説明

リン酸クリンダマイシン発泡体

【課題】表皮の感染症を治療するために、活性物質、特にクリンダマイシンを治療部位に経皮的に浸透させ、適用が簡単かつ滑らかで、皮膚表面に顕著な残留物を残さず、不快または不都合を惹起しない組成物の提供。
【解決手段】クリンダマイシン組成物が加圧容器から放出、即ち、分注された際に急速分解性温度感受性発泡体を形成するように、急速分解性アルコール性発泡物質を含む加圧容器中に存在する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、少なくとも一つの薬学的に活性な化合物、特にクリンダマイシンまたはその薬学的に許容される塩もしくはそのプロドラッグを、単独またはもう一つの薬学的に活性な化合物と配合して局所送達することに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬学的に活性な物質の局所適用には多くの課題がある。一つの大きな目的は、活性物質を治療部位に経皮的に浸透させることである。その組成物は化粧品としての望ましい特性も備えなければならない。適用は簡単かつ滑らかでなければならず、皮膚表面に顕著な残留物を残してはならない。さらに、組成物は刺激、不快または不都合を惹起してはならない。
【0003】
表皮の感染症を治療するために、多くの抗真菌剤および抗細菌剤が局所的に用いられる。テトラサイクリンおよびクリンダマイシンのようないくつかの抗生物質も、細菌によって直接的または間接的に惹起される挫瘡およびその他の皮膚疾患の治療に用いられる。全身性に投与されるクリンダマイシンの副作用の一つは大腸炎であり、これは危険であり致命的でさえあることもある。従って、挫瘡の治療ではクリンダマイシンを局所的に投与することが望ましい。Pharmacia-Upjohn社製造のクレオシンT(Cleocin T)(登録商標)は、インビトロでは不活性であるが、インビボでは加水分解されて抗細菌的に活性なクリンダマイシンとなるリン酸クリンダマイシンを含有する。クレオシンT(登録商標)は現在、ゲル、ローションおよび局所用溶液として販売されていて、尋常性挫瘡の局所治療に用いられている。
【0004】
ローションおよびゲルの局所適用剤は、擦り込む範囲が広いという欠点を持ち、油性残留物が残ることがある。溶液の形状は適用部位から流れ易く、従って、溶液の形状を用いる場合は制御された量を適用することが困難である。
【0005】
本発明は、流れにくく、適用が容易であり、かつ残留ビヒクルの少ない発泡体として、本明細書の述べられるように局所投与に有用な少なくとも一つの薬学的に活性な化合物を有する組成物を提供することによってこれらの欠点を解決するものである。この発泡体が適用されると、体温によって発泡体構造が分解して、有効成分が溶液に類似したビヒクルの形で析出する。発泡組成物は、所望の領域に対する少量の製品の適用の良好な制御を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、流れにくく、適用が容易であり、かつ残留ビヒクルの少ない発泡体として、局所投与に有用な薬学的に活性な組成物を提供することによって、先行技術の欠点を解決するものである。驚いたことに、本発明の発泡組成物はゲル組成物に比べて、皮膚を介する活性化合物の送達を亢進させて、かつ溶液製剤に伴う欠点(例えば、流れ易い、制御された量の適用が難しい)を伴わない。
【0007】
このように、一つの局面において、本発明は、
15% w/wまでの少なくとも一つの薬学的に活性な化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ;
約83%から約97.9%までの急速分解性発泡物質;ならびに
炭化水素、クロロフルオロカーボン、およびその混合物からなる群より選択される約2%から約7% w/wのエアロゾル噴霧剤
を含む加圧容器入りの局所送達組成物であり、容器から噴出後に急速分解性温度感受性発泡体である組成物を提供する。
【0008】
一つの態様において、この急速分解性発泡物質は、C1〜C6アルコールおよび水を含む。好ましい態様において、急速分解性発泡物質は、C1〜C6アルコール、C14〜C22アルコール、水および界面活性剤を含む。もう一つの態様において、急速分解性発泡物質はC1〜C6アルコールを含まない。いくつかの態様において、急速分解性発泡物質は軟化剤をさらに含むこともでき、この軟化剤は湿潤剤として機能することもできる。さらに、この急速分解性発泡物質はpH調整物質を含むこともできる。
【0009】
一つの特定の態様において、少なくとも一つ薬学的に活性な化合物は抗生物質である。好ましい抗生物質には、クリンダマイシンまたは薬学的に許容されるその塩もしくはエステルが含まれる。特に好ましい抗生物質はリン酸クリンダマイシンであり、これはインビトロでは不活性であるが、インビボでは加水分解されて抗細菌的に活性なクリンダマイシンとなる。
【0010】
もう一つの局面において、少なくとも一つの薬学的に活性な化合物は、活性物質の組み合わせを含む。本発明の組成物では、局所投与に適した活性物質の任意の組み合わせを使用することができる。好ましくは、活性物質の組み合わせは、抗生物質、抗真菌剤、レチノイド(例えば、トレチノイン(tretinoin)、タザロテン(tazarotene))、レチノイド誘導体(例えば、アダパレン(adapalene))、サリチル酸、アゼライン酸、スルファセタミドナトリウム、および過酸化ベンゾイルから選択される少なくとも二つの物質を含む。適切な抗生物質には、クリンダマイシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、薬学的に許容されるそれらの塩、およびそれらのプロドラッグが含まれるが、これらに限定されるものではない。より好ましくは、活性物質の組み合わせは、リン酸クリンダマイシンと、抗真菌剤、レチノイド(例えば、トレチノイン、タザロテン)、レチノイド誘導体(例えば、アダパレン)、サリチル酸、アゼライン酸、スルファセタミドナトリウム、過酸化ベンゾイル、もう一つの抗生物質(エリスロマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリンなど)、およびそれらの混合物から選択される物質とを含む。特に好ましい態様において、少なくとも一つの薬学的に活性な化合物は、リン酸クリンダマイシンおよびトレチノインの組み合わせを含む。もう一つの特に好ましい態様において、少なくとも一つの薬学的に活性な化合物は、リン酸クリンダマイシンおよび過酸化ベンゾイルの組み合わせを含む。
【0011】
活性物質の組み合わせを含む本発明の組成物は、各物質の有効量、例えば約0.01%〜約10%の抗生物質、好ましくは約0.1%〜約5%の抗生物質、サリチル酸または過酸化ベンゾイルの任意の有効量、好ましくは約0.5%〜約10% w/w、ならびにレチノイドまたはレチノイド誘導体の任意の有効量、好ましくは約0.01%〜約0.5% w/wなどを含むことが好ましい。しかし、有効量を上回るまたは下回る各物質の濃度も本発明の範囲内である。
【0012】
もう一つの態様において、薬学的に活性な化合物は抗真菌剤である。好ましい抗真菌剤は、ケトコナゾールを例えばニゾラール(Nizoral)(登録商標)の形で含む。さらなる態様において、薬学的に活性な化合物は、抗真菌剤と、抗生物質、レチノイド(例えば、トレチノイン、タザロテン)、レチノイド誘導体(例えば、アダパレン)、サリチル酸、アゼライン酸、スルファセタミドナトリウム、過酸化ベンゾイル、およびそれらの混合物から選択される物質との組み合わせを含む。適切な抗生物質には、クリンダマイシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、薬学的に許容されるそれらの塩、およびそれらのプロドラッグが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
さらにもう一つの局面において、本発明は急速分解性温度感受性発泡組成物の発泡体分解温度を調節するための方法を提供する。一つの特定の態様において、発泡体分解温度は、例えば急速分解性温度感受性発泡組成物中のC1〜C6アルコール対水の割合を変化させることによって調節される。
【0014】
さらにもう一つの局面において、本発明は、例えば本発明の組成物を用いた挫瘡の経皮的治療のための方法を提供する。挫瘡治療法は、一般的には、クリンダマイシンまたは薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの有効量を含む急速分解性温度感受性発泡組成物をこのような治療を必要とする被験者に対して適用する工程を含む。好ましい態様において、急速分解性温度感受性発泡組成物は、レチノイド(例えば、トレチノイン、タザロテン)をさらに含む。好ましくは、レチノイドは約0.01%から約0.1% w/wの量で存在する。もう一つの好ましい態様において、急速分解性温度感受性発泡組成物は過酸化ベンゾイルをさらに含む。好ましくは、過酸化ベンゾイルは約0.5%から約10% w/wの量で存在する。
【0015】
さらなる局面において、本発明は、
様々な発泡体構造の描写を含む視覚的補助を提供する工程;
急速分解性発泡物質および噴霧剤を含む加圧容器から急速分解性温度感受性発泡組成物を分注する工程;および
を含む、発泡体の特性を評価するための方法を提供する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は挫瘡の経皮的治療のための医薬品の調製において、加圧容器入りの薬学的組成物の使用を提供し、この組成物は、
15% w/wまでの少なくとも一つの薬学的に活性な化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはそのプロドラッグ;
約83%から約97.9% w/wの急速分解性発泡性物質;ならびに
炭化水素、クロロフルオロカーボン、およびそれらの混合物からなる群より選択される約2%から約7% w/wのエアロゾル噴霧剤
を含み、容器から噴出後に急速分解性温度感受性発泡体である組成物である。
【0017】
これらおよびその他の目的、利点および態様は、後述の詳細な説明および図面を読めば、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】20℃において約2gの発泡体を最初に分注することによって測定されたリン酸クリンダマイシン発泡体構造に対する温度の影響を示すグラフである。次に、発泡体を記載の温度の制御された環境内に置いて、発泡体から液体に融解するための所要時間を測定した。
【図2】発泡体構造の評価に使用することのできる視覚的補助の一つの態様を示す。
【図3】実施例1に示すような様々なpHおよびクエン酸緩衝液レベルにおけるリン酸クリンダマイシン分解量を示すグラフである。
【図4】様々な時期に缶内の様々なpHレベル下にて様々な温度でのリン酸クリンダマイシン残留量を示すグラフである。
【図5】実施例4で測定されたリン酸クリンダマイシンの安定性データを示す。
【図6】クリンダマイシン発泡体およびクリンダゲル(商標)の適用後の時間の関数として、血漿中クリンダマイシン濃度を示す。
【図7】クリンダマイシン発泡体、クリンダゲル(商標)、およびクレオシンT(登録商標)溶液の24時間にわたる累積経皮的吸収のグラフを示す。各時点は、3名の皮膚ドナー(それぞれ3回の反復)についての平均総吸収±標準誤差を示す。* p<0.05(ゲル対発泡体);p<0.06(ゲル対溶液);p>0.1(発泡体対溶液)。
【図8】クリンダマイシン発泡体、クリンダゲル(商標)、およびクレオシンT(登録商標)溶液の24時間にわたる経皮的吸収における流出プロフィールのグラフを示す。各時点は、3名の皮膚ドナー(それぞれ3回の反復)についての平均吸収±標準誤差を示す。
【図9】クリンダマイシン発泡体、クリンダゲル(商標)およびクレオシンT(登録商標)溶液の適用から24時間後の異なる皮膚層におけるクリンダマイシンの分布のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
I.定義
状況からそうでないことが要求されない限り、「活性物質」、「活性化合物」、「少なくとも一つの薬学的に活性な化合物」および「薬学的に活性な物質」という用語は互換的に用いられ、薬学的、薬理学的または治療的効果を持つ物質を指す。
【0020】
「均質」は、全体が均一、つまり単相の混合物を意味する。
【0021】
活性化合物の「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容され、かつ親化合物の望ましい薬理学的活性を持つ塩を意味する。このような塩には以下のものが含まれる:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;もしくは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-二スルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2,2,2]-オクト-2-エン-1カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸と共に形成される酸付加塩;または(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、もしくはアルミニウムイオンなどの金属イオンによって置換;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位結合する際に形成される塩。
【0022】
「プロドラッグ」は、このようなプロドラッグが被験者に投与された際にインビボにおいて活性物質を放出する化合物を指す。活性物質のプロドラッグは、インビボにおいてその修飾が切断されて親化合物が放出されるように、その活性物質中に存在する一つまたは複数の官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグには、活性物質中の水酸基、アミノ基またはスルフヒドリル基がインビボにおいて切断されてそれぞれ遊離の水酸基、アミノ基またはスルフヒドリル基を再生し得る保護基などの何らかの基に結合した化合物が含まれる。プロドラッグの例には、全体が参照として本明細書に組み入れられるT. W. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley & Sons, New York, 1999、およびHarrison and Harrison et al., Compendium of Synthetic Organic Methods, Vols. 1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996)に列記される一つまたは複数の保護基によって官能基が保護される活性物質が含まれるが、これらに限定されるものではない。プロドラッグの調製において有用な典型的水酸保護基には、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基およびトリフルオロアセチル基)、アルキルエーテル、リン酸エーテル、リン酸エステルなどが含まれる。プロドラッグの調製において有用な典型的なアミノ保護基には、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基およびトリフルオロアセチル基)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)基、tert-ブトキシカルボニル(Boc)基などが含まれる。
【0023】
「抗生物性」および「抗細菌性」という用語は、本明細書では、細菌細胞の生育を阻害、毒性を阻害または死滅させる化合物を指すために互換的に用いられる。抗生物質には、様々な微生物種(例えば、細菌、真菌および放線菌)によって産生される物質、その変異型、および合成抗細菌剤などが含まれる。抗生物質の全リストは非常に膨大で本明細書に記載することはできないが、当業者は本発明において用いることのできる多くの抗生物質を承知している。例えば、Chambers and Sande, Antimicrobial Agents: General Considerations in Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Hardman and Limbard eds., (1996); およびKucers, et al., The Use of Antibiotics: A Clinical Review of Antibacterial, Antifungal, and Antiviral Drugs Oxford Univ. Press (1997)を参照されたい。適切な抗生物質には、クリンダマイシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、ペニシリン、アンピシリン、カルベニシリン、メチシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、ならびにバシトラシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、フシジン酸、シプロフロキシンおよびその他のキノロン類、スルホンアミド、トリメトプリム、ダプソン、イソニアジド、テイコプラニン、アボパルシン、シネルシド、バージニアマイシン、セフォタキシム、セフトリアキソン、ピペラシリン、チカルシリン、セフェピン、セフピロム、リファンピシン、ピラジンアミド、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、エンロフロキサシン、アミカシン、ネチルマイシン、イミペネム、メロペネム、イネゾリド、薬学的に許容されるそれらの塩、およびそれらのプロドラッグが含まれるが、それらに限定されるものではない。好ましくは、抗生物質は、クリンダマイシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、薬学的に許容されるそれらの塩、またはそれらのプロドラッグである。より好ましくは、抗生物質は、クリンダマイシン、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0024】
「ビヒクル(Vehicle)」は、活性物質の運搬に必要な賦形剤または成分のみを有し、それ自体は薬学的または治療的効果を持たない組成物を指す。
【0025】
「脂肪アルコール」という用語はC14〜C22アルコールを指す。
【0026】
「pH」という用語は、然るべき電極を用いて適切かつ正常に標準化されたpHメーターによって与えられる値として定義される。
