えば後述するテストラインやコントロールラインに固定化された生体分子を言う。
また、蛍光色素を含むシリカナノ粒子等の蛍光性ナノ粒子を用いた場合には、これがコンジュゲートパッドとメンブレンとの界面に集積して強い蛍光を発し、これによりバックグラウンドレベルが上昇して検出感度が低下しうるが、標識生体分子あるいは標的物質と標識生体分子とを含む複合体をコンジュゲートパッド側からメンブレン側へとスムーズに移動させることができれば、この問題も解消できると考えた。
【0008】
本発明は、コンジュゲートパッドとメンブレンとの界面付近に標識生体分子の集積が生じにくいラテラルフロー用テストストリップ及びラテラルフロー装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、標識生体分子が溶出しやすく、しかもコンジュゲートパッドからメンブレンへの標識生体分子の移動をスムーズになしうるラテラルフロー用コンジュゲートパッドの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
コンジュゲートパッドに存在する標識生体分子はコンジュゲートパッドから容易に溶出されて検体液と共に移動していく必要があるため、コンジュゲートパッドの材料には一般的に標識生体分子に対する吸着力が弱いガラス繊維が用いられている。一方、メンブレンに固定化される生体分子については、検体液が通過する際に溶出されてしまうとメンブレン上で標的物質と標識生体分子とを含む複合体を捕捉することができなくなるため、メンブレンの材料には生体分子が比較的強固に吸着するニトロセルロースやナイロン等が用いられている。このように、ラテラルフロー用テストストリップのコンジュゲートパッドとメンブレンとは材質特性が大きく異なる。
本発明者らは、この材質特性の相違が、コンジュゲートパッドとメンブレンの界面において液の流れ方を大きく変化させ、結果として、当該界面付近に標識生体分子や、標的物質と標識生体分子とを含む複合体の集積が生じやすくなると考えた。この考えの下に鋭意検討を行った結果、ガラス繊維と高分子繊維とからなる複合繊維材料をコンジュゲートパッドの材料として用いることで、テストストリップを構成するコンジュゲートパッドとメンブレンとの界面付近に標識生体分子の集積が生じにくくなることを見い出した。
また、本発明者らは、上記複合繊維材料にさらに親水処理を施したものを用いてコンジュゲートパッドを作製することで、コンジュゲートパッドに塗布した標識生体分子を、より効率良く溶出させることができることを見い出した。本発明はこれらの知見に基づき完成するに至ったものである。
【0010】
本発明の課題は下記の手段により達成された。
<1>ガラス繊維と有機高分子繊維よりなる複合繊維材料に、標的物質と結合する標識された第1の生体分子が保持されたコンジュゲートパッドと、
前記コンジュゲートパッドに連結されており、前記の標識された第1の生体分子と前記標的物質とを含む複合体を捕捉するための第2の生体分子が固定化された判定部を有するメンブレンと
を含むラテラルフロー用テストストリップであって、
前記複合繊維材料は水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間が20〜70秒であり、
前記コンジュゲートパッドの、水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間と、前記メンブレンの、水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間との差が220秒以下である、
ラテラルフロー用テストストリップ。
<2>ガラス繊維の太さが0.5〜20μmであり、有機高分子繊維の太さが0.05〜2μmであって、複合繊維材料の空隙率が80〜91%である、上記<1>に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
<3>複合繊維材料におけるガラス繊維と有機高分子繊維との存在比率(ガラス繊維/有機高分子繊維)が体積比で1〜200である、上記<1>又は<2>に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
<4>複合繊維材料中のガラス繊維の存在密度が100〜210mg/cmであって、前記複合繊維材料中の有機高分子繊維の存在密度が1〜100mg/cmである、上記<1>〜<3>のいずれかに記載のラテラルフロー用テストストリップ。
<5>有機高分子繊維が、酢酸セルロース繊維、ニトロセルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維及びナイロンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、上記<1>〜<4>のいずれかに記載のラテラルフロー用テストストリップ。
<6>サンプルパッドと、
コンジュゲートパッドと、
メンブレンと、
吸収シートとをこの順に連結した、上記<1>〜<5>のいずれかに記載のラテラルフロー用テストストリップ。
<7>コンジュゲートパットの空間容積に対して5倍量の水をサンプルパッドに添加すると、20分経過後に、メンブレンの前記コンジュゲートパッド側の端から判定部の手前までに存在する標識された第1の生体分子の量が、前記コンジュゲートパッドに保持されていた標識された第1の生体分子の量の1質量%以下となる、上記<6>に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
<8>複合繊維材料が親水処理されたものである、上記<1>〜<7>のいずれかに記載のラテラルフロー用テストストリップ。
<9>親水処理が、BSA、スキムミルク、カゼイン又は合成高分子を用いたブロッキング処理である、上記<8>に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
<10>コンジュゲートパットの空間容積に対して5倍量の水をサンプルパッドに添加すると、20分経過後に、前記コンジュゲートパッドに残存する標識された第1の生体分子の量が、前記コンジュゲートパッドに保持されていた標識された第1の生体分子の量の20質量%以下となる、上記<8>又は<9>に記載のラテラルフロー用テストストリップ、
<11>標識が蛍光物質を含有してなるシリカナノ粒子である、上記<1>〜<10>のいずれかに記載のラテラルフロー用テストストリップ。
<12>上記<1>〜<11>のいずれかに記載のラテラルフロー用テストストリップを含むラテラルフロー装置。
<13>前記ラテラルフロー装置がイムノクロマトグラフィー装置である、上記<12>に記載のラテラルフロー装置。
<14>ガラス繊維と有機高分子繊維よりなる複合繊維材料を親水処理後、標的物質と結合する標識された第1の生体分子を保持させることを含む、ラテラルフロー用コンジュゲートパッドの製造方法。
<15>前記親水処理が、BSA、スキムミルク、カゼイン又は合成高分子を用いたブロッキング処理である、上記<14>に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のラテラルフロー用テストストリップ及びラテラルフロー装置は、標識生体分子並びに標識生体分子と標的物質とを含む複合体をコンジュゲートパッドからメンブレンに向けてスムーズに移動させることができるので、コンジュゲートパッドとメンブレンとの界面付近に標識生体分子の集積が生じにくい。その結果、標識生体分子と標的物質とを含む複合体と、メンブレンに固定化された生体分子との接触頻度が増えて、メンブレンに固定化された生体分子に捕捉される複合体の量が増加しうるため、検体中の標的物質を高感度に検出することができる。この効果は、標識物質がナノ粒子である場合に特に顕著となる。
