説明

レジストパターン形成方法及びレジスト下層膜形成用組成物

【課題】多層レジストプロセスにおいて、有機溶媒現像の場合に、パターン倒れ耐性に優れるレジストパターンを形成させることができるレジストパターン形成方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、(1)レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する工程、(2)フォトレジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、(3)上記レジスト膜を露光する工程、及び(4)上記露光されたレジスト膜を、有機溶媒を80質量%以上含有する現像液を用いて現像する工程を有し、上記レジスト下層膜形成用組成物が、[A]ポリシロキサン鎖を含み、カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する成分を含有するレジストパターン形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターン形成方法及びレジスト下層膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の微細化に伴う集積度の向上を意図し、レジスト下層膜を用いる多層レジストプロセスによる加工サイズの微細化が進んでいる。かかる多層レジストプロセスのうち、レジスト下層膜がシリコン含有膜である場合について以下に説明する。まず、被加工基板上にポリシロキサンを含有するレジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成した後、レジスト下層膜上にフォトレジスト組成物を用いて、レジスト下層膜とはエッチング選択比の異なる有機膜であるレジスト膜を形成し、次いでマスクパターンを介して露光し、アルカリ水溶液等の現像液で現像することによりレジストパターンを得る。引き続きドライエッチングによりこのレジストパターンをレジスト下層膜に転写し、最終的にドライエッチングによりパターンを被加工基板に転写することにより、所望のパターンが施された基板を得る(特開2001−284209号公報、特開2010−85912号公報及び特開2008−39811号公報参照)。
【0003】
今日では、このような多層レジストプロセスを用いる場合においても、パターンをさらに微細化することが要求されている。しかし、レジスト下層膜として従来のポリシロキサンを含有する組成物を用いると、パターンの微細化に伴い、レジスト下層膜上に形成されるレジストパターンのパターン倒れが生じ易くなる。このため、レジスト下層膜形成用組成物には、レジストパターンのパターン倒れ耐性を向上させることが求められている。
【0004】
一方、レジスト膜を現像する現像液として、アルカリ水溶液よりも極性の低い有機溶媒を用いる技術が知られている(特開2000−199953号公報参照)。このような有機溶媒現像を用いた場合、光学コントラストを高くすることができ、その結果、より微細なパターンを形成することができる。そのため、アルカリ現像だけでなく、特に、有機溶媒現像の場合において、パターン倒れ耐性に優れるレジストパターンを形成させることができるレジストパターン形成方法及びレジスト下層膜形成用組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−284209号公報
【特許文献2】特開2010−85912号公報
【特許文献3】特開2008−39811号公報
【特許文献4】特開2000−199953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、多層レジストプロセスにおいて、有機溶媒現像の場合に、パターン倒れ耐性に優れるレジストパターンを形成させることができるレジストパターン形成方法及びレジスト下層膜形成用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
(1)レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(2)フォトレジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、
(3)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(4)上記露光されたレジスト膜を、有機溶媒を80質量%以上含有する現像液を用いて現像する工程
を有し、
上記レジスト下層膜形成用組成物が、
[A]ポリシロキサン鎖を含み、カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する成分(以下、「[A]成分」ともいう)
を含有するレジストパターン形成方法である。
【0008】
当該レジストパターン形成方法は、上記工程を有し、レジスト下層膜の形成に、[A]成分を含有する組成物を用いることで、有機溶媒現像を用いる多層レジストプロセスにおいて、パターン倒れ耐性に優れるレジストパターンを形成することができる。当該レジストパターン形成方法が、上記構成を有することで、上記効果を発揮する理由については必ずしも明確ではないが、例えば、形成されるレジスト下層膜中にカルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び/又は酸無水物基が存在することにより、有機溶媒現像においてレジスト下層膜上のレジストパターン中に生成するカルボキシル基等との間に適度な相互作用が生じ、その結果、レジストパターンのパターン倒れ耐性が優れるものになること等が考えられる。
【0009】
上記[A]成分は、
[a]カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するポリシロキサン(以下、「[a]ポリシロキサン」ともいう)
を含むことが好ましい。
当該レジストパターン形成方法によれば、上記[A]成分として上記特定のポリシロキサンを含むことで、有機溶媒現像においてレジスト下層膜上のレジストパターン中に生成するカルボキシル基等との間に適度な相互作用が生じると考えられ、その結果、レジストパターンのパターン倒れ耐性が優れるものになる。
【0010】
上記[A]成分は、
[b]カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するビニル重合体(以下、「[b]ビニル重合体」ともいう)、並びに
[c]ポリシロキサン
を含むことも好ましい。
当該レジストパターン形成方法によれば、上記[A]成分として上記特定の重合体とポリシロキサンとを含むことで、この特定の重合体のレジスト下層膜表面への偏在化により、表面のカルボキシル基等の存在率を高めることができる。その結果、レジストパターンのパターン倒れ耐性がより優れたものになる。
【0011】
上記[b]ビニル重合体は、ケイ素原子含有基をさらに有することが好ましい。[b]ビニル重合体は、ケイ素原子含有基をさらに有することで、[c]ポリシロキサンとの親和性が高まり、その結果、レジストパターンのパターン倒れ耐性を向上させることができる。
【0012】
上記レジスト下層膜形成用組成物は、[B]窒素含有化合物をさらに含有することが好ましい。当該レジストパターン形成方法において、用いるレジスト下層膜形成用組成物にさらに[B]窒素含有化合物を含有させることで、形成されるレジスト下層膜の酸素アッシング耐性が向上する。
【0013】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、
[a’]酸無水物基を有するポリシロキサン(以下、「[a’]ポリシロキサン」ともいう)を含有する。
【0014】
当該レジスト下層膜形成用組成物は、上記特定構造を有する[a’]ポリシロキサンを含有することで、多層レジストプロセスにおいて、有機溶媒現像の場合に、パターン倒れ耐性に優れるレジストパターンを形成させることができる。これは、例えば、上述のレジスト下層膜とレジストパターン中に生成するカルボキシル基等の間の相互作用が、[A’]ポリシロキサンが酸無水物基を有することで、強くなること等が考えられる。従って、当該レジスト下層膜形成用組成物は、当該レジストパターン形成方法に特に好適に用いることができる。また、当該レジスト下層膜形成用組成物は、例えば、カルボキシル基の親水基を有するポリシロキサンを含有するレジスト下層膜形成用組成物等に比べて、有機溶媒現像の場合だけでなく、特にアルカリ現像の場合において、パターン倒れ耐性をより向上させる効果を奏する。
【0015】
上記酸無水物基は、コハク酸無水物基であることが好ましい。上記酸無水物基を上記特定の酸無水物基とすることで、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジストパターンのパターン倒れ耐性を向上させることができる。
【0016】
当該レジスト下層膜形成用組成物は、さらに、[B]窒素含有化合物を含有することが好ましい。当該レジスト下層膜形成用組成物によれば、[B]窒素含有化合物をさらに含有することで、形成されるレジスト下層膜の酸素アッシング耐性が向上する。
【0017】
[a’]酸無水物基を有するポリシロキサンは、下記式(1a)で表されるシラン化合物(以下、「シラン化合物(1a)」ともいう)を含む化合物の加水分解縮合物であることが好ましい。
【化1】

