説明

リクローズクリップ

【課題】一度開封した包装袋を密閉性よく再封止することができ、かつ袋の幅に任意にあわせることにより特に使用時に収納性の高い、リクローズクリップを提供する。
【解決手段】袋7の開口部7aを外側から挟み込むことによって再封止するリクローズクリップ1は、袋7を間に挟み込んだ状態で互いに嵌合可能な嵌合部材3,5を備え、嵌合部材3,5は、長手方向の一端1a同士が連結され他端同士は開放されてなる片開き構造をなし、嵌合部材3,5は、マトリックス成分が、ガラス転移温度0℃未満のプラスチックからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋の開口部を外側から挟み込むことによって、袋の開口部を再封止するリクローズクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品、家庭用品、トイレタリー用品、医薬品、雑貨品、その他等の液状または固形の材料を収納するための包装袋は、プラスチックフィルムからなるものが多く用いられている。しかしながら、これらの包装袋は、開口部をヒートシールによって封止する構造となっているものが多く、一度開封すると、再封止することが困難なものが多かった。このため、再封止する方法として、輪ゴムや紐などで簡易的に結束する方法や、開口部を折り返して輪ゴムや粘着剤付きテープで仮止めする方法、及び再度ヒートシールする方法等が用いられている。しかしながら、内容物支持用のトレイなどを含む包装袋を結束する場合は、作業性が悪いだけでなく、再封止した袋が立体的になることから、収納性に劣るという問題もあった。また、開口部を折り返すという食品包装袋の再封止方法では、密封性の不足による衛生上の問題も抱えていた。さらに、再度ヒートシールする方法では、専用の機器が必要であるという問題もあった。
【0003】
そこで、上記課題を解決するために、袋開口部を再封止するための封止具が提案されている。その主なものとして、袋の外側から凹部と凸部の部材で挟み込む構造をもち剛性の高い素材から成るクリップが、知られている(例えば、下記特許文献1〜4参照)。また、柔軟な材料で凹部と凸部の部材を構成し、両端を各々圧着した帯クリップ、が知られている(例えば、下記特許文献5参照)。
【0004】
更には、従来から電子レンジ専用の加熱袋として、蒸気抜き機構付きの袋も知られている。この種の袋の特徴は、レンジ加熱によって発生した蒸気を、あらかじめ袋に付与した蒸気口より逃がすことで、内圧の上昇による袋の破裂を抑制して加熱できることである。この蒸気口の機構としては、易開封性を利用した方法、例えばシール部に剥離剤を印刷する方法や、シールの形状を工夫する方法で、内圧の上昇に伴って選択的に開口する機構が採用されている(例えば、下記特許文献6、7参照)。また、他の機構として、蒸気口があらかじめ開口している機構が用いられているものもある(例えば、下記特許文献8参照)。これらの機構を装備した袋は、調理済あるいは半調理済等の食品を包装したレトルトパウチや冷凍食品包装体、また食材を使用者が自ら投入して調理する袋として使用されている。
【特許文献1】特開平8−48345号公報
【特許文献2】特開平9−4611号公報
【特許文献3】特開2003−72778号公報
【特許文献4】特開2005−185817号公報
【特許文献5】特開平11−130103号公報
【特許文献6】特許3908632号公報
【特許文献7】特許3035484号公報
【特許文献8】特公平8−11585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種のクリップは、包装体の幅方向を全面に渡って、凹部凸部で挟み込むことで包装体の密封性を向上させるため、当然のことながら、再封止したい袋の幅よりも長さの長いクリップを用いる必要があった。ところが、特許文献1〜4で提案されているクリップは、その構造や剛性から、任意の袋の幅にクリップの長さを調節することができないため、特に、再封止した袋を特定の容積の中に収容する場合に問題があった。例えば、一度開封した冷凍食品の包装体を再封止し、冷凍庫へ収納する場合などは、クリップの剛性の高さによる収納性の低下だけでなく、袋の幅より大きなクリップを用いることによる、収納性の低下という問題もあった。その上、剛性の高い棒状のクリップは嵩高い形状となるため、クリップを使用しない時の保管性にも問題があった。さらに嵌合する二本の部材が連結されていない場合には、保管時に片方の部材のみを紛失してクリップとしての機能を果たせなくなるという問題もあった。また、特許文献5における柔軟な材料からなる帯クリップは、収納性は改善されているものの、両端が圧着された構造であるため、任意の長さに調整することは困難であった。このため、再封止した包装体の収納性が劣るばかりか、両端止め構造により環状テープ形状の開いたクリップに袋を通す際に、袋にシワが発生し、作業性や密封性に問題が生じることもあった。
