説明

ランプ

【課題】 正確に読み取ることが可能な二次元バーコードを備えたランプを提供する。
【解決手段】
実施形態のランプは、曲面を備えたバーナーBNと、バーナーBNを保持するようにその外面に設けられた金属バンド6と、を備えたランプであって、金属バンド6はバーナーBNの曲面に沿うように設けられ、金属バンド6の曲面を呈する表面上には二次元バーコード9が形成されており、二次元バーコード9の行方向および列方向に構成される複数のセル91の一辺の長さBは、150μm≦B≦350μmに設定されているとともに、セル91の少なくとも一つには複数のレーザ痕93により構成されたドット92が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動車の前照灯、尾灯や液晶プロジェクタなどに使用されるランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ランプの製造年月日、ロット番号などを管理する目的で、ランプの口金にデータ情報を形成する場合がある。このデータ情報は、例えば二次元バーコードであり、刻印、切削等により得ることができる。
【0003】
しかし、二次元バーコードをレーザ照射により金属表面に形成したところ、正確に読み取ることができない不具合が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−273382号公報
【特許文献2】特開2008−41582号公報
【特許文献3】特開2000−299270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、正確に読み取ることが可能な二次元バーコードを備えたランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、実施形態のランプは、曲面を備えたバーナーと、前記バーナーを保持するようにその外面に設けられた金属バンドと、を備えたランプであって、前記金属バンドは前記バーナーの曲面に沿うように設けられ、前記金属バンドの曲面を呈する表面上には二次元バーコードが形成されており、前記二次元バーコードの行方向および列方向に構成される複数のセルの一辺の長さBは、150μm≦B≦350μmに設定されているとともに、前記セルの少なくとも一つには複数のレーザ痕により構成されたドットが形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態のランプの側面図について説明するための図である。
【図2】第1の実施形態のランプのバーナーについて説明するための図である。
【図3】第1の実施形態の金属バンドに形成した二次元バーコードについて説明するための図である。
【図4】第1の実施形態の二次元バーコードのドットについて説明するための図である。
【図5】第1の実施形態の二次元バーコードの形成方法について説明するための図である。
【図6】セルの長さBと二次元バーコードの読み取り結果について説明するための図である。
【図7】ピッチPと二次元バーコードの読み取り結果について説明するための図である。
【図8】ドットの変形例について説明するための図である。
【図9】ドットの比較例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
図1および図2を参照して、第1の実施形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施形態のランプの側面図について説明するための図であり、図2は、本発明の第1の実施形態のランプのバーナーおよび金属バンドについて説明するための図である。
【0009】
本実施形態のランプは、自動車などの前照灯用の光源として用いることが可能な、いわゆるHIDランプである。このランプは、発光する部分を備えるバーナーBNを備えている。
【0010】
バーナーBNは、二重管構造であり、その内部には内管1が配置されている。内管1は細長い管状であり、その中央付近には点灯中に発光する部分となる発光部11が形成されている。発光部11の両端には、ピンチシールにより形成された板状のシール部12、その両端には境界部13を介して円筒部14が連続形成されている。この内管1は前述のとおり、発光する部分を含んでいるとともに、高温になるため、石英ガラスなどの透光性と耐熱性を具備した材料で構成されるのが望ましい。
【0011】
発光部11の内部には、中央が略円柱状で、両端に向かって縮径する形状となっている放電空間111が形成されている。放電空間111には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、金属ハロゲン化物2と希ガスを含み、水銀は含んでいない、いわゆる水銀フリーの構成である。
【0012】
金属ハロゲン化物2は、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化スカンジウム、ヨウ化亜鉛、臭化インジウムで構成されている。なお、この金属ハロゲン化物2の組合せはこれに限らず、スズ、セシウムのハロゲン化物を追加するなどしてもよい。
【0013】
希ガスは、キセノンが使用されている。なお、希ガスとしてはキセノンとネオン、アルゴン、クリプトンなどを組み合わせた混合ガスで使用することもできる。
【0014】
シール部12には、電極マウント3が封着されている。電極マウント3は、金属箔31、電極32、コイル33およびリード線34により構成されている。
【0015】
金属箔31は、例えば、モリブデンからなる薄い金属板であり、その板状の面がシール部12の板状の面と平行するように配置されている。
【0016】
電極32は、例えば、タングステンに酸化トリウムをドープした、いわゆるトリエーテッドタングステンからなる電極である。その一端は金属箔31の発光部11側端部に重ね合わせ接続されており、他端は放電空間111内で所定の電極間距離、例えば外観上における距離で3.5mm〜4.5mmを保って、互いの先端同士が対向するように配置されている。