(式(1a)中、R1aは、酸無水物基を含む1価の有機基である。Rは、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜5のアルキル基、シアノアルキル基、アルケニル基又はアリール基である。Xは、ハロゲン原子又は−ORである。Rは、1価の有機基である。aは、1〜3の整数である。bは、0〜2の整数である。但し、1≦a+b≦3の条件を満たす。)
【0018】
[a’]ポリシロキサンが上記特定構造を有するシラン化合物(1a)を含む化合物の加水分解縮合物であることで、[a’]ポリシロキサンは、シラン化合物(1a)を用いた加水分解縮合反応により、簡便に合成することができる。
【0019】
上記式(1a)のR1aは、コハク酸無水物基を含む1価の有機基であることが好ましい。[a’]ポリシロキサンが上記特定構造のシラン化合物から形成されることで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、形成されるレジストパターンのパターン倒れ耐性をさらに向上させることができる。
【0020】
ここで、本明細書において「有機基」とは、炭素原子を少なくとも1個含む基をいう。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、当該レジストパターン形成方法及び当該レジスト下層膜形成用組成物によれば、多層レジストプロセスにおいて、有機溶媒現像の場合に、パターン倒れ耐性に優れるレジストパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<レジストパターン形成方法>
本発明のレジストパターン形成方法は、
(1)レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(2)フォトレジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、
(3)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(4)上記露光されたレジスト膜を、有機溶媒を80質量%以上含有する現像液を用いて現像する工程
を有し、
上記レジスト下層膜形成用組成物が、
[A]成分を含有するレジストパターン形成方法である。
以下、当該レジストパターン形成方法における各工程及びこのレジストパターン形成方法に用いられるレジスト下層膜形成用組成物について説明する。
【0023】
[(1)工程]
(1)工程では、レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する。基板としては、例えば、シリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知の基板を使用できる。また、例えば、特公平6−12452号公報や特開昭59−93448号公報等に開示されている有機系の反射防止膜を基板上に形成してもよい。
【0024】
上記レジスト下層膜形成用組成物の塗布方法としては、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。なお、形成されるレジスト下層膜の膜厚としては、通常10nm〜1、000nmであり、10nm〜500nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。
【0025】
上記レジスト下層膜形成用組成物を塗布等した後、必要に応じて、プレベーク(PB)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。PB温度としては、レジスト下層膜形成用組成物の配合組成によって適宜選択されるが、通常50℃〜450℃程度である。また、PB時間としては、通常5秒〜600秒程度である。
【0026】
[(2)工程]
(2)工程では、フォトレジスト組成物を用い、(1)工程で形成したレジスト下層膜上にレジスト膜を形成する。当該レジストパターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物としては、形成するレジストパターンを構成する重合体等が、有機溶媒現像後にヒドロキシル基、カルボキシル基等の極性基を生じるものが好ましい。そのようなフォトレジスト組成物として、例えば、酸解離性基を有する重合体成分と、露光により酸を発生する成分とを含む組成物等が挙げられる。上記酸解離性基としては、例えば、酸の作用により解離して、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の極性基を生じる基が挙げられ、カルボキシル基を生じる基が好ましい。このようなフォトレジスト組成物を用いることで、有機溶媒現像により形成されるレジストパターンとレジスト下層膜との適度な相互作用を発揮することができるので、パターン倒れ耐性を向上することができると考えられる。
【0027】
上記フォトレジスト組成物の塗布方法及び塗布膜厚としては、(1)工程のレジスト下層膜形成用組成物におけるものと同様である。また、必要に応じて行われるPB温度としては、上記フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選択されるが、通常30℃〜200℃程度であり、50℃〜150℃が好ましい。また、PB時間としては、通常5秒〜600秒程度である。
【0028】
また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するために、例えば、特開平5−188598号公報等に開示されている保護膜を、上記形成したレジスト膜上に設けることもできる。さらに、レジスト膜からの酸発生体等の流出を防止するため、例えば特開2005−352384号公報等に開示されている液浸用保護膜をレジスト膜上に設けることもできる。なお、これらの技術は併用できる。
【0029】
[(3)工程]
(3)工程では、(2)工程で形成したレジスト膜を露光する。この露光は、所望の領域に、特定パターンのマスク及び必要に応じて液浸液を介して行う。この液浸液としては水やフッ素系不活性液体等が挙げられる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつレジスト膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。使用する水としては蒸留水、超純水が好ましい。
【0030】
露光に使用される露光光としては、例えば紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線等が挙げられる。これらのうち、遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザー光、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)がより好ましく、ArFエキシマレーザー光がさらに好ましい。露光量等の露光条件は、上記フォトレジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選択される。
【0031】
また、露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行なうことが好ましい。PEBを行なうことにより、上記フォトレジスト組成物中の重合体の酸解離性基の解離反応等を円滑に進行することができる。PEB温度としては、通常30℃〜200℃であり、50℃〜170℃が好ましい。また、PEB時間としては、通常5秒〜600秒であり、10秒〜300秒が好ましい。
【0032】
[(4)工程]
(4)工程では、(3)工程で露光されたレジスト膜を、有機溶媒を80質量%以上含有する現像液を用いて現像する。有機溶媒を80質量%以上含有する現像液を用いる有機溶媒現像によれば、レジスト膜の露光部において極性が高くなり、有機溶媒に対する溶解性が低下するため、この露光部が有機溶媒現像後にレジストパターンを構成し、その結果、ネガ型のレジストパターンが得られる。当該レジストパターン形成方法によれば、このような有機溶媒現像の場合に、パターン倒れ耐性に優れるレジストパターンを形成することができる。
【0033】
上記現像液中の有機溶媒の含有率としては80質量%以上であり、良好なレジストパターンを得る観点からは、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0034】
現像液に含有される有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒としては、例えば、後述するレジスト下層膜形成用組成物に用いる[D]溶媒として例示した溶媒等が挙げられる。これらの中で、現像液に用いる有機溶媒としては、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、エステル系溶媒がより好ましく、酢酸n−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸アミルがさらに好ましく、酢酸n−ブチルが特に好ましい。これらの有機溶媒は、1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0035】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤としては例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系界面活性剤及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
【0036】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0037】
上記現像後に形成されたレジストパターンをリンス液により洗浄してもよい。リンス液としては、例えば、アルカン系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、アミド系溶媒等の有機溶媒が用いられる。これらの中で、アルコール系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、炭素数6〜8の1価のアルコール系溶媒がより好ましく、メチルイソブチルカービノールがさらに好ましい。上記リンス液の各成分は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0038】
リンス液による洗浄処理の方法としては、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0039】
上記現像後又はリンス液による洗浄後は、通常、乾燥処理等を行うことにより、所望のレジストパターンを得ることができる。
【0040】
<レジスト下層膜形成用組成物>
当該レジストパターン形成方法に用いられるレジスト下層膜形成用組成物は、[A]成分を含有する。また、上記レジスト下層膜形成用組成物は、当該レジストパターン形成方法の効果を損なわない範囲において、[B]窒素含有化合物、[C]酸発生剤、[D]溶媒、及びその他の成分を含有してもよい。以下、各成分について説明する。
【0041】
<[A]成分>
[A]成分は、ポリシロキサン鎖を含み、カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基(以下、「特定基(a)」ともいう)を有する成分である。ポリシロキサン鎖とは、シロキサン結合を有するポリマー鎖又はオリゴマー鎖をいう。カルボキシル基とは、−COOHで表される1価の基である。酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基とは、カルボキシル基の水素原子を酸解離性基で置換した基である。「酸解離性基」とは、カルボキシル基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離しうる基をいう。酸無水物基とは、カルボン酸無水物化合物が有する一部又は全部の水素原子を除いて形成される基であり、n個(nは1以上の整数である)の水素原子を除くことによりn価の酸無水物基が形成される。このnとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0042】
[A]成分は、ポリシロキサン鎖と、特定基(a)とを含む成分であるが、これらの含有の態様としては、例えば、下記(i)、(ii)等が挙げられる。
(i)[a]カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するポリシロキサン(以下、「a」ポリシロキサン)ともいう)
を含む成分(以下、「[A1]成分」ともいう);
(ii)[b]カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するビニル重合体(以下、「[b]ビニル重合体」ともいう)、並びに
[c]ポリシロキサン
を含む成分(以下、「[A2]成分」ともいう)
【0043】
上記「ビニル重合体」とは、ビニル単量体(CH=CH−を有する重合性化合物)を主成分とする単量体を重合させて得られる重合体をいう。
【0044】
[A]成分が有する酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基としては、例えば、下記式(p)で表される基等が挙げられる。
【0045】
【化2】

【0046】
上記式(p)中、Rは、1価の酸解離性基である。
【0047】
上記Rで表される1価の酸解離性基としては、例えば、下記式(p−i)で表される基等が挙げられる。
【0048】
【化3】

【0049】
上記式(p−i)中、Rp1は、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜20のシクロアルキル基である。Rp2及びRp3は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基若しくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であるか、又はこれらの基が互いに結合してこれらが結合している炭素原子と共に環員数3〜20の環構造を形成している。
【0050】
上記式(p)で表される基としては、例えば、下記式(p−1)〜下記式(p−4)で表される基等が挙げられる。
【0051】
【化4】

【0052】
上記式(p−1)〜(p−4)中、Rp1、Rp2及びRp3は、上記式(p−i)と同義である。jは、1〜4の整数である。
【0053】
上記式(p−1)〜(p−4)で表される基としては、例えば、下記式で表される基等が挙げられる。
【0054】
【化5】

【0055】
酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基としては、これらの中で、上記式(p−1)で表される基、上記式(p−2)で表される基が好ましく、上記式(p−1)で表される基がより好ましく、(1−アルキル−1−シクロペンチル)オキシカルボニル基がさらに好ましく、(1−i−プロピル−1−シクロペンチル)オキシカルボニル基が特に好ましい。
【0056】
[A]成分が有する酸無水物基としては、例えば、
酢酸無水物基、プロピオン酸無水物基、酢酸−プロピオン酸無水物基等の脂肪族飽和モノカルボン酸無水物基;(メタ)アクリル酸無水物基等の脂肪族不飽和モノカルボン酸無水物基;安息香酸無水物基等の芳香族モノカルボン酸無水物基などのモノカルボン酸無水物基;
コハク酸無水物基、グルタル酸無水物基、アジピン酸無水物基、セバシン酸無水物基等の脂肪族飽和ジカルボン酸無水物基;マレイン酸無水物基等の脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物基;フタル酸無水物基等の芳香族ジカルボン酸無水物基などのジカルボン酸無水物基;
ピロメリット酸二無水物基、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物基等の3価以上のカルボン酸の無水物基等が挙げられる。
酸無水物基としては、これらの中で、有機溶媒現像により生成するレジストパターン中のカルボキシル基等との相互作用がより強くなると考えられる点から、ジカルボン酸無水物基、3価以上のカルボン酸の無水物基が好ましく、ジカルボン酸無水物基がより好ましく、脂肪族飽和ジカルボン酸無水物基がさらに好ましく、これらの中でも、5員環を有する酸無水物基である点で、コハク酸無水物基が特に好ましい。
【0057】
上記[a]ポリシロキサンにおいて、上記カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基の[a]ポリシロキサン中の結合位置は特に限定されず、[a]ポリシロキサンのケイ素原子に直接結合してもよく、[A]ポリシロキサンのケイ素原子に連結基を介して結合してもよい。また、この連結基には、カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び/又は酸無水物基は1個又は2個以上結合していてもよい。この連結基としては、特に限定されず、例えば、カルボキシル基がm個結合している場合の(m+1)価(mは1以上の整数である)の有機基、n価の酸無水物基がk個結合している場合の(nk+1)価の有機基等が挙げられる。これらの有機基としては、例えば、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの基と−O−、−N−、−S−、−C(=O)−、−C(=S)−のうちから選ばれる1種又は2種以上とを組み合せた基等が挙げられる。上記連結基としてはこれらの中で、2価又は3価の鎖状炭化水素基が好ましく、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基がより好ましく、1,3−プロパンジイル基、1,5,5−ペンタントリイル基が特に好ましい。
【0058】
以下、[A1]成分及び[A2]成分について説明する。
【0059】
<[A1]成分>
[A1]成分は、[a]ポリシロキサンを含む成分である。また、[A1]成分は、[a]ポリシロキサン以外にも、特定基(a)を有さないポリシロキサン(以下、「[d]ポリシロキサン」ともいう)を含んでいてもよい。
当該レジストパターン形成方法によれば、レジスト下層膜形成用組成物が[A]成分として[a]ポリシロキサンを含むことで、有機溶媒現像においてレジスト下層膜上のレジストパターン中に生成するカルボキシル基等との間に適度な相互作用が生じると考えられ、その結果、レジストパターンのパターン倒れ耐性が優れるものになる。
【0060】
[[a]ポリシロキサン]
[a]ポリシロキサンは、カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するポリシロキサンである。[a]ポリシロキサンは、ポリシロキサン鎖を含み、このポリシロキサン鎖が特定基(a)を有するものである限り、特に限定されない。
【0061】
[a]ポリシロキサンとしては、下記式(1)で表されるシラン化合物(以下、「シラン化合物(1)」ともいう)を含む化合物の加水分解縮合物であることが好ましい。
【0062】
【化6】

