説明

ランチビオティックスの製造方法

本発明は、ランチビオティックスとして知られる一群の抗生物質性の化合物の製造に関する。好ましくは、本発明は、これらランチビオティックスの精製に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランチビオティックスの製造に関する。特に、本発明は、ランチビオティックスとして知られている、一群のランチビオティック化合物の製造に関する。好ましくは、本発明は、これらランチビオティックスの精製に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ランチビオティックスは、特異な橋架けチオエーテルアミノ酸の存在によって特徴付けられる、一群の小さなペプチドである抗生物質、即ちランチオンおよび3-メチルランチオンである。この群の構成員はズブチリン、ナイシン、エピデルミン、ガリデルミン(gallidermin)(これは、エピデルミンのLeu-6変異型である)、pep5、アンコベニン(ancovenin)、Ro 09-0198、シンナマイシン、およびデュラマイシンを包含する。pep5、エピデルミン、及びガリエルデルミン(Gallierdermin)は、全てスタフィロコッカス(Staphylococcus)属の微生物によって、天然に生産されるものである。
ガリデルミン-産生菌株:S.ガリナリウム(S. gallinarium) Tu3928 (DSM4616)の醗酵は、EP-342 486、Kellner等, Eur. J. Biochem., 1988, 177:53-59、Horner等, Appl. Microbiol. Biotech., 30, 219-225およびUngermann等, 1st Proc. Int. Workshop Lantibiotics, Tubingen, 1991, pp. 410-421において詳細に説明されている。簡単に説明すれば、該ガリデルミンの醗酵のために使用される培地は、少なくとも肉エキス、塩化カルシウムおよび塩化ナトリウムを含む。支持(feeding: 供給)溶液は、肉エキスおよびグルコースを含有する。従って、ランチビオティックスの醗酵のために使用される培地は、極めて複雑であり、またそのアミノ酸源として、大量のオリゴまたはポリペプチドを含む。
【0003】
EP-508 371 Aは、クロマトグラフィー手順に基く、ランチビオティックスに関する精製法を記載している。この方法は、時間、材料および経費を要する多数のクロマトグラフィー段階を含んでいる。簡単に説明すれば、EP 508 371は、ランチビオティックスの精製法を提供するものであり、該方法は、醗酵培地を含むランチビオティックスを得る工程と、該培地またはこれから誘導される、培地含有ランチビオティックスを、スチレンジビニル共重合生成物マトリックス上への吸着、カチオン交換クロマトグラフィー(例えば、アンバーライト(Amberlite) XAD-1180TM)、疎水性相互作用クロマトグラフィー、場合によるが好ましいアニオン交換クロマトグラフィー処理、限外濾過および/または透析濾過による脱塩処理および随意の凍結乾燥処理を含む、連続的な諸段階に掛ける工程とを含む。必要ならば、これ以上の精製段階を利用することも、勿論可能である。約50%なる収率が、該記載の精製手順によって達成された。ここに記載されている該フェド-バッチ法は、840mg/Lなる体積基準での収量に導く。
【0004】
US 2004/0072333 A1は、一例としてナイシンを用いた、ランチビオティックスのタンパク分解的精製法を記載している。ナイシンに影響を及ぼさないように、注意深く、微調整されたプロテアーゼ処理を利用して、大雑把に精製された製品からの除去が困難である、混入ペプチドを排除している。
要約すれば、当分野において公知のランチビオティックスの製造方法は、極めて複雑であり、しかも数段階に及ぶ精製を必要とする。従って、当分野においては、単純かつ経費の掛からない、ランチビオティックスの製造手順に対する要求がある。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、簡単で、時間を節減する、ランチビオティックスの製造方法に関するものである。ここに記載する製造方法は、従来技術に記載された方法と比較して、余り複雑でない培地、および無機塩を用いた初期析出段階を含む、簡単な1または2段階の精製手順を使用する、新規な醗酵の概念に基くものである。従って、本発明は、ランチビオティックペプチドの製造方法に係り、該方法は、醗酵並びに精製段階を含み、ここで、該精製段階は、(i) 無機塩を添加することによって、細胞培養上澄から、該ランチビオティックペプチドを析出させる工程を含む。より好ましい態様によれば、該精製手順は、更に次のような精製段階:(ii) 該析出段階i)から得た該ペプチドを、洗浄段階、単一のクロマトグラフィー精製段階、乾燥段階、または結晶化に掛ける段階をも含む。更に一層好ましい態様によれば、該醗酵は、マルトース、塩化カルシウム、および加水分解された酵母エキスを、大量の遊離アミノ酸および簡単なオリゴペプチドと共に含む、培地内で行われ、ここで、好ましくは50%を越える該酵母エキスのタンパク質性成分は、遊離アミノ酸である。より好ましくは、該醗酵培地は、如何なる肉エキスまたはペプトン抽出物をも含まないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の態様を説明する前に、本明細書において、また添付した特許請求の範囲において使用するような、単数形の表現は、別途明確に述べられていない限り、複数形の表現をも含むことに注意すべきである。従って、例えば「単一のランチビオティックス」とは、複数個のこのようなランチビオティックスを包含し、また「単一のバクテリア」とは、1またはそれ以上のバクテリアおよび当業者には公知のその等価なものを包含し、以下同様である。特に規定されていない限り、本明細書において使用するあらゆる技術的および科学的な用語は、本発明の属する分野における熟練者によって、通常理解されているものと同一の意味を持つ。本明細書に記載されているものと類似するまたは等価なあらゆる方法並びに物質は、本発明の実施またはテストにおいて使用できるが、好ましい方法、デバイス、および物質は、ここに記載される。本明細書において述べられるあらゆる刊行物は、本発明に関連して使用可能と思われる、該刊行物中に報告されているような細胞系、遺伝物質、および方法論を説明または開示する目的で、参考文献として本明細書に組入れる。ここに記載の何ものも、本発明が、従来の発明による、このような開示に先んじるものではないとの事実を承認するものと、解釈すべきでは全くない。更に、ここに記載され、かつ公には知られていない全ての工程は、本発明の工程であると考えるべきである。
【0007】
本発明は、ランチビオティックスの製造方法に関する。ランチビオティックスは、ランチオニンを含有する、ペプチド抗生物質である。典型的には、ランチビオティックスは、高い含有率で不飽和アミノ酸(デヒドロアラニン、デヒドロブチリン(dehydrobutyrine))およびチオエーテルアミノ酸(メソ-ランチオニン、(2S,3S,6R)-3-メチルランチオニン)を含む、多環式ポリペプチド抗生物質である。その上、リシノアラニン、3-ヒドロキシアスパラギン酸およびS-(2-アミノビニル)-D-システインが、該ランチビオティックスの幾つかの構成員において見出されている。例として、以下のランチビオティックスは、当分野において公知である:ナイシン、ズブチリン、デュラマイシン、シンナマイシン、アンコベニン、エピデルミン、Ro09-0198、pep5、ラクチシン(lacticin) 481および3147、メルサシジン(mersacidin)、アクタガルジン、ムタシン(mutacin) 1140、ガリデルミン。これらランチビオティックスに関する概要は、Kellner等(上記文献)または現在のタンパク質およびペプチド科学(Current Protein and Peptide Science), 2005, No. 6, pp.61-75 (Cotter等)に見出すことができる。ここに記載する製造工程は、好ましくはエピデルミンおよびガリデルミンの製造、より好ましくはガリデルミンの製造、および最も好ましくは、少なくとも以下の式Iで表される構造上の特色を含む、ガリデルミンの製造に適用できる:
【0008】
【化1】

【0009】
本明細書に記載されるような、該ランチビオティックスの製造方法は、醗酵段階と精製段階とを含む。明確化するために、これら両段階を、別々により詳細に説明する。しかし、該醗酵工程に関して記載される各態様は、最終的な製造方法とするために、該精製段階として記載される任意の態様と組合わせることができる。
醗酵工程
ランチビオティックスの最適化された製造方法に関して、従来技術において存在する一般的な理解は、該醗酵段階内で、ランチビオティックスの全体として最大の量を与える方法に関する。結果として、肉エキスまたはペプトンエキスを含む、栄養豊富で複雑な培地が、この醗酵工程において使用された。これとは対照的に、本発明は、一層制御されたランチビオティックス、好ましくはガリデルミンの醗酵工程が、該ランチビオティックペプチドの精製を簡略化し、従ってより高効率かつ経済的な製造方法をもたらすとの発見に基いている。驚いたことに、ここに記載する醗酵工程が、無機塩による初期析出段階を含む、簡単な1または2段階の精製法によって、「高純度にて」、培養上澄からランチビオティックスを精製し得るものであることを見出した。
【0010】
本発明による「高純度」とは、該薬物製品に関して、少なくとも90%(w/w)、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは、少なくとも94%、さらに好ましくは少なくとも96%、一層好ましくは少なくとも98%、更に一層好ましくは少なくとも99%なる生成物の純度を意味する。
ランチビオティックスは、当分野の現状において公知のグラム-(+)バクテリアにおいて容易に生産できる。例えば、エピデルミンおよびガリデルミンは、エピデルミンおよび/またはガリデルミン生産のための関連遺伝子をコードし、かつ発現する、スタフィロコッカスspp.において容易に生産できる。従来技術には、例えばガリデルミンが、スタフィロコッカスガリナリウム(Staphylococcus gallinarium)菌株Tu3928において効率的に生産できることが記載されている。この菌株は、EP A-342 486において詳細に記載されている。この菌株は、承認番号4616の下に、ドイツ国、ブラウンシュバイク(Braunschweig)のドイッチェ・サムルング・フールミクロオルガニズメン・ウントゼルクルチュレン(Deutsche Sammlung fur Mikroorganismen und Zellkulturen:DSMZ)に寄託されている。従って、当分野において公知の任意のバクテリア菌株を、ここに記載されているように、ランチビオティックスの製造のために使用することができる。ここに記載されているように、ガリデルミンを製造するためには、スタフィロコッカスガリナリウム菌株Tu3928(DSM 4616)を使用することが最も好ましい。
【0011】
ランチビオティックスを生産し得る該微生物の醗酵は、当分野において公知である。該微生物は、該当する特定の微生物に適した任意の条件下で、適当な接種材料で接種した後、バッチ、フェド-バッチまたは連続的様式の何れかで、液状培地中で醗酵させることが可能である。スタフィロコッカス属の微生物は、好気的条件下、好ましくは24〜37℃なる範囲に温度にて、およびより好ましくは、約5.6〜8.5なる範囲のpH、好ましくは6.0〜8.0なる範囲のpH、最も好ましくは約7.3なるpHにて、醗酵させることができる。
ランチビオティックス、好ましくはガリデルミンの醗酵にとって適当な基本培地は、マルトース、カルシウム源、および酵母エキスを含む。好ましくは、これらの基本培地は、該醗酵工程中の泡の形成を防止する添加物を含むことができる。より好ましくは、これらの培地は、如何なる肉エキスまたはペプトンエキスをも含まない。驚いたことに、当分野において使用されている肉/ペプトンエキスは、ランチビオティックス、好ましくはガリデルミンの製造工程に負の影響を与える、多量のタンパク質性成分を含んでいる。従って、もう一つの態様によれば、ここに与えられる該培地は、脱イオン水、マルトース、カルシウム源、酵母エキスおよび少なくとも1種の消泡剤からなる。
【0012】
カルシウム源としては、CaCl2が好ましく使用される。より好ましくは、CaCl2は、約10〜200mg/L培地なる範囲、より一層好ましくは約10〜100mg/Lなる範囲、より一層好ましくは約20〜80mg/Lなる範囲、より一層好ましくは約30〜60mg/Lなる範囲、より一層好ましくは約40〜50mg/Lなる範囲、最も好ましくは約42〜48mg/Lなる範囲の量で使用される。しかし、該基本培地中のCaCl2の量またはその少なくとも一部を、該培地において、Ca2+を等価な濃度(約90μM〜1.8mM)で与えることのできる、他の適当なカルシウム源で置き換えることも、当業者の知見の範囲内にある。更に、該基本培地中の該CaCl2または任意の等価なカルシウム源の量を減じ、かつ該醗酵工程中に連続的に、または不連続的に該カルシウム源を該培地に供給することも、当業者の知見の範囲内にある。
【0013】
好ましくはマルトース一水和物として使用される該マルトースは、好ましくは該基本培地に、約0.5〜20g/L培地なる範囲の量(約1.39〜55.5mMのマルトース一水和物に相当する)で添加される。より好ましくは、該基本培地中のマルトースの量は、約1〜5g/Lなる範囲、より一層好ましくは約2.5〜7.5g/Lなる範囲、および最も好ましくは約5g/Lである。しかし、該マルトースの量またはその少なくとも一部を、同様に該生産体が消費することのできるマルトースの任意の代謝プリカーサ、または任意の等価な炭素源によって置き換えることも、当業者の知見の範囲内にある。しかし、該醗酵工程の初期成長期に関しては、「間接的な炭素源」の使用が好ましい。間接的な炭素源は、例えばジ-、オリゴ-、または多糖、例えばマルトースであるが、グルコースではない。更に、該基本培地におけるマルトース、任意の代謝プリカーサ、または適当な等価物の量を減じ、かつ該醗酵工程中に連続的に、または不連続的にこれを該培地に供給することも、当業者の知見の範囲内にある。
【0014】
驚いたことに、該タンパク質源の起源および性能が、ここに記載するような、少なくとも組合された醗酵および精製工程に関して、ランチビオティックスの製造工程において決定的であると考えられることを見出した。従来技術に記載された醗酵工程全てにおいて、ペプトンまたは肉エキスが使用されているが、これら技術とは対照的に、本明細書に記載する、ランチビオティックスの醗酵のために使用される該培地は、好ましくは唯一のタンパク質およびアミノ酸源として、酵母エキスを、好ましいものとして含有する。しかし、その痕跡量での使用は、本明細書に記載するような、ランチビオティックスの製造工程に対して負の影響を及ぼさない。
好ましくは、該酵母エキスは、約10〜200mg/L培地なる範囲、より一層好ましくは約10〜100mg/Lなる範囲、より一層好ましくは約20〜80mg/Lなる範囲、より一層好ましくは約30〜70mg/Lなる範囲、より一層好ましくは約40〜60mg/Lなる範囲、および最も好ましくは約50mg/Lなる量で、該基本培地に添加される。しかし、該基本培地中の該酵母エキスの量を減じ、かつ該醗酵工程中に連続的に、または不連続的に該酵母エキスを該培地に供給することも、当業者の知見の範囲内にある。
【0015】
好ましくは、該酵母エキスの全アミノ酸の約50%を越える量が、遊離アミノ酸および/またはジペプチドである。より好ましくは、該酵母エキスの全アミノ酸の約55%を越える量、より一層好ましくは約60%を越える量、より一層好ましくは約65%を越える量、より一層好ましくは約70%を越える量、より一層好ましくは約75%を越える量、より一層好ましくは約80%を越える量、より一層好ましくは約85%を越える量、および最も好ましくは約90%を越える量が、遊離アミノ酸またはジペプチドである。