【0027】
II.一般原則
本発明は薬学的に活性な様々な局所送達用組成物を提供する。一つの態様において、加圧容器入りの局所送達用組成物は、15% w/wまでの少なくとも一つの薬学的に活性な化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ;約83%から約97.9% w/wまでの急速分解性発泡物質;ならびに炭化水素、クロロフルオロカーボン、およびその混合物からなる群より選択される約2%から約7% w/wのエアロゾル噴霧剤を含み、その組成物は、容器から噴出後に急速分解性温度感受性発泡体である。
【0028】
好ましい態様において、本発明の組成物は、約0.1%から約10% w/wの薬学的に活性な化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ;約83%から約97.9% w/wの急速分解性発泡物質;ならびに炭化水素、クロロフルオロカーボン、およびその混合物からなる群より選択される約2%から約7% w/wのエアロゾル噴霧剤の均質な混合物を含む加圧容器中に存在する。上記の組成物が加圧容器から放出、即ち、分注されると、急速分解性温度感受性発泡体が形成される。
【0029】
用いられる噴霧剤の最大量は、しばしば均質混合物のような混合物を形成するための組成物中のその他の成分との混和性によって決定される。組成物中に用いられる噴霧剤の最小量は、しばしば所望の発泡体の特性、および実質的に容器を空にする能力によって決定される。
【0030】
急速分解性発泡物質は、水、および界面活性剤または界面活性剤の組み合わせ、ならびに任意でC1〜C6アルコール、C14〜C22アルコール、およびそれらの組み合わせのような成分を含む。いくつかの態様において、急速分解性発泡物質は、軟化剤を含んでもよく、この軟化剤は湿潤剤として機能することもできる。
【0031】
適切な軟化剤にはポリオールが含まれるが、これに限定されるものではない。好ましいポリオールには、プロピレングリコールおよびグリセロールが含まれる。急速分解性発泡物質に用いられる軟化剤の量は、約0%から約20% w/wまで様々であり、好ましくは約0%から約10% w/w、より好ましくは約2%から約7.5% w/wである。
【0032】
一つの態様において、この急速分解性発泡物質は、C1〜C6アルコールおよび水を含む。好ましい態様において、急速分解性発泡物質は、C1〜C6アルコール、C14〜C22アルコール、水および界面活性剤を含む。代替的な態様において、急速分解性発泡物質はC1〜C6アルコールを含まない。
【0033】
さらに、この急速分解性発泡物質は、pH調整物質を含むこともできる。一つの特定の態様において、pH調整物質は塩基である。適切なpH調整性塩基には、炭酸水素塩、炭酸塩、ならびにアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物および遷移金属水酸化物のような水酸化物が含まれる。好ましくは、pH調整物質は水酸化カリウムである。または、pH調整物質は、酸、酸性塩、またはその混合物であってもよい。さらに、pH調整物質は緩衝液であってもよい。適切な緩衝液には、クエン酸塩/クエン酸緩衝液、酢酸塩/酢酸緩衝液、リン酸塩/リン酸緩衝液、蟻酸塩/蟻酸緩衝液、プロピオン酸塩/プロピオン酸緩衝液、乳酸塩/乳酸緩衝液、炭酸塩/炭酸緩衝液、アンモニウム/アンモニア緩衝液などが含まれる。pH調整物質は、組成物のpHを約pH 4.0〜約9.0、好ましくは約pH 4.0〜約6.5に調節し得る十分な量で存在する。
【0034】
好ましくは、急速分解性発泡物質組成物は、C1〜C6アルコール、より好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびそれらの2つまたはそれよりも多い混合物のようなC1〜C4アルコールを含む。特に好ましいC1〜C6アルコールは、エタノールまたはエタノールと少なくとも一つのその他のアルコールの混合物である。急速分解性発泡物質に用いられるC1〜C6アルコールの量は、約0%から約95% w/wまで様々であり、好ましくは約55%から約65% w/w、より好ましくは約58%から約60% w/wである。
【0035】
急速分解性発泡物質中のC14〜C22アルコールの量は、約0%から約10% w/wまで様々であり、好ましくは約1%〜約5.0% w/wである。ある局面において、急速分解性発泡物質は、好ましくは約1%から約2.5% w/wのC14〜C22アルコールを含む。急速分解性発泡物質中の特に好ましいC14〜C22アルコールの量は、約1.5%から約2% w/wである。
【0036】
急速分解性発泡物質中の好ましいC14〜C22アルコールは、C16〜C20アルコールである。特に、セチルアルコール、ステアリルアルコールまたはそれらの混合物が特に好ましい。セチルアルコールおよびステアリルアルコールの混合物は、特に好ましい。セチルアルコール対ステアリルアルコールの比は、約60:40から約80:20までの範囲とすることができて、好ましい混合比は、約70:30である。
【0037】
例えばエトキシル化非イオン性およびエトキシル化イオン性界面活性剤を含む、様々な界面活性剤が、本発明の組成物において有用である。本発明の組成物中での使用に適切な界面活性剤には、脂肪酸エトキシレート、脂肪アルコールエトキシレート、ポリソルベート、グリセロールエステルエトキシレート、およびポロキサマーのようなブロックコポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの例には、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウレス-4、ラウレス-23、POE(15)グリセロールモノラウレートなどが含まれる。特に好ましい態様において、界面活性剤は、ポリソルベート60、ラウレス-4、POE(15)グリセロールモノラウレート、またはそれらの混合物である。急速分解性発泡物質に加えられる界面活性剤の量は、一般に約0%から約10% w/wの範囲であり、好ましくは約0.1%から約10% w/w、より好ましくは約0.1%から約6% w/wの範囲であり、約0.5%から約5% w/wおよび約0.3%から約0.5% w/wが特に好ましい量である。
【0038】
水、および任意でpH調整物質は、一般に、急速分解性発泡物質の残りの部分を含む。急速分解性発泡物質に含まれる水の量は、一般に約10%から約95% w/wの範囲であり、好ましくは約10%から約90% w/w、より好ましくは約20%から約90% w/wの範囲であり、約30%から約40% w/w、または代替的に約80%から約95% w/wが特に好ましい。
【0039】
急速分解性発泡物質の各成分の典型的な量は上記に示されるが、急速分解性発泡物質の各成分の特定の量は、所望の発泡体の特性に依存することが認識されるべきである。従って、本発明の範囲は、本明細書に示される値に限定されるものではない。
【0040】
一部の局面において、急速分解性温度感受性発泡体は、発泡体分解温度が皮膚温度またはそれに近い温度であるように製剤化される。発泡体分解温度は、C1〜C6アルコール対水の割合などの急速分解性発泡物質の様々な成分の割合を変えることによって調節できる。一つの特定の態様において、発泡体分解温度は、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃のような、約30℃から約36℃までであるように調整することができる。例えば、クリンダマイシン発泡体における特に好ましい発泡体分解温度は、35℃である。
【0041】
好ましくは、加圧容器は、内層表面が化学的に不活性な裏打ち材で裏打ちされた一体型アルミニウム容器である。好ましい内層表面裏打ち材は、HOBA Lacke und Farben GmbHより供給されるポリアミド-イミド(PAM)ラッカーである。典型的には、容器は垂直バルブまたは反転バルブ、および通常の発泡体噴出アクチュエーターを備えている。
【0042】
さらに、本発明は、発泡体の特性を調節する方法、薬学的に活性な化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグの有効期間を亢進する方法;様々な疾患、感染症および疾病の経皮的治療の方法;および発泡体の特性を評価する方法を含む、このような組成物に関する様々な局面を定める。
【0043】
III.抗生物質製剤
一つの態様において、少なくとも一つの薬学的に活性な化合物は抗細菌性物質である。適切な抗細菌性物質には、クリンダマイシン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、ペニシリン、アンピシリン、カルベニシリン、メチシリン、セファロスポリン、バンコマイシン、ならびにバシトラシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、フシジン酸、シプロフロキシンおよびその他のキノロン類、スルホンアミド、トリメトプリム、ダプソン、イソニアジド、テイコプラニン、アボパルシン、シネルシド、バージニアマイシン、セフォタキシム、セフトリアキソン、ピペラシリン、チカルシリン、セフェピン、セフピロム、リファンピシン、ピラジンアミド、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、エンロフロキサシン、アミカシン、ネチルマイシン、イミペネム、メロペネム、イネゾリド、薬学的に許容されるそれらの塩およびそれらのプロドラッグが含まれるが、それらに限定されるものではない。好ましくは、抗細菌性物質は、クリンダマイシン、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである。
【0044】
クリンダマイシンは、メチル7-クロロ-6,7,8-トリデオキシ-6-(1-メチル-トランス-4-プロピル-L-2-ピロリジンカルボキサミド)-1-チオ-L-スレオ-α-D-ガラクト-オクト-ピラノシドまたはメチル7-クロロ-6,7,8-トリデオキシ-6-[[(1-メチル-4-プロピル-2-ピロリジニル)カルボニル]アミノ]-1-チオ-L-スレオ-α-D-ガラクト-オクト-ピラノシドとしても知られる抗生物質である。本明細書で用いられるように、「クリンダマイシン」という用語は、単独で遊離塩基のクリンダマイシンならびに薬学的に許容されるその塩およびエステルを含む。クリンダマイシンの薬学的に許容される塩およびエステルの例には、塩酸クリンダマイシン、リン酸クリンダマイシン、パルミチン酸クリンダマイシンおよび塩酸パルミチン酸クリンダマイシンが含まれるが、これらの限定されるものではない。本発明の組成物にはクリンダマイシンの塩およびエステルを使用することが好ましく、リン酸クリンダマイシンが特に好ましい。
【0045】
少なくとも1つの薬学的に活性な化合物の適切な濃度範囲は、例えば約0.001%から約50% w/wを含み、好ましくは15% w/wまでのように約0.01%から約20% w/w、より好ましくは約0.1%から約2% w/wを含む。約1% w/wは特に好ましい。
【0046】
クリンダマイシンの使用、特性および合成方法は、米国特許第3,969,516号, Stoughton, 1976年7月13日登録;米国特許第3,475,407号, Bierkenmeyer, 1969年登録;米国特許第3,487,068号, 1969年登録;米国特許第3,509,127号および第3,544,551号, KaganおよびMagerlein, 1970年登録;米国特許第3,513,155号, BierkenmeyerおよびKagan, 1970年登録;MorozowichおよびSinkula, 米国特許第3,580,904号, 1971年登録、ならびに米国特許第3,655,885号, 1972年登録;米国特許第3,714,141号, 1973年登録;米国特許第4,568,741号, 1986年登録;および米国特許第4,710,565号, 1984年登録に記載されている。前記の特許はすべて、参照として本明細書に組み入れられる。
【0047】
クリンダマイシンに関する技術分野におけるその他の知識は、例えば、Magerlein, et al, Antimicro. Ag. Chemother. 727 (1966); Birkenmeyer and Kagan, J. Med. Chem., 13, 616 (1970); Oesterling, J. Pharm Sci. 59, 63 (1970) ; McGehee, et al., Am. J. Med. Sci. 256, 279 (1968); D. A. Leigh, J. Antimicrob. Chemother. 7 (Supplement A), 3 (1981); J E Gray et al., Toxicol. Appl. Pharmacol. 21, 516 (1972);およびL W Brown and W F Beyer in Analytical Profiles of Drug Substances, Vol. 10, K. Florey, editor (Academic Press, New York, 1981), pages 75-91に示されている。
【0048】
当業者には、クリンダマイシン発泡組成物の開発がとりわけ驚くべきことであることが特に明らかになるであろう。中でも、リン酸クリンダマイシンのようなクリンダマイシンは、水溶性の薬学的物質である。発泡組成物を急速分解性発泡組成物とするために、組成物の融点は既に記載されている温度範囲内でなければならない(例えば、皮膚温度またはその近く)。一部の例において、融点を調節および上昇させる必要があったが、これはクリンダマイシンの水溶性および用いられるクリンダマイシンが高濃度であるために困難であった。これらの問題点は、一部は、エタノール対水の比のようなC1〜C6アルコール対水の比を調節することによって解決された。
【0049】
さらに、活性化合物の濃度が高いことも発泡体の構造および発泡体の品質に影響を及ぼすことができ、さらに望ましくない結晶化を惹起することができる。水溶性の活性化合物は、事実上、系から水を除去することが可能であり、水対C1〜C6アルコールの比、従って融点を含む発泡体の特性を実質的に変化させることができる。許容可能な発泡体の品質を達成するために、介入を要する場合がある。C1〜C6アルコールは、比較的低い温度で結晶化を可能とするため、水溶性の活性化合物にとって良好な溶媒ではないことがある。結晶化を防ぐために単純に水分含有量を高めることは発泡体の特性を変化させて、脂肪アルコールの溶解性を変化させ、それらの沈殿を惹起する可能性がある。結晶化は薬学的に活性な化合物の消失および/またはエアロゾルバルブの目詰まりを起こす可能性がある。
【0050】
活性化合物の安定性を改善するため、またエアロゾル容器の場合には金属の腐食を減少させるために、しばしば緩衝液が添加される。一部の例において、この緩衝液は製剤を高安定性というよりはむしろ低安定性とすることがある。例えば、リン酸クリンダマイシン組成物に関するようなこれらのケースでは、完全な緩衝というよりはむしろpH調整がより有効である場合がある。これを図3に示す。高レベルの緩衝液は低分解というよりはむしろ高分解を惹起する。
【0051】
一部の好ましい態様において、リン酸クリンダマイシンは活性物質であり、急速分解性発泡物質は、水/エタノール溶液に溶解したセチルアルコールおよびステアリルアルコールの混合物を含む。好ましくは、この組成物は、ポリアミド-イミドで裏打ちされたアルミニウム缶に充填されて、噴霧剤としてプロパン/ブタン混合物を用いて加圧される。充填圧力下において、炭化水素噴霧剤は液化して、水/エタノール溶液と混和する。この液化炭化水素/水/エタノール溶液は、水/エタノール溶液単独と比べて、セチルアルコールおよびステアリルアルコールの溶解性を亢進させる。11℃を超える温度において、加圧下での缶の内容物は透明で均質な溶液の状態を維持する。特定の理論によって拘束されないが、組成物が缶から放出された際に形成される発泡体構造、即ち、発泡体の特性は、水/エタノール水溶液における脂肪アルコール(例えば、セチルアルコールおよびステアリルアルコールの混合物)の溶解性によって制御されると考えられている。分注されると、噴霧剤は膨張および気化して、これにより脂肪アルコール(例えば、セチルアルコールおよびステアリルアルコールの混合物)は安定した発泡体構造を形成する。従って、これらの成分の割合および選択(水:エタノール:セチルアルコール:ステアリルアルコール)が発泡体の物理特性を左右する。
【0052】
好ましくは、水、エタノールおよび噴霧剤のレベルは、容器内の脂肪アルコールの溶解性を最小限とするように選択される。一部の局面において、本発明者らは、水:エタノールの割合が変わると発泡体の特性が変化することを発見した。例えば、水:エタノールの割合が増大すると、脂肪アルコールの溶解性が低下して、発泡体構造が確実に凝固する。反対に、水:エタノールの割合が低下すると、脂肪アルコールの溶解性が上昇して、より液状の発泡体が形成される。
【0053】
ポリソルベートは好ましい界面活性剤として用いられ、ポリソルベート60は特に好ましい界面活性剤である。いかなる理論によっても拘束されないが、発泡体形成における役割に加えて、ポリソルベート60は、セチルアルコールおよび/またはステアリルアルコールの溶解性を高めると考えられている。
【0054】
リン酸クリンダマイシンの局所送達用組成物は、一般に、先ず成分を水またはエタノールに溶解することによって行われる。水への溶解性が限られていることから、セチルアルコールおよびステアリルアルコールはエタノール相に溶解される。ポリソルベート60およびプロピレングリコール(即ち、湿潤剤としても機能することのできる軟化剤)は、エタノールおよび水の双方に可溶性であるが、便宜上、エタノール相に溶解される。リン酸クリンダマイシンおよび水酸化カリウム(即ち、pH調整物質)は水に溶解される。次に、水相およびエタノール相を、充填操作段階でそれぞれの缶に適切な割合で加える。缶にバルブが装着されて、所定の位置に圧着される。次に、計量された量の噴霧剤がバルブを介して注入され、製剤が完成する。缶に充填するもう一つの方法は、単一液相充填を含み、この方法では、均一性を確保するために組成物を暖かい状態に維持して、その後、圧着および噴霧剤の注入が行われる。さらにもう一つの方法は、噴霧剤を含む組成物全体を加圧下でまとめて製剤化した後に、その製剤を圧着したエアロゾール缶に注入する工程を含む。
【0055】
噴霧剤の量を除いて、本発明の典型的局所送達用リン酸クリンダマイシン組成物を次の表1に示す。
【0056】
(表1)本発明の例示的局所送達用リン酸クリンダマイシン組成物