【0063】
上記式(1)中、Rは、カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基又は酸無水物基を含む1価の有機基である。Rは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5のアルキル基、シアノ基、シアノアルキル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルケニル基又はアリール基である。Xは、ハロゲン原子又は−ORである。Rは、1価の有機基である。aは、1〜3の整数である。bは、0〜2の整数である。但し、1≦a+b≦3の条件を満たす。
【0064】
上記Rで表されるカルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基又は酸無水物基を含む1価の有機基としては、例えば、下記式(2)で表される基、下記式(3)で表される基、下記式(4)で表される基等が挙げられる。
【0065】
【化7】

【0066】
上記式(2)中、Rは、(p+1)価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間に、−CO−、−COO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−及び−SO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むヘテロ原子含有基、又は上記炭化水素基及び上記ヘテロ原子含有基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基である。pは、1〜5の整数である。
上記式(3)中、Rは、(q+1)価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間に、−CO−、−COO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−及び−SO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むヘテロ原子含有基、又は上記炭化水素基及び上記ヘテロ原子含有基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基である。Rは、1価の酸解離性基である。qは、1〜5の整数である。
上記式(4)中、Rは、r1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間に、−CO−、−COO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−及び−SO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むヘテロ原子含有基、又は上記炭化水素基及び上記ヘテロ原子含有基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基である。Rは、(r+1)価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間に、−CO−、−COO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−及び−SO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むヘテロ原子含有基、又は上記炭化水素基及び上記ヘテロ原子含有基が有する水素原子の一部又は全部が置換基で置換された基である。rは、1〜5の整数である。Rが複数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。また、RとRとが互いに結合して、−CO−O−CO−と共にジカルボン酸無水物基を形成してもよい。
【0067】
上記Rで表される(p+1)価の炭化水素基、上記Rで表される(q+1)価の炭化水素基及び上記Rで表される(r+1)価の炭化水素基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の鎖状飽和炭化水素;エチレン、プロピレン、ブチレン等の鎖状不飽和炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式飽和炭化水素;シクロペンテン、シクロヘキセン等の脂環式不飽和炭化水素;ベンゼン、ナフタレン、トルエン等の芳香族炭化水素等から(p+1)個、(q+1)個又は(r+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。これらの中で、カルボキシル基等が[A]ポリシロキサンのケイ素原子に対し適度な距離と可動性を有することにより、レジスト下層膜とレジストパターンとの相互作用が強まる観点から、R、R及びRしては、鎖状飽和炭化水素から水素原子を除いた基が好ましく、炭素数2〜6の鎖状飽和炭化水素基がより好ましく、炭素数3〜5の鎖状飽和炭化水素基がさらに好ましい。
【0068】
上記R、R、R及びRで表される炭化水素基の炭素−炭素間に、−CO−、−COO−、−O−、−NR−、−CS−、−S−、−SO−及び−SO−からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むヘテロ原子含有基としては、例えば、2価のヘテロ原子含有基としては、オキソアルキレン基、アルキレンカルボニルオキシアルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基、アルキレンイミノアルキレン基、チオキソアルキレン基、アルキレンスルファニルアルキレン基、アルキレンすルフィニルアルキレン基、アルキレンスルホニルアルキレン基、環状ケトン−ジイル基、ラクトン−ジイル基、環状エーテル基、環状イミノ基、環状チオケトン−ジイル基、環状チオエーテル基、環状スルホキシド基、環状スルホン基等が挙げられる。
【0069】
上記Rで表される1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の1価の脂環式炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0070】
上記R、R、R及びRで表される炭化水素基を置換してもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
【0071】
とRとが互いに結合して−CO−O−CO−と共に形成するジカルボン酸無水物基としては、コハク酸無水物基、グルタル酸無水物基、アジピン酸無水物基、マレイン酸無水物基、ノルボルナン−2,3−カルボン酸無水物基、フタル酸無水物基等が挙げられる。
【0072】
上記Rで表されるカルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基又は酸無水物基を含む1価の有機基としては、例えば、
1個のカルボキシル基を含む基として、
カルボキシメチル基、1−カルボキシ−2−エチル基、1−カルボキシ−3−プロピル基、1−カルボキシ−4−ブチル基、1−カルボキシ−5−ペンチル基等のカルボキシル基含有アルキル基;
カルボキシシクロペンチル基、カルボキシシクロヘキシル基、カルボキシノルボルニル基、カルボキシアダマンチル基等のカルボキシル基含有脂環式炭化水素基;
カルボキシフェニル基、カルボキシトリル基、カルボキシナフチル基等のカルボキシル基含有アリール基、又はこれらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
2個のカルボキシル基を含む基として、
ジカルボキシメチル基、1,2−ジカルボキシ−2−エチル基、1,2−ジカルボキシ−3−プロピル基、1,3−ジカルボキシ−3−プロピル基、1,2−ジカルボキシ−4−ブチル基、1,3−ジカルボキシ−4−ブチル基等のカルボキシル基含有アルキル基;
ジカルボキシシクロペンチル基、ジカルボキシシクロヘキシル基、ジカルボキシノルボルニル基等のカルボキシル基含有脂環式炭化水素基;
カルボキシフェニル基、カルボキシトリル基、カルボキシナフチル基等のカルボキシル基含有アリール基、又はこれらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
1個の酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基を含む基として、例えば、
2−(1−i−プロピル−1−シクロペンチルオキシカルボニル)プロピルスルファニルプロピル基、1−エチル−1−シクロペンチルオキシカルボニルプロピル基、2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニルエチル基、2−(メトキシジエチルメチルオキシカルボニル)プロピルスルファニルプロピル基、又はこれらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
2個の酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基を含む基として、例えば、2,3−ジ(1−i−プロピル−1−シクロペンチルオキシカルボニル)プロピルスルファニルプロピル基、3,5−ジ(1−エチル−1−シクロペンチルオキシカルボニル)シクロヘキシル基、又はこれらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
1個の酸無水物基を含む基として、
2,5−ジケトテトラヒドロフラニルメチル基、2,5−ジケトテトラヒドロフラニルエチル基、2,5−ジケトテトラヒドロフラニルプロピル基、又はこれらの基に置換基が結合した基等が挙げられる。
【0073】
上記Rとしては、これらの中で、1個又は2個のカルボキシル基を含む基、1個の酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基を含む基、1個の酸無水物基を含む基が好ましく、2個のカルボキシル基を含む基、1個の酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基を含む基、1個の酸無水物基を含む基がより好ましく、2個のカルボキシル基を含むアルキル基、1個の酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基を含むアルキル基、1個の酸無水物基を含むアルキル基がさらに好ましく、4,5−ジカルボキシ−1−ペンチル基、2−(1−i−プロピル−1−シクロペンチルオキシカルボニル)プロピルスルファニルプロピル基、3−(2,5−ジケトテトラヒドロフラン−3−イル)プロピル基が特に好ましい。
【0074】
上記Rで表される炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等の直鎖状のアルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソアミル基等の分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。
【0075】
上記Rで表されるシアノアルキル基としては、例えば、シアノメチル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0076】
上記Rで表されるアルケニル基としては、例えば、アルケン化合物から水素原子を1つ除いた基等が挙げられ、エテニル基、1−プロペン−1−イル基、1−プロペン−2−イル基、1−プロペン−3−イル基、1−ブテン−1−イル基、1−ブテン−2−イル基、1−ブテン−3−イル基、1−ブテン−4−イル基、2−ブテン−1−イル基、2−ブテン−2−イル基、1−ペンテン−5−イル基、2−ペンテン−1−イル基、2−ペンテン−2−イル基、1−ヘキセン−6−イル基、2−ヘキセン−1−イル基、2−ヘキセン−2−イル基等が挙げられる。
【0077】
上記Rで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等が挙げられる。
【0078】
としては、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
【0079】
上記Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0080】
上記Xで表される−ORにおけるRで表される1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アルキルカルボニル基等が挙げられる。上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。また、上記アルキルカルボニル基としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基が好ましく、メチルカルボニル基がより好ましい。
【0081】
Xとしては、−ORが好ましく、アルコキシ基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0082】
aとしては、1又は2が好ましく、1がより好ましい。bとしては、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。a+bとしては、1〜3の整数が好ましく、1又は2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0083】
上記シラン化合物(1)としては、例えば、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0084】
【化8】