もう一つの態様によれば、本明細書に記載するように、ランチビオティックス、例えばガリデルミンの醗酵のために使用される、該酵母エキスのアミノ酸:Asp、Glu、Asn、Gly、Ser、Thr、AlaおよびArgの約50%を越える量、好ましくは約55%を越える量、より一層好ましくは約60%を越える量、より一層好ましくは約65%を越える量、より一層好ましくは約70%を越える量、より一層好ましくは約75%を越える量、より一層好ましくは約80%を越える量、より一層好ましくは約85%を越える量、および最も好ましくは約90%を越える量が、遊離アミノ酸であり、あるいはジペプチドとして存在する。
【0016】
該基本培地は、更に該醗酵工程中の泡の生成を防止または減じる、消泡剤を含むことができる。これらの「消泡剤」は、当業者には公知の適当な量で、該基本培地添加することができる。例えば、該消泡剤は、イオン性またはノニオン性界面活性剤、例えばプルロニック(Pluronic)酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルコール性EO/PO付加物、例えばゲナポール(Genapol) EP等である。好ましくは、ポリエチレングリコール600とゲナポール(GenapolTM) EP00244(ドイツ国、クラリアント(Clariant)社製)との混合物を使用する。
該醗酵工程は、好ましくは約24〜37℃なる範囲、好ましくは約28〜37℃なる範囲、より一層好ましくは約32〜37℃なる範囲、より一層好ましくは約35〜37℃なる範囲、および最も好ましくは約37℃なる温度にて行われる。
【0017】
該pH値は、約5.6〜8.0なる範囲内の値に調節される。より好ましい態様によれば、該醗酵の開始時点における該pH値は、約5.6〜8.0なる範囲、より好ましくは約6.5〜7.5なる範囲、より一層好ましくは約6.8〜7.5なる範囲、および最も好ましくは約7.0〜7.5なる範囲内の値に調節される。
該醗酵工程は、好ましくはフェド-バッチ様式で行われる。バクテリアを醗酵させるためのフェド-バッチ法は、当業者には周知である。簡単に説明すると、生物学的醗酵器を、基本培地で満たし、好ましくは2.0-20mL(OD600 =10)なるバクテリア培養物/L醗酵器ブロスにて、これにバクテリアを接種する。この醗酵工程中、適当な栄養物を含有する供給材料混合物を、不連続的または連続的に添加する。従って、更なる態様によれば、本明細書に記載されるような、ランチビオティックスを製造するための該醗酵工程は、フェド-バッチ様式で行われる。
【0018】
好ましくは、本明細書に記載するような、該醗酵工程で使用する該供給材料混合物(フィード-ミックス)は、少なくとも1種のエネルギー源および更に、好ましくは該醗酵工程中に、該生産体によって消費される栄養物を含む。例えば、該フィード-ミックスは、炭素源、好ましくは糖、糖アルコール、アミノ糖、ウロン酸、アミノ酸、グリセリン、グリセロールエステルからなる群から選択される炭素源を含むことができる。本明細書に記載する、該方法の更なる態様によれば、該フィード-ミックスは、1またはそれ以上の単糖、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース等、またはこれらの混合物を含む。本明細書に記載する、該方法の更なる態様によれば、該フィード-ミックスは、糖、好ましくは単糖、および好ましくはAsp、Glu、Asn、Gly、Ser、Thr、Alaおよび/またはArgからなる群から選択される、1またはそれ以上のアミノ酸を含む。本明細書に記載する、該方法の更なる態様によれば、該フィード-ミックスは、グルコースを含み、あるいはグルコースからなる。
【0019】
当分野において公知の数種の供給法があり、これらは、フェド-バッチ様式で、ランチビオティックス、好ましくはガリデルミンの製造に適用できる。該供給は、該培地中のpO2が、8 kPa(80 mbar)以下、好ましくは6 kPa(60 mbar)以下、より一層好ましくは4 kPa(40 mbar)以下に変化した後に開始する。好ましくは、該供給速度は、約3-10kg/(m3h)、より好ましくは約4-8 kg/(m3h)、より一層好ましくは約5-7 kg/(m3h)、および最も好ましくは約6.5 kg/(m3h)まで高められる。本明細書に記載する、該方法の更なる態様によれば、基本供給速度は、該醗酵工程中、連続的におよび/または段階的に高めることができる。例えば、連続的に増大する速度は、約0.01-0.5 kg/(m3h)、好ましくは約0.05-0.3 kg/(m3h)、より好ましくは約0.1-0.25 kg/(m3h)、およびより一層好ましくは約0.15 kg/(m3h)までであり得る。
【0020】
更に、本明細書に記載する該方法の、より詳細な供給法は、図1に示されている。簡単に説明すると、該培地中のpO2が、8 kPa(80 mbar)以下、好ましくは6 kPa(60 mbar)以下、より一層好ましくは4 kPa(40 mbar)以下に変化した後に、フィード-ミックスは、約3-10 kg/(m3h)なる範囲、より好ましくは約4-8 kg/(m3h)なる範囲、より一層好ましくは約5-7 kg/(m3h)なる範囲、および最も好ましくは約6.5 kg/(m3h)なる初期速度にて添加される。該初期供給速度は、約0.01-0.5 kg/(m3h)なる範囲、好ましくは約0.05-0.3 kg/(m3h)なる範囲、より好ましくは約0.1-0.25 kg/(m3h)なる範囲、およびより一層好ましくは約0.15 kg/(m3h)なる増大する速度にて、連続的に高められる。好ましくは、該pO2が10 kPa(100 mbar)まで戻った後に、該供給速度(該時点において存在する)は、一旦約1-2 kg/(m3h)なる範囲、好ましくは約1 kg/(m3h)なる値に高められる。
あるいはまた、該媒体中のpO2が、8 kPa(80 mbar)以下、好ましくは6 kPa(60 mbar)以下、より一層好ましくは4 kPa(40 mbar)以下に変化した後に、フィード-ミックスを、約3-10 kg/(m3h)なる範囲、より好ましくは約4-8 kg/(m3h)なる範囲、より一層好ましくは約5-7 kg/(m3h)なる範囲、および最も好ましくは約6.5 kg/(m3h)なる初期速度にて添加する。該初期供給速度は、2つの段階において、該醗酵工程中増大され、各々約0.5-2 kg/(m3h)なる範囲、好ましくは約1 kg/(m3h)なる速度にて高められる。
【0021】
該醗酵の停止は、本明細書に記載する全体としての製造工程にとって重要であると考えられる。驚いたことに、該醗酵工程が、その準静止期の開始前に終了した場合には、本明細書に記載する単一の精製工程を適用して、高度に精製されたランチビオティックス、例えばガリデルミンを与えることができる。換言すれば、本明細書に記載する該方法に従って、ランチビオティックスを製造するためには、該細胞培養物を、静止期の開始を越えて、最早成長しなくなるまで成長させる。該文「静止期の開始を越えて、最早成長しない」によって、醗酵工程が、pHが<5.6、好ましくは6.0となる前に停止されることを意味する。あるいはまた、この文「静止期の開始を越えて、最早成長しない」とは、該醗酵器内の全生菌数それ以上増大しない、醗酵工程を意味する。更に、該「静止期の開始を越えて、最早成長しない」とは、該醗酵工程が、pH<6.0となる以前に停止され、かつ該全生菌数が、最早増大しないことをも意味する。全細胞数は、直接または間接的な方法、例えば該培養ブロスの濁度を評価することによって、見積もることができる。通常、細胞培養物の濁度は、細胞数が増大すると高くなる。「濁度」は、例えば培養ブロス1mL当たりかつ単位時間当たりの、波長600nmにおいて測定した光学密度(O.D.600)として評価することができる。従って、該文「静止期の開始を越えて、最早成長しない」とは、また醗酵器ブロス1mL当たりの、ΔO.D.600に関する値が、10分間の醗酵に対して、0.1未満まで低下することを意味する。好ましくは、醗酵器ブロス1mL当たり、かつ10分間なる醗酵期間当たりの、該ΔO.D.600の値は、0.05未満、より好ましくは0.01未満に低下する。あるいはまた、結果として、該文「静止期の開始を越えて、最早成長しない」とは、pHが<5.6、好ましくは<6.0となる前に醗酵が停止され、および/または醗酵器ブロス1mL当たりのΔO.D.600の値が、10分間なる醗酵期間中に、0.1未満に低下することをも意味する。好ましくは、醗酵器ブロス1mL当たり、かつ10分間なる醗酵期間当たりの、該ΔO.D.600の値は、0.05未満に低下し、より好ましくは0.01を越える。