【0057】
リン酸クリンダマイシンの量は純度に基づいて(典型的に、クリンダマイシンとして800mg/g)、表1に示されるように最終組成物ではクリンダマイシンとして算出値1.00%となるように調整される。従って、リン酸クリンダマイシンの正確な量はその純度に応じて変えることができる。
【0058】
好ましい局面において、局所送達用リン酸クリンダマイシン組成物に加えられる噴霧剤の量は、上記混合物のそれぞれ約50gにつきプロパン/ブタン噴霧剤 約2.8gである。噴霧剤としての機能および分注時に発泡体の微細構造を作るための機能に加えて、炭化水素またはその混合物は、セチルアルコールおよびステアリルアルコールを水/エタノールの系に溶解して、容器内で透明な単相の(即ち、均質な)系を作製することに役立つ。典型的に、噴霧剤の濃度の範囲は組成物の総量に対して約2%から約7% w/wであり、好ましくは約3%から約6% w/w、より好ましくは約4.6%から約5.4% w/wの範囲である。
【0059】
クロロフルオロカーボン(CFC)も噴霧剤として使用することができるが、環境上の懸念から、好ましい噴霧剤は炭化水素、特にプロパン、ブタン、またはその混合物である。その他の適切な噴霧剤には、ジメチルエーテルならびに134aおよび227のようなヒドロフルオロカーボンが含まれる。特に好ましい噴霧剤は、プロパンおよびブタンの混合物である。
【0060】
次の表2は、本発明のリン酸クリンダマイシン組成物中の各成分の機能のいくつかをまとめたものである。
【0061】
(表2)本発明のリン酸クリンダマイシン組成物中の成分のいくつかの機能