また、本発明のラテラルフロー用テストストリップは、上記のようにコンジュゲートパッドとメンブレンとの界面付近に標識生体分子の集積が生じにくい結果、標識に由来する信号のバックグラウンドレベルが抑えられる。したがって、検体中の標的物質を高感度に検出することができる。この効果は、標識物質が蛍光色素を含むナノ粒子である場合に特に顕著となる。
さらに本発明の製造方法によれば、上記ラテラルフロー用テストストリップに用いられうるコンジュゲートパッドであって、標識生体分子が溶出しやすい特性を有するコンジュゲートパッドが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ラテラルフロー法で用いられるテストストリップの構造を模式的に示した図である。
【図2】コンジュゲートパッドに用いられる材料の構造の一形態を示す写真である。図2中、aはガラス繊維のみからなる従来の材料を示し、bはガラス繊維と有機高分子繊維からなる、本発明に用いうる複合繊維材料を示す。
【図3】実施例において作製したラテラルフロー用テストストリップを用いて試験を行った際の、メンブレン上に存在する蛍光性シリカナノ粒子の分布を示すグラフである。図3中aは調製例2、bは比較例1、cは比較例2で調製したテストストリップを用いた結果を示す。
【図4】メンブレンのコンジュゲートパッド側の端から判定部の手前までに集積する蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の量を測定するために採用した蛍光シグナルの面積を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、その好ましい実施態様に基づき詳細に説明する。
【0014】
本発明のラテラルフロー用テストストリップは、検体中の標的物質を検出するために用いられる。検体としては、ヒトや動物の血液、血漿、血清、リンパ液、尿、唾液、膵液、胃液、喀痰、鼻や咽等の粘膜から採取したぬぐい液等の体液や便等に代表される臨床検体、液体飲料、半固形食品、固形食品等に代表される食品検体、土壌、河川、海水等の自然界からのサンプリング検体、工場内の生産ラインやクリーンルームのふき取り検体、エアーサンプラーによるサンプリング検体等に代表される環境サンプリング検体等が挙げられる。
検体は液体であればそのまま用いることもできるし、半固形又は固形物等の場合には、希釈や抽出等の処理を施した後に用いることもできる。
【0015】
本発明のラテラルフロー用テストストリップは、標的物質と結合する標識された第1の生体分子が保持されたコンジュゲートパッドと、このコンジュゲートパッドに連結されており、前記の標識された第1の生体分子と前記標的物質とを含む複合体を捕捉するための第2の生体分子(捕捉分子)が固定化された判定部を有するメンブレンとを少なくとも含む。前記コンジュゲートパッドは、ガラス繊維と有機高分子繊維よりなる、特定の毛管力を有する複合繊維材料を基材として用いて作製される。また、前記コンジュゲートパッド及び前記メンブレンは特定の毛管力を有する。
【0016】
前記「標的物質」とは、ラテラルフロー法による検出対象となる分子であり、前記「第1の生体分子」とは、前記標的物質に対する結合能を有する生体分子である。該標的物質と該第1の生体分子の組合せの例は後述する。
【0017】
前記第1の生体分子には標識物質が結合している。標識物質としては、酵素、放射線同位元素、蛍光色素、発光分子、蛍光色素を含むナノ粒子、金コロイド等の金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、着色シリカナノ粒子等が挙げられるが、中でも蛍光色素を含むナノ粒子、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、着色シリカナノ粒子であることが好ましい。上記の蛍光色素を含むナノ粒子の例としては、蛍光色素を含むシリカナノ粒子(蛍光性シリカナノ粒子)等が挙げられる。上記蛍光色素に特に制限はなく、例えば、有機蛍光分子(例えば、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、Alexa(いずれも商品名、Invitrogen社製)、Cy(商品名、Applied Biosystems社製)等)、半導体ナノ粒子(例えば、CdSe、InGaP、ZnSSe等)等が挙げられる。上記標識物質は通常の方法で調製することができ、例えば、蛍光性シリカナノ粒子は、特開2009−221059号公報に記載の方法を参照して作製することもできる。また、上記標識物質として市販品を用いることもできる。
本発明において「ナノ粒子」とはナノスケールの粒子を意味する。ナノスケールの粒子とは、好ましくは粒径10〜500nmの粒子である。この粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)等の画像から無作為に選択した50個の標識粒子の合計の投影面積から複合粒子の占有面積を画像処理装置によって求め、この合計の占有面積を、選択した複合粒子の個数(50個)で割った値に相当する円の直径の平均値(平均円相当直径)として算出することができる。
【0018】
これらの標識物質は第1の生体分子に直接結合していてもよいし、他の物質を介して間接的に結合していてもよい。標識物質と第1の生体分子との結合は、疎水的相互作用等により物理的に吸着させる方法、スクシンイミド基とアミノ基との結合やマレイミド基とチオール基との結合のように、官能基を介して化学的に結合させる方法等の常法により行うことができる。標識物質がナノ粒子である場合には、一つの標識物質の表面に複数の第1の生体分子が結合しうる。
【0019】
本発明に用いるコンジュゲートパッドの製造には、基材としてガラス繊維と有機高分子繊維よりなる所定の複合繊維材料が用いられる。この複合繊維材料は、従来から汎用されてきているガラス繊維のみからなるコンジュゲートパッド用材料(以下、従来型コンジュゲートパッド用材料と呼ぶ。)に比べて毛管力が高い。従来型コンジュゲートパッド用材料では、その一端を水に浸したときに、水面から垂直方向に4cmの高さ(水面から垂直方向4cm高)まで水を吸い上げることはできない。これに対し、本発明に用いられる複合繊維材料は、毛管力によって、水面から垂直方向に少なくとも4cm高まで水を吸い上げることができる。本発明に用いられる複合繊維材料は、水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間が20〜70秒であり、25〜60秒であることが好ましく、30〜50秒であることがより好ましく、33〜45秒であることがさらに好ましい。本発明において、「水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間」とは、平板上の被検試料(複合繊維材料、コンジュゲートパッド、メンブレン)を水平に載置したときに、その上面(又は底面)における短辺(以下、単に短辺ということがある。)が5mm、長辺(以下、単に長辺ということがある。)が60mm以上になるように該被検試料を切断し、この長辺と水面とが垂直になるように一端を水に浸したときに、毛管力によって水面から4cmの高さまで水が上昇してくるのにかかる時間を意味する。上記の「水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間」は、本発明においては、23℃で測定した場合の時間であるが、10〜30℃の温度下であれば、温度による差は事実上無視できる。
【0020】
