説明

リチウムイオン電池のための合金組成物

【課題】リチウムイオン電池のための合金組成物を提供する。
【解決手段】本発明のリチウムイオン電池は、(a)シリコン、(b)アルミニウム、(c)遷移金属、(d)スズ、(e)インジウム、及び(f)イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含有する第6要素を含む合金組成物を含有するアノードを有する。前記合金組成物は、シリコンを含む非晶相並びに(1)スズ、(2)インジウム、及び(3)前記第6要素の金属間化合物を含む結晶相の混合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願番号第60/702,244号(2005年7月25日出願)及び米国特許出願番号第11/387,219号(2006年3月23日出願)からの優先権を主張し、その両方の開示は本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
リチウムイオン電池のための合金組成物が記載されている。
【背景技術】
【0003】
充電式リチウムイオン電池は、各種電子デバイスに含まれている。ほとんどの市販のリチウムイオン電池は、充電中の層間挿入機構を通じてリチウムを組み込むことが可能なグラファイトなどの物質を含有するアノードを有する。このような層間挿入型アノードは一般に、良好なサイクル寿命及びクーロン効率を示す。しかし、層間挿入型材料の単位質量当たりに組み込み可能なリチウム量は、比較的少ない。
【0004】
アノード材料の第2の部類は、充電中の合金機構を通じてリチウムを組み込むことが知られている。これらの合金型材料は、多くの場合、層間挿入型材料よりも、単位質量当たりより多量のリチウムを取り込むことができるが、リチウムを合金に加えることは通常、大きな体積変化を伴う。幾つかの合金型アノードは、相対的に貧弱なサイクル寿命及びクーロン効率を示す。これら合金型アノードの貧弱な性能は、リチウム化及び脱リチウム化中の2層領域の形成から生じる場合がある。前記2層領域は、一方の相が他方の相よりも大きな体積変化を受けた場合、合金内に内部応力を生じさせることがある。この内部応力は、時間とともにアノード材料の崩壊をもたらすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更に、リチウムの組み込みに伴う大きな体積変化は、合金、導電性希釈剤(例えば、炭素)粒子と典型的にはアノードを形成する結合剤との間の電気的接触の劣化をもたらすことがある。前記電気的接触の劣化は、次にアノードのサイクル寿命の低下をもたらすことになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
合金組成物、リチウムイオン電池、及びリチウムイオン電池の製造方法が提供される。より具体的には、前記リチウムイオン電池は、非晶相及びナノ結晶相の混合物である合金組成物を含有するアノードを有する。
【0007】
一態様では、リチウムイオン電池は、カソード、アノード、並びに当該アノード及び当該カソードの両方と電気的に接続されている電解質を含有しているものとして記載されている。アノードとしては、(a)35〜70モル・パーセントの量のシリコン、(b)1〜45モル・パーセントの量のアルミニウム、(c)5〜25モル・パーセントの量の遷移金属、(d)1〜15モル・パーセントの量のスズ、(e)15モル・パーセントまでの量のインジウム、及び(e)2〜15モル・パーセントの量の、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含む第6要素を含有する合金組成物が挙げられる。各モル・パーセントは、前記合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準にしている。前記合金組成物は、シリコンを含む非晶相並びにスズ、インジウム及び前記第6要素を含むナノ結晶相の混合物である。
【0008】
別の態様では、リチウムイオン電池の製造方法は、合金組成物を含有するアノードを調製すること、カソードを提供すること、並びに当該アノード及び当該カソードの両方と電気的に接続されている電解質を提供することを含むものとして記載される。前記合金組成物は、(a)35〜70モル・パーセントの量のシリコン、(b)1〜45モル・パーセントの量のアルミニウム、(c)5〜25モル・パーセントの量の遷移金属、(d)1〜15モル・パーセントの量のスズ、(e)15モル・パーセントまでの量のインジウム、及び(e)2〜15モル・パーセントの量の、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含む第6要素を含有する。各モル・パーセントは、前記合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準にしている。前記合金組成物は、シリコンを含む非晶相並びにスズ、インジウム及び前記第6要素を含むナノ結晶相の混合物である。
【0009】
更に別の態様では、合金組成物が記載されている。前記合金組成物は、(a)35〜70モル・パーセントの量のシリコン、(b)1〜45モル・パーセントの量のアルミニウム、(c)5〜25モル・パーセントの量の遷移金属、(d)1〜15モル・パーセントの量のスズ、(e)15モル・パーセントまでの量のインジウム、及び(e)2〜15モル・パーセントの量の、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含む第6要素を含有する。各モル・パーセントは、前記合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準にしている。前記合金組成物は、シリコンを含む非晶相並びにスズ、インジウム及び前記第6要素を含むナノ結晶相の混合物である。
【0010】
本明細書で使用する時、用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの(at least one)」と同じ意味で用いられ、記載された要素の1以上を意味する。
【0011】
用語「非晶質」とは、X線回折技術を使用して同定される、結晶性物質の長距離原子秩序特性を欠く物質を意味する。
【0012】
用語「結晶性」、「晶子」、及び「結晶」とは、X線回折技術を使用して同定される長距離秩序を有する物質を意味する。前記結晶性物質は、少なくとも約5ナノメートルの最大寸法を有する。用語「ナノ結晶の」、「ナノ微結晶」、及び「ナノ結晶」とは、約5〜約50ナノメートルの最大寸法を有する結晶性物質の部分集合を意味する。幾つかの結晶性物質は、ナノ結晶性物質より大きい(即ち、幾つかのものは、約50ナノメートルより大きい最大寸法を有する)。
【0013】
用語「電気化学的に活性」とは、リチウムイオン電池の充電中に典型的に遭遇する条件下にて、リチウムと反応する物質を意味する。前記電気化学的活性物質は、通常、金属又は合金の形態である。
【0014】
用語「電気化学的に不活性」とは、リチウムイオン電池の充電中に典型的に遭遇する条件下にて、リチウムと反応しない物質を意味する。前記電気化学的不活性物質は、通常、金属又は合金の形態である。
【0015】
用語「金属」とは、金属並びにシリコン及びゲルマニウムなどの半金属の両方を意味する。前記金属は、多くの場合、元素状態である。「金属間」化合物は、少なくとも2つの金属を含有する化合物である。
【0016】
用語「リチウム化」とは、リチウムを前記合金組成物に追加するプロセス(即ち、リチウムイオンが減少する)を意味する。
【0017】
用語「脱リチウム化」とは、リチウムを前記合金組成物から除去するプロセス(即ち、リチウム原子が酸化される)を意味する。
【0018】
用語「充電」とは、電気エネルギーを電池に提供するプロセスを意味する。
【0019】
用語「放電」とは、電気エネルギーを電池から除去するプロセス(即ち、放電は有益な仕事をするために電池を使用するプロセスである)を意味する。
【0020】
用語「容量」とは、アノード材料(例えば、合金組成物)中へ組み込み可能なリチウム量を意味し、ミリアンペア時(mAh)の単位を有する。用語「比容量」とは、アノード材料の単位質量当たりの容量を意味し、ミリアンペア時/グラム(mAh/g)の単位を有する。
【0021】
用語「カソード」とは、放電プロセス中に電気化学的還元が生じる電極を意味する。放電中、カソードはリチウム化する。充電中、リチウム原子はこの電極から除去される。
【0022】