【0006】
また、上記の蒸気抜き機構付きの袋(特許文献6〜8)は、全て電子レンジ加熱後には蒸気抜き口が開口した状態となるため、袋を調理後に保存する場合は、袋が密閉できないという問題があった。また、あらかじめ蒸気抜き口が開口している機構の場合には、下味付けなどの調理前保存過程においても密封性に問題があった。そのため、蒸気抜き機構付きの袋は保存用の袋を兼ねることができず、それぞれ専用の袋を準備する必要があった。この対応として、蒸気抜き機構付き袋をクリップで封止しようとすると、万が一、使用者が誤って、封止したままの状態、つまり密封された状態でレンジ加熱してしまうと、袋が破裂する可能性もある。
【0007】
以上のような問題に鑑み、本発明は、一度開封した包装袋を密閉性よく再封止することができ、かつ袋の幅に任意にあわせることにより特に使用時に収納性の高い、リクローズクリップを提供することを目的とする。また、食品包装袋、特に、蒸気抜き機構付き包装袋に好適に用いられるリクローズクリップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、鋭意検討した結果、以下の発明を成すに到った。すなわち、本発明のリクローズクリップは、袋の開口部を外側から挟み込むことによって、袋の開口部を再封止するリクローズクリップであって、袋を間に挟み込んだ状態で互いに嵌合可能な第1及び第2の嵌合部材を備え、第1及び第2の嵌合部材は、長手方向の一端同士が連結され他端同士が開放されてなる片開き構造をなし、第1及び第2の嵌合部材は、マトリックス成分がガラス転移温度0℃未満のプラスチックからなることを特徴とする。
【0009】
このリクローズクリップは、第1及び第2の嵌合部材が片開き構造であるので、
第1及び第2の嵌合部材の嵌め合い状態の始点を、被嵌合物である包装袋7の外点に作ることができる。よって、第1及び第2の嵌合部材の嵌合の作業性を向上させ、袋の再封止を確実に行うことが可能となり、充分な密封性を確保できる。また、第1及び第2の嵌合部材の連結部を始点として、第1及び第2の嵌合部材を一端から他端に向かって順次嵌合させることができるので、再封止時に発生しやすい袋のシワも抑えられ、より密封性に優れたものとすることができる。さらに、片開き構造により、袋の幅に合わせてリクローズクリップの長さを調整できるため、収納性に優れたものとすることができる。また、第1及び第2の嵌合部材が、マトリックス成分がガラス転移温度0℃未満のプラスチックからなることにより、常温でこのリクローズクリップを取り扱う際に、クリップ全体として十分な柔軟性を発揮することができる。そのため、袋に挟んだリクローズクリップは、袋の形状とともに変形することができるので収納性の高い、使用感の良いクリップとなる。その上、リクローズクリップが柔軟性を有しているので、再封止したい袋の幅に合わせて、第1及び第2の嵌合部材をカットし易く、特定の容積の庫内に収納しやすい長さに調整することが容易である。
【0010】
また、第1及び第2の嵌合部材は、それぞれ、基材部と、当該基材部に設けられ相手方と互いに嵌合する嵌合部とを有し、基材部には、第1及び第2の嵌合部材を幅方向に切断容易とするための開孔部又はノッチが形成されていることとしてもよい。この場合、第1及び第2の嵌合部材が切断容易とされているので、第1及び第2の嵌合部材の長さの調整がより容易となる。
【0011】
また、第1及び第2の嵌合部材は、互いに同一形状の嵌合部を有することとしてもよい。この場合には、一本の嵌合部材を折り返して片開き構造のクリップを作成することができる。従って、挟み込みの起点を使用者が決定することができ、挟みこみ開始作業が容易となる。またクリップを使用しない保管時にあっても、一本の嵌合部材を巻回状態で保管することができるので収納性が高い。