上記のように水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間が特定の範囲内である複合繊維材料を用いることで、この複合繊維材料に標的物質と結合する標識された第1の生体分子(以下、標識生体分子と呼ぶことがある。)が保持されたコンジュゲートパッドとメンブレンとの間の毛管力のバランスを後述するような特定の範囲内とすることができる。また、これにより、該コンジュゲートパッドからメンブレンへの検体液の流れに滞流等の乱れが生じにくくなり、標識生体分子を含む検体液をスムーズにメンブレンに送り出すことができる。
【0021】
前記複合繊維材料を構成するガラス繊維は、太さが0.5〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましく、8〜13μmであることがさらに好ましい。また、前記複合繊維材料を構成する有機高分子繊維は、太さが0.05〜2μmであることが好ましく、0.2〜1.5μmであることがより好ましく、0.5〜1.0μmであることがさらに好ましい。上記ガラス繊維の太さ及び上記有機高分子繊維の太さは、各繊維断面の最外径の値を意味する。ここでいう最外径とは、断面が円形であれば直径であり、楕円であれば長径であり、多角形であれば各頂点間距離のもっとも長い値を意味する。前記複合繊維材料を構成する各ガラス繊維は太さが均一である必要はなく、上記特定の太さの範囲内であれば、バラツキがあってもよい。前記複合繊維材料を構成する各有機高分子繊維の太さについても同様のバラツキが許容される。
さらに、前記複合繊維材料は、空隙率が80〜91%であることが好ましい。この空隙率は、複合繊維材料中に占める、ガラス繊維と有機高分子繊維の双方が存在しない空間の容積率(体積%)を意味し、平板上の複合繊維材料を水平に載置したときに、その上面(又は底面)において短辺が5mm、長辺が8mmになるように切断した複合繊維材料における値である。
【0022】
また、複合繊維材料におけるガラス繊維と有機高分子繊維との存在比率(ガラス繊維/有機高分子繊維)は体積比で1〜200であることが好ましく、4〜40であることがより好ましく、6〜26であることがさらに好ましい。本発明において、複合繊維材料におけるガラス繊維と有機高分子繊維との存在比率(ガラス繊維/有機高分子繊維)は、平板上の複合繊維材料を水平に載置したときに、その上面(又は底面)において短辺が5mm、長辺が8mmになるように切断した複合繊維材料における存在比率である。
【0023】
ガラス繊維と有機高分子繊維の太さ及び存在比率、並びに空隙率が上記好ましい範囲である複合繊維材料は、上記特定の毛管力を有しうる。
【0024】
さらに、前記複合繊維材料中のガラス繊維の存在密度は100〜210mg/cmであることが好ましく、140〜200mg/cmであることがより好ましく、160〜200mg/cmであることがさらに好ましい。前記複合繊維材料中の有機高分子繊維の存在密度は1〜100mg/cmであることが好ましく、5〜50mg/cmであることがより好ましく、7〜30mg/cmであることがさらに好ましい。本発明において、複合繊維材料における上記各存在密度は、平板上の複合繊維材料を水平に載置したときに、その上面(又は底面)において短辺が5mm、長辺が8mmになるように切断した複合繊維材料中に存在するガラス繊維又は有機高分子繊維の質量(mg)を、上記切断した複合繊維材料の全容積(各繊維体積と空間容積との和、cm)で割った値である。
【0025】
前記複合繊維材料を構成する有機高分子繊維の種類に特に制限はないが、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等であることが好ましい。前記複合繊維材料は2種以上の上記有機高分子を含んでいてもよく、酢酸セルロース、ニトロセルロース及びポリエステルを含むことがより好ましい。ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエチレンナフタレート等を好適に用いることができる。
【0026】
前記複合繊維材料は、ガラス繊維からなる従来型コンジュゲートパッド用材料を、有機高分子繊維の材料となる有機高分子が溶解された有機溶剤に浸し、乾燥することで得られうる。具体的には、例えば、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等から選ばれる1種又は2種以上の有機高分子をトルエン、クロロホルム等の有機溶媒に溶解し、これに従来型コンジュゲートパッド用材料を浸した後、乾燥させることで得られうる。上記有機高分子は上記有機溶媒中に0.04〜4質量%の濃度で溶解されることが好ましく、0.2〜2質量%の濃度で溶解されることがより好ましく、0.25〜1.2質量%の濃度で溶解されることがさらに好ましい。前記有機高分子繊維を構成する有機高分子は、市販のものを用いてもよいし、通常の方法で合成したものを用いることもできる。また、当該有機高分子はラテックス状のものを用いてもよい。
【0027】
前記複合繊維材料は市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、Fusion5(商品名、Whatman社製)が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられるコンジュゲートパッドは、上記複合繊維材料を用いる以外は、通常の方法により作製することができる。具体的には、複合繊維材料に標識生体分子を塗布した後、これを減圧乾燥、凍結乾燥、熱乾燥等の手段を用いて乾燥させることで作製することができる。複合繊維材料への標識生体分子の塗布方法に特に制限はなく、例えば、標識生体分子が安定に存在できる所定の溶媒に標識生体分子を溶解又は分散させ、この溶液又は分散液をエアスプレーによって複合繊維材料に噴射することで塗布することもできるし、前記の溶液又は分散液に複合繊維材料を浸して、該複合繊維材料に前記の溶液又は分散液を染み込ませることにより塗布することもできる。
ラテラルフロー法においては、コンジュゲートパッドに存在する標識生体分子は、標的物質を含む検体液により容易に溶出され、該検体液と共に移動しながら標的物質と衝突して結合する必要がある。したがって、複合繊維材料に標識生体分子があまり強固に結合しないように、標識生体分子を塗布する前に複合繊維材料を予め親水処理しておくことが好ましい。このような親水処理として、BSA(ウシ血清アルブミン)、スキムミルク、カゼイン又はホスホリルコリン基等を有する合成高分子によるブロッキング処理や、酸素プラズマ処理等が挙げられる。複合繊維材料をブロッキング処理する方法に特に制限はなく、通常のブロッキング方法を採用することができる。例えば、BSA(ウシ血清アルブミン)、スキムミルク又はカゼインを用いる場合には、これらを5〜20質量%濃度に調製した水溶液を調製し、これをシート状の複合繊維材料1cm当たり30〜100μL塗布し、その後、室温下で減圧乾燥させ、又は40〜80℃の温度下で20〜60分間熱乾燥させることで複合繊維材料のブロッキングを行うことができる。上記のBSA、スキムミルク、カゼイン、合成高分子は、市販品を用いることができる。
【0029】
本発明のコンジュゲートパッドには、前記標識生体分子の他にも、標的物質と結合する別の生体分子であって、後述する第2の生体分子に対しても結合能を有する生体分子又は該第2の生体分子に対する結合能を有する物質が導入された生体分子(以下、これらを総称して生体分子(A)と呼ぶことがある。)が保持されていてもよい。この場合において、標識生体分子と、生体分子(A)とは、標的物質との結合において互いに競合しないことが好ましい。互いに競合しない関係とは、標的物質において、標識生体分子との結合部位と、生体分子(A)との結合部位が異なることをいい、標識生体分子と生体分子(A)が、標的物質を介して結合できる状態をいう。例えば、標的物質が抗原であり、標識生体分子と生体分子(A)が共に該抗原に対するモノクローナル抗体である場合には、これらのモノクローナル抗体が結合する抗原上のエピトープが異なることを意味する。また、標識生体分子と他の生体分子のいずれか一方がポリクローナル抗体で他方がモノクローナル抗体であるときには、該ポリクローナル抗体は該モノクローナル抗体とが標的物質の同一のエピトープに対する結合能を有する場合があるが、この場合であっても、該ポリクローナル抗体が該モノクローナル抗体と異なるエピトープに対する結合能も有していれば使用可能である。