【0062】
典型的に、加圧容器にはディップチューブが装着されて、従って、組成物は缶を垂直に保持してアクチュレーターボタンを押すことによって分注される。分注された発泡体は易熱性、即ち、急速分解温度感受性発泡体である。好ましくは、発泡体構造は皮膚温前後で崩壊して、即ち、発泡体分解温度が皮膚温前後であり、好ましくは約30℃〜約36℃であり、約35℃の発泡体分解温度が特に好ましい。これにより、環境温度では比較的堅い発泡体が分注されて、その後、皮膚に接触すると発泡体構造が崩壊する。このように、本発明のリン酸クリンダマイシン急速分解性温度感受性発泡体(即ち、リン酸クリンダマイシン発泡体)は直接、標的領域に容易に適用することができる。
【0063】
接触困難な領域については、リン酸クリンダマイシン発泡体は一般に局所適用前に手頃な表面に広く分注される。リン酸クリンダマイシンは易熱性であるため、発泡体構造の完全性を保つために、組成物は受け皿、缶のキャップまたはその他の冷たい表面に分注されなければならない。その後、リン酸クリンダマイシン発泡体は手またはアプリケーターで適用することができる。
【0064】
分注された発泡体ビヒクルの温度の関数としての易熱性を図1に示す。この図は臨界温度、即ち、発泡体分解温度が約35℃であることを示している。この温度よりも低いと、発泡体は極めて安定であり、構造の完全性が5分を越えて維持される。35℃を超えると、セチルアルコールおよびステアリルアルコールが溶液に可溶性であり、発泡体は分解する。
【0065】
リン酸クリンダマイシン発泡体の品質は、環境温度によっても影響を受ける。例えば、比較的高い温度(即ち、28℃〜34℃)で保存された容器からは、低い温度(即ち、25℃未満)で分注されたものより柔らかいリン酸クリンダマイシン発泡体が分注される。容器温度の関数としてのリン酸クリンダマイシン発泡体の品質の一般的説明を次の表3に示す。
【0066】
(表3)容器温度とリン酸クリンダマイシン発泡体品質に対するその影響

【0067】
表3に示す通り、好ましいリン酸クリンダマイシン分注温度は、25℃以下のように、約23℃〜約27℃である。しかし、発泡体形成に対する温度の影響は可逆性である。従って、柔らかいリン酸クリンダマイシン発泡体を分注する暖められた容器を25℃よりも低い温度に冷却すると、容認できる泡立ちが良くて水気の少ない発泡体が分注される。
【0068】
本発明のリン酸クリンダマイシン発泡組成物において使用するための好ましい噴霧剤は、プロパンおよびブタン混合物を含む。特に好ましい噴霧剤は、プロパン、n-ブタンおよびイソブタンの混合物を含む。プロパン 約55%、n-ブタン 約30%、およびイソブタン 約15%を含む噴霧剤組成物が特に好ましい。
【0069】
特定の理論に結合されないが、容器から組成物を分注した際に、溶液中の噴霧剤が蒸発または気化して発泡体構造の気泡を作ると考えられている。この気化した噴霧剤の一部は直ちに放出されて、大気中に拡散し、残りは発泡体構造内に捕捉される。
【0070】
IV.発泡体の特性の調節
本発明のもう一つの局面は、急速分解性発泡物質中のC1〜C6アルコール対水の割合を変化させることによって、急速分解性温度感受性発泡組成物の発泡体の特性を調節するための方法を提供する。このように、清澄性、密度、粘稠性、発泡体の気泡のサイズ、発泡体膨張率、発泡体流動速度、および/または発泡体分解温度を含む様々な発泡体の特性が調節可能である。
【0071】
一つの態様において、C1〜C6アルコール対水の割合は、約1.5:1から約1.8:1の範囲であり、好ましくは約1.55:1から約1.75:1、より好ましくは約1.6:1から約1.7:1の範囲である。もう一つの態様において、C1〜C6アルコール対水の割合は、約1:7よりも低い。さらにもう一つの態様において、C1〜C6アルコール対水の割合は、約1:7から約1:16の範囲であり、約1:7または約1:16が好ましい。
【0072】
さらなる態様において、急速分解性発泡物質中のC1〜C6アルコール対水の割合は、所望の発泡体分解温度を達成するために調節される。次の表4は、リン酸クリンダマイシン発泡体の融点(即ち、発泡体分解温度)に対するエタノール対水の割合の影響を示す。表4に示す通り、エタノール:水の割合を1.60:1に調節することによって35℃の発泡体分解温度が得られる。この製剤は、図1に示す易熱性の測定において用いられた。
【0073】
(表4)発泡体の分解温度とエタノール:水の割合

【0074】
V.実用性
本発明のリン酸クリンダマイシン発泡組成物は、例えば、尋常性挫瘡および細菌性腟症の治療のように、細菌に介在される様々な疾患または疾病を局所適用によって治療する際に有用である。同様に、クリンダマイシンの代わりにその他の抗細菌性物質またはそれらの対応するプロドラッグを、その他の細菌介在性の疾患または疾病の治療に用いることができる。適切なさらなる抗細菌性物質には、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、薬学的に許容されるそれらの塩およびそれらのプロドラッグが含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、足部白癬などのような真菌感染症の治療にはケトコナゾールのような抗真菌剤を使用することができる。
【0075】
リン酸クリンダマイシンの代わりにもう一つの薬学的化合物が用いられる場合、その組成物の一つまたは複数の成分(例えば、急速分解性発泡物質および/または噴霧剤)は所望の発泡体の特性(例えば、発泡体の滑らかさ、発泡体分解温度、活性化合物の安定性など)を得るために調節またはその量を調整することができる。
【0076】
VI.発泡体の評価
もう一つの局面において、本発明は、発泡体の特性を評価するための方法を提供する。このような方法は、一般に、様々な発泡体の構造または特性を描写する視覚的補助を提供する工程、発泡体を分注する工程、および視覚的補助(例えば、ルックアップ(look-up)表)を用いて発泡体構造を評価する工程を含む。視覚的補助において描写することのできる例示的特性には、形状、構造、清澄性、密度、粘度、発泡体の気泡のサイズ、発泡体の膨張率、発泡体の流動速度、および発泡体分解温度が含まれる。一つまたは複数のこれらの特性は、ルックアップ表のような視覚的補助で描写することができる。
【0077】
視覚的補助(ルックアップ表など)は、様々な発泡体構造の視覚的描写(例えば、ハードコピー形式またはディジタル、即ち、磁気形式の画像)のような発泡体の構造または特性を示す一つまたは複数の方法、各発泡体構造における数値的および/または英数字による値(例えば、ルックアップ値)、ならびに/または各発泡体構造の文字による説明を含むことができる。視覚的補助は、一般に、急速分解性温度感受性発泡組成物の一つまたは複数の成分の異なる量で異なる発泡体構造を作製することによって作製される。例示的な視覚的補助を図2に示す。これは、発泡体の特性の評価のための様々な形式、即ち、視覚的、数値的および文字形式を提供する。これらのルックアップ表および視覚的補助は、研究および開発、優良医薬品製造基準(GMP)および品質管理(QC)の方法において特に有用である。
【0078】
一つの態様において、評価される発泡体は、急速分解性温度感受性発泡組成物であり、この組成物は、急速分解性発泡物質および噴霧剤を含む加圧容器から分注される。発泡組成物は、薬学的に活性な化合物または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグを含むこともできる。
【0079】
本発明のさらなる目的、利点および新規の特徴について、当業者は以下に示すそれらの実施例を見れば明らかであると思われるが、これらの実施例は限定的であることを意図しない。
【実施例】
【0080】
VII.実施例
以下の実施例は、主張される発明を例証するために示すものであり、限定するためのものではない。
【0081】
実施例1
この実施例は、クエン酸緩衝液およびエポキシ-フェノールで裏打ちされた容器を用いて、リン酸クリンダマイシンの安定性に対するpHの影響を示す。
【0082】
表1と同様のリン酸クリンダマイシン発泡組成物の試料を調製して、標準的なエポキシ-フェノール(エポン)で裏打ちされたアルミニウム製エアロゾール缶に入れて、Precision Valve Company製のバルブをセットした。この試験において、クエン酸緩衝液は、異なる緩衝液濃度(即ち、0、0.1、0.3、0.5%)および二つの代替的軟化剤または湿潤剤、即ち、プロピレングリコールおよびグリセリンを用いて混合物のpHをpH 4.5、pH 5.5およびpH 6.5に調整するために用いられた。容器は50℃で1カ月間保存後に検査した。結果を図3に示す。
【0083】
図3に示す通り、緩衝液の濃度が高いと(例えば、0.5%、0.3%)、低濃度の緩衝液(例えば、0.1%、0.0%)よりも多量のリン酸クリンダマイシンが分解する。さらに、リン酸クリンダマイシンは、pH値が低ければ低いほど安定である。
【0084】
実施例2
この実施例は、容器内の異なる内層裏打ち材を用いてリン酸クリンダマイシンの安定性に対するpHの影響を示す。一般に、下記を除いて、実施例1の手順に従った。
【0085】
エポキシ-フェノール、ポリアミド-イミド(PAM)またはマイクロフレックス(Micoflex)の裏打ち材の缶を用いて、無緩衝のpH 4.5を含むpH 4.5または6.5の低い緩衝液濃度について試験を行った。PAMで裏打ちされた缶のいくつかは、むき出しのアルミニウムに対する腐食性を調べるために内部に引っ掻き傷を作った。缶は4℃、40℃および50℃で4週間保存後に検査した。結果を図4に示す。
【0086】
図4に示す通り、リン酸クリンダマイシンの安定性には緩衝液の存在は必ずしも必要でない。さらに、PAMで裏打ちされた容器は、予想外に高いリン酸クリンダマイシンの安定性をもたらした。さらに、意図的に内部に引っ掻き傷を作った容器は最終的に缶の内容が漏出した。従って、容器の裏打ち材の完全性はリン酸クリンダマイシンの安定性の維持に重要である。
【0087】
一般に、50℃ではリン酸クリンダマイシンの比較的重度の分解が認められて、40℃ではリン酸クリンダマイシンの中等度の分解が認められた。しかし、リン酸クリンダマイシンは50℃では不安定であるため(データは示さない)、この温度での試験は本物質の環境温度での安定性の予測に用いることはできない。予想通り、一般にリン酸クリンダマイシンの分解は温度が高ければ高いほど迅速である。
【0088】
実施例3
この実施例は、水酸化カリウムをpH調整物質として用いて、リン酸クリンダマイシンの安定性に対するpHの影響を示す。一般に、下記を除いて、実施例1の手順に従った。
【0089】
リン酸クリンダマイシン発泡組成物の2段階のpH値について試験を行った:未調整の「自然」pHである4.5;および水酸化カリウムを用いた調整pHである5.5。試験した缶は、PAMまたはマイクロフレックスの裏打ち材で裏打ちされていた。PAMで裏打ちされて内側に引っ掻き傷を作った缶についても試験を行った。試料は4℃、25℃、40℃および50℃で12カ月まで保存した。
【0090】
この試験により、前記の表1に示す製剤が選択されて、目標pHは5.0(40℃での調製基剤のpH)であった。このpHは水酸化カリウムを用いて調整される。PAMは、リン酸クリンダマイシン発泡組成物の好ましい容器裏打ち材であることが確認された。
【0091】
さらなる試験の結果、約5のpHを達成するためには、表1に示す通り10%水酸化カリウム溶液の約0.11%が必要であることが明らかとなった。
【0092】
実施例4
この実施例は、様々な条件下でのリン酸クリンダマイシンの安定性を示す。
【0093】
上記の安定性実験(即ち、実施例1、2および3)における各時期/温度ポイントにおいて、次のパラメータについても測定した:重量消失、噴霧率、圧力、pH(40℃での脱ガス処理した基剤のpH)、力価(HPLCによるリン酸クリンダマイシンの濃度)、分注および融解時の外観、ならびに缶の裏打ち材およびバルブの相互作用。
【0094】
温度間で、または時間を通して、試験の実施中に噴霧率、圧力、または分注および融解時の外観にごくわずかな変化が認められた。缶裏打ち材の相互作用はエポキシ-フェノール裏打ち材についての初期試験においてのみ認められた。バルブの相互作用は認められなかった。
【0095】
この安定性試験における重量消失、pHおよび力価試験の結果を図5に示す。図5に示す通り、pH 4.5およびpH 5.5、25℃におけるリン酸クリンダマイシンの濃度の変化は6カ月間を通して最小限であり、これに対して40℃では10%近い低下が認められた。クレオシンTにおけるリン酸クリンダマイシンの分解は、同様のパターンを示した。全体として、このデータは、通常の保存温度におけるリン酸クリンダマイシンの良好な安定性を示した。主な分解物はクリンダマイシン基剤である。
【0096】
pH 4.5(自然pH)およびpH 5.5(調整pH)の双方の製剤が、4℃および25℃においてわずかな重量消失を示したが、温度上昇に伴って重量消失の速度は亢進した。3カ月間保存後、25℃、40℃および50℃において、それぞれ、約0.10g、約0.25gおよび約0.45gの消失が記録された。
【0097】
実施例5
この実施例は、本発明のリン酸クリンダマイシン発泡組成物の安定性を示す。
【0098】
上記の表1と同様のリン酸クリンダマイシン発泡組成物を、25℃および40℃で保存した。各発泡組成物について、外観(例えば、色調などの発泡体の特性)、pH、ならびにHPLCを用いて分析されるリン酸クリンダマイシンの相対量を毎月分析した。0〜9カ月の様々な時期における安定性試験の結果を表5に示す。
【0099】
(表5)1%リン酸クリンダマイシン発泡体の安定性試験の結果
容器: 35×125mmアルミニウム缶
クロージャー: 1”アルミニウムカップのディップチューブ