【0012】
また、本発明のリクローズクリップの再封止の対象となる袋は、食品用包装体であることとしてもよい。また、本発明のリクローズクリップの再封止の対象となる袋は、電子レンジ加熱用の蒸気抜き機構を備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、一度開封した包装袋を密封性よく再封止することができ、かつ使用時に収納性の高いリクローズクリップを提供することができる。また、食品包装袋、特に蒸気抜き機構付き包装袋に好適に用いられるリクローズクリップを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るリクローズクリップの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、リクローズクリップ1は、一度開封した包装袋7の開口7aを、長尺状をなす嵌合部材(第1の嵌合部材)3と嵌合部材(第2の嵌合部材)5との間に挟み込むことにより、包装袋7を再封止するものである。例えば、このリクローズクリップ1は、開封済みの冷凍食品の包装体を再封止するといった用途に好適に用いられる。このリクローズクリップ1は、上記一対の嵌合部材3,5の一端同士が連結部1aで連結され他端が開放されてなる片開き構造をなす。また、嵌合部材3,5は、間に包装袋7を挟み込んだ状態で互いに嵌め合わせることが可能な嵌合型のジッパーテープ構造を有している。嵌合部材3,5の詳細な構造に関しては、後述する。また、嵌合部材3の外側には短冊状の基材フィルム35が、嵌合部材5の外側には短冊状の基材フィルム55が接合されている場合もある。すなわち、ここでは接合部材3,5の外側に基材フィルム35,55が接合されている形態を図1に例示し説明しているが、基材フィルム35,55は省略されてもよい。
【0016】
リクローズクリップ1の嵌合部材3,5は、マトリックス成分がガラス転移温度0℃未満の樹脂からなる。ここで、マトリックス成分とは、単一成分の樹脂の場合は該樹脂であり、複数種の樹脂を混合した場合は、混合によって形成される海島構造の海を形成する成分を指す。マトリックス成分がガラス転移温度0℃未満であることにより、常温でリクローズクリップ1を取り扱う際に、クリップ全体として十分な柔軟性を発揮することができる。そのため、包装袋7に挟んだリクローズクリップ1は、包装袋7の形状とともに変形することができるので収納性の高い、使用感の良いクリップとなる。その上、リクローズクリップ1が柔軟性を有しているので、再封止したい袋の幅に合わせて、鋏等を用いて、嵌合部材3,5を任意の長さにカットすることができ、特定の容積の庫内に収納しやすい長さにすることが可能である。
【0017】
仮に、マトリックス成分に、ガラス転移温度が0℃以上の樹脂を用いると、特に冷凍庫へ保管する場合にはクリップが保管中に硬質化するため、収納性が悪化するばかりでなく、衝撃によってクリップが破損する恐れもある。よって、冷凍食品用の袋の再封止性を考慮して、冷凍庫内で保管されている状態でも十分な柔軟性を発揮して、収納性を高くするためには、前記ガラス転移温度は−80℃以上0℃未満が好ましく、より好ましくは−60℃以上−10℃以下、さらに好ましくは−40℃以上−20℃以下である。−80℃未満のガラス転移温度を有する樹脂は、一般に融点も低くなるため、耐熱性という点から好ましくない。
【0018】
このような、マトリックス成分の特性を達成する樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマーなどを単独若しくは複数混合して用いることができる。また、前記マトリックス成分のガラス転移点が影響を受けない範囲で、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂を加えることもできる。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂、例えば、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)等が好ましい。これらの樹脂はエチレン、プロピレンモノマーを主体としてその他のオレフィンを共重合体成分として含有してもよい。ポリオレフィン系樹脂には、他の熱可塑性樹脂を混合してもよく、例えば、LDPEにエチレン−ビニルアルコール共重合体を、またPPにポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを特定の割合で混合することなども可能である。