【0030】
本発明に用いるコンジュゲートパッドは、上記複合繊維材料と同様に、水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間が20〜70秒であり、25〜60秒であることが好ましく、30〜50秒であることがより好ましく、33〜45秒であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明に用いられるメンブレンの材料はラテラルフロー用テストストリップに使用されている通常のメンブレン材料を用いることができる。このような材料として、ニトロセルロースやナイロンが挙げられる。市販品としては、例えば、HF075、HF090、HF120、HF135、HF180、HF240(いずれも商品名、ミリポア社製)、FF60、FF85、FF125(いずれも商品名、Whatman社製)等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられるメンブレンは、上記のメンブレンの材料に第2の生体分子が固定化されてなる。この第2の生体分子は、前記標識生体分子と前記標的物質とを含む複合体に対する結合能を有する。前記コンジュゲートパッドが、標的物質に結合する生体分子として標識生体分子のみを含む場合には、第2の生体分子は標的物質に対する結合能を有する。この場合には、標識生体分子と第2の生体分子とは、標的物質との結合において互いに競合しないことが好ましい。第2の生体分子が上記のような結合能を有することで、メンブレンの第2の生体分子が固定化された判定部において、標識生体分子と標的物質とからなる複合体を標的物質を介して捕捉することが可能になる。「標識生体分子」−「標的物質」−「第2の生体分子」の組合わせの例として、抗体(B)−抗体(B)の抗原(C)−抗原(C)の抗体(D)、抗原(E)−抗原(E)の抗体(F)−抗体(F)の抗体(G)、核酸(H)−核酸(H)に相補的な配列を有する核酸(I)−核酸(I)に相補的な配列であって核酸(H)の配列とは異なる配列を有する核酸(J)、受容体(K)−受容体(K)のリガンド(L)−リガンド(L)に対する抗体(M)、アプタマー(N)−アプタマー(N)が特異的に結合するタンパク質(O)−タンパク質(O)とアプタマー(N)とは異なる部位で特異的に結合するアプタマー(P)、アプタマー(Q)−アプタマー(Q)と特異的に結合するタンパク質(R)−タンパク質(R)に対する抗体(S)等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
また、前記コンジュゲートパッドが上記の生体分子(A)も含む場合には、第2の生体分子は、当該生体分子(A)に対する結合能を有することが好ましい。第2の生体分子が上記のような結合能を有することで、メンブレンの第2の生体分子が固定化された判定部において、標識生体分子と標的物質と生体分子(A)とからなる複合体を当該生体分子(A)を介して捕捉することが可能になる。「標識生体分子」−「標的物質」−「生体分子(A)」の組合わせの例としては、上述した「標識生体分子」−「標的物質」−「第2の生体分子」の組合わせの例が挙げられる。生体分子(A)と第2の生体分子との結合形態に特に制限はなく、第2の生体分子が生体分子(A)に対して特異的に結合する抗体である形態、生体分子(A)にビオチンが導入されており、第2の生体分子がアビジン又はストレプトアビジンである形態、生体分子(A)にアビジン又はストレプトアビジンが導入されており、第2の生体分子がビオチンである形態、生体分子(A)にオリゴヌクレオチドが導入されており、第2の生体分子が該オリゴヌクレオチオに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドである形態等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
第2の生体分子は、他の分子を介してメンブレンに固定化されていてもよい。
本発明に用いるメンブレンの、水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間は290秒以下であることが好ましく、50〜280秒であることがより好ましく、70〜270秒であることがさらに好ましく、80〜265秒であることが特に好ましい。
【0034】
本発明における標的物質のより具体的な例として、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、α−フェトプロテイン(AFP)、前立腺性酸性ホスファターゼ(PAP)、CA19−9、CA125、CA15−3、前立腺特異抗原(PSA)、遊離PSA等の腫瘍マーカー、HBs抗原、HBe抗原、p24抗原等の感染症マーカー、FDP、Dダイマー、PIC、ATIII、FM等の凝固線溶マーカー、CK−MB、ミオグロビン、トロポニン、CRP、BNP等の心不全マーカー、TSH、hCG等のホルモン類、インスリン、トロポミオシン等の食物アレルゲン等を例示できるが、上記標的物質はこれらに限定されるものではない。
【0035】
本発明に用いられるメンブレンは、通常の方法で作製することができる。例えば、第2の生体分子を含む溶液を、BioJet Quanti(商品名、BioDot社製)等の機器を用いてメンブレン材料にライン上に塗布し、これを乾燥させた後、BSA、スキムミルク、カゼイン等を用いて通常の方法でブロッキング処理を行うことで作製することができる。
【0036】
本発明のラテラルフロー用テストストリップは、上記コンジュゲートパッドと上記メンブレンとが連結された構造を含む。上記コンジュゲートパッドと上記メンブレンとの連結は通常の方法で行うことができ、例えば、両者を1〜5mm程重ね合わせて貼付することで連結することができる。
【0037】
本発明のラテラルフロー用テストストリップでは、これを構成するコンジュゲートパッドの水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間は、メンブレンの水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間よりも短い。すなわち、コジュゲートパッドの方がメンブレンよりも毛管力が大きいが、両者の水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間の差は220秒以下であり、好ましくは5〜200秒、より好ましくは20〜150秒、さらに好ましくは45〜125秒である。この差が220秒より大きくなると、コンジュゲートパッドとメンブレンの界面付近における標識生体分子の集積が増加し、検出感度の低下につながりうる。
【0038】
本発明のラテラルフロー用テストストリップは、サンプルパッドと、コンジュゲートパッドと、メンブレンと、吸収パッドとがこの順に連結された構造であることが好ましい。