用語「アノード」とは、放電プロセス中に電気化学的酸化が生じる電極を意味する。放電中、アノードは脱リチウム化する。充電中、リチウム原子はこの電極に追加される。
【0023】
本明細書で使用する時、「の範囲内の数字」は、当該範囲の両端点及び端点の間のあらゆる数字を含む。例えば、1〜10の範囲内の数字は、1、10、及び1と10との間のあらゆる数字を含む。
【0024】
上記の要約は、本発明の開示された各実施形態、又はあらゆる実施を記載するものではない。次に続く「発明を実施するための最良の形態」の項は、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】合金組成物Si60Al14FeTiInSn(MM)10のX線回折パターンであり、ここでMMは、ミッシュメタルを意味する。
【図2】合金組成物Si60Al14FeTiInSn(MM)10を含有する電極を有する電気化学セルの電圧対容量プロットである。
【図3】合金組成物Si60Al14FeTiInSn(MM)10のX線回折パターンである。
【図4】合金組成物Si60Al14FeTiInSn(MM)10を含有する電極を有する電気化学セルの電圧対容量プロットである。
【図5】合金組成物Si59Al1FeInS(登録商標)n(MM)10のX線回折パターンである。
【図6】合金組成物Si59Al16FeInS(登録商標)n(MM)10を含有する電極を有する電気化学セルの電圧対容量プロットである。
【図7】リチウム粉末及び合金組成物Si60Al14FeTiInSn(MM)10を含有する電極を有する電気化学セルの電圧対容量プロットである。
【0026】
リチウムイオン電池のアノード内に包含され得る合金組成物が、記載されている。前記合金組成物は、非晶相及びナノ結晶相の混合物である。巨大晶子(即ち、約50ナノメートル超の最大寸法を有する結晶)を含有する物質と比較して、本混合物は、前記合金組成物内の内部応力に起因した、徐々にアノードが崩壊するリスクを有利に減少させることができる。更に、完全に非晶質の物質と比較して、本混合物により、アノードが増加したリチウム化速度を有することになり得る。増加したリチウム化速度を有するアノードは、より高速で再充電することができる。
【0027】
一態様では、カソード、アノード、並びにカソード及びアノードの両方と電気的に接続されている電解質を含有しているリチウムイオン電池が、提供される。前記合金組成物は、(a)シリコン、(b)アルミニウム、(c)遷移金属、(d)スズ、(e)インジウム、及び(f)イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含む第6要素を含有する。前記非晶相は、シリコンを含有するが、前記ナノ結晶相は、シリコンを実質的に含まない。前記ナノ結晶相は、(1)スズ、(2)インジウム、及び(3)第6要素を含む金属間化合物を含有する。
【0028】
合金組成物の非晶質性は、X線回折パターンにおける鋭いピークの不存在により特徴づけることができる。前記X線回折パターンは、銅ターゲット(即ち、銅K1線、銅K2線、又はこれらの組み合わせ)を使用して、少なくとも5度(2θ)、少なくとも10度(2θ)、又は少なくとも15度(2θ)に対応する最大ピーク高さの半値ピーク幅を有するピークのような幅広いピークを有することができる。
【0029】
ナノ結晶性物質は、典型的には、約5ナノメートル〜約50ナノメートルの最大寸法を有する。前記結晶の寸法(crystalline size)は、シェラー(Sherrer)方程式を使用してX線回折ピークの幅から決定することができる。狭いX線回折ピークは、大きな結晶の寸法(crystal sizes)に相当する。ナノ結晶性物質のX線回折ピークは、典型的には、銅ターゲット(即ち、銅K1線、銅K2線、又はこれらの組み合わせ)を使用して、5度未満(2θ)、4度未満(2θ)、3度未満(2θ)、2度未満(2θ)、又は1度未満(2θ)に対応する最大ピーク高さの半値ピーク幅を有する。前記ナノ結晶性物質、銅ターゲットを使用して、少なくとも0.2度(2θ)、少なくとも0.5度(2θ)、又は少なくとも1度(2θ)に対応する最大ピーク高さの半値ピーク幅を有する。
【0030】
一般に、リチウム化速度はナノ結晶性物質の方が非晶質物質より大きいために、前記合金組成物中にはナノ結晶性物質がいくらか包含されることが望ましい。しかし、結晶相内での元素状シリコンの存在は、金属質のLi/Liイオン参照電極に対して電圧が約50mV未満に降下した際に、結晶性のLi15Siがサイクル中に形成されることになる。リチウム化中の結晶性のLi15Siの形成は、アノードのサイクル寿命に悪影響を及ぼすことになる(即ち、リチウム化及び脱リチウム化のサイクル毎に容量が減少する傾向がある)。Li15Si結晶の形成を最少化又は防止するためには、シリコンが非晶相内に存在し、且つリチウム化及び脱リチウム化の反復サイクル後に、当該非晶相内にシリコンがとどまるのが有利である。遷移金属の追加は、非晶質シリコン含有相の形成を促進し、且つ結晶性シリコン含有層(例えば、結晶性元素状シリコン又は結晶性シリコン含有化合物類)の形成を最少化又は防止する。
【0031】
前記合金組成物のナノ結晶相としては、スズが挙げられるが、これはシリコンの代わりとなる別の電気的活性物質である。しかし、結晶性元素状スズの存在は、アノードをリチウム化及び脱リチウム化の反復サイクルにさらした際に、容量に対して有害となり得る。本明細書で使用する時、用語「元素状」とは、別の元素と金属間化合物のような化合物の形態にて組み合わされるのではなく、元素形態にて(即ち、純元素として)存在する周期表の元素(例えば、スズ、シリコン、インジウム等)を意味する。
【0032】
結晶性元素状スズの形成を最小化するために、(1)スズ、(2)インジウム、及び(3)イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含有する第6要素を含有する金属間化合物を前記合金組成物へ添加する。前記金属間化合物は、例えば、化学式[Sn(1−x)InMであることができ、式中、Mは、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含有する要素であり、且つxは、1未満の正数である。インジウム及び前記第6要素が存在しない場合、幾つかの形成プロセスを使用して結晶の寸法(crystalline size)を制御することが困難となり得る。例えば、前記第6要素のいずれも使用することなく、溶融紡糸技術を使用して合金を形成した場合、元素状スズの比較的大きな結晶が形成される。
【0033】
インジウムは、結晶性元素状スズの形成を阻害し、且つ前記合金組成物の容量を増大させる傾向がある。更に、インジウムの追加は、合金組成物を形成し、且つ巨大結晶相ではなくむしろ非晶相が形成される可能性を増大させる溶融紡糸などの溶融加工技術の使用を促進する傾向がある。
【0034】
前記合金組成物としては、すべてのシリコンを含む非晶相が挙げられる。前記非晶相は、典型的には、アルミニウムのすべて又は部分及び遷移金属のすべて又は部分を含む。前記合金は、スズ、インジウム、及び前記第6要素を含有する金属間化合物を含むナノ結晶相を更に包含する。前記ナノ結晶相は、スズのすべて又は部分、インジウムのすべて又は部分、及び前記第6要素のすべて又は部分を包含することができる。前記ナノ結晶相は、元素状スズ、元素状シリコン、元素状インジウム、及びインジウム・スズ2元金属間化合物を実質的に含まない。本明細書で使用する時、用語「本質的に含まない」とは、前記ナノ結晶相に関する場合、物質(例えば、元素状シリコン、元素状スズ、元素状インジウム、又はインジウム・スズ2元金属間化合物)が、X線回折技術を使用して検出できないことを意味する。
【0035】
前記合金組成物の比容量(即ち、グラム当たりの容量)は、通常、少なくとも200mAh/gである。幾つかの実施形態では、前記比容量は、少なくとも400mAh/g、少なくとも600mAh/g、少なくとも800mAh/g、少なくとも1000mAh/g、少なくとも1200mAh/g、少なくとも1600mAh/g、又は少なくとも2000mAh/gであり得る。前記比容量は、典型的には、リチウム化及び脱リチウム化の第2サイクルの放電部分の間に測定される。
【0036】