【0019】
このリクローズクリップ1の嵌合部材3,5は、前述のとおり片開き構造を有する。片開き構造によれば、嵌合部材3,5の嵌め合い状態の始点を、被嵌合物である包装袋7の外点に作ることができるので、嵌合部材3,5の嵌合の作業性を向上させることができる。その結果、包装袋7の再封止を確実に行うことが可能となり、充分な密封性を確保できる。さらに、嵌合部材同士の両端が連結される両端止め構造とは異なり、片開き構造では、被嵌合物の幅に合わせてクリップの長さを調整できるため、収納性に優れたものとすることができる。また、リクローズクリップ1では、連結部1aを始点として、嵌合部材3,5を片端から他端に向かって順次嵌合させることができるので、再封止時に発生しやすい包装袋7のシワも抑えられ、より密封性に優れたものとすることができる。
【0020】
また、前述のとおり、リクローズクリップ1の嵌合部材3,5は、嵌合型ジッパーテープ構造を有する。ジッパーテープ構造とは、嵌合の凹部を有する雌部材と、嵌合の凸部を有する雄部材から成る公知のジッパーテープの構造を示す。リクローズクリップ1では、嵌合部材3が雌部材であり、嵌合部材5が雄部材とされている。すなわち、図2に断面形状を示すように、雌部材である嵌合部材3は、基材部34と、この基材部34上に形成された嵌合凹部32とを有しており、製法によりこれらを基材フィルム35に接合することもできる。
【0021】
この嵌合部材3は、長手方向の全長に亘って同じ断面形状で延在している。同様に、雄部材である嵌合部材5は、図3に断面形状を示すように、基材部54と、この基材部54上に形成された嵌合凸部52とを有しており、製法によりこれらを基材フィルム55に接合することもできる。この嵌合部材5は、嵌合部材5の長手方向の全長に亘って同じ断面形状で延在している。
【0022】
本来、この種のジッパーテープ構造は、袋の内側に対面して設置された雌部材と雄部材とを、直接嵌合させる構成で、袋の封止に用いるものである。このジッパーテープ構造において、後述する嵌合凹部32及び嵌合凸部52の形状、サイズ、樹脂弾性率等を満たすことにより、包装袋7を挟み込んだ状態で嵌合した場合にも本来の機能である密封性と、さらに収納性や作業性を兼ね備えたクリップを得ることができるので、リクローズクリップ1において、このようなジッパーテープ構造を採用することは好ましい。
【0023】
次に、嵌合凹部32と嵌合凸部52の形状について説明する。嵌合凹部32と嵌合凸部52の形状は通常公知の範囲の形状を使用してよい。但し、嵌合凹部32と嵌合凸部52との間に、被嵌合物である包装袋7を挟みこむことが必要であるので、嵌合凹部32と嵌合凸部52はそれぞれ図2、図3の形状を採用することが好ましい。すなわち、嵌合凹部32は、図2に示すように、幅方向で対面する一対のフック部32a,32bが、基材部34表面から並行に直立した形状が好ましい。図2に例示する形状は、嵌合凸部52との嵌合時にもフック部32a,32bが両側へ開き難い構造であるため、包装袋7を挟み込んだ際にも、強固に嵌合し密封性高く再封止することができる。
【0024】
また、嵌合凸部52の形状は、例えば、図3のような通常公知の範囲の形状を用いることができる。すなわち、嵌合凸部52は、幅方向に両側に張り出した返し部52a,52bを有する。図4に示すように、包装袋7を間に挟んだ状態で嵌合部材3,5を嵌め合わせる際には、返し部52a,52bが、それぞれ、フック部32a,32bに引っ掛かることで、嵌合凹部32と嵌合凸部52との嵌合が行われる。
【0025】
次に、嵌合凹部32と嵌合凸部52とのサイズについて説明する。嵌合凹部32と嵌合凸部52とのサイズは、封止の対象とする包装袋7の特性により決定されるが、図4に示すように、嵌合凹部32と嵌合凸部52とが嵌合した際のチャック間厚み11を1.0mm以上10.0mm以下とすることが好ましい。この規定の範囲とすることで、鋏などの日常的な切断治具を用いて、リクローズクリップ1を容易に切断することができる。チャック間厚み11が10.0mmを超えると、クリップが硬くなり、鋏による切断が困難になる傾向にあり、収納性にも劣るものとなりやすい。反対に1.0mm未満では包装袋7を挟み込んで封止することが困難になりやすい。