【0022】
精製段階
ランチビオティックス、例えばエピデルミンおよびガリデルミンの高い生産率での製造のためには、該醗酵工程中にこれらの生成物を取出すことが重要であることが、一般的な理解であった。というのは、ランチビオティックスは、該生産体(バクテリア)自体にとって有害であり、また該生産性菌株から分泌されるプロテアーゼ活性の作用を受けるからである。結果として、透析または不連続な吸着クロマトグラフィー段階を、該醗酵工程に組込む(例えば、Ungermann等の文献(上記文献)を参照のこと)。これは、該培養ブロスからの、該ランチビオティックスの連続的な分離を可能とする。本明細書に記載する該醗酵工程は、このような分離段階が、本明細書に記載する製造方法の更なる態様において使用できるとしても、かかる工程を必要としない。
驚いたことに、ランチビオティックペプチド、特にガリデルミンが、初期塩析出段階によって、該培養ブロス(培養物上澄)から、高収率かつ高純度にて、精製することが可能であることを見出した。該用語「初期塩析出段階」とは、該培養ブロスを、該塩析出に先立って、如何なる他の精製段階にも掛けないことを意味する。しかし、細胞の分離またはpHの調節は、精製段階とは考えていない。
【0023】
従って、本発明は、またランチビオティックペプチド、好ましくはガリデルミンの製造方法にも係り、該方法は、醗酵段階および精製段階を含み、ここで該精製段階は、(i) ランチビオティックペプチドを、塩、好ましくは無機塩の添加により、細胞培養上澄から析出させる段階を含む。驚いたことに、ランチビオティックスは、塩、好ましくは無機塩による処理に付した際に、予想外の析出特性を示すことを見出した。好ましくは、これらの析出特性は、本明細書に記載したような(上記)該醗酵工程との組合せで示されている。換言すれば、該ランチビオティックスが、本明細書に記載された方法に従って醗酵された場合には、該塩析出段階の効力を高めることが可能となる。例えば、ハロゲン化アルカリ塩または硫酸アンモニウム塩を用いた析出実験は、全体で約90〜94%なる範囲の純度との組合せで、全体で約80〜90%なる範囲の生成物の収率を与えた。
塩析出手順、または塩析工程は当業者には周知であり、またしばしば更なる精製段階との組合せで利用された。例えば、塩析は、Harris & Angal (編)のタンパク質精製法(protein purification methods) - 実際の方法(a practical approach), オックスフォードユニバーシティープレス(Oxford University Press)刊, 1995に記載されている。しかし、単一の精製段階によって、このように高い生成物純度および収率が得られることは、全く記載されていない。本明細書に記載するような該精製段階を実施するのに適した塩は、無機塩である。
【0024】
使用される該塩の幾つかの局面を考察すべきである。該塩の有効性は、主として、そのアニオンの特性により決定され、多価アニオンが、最も効果的である。この有効性の順序は、リン酸塩>硫酸塩>酢酸塩>塩化物>(以下ホフマイスター(Hofmeister順列)に従う)である。リン酸塩は、硫酸塩よりも一層効果的であるが、実際には、リン酸塩は、中性pHにおいて、より効果的な、PO43-ではなく寧ろ、主としてHPO42-またはH2PO4- からなっている。一価のカチオンが最も効果的であり、NH4+>K+>N+なる順序となる。その溶解度も重要な要件である。というのは、数モルまでの濃度が必要とされるからである。従って、この局面に関して、多くのカリウム塩は不適当である。起り得る変性、または溶解度における変化の可能性があるために、塩の溶解によって発生する熱量の増加は、ほんの僅かであるべきである。最後の要件は、得られる溶液の密度である。というのは、凝集体と該溶液の密度間の差異が、遠心分離による分離の容易さを決定付けるからである。
【0025】
好ましくは、以下の式:MnXm(ここで、n=+1、+2およびm=-1、-2、-3である)で表される塩を、本明細書に記載する本発明の方法に従って、該ランチビオティックスを析出させるのに使用する。より一層好ましいものは、Xがハロゲン、ホスフェート基、ホスホネート、サルフェート基、スルホニル、アセテート、からなる群から選択され、かつMがアルカリ金属、アルカリ土類金属およびアンモニウムからなる群から選択されることにより特徴付けられる、無機塩である。より一層好ましいものは、Xがハロゲン、またはサルフェート基からなる群から選択され、かつMがアルカリ金属、アルカリ土類金属およびアンモニウムからなる群から選択されることにより特徴付けられる、無機塩である。より一層好ましいものは、Xがハロゲンであり、かつMがアルカリ金属、またはアルカリ土類金属からなる群から選択されることにより特徴付けられる、無機塩であるが、アルカリ金属は、最も好ましくはハロゲンとの組合せである。好ましいハロゲンは、塩素であり、また好ましいアルカリ金属は、ナトリウムおよびカリウムであるが、ナトリウムであることが最も好ましい。結果として、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの使用が、最も好ましいが、塩化ナトリウムが、塩化カリウムと比較すると、より一層好ましい。ランチビオティックス、例えばガリデルミンの析出に係る、塩化カリウムおよびナトリウム、好ましくは塩化ナトリウムの望ましい適正は、本明細書に記載する、更なる予想外の発見であった。塩化ナトリウムの使用が、より高濃度の硫酸アンモニウムと比較して、より高い収率および純度をもたらすことが、実施例2において示されている。あるいは、しかし、アンモニウム塩、好ましくは硫酸アンモニウムも、ここに記載するように、該精製段階にとって適したものであることが示された。
【0026】
好ましくは、無機塩による該析出は、少なくとも1.6Mまたはそれ以上の塩濃度において行われる。好ましくは、ここにおいて記載する該方法に従って使用される該塩濃度は、約1.6〜10Mなる範囲、より好ましくは約1.6〜5Mなる範囲、より一層好ましくは約2.5〜4Mなる範囲、より一層好ましくは約3〜4Mなる範囲内にある。しかし、上記の如く、該モル濃度の上限値は、使用した温度における該塩の溶解度によって定義されていることは、当業者の知見の範囲内にある。例えば、塩化ナトリウムは、室温にて、4.2〜4.4Mまで水に溶解し得る。従って、ハロゲン化アルカリ金属塩、例えば塩化ナトリウムは、約2.6M〜4.5Mなる範囲、より好ましくは約3.1M〜4.2Mなる範囲、より一層好ましくは約3.2〜3.5Mなる範囲、および最も好ましくは約3.4Mなる濃度において使用することが好ましい。
【0027】
ここに記載する該析出段階の更なる態様によれば、該醗酵ブロスを、該析出段階に先立って、中性および/または僅かにアルカリ性のpHに調節する。即ち、該析出段階は、好ましくは約7〜10なる範囲のpH、より好ましくは約7.5〜9なる範囲のpH、より一層好ましくは約7.8〜8.8なる範囲のpH、最も好ましくは約8.0なるpHにて行われる。僅かにアルカリ性のpH、好ましくは上に記載した範囲内のpHにおける精製が、ハロゲン塩、好ましくはハロゲン化アルカリ塩、最も好ましくは塩化ナトリウムの使用との組合せにおいて、最も好ましい。