この構成のテストストリップにおいて、コンジュゲートパットの空間容積に対して5倍量の水をサンプルパッドに添加すると、10〜30℃で20分経過後に、メンブレンの前記コンジュゲートパッド側の端から判定部の手前までに存在する標識生体分子の量が、前記コンジュゲートパッドに保持されていた標識生体分子の量の1質量%以下となることが好ましく、0.01〜0.5質量%となることがより好ましく、0.01〜0.3質量%となることがさらに好ましい。上記「空間容積」とは、コンジュゲートパッド内の繊維や標識生体分子等の物質が存在しない空隙部分の容積を意味する。
【0039】
また、上述した親水処理を施したコンジュゲートパッドを用いた本発明のラテラルフロー用テストストリップでは、コンジュゲートパットの空間容積に対して5倍量の水をサンプルパッドに添加すると、10〜30℃で20分経過後に、前記コンジュゲートパッドに残存する標識生体分子の量が、前記コンジュゲートパッドに保持されていた標識生体分子の量の20質量%以下となることが好ましく、0.01〜10質量%となることがより好ましく、0.01〜5質量%となることがさらに好ましい。
【0040】
本発明のラテラルフロー装置は、上記テストストリップを含む。通常には、上記テストストリップがハウジング(格納)された形態の装置であるが、テストストリップそのものを本発明のラテラルフロー装置として用いることもできる。ラテラルフロー装置が上記テストストリップをハウジングしたものである場合において、当該ハウジング材料は通常には樹脂製である。ハウジング材料には、通常、格納されたテストストリップのサンプルパッドに試料を添加するための窓(穴)とテストラインやコントロールラインの吸光や蛍光を検出できるようにするための窓(穴)とが少なくとも存在する。テストストリップがハウジングされたラテラルフロー装置においてはテストストリップが格納されているために、検査の際や検査後にテストストリップを直接ハンドリングする必要がない。これにより、血液試料等により人体や検査室等が汚染されるリスクが低減される。ラテラルフロー装置の中でも、特に抗原抗体反応により標的物質を検出するための装置は、一般にイムノクロマトグラフィー装置又はイムノクロマト試薬等とも呼ばれる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
[参考例1] 蛍光性シリカナノ粒子の調製
5−(及び−6)−カルボキシローダミン6G・スクシンイミジルエステル(商品名、HiLyte Biosciences社製)3.0mgを1mLのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。ここに1.3μLのAPSを加え、室温(23℃)で1時間反応を行った。
得られた反応液600μLと、エタノール140mL、TEOS6.5mL、蒸留水20mL及び28質量%アンモニア水15mLを混合し、室温で24時間反応を行った。
反応液を18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿したシリカ粒子に蒸留水を4mL加え、粒子を分散させ、再度18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行った。本洗浄操作をさらに2回繰り返し、シリカナノ粒子分散液に含まれる未反応のTEOSやアンモニア等を除去し、平均粒径260nmのシリカナノ粒子1.60gを得た。収率約92%。
【0043】
[参考例2] 蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の調製
参考例1で作製したローダミン6G含有シリカナノ粒子(平均粒径260nm)の分散液(濃度5mg/ml、分散媒:蒸留水)100μLに、蒸留水775μL、濃度10mg/mLのアルギン酸ナトリウム水溶液(重量平均分子量70000)100μL及び28質量%のアンモニア水溶液を25μL加え、室温(23℃)で1時間緩やかに混合した。得られたコロイドを12,000×gの重力加速度で30分遠心分離し、上清を除去した。ここに蒸留水を875μL加え、粒子を再分散させた。続いて、10mg/mLのアルギン酸ナトリウム水溶液を100μL加え撹拌子でよく撹拌した後、28質量%のアンモニア水溶液を25μL加え、1時間緩やかに混合した。このコロイドを12,000×gの重力加速度で30分遠心分離し、上清を除去後、蒸留水を1mL加え粒子を分散させた。同様にして更に2回遠心分離と蒸留水への分散を繰り返して粒子を洗浄し、蒸留水200μLに分散させ、ローダミン6G含有シリカ粒子/アルギン酸の複合粒子(平均粒径260nm)のコロイドを得た(収量2.5mg/mL×200μL)。
前記ローダミン6G含有シリカ粒子/アルギン酸の複合粒子のコロイドに、0.5Mの2−Morpholinoethanesulfonic acid、monohydrateバッファー(pH6.0)を100μL、蒸留水395μL、50mg/mLのNHS(N−Hydroxysuccinimide)水溶液230μL、及び19.2mg/mLのEDC(1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide)水溶液75μLを順に加えて10分間混合した。
得られたコロイドを12,000×Gの重力加速度で10分遠心分離し、上清を除去した。ここに50mMKH2PO4(pH7.0)を370μLと抗hCG抗体(Anti−hCG clone codes/5008, Medix Biochemica社製)20μL(5.8mg/mL)を加え、室温で10分間緩やかに混合し、抗hCG抗体を前記シリカナノ粒子に共有結合させた。
これに界面活性剤を10μL加え軽く撹拌した。
混合液を12000×gで15分間遠心分離し、上清を取り除いた。ここに保存用バッファー(20mM Tris−HCl(pH 8.2)、0.05% PEG20,000、150mM NaCl、1%BSA、0.1%NaN)を1mL加え、再度遠心分離し、上清を取り除いた。ここに蒸留水500μLと塗布バッファー(20mM Tris−HCl(pH8.2)、0.05%PEG(分子量20,000)、5%スクロース)を500μL加え、粒子を分散させ、蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体コロイドを得た(0.5mg/mL×1mL)。
【0044】
[参考例3] コンジュゲートパッド用パッド(複合繊維材料)の作製
クロロホルム100mLに、酢酸セルロース500mg、ニトロセルロース200mg、ポリエステル(商品名:ユニチカポリエステル樹脂、SA−1206、ユニチカ社製)200mgを加え溶解した。この溶液をガラス基板上に置いた短辺8mm×長辺150mmの大きさのGlass Fiber Conjugate Pad(GFCP、MILLIPORE社製、繊維太さ10μm)に650μL均一に塗布し、室温で45分静置した。さらに50℃の恒温槽に入れ、30分静置し、コンジュゲートパッド用パッドを作製した。
このコンジュゲートパッド用パッドを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、毛管力により垂直方向に水を吸い上げ、水面から4cmまで水を吸い上げるのにかかる時間を室温下(23℃)で測定した結果、36秒であった。
このコンジュゲートパッド用パッドに含まれる酢酸セルロース、ニトロセルロース及びポリエステルからなる有機高分子繊維の太さは0.6μmであり、空隙率は89.7%であった。また、このコンジュゲートパッド用パッドにおけるガラス繊維と有機高分子との存在比率(ガラス繊維/有機高分子繊維)は体積比で15.4であった。さらに、このコンジュゲートパッド用パッド中、ガラス繊維の存在密度は183mg/cmであり、有機高分子繊維の存在密度は11.9mg/cmであった。
【0045】
[調製例1] コンジュゲートパッドの作製