【0026】
さらに、図2に示すフック部32a,32bの間のクリアランス12は、凹部幅13の40%以上60%以下の範囲が好ましい。嵌合凹部32を上記の規定のクリアランス12に設計することにより、包装袋7を密閉性高く挟み込みやすくなる。クリアランス12が凹部幅13の40%未満では、対象とする包装袋7の厚みによっては、挟み込んで嵌合することが難しくなり、また60%より広いと、嵌合した際に嵌合凹部32のフック部32a,32bが両側へ開きやすくなるため、嵌合が甘くなって密閉性に劣る傾向となる。
【0027】
また、図3に示す嵌合凸部52の爪太さ14は、嵌合凹部32のクリアランス12(図2参照)の80%以上120%以下の範囲の太さであることが好ましい。80%未満では嵌合する際の作業性に劣る傾向にあり、また120%より大きいと、嵌合凹部32のクリアランス12に嵌め込むことが不可能になる場合がある。
【0028】
次に、嵌合部材3,5の材質について説明する。嵌合部材3,5の材料は、弾性率100MPa以上800MPa以下(JIS−K−7161、7162)の樹脂組成物で構成することが好ましい。この範囲の弾性率を有する組成物を用いることにより、通常の使用時には外れることのない嵌合強度を有し、かつ優れた密封性を確保しやすくなる。さらに適度な柔軟性を有するので、作業性、収納性ともに優れたクリップとなる。弾性率800MPaを超える樹脂を用いれば、剛性の高いリクローズクリップとなるため収納性に劣る傾向となり、100MPa未満の樹脂を用いれば、包装袋7によっては、挟み込んだ際に十分な嵌合強度を発現できないこともある。
【0029】
さらに、使用感のよいリクローズクリップを求める場合には、嵌合部材3,5の材質を、弾性率200MPa以上600MPa以下の範囲とすることがより好ましい。この範囲の弾性率の樹脂組成物を用いることにより、クリップに求められる密封性や作業性、収納性を兼ね備えた使用感のよいクリップを得やすくなる。
【0030】
また、嵌合する嵌合部材3,5の弾性率の関係は特に限定されず、同一の弾性率の組み合わせであっても、異なる弾性率の組み合わせであっても構わない。嵌合部材3,5の弾性率が近い組み合わせの場合には、嵌合部材3,5の形状を最適化することで、密封性に優れたクリップとなる。一方、弾性率が規定した範囲内で大きく異なる嵌合部材3,5の組み合わせの場合で、例えば、嵌合部材3にポリプロピレン系樹脂組成物などの剛性に優れた高弾性率の樹脂を用いる場合、包装袋のフィルムを嵌合した際に、嵌合凹部32のフック部32a,32bの開きを抑え、一度嵌め込んだ嵌合凸部52が嵌合凹部32から外れることなく強固に嵌合させることが可能となる。さらに、嵌合部材5には柔軟性の高いポリエチレン系樹脂を用いることで、チャック全体としての柔軟性を改善し、密閉性とともに、取り扱い性や収納性を兼ね備えることができる。また、反対に嵌合部材3に低弾性率の樹脂を用い、嵌合部材5に高弾性率の樹脂を用いる場合には、被嵌合物である包装袋7の剛性が高い場合でも、嵌合凸部52を嵌合凹部32に十分に押しこむことができるため、作業性に優れたリクローズクリップとすることができる。
【0031】
また、リクローズクリップ1では、嵌合部材3,5及び基材フィルム35,55を幅方向に切断容易とするため、易引裂性の起点を形成してもよい。具体的には、図5及び図6に示すように、嵌合部材3,5の基材部34,54の側縁部及び基材フィルム35,55の側縁部に、易引き裂き性を発現する開孔部23を形成してもよい。開孔部23は、厚み方向に貫通する多数の微細孔を、基材部34,54及び基材フィルム35,55の側縁部に形成してなるものである。また、基材部34,54及び基材フィルム35,55の、易引き裂き性の発現のためには、V字状のノッチ(切り欠き)24又はI字状のノッチ(切り込み)25を側縁部に形成することもできる。
【0032】