ここに記載するような該析出段階の更なる態様によれば、該塩析出は、室温(約20〜25℃)または室温以下の温度にて行われる。しかし、該塩析出段階が、また室温よりも高い、または僅かに高い温度にて行うことも可能であることは、当業者の知見の範囲内にある。一般に、該温度が高いほど、該段階の生成物が悪影響を受ける危険性が高い。経済的観点から、通常は、該処理段階の全てを、室温近傍の温度にて行っている。驚いたことに、該段階の室温近傍の温度での実施が、ランチビオティックス、好ましくはガリデルミンに関しては、よりよく作用することが分かった。
【0028】
30分間の析出後(攪拌下で)、全体として該生成物の80%を越える量が塩析される。その純度は、全体として約90%を越えるものであった。好ましくは、該析出は、少なくとも30分間、好ましくは攪拌下で行われる。より一層好ましくは、該析出は、約30分間行われるが、該純度が、約75%以下、好ましくは約78%以下、より一層好ましくは約80%以下、より一層好ましくは約82%以下、より一層好ましくは約84%以下、より一層好ましくは約86%以下、より一層好ましくは約88%以下、最も好ましくは約90%以下に低下する前に停止される。該生成物の収率は、標準的な定量的HPLC分析によって測定することができる。
更なる態様によれば、該析出は、該生成物全体の少なくとも約70%、好ましくはその約75%、より一層好ましくはその75%まで、より一層好ましくはその80%まで、より一層好ましくはその82%まで、より一層好ましくはその85%まで、より一層好ましくはその90%までの量が塩析されるまで行われるが、この段階は、該生成物の純度が、約75%以下、好ましくは約78%以下、より一層好ましくは約80%以下、より一層好ましくは約82%、より一層好ましくは約84%以下、より一層好ましくは約86%以下、より一層好ましくは約88%以下、最も好ましくは約90%以下に低下する前に停止される。
【0029】
更なる態様によれば、該析出段階は、約30分〜2時間なる範囲、好ましくは約30分〜1時間なる範囲、好ましくは約30分間行われる。好ましくは、該析出混合物は、初めに少なくとも30分間、より好ましくは30分間攪拌される。従って、ここに記載する、本発明のランチビオティックスの製造方法は、初期精製段階として約1時間の塩析出段階を含み、ここで該段階の最初の30分間は、攪拌条件下で行う。好ましくは、該塩は、30分なる期間に渡り、攪拌しつつ添加され、次いで攪拌を30分間継続する。
たとえパラメータの特定の組合せが、明確に述べられていないとしても、ここに記載する本発明の方法は、各パラメータに関して記載された任意の変形を含むことができるものと理解すべきである。例えば、ここに記載するような該ランチビオティックスの製造方法は、また該析出段階を行う前に、該醗酵ブロスのpHを、8.0〜8.5なる範囲に調節することをも含み、ここで該析出段階は、室温において、少なくとも30分間の攪拌条件下での、3〜4Mなる範囲のハロゲン塩、好ましくは塩化ナトリウムの添加、およびその後の30分間に渡る追加の攪拌によって行われる。ここに記載する該方法は、また本明細書に記載するような、ランチビオティックスの製造方法をも包含し、ここで該方法は、析出段階を行う前に、該醗酵ブロスのpHを、7.5〜9.0なる範囲に調節することを含み、ここで該ランチビオティックスの析出は、室温において、該ランチビオティックスの少なくとも80%が塩析されるまで、約3.4Mのハロゲン塩、好ましくは塩化ナトリウムを使用して行われるが、該析出段階は、該生成物の純度が、全体として90%以下に低下する前に停止される。
【0030】
更なる態様によれば、ここに記載する該ランチビオティックスの製造方法は、該精製工程が、該析出段階において得た該ペプチドを、洗浄段階、単一のクロマトグラフィー精製段階、乾燥段階または結晶化段階にかける、精製段階を更に含むことを特徴としている。
該精製の度合いは、好ましくは遠心分離または濾過(ここでは、濾過が最も好ましい)によって分離される、該第一の析出物を、該析出のために使用したものと同一の塩を同一の塩濃度にて含有する溶液で洗浄した場合に、更に高めることができる。場合によっては、該洗浄液中の該塩濃度は、該析出溶液と比較して僅かに高いものであり得る。好ましくは、該洗浄液の体積は、該初期生成物溶液の体積の、1/10〜1/2に等しく、あるいは1/10〜3/4に等しいものであった。該洗浄段階後、析出物を含む該生成物を、好ましくは遠心分離または濾過段階により分離する。該遠心分離および濾過段階両者は、当業者には周知の段階である。即ち、ここに記載する方法は、ランチビオティックペプチドの製造方法に関連し、醗酵および精製段階を含み、ここで該精製段階は、以下の諸工程:(i) 細胞培養液上澄から、無機塩を添加することにより、ランチビオティックペプチドを析出させて、その沈殿を得る工程;および(ii) 該沈殿を、該析出のために使用したものと同一の塩を含有する溶液で洗浄して、該沈殿を得る工程を含む。好ましくは、該析出段階に先立って、細胞を除去し、またpHを、上で説明したように調節する。
【0031】
ここに記載するような、該ランチビオティックス、好ましくはガリデルミンの製造方法の更なる態様によれば、何れも上に説明したように、該析出段階から、あるいはまた同一の塩による該洗浄段階から直接得た該沈殿を、好ましくはその初期体積の1/20倍の水で洗浄する。好ましくは、該水による洗浄段階は、繰返し行われる。該沈殿を含む生成物は、遠心分離または濾過による各洗浄段階後に得られるが、濾過が最も好ましい。従って、ここに記載する該方法は、醗酵および精製段階を含む、ランチビオティックペプチドの製造方法に係り、ここで該精製段階は、以下の諸工程:(i) 細胞培養液上澄から、無機塩を添加することにより、該ランチビオティックペプチドを析出させて、その沈殿を得る工程;(ii) 該沈殿を、該析出のために使用したものと同一の塩を含有する溶液で洗浄して、該沈殿を得る工程;(iii) 場合により、上記工程(i)または(ii)で得た沈殿を水で洗浄して、該沈殿を得る工程;および(iv) 場合により、該工程(iii)を繰り返す工程を含む。好ましくは、該析出段階に先立って、細胞を除去し、またpHを、上で説明したように調節する。
【0032】
ここに記載するような、該ランチビオティックス、好ましくはガリデルミンの製造方法の更なる態様によれば、全て上に説明したように、該析出段階から、あるいはまた該洗浄段階から直接得た該沈殿を、適当なバッファー、好ましくは酢酸バッファー、より一層好ましくは1%(v/v)の酢酸溶液中に溶解する。かくして、該初期析出段階由来の沈殿(i)、または該同一の塩による該洗浄段階由来の沈殿(ii)、あるいは該第一、第二または任意の更なる水洗段階由来の沈殿(iii)を、適当なバッファー、好ましくは酢酸バッファー、より一層好ましくは約1〜2%(v/v)の酢酸溶液、最も好ましくは約1%の酢酸溶液中に溶解する。更なる好ましい態様によれば、該バッファーは、また25〜50%(v/v)なる範囲の量のアルコール、好ましくはエタノールをも含む。従って、好ましい酢酸バッファーは、約1〜2%の酢酸および約15〜50%、好ましくは20〜40%(v/v)、最も好ましくは40%(v/v)のアルコール、好ましくはエタノールを含む。引続き、該溶解した生成物を、所定のpHまで滴定し、かつ最終的に濾過し、凍結させ、あるいは凍結乾燥または結晶化させる。凍結、凍結乾燥または結晶化方法は、当業者には周知であり、またこれらを該ランチビオティックス、好ましくはガリデルミンの更なる処理に適用することも可能である。これら方法の例は、(Scopes, R.K.による刊行物:タンパク質の精製:原理および実際(Protein Purification: Principles and Practice), スプリンガー(Springer)刊, 1993)に記載されている。従って、ここに記載する本発明の方法は、醗酵および精製段階を含む、ランチビオティックペプチドの製造方法に係り、ここで該精製段階は、以下の諸工程:(i) 細胞培養液上澄から、無機塩を添加することにより、該ランチビオティックペプチドを析出させて、その沈殿を得る工程;(ii) 場合により、該沈殿を、該析出のために使用したものと同一の塩を含有する溶液で洗浄して、該沈殿を得る工程;(iii) 場合により、上記工程(i)または(ii)で得た沈殿を水で洗浄して、該沈殿を得る工程;(iv) 場合により、該工程(iii)を繰り返す工程;(v) 該段階(ii)〜(iv)の沈殿を、酢酸バッファー、好ましくは1%酢酸溶液に溶解する工程;および(vi) 該溶解した生成物を、所定のpHまで滴定し、かつ最終的に濾過しおよび凍結し、または凍結乾燥しまたは結晶化する工程を含む。好ましくは、該析出段階に先立って、細胞を除去し、またpHを、上で説明したように調節する。