本明細書で使用する時、用語「モル・パーセント」は、合金組成物の成分に関する場合、合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数に基づいて計算される。例えば、シリコン、アルミニウム、遷移金属、スズ、インジウム、及び第6要素を含有する合金中のシリコンのモル・パーセントは、シリコンのモル数に100を乗じ、且つ合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数(例えば、シリコンのモル数+アルミニウムのモル数+遷移金属のモル数+スズのモル数+インジウムのモル数+第6要素のモル数)でこの結果を除することにより計算する。
【0037】
全シリコンは、一般に、非晶相である。シリコンは、当該合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準にして、35〜70モル・パーセントの量で前記合金組成物中に存在する。シリコンの量が少なすぎる場合、容量は受け入れ難いほど小さくなる。しかし、シリコンの量が多すぎる場合、シリコン含有結晶が形成されやすい。結晶性シリコンの存在は、少なくとも幾つかの実施形態では、金属質のLi/Liイオン参照電極に対して電圧が約50mV未満に降下した際に、Li15Siがサイクル中に形成されることになる。結晶性のLi15Siは、リチウムイオン電池のサイクル寿命に悪影響を与えることがある。
【0038】
前記合金組成物は、少なくとも35モル・パーセント、少なくとも45モル・パーセント、少なくとも50モル・パーセント、少なくとも55モル・パーセント、又は少なくとも60モル・パーセントのシリコンを含有する。前記合金組成物は、70モル・パーセントまでの、65モル・パーセントまでの、又は60モル・パーセントまでのシリコンを含有することができる。例えば、前記合金組成物は、40〜70モル・パーセント、50〜70モル・パーセント、55〜70モル・パーセント、55〜65モル・パーセントのシリコンを含有することができる。
【0039】
アルミニウムは、前記合金組成物中に存在する別の元素である。アルミニウムは、典型的には非晶相で存在し、且つ遷移金属とともに、すべてのシリコンを含有する非晶相の形成を促進する。アルミニウムは、電気化学的に活性、電気化学的に不活性、又はこれらの組み合わせであり得る。アルミニウムは、元素状アルミニウムとして存在し、多くの場合電気化学的に活性である。電気化学的に活性なアルミニウムは、合金組成物の容量を向上させることができる。しかし、アルミニウムが、遷移金属との金属間化合物として存在する場合、電気化学的に不活性であり得る。電気化学的不活性物質として、アルミニウム金属間化合物は、電気化学的に活性な構成成分のマトリックスとして機能することができる。
【0040】
アルミニウムは、当該合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準にして、1〜45モル・パーセントの量で前記合金組成物中に存在する。前記合金組成物へのアルミニウムの追加は、多くの場合、融点を低下させ、合金組成物を形成するための溶融紡糸などの各種溶融加工技術の使用を容易にする。溶融加工技術は、多くの場合、スパッタリングのような技術よりも安上がりである。アルミニウム濃度が低すぎる場合、すべてのシリコンを含有する非晶相の形成がより困難となり得る。しかし、アルミニウムが多すぎると、リチウムイオン電池のサイクル寿命に悪影響を与え得る。即ち、アルミニウムが多すぎると、アノードをリチウム化及び脱リチウム化の反復サイクルにさらした場合に、受け入れ難いほどの大きな容量減少をもたらすことがある。
【0041】
前記合金組成物は、45モル・パーセントまで、40モル・パーセントまで、35モル・パーセントまで、30モル・パーセントまで、25モル・パーセントまで、20モル・パーセントまで、又は15モル・パーセントまでのアルミニウムを含有する。前記合金組成物中のアルミニウムは、多くの場合、少なくとも1モル・パーセント、少なくとも2モル・パーセント、少なくとも5モル・パーセント、又は少なくとも10モル・パーセントの量で存在する。例えば、前記合金組成物は、2〜40モル・パーセント、3〜40モル・パーセント、5〜40モル・パーセント、10〜40モル・パーセント、10〜30モル・パーセント、又は10〜20モル・パーセントのアルミニウムを含有することができる。
【0042】
前記合金組成物はまた、遷移金属を、前記合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準にして、5〜25モル・パーセントの量で含む。好適な遷移金属としては、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、タングステン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属は、アルミニウムと組み合わされて、非晶相の形成を促進する。合金組成物中に含まれる遷移金属が少なすぎる場合、すべてのシリコンを含む非晶相の形成がより困難となり得る。しかし、遷移金属濃度が高すぎる場合、遷移金属が電気化学的に不活性であるため又は他の構成成分例えばアルミニウムと結合して電気化学的に不活性な金属間化合物を形成するために、合金組成物の容量が受け入れ難いほど小さくなることがある。
【0043】
前記遷移元素は、少なくとも5モル・パーセント、少なくとも8モル・パーセント、少なくとも10モル・パーセント、又は少なくとも12モル・パーセントの量で存在する。前記合金組成物は、25モル・パーセントまでの、20モル・パーセントまでの、又は15モル・パーセントまでの遷移金属を含有する。例えば、前記合金組成物は、5〜20モル・パーセント、5〜15モル・パーセント、8〜25モル・パーセント、8〜20モル・パーセント、又は10〜25モル・パーセントの遷移金属を含む。
【0044】
スズもまた、前記合金組成物中に存在する別の元素である。スズは、典型的には、(1)インジウム及び(2)イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含有する第6金属との金属間化合物として、ナノ結晶相中に存在する。前記ナノ結晶性物質は、多くの場合、化学式[Sn(1−x)InMを持ち、式中、Mは、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含有する要素であり、且つxは、1未満の正数である。スズ、インジウム、及び第6要素の相対比率に応じて、複数のナノ結晶性物質が前記合金組成物中に存在することができる。例えば、前記ナノ結晶性物質は、[Sn(1−x)InMに加えて、SnM、InM、又はその両方を含むことができる。
【0045】
前記ナノ結晶相は、前記合金組成物のリチウム化速度を、特にリチウム化及び脱リチウム化の第1サイクル中にて増大させることができる。理論に束縛されることを望まないが、前記ナノ結晶相は、前記非晶相を通る管に模してもよい。前記ナノ結晶相は、合金組成物の至るところにリチウムの伝導経路を提供してよく、これはリチウムがナノ結晶相と非晶相との間の粒界に沿って素早く拡散することを可能にする。
【0046】
前記合金組成物は、前記合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準として、1〜15モル・パーセントのスズを含有する。存在するスズが多すぎる場合、ナノ結晶性スズ含有金属間化合物よりもむしろ結晶性スズが形成される。結晶性元素状スズは、アノードをリチウム化及び脱リチウム化の反復サイクルにさらした際に、容量に悪影響を及ぼす。即ち、スズが多すぎると、アノードをリチウム化及び脱リチウム化の反復サイクルにさらした場合に、受け入れ難い程の容量減少を引き起こすことがある。しかし、スズの量が少なすぎる場合、リチウム化速度は非晶質物質のそれと同程度になる場合がある。
【0047】
スズは、15モル・パーセントまでの、12モル・パーセントまでの、10モル・パーセントまでの、9モル・パーセントまでの、8モル・パーセントまでの、7モル・パーセントまでの、6モル・パーセントまでの、又は5モル・パーセントまでの量で存在する。スズは、通常、少なくとも1モル・パーセント、少なくとも2モル・パーセント、少なくとも3モル・パーセント、少なくとも4モル・パーセント、又は少なくとも5モル・パーセントの量で存在する。例えば、前記合金組成物は、1〜12モル・パーセント、1〜10モル・パーセント、1〜9モル・パーセント、2〜9モル・パーセント、2〜8モル・パーセント、又は3〜9モル・パーセントのスズを含有することができる。
【0048】