このような易引裂性の起点により、嵌合部材3,5を幅方向に切断することが容易となり、鋏などの治具を用いることなく、指先で任意の長さに切断できる。従って、リクローズクリップ1を、再封止したい包装袋7の開口部7a(図1)の幅に合わせた長さに調整することが容易になる。易引裂性のために設ける開孔部23の微細孔の大きさは、嵌合部材3,5の形状および材質に依存するため、最適値を一概に規定することはできないが、好ましい孔径は0.05mm以上1.1mm以下、より好ましくは0.1mm以上0.7mm以下、さらに好ましくは0.2mm以上0.4mm以下である。
【0033】
また、嵌合凹部32のフック部32a,32bには、当該フック部32a,32bを長手方向で不連続とするように、任意のピッチで切り込み面26を設けてもよい。同様に、嵌合凸部52には、当該嵌合凸部52を長手方向で不連続とするように、任意のピッチで切り込み面27を設けてもよい。このような切り込み面26,27により、嵌合部材3,5の指先での切断がより容易となる。但し、リクローズクリップ1の密封性を損なうことのないよう、切り込み面26と切り込み面27のピッチは、嵌合状態で千鳥の位置に配置するのが好ましい。すなわち、嵌合状態において、切り込み面26の位置と切り込み面27の位置とが一致しないように配置することが好ましい。
【0034】
リクローズクリップ1は食品包装袋に好適に用いることができる。特に食品包装袋の中でも、冷蔵庫や冷凍庫などの限られた体積の空間に保存する袋、冷凍食品包装袋に好適に用いることができる。
【0035】
またリクローズクリップ1は、例えば、図7に示すような、電子レンジ加熱用の蒸気抜き機構109を備えた食品用包装袋107を密閉するために用いることができる。このような食品用包装袋107は、前述したように、加熱後は蒸気抜き機構109が開口した状態となるため、加熱調理後には密閉保管することができない問題があった。また、あらかじめ蒸気抜き口が開口している機構の袋にあっては、加熱前の密閉も不可能である。しかしながらリクローズクリップ1を用いれば任意の位置で食品用包装袋107を封止できるので、図7に示すように、食品用包装袋107の食品108が収容された部分と蒸気抜き機構109との間を分離するようにリクローズクリップ1を装着することで、蒸気抜き機構109が開口した状態の袋において、食品108を密閉して保存することが可能になる。
【0036】
この際、リクローズクリップ1の嵌合圧力をある程度低く設計することで、クリップを止めた状態の食品用包装袋107を誤ってレンジ加熱した場合にも、袋内圧力の上昇により容易にリクローズクリップ1の嵌合が外れるため安全性が十分に確保される。この場合の必要な嵌合強度と内圧の関係は、食品用包装袋107のサイズによって異なるため、一義的に定義することはできないが、好ましいリクローズクリップ1の耐圧強度は、0.5atm以上1.05atm以下であり、より好ましくは0.7atm以上0.95atm以下である。1.05atmを超えると、レンジ加熱時の袋内圧力でリクローズクリップ1の嵌合が外れないことによる袋の破損の危険性が高くなり、また0.5atm未満では保管時の密閉性に劣るものとなる。
【0037】
また、リクローズクリップ1は片開き構造であることから、図8に示すように、食品用包装袋117に食品118,120を収容する場合に、食品118を内包する部分と食品120を内包する部分とを分離するようにリクローズクリップ1を取り付けることが可能である。このようにリクローズクリップ1を装着することにより、袋117の中身を小分けにする用途にも用いることができる。従って、例えば、単なる食材の分離だけではなく、食材と調味液を分離した状態で保存し、レンジ加熱時に混合することも可能となる。
【0038】
リクローズクリップ1の製造は、目的の嵌合凹部32及び嵌合凸部34等の形状に見合った金型を用いて、従来公知の押出成型による方法を用いることができる。基材フィルム35,55は、適宜、従来公知の成型方法、例えばキャスト法やインフレーション法を用いて製造し、必要な幅にスリットして使用することができる。製造プロセスは通常公知の如何なる方法を採用してもよく、基材フィルム35,55と嵌合部材3,5とを同時に押出して成型する方法、先行して製造した基材フィルム35,55に溶融した嵌合部材3,5を押出し溶着する方法、先行して製造した嵌合部材3,5を予熱の残った基材フィルム35,55に溶着する方法、各々製造した嵌合部材3,5と基材フィルム35,55を熱接着若しくは接着剤で貼り合せるなどの方法を用いることができる。採取した嵌合部材3,5を任意の長さに切断し、嵌合した状態で片端を溶断シールする方法や、片端を接着剤で固定することで、片開き構造のクリップを得ることができる。