【0033】
該生成物の純度は、分取HPLCまたはLPLCによって、好ましくは逆相クロマトグラフィーにより、>98面積%まで改善することができる。逆相クロマトグラフィーを利用する生成物の脱塩および/または精製方法は、当業者には周知であり、また例えばScopes, R.K.による刊行物:タンパク質の精製:原理および実際(Protein Purification: Principles and Practice), スプリンガー(Springer)刊, 1993に記載されている。例えば、使用できる適当なクロマトグラフィー用の媒体は、アンバークロム(Amberchrom) HPR10、XT20、cg300cおよびcg161c (米国、フィラデルフィアのローム&ハース(Rohm and Haas)社製)等である。従って、ここに記載する本発明の方法は、醗酵および精製段階を含む、ランチビオティックペプチドの製造方法に係り、ここで該精製段階は、以下の諸工程を含む:(i) 細胞培養液上澄から、無機塩を添加することにより、該ランチビオティックペプチドを析出させて、その沈殿を得る工程;(ii) 場合により、該沈殿を、該析出のために使用したものと同一の塩を含有する溶液で洗浄して、該沈殿を得る工程;(iii) 場合により、上記工程(i)または(ii)で得た沈殿を水で洗浄して、該沈殿を得る工程;(iv) 場合により、該工程(iii)を繰り返す工程;(v) 先行する該段階(i)〜(iv)の何れかにおいて得られたランチビオティックペプチドを、単一のクロマトグラフィー精製段階に掛ける工程、ここで好ましくは該クロマトグラフィー精製段階は、逆相クロマトグラフィー段階である。好ましくは、該析出段階に先立って、細胞を除去し、またpHを、上で説明したように調節する。
【0034】
更なる態様によれば、(i) 直接該析出段階から得た該沈殿;(ii) 同一の塩による該洗浄段階から得た該沈殿;(iii) 上記のような該第一、第二または任意の更なる水洗段階から得た該沈殿を、逆相クロマトグラフィーカラムに投入することができ、次いで水溶液、例えば16%(v/v)のアセトニトリル水溶液を、好ましくは0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液等と共に使用して洗浄する。次いで、該生成物を、アセトニトリルを用いた勾配溶出法で、好ましくは20-40%(v/v)なる範囲、例えば24-36%(v/v)なる範囲のアセトニトリル水溶液等で、該カラムから溶出することができる。好ましくは、該溶出バッファーは、トリフルオロ酢酸等を、好ましくは約0.01〜0.5%(v/v)なる範囲、より一層好ましくは約0.1%(v/v)なる量で含むこともできる。次いで、該有機溶媒を、該生成物溶液から、低圧蒸留により除去し、該生成物を所定のpHまで滴定し、かつ最終的に濾過し、凍結し、または凍結乾燥しまたは結晶化する。HPLCカラムからの該生成物の捕集は、結果的に収率は低下するものの、純度を更に高めるために調節することができる。
【0035】
あるいはまた、(i) 直接該析出段階から得た該沈殿;(ii) 同一の塩による該洗浄段階から得た該沈殿;(iii) 上記のような該第一、第二または任意の更なる水洗段階から得た該沈殿を、エタノールおよび酢酸を含む水性バッファー中に懸濁させる。好ましくは、該エタノールの濃度は、約5〜50%(v/v)なる範囲、より一層好ましくは20〜45%(v/v)なる範囲、最も好ましくは約40%(v/v)なる値であり、また該酢酸は、約0.1〜10%(v/v)なる範囲、好ましくは約0.5〜5%(v/v)なる範囲、最も好ましくは約1.0%(v/v)なる濃度にある。この得られた生成物の溶液を、場合により濾過するが、該濾過段階を利用することが好ましく、また該溶液は、低圧逆相クロマトグラフィー用のカラム、例えばアンバークロムcg300c(米国、フィラデルフィアのローム&ハース社製)上に重層する。同様な逆相クロマトグラフィー用カラム、例えばアンバークロムcg161c等も適したものであり得る。ここに記載する本発明の方法を実施するのに適した逆相クロマトグラフィー用カラムを選択することは、当業者の一般的な知見の範囲内にある。次いで、該カラムを、例えばアセトニトリルおよび好ましくはトリフルオロ酢酸を含む水溶液等の適当なバッファー、好ましくは約16%のアセトニトリルおよび約0.1%のトリフルオロ酢酸を含む水溶液で洗浄する。しかし、有機溶媒および酸物質を含有する、あらゆる他の適当な水性バッファーを使用して、該逆相クロマトグラフィーを実施することができる。生成物の溶出は、好ましくは強有機溶剤、例えば約60〜90%(v/v)のアセトニトリル水溶液、好ましくは約80%(v/v)のアセトニトリル水溶液を用いて行われる。次いで、該有機溶剤を、低圧条件下で蒸留することによって除去し、該生成物を所定のpHまで滴定し、かつ最終的に濾過しかつ凍結し、または凍結乾燥しまたは結晶化する。
【0036】
精製工程中にトリフルオロ酢酸を使用する場合、これは、場合により該トリフルオロ酢酸含有物質から、当分野において周知の、標準的な手順によって除去することができる。例えば、トリフルオロ酢酸を含まない物質は、該トリフルオロ酢酸含有物質を、イオン-交換マトリックス、好ましくはアニオン-交換マトリックス(例えば、SAX対イオン炭酸水素塩)と共に、該トリフルオロ酢酸の殆ど、好ましくは90%を越える、より一層好ましくは95%を越える、最も好ましくは約99.9%を越えるトリフルオロ酢酸が、該イオン-交換マトリックスに結合するまで、インキュベートすることにより得ることができる。必要な該イオン-交換マトリックスの量は、その結合容量およびトリフルオロ酢酸の全含有率に依存するが、該マトリックスの最大結合容量を、最低でも10%だけ越える量である。少なくとも30分間のインキュベート後、該溶液を、該イオン-交換器から分離する。該イオン-交換マトリックスを、アセトニトリル水溶液を含む、好ましくは10〜20%のアセトニトリル水溶液を含む洗浄バッファーの初めの体積の、1/10〜2/10容で洗浄した後、該併合した溶液を、低圧にて蒸留して、該溶液が僅かに濁るまで、該アセトニトリルを除去する。トリフルオロ酢酸を除去するための、または該トリフルオロ-塩と他の対イオンとを交換するための周知の方法を利用することができ、並びに遊離塩基または塩化水素または酢酸塩等の他の塩を生成することができる。
【0037】
更なる態様によれば、ここに記載する本発明の方法は、醗酵および精製段階を含む、ランチビオティックペプチドの製造方法に係り、ここで該精製段階は、以下の諸工程を含む:(i) 細胞培養液上澄から、無機塩を添加することにより、該ランチビオティックペプチドを析出させて、その沈殿を得る工程;(ii) 該沈殿を、該析出のために使用したものと同一の塩を含有する溶液で洗浄して、該沈殿を得る工程;(iii) 上記洗浄工程(ii)で得た該ランチビオティックペプチドを、単一のクロマトグラフィー精製段階に掛ける工程、ここで好ましくは該クロマトグラフィー精製段階は、逆相クロマトグラフィー段階であり;(iv) 低圧にて蒸留して、該生成物の溶液から該有機溶媒を除去する工程;(v) 該溶液を所定のpHまで滴定し、かつ最終的にこれを凍結乾燥する工程。好ましくは、該析出段階に先立って、細胞を除去し、またpHを上で説明したように調節する。
【実施例】
【0038】
以下の実施例は、本発明を更に例示するのに役立つが、これらが、ここに記載される本発明の範囲を限定するものと理解すべきではない。寧ろ、以下の実施例は、本明細書に記載するような本発明の方法の、一般的な発明上の概念を例示するものである。