インジウムは、当該合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準にして、15モル・パーセントまでの量で前記合金組成物中に存在する。インジウムは、スズ及び前記第6要素をも含む金属間化合物の形態での前記ナノ結晶相の一部である。前記合金組成物は、典型的には、結晶性元素状インジウムを実質的に含まない。前記合金組成物は、典型的には、Sn(1−y)Inなどの結晶性2元インジウム・スズ金属間化合物を実質的に含まず、式中、yは1未満の数字であり、例えば、Sn0.8In0.2である。
【0049】
前記ナノ結晶性金属間化合物中のインジウムの存在は、典型的には、前記合金組成物のサイクル寿命を向上させる。より具体的には、インジウムは、リチウム化及び脱リチウム化の繰り返しサイクル後の容量保持を向上させる。存在するインジウムが多すぎる場合、スズ及び前記第6要素のナノ結晶性金属間化合物よりもむしろ結晶性元素状インジウムが形成され得る。アノードが、リチウム化及び脱リチウム化の繰り返しサイクル(repetitve cycles)にさらされた場合、結晶性元素状インジウムの容量が不都合にも減少することになり得る。
【0050】
前記合金組成物は、多くの場合、少なくとも0.1モル・パーセント、少なくとも0.2モル・パーセント、少なくとも0.5モル・パーセント、又は少なくとも1モル・パーセントのインジウムを含有する。前記合金組成物中のインジウムの量は、多くの場合、15モル・パーセントまで、12モル・パーセントまで、10モル・パーセントまで、8モル・パーセントまで、又は6モル・パーセントまでである。例えば、前記合金組成物は、0.1〜15モル・パーセント、0.1〜10モル・パーセント、0.2〜10モル・パーセント、0.5〜10モル・パーセント、1〜10モル・パーセント、又は2〜10モル・パーセントのインジウムを含有することができる。
【0051】
第6要素は、前記合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準として、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを、2〜15モル・パーセントの量で含有する前記合金組成物中に含まれている。前記第6要素は、前記ナノ結晶相中に含まれており、且つスズ及びインジウムと結合して、金属間化合物を形成する。前記合金組成物が、多すぎる第6要素を含有する場合には、前記第6要素が典型的には、電気化学的に不活性であるために、容量が減少する場合がある。一方、前記第6要素の量が少なすぎる場合には、金属間化合物の形態よりも、むしろ結晶性元素状スズの形態にて、スズが幾分存在し得る。結晶性元素状スズの存在は、リチウムイオン電池をリチウム化及び脱リチウム化の反復サイクルにさらした際に、容量を低下させることになり得る。前記ナノ結晶相は、シリコンを前記第6要素と組み合わせることにより形成されるシリサイドなどの化学量論的化合物を実質的に含まない。シリサイドなどの化学量論的化合物は、化合物内の要素(複数)間で、有理数である比率を持つ規定比率を有する。
【0052】
好適なランタニド元素としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムが挙げられる。好適なアクチニド元素としては、トリウム、アクチニウム、及びプロトアクチニウムが挙げられる。幾つかの合金組成物は、例えばセリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、又はこれらの組み合わせから選択されるランタニド元素を含有する。
【0053】
前記第6要素は、ミッシュメタルであることができ、これは各種ランタニドの合金である。幾つかのミッシュメタルは、例えば45〜60重量%のセリウム、20〜45重量%のランタン、1〜10重量%のプラセオジム、及び1〜25重量%のネオジムを含有する。他のミッシュメタルは、30〜40重量%のランタン、60〜70重量%セリウム、1重量%未満のプラセオジム、及び1重量%未満のネオジムを含有する。更に他のミッシュメタルは、40〜60重量%のセリウム及び40〜60重量%のランタンを含有する。前記ミッシュメタルは、多くの場合少量の(例えば、1重量%未満の、0.5重量%未満の、又は0.1重量%未満の)不純物、例えば鉄、マグネシウム、シリコン、モリブデン、亜鉛、カルシウム、銅、クロム、鉛、チタン、マンガン、炭素、イオウ、及びリンなどを含む。前記ミッシュメタルは、多くの場合少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%の含有量のランタニドを有する。アルファ・エイサー社(Alfa Aesar)(マサチューセッツ州、ワードヒル)より市販されている、99.9重量%純度のミッシュメタルの一例は、約50重量%のセリウム、18重量%のネオジム、6重量%のプラセオジム、22重量%のランタン、及び3重量%の他の希土類を含有する。
【0054】
前記合金組成物は、少なくとも2モル・パーセント、少なくとも3モル・パーセント、又は少なくとも5モル・パーセントの前記第6要素を含有する。前記第6要素は、15モル・パーセントまで、12モル・パーセントまで、又は10モル・パーセントまでの量で、前記合金組成物中に存在することができる。例えば、前記合金組成物は、3〜15モル・パーセント、5〜15モル・パーセント、3〜12モル・パーセント、又は3〜10モル・パーセントの前記第6要素を含有することができる。幾つかの実施形態では、前記第6要素は、ランタニド元素又はランタニド元素(複数)の混合物である。
【0055】
前記合金組成物は、アルカリ土類金属例えばカルシウム、バリウム、マグネシウム等を実質的に含まない。本明細書で使用する時、アルカリ土類金属に関して用語「本質的に含まない」とは、前記合金組成物が1モル・パーセント以下のアルカリ土類、0.5モル・パーセント以下のアルカリ土類、0.2モル・パーセント以下のアルカリ土類、又は0.1モル・パーセント以下のアルカリ土類を含有することを意味する。アルカリ土類が、前記合金組成物中に存在する場合、典型的には、別の構成成分の不純物として存在し、且つ意図的に追加されない。
【0056】
前記合金組成物は、リチウムなどのアルカリ金属を更に包含することができる。第1リチウム化反応に先だって、前記合金組成物は、典型的には、リチウムをほとんど含有しないか又は全く含有しない。前記第1リチウム化後、リチウム量は変化し得るが、典型的には、前記リチウムイオン電池が放電された後であっても、ゼロより大きい。即ち、前記合金組成物を含有するアノードは、多くの場合、少なくとも少量の不可逆容量を有する。
【0057】
前記合金組成物は、多くの場合、式Iを持つ。
SiAlSnInLi (I)
[式中、aは、35〜70の範囲内の数字であり、bは、1〜45の範囲内の数字であり、Tは、遷移金属であり、cは、5〜25の範囲内の数字であり、dは、1〜15の範囲内の数字であり、eは、15までの数字であり、Mは、イットリウム、ランタニド元素、又はこれらの組み合わせであり、fは、2〜15の範囲内の数字であり、及びa+b+c+d+e+fの合計は、100に等しい。]変数gは、0〜[4.4(a+d+e)+b]の範囲内の数字である。
【0058】
化学式Iに従う幾つかの例示組成物において、前記変数aは、40〜65の範囲内の数字であり、bは、1〜25の範囲内の数字であり、cは、5〜25の範囲内の数字であり、dは、1〜15の範囲内の数字であり、eは、15までの数字であり、且つfは、2〜15の範囲内の数字である。化学式Iに従う他の例示組成物において、前記変数aは、40〜55の範囲内の数字であり、bは、25〜45の範囲内の数字であり、cは、5〜25の範囲内の数字であり、dは、1〜15の範囲内の数字であり、eは、15までの数字であり、且つfは、2〜15の範囲内の数字である。更に他の例示組成物では、前記変数aは、55〜65の範囲内の数字であり、bは、10〜20の範囲内の数字であり、cは、5〜25の範囲内の数字であり、dは、1〜15の範囲内の数字であり、eは、15までの数字であり、且つfは、2〜15の範囲内の数字である。
【0059】
アノードの合金組成物は、材料を調製するために選択された技術に応じた形態である、薄膜又は粉末の形態であることができる。前記合金組成物の好適な製造方法としては、スパッタリング、化学的気相成長、真空蒸着、溶融加工、例えば溶融紡糸、スプラット冷却法、スプレー噴霧、電気化学的堆積、及びボールミル粉砕が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