【0039】
また、基材部34,54、並びに基材フィルム35,55、嵌合凹部32、及び嵌合凸部34へ、針穴やレーザーなどによる有孔加工やレーザーなどで切り込みを入れることで、開孔部23やノッチ24,25を形成することができる。また、嵌合凹部32及び嵌合凸部34の切り込み面26,27は、凸部が設けてあるロールを、加熱状態で、若しくは押出し直後の嵌合凹部32及び嵌合凸部34に押し当てて成型することができる。
【0040】
また、本発明のリクローズクリップの他の例として、図9に示すリクローズクリップ501は、リクローズクリップ1における嵌合部材3,5に変えて、互いに同じ形状をなす、いわゆる雌雄同形構造の嵌合部材4,6を採用している。嵌合部材4,6における嵌合部40は、2つの凸部42を有しており、2つの凸部42の間に形成される凹部に、相手方の凸部42が嵌め込まれる。このリクローズクリップ501では、嵌合部材4,6と同じ断面形状をもつ一本の帯状部材を準備し、この帯状部材を、幅方向の折り目で折り返すことで片開き構造を形成することができ、嵌合部材4,6を形成することができる。したがって、嵌め込みの始点(折り返し部)を使用者が決定することができ、包装袋7を挟み込む開始作業が容易となる。また、このようなリクローズクリップ501は、保管時においては一本の帯状部材であり、巻回状態で保管することができるので保管時においても収納性が高い。
【0041】
なお、本文中で用いた物性の評価方法については、以下の通りである。
(評価方法)
(1. 弾性率 JIS−K−7161、7162)
規定の標準寸法に射出成型した試験片を引張圧縮試験機にて1mm/分の速度で引張り、2%の歪の値を測定した。
(2. 耐圧強度)
ジッパー袋にエアーを送って内圧をかけ続け、破裂した瞬間の内圧のピーク値を、破裂強度試験機(mocon SKYE2000a)を用いて測定した。(加圧速度(30psi/min)
(3. クリップ性の評価方法)
20cm×26cmの50g入りポテトチップス用包装袋(ポリプロピレン/ポリエチレン/アルミ蒸着、フィルム厚み70μm、三方シール)を一度開封した直後にクリップで再封止し、作業性、収納性、密閉性を以下の方法で評価した。
・作業性
クリップの止めやすさを下記の基準で官能評価した。
○:容易に止められる △:止めづらい ×:止まらない
・収納性
クリップで再封止した包装袋を食器棚の一部(20cm×20cm×30cm)に包装袋2つを収納する際の収納性を、下記の基準で官能評価した。
○:容易に収納できる △:収納しづらい ×:収納できない
・密封性
クリップで再封止した包装袋を室温23℃、湿度50%の空間に放置し、72時間後に吸湿性を、下記の基準で官能評価した。
○:湿気を感じない △少し湿気を感じる ×明らかに湿気を感じる
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
ガラス転移点―60℃、弾性率700MPa(JIS−K−7161、7162)のポリプロピレン系樹脂を溶融押出機にて、凹型ダイ出口温度が190℃となるよう加熱条件を調整しながら3Kg/hrの速度で溶融押出し、あらかじめ用意した50μmのポリプロピレンフィルムを3m/minで送りながら、溶融した樹脂と接触させて成型し、その後冷却し巻き取ることで、クリアランス0.6mm高さ2.0mmの凹部を製造した。さらに、同様に凸型ダイを用いて基材フィルムを8m/minで送りながら高さ2.0mmの凸部を製造した。その後凹部と凸部を嵌合させて適当な長さに調節して片側をシールで接着し、リクローズクリップを製造した。クリップ性の評価は表1に示した。
[実施例2]
実施例1と同様に製造する過程で、基材フィルムと帯状部材にそれぞれ、ハンドカット用のV字ノッチ(図5の符号24参照)及び切り込み面(図5の符号26,27参照)を設置した。包装袋の幅に合わせて、クリップを容易に指先でカットでき、実施例1の効果に加えて作業性がさらに向上した。クリップ性の評価は表1に示した。
[比較例1]
