説明

レジスト保護膜材料及びパターン形成方法

【課題】レジスト膜の環境からの影響を低減させ、OOB光を効率よく遮断させ、レジストパターンの膜減りやパターン間のブリッジを低減させ、レジストを高感度化させるレジスト保護膜材料を提供する。
【解決手段】ウエハー3に形成したフォトレジスト膜2上にレジスト保護膜材料によりレジスト保護膜1を形成し、露光を行った後、レジスト保護膜の剥離及びフォトレジスト膜の現像を行うことで、フォトレジスト膜にパターンを形成する方法において用いるレジスト保護膜材料であって、下記一般式(1)に記載のフェノール基を含有するトルクセン化合物を含むレジスト保護膜材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト保護膜材料及びこれを使用したパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。微細化が急速に進歩した背景には、投影レンズの高NA化、レジスト材料の性能向上、短波長化が挙げられる。
【0003】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト材料は、一般的に0.3ミクロンプロセスに使われ始め、0.13ミクロンルールの量産まで適用された。KrFからArFエキシマレーザー(193nm)への波長の短波長化は、デザインルールの微細化を0.13μm以下にすることが可能であるが、従来用いられてきたノボラック樹脂やポリビニルフェノール系の樹脂が193nm付近に非常に強い吸収を持つため、レジスト用のベース樹脂として用いることができない。透明性と、必要なドライエッチング耐性の確保のため、アクリル系の樹脂やシクロオレフィン系の脂環族系の樹脂が検討され、ArFリソグラフィーを用いたデバイスの量産が行われた。
【0004】
次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのFリソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジストのエッチング耐性低下等の種々の問題により、Fリソグラフィーの先送りと、ArF液浸リソグラフィーの早期導入が提唱され、これを用いた45nmノードのデバイスが量産されている。32nmノードデバイスの量産には、サイドウォールスペーサー技術を用いたダブルパターニングが用いられているが、プロセスの複雑さと長さが問題になっている。
【0005】
32nm以降のデバイスでは、プロセスコストの高いダブルパターニングではなく、露光波長を1桁以上短波長化して解像性を向上させた波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィーの到来が期待されており、開発が進んでいる。
【0006】
EUVリソグラフィーにおいては、レーザーのパワーが低いことと反射ミラーの光の減衰のための光量低下によって、ウェハー面に到達する光の強度が低い。低い光量でスループットを稼ぐため高感度レジストの開発が急務である。しかしながら、レジストの感度を上げると解像度とエッジラフネス(LER、LWR)が劣化するという問題があり、感度とのトレードオフの関係が指摘されている。
【0007】
EUVレジストは感度が高いために、環境の影響を受けやすいという問題がある。通常化学増幅型レジストには空気中のアミンコンタミネーションの影響を受けにくくするためにアミンクエンチャーが添加されているが、ArFレジストなどに比べてEUVレジストのアミンクエンチャーの添加量は数分の一である。このため、EUVレジストはレジスト表面からのアミンの影響を受けてT−top形状になりやすい。
【0008】
環境の影響を遮断するためにはレジストの上層に保護膜を形成することが有効である。アミンクエンチャーが添加されていなかった、t−BOCで保護されたポリヒドロキシスチレンベースのKrFエキシマレーザー用の初期型の化学増幅型レジストには保護膜の適用が有効であった。ArF液浸リソグラフィーの初期段階に於いても、水への酸発生剤の流出を防いでこれによるT−top形状防止のために保護膜が適用された。
【0009】
ここで、EUVリソグラフィープロセスに於いてもレジスト膜の上層に保護膜を形成することが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献1)。保護膜を形成することによって環境耐性を向上させることができ、レジスト膜からのアウトガスを低減させることができる。
【0010】
DPP(Discharge Produced Plasma)、LPP(Laser Produced Plasma)のEUVレーザーからは、パターンを形成する波長13.5nmの光以外に弱いながらも波長140〜300nmのブロードな光(アウトオブバンド:OOB)が発振される。ブロード光は強度が弱いが、波長帯が幅広いためにエネルギー量としては無視できない。OOBをカットするためのZrフィルターがEUVマイクロステッパーに装着されているが、光量が低下する。スループットを向上させるために光量低下が許されないEUVスキャナーでは、フィルターが装着されない可能性がある。
【0011】
従って、OOBに感光せず、EUVに感光するレジスト開発が必要である。このようなレジストとして、スルホニウム塩のPAGのカチオン構造が重要であり、下記特許文献5の段落[0052]中にOOBに対して感度が低く、EUV光に高感度なバウンド型の酸発生剤の記載がある。非特許文献1では、OOB光を遮断する保護膜をレジスト上層に設けることの優位性が示されている。
【0012】
液浸リソグラフィー用の保護膜の場合、保護膜用の溶剤がレジスト膜表面を溶解させ、保護膜とレジスト膜とがミキシングを起こして現像後のレジストパターンが膜減りを起こすことが指摘されている(特許文献4)。特にアルコール系溶媒を用いた場合に膜減りが顕著である。膜減りを防止するためにエーテル系溶媒が効果的であることが示されている。エーテル系溶媒に溶解するポリマーとしては、特許文献4に記載されるようにヘキサフルオロアルコール(HFA)含有のポリマーを挙げることができる。しかしながら、フッ素原子はEUVの光に対して強い吸収があるために、HFA含有ポリマーをレジスト上層保護膜として用いた場合、パターン後のレジスト感度が低下してしまう問題がある。
【0013】
トルクセン構造を有するポジ型レジストが提案されている(特許文献6)。ヒドロキシ基を酸不安定基で置換されたトルクセンをベースにしたレジストは、優れたエッチング耐性を有するEB(電子線)、EUVレジストとして紹介されている。エッチング耐性に優れる複数のビスフェノールを有する下層膜材料の中で、トルクセンビスフェノール化合物が示されている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−58739号公報
【特許文献2】特許4716027号公報
【特許文献3】特開2008−65304号公報
【特許文献4】特許4771083号公報
【特許文献5】特開2011−138107号公報
【特許文献6】特開2008−76850号公報
【特許文献7】特開2006−285075号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol. 7969, p796916−1 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、レジスト膜の環境からの影響を低減させ、OOB光を効率よく遮断させるだけでなくレジストパターンの膜減りやパターン間のブリッジを低減させ、レジストを高感度化させる効果も併せ持つレジスト保護膜材料及びこれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ウエハーに形成したフォトレジスト膜上にレジスト保護膜材料によりレジスト保護膜を形成し、露光を行った後、前記レジスト保護膜の剥離及び前記フォトレジスト膜の現像を行うことで前記フォトレジスト膜にパターンを形成する方法において用いる前記レジスト保護膜材料であって、下記一般式(1)に記載のフェノール基を含有するトルクセン化合物を含むものであることを特徴とするレジスト保護膜材料を提供する。
【化1】