前記合金組成物の製造方法は、多くの場合、非晶質前駆体物質を形成すること及び次に当該前駆体物質を約150℃〜約400℃の範囲の温度でアニールすることを含む。アニーリングによって、完全な非晶質である前記前駆体物質は、非晶相及びナノ結晶相の混合物である合金組成物へと変換されやすい。前記アニーリング工程は、典型的には、前記前駆体物質をアルゴン又はヘリウムなどの不活性環境下で加熱することにより実施される。
【0061】
スパッタリングは、非晶質前駆体の製造方法の1つである。異なる元素を、同時に又は連続的にスパッタリングすることができる。例えば、前記元素(複数)は、銅基板などの基板上にスパッタリングで連続的にコーティングすることができる。前記基板は、連続的に稼動する複数のスパッタリング源の下で連続的に回転する回転台(例えば、63.5cm(25インチ)の直径)の端近傍に配置させることができる。1つの物質層は、基体を第1スパッタリング源の下を通過させる際に堆積させることができ、異なる物質の追加の層は基板を他のスパッタリング源の下を通過させる際に堆積させることができる。各スパッタリング源から堆積される物質の量は、回転台の回転速度を変化させることにより及びスパッタリング速度を変化させることにより制御することができる。好適なスパッタリング方法は、更に米国特許第6,203,944B1号(ターナー(Turner)ら)、米国特許第6,436,578B1号(ターナーら)、及び米国特許第6,699,336B2号(ターナーら)に記載されている。
【0062】
溶融加工は、前駆体を製造するために、又は非晶質物質とナノ結晶性物質との混合物である合金組成物を製造するために使用可能な別の手順である。このような方法は、一般に、例えば「非晶質金属合金(Amorphous Metallic Alloys)」(F・E・ルボルスキー(F.E. Luborsky)編、第2章、バターワース&Co社(Butterworth & Co., Ltd.)、1983年)に記載されている。反応物を含有するインゴットは、高周波電界内で溶融することができ、次にノズルを通して、冷却可能な回転ホイール(例えば、銅合金製ホイール)の表面上へ放出できる。回転ホイールの表面温度が、実質的に溶融物の温度よりも低いために、回転ホイールの表面に接触すると、溶融物は急冷される。急速冷却は、結晶性物質の形成を最少化し、非晶質物質の形成を促進する。好適な溶融加工方法は、更に米国特許第6,699,336B2号(ターナー、ら)に記載されている。前記溶融処理物質は、例えばリボン又は薄膜の形態であることができる。
【0063】
幾つかの溶融処理手順では、冷却速度及び特定物質に応じて、結果として得られる物質は、非晶相並びにスズ、インジウム、及び第6要素の金属間化合物を含む単一のナノ結晶相との混合物となり得る。しかし、他の溶融処理手順では、前記溶融処理物質は、(1)非晶相、(2)スズ、インジウム及び第6要素の金属間化合物を含む3元素ナノ結晶相、及び(3)結晶性(例えば、ナノ結晶性)元素状スズ相、結晶性インジウム相、化学式Sn(1-y)Inyの結晶性2元スズ・インジウム相(式中、yは1未満の正数であり、例えば、Sn0.8In0.2である)、又はこれらの組み合わせを含有する前駆体である。前記結晶性元素状スズ相、結晶性インジウム相、及び結晶性2元スズ・インジウム相は、多くの場合、前記溶融処理前駆体物質を約150℃〜約400℃の範囲の温度にて、不活性雰囲気下でアニールすることによって除去することができる。更に他の溶融処理方法では、前記溶融処理物質は、非晶質物質のみを含有する前駆体である。前記前駆体は、約150℃〜約400℃の範囲内の温度にて、不活性雰囲気下でアニールして、非晶相とナノ結晶相の両方を含有する前記合金組成物を製造することができる。
【0064】
スパッタリングされた又は溶融処理された合金組成物は、更に処理されて粉末状物質を製造することができる。例えば、前記合金組成物のリボン又は薄膜を粉砕して、粉末を形成することができる。前記粉末は、任意のアニーリング工程の前後において形成することができる。代表的な粉末は、60マイクロメートルを超えない、40マイクロメートルを超えない、又は20マイクロメートルを超えない最大寸法を有する。前記粉末は、多くの場合、少なくとも1マイクロメートル、少なくとも2マイクロメートル、少なくとも5マイクロメートル、又は少なくとも10マイクロメートルの最大寸法を有する。例えば、好適な粉末は多くの場合、1〜60マイクロメートル、10〜60マイクロメートル、20〜60マイクロメートル、40〜60マイクロメートル、1〜40マイクロメートル、2〜40マイクロメートル、10〜40マイクロメートル、5〜20マイクロメートル、又は10〜20マイクロメートルの最大寸法を有する。
【0065】
幾つかの実施形態では、前記アノードは、エラストマー系高分子結合剤中に分散した前記合金組成物を含有する。代表的なエラストマー系高分子結合剤としては、エチレン、プロピレン、又はブチレンモノマー類から調製したものなどのポリオレフィン類、フッ化ビニリデンモノマー類から調製したものなどのフッ素化ポリオレフィン類、ヘキサフルオロプロピレンモノマーから調製したものなどの過フッ素化ポリオレフィン類、過フッ素化ポリ(アルキルビニルエーテル類)、過フッ素化ポリ(アルコキシビニルエーテル類)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。エラストマー系高分子結合剤の具体例としては、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、及びプロピレンのターポリマー類、並びにフッ化ビニリデン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー類が挙げられる。市販のフッ素系エラストマー類としては、ダイネオン(Dyneon, LLC)(ミネソタ州、オークデール)により、「FC−2178」、「FC−2179」、及び「BRE−7131X」の売買表記で販売されているものが挙げられる。
【0066】
幾つかのアノードでは、前記エラストマー系結合剤が架橋している。架橋により、ポリマーの機械的特性を向上させることができ、且つ合金組成物と存在するかもしれない任意の導電性希釈剤との間の接触を向上させることができる。
【0067】
他のアノードでは、前記結合剤は米国特許出願第11/218,448号(2005年9月1日出願)に記載されている脂肪族又は脂環式ポリイミドなどのポリイミドである。このようなポリイミド結合剤は、化学式(II)の繰返し単位を有する。
【0068】
【化1】

【0069】
[式中、Rは、脂肪族又は脂環式であり、Rは、芳香族、脂肪族、又は脂環式である。]
前記脂肪族又は脂環式ポリイミド結合剤は、例えば、ポリアミド酸を形成し、続いて化学的又は熱的環化によりポリイミドを形成する、脂肪族又は脂環式ポリ酸無水物(例えば、二酸無水物)と芳香族、脂肪族、又は脂環式ポリアミン(例えば、ジアミン又はトリアミン)との間の縮合反応を使用して形成されてよい。前記ポリイミド結合剤はまた、更に芳香族ポリ酸無水物(例えば、芳香族二酸無水物)を含有する反応混合物を使用して、又は芳香族ポリ酸無水物(例えば、芳香族二酸無水物)及び脂肪族又は脂環式ポリ酸無水物(例えば、脂肪族又は脂環式二酸無水物)から誘導されるコポリマー類を含有する反応混合物から形成してもよい。例えば、ポリイミド中の約10%〜約90%のイミド基が、脂肪族又は脂環式部分と結合してよく、且つ約90%〜約10%のイミド基が、芳香族部分と結合してよい。代表的な芳香族ポリ酸無水物は、例えば米国特許第5,504,128号(ミズタニら)に記載されている。
【0070】
導電性希釈剤は、アノード中で前記合金組成物と混合することができる。代表的な導電性希釈剤としては、炭素、金属、金属窒化物、金属炭化物、金属シリサイド、金属ホウ化物が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかのアノードでは、前記導電性希釈剤は、「スーパーP」及び「スーパーS」の売買表記でMMMカーボン(ベルギー)又は「シャウィニガンブラック」の売買表記でシェブロン・ケミカル(Chevron Chemical Co.)(テキサス州ヒューストン)より市販されているもののようなカーボンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、グラファイト、炭素繊維、又はこれらの組み合わせである。
【0071】