実施例1で製造した凹部と凸部を組み合わせて、一定の長さに調整したものの両端を圧着して固定した。再封止の機能は実施例1と同様に良かったが、両端止め構造ゆえに長さを調整できないため、包装袋からクリップが大幅に突き出し、収納性に劣る結果であった。クリップ性の評価は表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
この表1に示されるとおり、比較例1では、両端止め構造に起因して、作業性及び収納性が十分でないところ、片開き構造をなす実施例1,2においては、作業性及び収納性について十分な成績が得られている。従って、リクローズクリップ1における片開き構造の有用性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のリクローズクリップは、食品、家庭用品、トイレタリー用品、医薬品、雑貨品、その他等の液状または固形の材料を収納するためのプラスチックフィルム包装袋を一度開封してから再封止する場合に、密封性や収納性が高く、さらに簡易な作業で再封止可能なクリップとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のリクローズクリップの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のリクローズクリップの雌部材を示す断面図である。
【図3】図1のリクローズクリップの雄部材を示す断面図である。
【図4】図2の雌部材と図3の雄部材とが、包装袋を挟み込んだ状態で嵌合した様子を示す断面図である。
【図5】図2の雌部材を示す斜視図である。
【図6】図3の雄部材を示す斜視図である。
【図7】図1のリクローズクリップの使用状態の一例を示す図である。
【図8】図1のリクローズクリップの使用状態の他の例を示す図である。
【図9】本発明のリクローズクリップの他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1,501…リクローズクリップ、3…第1の嵌合部材、5…第2の嵌合部材、7,107,117…包装袋、7a…袋の開口部、23…開孔部、24,25…ノッチ、32…嵌合凹部、34…基材部、40…嵌合部、52…嵌合凸部、54…基材部、109…蒸気抜き機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋の開口部を外側から挟み込むことによって、前記袋の前記開口部を再封止するリクローズクリップであって、
前記袋を間に挟み込んだ状態で互いに嵌合可能な第1及び第2の嵌合部材を備え、
前記第1及び第2の嵌合部材は、長手方向の一端同士が連結され他端同士が開放されてなる片開き構造をなし、
前記第1及び第2の嵌合部材は、マトリックス成分がガラス転移温度0℃未満のプラスチックからなることを特徴とするリクローズクリップ。
【請求項2】
前記第1及び第2の嵌合部材は、それぞれ、
基材部と、当該基材部に設けられ相手方と互いに嵌合する嵌合部とを有し、
前記基材部には、前記第1及び第2の嵌合部材を幅方向に切断容易とするための開孔部又はノッチが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリクローズクリップ。
【請求項3】
前記第1及び第2の嵌合部材は、
互いに同一形状の前記嵌合部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のリクローズクリップ。
【請求項4】
前記袋は、食品用包装体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリクローズクリップ。
【請求項5】
前記袋は、電子レンジ加熱用の蒸気抜き機構を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリクローズクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−30652(P2010−30652A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196681(P2008−196681)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】