A=操作時に白色の発泡体を生じる。40℃において製品は無色〜淡黄色の透明な溶液であり、視認可能な異物はない。
B=製品と、缶、裏打ち材またはバルブとの相互作用を示す視認可能な証拠はない。
【0100】
実施例6
この実施例は、本発明のリン酸クリンダマイシン発泡体の有効性を評価するための臨床試験を示す。
【0101】
臨床試験は、複数の施設において実施された。合計125名の男性および女性患者の軽度ないし中等度の尋常性挫瘡、年齢12歳以上が無作為化・二重盲検試験のために選択された。各被験者は、1%リン酸クリンダマイシン発泡体、ビヒクル発泡体(即ち、プラセボ)、または1%リン酸クリンダマイシン局所ゲルの3種類の治療の一つを受けた。被験者は2:1:2(リン酸クリンダマイシン発泡体:プラセボ:リン酸クリンダマイシン局所ゲル)の割合で無作為化された。
【0102】
無作為化後、被験者を治療群に割り付けた。被験者および看護士/コーディネーターは、割り付けられた治験薬の剤形(発泡体またはゲル)について盲検化されなかった。発泡体治療群(活性化合物またはプラセボ)への割付は、被験者、看護士/コーディネーター、および治験責任医師に対して盲検化された。治験責任医師/被指名人(即ち、訓練を受けて薬効評価の実施に任命された担当者)は割り付けられた治験薬の剤形(発泡体またはゲル)について盲検化されて、被験者はこの情報について治験責任医師/被指名人と話題にしないように指示された。
【0103】
試験期間は12週間として、診察はベースライン(試験0週、試験1日)、試験3週、試験6週、試験9週および試験12週とした。治療はいずれも、1日1回(朝または夜)、12週間、行われた。約50名の被験者がリン酸クリンダマイシン発泡体治療群に無作為に割り付けられて、約25名の被験者がプラセボ群に無作為に割り付けられて、約50名の被験者がリン酸クリンダマイシンゲル群に無作為に割り付けられた。被験者は、顔全体をカバーするように十分な量の治験薬を適用した。被験者の頚部、上胸部、および/または上背部に挫瘡がある場合、被験者はそれらの領域にも治験薬を適用することが許可された。但し、頚部、上胸部、および上背部領域は薬効評価には含まれなかった。
【0104】
治験薬の薬効は、ベースライン、ならびに試験3、6、9および12週における病変数(総数、炎症性、非炎症性)、および治験責任医師の静的総合評価(5段階スケール)に基づいて評価した。試験12週の時点で、6段階スケールを用いた治験責任医師のさらなる静的総合評価を実施した。さらに、被験者の総合評価をベースライン、ならびに試験3、6、9および12週に行った。薬効の結果を次の表6に示す。この表は本発明の発泡体が優れた薬効を持つことを示す。
【0105】
(表6)薬効試験の結果

【0106】
薬効試験結果が示す通り、本発明のリン酸クリンダマイシン発泡組成物は現在販売されているクリンダマイシンゲル組成物よりもはるかに有効である。
【0107】
実施例7
この実施例は、本発明のリン酸クリンダマイシン発泡体の有効性を評価するために、より多くの被験者を用いた二番目の臨床試験を示す。
【0108】
年齢12歳以上の男性および女性の軽度〜中等度尋常性挫瘡患者1026名を対象とした12週間、多施設(18医療機関)、無作為化、二重盲検、ダブルダミー、ビヒクル対照試験が実施された。被験者は、治験責任医師の静的総合評価(ISGA)2以上(表7を参照)、鼻部病変を含む顔面の炎症性病変(丘疹および膿疱)17〜40、および鼻部病変を除く顔面の非炎症性病変(開放性および閉鎖性面皰)20〜150を示した。
【0109】
被験者の全般的健康状態は良好であった。何らかの活動性結節-嚢胞性病変または限局性回腸炎もしくは炎症性腸疾患の既往を持つ被験者は参加から除外された。被験者が挫瘡の治療に下記を使用していた場合も参加から除外された:試験前の4週間以内における全身性の抗生物質またはステロイド療法;試験前の3カ月以内における全身性レチノイド;または試験前の4週間以内における局所抗挫瘡薬もしくは局所性抗生物質。被験者のエストロゲンまたはアンドロゲン使用が12週間またはそれよりも短い期間内に変更されていた場合、または被験者が次のいずれかのタイプの製品もしくは処置を並行して使用することが意図された場合も、被験者は除外された:過酸化ベンゾイル、サリチル酸、レチノール、α-またはβ-ヒドロキシ酸、神経筋遮断物質、人工日焼け室、日光浴、顔面の処置(化学的またはレーザーピールなど)、または挫瘡を増悪させることが知られている医薬品。
【0110】
被験者は登録されて、4治療群のいずれかに3:3:1:1の割合で無作為化された:(1)1%リン酸クリンダマイシン発泡体:(2)1%リン酸クリンダマイシンゲル;(3)ビヒクル発泡体;または(4)ビヒクルゲル。試験期間は12週間として、診察はベースライン、ならびに試験3、6、9および12週に行った。治療はいずれも、1日1回(朝または夜)、12週間、行われた。
【0111】
各治療の薬効は、各診察時における挫瘡病変数(総数、炎症性、および非炎症性)、顔面の尋常性挫瘡に関する治験責任医師の静的総合評価、および被験者の総合評価を実施して評価した。安全性は、バイタルサイン、臨床検査の評価、および報告された有害事象から評価した。さらに、尋常性挫瘡の徴候(スケーリング、乾燥、紅斑、油性など)および症状(灼熱感、そう痒症など)の程度の評価はすべての診察時に実施した。顔面の尋常性挫瘡に関する治験責任医師の静的総合評価において用いられたスケールを次の表7に示す。薬効の結果を以下の表8(治験責任医師の静的総合評価)、表9(炎症性病変数の減少パーセント)、表10(非炎症性病変数の減少パーセント)、および表11(総病変数の減少パーセント)に示す。
【0112】
(表7)顔面尋常性挫瘡に関する治験責任医師の静的総合評価

【0113】
(表8)治験責任医師の静的総合評価:試験12週における成功患者

注:成功は、試験12週(または、治療終了)の時点で治験責任医師の静的総合評価スコア 0または1の被験者の割合として定義される。
1 クリンダマイシン発泡体とクリンダゲル(Clindagel)(商標)の成功率の差に関する両側95%信頼区間。
2 P値は、医療機関別に層化されたCochran-Mantel-Haenszel検定より導かれた値であり(α=0.05)、クリンダマイシン発泡体とビヒクル発泡体を比較する。
クリンダマイシン発泡体対クリンダゲル(商標)の治療成功に関する医療機関別オッズ比の均一性に関するBreslow-Day検定:p=0.9455、クリンダマイシン発泡体対ビヒクル発泡体 p=0.6506。
【0114】
(表9)ベースラインから試験12週までの炎症性病変数の減少パーセント

1 クリンダマイシン発泡体とクリンダゲル(商標)の平均減少パーセントの差に関する両側95%信頼区間。治療対医療機関相互作用:p=0.7291
2 P値は、治療および医療機関に関するパラメトリックANOVAモデル(上段)およびランク変換モデル(下段)から導かれて(α=0.05)、クリンダマイシン発泡体をクリンダゲル(商標)およびビヒクル発泡体とそれぞれ比較する。
【0115】
(表10)ベースラインから試験12週までの非炎症性病変数の減少パーセント

1 クリンダマイシン発泡体とクリンダゲル(商標)の平均減少パーセントの差に関する両側95%信頼区間。治療対医療機関相互作用:p=0.6922
2 P値は、治療および医療機関に関するパラメトリックANOVAモデル(上段)およびランク変換モデル(下段)から導かれて(α=0.05)、クリンダマイシン発泡体をクリンダゲル(商標)およびビヒクル発泡体とそれぞれ比較する。
【0116】
(表11)ベースラインから試験12週までの総病変数の減少パーセント