アノードは、合金組成物及び導電性希釈剤のエラストマー系高分子結合剤への接着を促進する接着促進剤を更に包含することができる。接着促進剤及びエラストマー系高分子結合剤の組み合わせは、リチウム化及び脱リチウム化の繰り返しサイクル中に前記合金組成物中に現れることがある体積変化に、少なくとも部分的に適応する。前記接着促進剤は、前記結合剤(例えば、官能基の形態にて)の一部であることができ、又は合金組成物、導電性希釈剤、又はこれらの組み合わせの上のコーティングの形態であることができる。接着促進剤の例としては、米国特許出願第2003/0058240号に記載されている様なシラン、チタン酸塩、及びホスホン酸塩類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
アノードは、電池組み立て工程に先だって又はその間に、部分的にリチウム化することができる。リチウムをアノードに添加することにより、放電中に電池から供給されるエネルギーを増大させることができる。幾つかの実施形態では、リチウム粉末、合金組成物、及び導電性希釈剤を高分子結合剤の溶液中に分散することにより、アノードを部分的にリチウム化する。前記分散体は、電極を形成するために、コーティングし、乾燥して、あらゆる溶媒を除去し、硬化させることができる。他の実施形態では、リチウムホイル又はリチウム金属粉末を、予め硬化させた電極の表面に加えることができる。リチウム金属粉末の場合、前記粉末は(1)前記粉末を直接に電極表面上に撒くことによって、又は(2)非反応性の揮発性溶媒中のリチウム金属粉末を分散させ、続いて前記リチウム分散体を電極表面上に均一にコーティングし、溶媒を蒸発させることによって分配することができる。次に、前記リチウムホイル又はリチウム金属粉末は、カレンダー工程によって電極へ加えられる。リチウムを含有するアノードは、電池の組立前に加熱されて、リチウムをアノードの他の構成成分と反応させることができるが、このようなアノードは典型的に、加熱無しで電池へと組み立てられる。電池組み立て工程中、電解質が添加された際に、リチウムはアノードコーティングの他の構成成分と反応し得る。
【0073】
任意の好適な電解質が、リチウムイオン電池内に含まれることができる。前記電解質は、固体又は液体の形態であることができる。代表的な固体電解質としては、高分子電解質、例えばポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素含有コポリマー類、ポリアクリロニトリル、又はこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な液体電解質としては、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジオキソラン、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン(dioxalan)−2−オン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。前記電解質としては、リチウム塩電解質例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SOCFCF、などが挙げられる。
【0074】
前記電解質は、酸化還元シャトル分子即ち、充電中にカソードで酸化されて、アノードに移動し、そこで還元されて非酸化の(又はより少なく酸化された)シャトル種を再形成し、再度カソードに移動することができる、電気化学的に可逆性の物質を含むことができる。代表的な酸化還元シャトル分子としては、米国特許第5,709,968号(シミズ)、米国特許第5,763,119号(アダチ)、米国特許第5,536,599号(アランギール(Alamgir)ら)、米国特許第5,858,573号(エイブラハム(Abraham)ら)、米国特許第5,882,812号(ヴィスコ(Visco)ら)、米国特許第6,004,698号(リチャードソン(Richardson)ら)、米国特許第6,045,952号(カー(Kerr)ら)、及び米国特許第6,387,571B1号(レイン(Lain)ら)、PCT国際公開特許出願WO01/29920A1(リチャードソン(Richardson)ら)、及び米国特許出願シリアル番号第11/130850号(2005年5月17日出願、ダーン(Dahn)ら)、及び米国特許出願シリアル番号第11/130849号(2005年5月17日出願、ダーン(Dahn)ら)、米国特許仮出願番号第60/743,314号(2006年2月17日出願)(ダーン(Dahn)ら)、及び米国特許出願公開第2005−0221196A1に記載されるものが挙げられる。
【0075】
リチウムイオン電池に用いるために周知の任意の好適なカソードを利用できる。幾つかの代表的なカソードは、リチウム遷移金属酸化物、例えばリチウムコバルト二酸化物、リチウムニッケル二酸化物、及びリチウムマンガン二酸化物を包含する。他の代表的なカソード類は、米国特許第6,680,145B2号(オブロヴァック(Obrovac)ら)に開示されており、リチウム含有グレインと組み合わされた遷移金属グレインを包含する。好適な遷移金属グレインとしては、例えば鉄、コバルト、クロム、ニッケル、バナジウム、マンガン、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ニオビウム、又はこれらの組み合わせが挙げられ、約50ナノメートル以下の粒径を有する。好適なリチウム含有グレインは、酸化リチウム、硫化リチウム、ハロゲン化リチウム(例えば、塩化物類、臭化物類、ヨウ化物類、又はフッ化物類)、又はこれらの組み合わせから選択されることができる。これらの粒子は、単独で又はリチウム遷移金属酸化物物質、例えばリチウムコバルト二酸化物と組み合わせて用いることができる。
【0076】
固体電解質を有するリチウムイオン電池の幾つかは、カソードがLiV又はLiVを含むことができる。液体電解質を有する他のリチウムイオン電池では、カソードがLiCoO、LiCo0.2Ni0.8、LiMn、LiFePO、又はLiNiOを含むことができる。
【0077】
リチウムイオン電池は、多様な用途における電源として使用することが可能である。例えば、リチウムイオン電池は、コンピュータ及び各種ハンドヘルド機器、車両、動力工具、写真機材、及び通信機器などの電子デバイス用電源にて使用することが可能である。複数のリチウムイオン電池を組み合わせて、電池パックを提供することができる。
【実施例】
【0078】
アルミニウム、シリコン、鉄、チタン、ジルコニウム、スズ、及びコバルトは、アルファ・エイサー(Alfa Aesar)(マサチューセッツ州ワードヒル)又はアルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手した。インジウムは、インジウム・コーポレーション(米国、ニューヨーク州、ウチカ)から入手した。これらの物質は、少なくとも99.8重量%の純度を有する。希土類元素の混合物(ミッシュメタル(MM)としても周知)もまた、アルファ・エイサー(Alfa Aesar)から、50重量%のセリウム、18重量%のネオジム、6重量%のプラセオジム、22重量%のランタン、及び4重量%の他の希土類元素類を含有し(略)、希土類元素含有量が最低99.9重量%にて得られた。
【0079】
合金組成物は、電極へと形成され、リチウム金属対極を使用して電気化学セルとして特徴付けられた。
【0080】
(実施例1):Si60Al14FeTiInS(登録商標)n(MM)10
合金組成物Si60Al14FeTiInS(登録商標)n(MM)10は、17.606gのシリコンチップ、3.947gのアルミニウム散弾、4.668gの鉄塊、0.500gのスポンジ状チタン、7.441gのスズ散弾、1.200gのインジウム、及び14.639gのミッシュメタル塊を混合することによって調製した。前記混合物は、アルゴンを充填したアーク炉(アドバンスト・バキューム・システムズ(Advanced Vacuum Systems)(マサチューセッツ州エーア)から)内の炭素炉上にて一緒に溶融させた。結果として得られるインゴットは、Si60Al14FeTiSnInMmの組成を有し、全方向にて約1cmの寸法を有する断片へと粉砕した。
【0081】
次に、前記インゴットは、回転冷却ホイール上に位置する0.35mmの開口部を備えた円筒形石英ガラスるつぼ(16mm内径X140mm長さ)を有する真空槽を含んだ溶融紡糸装置内にて溶融紡糸により更に処理した。前記回転冷却ホイール(10mm厚×203mm直径)を、ノンフェラス・プロダクツ(Nonferrous Products, Inc.)(インディアナ州フランクリン)より市販されている銅合金(Ni−Si−Cr−Cu C18000合金、0.45重量%クロム、2.4重量%ニッケル、0.6重量%シリコン、残部は銅)から作製した。処理に先だって、前記冷却ホイールのエッジ面をラビング用化合物(3M(ミネソタ州セントポール)より、インペリアル・マイクロフィニッシング(IMPERIAL MICROFINISHING)の売買表記で入手可能)を使用して研磨し、次に鉱油でふき取って薄膜を残した。