【0017】
コイル33は、例えば、ドープタングステンからなる金属線であって、シール部12に封着される電極32の軸部の軸周りに螺旋状に巻装されている。
【0018】
リード線34は、例えば、モリブデンからなる金属線である。その一端は、発光部11に対して反対側の金属箔31に重ね合わせ接続されており、他端は管軸に沿って内管1の外部に延出されている。そのうち、ランプの前端側に延出したリード線34には、例えば、ニッケルからなるL字状のサポートワイヤ35の一端がレーザ溶接により接続されている。このサポートワイヤ35には、管軸と平行する部分に、例えば、セラミックからなるスリーブ4が装着されている。
【0019】
上記で構成された内管1の外側には、筒状の外管5が内管1と同心状に設けられている。これら内外管の接続は、内管1の円筒部14付近に外管5を溶着し、両端部に溶着部41を形成することにより行なわれている。このため、内管1と外管5との間には気密に保たれた空間が形成され、その空間には、ネオン、アルゴン、キセノン、窒素から選択された一種のガスまたは混合ガスが封入されている。なお、外管5としては、チタン、セリウム、アルミニウム等の酸化物を添加した石英ガラスなど、内管1に熱膨張係数が近く、かつ紫外線遮断性を有する材料を使用するのが望ましい。
【0020】
これらで構成されたバーナーBNの後端側には、金属バンド6が設けられている。金属バンド6は、例えばステンレスからなる金属板を外管5の外周面に沿って配置したものであり、その両端同士を溶接することで、バーナーBNに固定・保持されている。円筒状に曲げられた金属バンド6の寸法は、その中心から外表面における半径rが3〜6mm、厚みDが0.1〜0.7mmである。
【0021】
このバーナーBNは、ソケット7に保持される。その保持は、ソケット7から4本突出形成させた金属製の舌片71で金属バンド6を把持することで行なっている。ソケット7の底部には底部端子81、側部には側部端子82が形成されており、底部端子81はリード線34、側部端子82はサポートワイヤ35と接続されている。
【0022】
これらで構成されたランプは、底部端子81が高圧側、側部端子82が低圧側になるように点灯回路(図示なし)と接続され、始動時はランプ電力が75W、安定点灯時は35Wとなるように点灯される。
【0023】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、金属バンド6の曲面状を呈する表面上に二次元バーコード9が形成されている。この二次元バーコード9は、ランプの製造年月日、ロット番号、全光束、ランプ電圧などの発光特性と関連付けられたデータ情報である。つまり、バーコードリーダで読み取った二次元バーコード9のデータ情報を所定の情報処理装置で参照することで、上記のような情報を知ることが可能となる。
【0024】
図3は、第1の実施形態の金属バンドの表面に形成された二次元バーコードについて説明するための図であり、(a)は実際の写真、(b)は(a)の模式図である。
【0025】
この図からわかるように、二次元バーコード9は、行方向および列方向に配列された複数のセル91で構成されている。その少なくとも一つにはドット92が形成されている。この実施形態におけるドット92は、図3の拡大図である図4に示すように、“N”のような形状になっている。このような“N”字状のドット92は、図5に示すように、バーナーBNの金属バンド6に対して、レーザを照射し続けた状態(連続照射した状態)で、N字をなぞるようにレーザ照射装置LZの位置を変化させることで得ることができる。つまり、レーザを連続照射して得た“N”字状のドット92は、図4(c)のように、多くのレーザ痕を重ねたような形状であるから、複数のレーザ痕93からなるものということができる。このようなドット92とドット92が形成されていないセル91により、二次元バーコード9としてデータ情報を表示することが可能となる。
【0026】
以下に、本実施形態の金属バンド6および二次元バーコード9の一実施例を示す。
(実施例)
金属バンド6:ステンレス製、幅W=4.8mm、厚み=0.3mm、半径r=4.5mm、
二次元バーコード9:横方向の長さA1=縦方向の長さA2=2.9mm、セル91:セル数=14×14=196、横方向の長さB1=縦方向の長さB2=210μm、
ドット92:図3(a)と同じ箇所に、金属バンド6の表面にYAGレーザで連続照射することで図4(b)のような“N”字状に形成、レーザ痕93の直径E=約40μm、深さ=0.3μm、横方向の長さC1=210μm、縦方向の長さC2=200μm、隣接するドット92間の横方向のピッチP1=0μm、縦方向のピッチP2=10μm。
【0027】
この実施例について、二次元バーコード9をバーコードリーダで読み取れるか試験を数回繰り返し行ったところ、読み間違えたり、読み取りエラーとなったりすることはなく、正確に読むことができた。
【0028】
図6は、セルの長さBを変化させたときの読み取り結果について説明するための図である。この図は、セル91の長さBをそれぞれの値に規定し、そのセル内に図4(b)と同様のドット92を形成し、バーコードリーダで読み取り試験を行った結果であり、正確に読み取れた場合は○、読み取りNGが発生した場合は×と評価した。
【0029】