(一般式(1)中、R、R、Rは、同一又は異種の、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルコキシ基、若しくはアシロキシ基であり、R、R、Rはそれぞれ水素原子、ヒドロキシ基、又は、置換若しくは非置換のフェノール基、若しくはナフトール基であり、p、q、及びrは1〜5の整数であり、s、t、及びuは1〜4の整数である。)
【0018】
このような、レジスト保護膜材料であれば、レジスト膜の環境からの影響を低減させ、OOB光を効率よく遮断させるだけでなくレジストパターンの膜減りやパターン間のブリッジを低減させ、レジストを高感度化させる効果も併せ持つものとなる。
【0019】
また、前記レジスト保護膜材料は、アルカリ現像液に可溶なものであることが好ましい。
【0020】
アルカリ現像液に可溶であれば、露光を行った後、前記レジスト保護膜の剥離及び前記フォトレジスト膜の現像を同時に行うことが可能となり、従来装置に剥離装置を増設することなく、より簡便にレジスト保護膜の剥離を行うことができるものとなる。
【0021】
更に、アルコール溶媒と、エーテル溶媒又は芳香族溶媒とを混合した有機溶媒を含むものであることが好ましい。
【0022】
このような有機溶媒を含むことで、フォトレジスト膜を溶解しにくいため、インターミキシングを一層抑制でき、これにより、レジストパターンの膜減りを一層抑制できるものとなる。
【0023】
また、本発明では、少なくとも、ウエハー上にフォトレジスト膜を形成し、該フォトレジスト膜上に前記レジスト保護膜材料を用いてレジスト保護膜を形成し、露光を行った後、現像を行うことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0024】
このようなパターン形成方法であれば、レジスト膜の環境からの影響を低減させ、OOB光を効率よく遮断させるだけでなくレジストパターンの膜減りやパターン間のブリッジを低減させ、フォトレジストを高感度に露光することができる。
【0025】
さらに、前記露光は真空中で行うこともできる。
【0026】
本発明のパターン形成方法であれば液浸だけでなく、真空中でも露光を行うことができ、これにより、EUVや電子線(EB)を用いて露光を行うことも可能となる。さらに、真空中で露光を行う場合にはレジスト保護膜によりレジスト膜からのアウトガスの発生が抑えられる。
【0027】
また、前記露光において、波長が3〜15nmの範囲の光、又は電子線を用いることができる。
【0028】
本発明のパターン形成方法であれば、このような露光を行った場合にOOBが発振されるとしても、レジスト保護膜によりOOBをより効率よく遮断することができ、これによりフォトレジストが感光することを防ぎ、解像性の高いパターンを得ることができる。
【0029】
さらに、前記現像において、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の現像と前記レジスト保護膜の剥離とを行うことが好ましい。
【0030】
このようにすれば、従来装置に剥離装置を増設することなく、より簡便にレジスト保護膜の剥離を行うことができる。さらに、溶媒剥離型の保護膜に比べてプロセスがシンプルであるためにプロセスコストの上昇を最小限に抑えることが可能となる。
【0031】
また、前記フォトレジスト膜の形成において、前記ウエハー上に、下記一般式(2)に記載の繰り返し単位a1、a2と、下記一般式(3)に記載の繰り返し単位b1、b2からなり、平均分子量が1,000〜500,000の範囲の高分子化合物をベース樹脂とする前記フォトレジスト膜を形成することが好ましい。
【化2】