1 クリンダマイシン発泡体とクリンダゲル(商標)の平均減少パーセントの差に関する両側95%信頼区間。治療対医療機関相互作用:p=0.6782。
2 P値は、治療および医療機関に関するパラメトリックANOVAモデル(上段)およびランク変換モデル(下段)から導かれて(α=0.05)、クリンダマイシン発泡体をクリンダゲル(商標)およびビヒクル発泡体とそれぞれ比較する。
【0117】
試験に登録された1026名の被験者の内、54%が女性であり、46%が男性であった。被験者の大部分は白色人種であり(64%)、平均年齢は18.9歳(範囲 12〜55歳)であった。試験の年齢分布は均一であり、50%(1026名中516名)が12〜16歳の年齢群であり、50%(1026名中510名)が17歳以上の年齢群であった。ベースラインの時点での病変数(総数、炎症性および非炎症性)は、すべての治療群を通じて同等であった。全体として、被験者の大部分(54%;1026名中549名)がベースラインの時点で治験責任医師の静的総合評価スコア3であり、分布は治療群を通じて同等であった。ベースラインの治療群の人口統計学または疾病の特徴に、顕著な差違はなかった。
【0118】
薬効試験の結果が示す通り(表8〜11を参照)、本発明のリン酸クリンダマイシン発泡組成物は3種類のすべての病変数(総数、炎症性および非炎症性)の平均減少パーセントに基づいて1%リン酸クリンダマイシンゲルよりも臨床効果の点で統計学的に優れていて、治療終了の時点で3種類のすべての病変数(総数、炎症性および非炎症性)の平均減少パーセントおよび治験責任医師の静的総合評価に基づく治療成功においてビヒクル発泡体よりも統計学的に優れている。
【0119】
さらに、本発明のリン酸クリンダマイシン発泡組成物は、極めて良好な忍容性を示した。最も広く報告された皮膚の有害事象は適用部位の灼熱感であった:クリンダマイシン発泡体群の被験者の6%(386名中24名);クリンダゲル(商標)群の被験者の1%(385名中3名);ビヒクル発泡体群の被験者の7%(127名中9名);およびビヒクルゲル群の被験者の2%(128名中2名)。但し、これらの事象は軽度ないし中等度であり、間欠性で、しかも試験において被験者は良好な忍容性を示した。そう痒症および乾燥を含めて、クリンダマイシン発泡体に関して報告されたその他のすべての適用部位の反応は被験者の<2%において発現した。
【0120】
実施例8
この実施例は、1日1回のリン酸クリンダマイシン局所用ゲル製剤に対するリン酸クリンダマイシン発泡体製剤の比較吸収に関する試験を示す。
【0121】
方法:リン酸クリンダマイシン1%発泡体製剤(クリンダマイシン発泡体)の薬物動態学的吸収プロフィールをリン酸クリンダマイシン1%ゲル製剤(クリンダマイシンゲル)のそれと比較した。この試験は、12歳以上の男性および女性の軽度〜中等度尋常性挫瘡患者を対象とした一施設、無作為化、オープンラベル試験であった。各治療において、クリンダマイシン発泡体またはクリンダマイシンゲルを1日1回、午前中に5日間にわたって投与した。被験者は、各適用時に治験薬の4gを顔面、頚部、上胸部および上背部に適用した。吸収の評価は治療5日目に実施して、最終適用後12時間を通して採取された血漿および尿中のクリンダマイシンを測定した。血漿試料は、治療1日目の投与前(即ち、治験薬投与開始前)、ならびに試験5日目の適用前30分以内、適用後1時間、2時間、4時間、8時間および12時間に採取した。尿は、クリンダマイシンの排出を調べるために5日目に12時間にわたって採集した。治療忍容性は報告された有害事象によって評価した。
【0122】
人口統計学:24名の被験者が登録されて、二つの治療の一方を受けるように無作為化された(22名の被験者は白色人種であり、1名は黒色人種、1名はヒスパニックであった)。被験者の平均年齢は19歳(範囲:13〜46歳)であり、平均身長は66.9インチ(範囲:62〜71インチ)、平均体重は146.1ポンド(範囲:113〜185ポンド)であった。
【0123】
薬物動態試験の結果:クリンダマイシン濃度は、クリンダマイシン発泡体投与後には12名中11名の被験者において検出可能であり、クリンダマイシンゲルの投与後には12名全員の被験者において検出可能であった。全体として、平均CmaxおよびAUC(0-12)の値はクリンダマイシンゲルに比してクリンダマイシン発泡体においてより低い値であり、平均Cmaxは25%低く、AUC(0-12)は9%低い値を示した;平均Tmax値は二治療群間で同等であった(表12および図6を参照されたい)。尿中に排出されたクリンダマイシン投与画分は、両治療群とも最小限であり、クリンダマイシンゲル適用後の0.30%に対してクリンダマイシン発泡体適用後には0.24%であった。
【0124】
(表12)薬物動態
クリンダマイシンのパラメータ(血漿中クリンダマイシン濃度)

【0125】
安全性:試験期間中、有害事象はほとんど報告されなかった:24名中わずかに4名の被験者が治験薬開始時から試験完了時までに合計で4件の有害事象を報告した。クリンダマイシン発泡体治療群に割り付けられた2名の被験者はそれぞれ1件の有害事象を報告して(即ち、適用部位の乾燥および頭痛NOS)、クリンダマイシンゲル治療群に割り付けられた2名の被験者はそれぞれ1件の有害事象を報告した(即ち、水疱および浮動性めまい)。大半の有害事象は軽度であり、治験薬の投与には関連しないと考えられた;適用部位の乾燥の報告のみは、おそらく治験薬の投与に関連した。死亡、重篤な有害事象、下痢のエピソード、またはその他の重要な有害事象の報告はなく、5日目のすべての採血完了(試験終了)前に試験を中止した被験者はいなかった。
【0126】
結論:クリンダマイシン発泡体投与後のクリンダマイシン吸収の程度は比較的小さかったが、クリンダマイシンゲル投与後と同様であった。5日目の血漿における平均Cmaxおよび平均AUC(0-12)は、クリンダマイシンゲル治療群に比してクリンダマイシン発泡体治療群において、それぞれ、25%および9%低い値であった。投与直後の12時間におけるクリンダマイシンの尿中排出量は、クリンダマイシン発泡体治療群において、21%低い値であった。4gの用量で連続5日間にわたって局所的に投与したクリンダマイシン発泡体は、安全であり、被験者は良好な忍容性を示した。
【0127】
実施例9
この実施例は、ヒト皮膚モデルの系を用いたインビトロにおける様々なリン酸クリンダマイシン製剤の皮膚浸透性に関する比較試験を示す。
【0128】
要約
試験の目的は、(1)クリンダマイシンのインビトロにおける経皮的吸収を定量的に調べること;ならびに(2)(1)本発明の1%リン酸クリンダマイシン発泡体製剤(発泡体)、(2)1%クリンダゲル(商標)局所用ゲル製剤(ゲル)、および(3)1%クレオシンT(登録商標)溶液製剤(溶液)のデルマトームしたヒト皮膚における限界用量法およびインライン分散細胞を用いた適用後の異なる皮膚コンパートメントにおけるクリンダマイシンの分布を調べることであった。
【0129】
方法:製剤(発泡体、ゲルおよび溶液)について、3名の異なる皮膚ドナーから採取した皮膚切片におけるクリンダマイシンの経皮的吸収性を調べた。皮膚切片に対して24時間適用して、この間に後続の分析に備えて皮膚レセプター液を4時間毎に採取して保存した。適用期間終了時に皮膚の表面を洗浄して、皮膚を表皮および真皮に分割した。続いて、質量分析を接続した高速液体クロマトグラフィー(LC/MS)を用いて、皮膚表面の洗液、表皮、真皮、およびレセプター液の試料についてクリンダマイシンを分析した。
【0130】
結果:24時間の適用期間終了時に、溶液製剤はレセプター液に最も多量のクリンダマイシンを含有して、発泡体製剤およびゲル製剤の順でこれに次いだ(次の表13を参照されたい)。表13に示す通り、適用後24時間の時点における発泡体製剤および溶液製剤群のレセプター液中累積クリンダマイシン量に有意差はなかった(p>0.1)。この時点で、発泡体製剤および溶液製剤とも、ゲル製剤よりも多量のクリンダマイシンをレセプター液中に送達した(p<0.1)。表皮には、すべての製剤からほぼ等量のクリンダマイシンが検出された。しかし、ゲル製剤では、発泡体製剤および溶液製剤よりも多量のクリンダマイシンが真皮に検出された。発泡体製剤および溶液製剤における真皮のクリンダマイシン量は同等であった。
【0131】
(表13)適用後24時間のレセプター液および皮膚におけるクリンダマイシン(平均値±標準誤差)