【0085】
【化9】

【0086】
【化10】

【0087】
上記式中、Xは、上記式(1)と同義である。
【0088】
これらの中でも、カルボキシル基を含むシラン化合物としては、1個又は2個のカルボキシル基を含むアルキル基を有し、かつ2個又は3個のXを有するシラン化合物が好ましく、2個のカルボキシル基を含むアルキル基を有し、3個のXを有するシラン化合物がより好ましく、4,5−ジカルボキシペンチルトリアルコキシシランがさらに好ましい。酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基を含むシラン化合物としては、1個の酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基を含むアルキル基を有し、かつ2個又は3個のXを有するシラン化合物が好ましく、1個の酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基を含むアルキル基を有し、かつ3個のXを有するシラン化合物がより好ましく、2−(1−i−プロピル−1−シクロペンチル)プロピルスルファニルプロピルトリアルコキシシランがさらに好ましい。酸無水物基を含むシラン化合物としては、1個の酸無水物基を含むアルキル基を有し、かつ2個又は3個のXを有するシラン化合物が好ましく、1個の酸無水物基を含むアルキル基を有し、かつ3個のXを有するシラン化合物がより好ましく、3−(3−(2,5−ジケトテトラヒドロフラニル))プロピルトリアルコキシシランがさらに好ましい。
【0089】
シラン化合物(1)は、例えば、チオール基が結合したアルキル基を有するシラン化合物を、特定基(a)を含む(メタ)アクリルエステル化合物に、アミン等の存在下で付加反応させること等により簡便に合成することができる。
【0090】
[[a]ポリシロキサンの合成方法]
[a]ポリシロキサンは、例えば、シラン化合物(1)及び必要に応じて用いる他のシラン化合物を、加水分解縮合させることにより合成することができる。
【0091】
上記シラン化合物(1)と共に加水分解縮合してもよい他のシラン化合物として、
1個のケイ素原子を含むシラン化合物としては、例えば、
フェニルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、4−メチルフェニルトリメトキシシラン、4−エチルフェニルトリメトキシシラン、4−メトキシフェニルトリメトキシシラン、4−フェノキシフェニルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、4−アミノフェニルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、4−アセチルアミノフェニルトリメトキシシラン、3−メチルフェニルトリメトキシシラン、3−エチルフェニルトリメトキシシラン、3−メトキシフェニルトリメトキシシラン、3−フェノキシフェニルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、3−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、3−アセチルアミノフェニルトリメトキシシラン、2−メチルフェニルトリメトキシシラン、2−エチルフェニルトリメトキシシラン、2−メトキシフェニルトリメトキシシラン、2−フェノキシフェニルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、2−アミノフェニルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノフェニルトリメトキシシラン、2−アセチルアミノフェニルトリメトキシシラン、2,4,6−トリメチルフェニルトリメトキシシラン、4−メチルベンジルトリメトキシシラン、4−エチルベンジルトリメトキシシラン、4−メトキシベンジルトリメトキシシラン、4−フェノキシベンジルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシベンジルトリメトキシシラン、4−アミノベンジルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノベンジルトリメトキシシラン、4−アセチルアミノベンジルトリメトキシシラン等の芳香環含有トリアルコキシシラン;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−t−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、メチルトリス(ジメチルシロキシ)シラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、メチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、メチルシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−t−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、エチルビストリス(トリメチルシロキシ)シラン、エチルジクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−t−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリアセトキシシラン、n−プロピルトリクロロシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、iso−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、iso−プロピルトリ−t−ブトキシシラン、iso−プロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−t−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリクロロシラン、2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−メチルプロピルトリエトキシシラン、2−メチルプロピルトリ−n−プロポキシシラン、2−メチルプロピルトリ−iso−プロポキシシラン、2−メチルプロピルトリ−n−ブトキシシラン、2−メチルプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、2−メチルプロピルトリ−t−ブトキシシラン、2−メチルプロピルトリフェノキシシラン、1−メチルプロピルトリメトキシシラン、1−メチルプロピルトリエトキシシラン、1−メチルプロピルトリ−n−プロポキシシラン、1−メチルプロピルトリ−iso−プロポキシシラン、1−メチルプロピルトリ−n−ブトキシシラン、1−メチルプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、1−メチルプロピルトリ−t−ブトキシシラン、1−メチルプロピルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、t−ブチルトリ−t−ブトキシシラン、t−ブチルトリフェノキシシラン、t−ブチルトリクロロシラン、t−ブチルジクロロシラン等のアルキルトリアルコキシシラン類;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ−n−プロポキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、アリルトリ−n−ブトキシシラン、アリルトリ−sec−ブトキシシラン、アリルトリ−t−ブトキシシラン、アリルトリフェノキシシラン等のアルケニルトリアルコキシシラン類;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;
テトラフェノキシシラン等のテトラアリールシラン類;
オキセタニルトリメトキシシラン、オキシラニルトリメトキシシラン、オキシラニルメチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;
テトラクロロシラン等のテトラハロシラン類等が挙げられる。
【0092】
また、ケイ素原子を2個以上含むシラン化合物としては、例えば、
ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサフェノキシジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−フェニルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジフェニルジシラン、
1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン;
ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−イソプロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−ブトキシシリル)メタン、ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)メタン、ビス(トリ−t−ブトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−イソプロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−t−ブトキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、1−(ジ−イソプロポキシメチルシリル)−1−(トリ−イソプロポキシシリル)メタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−n−ブトキシシリル)メタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−sec−ブトキシシリル)メタン、1−(ジ−t−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−t−ブトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1−(ジ−イソプロポキシメチルシリル)−2−(トリ−イソプロポキシシリル)エタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−n−ブトキシシリル)エタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−sec−ブトキシシリル)エタン、1−(ジ−t−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−t−ブトキシシリル)エタン、
ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−n−プロポキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−イソプロポキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−n−ブトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−t−ブトキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−n−プロポキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−イソプロポキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−n−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−t−ブトキシメチルシリル)エタン、ビス(ジメチルメトキシシリル)メタン、ビス(ジメチルエトキシシリル)メタン、ビス(ジメチル−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(ジメチル−イソプロポキシシリル)メタン、ビス(ジメチル−n−ブトキシシリル)メタン、ビス(ジメチル−sec−ブトキシシリル)メタン、ビス(ジメチル−t−ブトキシシリル)メタン、1,2−ビス(ジメチルメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジメチルエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジメチル−n−プロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジメチル−イソプロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジメチル−n−ブトキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジメチル−sec−ブトキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジメチル−t−ブトキシシリル)エタン、
1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメチルシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリメチルシリル)メタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−1−(トリメチルシリル)メタン、1−(ジ−イソプロポキシメチルシリル)−1−(トリメチルシリル)メタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−1−(トリメチルシリル)メタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−1−(トリメチルシリル)メタン、1−(ジ−t−ブトキシメチルシリル)−1−(トリメチルシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメチルシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリメチルシリル)エタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−2−(トリメチルシリル)エタン、1−(ジ−イソプロポキシメチルシリル)−2−(トリメチルシリル)エタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−2−(トリメチルシリル)エタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−2−(トリメチルシリル)エタン、1−(ジ−t−ブトキシメチルシリル)−2−(トリメチルシリル)エタン、
1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−イソプロポキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−t−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−イソプロポキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−t−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−イソプロポキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−t−ブトキシシリル)ベンゼン等のジシラン類等が挙げられる。
【0093】
さらに、ポリジメトキシメチルカルボシラン、ポリジエトキシメチルカルボシラン等のポリカルボシラン等を用いてもよい。
【0094】
シラン化合物(1)及び他のシラン化合物を加水分解縮合させる条件は、特に限定されるものではないが、一例として以下のように実施することができる。
【0095】
上記加水分解縮合に用いられる水は、逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水を使用することが好ましい。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。水の使用量は、シラン化合物の加水分解性基(上記式(1)におけるXで表される基)の合計量1モルに対して、好ましくは0.1〜3モル、より好ましくは0.3〜2モル、さらに好ましくは0.5〜1.5モルの量である。このような量の水を用いることによって、加水分解縮合の反応速度を最適化することができる。
【0096】
上記加水分解縮合に使用することができる反応溶媒としては、特に限定されるものではないが、通常、後述する当該下層膜形成用組成物の調製に用いられる溶媒と同様のものを使用することができる。このような反応溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピオン酸エステル類等が挙げられる。これらの反応溶媒の中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又は3−メトキシプロピオン酸メチルが好ましい。
【0097】
上記加水分解縮合反応は、好ましくは酸触媒(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂、各種ルイス酸)、塩基触媒(例えば、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、ピリジンなどの含窒素化合物;塩基性イオン交換樹脂;水酸化ナトリウムなどの水酸化物;炭酸カリウムなどの炭酸塩;酢酸ナトリウムなどのカルボン酸塩;各種ルイス塩基)、アルコキシド(例えば、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド)等の触媒の存在下で行われる。触媒の使用量としては、加水分解縮合反応の促進の観点から、シラン化合物1モルに対して、好ましくは0.2モル以下であり、より好ましくは0.00001〜0.1モルである。
【0098】
上記加水分解縮合における反応温度及び反応時間は、適宜に設定される。反応温度としては、好ましくは40〜200℃、より好ましくは50〜150℃である。反応時間としては、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1〜12時間である。このような反応温度及び反応時間とすることによって、加水分解縮合反応を最も効率的に行うことができる。この加水分解縮合においては、反応系内にシラン化合物、水及び触媒を一度に添加して反応を一段階で行ってもよく、又はシラン化合物、水及び触媒を、数回に分けて反応系内に添加することによって、加水分解縮合反応を多段階で行ってもよい。なお、加水分解縮合反応の後には、エバポレーションにかけることによって、水及び生成したアルコールを反応系から除去することができる。
【0099】
[a]ポリシロキサンの形成に用いられるシラン化合物(1)の使用割合としては、加水分解縮合に用いられる全シラン化合物のケイ素原子数に対して、0.1モル%〜30モル%が好ましく、0.5モル%〜20モル%がより好ましく、1モル%〜15モル%がさらに好ましい。シラン化合物(1)の使用割合が上記下限未満だと、形成されるレジストパターンのパターン倒れ耐性が低下する場合がある。シラン化合物(1)の使用割合が上記上限を超えると、形成されるレジストパターン形状の良好性が低下する場合がある。
【0100】
[a]ポリシロキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、通常500〜20,000であり、800〜15,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましく、1,200〜5,000がさらに好ましい。
【0101】
なお、本明細書におけるMwは、GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本、東ソー製)を使用し、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した値である。
【0102】
[A1]成分における[a]ポリシロキサンの含有比としては、[a]ポリシロキサンと[d]ポリシロキサンとの質量和に対する[a]ポリシロキサンの質量の比が、5質量%〜100質量%が好ましく、20質量%〜100質量%がより好ましく、50質量%〜100質量%がさらに好ましい。
【0103】
上記レジスト下層膜形成用組成物における[a]ポリシロキサンの含有量としては、全固形分に対して、通常、80質量%以上であり、85質量%が好ましく、90質量%以上がより好ましい。[a]ポリシロキサンの含有量が上記下限未満だと、形成されるレジスト下層膜の硬度が低下する場合がある。
【0104】
<[A2]成分>
[A2]成分は、[b]ビニル重合体、及び[c]ポリシロキサンを含む成分である。
当該レジストパターン形成方法によれば、上記[A]成分として上記特定の重合体とポリシロキサンとを含むことで、この特定の重合体のレジスト下層膜表面への偏在化により、表面のカルボキシル基等の存在率を高めることができる。その結果、レジストパターンのパターン倒れ耐性がより優れたものになる。
[b]ビニル重合体と[c]ポリシロキサンとは、例えば、シロキサン結合を介して結合して一体化していてもよい(この場合の[A2]成分を、以下、「[b]ビニル重合体を含むポリシロキサン」ともいう)。
以下、[b]ビニル重合体及び[c]ポリシロキサンについて説明する。
【0105】
[[b]ビニル重合体]
[b]ビニル重合体は、特定基(a)を有するビニル重合体である。[b]ビニル重合体において、特定基(a)の結合位置は特に限定されず、ビニル重合体の主鎖、側鎖又は末端等のいずれに結合していてもよい。
【0106】
[b]ビニル重合体としては、例えば、下記式(x)で表される構造単位(以下、「構造単位(I)」ともいう)を有する重合体等が挙げられる。
【0107】
【化11】