(上記一般式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R、R10は酸不安定基を表す。Xは単結合、エステル基、ラクトン環、フェニレン基、又はナフチレン基のいずれか1種又は2種以上を有する炭素数1〜14の連結基である。Xは単結合、エステル基、又はアミド基である。上記一般式(3)中、R11、R15はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を表し、R12、R13、R14、R16、R17、R18は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Zは単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R19−、又は−C(=O)−Z−R19−である。Zは酸素原子又はNH、R19は炭素数1〜13の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよく、フッ素置換されてもよい。0≦a1≦0.9、0≦a2≦0.9、0<a1+a2<1、0≦b1≦0.3、0≦b2≦0.3、0<b1+b2≦0.3、0<a1+a2+b1+b2≦1の範囲である。)
【0032】
このような酸発生剤をポリマー主鎖にバウンドしているポリマーをフォトレジスト材料として用いてフォトレジスト膜を形成することにより、現像後のパターンのエッジラフネスがより小さくなる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明のレジスト保護膜材料であれば、レジスト膜の環境からの影響を低減させることにより大気中のアミンコンタミネーションによるレジストパターンの頭張りを防ぐことができ、OOB光を効率よく遮断させるだけでなくレジストパターンの膜減りやパターン間のブリッジを低減させ、レジスト膜への増感効果によってレジストを高感度化させる効果も併せ持つものとなる。また、保護膜材料に酸発生剤とアミンクエンチャーを添加することによってレジスト保護膜中の酸のコントラストを向上させ、レジストパターンのエッジラフネスを低減させ、レジストパターンの矩形性を向上させ、パターン間のブリッジをより防ぐこともできる。同時に真空中の露光におけるレジスト膜からのアウトガスの発生を抑えることもできる。本発明のレジスト保護膜材料は、アルカリ現像液に可溶なためにレジスト膜の現像と同時に剥離が可能である。更に、レジスト膜を溶解することが無く、ミキシング層を形成することも無いので、現像後のレジスト形状に変化を与えることがない。更には、EUVレーザー等から発生する波長140〜300nmのアウトオブバンド(OOB)の光を吸収し、これによりフォトレジストが感光することを防ぐ効果も併せ持つ。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】フォトレジスト膜上に本発明のレジスト保護膜を形成したウエハーの断面図である。
【図2】本発明のレジスト保護膜を用いてパターンを形成する方法を示すフロー図である。
【図3】TC−1のレジスト保護膜の透過率を示す図である。
【図4】比較TC−1のレジスト保護膜の透過率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、レジスト膜の環境からの影響を低減させ、OOB光を吸収し、レジストパターンの膜減りやパターン間のブリッジを低減させるために、後述する保護膜を形成することが有効であることを知見した。この保護膜は、アルカリ現像液に可溶であるために、レジスト膜の現像と同時に剥離が可能であり、溶媒剥離型の保護膜に比べてプロセスがシンプルであるためにプロセスコストの上昇を最小限に抑えることが可能である。
【0036】
なお、波長13.5nmにおいて、水素原子、炭素原子、珪素原子、硫黄原子の吸収が小さく、酸素原子、フッ素原子の吸収は大きいことが報告されている。前述の特許文献1に記載されているフッ素ポリマーは波長13.5nmに大きな吸収を持つ。レジスト保護膜に吸収があると、レジスト膜の感度が低感度化にシフトする。レーザーパワーが低いEUVリソグラフィーにおいてレジストの低感度化は問題である。よって、レジスト保護膜としては高透明である必要がある。また、前述のフッ素ポリマーはアルカリ現像液に溶解しないために現像前に別途レジスト保護膜専用の剥離カップが必要となり、プロセスが煩雑化する。レジスト膜の現像と同時に剥離可能な保護膜が望ましく、保護膜材料の設計としてアルカリ溶解性基を有する材料が必要となるが、後述する本発明の保護膜は、かかる要求に応えられるものである。
【0037】
なお、アルカリ溶解性基としてはカルボキシル基、フェノール基、スルホ基、ヘキサフルオロアルコール基等が挙げられるが、透明性の観点ではヘキサフルオロアルコール基はフッ素原子が6個も存在しているための強い吸収があり、これを保護膜のアルカリ溶解性基として用いることは好ましくない。
【0038】
ポリヒドロキシスチレンベースのレジストは、EUV照射時の酸発生効率が高いことが報告されている。EUV照射によってフェノール基から酸発生剤へのエネルギー移動による増感効果によって感度が向上する。このため、レジストの感度を上げるためにポリヒドロキシスチレンベースのレジストが検討されている。
【0039】
ポリマー主鎖に酸発生剤(PAG)を結合したレジストが提案されている。特に主鎖にスルホン酸が結合したスルホニウム塩、ヨードニウム塩の酸発生剤を用いると酸の拡散距離を短くすることによって酸拡散による像のボケを少なくすることができ、微細パターン形成に有利である(特許4425776号)。PAGがバウンドされたレジストの欠点は感度が低いことである。このため、フェノール基を有するヒドロキシスチレン等を共重合することによって感度向上を図っている。しかしながら、アルカリ溶解速度が向上するフェノール基を有するモノマーの共重合は、レジストパターンの膜減りを生じさせ、好ましいことではない。以上のように、高感度で、現像後のパターンの膜減りが少ないレジストの開発が望まれている。
【0040】
これに対し、本発明は、下記のレジスト保護膜材料及びパターン形成方法を提供するものである。
【0041】
図1に示すように、本発明のレジスト保護膜材料は、ウエハー3に形成したフォトレジスト膜2上にレジスト保護膜材料によりレジスト保護膜1を形成し、露光を行った後、前記レジスト保護膜の剥離及び前記フォトレジスト膜の現像を行うことで前記フォトレジスト膜にパターンを形成する方法において用いる前記レジスト保護膜材料であって、炭化水素から形成され、アルカリ可溶性のためのフェノール基を有する下記一般式(1)に示すトルクセン化合物を含むものである。
【化3】