【0039】
実施例1:ガリデルミンの醗酵
凍結培養(WCC)
凍結保存した(Zellbank BO-002; Kampagne 1940122004033, Reference 35/3/18)スタフィロコッカスガリナルム(Staphylococcus gallinarum)(Tu 3928; DSM 4616)のバイアル瓶1本を使用して、無菌的に寒天プレート上に接種した。該寒天培地を、37℃にて1日間、次いで4℃にて1日間インキュベート(パラフィルム(Parafilm)を使用、しかしこの段階は必須ではない)した。この培養物を、第一の種菌の接種のために使用した。各製造に対して、新たなバイアルビンを使用する必要がある。
【0040】
【表1】

【0041】
予備培養または第一接種(2個の振とうフラスコ:500mL)
培養された平板1片(約0.5x0.5cm)を、100mLの滅菌接種培地を含む、2個の500mL容量の反らせ板付き振とうフラスコ(1反らせ板)に、無菌的に移した。該接種されたフラスコを、37℃にて16-18時間、ロータリーシェーカー(140-180rpm)でインキュベートする。最終生成物の力価は、=100mg/Lなる範囲とすべきである。
【0042】
【表2】

【0043】
第二接種(または実験室用醗酵装置)
【0044】
【表3】

【0045】
該第一の接種物(2.0%)は、該予備培養物(=接種培地)におけるものと同一の培地を含む容量20Lのバイオリアクタに、無菌的に移す。該接種されたジャーまたはフラスコまたは該バイオリアクタ内の培養物を、37℃にて24時間までインキュベートする。5-6時間後に、pO2変化が起り、この時点にて、グルコースの供給を開始する(供給プロフィールに関しては、以下の生産醗酵を参照)。泡の生成を防止するために、0.05ml/Lのゲナポール(Genapol)EP 0244/PEG 600の1:1混合物を、滅菌前に添加する。該醗酵物を該生産醗酵装置用の接種物として使用する場合には、該培養物を、ほんの16-18時間だけインキュベートし、次いで該生産バイオリアクタに移す(理由:生成物の力価は、移す際には、<200mg/Lとすべきである)。
【0046】
生産醗酵:
生産醗酵は、作業体積1000L(NB、現在までは20Lなる醗酵器規模(10Lなる作業体積、1.5m3を計画))を持つ、1500L容量のタンク内で行った。該滅菌した培地を37℃まで冷却し、該第二の接種物を接種する。該接種物の量は、0.5%であった。この醗酵の条件は、以下の通りであった:
【0047】
培地:接種物培養用のものと同一;
インキュベート温度:37℃;
pH:調節しなかったが、接種時点のpHは、6.3に設定した;
泡立ち防止:0.05ml/LのゲナポールとPEG 600との1:1混合物を使用した;
攪拌器速度:300rpmにて開始;
通気速度:0.5vvm;
2種の異なる供給プロフィールをテストした。
供給A:pO2変化が起った後(5-6時間後)、該供給を、6.5kg/(m3h)なる供給速度で、0.15kg/(m3h)なる一定の勾配にて供給を開始する(A);
供給B:供給の5時間後に、上記と同様な勾配にて、該供給速度を1kg/(m3h)だけ高める(B)。
【0048】
上記のような、ガリデルミンを生産するための、典型的な醗酵プロフィールを、図1に示した。
全ての発見を基に、数回の醗酵を、同一の条件下で行って(上記参照)、本発明の方法が、強固かつ再現性に富むものであるか否かを検討した。図2は、本明細書に記載したような、ガリデルミンの生産性をもたらす、2種の標準的な醗酵の、該典型的なプロフィールを示す。
【0049】
実施例2:ガリデルミンの精製
実施例1に記載したような醗酵工程で得た、培養液上澄から出発して、以下の手順に従って、ガリデルミンを精製した:
手順A:硫酸アンモニウムによる析出
該醗酵後、該細胞を遠心分離処理により除去し、得られた生成物を、室温にて30分間に渡り、穏やかに攪拌しつつ、314g/Lの硫酸アンモニウム(50%飽和に等価)を添加することによって、細胞を含まない上澄(pH 6.7)から析出させた。
別の実験において、様々な濃度(飽和度)の硫酸アンモニウムを用いた析出に付きテストした:
【0050】
【表4】

【0051】
該懸濁液を、更に30分間ゆっくりと攪拌し、次いで該沈殿を、濾過により集めた。該沈殿を、40%エタノール、1%酢酸水溶液(出発時点の体積の1/4)中に溶解させた。生成物の収率は87%であり、また分析用HPLCによって測定したその純度は93.6容積%であった。
該生成物の純度は、分取HPLCにより、更に>98容積%まで改善することができた。該クロマトグラフィー用媒体は、アンバークロム(Amberchrom) HPR10(XT20もテストしたが、上首尾であった)であった。この生成物を、該カラムに重層し、次いでこれを、16%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液で洗浄した。該生成物は、24-36%のアセトニトリルを用いた勾配溶出により、該カラムから溶出した。
【0052】
手順B:NaClによる析出:
変法A:
1. 醗酵後、細胞を遠心分離処理により除去し、得られた生成物を、室温にて30分間に渡り、穏やかに攪拌しつつ、200g/LのNaCl溶液を添加することによって、細胞を含まない上澄(pH 6.7)から析出させた。析出は30分間継続した。
1a) 別の実験において、該生成物の収率および純度に対する、析出時間の効果をテストした(200g/L NaCl;pH 6.7;室温)。
【0053】
【表5】

【0054】
1b) 更なる実験において、該生成物の収率および純度に対する、NaCl濃度の効果をテストした(析出時間:30分;pH 6.7;室温)。
【0055】
【表6】

【0056】
1c) 更なる実験において、該生成物の収率および純度に及ぼす、析出前の該生成物のpHの効果をテストした(析出時間:30分;200g/L NaCl;室温)。
【0057】
【表7】

【0058】
2. 該生成物の沈殿を、遠心分離処理し、NaClの200g/L溶液で洗浄した。洗浄液の体積は、該最初の生成物溶液の体積の半分に等しいものであった。
3. 該沈殿を、再度遠心分離処理し、該最初の体積の1/20の水に懸濁させた。
4. 遠心分離処理後、該沈殿を、該最初の体積の1/20の水に懸濁させ、第二の期間に渡り遠心分離処理した。
5. 該生成物の沈殿を、1%酢酸溶液に溶解し、次いでNaOH溶液で、所定のpHまで滴定し、また最終的に濾過し、凍結させた。
【0059】
変法B:
1. 醗酵後、細胞を遠心分離処理により除去し、得られた生成物を、室温にて30分間に渡り、穏やかに攪拌しつつ、200g/LのNaCl溶液を添加することによって、該細胞を含まない上澄から析出させた。析出は30分間継続した。
2. 該生成物の沈殿を、遠心分離処理し、NaClの200g/L溶液で洗浄した。洗浄液の体積は、該最初の生成物溶液の体積の半分に等しいものであった。
3. 該沈殿を、再度遠心分離処理し、該最初の体積の1/20の水に懸濁させた。
4. 20%エタノール、2%酢酸の水溶液を添加して、最終体積を、該最初の体積の1/4とした。より大きな体積とすることも可能である。
5. 該生成物の溶液を濾過し、アンバークロム(Amberchrom) cg300c(低圧逆相クロマトグラフィー)を充填したカラムに重層させた。例えば、アンバークロムcg161cに対しても、同様な逆相クロマトグラフィー用媒体が、適したものであり得る。該カラムを、16%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸の水溶液で洗浄し、次いで該生成物を、80%アセトニトリル水溶液で溶出した。
6. アセトニトリルを、低圧条件下での蒸留により、該生成物の溶液から除去した。
7. 該生成物を凍結乾燥した。全体的なその収率は、57%であり、そのHPLCによる純度は、95%であり、またその含有率は68%であった。
【0060】
変法C:
1. 醗酵後、細胞を遠心分離処理により除去し、細胞を含まない上澄のpHを、0.5M NaOHで8.0に調節した。得られた生成物を、室温にて30分間に渡り、穏やかに攪拌しつつ、200g/LのNaCl溶液および17g/Lのセライト溶液を添加することによって、該細胞を含まない上澄から析出させた。析出は30分間継続した。
2. 該生成物の沈殿を濾過し、3つの部分に分けた、200g/LのNaCl溶液で洗浄した。塩溶液による全洗浄体積は、該最初の生成物溶液の体積の3/4に等しいものであった。
3. 該沈殿を、該最初の生成物溶液の体積の1/20に等しい水で1回洗浄した。
4. 該沈殿を、3つの部分に分けた、40%エタノール、1%酢酸溶液を用いて溶解した。その全体積は、該最初の生成物溶液の体積の1/4であった。
5. 該生成物の溶液を濾過し、アンバークロムHPR10逆相HPLC樹脂を充填したカラムに重層させた。他の逆相HPLC樹脂、例えばアンバークロムXT20、あるいはクロマシル(Kromasil) 100A-10-C18も適したものであった。次いで、該カラムを、16%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液で洗浄した。得られた生成物を、0.1%のトリフルオロ酢酸を含有する、24-36%なるアセトニトリル溶液から、勾配溶出法により、該カラムから溶出させた。
6. アセトニトリルを、低圧条件下での蒸留により、該生成物の溶液から除去した。
7. 該生成物を凍結乾燥した。典型的に、>98面積%なる純度が得られた。該HPLCカラムからの生成物の捕集を調節することにより、該純度を高めることができる(結果的に収率の低下を伴う)。
【0061】
変法D:
1. 醗酵後、該細胞を遠心分離処理により除去し、該細胞を含まない上澄のpHを、0.5M NaOHで8.0に調節した。得られた生成物を、室温にて30分間に渡り、穏やかに攪拌しつつ、200g/LのNaCl溶液および17g/Lのセライト溶液を添加することによって、該細胞を含まない上澄から析出させた。析出は30分間継続した。
2. 該生成物の沈殿を濾過し、3つの部分に分けた、200g/LのNaCl溶液で洗浄した。塩溶液による全洗浄体積は、該最初の生成物溶液の体積の3/4に等しいものであった。
3. 該沈殿を、該最初の生成物溶液の体積の1/20に等しい水で1回洗浄した。
4. 該沈殿を、3つの部分に分けた、40%エタノール、1%酢酸溶液を用いて溶解した。その全体積は、該最初の生成物溶液の体積の1/4であった。
5. 該生成物の溶液を濾過し、アンバークロムHPR10逆相HPLC樹脂を充填したカラムに重層させた。他の逆相HPLC樹脂、例えばアンバークロムXT20、あるいはクロマシル(Kromasil) 100A-10-C18も適したものであった。次いで、該カラムを、16%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液で洗浄した。得られた生成物を、0.1%のトリフルオロ酢酸を含有する、24-36%なるアセトニトリル溶液から、勾配溶出法により、該カラムから溶出させた。
6. TFAを、イオン-交換体、好ましくはアニオン-交換体(例えば、SAX対イオン炭酸水素塩)によって、1回または2回、99.9%のTFAが該イオン-交換体と結合するまで、直接該HPLCカラム由来の画分を処理することによって除去した。該イオン-交換体の量は、その結合能(TFAの全含有率)に依存するが、その最大結合容量を、最低でも10%だけ越える量である。30分間なる、該イオン-交換体との反応時間の経過後、この完全な懸濁液を、大きなガラスフリット内に注ぎ、該溶液を、該イオン-交換体から分離した。該イオン-交換カラムのIEC樹脂を、出発体積の1/10〜2/10倍の体積の、10-20%アセトニトリル水溶液(wfi状の性能)で洗浄した後、併合した溶液を、低圧条件下で蒸留して、該溶液が僅かに濁りを帯びるまで、アセトニトリルを除去する。TFAを除去し、または該トリフルオロ酢酸と他の対イオンとを交換するための、他の周知の方法をも利用して、遊離塩基または他の塩、例えば塩酸塩または酢酸塩を生成することができる。
7. 該生成物を凍結乾燥する。典型的に、>98面積%なる純度が得られた。該HPLCカラムからの生成物の捕集を調節することにより、該純度を高めることができる(結果的に収率の低下を伴う)。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の方法における供給方法を示す。
【図2】ガリデルミンの生産をもたらす、2種の標準的な醗酵の典型的なプロフィールを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランチビオティックペプチドの製造方法であって、醗酵および精製工程を含み、該精製工程が、以下の段階:
(i) 無機塩を添加することによって、細胞培養上澄から、該ランチビオティックペプチドを析出させる工程、
を含むことを特徴とする、前記ランチビオティックペプチドの製造方法。
【請求項2】
更に、次のような精製工程:(ii)前記析出段階(i)から得た該ペプチドを、洗浄段階、単一のクロマトグラフィー精製段階、乾燥段階、または結晶化段階をも含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記無機塩が、以下の組成:MnXmを有し、ここでn=+1、+2およびm=-1、-2、-3である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記Xが、ハロゲン原子、ホスフェート基、ホスホネート基、サルフェート基、スルホニル基、アセテート基を含む群から選択され、前記Mが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウムを含む群から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記塩が、好ましくはハロゲン化アルカリであり、好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記無機塩による析出を、少なくとも1.6Mまたはそれ以上なる塩濃度にて行う、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記醗酵段階から得られる前記細胞培養上澄が、静止期の開始を超えることなしに生育させた、フェド-バッチまたはバクテリアバッチ細胞培養物から収穫したものであり、あるいは連続バクテリア細胞培養物から収穫したものである、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記醗酵段階のために使用する前記培地が、酵母抽出物を補給したものである、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記バクテリア細胞培養物が、スタフィロコッカス細胞の培養物であり、また好ましくはスタフィロコッカスガリナリウムの培養物である、請求項9記載の方法。
【請求項10】
前記ランチビオティックペプチドが、少なくとも式Iで示される構造上の特色を含むエピデルミン、pep5またはガリデルミンまたはこれらの変異型を含む群から選択される、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−526538(P2009−526538A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554743(P2008−554743)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051192
【国際公開番号】WO2007/093548
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(504225895)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (34)
【Fターム(参考)】