【0108】
上記式(x)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Lは、単結合又は2価の連結基である。Rは、1価の特定基(a)である。
【0109】
上記Rとしては、構造単位(I)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記Lで表される2価の連結基としては、例えば、−COO−、−CONH−等が挙げられ、これらの基とアルカンジイル基、シクロアルカンジイル基等を組み合わせた基等が挙げられる。
上記Rで表される1価の特定基としては、例えば、上述の[A]成分が有する特定基(a)として例示したそれぞれの基等が挙げられる。
【0110】
構造単位(I)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0111】
【化12】

【0112】
【化13】

【0113】
【化14】

【0114】
上記式中、Raは、上記式(x)と同義である。
【0115】
構造単位(I)としては、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基を含む構造単位が好ましく、3級のシクロアルキル基を有するエステルに由来する構造単位がより好ましく、1−アルキル−1−シクロアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましく、1−i−プロピル−1−シクロペンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が特に好ましい。
【0116】
[b]ビニル重合体は、ケイ素含有基をさらに有することが好ましい。[b]ビニル重合体がケイ素原子含有基をさらに有することで、[c]ポリシロキサンとの親和性が高まり、その結果、レジストパターンのパターン倒れ耐性を向上させることができる。
【0117】
ケイ素含有基を含む構造単位(以下、「構造単位(II)」ともいう)としては、例えば、下記式(y)で表される構造単位等が挙げられる。
【0118】
【化15】

【0119】
上記式(y)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Lは、2価の連結基である。Rs1、Rs2及びRs3は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基、1価のオキシ炭化水素基又はハロゲン原子である。
【0120】
上記Rとしては、構造単位(II)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子、メチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0121】
上記Lで表される2価の連結基としては、例えば、上述のLとして例示した2価の連結基と同様の基等が挙げられる。
これらの中で、Lとしては、−COO−、−COO−C−が好ましく、−COO−C−がより好ましい。
【0122】
上記Rs1、Rs2及びRs3で表される1価の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等の1価の鎖状炭化水素基等;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基;
シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基等の単環のシクロアルケニル基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基等の多環のシクロアルキル基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基、テトラシクロドデセニル基等の多環のシクロアルケニル基等の1価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
上記Rs1、Rs2及びRs3で表される1価のオキシ炭化水素基としては例えば、
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;
エテニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;
エチニルオキシ基、プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基等のアルキニルオキシ基等の1価のオキシ鎖状炭化水素基等;
シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の単環のシクロアルキルオキシ基;
シクロプロペニルオキシ基、シクロブテニルオキシ基、シクロペンテニルオキシ基等の単環のシクロアルケニルオキシ基;
ノルボルニルオキシ基、アダマンチルオキシ基、トリシクロデカニルオキシ基、テトラシクロドデシルオキシ基等の多環のシクロアルキルオキシ基;
ノルボルネニルオキシ基、トリシクロデセニルオキシ基、テトラシクロドデセニルオキシ基等の多環のシクロアルケニルオキシ基等の1価のオキシ脂環式炭化水素基等が挙げられる。
フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、ナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;
ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、フェニルプロピルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基等のアラルキルオキシ基等が挙げられる。
上記Rs1、Rs2及びRs3で表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
これらの中で、Rs1、Rs2及びRs3としては、1価のオキシ炭化水素基が好ましく、アルキルオキシ基がより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。
【0123】
構造単位(II)としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0124】
【化16】

【0125】
上記式中、Rは、上記式(y)と同義である。
【0126】
これらの中で、トリメトキシシリル基を含む構造単位が好ましく、4−トリメトキシシリル−2−ブチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、トリメトキシシリルシクロヘキシルアクリルアミドに由来する構造単位がより好ましく、4−トリメトキシシリル−2−ブチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましい
【0127】
[b]ビニル重合体は、構造単位(I)及び(II)以外にも、他の構造単位を有していてもよい。
【0128】
構造単位(I)の含有割合としては、[b]ビニル重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜80モル%が好ましく、10モル%〜70モル%がより好ましく、20モル%〜60モル%がさらに好ましい。
構造単位(II)の含有割合としては、[b]ビニル重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜80モル%が好ましく、10モル%〜70モル%がより好ましく、20モル%〜60モル%がさらに好ましい。
【0129】
<[b]ビニル重合体の合成方法>
[b]ビニル重合体は、例えば、構造単位(I)を与える単量体、必要に応じて他の単量体を用い、ラジカル重合等の重合反応を行うことにより合成することができる。この重合反応の方法は、公知の方法を用いることができる。
【0130】
<[c]ポリシロキサン>
[c]ポリシロキサンは、シロキサン鎖を含む化合物である限り特に限定されず、特定基(a)を含む上述の[a]ポリシロキサンでもよく、特定基(a)を含まないポリシロキサン(上述の[A1]成分における[d]ポリシロキサンと同じ)でもよい。[c]ポリシロキサンは、例えば、上述のシラン化合物を加水分解縮合させることにより合成することができる。
【0131】
[c]ポリシロキサンを与えるシラン化合物としては、フェニルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランが好ましく、フェニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシランがより好ましい。
【0132】
[A2]成分における[b]ビニル重合体の含有量としては、[c]ポリシロキサン100質量部に対して、1質量部〜80質量部が好ましく、5質量部〜70質量部がより好ましく、10質量部〜60質量部がさらに好ましい。
【0133】
<[c]ポリシロキサンの合成方法>
[c]ポリシロキサンは、例えば、シラン化合物を加水分解縮合させることにより合成することができる。加水分解縮合させる方法としては、上述の[a]ポリシロキサンの合成方法で示した方法等を用いることができる。
また、[c]ポリシロキサンは、[b]ビニル重合体の存在下で上述のシラン化合物の加水分解縮合を行い形成させてもよい。このような[c]ポリシロキサンの形成方法により、[c]ポリシロキサンと[b]ビニル重合体との親和性を高めることができる。[b]ビニル重合体がケイ素原子含有基(加水分解性シリル基)を有する場合には、[b]ビニル重合体と形成される[c]ポリシロキサンとがシロキサン結合により結合して一体化することができ、その結果、ポリシロキサン鎖と特定基(a)とをより強固に結合させることができる。[b]ビニル重合体を含むポリシロキサンを合成する際の[b]ビニル重合体とシラン化合物との仕込み質量比([b]ビニル重合体/シラン化合物)としては、1/99〜80/20が好ましく、5/95〜70/30がより好ましく、10/90〜40/60がさらに好ましい。
【0134】
<[B]窒素含有化合物>
[B]窒素含有化合物は、窒素原子を含む化合物である。[B]窒素含有化合物は、分子又はイオン中に1個以上の窒素原子を含む限り特に限定されない。上記レジスト下層膜形成用組成物は、[B]窒素含有化合物を含有することができる。[B]窒素含有化合物は、レジスト下層膜形成用組成物から得られるレジスト下層膜の酸素アッシング耐性等の特性を向上させる効果を有する。この効果は、[B]窒素含有化合物がレジスト下層膜に存在することにより、下層膜中の架橋反応が促進されるためと考えられる。また、上記レジスト下層膜形成用組成物から得られるレジスト下層膜上に形成されるレジストパターンのパターン倒れ耐性を向上させることができる。
【0135】
[B]窒素含有化合物としては、例えば、アミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0136】
上記アミン化合物としては、例えば、モノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0137】
上記アミド基含有化合物としては、例えば、N−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、N−t−アミロキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。これらの中で、N−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、N−t−アミロキシカルボニル基含有アミノ化合物が好ましく、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン、N−t−ブトキシカルボニルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−2−ヒドロキシメチルピロリジン、N−t−ブトキシカルボニル−2−フェニルベンズイミダゾールが好ましい。
【0138】
上記ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0139】
上記含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0140】
これらの[B]窒素含有化合物の中で、(B1)ヒドロキシル基及びカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種の極性基並びにエステル基を有する窒素含有化合物(以下、「(B1)化合物」ともいう)、(B2)ヒドロキシル基、カルボキシル基及びエーテル基から選ばれる少なくとも1種の基を有する窒素含有化合物(以下、「(B2)化合物」ともいう)、及び(B3)エステル基を有する窒素含有化合物(以下、「(B3)化合物」)が好ましい。これらは、適度な塩基性を有する窒素含有化合物であって、かつ極性基及び/又はエステル基を有することで、レジスト下層膜の形成ベーク時に[B]窒素含有化合物の昇華が抑えられ、レジスト下層膜中に残存するため、上記効果を十分に発揮することができる。
【0141】
上記(B1)化合物としては、例えば、下記式(B−1−1)〜(B−1−5)で表される化合物等が挙げられる。
【0142】
【化17】