(一般式(1)中、R、R、Rは、同一又は異種の、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルコキシ基、若しくはアシロキシ基であり、R、R、Rはそれぞれ水素原子、ヒドロキシ基、又は、置換若しくは非置換のフェノール基、若しくはナフトール基であり、p、q、及びrは1〜5の整数であり、s、t、及びuは1〜4の整数である。)
【0042】
一般式(1)中、R、R、Rは、同一又は異種の、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルコキシ基、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアシロキシ基である。
【0043】
、R、Rはそれぞれ水素原子、ヒドロキシ基、置換若しくは非置換のフェノール基、又は置換若しくは非置換のナフトール基である。置換されたフェノール基、ナフトール基としては、水素原子がメチル基などで置換されたフェノール基、ナフトール基を例示することができる。
【0044】
p、q、及びrは1〜5の整数であり、s、t、及びuは1〜4の整数である。
【0045】
上記一般式(1)中のフェノール基を有するトルクセン化合物は、具体的には下記に例示することができる。
【化4】

【化5】

【0046】
本発明のレジスト保護膜材料は、アルカリ現像液に可溶なものであることが好ましい。アルカリ現像液に可溶であれば、露光を行った後、前記レジスト保護膜の剥離及び前記フォトレジスト膜の現像を同時に行うことが可能となり、従来装置に剥離装置を増設することなく、より簡便にレジスト保護膜の剥離を行うことができるものとなる。
【0047】
トルクセンへのフェノール基の導入によってアルカリ水現像液への溶解速度が向上し、炭素数4以上のアルコール系溶媒への溶解性が向上する。炭素数4以上アルコール系溶媒はフォトレジスト膜を溶解させづらい特徴がある。保護膜の組成物として、フォトレジスト膜を溶解させない溶媒を用いることによって、保護膜とレジスト膜とのインターミキシングを防止することができる。エーテル系溶媒や芳香族系溶媒はフォトレジスト膜を殆ど溶解させないために、インターミキシング防止の観点では保護膜材料として最も好ましく用いることができる。しかしながら、ポリヒドロキシスチレンやノボラック樹脂、カリックスレゾルシンなどは、エーテル系溶媒や芳香族系溶媒に殆ど溶解しない。これらは炭素数4以上アルコール系溶媒には溶解するが、炭素数4以上アルコール系溶媒だけを用いた保護膜を形成すると、現像後のレジストパターンが膜減りを起こす。
【0048】
トルクセンビスフェノールはエーテル系溶媒や芳香族系溶媒への溶解性が高い。これは、ヒドロキシ基が分子の外側を向いていることが影響していると考えられる。一方、ヒドロキシ基が分子の内側を向いているカリックスアレーンはエーテル系溶媒や芳香族系溶媒に溶解しない。
【0049】
用いられる溶媒としては特に限定されないが、フォトレジスト膜を溶解させない溶媒であることが好ましい。フォトレジスト膜を溶解させる溶媒としては、例えば、レジスト溶媒として用いられるシクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類などが挙げられ、これらの溶媒を用いるよりも以下に例示する溶媒を用いることが好ましい。
【0050】
本発明のレジスト保護膜材料に含めることのできる有機溶媒としては、アルコール溶媒と、エーテル溶媒又は芳香族溶媒とを混合したものであることが好ましい。このような溶媒であれば、フォトレジスト膜を溶解させず、インターミキシングを抑制し、それによりレジストパターンの膜減りを一層抑制できる。このような溶媒としては、具体的には、炭素数4以上の高級アルコール、具体的には1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノールを挙げることができる。炭素4以上の高級アルコールに加えて、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−secブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−t−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル等のエーテル系溶剤、又は、トルエン、キシレン、メジチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、アニソール等の芳香族系溶剤を混ぜることによってレジスト膜とのミキシングを防止することができる。エーテル系や芳香族系の溶媒の比率は、全溶媒中の50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上である。
【0051】
本発明のパターン形成方法に用いられる保護膜材料には酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0052】
酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
【0053】
保護膜材料に酸発生剤を添加することによって現像後のレジストパターン間のブリッジ欠陥を低減させる効果がある。
【0054】
本発明のパターン形成方法に用いられる保護膜材料にはアミンクエンチャーを含んでもよく、具体的には特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載されている。アミンクエンチャーを添加することによって現像後のレジストパターンの矩形性を向上させることができる。酸発生剤とアミンクエンチャーを併用することによってレジストパターンのLWRを低減させることができる。
【0055】
本発明のレジスト保護膜材料には特開2008−111103号公報の段落[0165]〜[0166]記載の界面活性剤を添加することができる。
【0056】
上記界面活性剤の配合量は、保護膜用ベース材料100質量部に対して0.0001〜10質量部、特には0.001〜5質量部が好適である。
【0057】
本発明のパターン形成方法に用いるフォトレジストとしては化学増幅型ポジ型レジストであり、一般式(2)記載のカルボキシル基及び又はフェノール基の水酸基の水素原子が酸不安定基で置換されている繰り返し単位a1又はa2と、一般式(3)記載のスルホニウム塩の繰り返し単位b1又はb2とを共重合した重量平均分子量が1,000〜500,000の範囲である高分子化合物をベース樹脂にしていることが好ましい。このような酸発生剤をポリマー主鎖にバウンドしているポリマーをベースとしたレジストは、現像後のパターンのエッジラフネス(LWR)が小さいメリットがある。
【化6】