結果から、セル91の長さBが150μm〜350μmのときは正確に読み取れているが、セル91の長さBが100μm以下や350μm以上では読み取りNGとなっていることがわかる。セル91の長さBが100μm以下で読み取りNGとなったのは酸化の影響と考えられる。レーザ照射により金属表面にドットを形成した場合、そのドット周囲が酸化して黒くなり、隣接するセル91も黒っぽく変色してしまう。セル91が小さい場合にはその変色が相対的に広範囲になってしまうため、その変色したセル91はドット92が形成されているセル91と誤認されてしまったと考えられる。一方、セル91の長さBが350μm以上で読み取りNGとなったのは曲面の影響と考えられる。金属バンド6の表面を上から見たとき、その頂上付近は略平坦であるが、端部に向かうにつれて曲面となっている。つまり、セル91の長さBが大きくなるほどカーブのきつい曲面にドット92が形成されることになる。曲面に形成されたドット92は、平面に形成されたドット92よりも形状がわかりにくくなってしまうため、読み取りがNGとなったと考えられる。以上から、セル91の長さBは、150μm≦B≦350μmを満足するのが望ましいといえる。
【0030】
図7は、隣接するドット間のピッチP(=セルの長さB−ドットの長さC)を変化させたときの読み取り結果について説明するための図である。
【0031】
結果から、ピッチPが0〜25μmのときは正確に読み取れているが、ピッチPが30μm以上では読み取りNGとなっていることがわかる。ピッチPが30μm以上になるとセル91に対してドット92が小さくなったため、読み取りがNGとなったと考えられる。以上から、ピッチPは、P≦25μmを満足するのが望ましいといえる。
【0032】
また、図8(a)に示すような、レーザを複数回独立して照射することで、一部同士を重ねた複数のレーザ痕93からなるドット92で構成した二次元バーコード9で同じ試験を行ったところ、正確に読み取ることができた。また、図6や図7と同様の結果を得ることができた。さらに、図8(b)に示すような、互いに重ならない複数のレーザ痕93で構成したドット92で構成した二次元バーコード9でも同様の結果を得ることができた。一方で、図9に示すような、レーザの照射径を大きくすることで、セル91の広範囲を一つのレーザ痕93で占めるようなドット92で構成した二次元バーコード9でも同様の試験を行ったところ、正確に読み取ることができなかった。これは、図9のようなドット92では、ドット92が深くなりすぎたこと、ドット92の輪郭が円形なためセル91に空白が多く形成されてしまったこと、レーザの出力が大きくなりすぎて酸化の範囲も大きくなったこと、などが原因に挙げられる。また、レーザが貫通して、強度が低下したり、ガラスにキズをつけたり、読み取りにくくしたりすることもある。つまり、ドット92の輪郭を一つのレーザ痕93からなる輪郭よりも矩形状に近づけることができるとともに、レーザの出力を小さくできるよう、ドット92は直径Eは20〜60μm、深さは0.1〜1.0μmであるようなレーザ痕93を複数集合させたものであるのが望ましい。
【0033】
この実施形態においては、二次元バーコード9の行方向および列方向に構成される複数のセル91の一辺の長さBを、150μm≦B≦350μmに設定するとともに、セル91の少なくとも一つにレーザ照射によって形成した複数のレーザ痕93により構成されたドット92を形成したことで、特に半径r(=曲率R)が3〜6mmであるような曲面、かつ厚みDが0.1〜0.7mmであるような薄い金属バンド6にレーザで二次元バーコード9を形成しても、正確に読み取ることが可能な二次元バーコード9を形成することができる。また、隣接するドット92間の距離、すなわちピッチPを意味するB−Cを、B−C≦25μmに設定したことで、より正確に二次元バーコード9を読み取ることができる。
【0034】
本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0035】
例えば、ランプは電球やロングアークタイプの放電灯などであってもよい。
【0036】
ドット92は、一つのセルにつき一つである必要はなく、例えば隣り合うセル91の両方にドット92を形成する場合には、それらのセル91に跨るようにドット92を形成しても良い。
【0037】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
BN バーナー
6 金属バンド
9 二次元バーコード
91 セル
92 ドット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面を備えたバーナーと、前記バーナーを保持するようにその外面に設けられた金属バンドと、を備えたランプであって、
前記金属バンドは前記バーナーの曲面に沿うように設けられ、前記金属バンドの曲面を呈する表面上には二次元バーコードが形成されており、
前記二次元バーコードの行方向および列方向に構成される複数のセルの一辺の長さBは、150μm≦B≦350μmに設定されているとともに、前記セルの少なくとも一つには複数のレーザ痕により構成されたドットが形成されているランプ。
【請求項2】
前記金属バンドは、半径rが3〜6mm、厚みDが0.1〜0.7mmである請求項1記載のランプ。
【請求項3】
前記ドットの一辺の長さをCとしたとき、B−C≦25μmに設定されている請求項1記載のランプ。
【請求項4】
曲面を備えたバーナーと、前記バーナーを保持するようにその外面に設けられた金属バンドと、を備えたランプであって、
前記金属バンドは前記バーナーの曲面に沿うように設けられ、前記金属バンドの曲面を呈する表面上には二次元バーコードが形成されており、
前記二次元バーコードの行方向および列方向に構成される複数のセルの一辺の長さBは、150μm≦B≦350μmに設定されているとともに、前記セルの少なくとも一つには、複数回レーザを照射することにより形成された複数のレーザ痕、またはレーザを連続照射することにより形成されたレーザ痕により構成されたドットが形成されているランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114861(P2013−114861A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259131(P2011−259131)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】