【0132】
三製剤の流出プロフィールは外見上、非常に類似していて、初回時点(即ち、適用後0時間〜4時間)で最大速度に達して、その後は安定的に減少した。最も高い最大速度は溶液製剤から得られ、次いで、発泡体製剤、ゲル製剤の順であった。
【0133】
結論:発泡体製剤は、現在のインビトロにおける皮膚浸透試験において、クリンダマイシンの最大送達を示した溶液製剤と同等のプロフィールでクリンダマイシンを送達した。発泡体製剤および溶液製剤の表皮、真皮およびレセプター液中のクリンダマイシン量はほぼ等しく、顕著な差違を示さなかった。
【0134】
実施例10
緒言
1%クリンダマイシン発泡体製剤は、挫瘡の局所治療薬として適している。現在市販されている製品とは対照的に、この発泡体製剤はすっきりとして素早く非着色性の薬剤送達を提供して、皮膚表面の残留はほとんどない。本試験は、発泡体製剤、ゲル製剤および溶液製剤によるクリンダマイシンの送達、皮膚透過性プロフィール、および皮膚における薬剤分布について検討および比較した。
【0135】
このインビトロにおけるヒト皮膚透過モデルは、局所適用された薬剤の経皮的吸収試験および薬物動態検討のための有効なツールであることが証明されている。この方法は、従来からインビボにおける経皮的吸収キネティクスにおける正確な予測に用いられている。このモデルでは、皮膚を典型的なインビボ条件に相当する温度および湿度に維持するように特別にデザインされた拡散チャンバーまたは細胞に摘出されたヒト皮膚をマウントして使用する。皮膚の外部表面に製剤の限界用量(例えば、4〜6mg/cm2)を適用して、皮膚の内側表面を浸漬するレセプター液における薬剤出現速度をモニターすることによって薬剤吸収を測定する。皮膚の含有量は、異なる皮膚層から薬剤を抽出および分析することによって測定することができる。このように、このモデルを用いると、皮膚内部および皮膚表面における総吸収、吸収速度および薬剤分布を明らかにするデータを正確に求めることができる。
【0136】
逸脱
一つの細胞(1G)が皮膚完全性試験を通らなかったので、代わりに無投与対照として使用した。その他の細胞に、結果から除外されたものはなかった。
【0137】
被験物質
分析標準はSigma ChemicalsおよびUnited States Pharmacopeia(USP)から入手した。
【0138】
被験製剤は次の通りであった:
1. 発泡体:本発明の1%リン酸クリンダマイシン発泡体;製造者ロット番号 SEAX-C。
2. ゲル:1%クリンダゲル(商標)局所用ゲル(1%クリンダマイシンに相当するリン酸クリンダマイシン局所用ゲル;Galderma Laboratories, L. P., Fort Worth, TX);製造者ロット番号 RFDA。
3. 溶液:1%クレオシンT(登録商標)溶液(リン酸クリンダマイシン局所用溶液、USP;1%(10mg/mL)クリンダマイシン相当;Pharmacia & Upjohn Company,Kalamazoo, MI);製造者ロット番号 89FTK。
【0139】
方法および手順
方法論:経皮的吸収は、インビトロにおける皮膚限界用量法を用いて測定した。整形外科手術から得られた皮膚疾患の明らかな徴候のないヒト腹部皮膚を本試験に用いた。皮膚サンプルを約0.25mmにデルマトームして、防水容器に入れて密封して、実験当日まで〜−80℃に保存した。皮膚試料は、使用前に容器を環境温度に曝すことによって融解処理した。
【0140】
単一のドナーに由来する皮膚を刻んで多くの小さな組織片としたが、インライン分散セル(Permegear Inc. Bethlehem, PA)の0.64cm2の暴露領域にセットし得る十分な大きさは維持した。皮膚チャンバーは10倍希釈したリン酸緩衝等張生理食塩液(PBS)、pH 7.4±0.2のレセプター液で満たして、表皮チャンバーは実験環境に開放して放置した。続いて、皮膚チャンバーの温度を37℃±0.2℃に維持する細胞ウォーマーにセットした。
【0141】
各皮膚切片の完全性を確保するために、被験製剤の適用前にトリチウム水に対する透過性を測定した(Franz et al., Abst. J. Invest. Derm., 94: 525 (1990))。短時間(0.5〜1時間)の平衡期間後、ピペットを用いて露出した表面全体が覆われるように、皮膚の上部に3H2O(Moravek, CA, 比活性 約5 μCi/mL)の100μLを重層した。5分後に3H2O水層を除去した。30分の時点で、レセプター液を回収して、液体シンチレーション計測法により放射能含有量を分析した。3H2Oの浸透が適用量の1.75%よりも少なかった皮膚標本を許容可能と見なした。
【0142】
投与および試料採取: 先ず、発泡体製剤を20mL容バイアルに発泡体状で分注して、この発泡体を完全に液化させるために水槽に入れて37℃に加温した。次に、5μLを分注するようにセットしたポジティブディスプレイスメントピペットを用いてすべての製剤を皮膚切片に適用した。各被験製剤は、5μL/0.64cm2の目標用量で同一ドナー皮膚の3反復切片に適用した。ピペットの先端で、薬剤を表面全体に広げた。皮膚切片に対して24時間適用して、この間に分析に備えて皮膚レセプター液を4時間毎に採取して保存した。無投与皮膚を用いた予備チャンバーを使用して、分析アッセイ中にあらゆる干渉物質を調べた。
【0143】
24時間の適用期間終了時に、最終のレセプター液の試料採取後、皮膚表面をアセトニトリル50μLを適用して洗浄して、予めカットしたティッシュペーパーで続けて2回拭き取って、透明なテープを用いて続けて2回はぎ取った。ティッシュペーパーおよびテープをバイアルに収容した。皮膚を50℃のヒートブロックに1.5分間載せて、次に、皮膚から表皮を慎重に剥離して1本のバイアルに収容し、残りの皮膚組織片(真皮)はもう1本のバイアルに収容した。これらの3本の各バイアルに、試料から薬剤を抽出するためにアセトニトリル5mLを加えた。
【0144】
試料の調製:クリンダマイシンは、試料の3.0mL(内部標準の塩酸リンコマイシン 200μLを添加した)を固相抽出法(C18 SPEカートリッジ)にかけてメタノール0.5mLでクリンダマイシンを溶出することによって、レセプター液から抽出した。強振盪後、溶液100μLを、Milli-Q純水 900μLを分注したHPLCバイアルに加えて、分析前に十分に混合した。アセトニトリルをベースとする試料から、溶液100μLを試験管内で内部標準液 100μLと混合した。Milli-Q水 800μLを添加後、試験管を遠心分離して、上清を分析のためにHPLCバイアルに移した。
【0145】
分析方法: クリンダマイシンの定量は、Micromass LC/MS/MSシステムの質量分析付き高速液体クロマトグラフィー(LC/MS/MS)により実施した。アセトニトリル、メタノール、水、および蟻酸からなる移動相(33%:33%:33%:0.1%)を、環境温度、流量 0.05mL/minにてKeystone Aquasil C18カラム(1.0×30mm、3μ)に注入した(分析時間 5分間)。試料40マイクロリットルを注入した。溶出ピークはM/Z 425>126Daにてモニターした。ピーク面積は、内部標準の塩酸クリンダマイシンに関連する塩酸クリンダマイシンを外部標準として、濃度に対して定量した。
【0146】
中枢試験の詳細:この試験は、クリンダマイシンの経皮的吸収に対する異なる製剤の影響について検討するためにデザインされた。それぞれ9〜10反復組織片にカットされた3検体の皮膚ドナー試料を用意して、チャンバーにセットした。レセプター液の試料は、適用後24時間まで4時間毎に採取した。全体を通じて使用したレセプター液はPBS(即ち、1mMリン酸緩衝液、25℃においてpH 7.4;BioChemika)であった。適用した薬剤の物質収支を求めるために、表面洗液、表皮および真皮の抽出液を分析した。異なる製剤のデータを比較して、多重比較のためのStudent-t検定を用いて統計学的な差を評価した。
【0147】
結果
(表14)皮膚完全性試験の結果

* 結果は適用した3H2O%±標準偏差として報告する;
受け入れ:<1.75%。すべての皮膚試料は腹壁形成術から入手した。ドナーの年齢は不明である。
** 試験を失敗した1つの細胞を除く。
【0148】
薬剤含有量および分布: 試験した製剤におけるクリンダマイシンの平均経皮的吸収の結果は、24時間における累積浸透量(即ち、平均総吸収)として図7に、また24時間の流出プロフィールを図8にグラフで示す。数値データは下記の表15に示す。図9は、異なる皮膚層におけるクリンダマイシンの分布を示す。
【0149】
(表15)適用後24時間における皮膚表面上、皮膚層内部、およびレセプター液におけるクリンダマイシンの分布(平均値±標準誤差)

【0150】
図7では、24時間に皮膚を介して浸透したクリンダマイシンの累積量が初回時点で既にすべての製剤において急激に増加して、24時間近くには次第にプラトーに達していた。溶液製剤は最も多量のクリンダマイシンを送達して、次いで発泡体製剤およびゲル製剤の順であった。溶液製剤および発泡体製剤はいずれも、24時間の時点までにゲル製剤よりも有意に多いクリンダマイシンをレセプター液に送達した(それぞれ、p<0.06およびp<0.05)。発泡体製剤および溶液製剤に対する24時間までのレセプター液中の累積クリンダマイシン量に、有意差はなかった(p>0.1)。
【0151】
これは流出プロフィールからさらに認めることができる。図8の流出プロットは、すべての製剤において初回時点(適用後0〜4時間)で最大送達速度に達して、その後、安定的に減少したことを示している。3つの製剤の流出プロフィールは、形上、極めて類似していた。最も高い最大速度は溶液製剤から得られ、次いで、発泡体製剤、ゲル製剤の順であった。
【0152】
表皮には、すべての製剤においてほぼ等量のクリンダマイシンが検出された。ゲル製剤では真皮におけるクリンダマイシン量が多かったが、発泡体製剤および溶液製剤の真皮におけるクリンダマイシン量はほぼ等しかった。
【0153】
洗液から回収された量は、クリンダマイシンがテープの粘着物質に対して高親和性であり、試料調製中に濾過されたために、極めて低かった。実験の物質収支も表15に示す。
【0154】
結論
この試験から得られたデータより、以下のことが実証された:
1. 発泡体のビヒクルはゲル製剤よりも皮膚を介しての多量のクリンダマイシン送達を促進するが、溶液製剤よりは少量であった;
2. すべての製剤の適用後直ちに最大流出速度が達成されて、最大値から最小値までの程度は溶液>発泡体>ゲルの順であった;さらに
3. 24時間の時点における皮膚分布はすべての製剤において表皮に等量のクリンダマイシンを示して、ゲル製剤の真皮における量は発泡体製剤および溶液製剤よりも若干多かった。
【0155】
このように、この試験は、本発明のリン酸クリンダマイシン発泡体製剤がより高い流出速度での皮膚を介したクリンダマイシン送達の促進に関して、クリンダマイシンゲル製剤よりも優れていることを示す。さらに、クリンダマイシン溶液製剤とは異なり、本発明のリン酸クリンダマイシン発泡体製剤は適用部位からそれほど容易には流出せず、より制御された量のクリンダマイシンの投与が行われる。
【0156】
実施例11
この実施例は、リン酸クリンダマイシンおよびトレチノインの組み合わせを含む本発明の非アルコール性およびアルコール性発泡組成物を例証する。

【0157】
項目1〜4を混合容器Aに一項目ずつ加える。項目5〜9は混合容器Bに一項目ずつ加える。各相を約60℃に加温する。攪拌しながら、A相にB相を加えて、均質となるまで混合して、30℃に冷却する。次に、エアロゾール基剤(項目10)をエアロゾール缶に加えて、このエアロゾール缶にバルブを固定する。噴霧剤(項目11)をエアロゾールパッケージ(即ち、エアロゾール基剤入りのバルブ付きエアロゾール缶)に加える。エアロゾールパッケージを55℃の水槽に1〜2分間入れた後、十分に振盪して、室温まで冷却する。エアロゾールパッケージは分注直前に振盪する。

【0158】
項目1〜5を混合容器Aに一項目ずつ加える。項目6〜10を混合容器Bに一項目ずつ加える。攪拌しながら、B相をA相に加えて、均質となるまで混合する。次に、エアロゾール基剤(項目11)をエアロゾール缶に加えて、このエアロゾール缶にバルブを固定する。噴霧剤(項目12)をこのエアロゾールパッケージ(即ち、エアロゾール基剤を含むバルブ付きエアロゾール缶)に加える。エアロゾールパッケージを55℃の水槽に1〜2分間入れた後、十分に振盪して室温まで冷却する。エアロゾールパッケージは分注前に振盪する。
【0159】
実施例12
この実施例は、リン酸クリンダマイシンおよび過酸化ベンゾイルの組み合わせを含む本発明の非アルコール性およびアルコール性発泡組成物を例証する。