(上記一般式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R、R10は酸不安定基を表す。Xは単結合、エステル基、ラクトン環、フェニレン基、又はナフチレン基のいずれか1種又は2種以上を有する炭素数1〜14の連結基である。Xは単結合、エステル基、又はアミド基である。上記一般式(3)中、R11、R15はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を表し、R12、R13、R14、R16、R17、R18は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Zは単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R19−、又は−C(=O)−Z−R19−である。Zは酸素原子又はNH、R19は炭素数1〜13の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよく、フッ素置換されてもよい。0≦a1≦0.9、0≦a2≦0.9、0<a1+a2<1、0≦b1≦0.3、0≦b2≦0.3、0<b1+b2≦0.3、0<a1+a2+b1+b2≦1の範囲である。)
【0058】
上記一般式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R、R10は後述する酸不安定基を表す。
【0059】
は単結合、エステル基、ラクトン環、フェニレン基、又はナフチレン基のいずれか1種又は2種以上を有する炭素数1〜14の連結基である。Xは単結合、エステル基、又はアミド基である。
【0060】
上記一般式(3)中、R11、R15はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を表す。R12、R13、R14、R16、R17、R18は同一又は異種の、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。
【0061】
は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R19−で表わされる基、又は−C(=O)−Z−R19−で表わされる基である。Zは酸素原子又はNHであり、R19は炭素数1〜13の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよく、フッ素置換されてもよい。
【0062】
本発明に用いられる高分子化合物に含まれる繰り返し単位のうち、上記一般式(2)中の繰り返し単位a1で表される酸不安定基を有する繰り返し単位は、カルボキシル基特には(メタ)アクリレートの水酸基の水素原子を置換したものであり、これを得るためのモノマーは具体的には下記に例示することができる。
【化7】

(式中、R、Rは前述と同様である。)
【0063】
上記一般式(1)中の繰り返し単位a2で表される酸不安定基を有する繰り返し単位は、フェノール性水酸基、好ましくはヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートの水酸基の水素原子を置換したものであり、これを得るためのモノマーは具体的には下記に例示することができる。
【化8】

(式中、R、R10は前述と同様である。)
【0064】
、R10で示される酸不安定基は種々選定されるが、同一でも異なっていてもよく、特に下記式(A−1)〜(A−3)で置換された基で示されるものが挙げられる。
【0065】
【化9】

【0066】
式(A−1)において、R30は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(A−3)で示される基を示し、三級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基等が挙げられ、トリアルキルシリル基として具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が挙げられ、オキソアルキル基として具体的には、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が挙げられる。n1は0〜6の整数である。
【0067】
式(A−2)において、R31、R32は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基等を例示できる。R33は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0068】
【化10】

【0069】
31とR32、R31とR33、R32とR33とは結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には環の形成に関与するR31、R32、R33はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、好ましくは環の炭素数は3〜10、特に4〜10である。
【0070】
上記式(A−1)で示される酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0071】
更に、下記式(A−1)−1〜(A−1)−10で示される置換基を挙げることもできる。
【化11】

【0072】
ここで、R37は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基、R38は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である。また、R39は互いに同一又は異種の炭素数2〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。n1は上記の通りである。
【0073】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、直鎖状又は分岐状のものとしては、下記式(A−2)−1〜(A−2)−69のものを例示することができる。
【0074】
【化12】

【0075】
【化13】

【0076】
【化14】

【0077】
【化15】

【0078】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、環状のものとしては、テトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が挙げられる。
【0079】
また、繰り返し単位a1、a2、b1、b2からなる高分子化合物は、下記一般式(A−2a)あるいは(A−2b)で表される酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【0080】
【化16】

【0081】
式中、R40、R41は水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R40とR41は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR40、R41は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R42は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、n2、n4は0又は1〜10、好ましくは0又は1〜5の整数、n3は1〜7の整数である。Aは、(n3+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基はヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
【0082】
この場合、好ましくは、Aは2〜4価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルキルトリイル基、アルキルテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基はヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、n3は好ましくは1〜3の整数である。
【0083】
一般式(A−2a)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(A−2a)−1〜(A−2a)−7のものが挙げられる。
【0084】
【化17】

【0085】
次に、式(A−3)で示される酸不安定基のR34、R35、R36は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、又は炭素数2〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素などのヘテロ原子を含んでもよく、R34とR35、R34とR36、R35とR36とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に、炭素数3〜20の脂環を形成してもよい。
【0086】
式(A−3)で示される酸不安定基の三級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、2−(2−エチル)アダマンチル基、tert−アミル基等を挙げることができる。
【0087】
また、式(A−3)で示される酸不安定基の三級アルキル基としては、下記に示す式(A−3)−1〜(A−3)−18を具体的に挙げることもできる。
【化18】

【0088】
式(A−3)−1〜(A−3)−18中、R43は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のフェニル基等のアリール基を示す。R44、R46は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R45は炭素数6〜20のフェニル基等のアリール基を示す。
【0089】
更に、下記式(A−3)−19、(A−3)−20に示すように、2価以上のアルキレン基、アリーレン基であるR47を含んで、上記繰り返し単位a1、a2、b1、b2からなる高分子化合物の分子内あるいは分子間が架橋されていてもよい。
【化19】