【0082】
15gのインゴットを前記るつぼ内に配置した後、溶融紡糸装置を10.7Pa(80mT)(ミリトール)まで真空引きし、次にヘリウムガスで満たして26.7kPa(200T)とした。前記インゴットは、高周波導入を使用して溶融した。温度が、1300℃に達した時点で、53.3kPa(400T)のヘリウム圧力が、溶融合金組成物表面へ加わり、溶融物質及びサンプルがノズルを通って回転(526.8rad/s(毎分5031回転))冷却ホイール上へと押し出される。1mmの幅及び10マイクロメートルの厚さを有するリボンストリップが、形成された。
【0083】
図1は、結果として得られる溶融紡糸済みリボンサンプルのX線回折(XRD)パターン(銅ターゲット(Kα1、Kα2線)を備えたシーメンスD500X線回折計により測定)を示す。前記XRDパターンは、前記合金が非晶相及びナノ結晶相を含有することを示す。幅広のこぶは、非晶質物質の存在を示唆し、個々のピークは、ナノ結晶性物質の存在を示唆する。前記XRDパターンには、元素状シリコン、元素状スズ、元素状インジウム、又はスズとインジウムとの2元素金属間化合物に関連する鋭いピークが欠如している。
【0084】
以下の構成成分を、2個の10mm直径及び10個の3mm直径のタングステンカーバイド製ボールを含む40mLのタングステンカーバイド製ミリング容器へ加えた。1.6gの上記リボン、240mgのカーボンブラック(MMMカーボン(ベルギー)より、スーパーPの売買表記で入手可能)、0.8gのポリイミドコーティング溶液(HDマイクロシステムズ(ニュージャージー州パーリン、チーズクエーク通り)より、ピラリン(PYRALIN)PI2555の売買表記で、N−メチル−2−ピロリジノン中の20重量%溶液として入手可能)、及び4.2gのN−メチル−2−ピロリン(アルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー)より市販されている)。前記ミリング容器を遊星ミル(プルヴァリセッテ(PULVERISETTE)7、フリッチ(Fritsch GmbH)(ドイツ、イドン−オベルシュタイン(Idon-Oberstein))から入手可能)内に置き、内容物を設定「3」にて1時間ミリングした。
【0085】
ミリング後、前記混合物をノッチ付きコーティング用バーへ移し、15マイクロメートル厚の銅箔の上に幅25mm及び厚み125マイクロメートルを有するストリップとしてコーティングした。前記ストリップを150℃にて真空条件下で2.5時間硬化させて、電極を形成した。次に、前記電極を使用して、300マイクロメートル厚の金属製リチウムホイル対極/参照電極、2層のフラットシート型ポリプロピレンメンブレンセパレータ(セルガード(Celgard)2400、セルガード(Celgard)(ノースカロライナ州シャーロット)より)、及びエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートの1:2混合物中の電解質としての1M LiPF6を有する2325コイン電池を作成した。2325コイン電池のハードウェアは、A.M.ウィルソン、J.R.ダーン共著、電気化学協会雑誌(J. Electrochem. Soc.)(第142巻、326〜332頁、1995年)に記載されている。
【0086】
電気化学セルは、金属質のLi/Liイオン参照電極に対して0.9Vと金属質のLi/Liイオン参照電極に対して5mVとの間で、100mA/g(500マイクロアンペア)の一定電流にて、セルテスター(マッコール(Maccor Inc.)(オクラホマ州タルサ))を使用して循環された。次の充電サイクル前に、低電圧遮断にて、電流を10mA/g(50マイクロアンペア)まで緩和した。電圧対容量曲線を図2に示す。可逆性の比容量は、900mAh/gであった。
【0087】
(実施例2):Si60Al14FeTiInSn(MM)10
合金組成物Si60Al14FeTiInSn(MM)10は、実施例1に類似の手順を使用し、17.634gのシリコンチップ、3.953gのアルミニウム散弾、4.675gの鉄塊、0.501gのスポンジ状チタン、4.969gのスズ散弾、3.605gのインジウム、及び14.663gのミッシュメタルを混合することによって調製した。結果として得られる溶融紡糸したリボンを、200℃にて2時間、アルゴン流下にて加熱することによりアニールした。図3は、XRDパターンを示す。
【0088】
結果として得られる合金組成物は、電気化学セル内で実施例1に記載の通りテストした。電気化学セルは、実施例1に記載されている手順を使用して調製された。この物質の電圧対容量曲線を図4に示す。可逆性の比容量は、950mAh/gであった。
【0089】
(実施例3):Si59Al16FeInSn(MM)10
合金組成物Si59Al16FeInSn(MM)10は、実施例1に類似の手順を使用し、9.062gのアルミニウム、34.785gのシリコン、9.379gの鉄、2.410gのインジウム、14.949gのスズ、及び29.414gのミッシュメタルを混合することによって調製された。溶融紡糸は、1350℃で行った。
【0090】
10gの溶融紡糸したリボンを、2時間200℃にて環状炉内にてアルゴン流下でアニールした。結果として得られる合金組成物のXRDパターンを図5に示す。
【0091】
以下の構成成分を、2個の10mm直径のカーバイド製ボール及び10個の3mm直径のタングステンカーバイド製ボールを含む40mLのタングステンカーバイド製ミリング容器へ加えた。1.70gの上記の融解紡糸したリボン、100mgのスーパーP炭素(MMMカーボン(ベルギー)より入手可能)、1.0gのポリイミドコーティング溶液(HDマイクロシステムズ(ニュージャージー州パーリン、チーズクエーク通り)より、ピラリン(PYRALIN)PI2555の売買表記で、N−メチル−2−ピロリジノン中の20重量%溶液として市販されている)、及び5.2gのN−メチル−2−ピロリジノン(アルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー)より市販されている)。前記ミリング容器を遊星ミル(プルヴァリセッテ(PULVERISETTE)7、フリッチ(Fritsch GmbH)(ドイツ、イドン−オベルシュタイン(Idon-Oberstein))より市販されている)内に置き、内容物を設定「4」にて1時間ミリングした。
【0092】
ミリング後、前記溶液をノッチ付きコーティング用バーへ移し、15マイクロメートルの厚みを有する銅箔上へコーティングした。前記被覆ストリップは、25mmの幅及び125マイクロメートルの厚みを有する。前記コーティングを、150℃にて真空下で2.5時間硬化させた。電気化学セルを、実施例1に記載のように調製した。電圧対容量曲線を図6に示す。可逆性の比容量は、750mAh/gであった。
【0093】
(実施例4)
リチウム金属粉末は、150マイクロメートル厚のリチウムホイルを、個々の粒子の最大寸法が約150マイクロメートルになるまで、かみそりの刃で繰り返し細かく刻んで調製した。0.80mgの前記リチウム粉末を、5.84mgのSi60Al14FeTiInS(登録商標)n(MM)10を含有する、実施例1に記載されている硬化させた電極から切り出した一片の上に振りかけた。次に、前記電極を2片のポリエチレンフィルムの間に配置し、ハンドローラーを用いて調整した。結果として得られる電極を、実施例1に記載されている様に、リチウム対極に対して電気化学セルへと組み立てた。前記セルは、金属質のLi/Li参照電極に対して0.9Vと金属質のLi/Liイオン参照電極に対して5mVとの間で、100mA/gの一定電流にて、セルテスター(マッコール(Maccor Inc.)(オクラホマ州タルサ))を使用して循環させた。電圧対容量曲線を図7に示す。可逆性の比容量は、650mAh/gであった。
【0094】
添付の図面に関連する本発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明を検討することで、本発明はより完全に理解できる。
【0095】