【0160】
実施例13
この実施例は、本発明のリン酸クリンダマイシン発泡組成物の大量生産を例証する。
【0161】
混合および製造には二つの混合容器を使用した。一つのステンレススチールタンクは、添加物(セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート60、およびプロピレングリコール)を含むエタノール相の溶液を調製するために使用した。二番目のステンレススチールタンクは、活性物質および水酸化カリウムの水溶液の調製に使用した。先ず、水およびエタノールをそれぞれのタンクに分注して、重量を測定した後、成分を投入した。次の成分の投入前に、各成分が溶解するまで溶液を混合した。次に、双方の相を充填容器に移した。水槽は、充填容器に移す前に0.2ミクロンのフィルターに通して濾過した。各充填容器は充填ラインの充填ラムの前に10ミクロンのフィルターに接続して、分配はポジティブディスプレイスメントのダイアフラムポンプによって制御した。各液相のアリコートを各々の缶に独自に分注して、その後、吸引圧着して密封した。次に、計量された量の噴霧剤がバルブを介して注入されて、製剤が完成した。次いで、各缶は最終的にアクチュエーターおよびキャップ、インクジェットラベル表示、ならびに二次的包装をセットする前に、漏出試験を行った。
【0162】
上記の通り、リン酸クリンダマイシン発泡組成物の調製にはエタノール性溶液および水溶液がそれぞれ調製された。エタノールは、水溶性の低いセチルアルコールおよびステアリルアルコールを素早く完全に溶解するために用いられる。ポリソルベート60およびプロピレングリコールは、エタノールおよび水に混和性の液体である。活性化合物は乾燥性の固体であり、水に容易に溶解する。水酸化カリウム溶液はpH調整のために添加される。
【0163】
実施例14
この実施例は、定性的および定量的方法において発泡体製品を特徴付けるために実施することのできる発泡体品質判定スケールおよび一連の実験について説明する。
【0164】
この特定の実施例において、発泡体は、視覚的補助のような発泡体試料の観測可能な物理特性に従って判定される:
1. 液体 − 分注時に分注領域から容易に流動する粘度の低い液体として分析される。「液体」は細かい気泡を持つこともあり、炭酸飲料と同等の外観を呈する。一般に、「液体」は同様の基質上に分注された水または牛乳の試料と同等の流動特性を示す。
2. 流動性発泡体 − 分注時に分注領域から容易に流動する立体感のある半固形状の発泡体構造として分析される。一般に、「流動性発泡体」は比較的大きな気泡サイズを持ち、直径は一般的に10mmよりも小さい。一般に、「流動性発泡体」はミルクセーキの上部の泡部分と同等の流動性を示す。
3. ソフト発泡体 − 分注時に分注領域から容易に流出しない立体感のある半固形状の発泡体構造として分析される。一般に、「ソフト発泡体」は比較的大きな気泡サイズを持ち、直径は一般的に5 mmよりも小さい。一般的に、「ソフト発泡体」は泡立てた卵白と同等の流動特性を示す。
4. クリーミー発泡体 − 分注時に分注領域から容易に流出しない立体感のある半固形状の発泡体構造として分析される。一般に、「クリーミー発泡体」は比較的小さな気泡サイズを持ち、直径は一般的に1 mmよりもはるかに小さい。一般に、「クリーミー発泡体」は、ホイップクリーム/シェービングクリームと同等の流動性を示す。
5. クリスプ発泡体 − 分注時に分注領域から容易に流出しない立体感のある半固形状の発泡体構造として分析される。一般に、「クリスプ発泡体」は比較的小さな気泡サイズを持ち、直径は一般的に1 mmよりもはるかに小さい。一般に、「クリスプ発泡体」は緩めに握った雪玉と同等の流動性を示して、脆い(即ち、引っ張ると簡単に割ることができる)ような同等の張力特性を示して、実質的に「固体の特徴」を持つ。
【0165】
発泡体の一般的な物理特性は、温度範囲を通した発泡体判定スケールを用いて説明される。
【0166】
気泡サイズおよび平均気泡サイズは、温度範囲を通して、適切な参照測定スケールを用いて目視により測定される。方法には、(i)計量尺度を基準とした気泡サイズの測定などの目視による方法、;および(ii)検量した接眼鏡目盛りを用いた気泡サイズの測定などの顕微鏡による方法が含まれる。
【0167】
発泡体の粘度は、適切な粘度測定装置を用いて測定される。方法には、(i)液化した発泡体が温度制御された装置内に誘導されて粘度が一連の温度範囲で測定される超低粘度アダプター付きBrookfield Synchro-lectric回転スピンドル粘度計、および(ii)発泡体の試料が円錐容器とプレートの間に誘導されて発泡体の流体力学がすれ率および温度の範囲を通して測定されるBrookfield Cone & Plate粘度計が含まれる。
【0168】
発泡体密度は、適切な密度測定装置を用いて測定される。方法には、(i)固定温度の発泡体が既知の体積および質量の固定体積容器に慎重に誘導される比重びん/ガロンカップ当たりの重量;および(ii)固定温度の緩慢な発泡体流がフロースルーセルに誘導されて振動物体法により密度が測定される電子密度/比重計が含まれる。
【0169】
発泡体膨張率は、発泡体が膨張する速度の測定である。適切な膨張率測定方法には、(i)発泡体を測定用シリンダーに誘導して占有された体積を一連の温度範囲において経時的に記録する目視による方法、(ii)横断面の面積/体積を比較的短い時間スケールで求める微速度撮影、および(iii)固定量の発泡体を一定の直径のキャピラリーチューブに誘導して発泡体が検量マークを通過する時間を記録する目視/増加率による方法が含まれる。
【0170】
製品の透明性は、製品の目視による検査により説明される。これは、製剤をプラスチックコーティングされた透明なガラス製エアロゾル容器に調製する工程、およびその製品を0℃〜30℃の範囲を通して制御された温度で保存することのできるインキュベーターに保存する工程を含む。温度は(製品が透明である最低保存温度から)約−1℃/日の割合で低下させて、観察所見を記録する。最低温度に達したら、+1℃/日の割合で温度を上昇させて観察所見を記録する。
【0171】
「最低使用温度」は、析出物が再溶解する最低記録温度(即ち、上昇温度)である。
【0172】
流動速度は流動性の測定値である。この方法は温度制御された斜面の表面に対して(または恐らく垂直表面にスプレーすることによって)一連の温度範囲で発泡体を分注する工程を含み、分注領域からの液体の移動距離および所要時間を記録する。
【0173】
本発明の前記の考察は例証および説明のために示されている。前記は本発明を本明細書に開示される1つまたは複数の様式に限定することを意図するものではない。本発明の説明は一つまたは複数の態様ならびに一部の変更および修正の説明を含んでいるが、例えば本開示を理解した後に当業者の技術および知識の範囲内であり得、その他の変更および修正も本発明の範囲内である。代替的、互換的、および/または同等の構造、機能、範囲もしくは工程が本明細書で開示されるか否かに関わらず、また特許されるいかなる対象物も公的に提供することを意図せずに、このような代替的、互換的、および/または同等の構造、機能、範囲もしくは工程を含む特許される範囲の代替的態様を主張する態様に含める権利を得ることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
15% w/wまでの少なくとも一つの薬学的に活性な化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ;
約83%から約97.9% w/wまでの急速分解性発泡物質;ならびに
炭化水素、クロロフルオロカーボン、ジメチルエーテル、ヒドロフルオロカーボン、およびその混合物からなる群より選択される約2%から約7% w/wのエアロゾル噴霧剤
を含む加圧容器入りの局所送達用組成物であって、
該容器から噴出後に急速分解性温度感受性発泡体である組成物。
【請求項2】
少なくとも一つの薬学的に活性な化合物が抗生物質である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも一つの抗生物質が、クリンダマイシン、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも一つの薬学的に活性な化合物がリン酸クリンダマイシンである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも一つの薬学的に活性な化合物が活性物質の組み合わせを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
活性物質の組み合わせが、抗生物質、抗真菌剤、レチノイド、レチノイド誘導体、サリチル酸、アゼライン酸、スルファセタミドナトリウム、および過酸化ベンゾイルからなる群より選択される少なくとも二つの物質を含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
活性物質の組み合わせが、リン酸クリンダマイシンおよびトレチノインを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
活性物質の組み合わせが、リン酸クリンダマイシンおよび過酸化ベンゾイルを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
急速分解性発泡物質が、C1〜C6アルコールおよび水を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
C1〜C6アルコール対水の割合が約1:7から約1:16である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
C1〜C6アルコール対水の割合が約1:7である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
C1〜C6アルコール対水の割合が約1:16である、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
急速分解性発泡物質が、C1〜C6アルコール、C14〜C22アルコール、水および界面活性剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
急速分解性温度感受性発泡体の発泡体分解温度が約30℃から約36℃である、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
C1〜C6アルコール対水の割合が約1.7:1である、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
界面活性剤が約0.1%から約10% w/wの量で存在する、請求項13記載の組成物。
【請求項17】
界面活性剤が、エトキシル化非イオン性界面活性剤、エトキシル化イオン性界面活性剤、およびその混合物からなる群より選択される、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
界面活性剤がポリソルベートである、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
軟化剤をさらに含む、請求項13記載の組成物。
【請求項20】
軟化剤がポリオールである、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
ポリオールが、プロピレングリコール、グリセロール、およびその混合物からなる群より選択される、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
急速分解性発泡物質中のC1〜C6アルコールの量が約55%から約65% w/wである、請求項13記載の組成物。
【請求項23】
C1〜C6アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびその混合物からなる群より選択される、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
C1〜C6アルコールがエタノールである、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
C1〜C6アルコールがエタノールおよび少なくとも一つのその他のC1〜C6アルコールの混合物である、請求項23記載の組成物。
【請求項26】
急速分解性発泡物質中のC14〜C22アルコールの量が約1%から約5.0% w/wである、請求項13記載の組成物。
【請求項27】
C14〜C22アルコールがC14〜C20アルコールである、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
C14〜C20アルコールが、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびその混合物からなる群より選択される、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
C14〜C20アルコールが、セチルアルコールおよびステアリルアルコールの混合物である、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
セチルアルコール対ステアリルアルコールの割合が約60:40から約80:20である、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
セチルアルコール対ステアリルアルコールの割合が約70:30である、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
組成物が水を90% w/wまでの量で含む、請求項1記載の組成物。
【請求項33】
組成物が水を約30%から約40% w/wまでの量で含む、請求項13記載の組成物。
【請求項34】
pH調整物質をさらに含む、請求項13記載の組成物。
【請求項35】
組成物のpHが約pH 4.0から約pH 9.0である、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
組成物のpHが約pH 4.0から約pH 6.5である、請求項35記載の組成物。
【請求項37】
約0.1%から約10% w/wの少なくとも一つの薬学的に活性な化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグ;
約83%から約97.9% w/wの急速分解性アルコール性発泡物質;ならびに
炭化水素、クロロフルオロカーボン、およびその混合物からなる群より選択される約2%から約7% w/wのエアロゾル噴霧剤
を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項38】
C1〜C6アルコールを含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項39】
挫瘡の経皮的治療のための方法であって、
急速分解性温度感受性発泡組成物をそれを必要とする被験者の皮膚に適用する工程であり、該組成物が、少なくとも一つの薬学的に活性な化合物の有効量を含み、該少なくとも一つの薬学的に活性な該化合物が、少なくともクリンダマイシンまたは薬学的に許容されるその塩もしくはプロドラッグである工程
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−225585(P2011−225585A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130433(P2011−130433)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【分割の表示】特願2006−500417(P2006−500417)の分割
【原出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【出願人】(505279949)ステフェル リサーチ オーストラリア プロプライエタリー リミティッド (3)
【Fターム(参考)】