【0090】
式(A−3)−19、(A−3)−20中、R43は前述と同様、R47は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基等のアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。n5は1〜3の整数である。
【0091】
特に式(A−3)で示される酸不安定基を有する繰返し単位a1としては下記式(A−3)−21に示されるエキソ体構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位が好ましく挙げられる。
【0092】
【化20】

(式中、Rは前述の通り、Rc3は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。Rc4〜Rc9及びRc12、Rc13はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示し、Rc10、Rc11は水素原子又は炭素数1〜3のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示す。あるいは、Rc4とRc5、Rc6とRc8、Rc6とRc9、Rc7とRc9、Rc7とRc13、Rc8とRc12、Rc10とRc11又はRc11とRc12は互いに環を形成していてもよく、その場合には炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい2価の炭化水素基を示す。またRc4とRc13、Rc10とRc13又はRc6とRc8は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0093】
ここで、一般式(A−3)−21に示すエキソ構造を有する繰り返し単位a1を得るためのエステル体のモノマーとしては特開2000−327633号公報に示されている。具体的には下記に挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0094】
【化21】

【0095】
次に式(A−3)に示される酸不安定基を有する繰返し単位a1としては、下記式(A−3)−22に示されるフランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルを有する(メタ)アクリル酸エステルの酸不安定基を挙げることができる。
【0096】
【化22】

(式中、Rは前述の通りである。Rc14、Rc15はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。又は、Rc14、Rc15は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭化水素環を形成してもよい。Rc16はフランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルから選ばれる2価の基を示す。Rc17は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【0097】
フランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルを有する酸不安定基で置換された繰り返し単位a1を得るためのモノマーは下記に例示される。なお、Acはアセチル基、Meはメチル基を示す。
【0098】
【化23】

【0099】
【化24】

【0100】
繰り返し単位a1のカルボキシル基の水素原子は下記一般式(A−4)−23で示される酸不安定基によって置換されることもできる。
【化25】

(式中、R23−1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基又はアルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。m23は1〜4の整数である。)
【0101】
(A−4)−23で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化26】

【0102】
また、繰り返し単位a1のカルボキシル基の水素原子が下記一般式(A−4)−24で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化27】

(式中、R24−1、R24−2は水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。Rは水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、又は炭素数6〜10のアリール基であり、酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい。R24−3、R24−4、R24−5、R24−6は水素原子、あるいはR24−3とR24−4、R24−4とR24−5、R24−5とR24−6が結合してベンゼン環を形成しても良い。m24、n24は1〜4の整数である。)
【0103】
(A−4)−24で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【0104】
【化28】

【0105】
【化29】

【0106】
【化30】

【0107】
さらに、繰り返し単位a1のカルボキシル基の水素原子が下記一般式(A−4)−25で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化31】

(式中、R25−1は同一又は異なる、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、m25が2以上の場合R25−1同士が結合して炭素数2〜8の環を形成しても良く、円は炭素CとCとのエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタレン基から選ばれる結合を表し、R25−2は炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。Rは前述の通り。円がエチレン基、プロピレン基の時、R25−1が水素原子となることはない。m25、n25は1〜4の整数である。)
【0108】
(A−4)−25で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【0109】
【化32】

【0110】
【化33】

【0111】
【化34】

【0112】
【化35】

【0113】
【化36】

【0114】
繰り返し単位a1のカルボキシル基の水素原子が下記一般式(A−4)−26で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化37】

(式中、R26−1、R26−2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。Rは前述の通り。m26、n26は1〜4の整数である。)
【0115】
(A−4)−26で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【0116】
【化38】

【0117】
【化39】

【0118】
繰り返し単位a1のカルボキシル基の水素原子が下記一般式(A−4)−27で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化40】

(式中、R27−1、R27−2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。m27、n27は1〜4の整数である。Rは前述の通り。Gはメチレン基、エチレン基、ビニレン基、又は−CH−S−である。)
【0119】
(A−4)−27で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【0120】
【化41】

【0121】
【化42】

【0122】
【化43】

【0123】
繰り返し単位a1のカルボキシル基の水素原子が下記一般式(A−4)−28で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【0124】
【化44】

(式中、R28−1、R28−2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。Rは前述の通りである。m28、n28は1〜4の整数である。Gはカルボニル基、エーテル基、スルフィド基、−S(=O)−、−S(=O)−、である。)
【0125】
(A−4)−28で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【0126】
【化45】

【0127】
【化46】

【0128】
【化47】

【0129】
【化48】

【0130】
また、上記一般式(3)中のスルホニウム塩を有する繰り返し単位b1を得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【0131】
【化49】

【0132】
さらに、上記一般式(3)中のスルホニウム塩を有する繰り返し単位b2を得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することができる。
【化50】

【0133】
【化51】

【0134】
【化52】

【0135】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジストのベース樹脂としては、酸不安定基で置換されたカルボキシル基を有する繰り返し単位a1、酸不安定基で置換されたフェノール性水酸基を有する繰り返し単位a2、主鎖に結合したスルホン酸のスルホニウム塩の酸発生剤を有する繰り返し単位b1、b2とを共重合することが好ましいが、さらに、密着性基としてフェノール性水酸基を有する繰り返し単位cを共重合することができる。
【0136】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位cを得るためのモノマーは、具体的には下記に示すことができる。
【0137】
【化53】

【0138】
【化54】

【0139】
更には、他の密着性基として、ヒドロキシ基、カルボキシル基、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである)を密着性基とする繰り返し単位dを共重合する事ができる。dを得るためのモノマーとしては具体的には下記に例示することができる。
【0140】
【化55】