【0143】
上記(B2)化合物としては、例えば、下記式(B−2−1)〜(B−2−4)で表される化合物等が挙げられる。また、上記(B3)化合物としては、下記式(B−3−1)〜(B−3−4)で表される化合物等が挙げられる。
【0144】
【化18】

【0145】
上記式(B−2−2)及び(B−2−3)中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数3〜10のシクロアルキル基である。
【0146】
[B]窒素含有化合物としては、これらの中でも、(B1)化合物が好ましく、上記式(B−1−1)で表される化合物、上記式(B−1−2)で表される化合物がより好ましい。[B]窒素含有化合物が極性基及びエステル基を共に有することで、レジスト下層膜の形成ベーク時に[B]窒素含有化合物の昇華が抑えられ、レジスト下層膜中に残存するため、上記効果を十分に発揮することができる。
【0147】
[B]窒素含有化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。レジスト下層膜形成用組成物における[B]窒素含有化合物の含有量としては、レジストパターン形状をより良好にする観点から、[A]ポリシロキサン100質量部に対して、通常、30質量部以下であり、0.1質量部〜10質量部が好ましく、0.3質量部〜6質量部がより好ましい。
【0148】
[[C]酸発生剤]
[C]酸発生剤は、露光により酸を発生する化合物である。上記レジスト下層膜形成用組成物は、[C]酸発生剤を含有することができる。有機溶媒現像によるレジストパターン形成において、上記レジスト下層膜形成用組成物が[C]酸発生剤を含有することにより、レジスト下層膜上に形成されるレジストパターンのパターン倒れ耐性が向上する。これは、例えば、[C]酸発生剤から露光により発生する酸の触媒作用によって、露光部におけるレジスト膜の重合体に含まれる酸解離反応が促進され、カルボキシル基等の極性基がより多く生成し、上記レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜中のカルボキシル基等と強く相互作用するためと考えられる。また、[A]成分が酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基を有する場合には、当該レジスト下層膜形成用組成物が[C]酸発生剤を含有することにより、露光部における上記基の開裂によるカルボキシル基の生成を促進させることができる。
【0149】
[C]酸発生剤としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩等のオニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物、有機ハロゲン化合物、ジスルホン類、ジアゾメタンスルホン類等のスルホン化合物等が挙げられる。
【0150】
上記スルホニウム塩としては、例えば、
トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、トリフェニルスルホニウムサリチレート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムトリシクロ[3.3.1.13,7]デカニルジフルオロメタンスルホネート等のトリフェニルスルホニウム塩化合物;
4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート等の4−t−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム塩化合物;
トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、トリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウムカンファースルホネート等のトリ(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0151】
上記ヨードニウム塩としては、例えば、
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート等のジフェニルヨードニウム塩化合物;
ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等のビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0152】
上記テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば、
1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物;
1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムN,N’−ビス(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニル)イミデート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等の1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム塩化合物等が挙げられる。
【0153】
N−スルホニルオキシイミド化合物としては、例えば、
N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド等のスクシンイミド類化合物;
N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−(3−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル)−1,1−ジフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファースルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等のビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド類化合物等が挙げられる。
【0154】
[C]酸発生剤としては、これらの中でも、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウム塩がさらに好ましく、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートがさらに好ましい。[C]酸発生剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0155】
上記レジスト下層膜形成用組成物における[C]酸発生剤の含有量としては、レジストパターン形状をより良好にする観点から、[A]ポリシロキサン100質量部に対して、通常、20質量部以下であり、0.01質量部〜10質量部が好ましく、0.05質量部〜5質量部がより好ましく、0.1質量部〜3質量部がさらに好ましい。
【0156】
[[D]溶媒]
上記レジスト下層膜形成用組成物は、通常、[D]溶媒を含有する。[D]溶媒は、[A]ポリシロキサン及び必要に応じて加える成分を溶解又は分散することができる限り、特に限定されず用いることができる。[D]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒、炭化水素系溶媒等の有機溶媒などが挙げられる。
【0157】
アルコール系溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0158】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のジ脂肪族エーテル系溶媒;
アニソール、フェニルエチルエーテル、フェニルプロピルエーテル、トリルメチルエーテル、トリルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジトリルエーテル等の含芳香族エーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0159】
ケトン系溶媒としては、例えば、
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒;
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のジケトン系溶媒;
ジアセトンアルコール等のヒドロキシル基含有ケトン系溶媒;
アセトフェノン、フェニルエチルケトン等の芳香族ケトン系溶媒等が挙げられる。
【0160】
アミド系溶媒としては、例えば、
N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0161】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のカルボン酸エステル系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールモノアルキルエーテルアセテート系溶媒;
ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒等が挙げられる。
【0162】
炭化水素系溶媒としては、例えば、
n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン系溶媒等が挙げられる。
【0163】
[D]溶媒としては、これらの中で、アルコール系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、
多価アルコール部分エーテル系溶媒、多価アルコールモノアルキルエーテルアセテート系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがさらに好ましい。[D]溶媒は、1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0164】
上記レジスト下層膜形成用組成物は、水を含有してもよい。水を含有すると、[A]ポリシロキサンが水和されるため、保存安定性が向上する。また、水を含有すると、レジスト下層膜の成膜時の硬化が促進され、緻密な膜を得ることができる。上記レジスト下層膜形成用組成物における水の含有率としては、0質量%〜30質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましく、0.2質量%〜15質量%がさらに好ましい。水の含有量が上記上限を超えると、上記レジスト下層膜形成用組成物の保存安定性が低下し、また塗布膜の均一性が低下する場合がある。
【0165】
[その他の成分]
上記レジスト下層膜形成用組成物は、その他の成分として、さらに、β−ジケトン、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、有機ポリマー、界面活性剤、塩基発生体等を含有してもよい。
【0166】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製方法>
上記レジスト下層膜形成用組成物は、例えば、[A]ポリシロキサン、必要に応じて[B]窒素含有化合物、[C]酸発生剤及びその他の成分を混合し、[D]溶媒に溶解または分散して得られる。レジスト下層膜形成用組成物の固形分濃度としては、0.5質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0167】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、
[A’]酸無水物基を有するポリシロキサン
を含有する。
【0168】
当該レジスト下層膜形成用組成物は、ポリシロキサン成分として、[A’]ポリシロキサンを含有する。[A’]ポリシロキサンは、酸無水物基を有するポリシロキサンである。当該レジスト下層膜形成用組成物は、上述の当該レジストパターン形成方法に用いられるレジスト下層膜形成用組成物において、[A]ポリシロキサンが[A’]ポリシロキサンである場合である。当該レジスト下層膜形成用組成物によれば、酸無水物基を有するポリシロキサンを含有しているので、カルボキシル基等の親水性基よりも、レジスト膜との密着性に優れるという利点がある。有機溶媒現像の場合だけでなく、特にアルカリ現像の場合にこの傾向が見られ、最小倒壊寸法を比較的小さくすることができる。これは、例えば、アルカリ現像の場合には、レジストパターンを構成する重合体はエステル基を多く含有しており、この基と酸無水物基との相互作用が適度であること等が理由として考えられる。また、当該レジスト下層膜形成用組成物によれば、上記[B]窒素含有化合物及び/又は[C]酸発生剤をさらに含有させることにより、特にアルカリ現像の場合に、パターン倒れ耐性をさらに向上させることができる。
【0169】
[A’]ポリシロキサンは、上記式(1a)で表されるシラン化合物を含む化合物の加水分解縮合物であることが好ましい。
【0170】
上記式(1a)中、R1aは、酸無水物基を含む1価の有機基である。Rは、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜5のアルキル基、シアノアルキル基、アルケニル基又はアリール基である。Xは、ハロゲン原子又は−ORである。Rは、1価の有機基である。aは、1〜3の整数である。bは、0〜2の整数である。但し、1≦a+b≦3の条件を満たす。
【0171】
上記式(1a)で表されるシラン化合物については、上述のシラン化合物(1)において、Rが酸無水物基を含む1価の有機基である場合の説明が適用される。
【0172】
当該レジスト下層膜形成用組成物について、上記以外については、上述の当該レジストパターン形成方法に用いられるレジスト下層膜形成用組成物の項で説明しているので、ここでは説明を省略する。
【実施例】
【0173】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0174】
[ポリシロキサンを含む溶液における固形分濃度]
ポリシロキサンを含む溶液における固形分濃度(質量%)は、[A]シロキサンを含む溶液0.5gを30分間250℃で焼成し、残った物質の質量を測定することにより求めた。
【0175】
<[a]ポリシロキサンの合成>
[a]ポリシロキサンの合成に用いたシラン化合物を以下に示す。
下記に各化合物の構造式を示す。
化合物(M−1):テトラメトキシシラン
化合物(M−2):メチルトリメトキシシラン
化合物(M−3):フェニルトリメトキシシラン
化合物(M−4):4−トリルトリメトキシシラン
化合物(M−5):トリメトキシプロピルサクシニックアンハイドライドシラン
化合物(M−6):トリメトキシプロピルサクシニックシラン
化合物(M−7):トリメトキシ(2−(1−イソプロピル−1−シクロプロピルオキシカルボニル)プロピルスルファニルプロピル)シラン
【0176】
【化19】