参考例3で作製したコンジュゲートパッド用パッド(8×150mm)に、10%スキムミルク溶液800μLをピペットで塗布し、デシケーター内で室温下、一夜減圧乾燥を行った。続いて、参考例2で作製した蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体コロイド240μLと塗布バッファー(20mM Tris−HCl(pH8.2)、0.05%PEG(分子量20,000)、5%スクロース)560μLの混合液(1mL)をピペットで均一に塗布し、デシケーター内で室温下、一夜減圧乾燥を行った。この乾燥後のコンジュゲートパッドを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、毛管力により垂直方向に水を吸い上げ、水面から4cmまで水を吸い上げるのにかかる時間を室温下(23℃)で測定した結果、36秒であった。
【0046】
[調製例2] ラテラルフロー用テストストリップの作製
抗体固定化メンブレン材料としてHi−Flow Plus120(MILLIPORE社製)を用いた。
まず始めに、本メンブレンを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、垂直方向に水を吸い上げ、水面から4cmまで水を吸い上げるのにかかる時間を室温下(23℃)で測定した結果、124秒であった。
【0047】
次に、本メンブレン(丈25mm)の中央付近(コンジュゲートパッドを設置する側の端から約8mm)に、幅約1mmのテストラインとして、抗hCG抗体(alpha subunit of FSH(LH),clone code/6601、Medix Biochemica社製)を1mg/mL含有する溶液((50mMKHPO、pH7.0)+5%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量でライン状に塗布した。
続いてコンジュゲートパッドを設置する側の端から約12mmの部分に、幅約1mmのコントロールラインとして、抗マウスIgG抗体(Anti Mouse IgG、Dako社製)を1mg/mL含有する溶液((50mMKHPO、pH7.0)シュガー・フリー)を0.75μL/cmの塗布量でライン状に塗布し、メンブレンを50℃で30分乾燥させた。
【0048】
次に、ブロッキング処理として前記メンブレン全体をブロッキングバッファー(組成:100mMホウ酸(pH8.5)、1質量%カゼイン)中に室温で30分浸した。
前記メンブレンをメンブレン洗浄/安定バッファー(組成:10mMKHPO(pH7.5)、1質量%スクロース、0.1%コール酸ナトリウム)に移し室温で30分以上静置した。メンブレンを引き上げ、ペーパータオル上に置いて室温で一夜乾燥させて、抗体固定化メンブレンを作製した。この乾燥後の抗体固定化メンブレンを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、毛管力により垂直方向に水を吸い上げ、水面から4cmまで水を吸い上げるのにかかる時間を室温下(23℃)で測定した結果、126秒であった。
【0049】
サンプルパッド(Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP)、MILLIPORE社製)、上記調製例1で作製したコンジュゲートパッド、前記抗体固定化メンブレン、及び吸収パッド(Cellulose Fiber Sample Pad(CFSP)、MILLIPORE社製)をバッキングシート(商品名AR9020,Adhesives Research社製)上でこの順に組み立て、5mm幅、長さ60mmのストリップ状に切断し、図1(a)及び(b)に示した構成のテストストリップを得た。
なお、各構成部材は、図1(a)及び図1(b)に示すように、各々その両端を隣接する部材と2mm程度重ね合わせて貼付した。
【0050】
[比較例1]
クロロホルム100mLに、酢酸セルロース50mg、ニトロセルロース20mg、ポリエステル(商品名:ユニチカポリエステル樹脂、SA−1206、ユニチカ社製)20mgを加え溶解した。この溶液をガラス基板上に置いた短辺8mm×長辺150mmの大きさのGlass Fiber Conjugate Pad(GFCP、MILLIPORE社製)に650μL均一に塗布し、室温で45分静置した。さらに50℃の恒温槽に入れ、30分静置し、コンジュゲートパッド用パッドを作製した。
本コンジュゲートパッド用パッドを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、垂直方向に水を吸い上げ、水面から4cmまで水を吸い上げる時間を室温下(23℃)で測定した結果、11秒であった。
このコンジュゲートパッド用パッドを用いて、調製例1と同様の方法でコンジュゲートパッドを作製した。この乾燥後のコンジュゲートパッドを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、毛管力により垂直方向に水を吸い上げ、水面から4cmまで水を吸い上げるのにかかる時間を室温下(23℃)で測定した結果、18秒であった。
このコンジュゲートパッド用パッドに含まれる酢酸セルロース、ニトロセルロース及びポリエステルからなる有機高分子繊維の太さは0.4μmであり、空隙率は90.7%であった。また、このコンジュゲートパッド用パッドにおけるガラス繊維と有機高分子との存在比率(ガラス繊維/有機高分子繊維)は体積比で154であった。さらに、このコンジュゲートパッド用パッド中、ガラス繊維の存在密度は183mg/cmであり、有機高分子繊維の存在密度は1.2mg/cmであった。
このコンジュゲートパッドを用いてテストストリップを作製した。本作製において抗体固定化メンブレン材料としてHi−Flow Plus240(MILLIPORE社製)を用いる以外は、調製例2と同様の方法で行った。尚、本メンブレンを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、垂直方向に水を吸い上げ、水面から4cmまで水を吸い上げるのにかかる時間を室温下(23℃)で測定した結果、244秒であった。
【0051】
[比較例2]
クロロホルム100mLに、酢酸セルロース5g、ニトロセルロース2g、ポリエステル(商品名:ユニチカポリエステル樹脂、SA−1206、ユニチカ社製)2gを加え溶解した。この溶液をガラス基板上に置いた8×150mmの大きさのGlass Fiber Conjugate Pad(GFCP、MILLIPORE社製)に650μL均一に塗布し、室温で45分静置した。さらに50℃の恒温槽に入れ、30分静置し、コンジュゲートパッド用パッドを作製した。
このコンジュゲートパッド用パッドを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、垂直方向に水を吸い上げ、水面から4cmまで水を吸い上げる時間を室温下(23℃)で測定した結果、81秒であった。
このコンジュゲートパッド用パッドを用いて、調製例1と同様の方法でコンジュゲートパッドを作製した。この乾燥後のコンジュゲートパッドを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、毛管力により垂直方向に水を吸い上げ、水面から4cmまで水を吸い上げるのにかかる時間を室温下(23℃)で測定した結果、83秒であった。
このコンジュゲートパッド用パッドに含まれる酢酸セルロース、ニトロセルロース及びポリエステルからなる有機高分子繊維の太さは1.1μmであり、空隙率は79.0%であった。また、このコンジュゲートパッド用パッドにおけるガラス繊維と有機高分子との存在比率(ガラス繊維/有機高分子繊維)は体積比で1.54であった。さらに、このコンジュゲートパッド用パッド中、ガラス繊維の存在密度は183mg/cmであり、有機高分子繊維の存在密度は120mg/cmであった。