【0141】
【化56】

【0142】
【化57】

【0143】
【化58】

【0144】
【化59】

【0145】
【化60】

【0146】
【化61】

【0147】
ヒドロキシル基を有するモノマーの場合、重合時にヒドロキシル基をエトキシエトキシなどの酸によって脱保護しやすいアセタールで置換しておいて重合後に弱酸と水によって脱保護を行っても良いし、アセチル基、ホルミル基、ピバロイル基等で置換しておいて重合後にアルカリ加水分解を行っても良い。
【0148】
インデン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、アセナフチレン、クロモン、クマリン、ノルボルナジエンおよびこれらの誘導体eを共重合することもでき、具体的には下記に例示することができる。
【0149】
【化62】

【0150】
上記繰り返し単位以外に共重合できる。繰り返し単位fとしては、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン、メチレンインダンなどが挙げられる。
【0151】
本発明の保護膜形成材料組み合わせるレジストポリマーに用いられるa1、a2、b1、b2、c、d、e、fの共重合比率は、0≦a1≦0.9、0≦a2≦0.9、0<a1+a2<1、0≦b1≦0.3、0≦b2≦0.3、0<b1+b2≦0.3、0≦c<1.0、0≦d<1.0、0≦e<1.0、0≦f<1.0、0.7≦a1+a2+b1+b2+c+d≦1.0であり、好ましくは、0≦a1≦0.8、0≦a2≦0.8、0.1≦a1+a2≦0.8、0≦b1≦0.5、0≦b2≦0.5、0.02≦b1+b2≦0.5、0≦c≦0.8、0≦d≦0.8、0≦e≦0.5、0≦f≦0.5、0.8≦a1+a2+b1+b2+c+d≦1.0であり、更に好ましくは0≦a1≦0.7、0≦a2≦0.7、0.1≦a1+a2≦0.7、0≦b1≦0.4、0≦b2≦0.4、0.02≦b1+b2≦0.4、0≦c≦0.7、0≦d≦0.7、0≦e≦0.4、0≦f≦0.4、0.85≦a1+a2+b1+b2+c+d≦1.0である。
【0152】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては、例えば繰り返し単位a1、a2、b1、b2、及びc、d、e、fで示されるモノマーを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加え加熱重合を行い、共重合体の高分子化合物を得ることができる。
【0153】
重合時に使用する有機溶剤としてはトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。
【0154】
ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンを共重合する場合は、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンの代わりにアセトキシスチレン、アセトキシビニルナフタレンを用い、重合後上記アルカリ加水分解によってアセトキシ基を脱保護してポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシポリビニルナフタレンにする方法もある。
【0155】
アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。また反応温度としては−20〜100℃、好ましくは0〜60℃であり、反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは0.5〜20時間である。
【0156】
レジスト材料に用いられる高分子化合物は、それぞれ重量平均分子量が1,000〜500,000、好ましくは2,000〜30,000であるのが望ましい。重量平均分子量が1,000以上であれば、レジスト材料が耐熱性に優れるものとなり、500,000以下であれば、アルカリ溶解性が低下することもなく、パターン形成後に裾引き現象が生じることもない。
【0157】
更に、レジスト材料に用いられる高分子化合物においては、多成分共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために、露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりする。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
【0158】
ここに示される高分子化合物は、特にポジ型レジスト材料のベース樹脂として好適で、このような高分子化合物をベース樹脂とし、これに有機溶剤、酸発生剤、溶解阻止剤、塩基性化合物、界面活性剤等を目的に応じ適宜組み合わせて配合してポジ型レジスト材料を構成することによって、露光部では前記高分子化合物が触媒反応により現像液に対する溶解速度が加速されるので、極めて高感度のポジ型レジスト材料とすることができ、レジスト膜の溶解コントラスト及び解像性が高く、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好でありながら、より優れたエッチング耐性を示し、特に酸拡散を抑制できることから粗密寸法差が小さく、これらのことから実用性が高く、特に超LSI用レジスト材料として非常に有効なものとすることができる。特に、酸発生剤を含有させ、酸触媒反応を利用した化学増幅ポジ型レジスト材料とすると、より高感度のものとすることができると共に、諸特性が一層優れたものとなり極めて有用なものとなる。
【0159】
次に、本発明のレジスト保護膜材料を用いたパターン形成方法について説明する。図2に示すように、本発明のパターン形成方法では、少なくとも、ウエハー3上にフォトレジスト膜2を形成し(図2(A)、(B))、該フォトレジスト膜2上に前記レジスト保護膜材料を用いてレジスト保護膜3を形成し(図2(C))、露光を行った後(図2(D))、現像を行う(図2(E))。この現像において、アルカリ現像液を用いてフォトレジスト膜2の現像とレジスト保護膜1の剥離とを行うことが好ましい。
【0160】
すなわち、まず、ウエハー3上にフォトレジスト膜2を形成する(図2(A)、(B))。成膜方法としては、例えば、スピンコート法などが挙げられる。この時、フォトレジスト膜材料のスピンコーティングにおけるディスペンス量を削減するために、フォトレジスト溶媒あるいはフォトレジスト溶媒と混用する溶液で基板を塗らした状態でフォトレジスト膜材料をディスペンスしスピンコートするのが好ましい(例えば、特開平9−246173号公報参照)。これにより、フォトレジスト膜材料の溶液のウエハー3への広がりが改善され、フォトレジスト膜材料のディスペンス量を削減できる。なお、フォトレジスト膜材料には上記の繰返し単位a1、a2、b1、b2からなる高分子化合物をベースとした材料を好適に用いることができる。
【0161】
フォトレジスト膜2の膜厚は10〜500nm、特に20〜300nmとすることが好ましい(図2(C))。
【0162】
次に、フォトレジスト膜2の上に、本発明のレジスト保護膜材料を用いてレジスト保護膜1を形成する。
【0163】
成膜方法としては、例えば、スピンコート法などが挙げられる。レジスト保護膜材料のスピンコートにおいても、前述のフォトレジスト膜2と同様のプロセスが考えられ、レジスト保護膜材料の塗布前にフォトレジスト膜2の表面を溶媒で塗らしてからレジスト保護膜材料を塗布してもよい。形成するレジスト保護膜3の膜厚は2〜200nm、特には5〜50nmとすることが好ましい。フォトレジスト膜2の表面を溶媒で塗らすには回転塗布法、ベーパープライム法が挙げられるが、回転塗布法がより好ましく用いられる。この時用いる溶媒としては、前述のフォトレジスト膜2を溶解させない高級アルコール、エーテル系、フッ素系溶媒の中から選択されるのがより好ましい。
【0164】
本発明のレジスト保護膜1のアルカリ溶解速度は、3nm/s以上の溶解速度であることが好ましく、より好ましくは5nm/s以上の溶解速度である。
【0165】
レジスト膜2上にレジスト保護膜1を形成した後に露光を行う(図2(D))。露光における波長は3〜15nmの範囲、又は露光に電子線を用いることができる。
【0166】
露光時の環境としては、真空中で行うことが好ましく、露光において、波長が3〜15nmの範囲の光、又は電子線を用いることが好ましい。特にEUV、EBで露光を行う場合には共に真空中で行うことができる。
【0167】
露光後、必要に応じてベーク(ポストエクスポジュアーベーク;PEB)を行い、現像を行う(図2(E))。
【0168】
現像工程では、例えば、アルカリ現像液で3〜300秒間現像を行う。アルカリ現像液としては2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が一般的に広く用いられている。テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の代わりにテトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いることもできる。
【0169】
この場合、現像工程において、アルカリ現像液を用いて現像し、前記フォトレジスト膜2にレジストパターンを形成すると同時に、フォトレジスト膜2上のレジスト保護膜3の剥離を行うのが好ましい。このようにすれば、従来装置に剥離装置を増設することなく、より簡便にレジスト保護膜の剥離を行うことができる。
【0170】
なお、上記工程に加え、エッチング工程、レジスト除去工程、洗浄工程等のその他の各種工程が行われてもよい。
【0171】
そして、パターンが形成されたレジスト膜をマスクにしてエッチングをすれば、基板3に所望のパターンを形成することができる。
【実施例】
【0172】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0173】
本発明のレジスト保護膜用のトルクセン化合物としては、以下に示す材料を準備した。
【化63】