【0177】
[合成例1](ポリシロキサン(a−1)の合成)
シュウ酸1.14gを水11.29gに加熱溶解させて、シュウ酸水溶液を調製した。化合物(M−1)21.09g、化合物(M−3)3.23g、化合物(M−5)2.14g及びプロピレングリコールモノエチルエーテル61.12gを入れたフラスコに、冷却管と、調製したシュウ酸水溶液を入れた滴下ロートをセットした。次いで、オイルバスにて60℃に加熱した後、シュウ酸水溶液をゆっくり滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを放冷してからエバポレーターを用いて、反応により生成したメタノールを除去し、ポリシロキサン(a−1)を含む溶液97.3gを得た。このポリシロキサン(a−1)のMwは1,600であった。また、ポリシロキサン(a−1)を含む溶液の固形分濃度は、16質量%であった。
【0178】
[合成例2〜6](ポリシロキサン(a−2)〜(a−6)の合成)
下記表1に示す種類及び使用量の単量体を用いた以外は、合成例1と同様にして、ポリシロキサン(a−2)〜(a−6)を合成した。なお、使用する単量体の総質量は30gとした。
【0179】
[合成例7](ポリシロキサン(d−1)の合成)
下記表1に示す種類及び使用量の単量体を用いた以外は、合成例1と同様にして、ポリシロキサン(d−1)を合成した。なお、使用する単量体の総質量は30gとした。
【0180】
上記合成した各ポリシロキサンのMw及び各ポリシロキサンを含む溶液の固形分濃度を表1に併せて示す。
【0181】
【表1】

【0182】
<[b]ビニル重合体の合成>
[b]ビニル重合体の合成に用いた単量体を以下に示す。
【0183】
S−1:1−i−プロピル−1−シクロペンチルメタアクリレート(下記式(S−1)で表される化合物)
S−2:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(下記式(S−2)で表される化合物)
【0184】
【化20】

【0185】
なお、上記化合物(S−1)は構造単位(I)を、上記化合物(S−2)は構造単位(II)をそれぞれ与える。
【0186】
[合成例8](ビニル重合体(b−1)の合成)
上記式で表される化合物(S−1)44.15g(46.5モル%)、化合物(S−2)55.85g(53.5モル%)及び重合開始剤としてのジメチル2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)3.69gを2−ブタノン200gに溶解させた溶液を調製した。上記化合物それぞれのモル比は、化合物の合計モル数に対するモル%を示す。1,000mLの三口フラスコに2−ブタノン100gを投入し、30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱した。そこへ上記調製した溶液を3時間かけて滴下し、さらに滴下終了後3時間、80℃にて熟成した。重合終了後、重合反応液を水冷することにより30℃以下に冷却した。その重合反応液をエバポレーターにてその質量が130gになるまで減圧濃縮した。次いで、この濃縮した重合反応液に670gのアセトニトリル及び270gの酢酸エチルを投入し、10分間反応釜の撹拌を行った。そこへ1,350gのヘキサンを投入し、30分撹拌を行った。撹拌を止めて30分静置し、分離した下層部を回収した。この下層部を反応釜に投入し、さらに1,350gのヘキサンを投入し、30分撹拌を行った。撹拌を止めて30分静置し、分離した下層部を回収した。同様の操作をもう一度繰り返し実施した。得られた下層部に1,070gのプロピレングリコールモノエチルエーテルを投入した後、エバポレーターを用い、含まれるヘキサン、アセトニトリル、酢酸エチル及び2−ブタノンを除去し、ビニル重合体(b−1)を含む溶液530gを得た。ビニル重合体(b−1)を含む溶液の固形分濃度は、11.7質量%(収率66%)であった。得られた重合体のMwは6,440、Mw/Mnは1.77であった。
【0187】
<[b]ビニル重合体を含むポリシロキサンの合成>
[合成例9](ビニル重合体を含むポリシロキサン(bc−1)の合成)
マレイン酸10.40gを水12.28gに加熱溶解させて、マレイン酸水溶液を調製した。上記合成したビニル重合体(b−1)8.33g、上記化合物(M−1)39.88g(90モル%)、化合物(M−3)5.77g(10モル%)及びプロピレングリコールモノエチルエーテル74.33gを入れたフラスコに、冷却管と、上記調製したシュウ酸水溶液を入れた滴下ロートをセットした。上記化合物それぞれのモル比は、化合物の合計モル数に対するモル%を示す。ビニル重合体(b−1)と、シラン化合物単量体との仕込み比は、15:85(質量比)であった。次いで、このフラスコを、オイルバスにて60℃に加熱した後、マレイン酸水溶液をゆっくり滴下し、60℃で4時間反応させた。反応終了後、反応溶液の入ったフラスコを放冷してから、エバポレーターを用い、反応により生成したメタノールを除去し、ビニル重合体を含むポリシロキサン(bc−1)を含む溶液100gを得た。このビニル重合体を含むポリシロキサン(bc−1)のMwは3,600であった。また、この(bc−1)を含む溶液の固形分濃度は20質量%であった。
【0188】
<フォトレジスト組成物の調製>
[ベース重合体の合成]
[合成例10]
下記式で表される化合物(Q−1)11.92g、化合物(Q−2)41.07g、化合物(Q−3)15.75g、化合物(Q−4)11.16g及び化合物(Q−5)20.10g、並びに重合開始剤としてのジメチル2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)3.88gを2−ブタノン200gに溶解させた溶液を調製した。1,000mLの三口フラスコに2−ブタノン100gを投入し、30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱した。そこへ上記調製した溶液を4時間かけて滴下し、さらに滴下終了後2時間、80℃にて熟成した。重合終了後、重合反応液を水冷することにより30℃以下に冷却した。その重合反応液をエバポレーターにてその質量が200gになるまで減圧濃縮した。その後、この濃縮した重合反応液を1,000gのメタノールへ投入し、再沈操作を行った。析出したスラリーを吸引濾過して濾別し、固形分をメタノールにて3回洗浄した。得られた粉体を60℃で15時間真空乾燥し、白色粉体である重合体(G)(ベース重合体)88.0g(収率88%)を得た。得られた重合体(G)のMwは9,300、Mw/Mnは1.60であった。13C−NMR分析の結果、化合物(Q−1)、(Q−2)、(Q−3)、(Q−4)及び(Q−5)に由来する構造単位の各含有割合は、16モル%、26モル%、19モル%、11モル%及び28モル%であった。なお、13C−NMR分析には核磁気共鳴装置(JNM−ECP500、日本電子製)を使用した。
【0189】
【化21】

【0190】
[フッ素原子含有重合体の合成]
[合成例11]
下記式で表される化合物(Q−6)3.8g及び化合物(Q−7)1.2gを、2−ブタノン10gに溶解させ、さらに2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)0.09gを溶解させて調製した溶液を100mLの三口フラスコに投入した。30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、加熱開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合反応液を水冷することにより30℃以下に冷却し、エバポレーターにてその質量が12.5gになるまで減圧濃縮した。この濃縮した重合反応液を0℃に冷却したn−ヘキサン75gへゆっくり投入し、固形分を析出させた。この液を濾過し、固形分をn−ヘキサンで洗浄し、得られた粉体を40℃で15時間真空乾燥し、白色粉体である重合体(F)(フッ素原子含有重合体)3.75g(収率75%)を得た。重合体(F)のMwは9,400、Mw/Mnは1.50であった。13C−NMR分析の結果、化合物(Q−6)及び(Q−7)に由来する構造単位の各含有割合は68.5モル%及び31.5モル%であり、フッ素原子含有率は21.4質量%であった。
【0191】
【化22】