このコンジュゲートパッドを用いて調製例2と同様の方法でテストストリップを作製した。
【0052】
[従来例]
Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP、MILLIPORE社製)を8×150mmの大きさに切断し、従来と同様のコンジュゲートパッド用パッドを作製した。
このコンジュゲートパッド用パッドを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、毛管力により垂直方向に水を吸い上げたところ、水面から4cmまで水を吸い上げることはできなかった。
このコンジュゲートパッド用パッドを用いて、調製例1と同様の方法でコンジュゲートパッドを作製した。この乾燥後のコンジュゲートパッドを短辺5mm×長辺60mmの短冊状に切り、5mmの辺の一端を下にし、下から4mmの部分が水に浸るように水に浸し、毛管力により垂直方向に水を吸い上げたところ、水面から4cmまで水を吸い上げることはできなかった。
このコンジュゲートパッドを用いて調製例2と同様の方法でテストストリップを作製した。
【0053】
[試験例1] hCG検出感度比較
調製例2で作製したテストストリップと、上記比較例1及び2並びに上記従来例で作製したテストストリップを用いて、hCGの検出限界評価を実施した。下記表1には、これら4種類のテストストリップに使用したコンジュゲートパッド用パッド(複合繊維材料又はガラス繊維)の水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間、コンジュゲートパッドの水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間、抗体固定化メンブレンの水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間、並びに当該4種類のテストストリップに使用したコンジュゲートパッドと抗体固定化メンブレンとの間の水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間の差を示した。これらは(23℃)において測定した値である。
【0054】
【表1】

【0055】
hCGの検出限界評価は、hCGの含有量が異なるサンプルをテストストリップのサンプルパッドに70μL滴下し、室温(23℃)で20分経過後テストラインの蛍光の判定を行った。
結果を下記表2に示す。表中「+」はテストラインの蛍光が確認できたもの、「−」はテストラインの蛍光が確認できなかったものである。表1に示すように、調製例2で作製したテストストリップ(本発明のテストストリップ)では、hCG0.01mIUまでテストラインの蛍光が確認できた。一方、比較例1のテストストリップでは、テストラインの蛍光が確認できたのは0.1mIU、比較例2のテストストリップでは、0.04mIU、従来例のテストストリップでは0.2mIUであった。すなわち、本発明のテストストリップを用いることで、従来のテストストリップを用いた場合に比べて格段に高感度化が可能であることがわかった。
【0056】
【表2】

【0057】
[試験例2] 蛍光性シリカナノ粒子の集積評価
調製例2、比較例1及び比較例2で作製したテストストリップを用い、水をサンプルとして用いて試験例1と同様に試験を行った。試験開始後20分経過したのち、テストストリップからサンプルパッドとコンジュゲートパッドを剥がし、メンブレンを露出させた。続いてテストストリップのメンブレン部分を、レーザダイオードを励起光源として照射しフォトダイオードで蛍光を受光するスキャナを使用して、コンジュゲートパッドが設置されていた側から吸収パッド側に前記スキャナを移動させながら測定を行い、メンブレンの蛍光強度分布を測定した。得られた蛍光強度分布からコンジュゲートパッドとメンブレンの界面部分の蛍光性シリカナノ粒子の集積量を評価した。
得られた蛍光強度分布を図3に示す。
【0058】
図3中、横軸は、メンブレンのコンジュゲートパッド側の端からの距離を示している。12mmに見られる蛍光のピークはコントロールラインである。図3中b、cから分かるように、比較例1と比較例2で作製したテストストリップでは、2mm〜2.5mmに高い蛍光のピークが見られる。このピークの位置は、コンジュゲートパッドとメンブレンの界面付近であり、この部分に蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体が多量に集積していることが分かる。なお、従来例で作製したテストストリップを用いて同様の試験したものも上記と同様に2mm〜2.5mmに高い蛍光のピークが認められた。
一方、調製例2で作製したテストストリップでは、コンジュゲートパッドとメンブレンの界面部分に上記のような蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の集積は認められなかった(図3中a)。
【0059】
次に蛍光強度分布のデータから、各テストストリップのメンブレンのコンジュゲートパッド側の端(0mm、コンジュゲートパッドとメンブレンとの重なり部分におけるコンジュゲートパッドの先端部分)からテストライン部分(8mm)の手前までに集積する蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の集積量を求めた。ここで蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の集積量は、図3の蛍光強度分布の図における、位置0mm〜8mm領域のグラフがなす領域(図4の斜線部(図4は比較例1を例示して示したものである))の面積を粒子量に換算したものである。前記面積を粒子量に換算するに際しては、試験を実施していないメンブレンに、既知の濃度の蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体分散液(濃度20〜500μg/ml)を1μL滴下し、乾燥後、これを前記スキャナで測定して得られる、横軸を位置[mm]、縦軸を蛍光強度[a.u.]としたグラフの蛍光ピークの面積を算出して検量線を作成し、この検量線を基に換算を行った。
また、元々コンジュゲートパッドに保持されていた蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の量をコンジュゲートパッドに滴下した蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体のコロイドの蛍光強度を蛍光分光光度計(製品名:FP−6500、日本分光社製)で測定することで求め、元々コンジュゲートパッドに保持されていた蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の量に対するメンブレンのコンジュゲートパッド側の端(0mm)からテストライン部分(8mm)の手前までに集積する蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の集積量の割合を求めた。
【0060】