本発明は様々な変更及び代替形態が可能であるが、その具体例を一例として図面に示し、及び詳細に記載する。しかしながら本発明を、記載される特定の実施形態に限定しようとするものではないことは理解されるべきである。逆に、本発明は、本発明の趣旨及び範囲内に含まれる、すべての修正、等価な形態、及び代替形態を対象とすることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード、アノード、並びに当該アノード及び当該カソードと電気的に接続した電解質を含み、当該アノードが
a)35〜70モル・パーセントの量のシリコン、
b)1〜45モル・パーセントの量のアルミニウム、
c)5〜25モル・パーセントの量の遷移金属、
d)1〜15モル・パーセントの量のスズ、
e)15モル・パーセントまでの量のインジウム、並びに
e)2〜15モル・パーセントの量の、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含む第6要素を含む合金組成物
を含む、リチウムイオン電池であり、
各モル・パーセントが、前記合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準にしており、
前記合金組成物が、シリコンを含む非晶相と(1)スズ、(2)インジウム、及び(3)前記第6要素を含むナノ結晶相との混合物である、リチウムイオン電池。
【請求項2】
前記非晶相が、アルミニウム及び前記遷移金属を更に含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記第6要素が、セリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記ナノ結晶相が、シリコンを実質的に含まない、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
前記ナノ結晶相が、元素状スズ、元素状インジウム、2元素スズ・インジウム化合物、又はこれらの組み合わせを実質的に含まない、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記合金組成物が、1モル・パーセント未満のアルカリ土類金属を更に含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記合金組成物が、アルカリ金属を更に含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記合金組成物が、1〜60ミクロンの最大平均寸法を有する粒子を含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記合金組成物が、単一の非晶相及び単一のナノ結晶相を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項10】
前記合金組成物が、化学式Iから成り、
SiAlSnInLi (I)
式中、
aは、35〜70の範囲内の数字であり、
bは、1〜45の範囲内の数字であり、
Tは、遷移金属であり、
cは、5〜25の範囲内の数字であり、
dは、1〜15の範囲内の数字であり、
eは、15までの数字であり、
Mは、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせであり、
fは、2〜15の範囲内の数字であり、
a+b+c+d+e+fの合計が、100に等しく、並びに
gは、0〜[4.4(a+d+e)+b]の範囲内の数字である、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項11】
前記変数aは、40〜65の範囲内の数字であり、bは、1〜25の範囲内の数字であり、cは、5〜25の範囲内の数字であり、dは、1〜15の範囲内の数字であり、eは、15までの数字であり、並びにfは、2〜15の範囲内の数字である、請求項10に記載のリチウムイオン電池。
【請求項12】
前記変数aは、40〜55の範囲内の数字であり、bは、25〜45の範囲内の数字であり、cは、5〜25の範囲内の数字であり、dは、1〜15の範囲内の数字であり、eは、15までの数字であり、並びにfは、2〜15の範囲内の数字である、請求項10に記載のリチウムイオン電池。
【請求項13】
前記変数aは、55〜65の範囲内の数字であり、bは、10〜20の範囲内の数字であり、cは、5〜25の範囲内の数字であり、dは、1〜15の範囲内の数字であり、eは、15までの数字であり、並びにfは、2〜15の範囲内の数字である、請求項10に記載のリチウムイオン電池。
【請求項14】
前記アノードが、ポリイミドを含む有機結合剤を更に含む、請求項10に記載のリチウムイオン電池。
【請求項15】
前記アノードが、リチウム金属を更に含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池を少なくとも1つ含む電池パック。
【請求項17】
リチウムイオン電池の調製方法であって、前記方法が、
a)35〜70モル・パーセントの量のシリコン、
b)1〜45モル・パーセントの量のアルミニウム、
c)5〜25モル・パーセントの量の遷移金属、
d)1〜15モル・パーセントの量のスズ、
e)15モル・パーセントまでの量のインジウム、並びに
f)2〜15モル・パーセントの量の、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせ、
を含む合金組成物を含むアノードを提供することと、
ここで、各モル・パーセントが、前記合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準にしており、前記合金組成物が、シリコンを含む非晶相とスズ及び前記第6要素を含むナノ結晶相との混合物であり、
カソード及び電解質を提供することと、ここで、当該電解質は、前記カソード及び前記アノードの両方と電気的に接続されている、
を含む、リチウムイオン電池の調製方法。
【請求項18】
前記合金組成物を提供することが、前記シリコン、アルミニウム、スズ、遷移金属元素、及び第6要素を溶融紡糸することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記合金組成物を提供することが、まず全体的に非晶質前駆体物質を形成し、次に前記非晶相とナノ結晶相との混合物を調製するために当該前駆体物質をアニールすることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記合金を提供することが、
(i)非晶質物質、
(ii)スズ、インジウム、及び第6要素を含むナノ結晶相、
(iii)元素状スズ、元素状インジウム、2元素スズ・インジウム、又はこれらの組み合わせを含有する、少なくとも1つの追加の結晶相を含む前駆体物質を形成することと、
当該追加の結晶相を除去するために前記前駆体物質をアニールすることと
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノ結晶相が、シリコンを実質的に含まない、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
a)35〜70モル・パーセントの量のシリコン、
b)1〜45モル・パーセントの量のアルミニウム、
c)5〜25モル・パーセントの量の遷移金属、
f)1〜15モル・パーセントの量のスズ、
g)15モル・パーセントまでの量のインジウム、並びに
e)2〜15モル・パーセントの量の、イットリウム、ランタニド元素、アクチニド元素、又はこれらの組み合わせを含む第6要素
を含む合金組成物であって、
各モル・パーセントが、前記合金組成物中のリチウムを除く全元素の総モル数を基準にしており、
前記合金組成物が、シリコンを含む非晶相と(1)スズ、(2)インジウム、及び(3)前記第6要素を含むナノ結晶相との混合物である、合金組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−65569(P2013−65569A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−263139(P2012−263139)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2008−523993(P2008−523993)の分割
【原出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】