【0192】
[フォトレジスト組成物の調製]
[合成例12]
ベース重合体としての合成例7で得られた重合体(G)100質量部、フッ素原子含有重合体としての合成例8で得られた重合体(F)5質量部、酸発生剤としての下記(C−1)化合物10質量部及び酸拡散制御剤としての下記(B−1)化合物0.6質量部を、溶媒としてのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1,881質量部、シクロヘキサノン806質量部及びγ−ブチロラクトン200質量部に加え溶液とした。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過し、フォトレジスト組成物を調製した。
【0193】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製>
レジスト下層膜形成用組成物の調製に用いた[B]窒素含有化合物、[C]酸発生剤及び[D]溶媒について下記に示す。
【0194】
[[B]窒素含有化合物]
B−1:N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン
【0195】
[[C]酸発生剤]
C−1:トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート
【0196】
[[D]溶媒]
D−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
D−2:プロピレングリコールモノエチルエーテル
【0197】
<[A1]成分を含有するレジスト下層膜形成用組成物の調製>
[実施例1](レジスト下層膜形成用組成物(J−1)の調製)
上記合成例1で得られた[a]ポリシロキサンとしての(a−1)1.80質量部を含む溶液、並びに[D]溶媒としての(D−1)68.74質量部及び(D−2)29.46質量部を混合して溶解させた後、この溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、レジスト下層膜形成用組成物(J−1)を得た。
【0198】
[実施例2〜9、合成例13〜21及び比較合成例1〜3](レジスト下層膜形成用組成物(J−2)〜(J−18)及び(CJ−1)〜(CJ−3)の調製)
下記表2に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、レジスト下層膜形成用組成物(J−2)〜(J−21)及び(CJ−1)〜(CJ−3)を得た。なお、表2中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
【0199】
<[A2]成分を含有するレジスト下層膜形成用組成物の調製>
[合成例22](レジスト下層膜形成用組成物(J−19)の調製)
上記得られた[b]ビニル重合体を含むポリシロキサンとしての(bc−1)1.80質量部を含む溶液、及び[D]溶媒としての(D−1)68.74質量部及び(D−2)29.46質量部を混合して溶解させた後、この溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、レジスト下層膜形成用組成物(J−19)を得た。
【0200】
[合成例23及び24](レジスト下層膜形成用組成物(J−20)及び(J−21)の調製)
下記表2に示す種類及び配合量の各成分を用いた以外は、合成例22と同様にして、レジスト下層膜形成用組成物(J−20)及び(J−21)を得た。なお、表2中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
【0201】
【表2】

【0202】
<レジスト下層膜の形成>
シリコンウェハー上に、上記実施例及び比較例で調製したレジスト下層膜形成用組成物をスピンコート法で塗布し、220℃のホットプレートで1分間PBを行い、各レジスト下層膜を形成した。得られた各レジスト下層膜の膜厚を膜厚測定装置(M−2000D、J.A.Woollam製)で測定したところそれぞれ30nmであった。
【0203】
<評価>
上記形成したレジスト下層膜について、基板反射率及び酸素アッシング耐性の評価を行い、また、このレジスト下層膜上にレジストパターンの形成を行い、パターン倒れ耐性及びレジストパターン形状のリソグラフィー性能の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0204】
[基板反射率]
上記形成したレジスト下層膜、他のレジスト下層膜形成用組成物(NFC HM8006、JSR製)から形成されたレジスト下層膜及び上記合成例9で得られたフォトレジスト組成物から形成されたレジスト膜について、それぞれの屈折率パラメーター(n)及び消衰係数(k)を高速分光エリプソメーター(M−2000、J.A.Woollam製)により測定し、この測定値を元にシュミレーションソフト(プロリス、KLA−Tencor製)を用いて、NA1.3、Dipole条件下におけるレジスト膜/各レジスト下層膜形成用組成物/他のレジスト下層膜を積層させた膜の基板反射率を求めた。基板反射率が1%以下の場合を「A」(良好)、1%を超える場合を「B」(不良)と評価した。
【0205】
[酸素アッシング耐性]
上記形成したレジスト下層膜を、アッシング装置(NA1300、ULVAC製)を用いて、100Wで120秒間O2処理し、処理前後の膜厚差を測定した。この処理前後の膜厚差の数値を表3に示す。酸素アッシング耐性は、この膜厚差が5nm未満の場合は「良好」であり、5nm以上8nm以下の場合は「やや良好」、8nmを超える場合は「不良」であると評価できる。
【0206】
[リソグラフィー性能(パターン倒れ耐性、レジストパターン形状)]
[実施例10〜30及び比較例1〜3]
下記方法に従い、レジストパターンを形成し、得られたレジストパターンのリソグラフィー性能について評価した。有機溶媒現像の場合と共に、アルカリ現像の場合についても評価を行った。
【0207】
(有機溶媒現像)
12インチシリコンウェハ上に、下層反射防止膜形成用組成物(HM8006、JSR製)をスピンコートした後、250℃で60秒間PBを行うことにより膜厚100nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記実施例及び比較例で調製したレジスト下層膜形成用組成物をスピンコートし、220℃で60秒間PBした後、23℃で60秒間冷却することにより膜厚30nmのレジスト下層膜を形成した。次いで、このレジスト下層膜上に、上記合成例9で得られたフォトレジスト組成物をスピンコートし、100℃で60秒間PBした後、23℃で30秒間冷却することにより膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
【0208】
次いで、ArF液浸露光装置(S610C、NIKON製)を使用し、NA:1.30、Dipoleの光学条件にて、42nmライン/84nmピッチ形成用のマスクを介して露光した。上記塗布/現像装置のホットプレート上で100℃で60秒間PEBを行い、23℃で30秒間冷却した後、現像カップのLDノズルにて、酢酸ブチルを現像液として30秒間パドル現像した後、リンス液としてメチルイソブチルカルビノールを用いてリンスを行った。その後、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、42nmライン/84nmピッチのレジストパターンを形成した。なお、レジストパターンの測長及び観察には走査型電子顕微鏡(CG−4000、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
【0209】
上記レジストパターンの形成において、42nmライン/84nmピッチ(ラインアンドスペース(1L/1S)パターン)を形成した露光量を最適露光量とし、この最適露光量よりも段階的に露光量を大きくして順次露光を行った。このとき、得られるパターンの線幅は次第に細くなるため、ある露光量に対応する線幅で最終的にレジストパターンの倒壊が観察される。そこで、レジストパターンの倒壊が認められない最大の露光量に対応する線幅を最小倒壊前寸法(nm)と定義してパターン倒れ耐性の指標とした。表3にこの最小倒壊寸法の値を示す。パターン倒れ耐性は、最小倒壊寸法が40nm以下の場合は「良好」と、40nmを超える場合は「不良」と判断できる。また、レジストパターン形状について、上記走査型電子顕微鏡による観察を行い、レジストパターンのボトムに裾引きがない場合を「A」(良好)、裾引きがある場合を「B」(不良)と評価した。
【0210】
(アルカリ現像)
現像液として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%水溶液を用い、リンス液として超純水を用いた以外は、上記有機溶媒現像における場合と同様にして、レジストパターンを形成し、そのパターン倒れ耐性及びレジストパターン形状の評価を行った。
【0211】
【表3】

【0212】
表3の結果から、本発明のレジストパターン形成方法及びレジスト下層膜形成用組成物によれば、有機溶媒現像の場合に、良好なパターン形状を維持しつつ、パターン倒れ耐性に優れるレジストパターンを形成させることができることが示された。また、当該レジストパターン形成方法及びレジスト下層膜形成用組成物によれば、有機溶媒現像の場合だけでなく、アルカリ現像の場合においても、上記効果が得られることも示された。さらに、特にアルカリ現像の場合において、[B]窒素含有化合物及び/又は[C]酸発生剤をさらに含有させることにより、パターン倒れ耐性をさらに向上させることができることも示された。
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明によれば、多層レジストプロセスにおいて、パターン倒れ耐性に優れるレジストパターンを形成させることができるレジストパターン形成方法及びレジスト下層膜形成用組成物が提供される。これらは多層レジストプロセスの中でも、ArF、液侵露光でのArF、F、EUV等による露光、ナノインプリント法などによる60nmよりも微細な領域でのパターン形成において好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(2)フォトレジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト膜を形成する工程、
(3)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(4)上記露光されたレジスト膜を、有機溶媒を80質量%以上含有する現像液を用いて現像する工程
を有し、
上記レジスト下層膜形成用組成物が、
[A]ポリシロキサン鎖を含み、カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する成分
を含有するレジストパターン形成方法。
【請求項2】
上記[A]成分が、
[a]カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するポリシロキサン
を含む請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項3】
上記[A]成分が、
[b]カルボキシル基、酸の作用によりカルボキシル基を生じうる基及び酸無水物基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するビニル重合体、並びに
[c]ポリシロキサン
を含む請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項4】
上記[b]ビニル重合体が、ケイ素原子含有基をさらに有する請求項3に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項5】
上記レジスト下層膜形成用組成物が、さらに[B]窒素含有化合物を含有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項6】
[a’]酸無水物基を有するポリシロキサン
を含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項7】
上記酸無水物基が、コハク酸無水物基である請求項6に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項8】
[B]窒素含有化合物をさらに含有する請求項6又は請求項7に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項9】
[a’]酸無水物基を有するポリシロキサンが、下記式(1a)で表されるシラン化合物を含む化合物の加水分解縮合物である請求項6、請求項7又は請求項8に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【化1】

(式(1a)中、R1aは、酸無水物基を含む1価の有機基である。Rは、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1〜5のアルキル基、シアノアルキル基、アルケニル基又はアリール基である。Xは、ハロゲン原子又は−ORである。Rは、1価の有機基である。aは、1〜3の整数である。bは、0〜2の整数である。但し、1≦a+b≦3の条件を満たす。)
【請求項10】
上記式(1a)のR1aが、コハク酸無水物基を含む1価の有機基である請求項9に記載のレジスト下層膜形成用組成物。


【公開番号】特開2013−83964(P2013−83964A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211593(P2012−211593)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】