その結果、メンブレンのコンジュゲートパッド側の端(0mm)からテストライン部分(8mm)の手前までに集積する蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の集積量は、元々コンジュゲートパッドに保持されていた蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の量の0.4質量%(調製例2で作製したテストストリップ)、8.3質量%(比較例1で作製したテストストリップ)、8.6質量%(比較例2で作製したテストストリップ)であった。また、従来例のテストストリップで同様の試験を実施したところ、メンブレンのコンジュゲートパッド側の端(0mm)からテストライン部分(8mm)の手前までに集積する蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の集積量は、元々コンジュゲートパッドに保持されていた蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の量の21.3%であった。この結果から、調製例2で作製した本発明のテストストリップでは、蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体がスムーズに、コンジュゲートパッドからメンブレンに向けて移動できていることがわかった。
【0061】
また、上記試験開始から20分経過後のコンジュゲートパッドに残存する蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の量を20分経過後のコンジュゲートパッドをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で抽出し、抽出液の蛍光強度を蛍光分光光度計(製品名:FP−6500、日本分光社製)で測定することで算出した。元々コンジュゲートパッドに保持されていた蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の量に対する前記試験開始から20分経過後のコンジュゲートパッドに残存する蛍光性シリカナノ粒子標識抗hCG抗体の量の割合を求めたところ、14.2質量%(調製例2で作製したテストストリップ)、11.5質量%(比較例1で作製したテストストリップ)、26.1質量%(比較例2で作製したテストストリップ)であった。
【0062】
上述した本発明の効果は、コンジュゲートパッドとメンブレンとの間の毛管力に特定の関係を持たせることで得られるものであり、蛍光性シリカナノ粒子以外の標識物質を用いた場合にも同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0063】
1 テストストリップ
2 サンプルパッド
3 コンジュゲートパッド
4 抗体固定化メンブレン
41 判定部(テストライン)
42 コントロールライン
5 吸収パッド
6 バッキングシート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維と有機高分子繊維よりなる複合繊維材料に、標的物質と結合する標識された第1の生体分子が保持されたコンジュゲートパッドと、
前記コンジュゲートパッドに連結されており、前記の標識された第1の生体分子と前記標的物質とを含む複合体を捕捉するための第2の生体分子が固定化された判定部を有するメンブレンと
を含むラテラルフロー用テストストリップであって、
前記複合繊維材料は、水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間が20〜70秒であり、
前記コンジュゲートパッドの、水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間と、前記メンブレンの、水面から垂直方向4cm高までの毛管力による水の吸い上げ時間との差が220秒以下である、
ラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項2】
ガラス繊維の太さが0.5〜20μmであり、有機高分子繊維の太さが0.05〜2μmであって、複合繊維材料の空隙率が80〜91%である、請求項1に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項3】
複合繊維材料におけるガラス繊維と有機高分子繊維との存在比率(ガラス繊維/有機高分子繊維)が体積比で1〜200である、請求項1又は2に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項4】
複合繊維材料中のガラス繊維の存在密度が100〜210mg/cmであって、前記複合繊維材料中の有機高分子繊維の存在密度が1〜100mg/cmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項5】
有機高分子繊維が、酢酸セルロース繊維、ニトロセルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維及びナイロンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項6】
サンプルパッドと、
コンジュゲートパッドと、
メンブレンと、
吸収シートと
をこの順に連結した、請求項1〜5のいずれか1項に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項7】
コンジュゲートパットの空間容積に対して5倍量の水をサンプルパッドに添加すると、20分経過後に、メンブレンの前記コンジュゲートパッド側の端から判定部の手前までに存在する標識された第1の生体分子の量が、前記コンジュゲートパッドに保持されていた標識された第1の生体分子の量の1質量%以下となる、請求項6に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項8】
複合繊維材料が親水処理されたものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項9】
親水処理が、BSA、スキムミルク、カゼイン又は合成高分子を用いたブロッキング処理である、請求項8に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項10】
コンジュゲートパットの空間容積に対して5倍量の水をサンプルパッドに添加すると、20分経過後に、前記コンジュゲートパッドに残存する標識された第1の生体分子の量が、前記コンジュゲートパッドに保持されていた標識された第1の生体分子の量の20質量%以下となる、請求項8又は9に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項11】
標識が蛍光物質を含有してなるシリカナノ粒子である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のラテラルフロー用テストストリップ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のラテラルフロー用テストストリップを含むラテラルフロー装置。
【請求項13】
前記ラテラルフロー装置がイムノクロマトグラフィー装置である、請求項12に記載のラテラルフロー装置。
【請求項14】
ガラス繊維と有機高分子繊維よりなる複合繊維材料を親水処理後、標的物質と結合する標識された第1の生体分子を保持させることを含む、ラテラルフロー用コンジュゲートパッドの製造方法。
【請求項15】
前記親水処理が、BSA、スキムミルク、カゼイン又は合成高分子を用いたブロッキング処理である、請求項14に記載の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−189355(P2012−189355A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51231(P2011−51231)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】