【0174】
また、比較例の比較レジスト保護膜用の化合物としては、以下に示す材料を準備した。
【化64】

【0175】
上記化合物及び溶媒を混合し、下記表1に示す組成のレジスト保護膜溶液TC−1〜7、比較TC−1〜3を作製した。
【表1】

【0176】
シリコンウエハー上にレジスト保護膜溶液TC−1〜7、比較TC−1〜3をスピンコートし、100℃で60秒間ベークして、20nm膜厚のレジスト保護膜(TC−1〜7、比較TC−1〜3)を形成した。
【0177】
次に、上記方法でレジスト保護膜を形成したシリコンウエハーを用いて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間浸漬し、浸漬後のレジスト保護膜の膜厚を測定した。その結果を表2に示す。浸漬後、レジスト保護膜は全て溶解していることが確認された。従って、これらの保護膜は現像時に溶解することが分かった。
【0178】
【表2】

【0179】
次に、上記同様にシリコンウエハー上にレジスト保護膜溶液TC−1、比較TC−1をスピンコートし、100℃で60秒間ベークして、20nm膜厚のレジスト保護膜(TC−1、比較TC−1)を形成し、J.A.Woollam社製分光エリプソメトリで膜のn、k値を測定し、得られたk値から膜厚20nmにおける透過率を求めた。結果を図3、4に示す。
【0180】
図3に示されるように、本発明の保護膜に用いられているフェノール基を有するトルクセン(TC−1)は、波長180〜250nmの幅広い吸収を持っているので、OOBの遮蔽効果が高い。一方で、図4に示されるように、比較ポリマー(比較TC−1)は、OOBの吸収が少ないためにArFとKrFの露光によって感光が進行するおそれがある。
【0181】
EUV評価(実施例1〜8、比較例1〜5)
次に、通常のラジカル重合で得られた下記高分子化合物を用いて、表3に示される組成で溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過してポジ型レジスト材料を調製した。
【0182】
得られたポジ型レジスト材料を直径8インチ(20cm)のSi基板上に、膜厚35nmで積層された信越化学工業製の珪素含有SOG膜SHB−A940上に塗布し、ホットプレート上で、105℃で60秒間プリベークして50nmのフォトレジスト膜を作製した。その上にレジスト保護膜溶液TC−1〜7、比較TC−1〜3をスピンコートし、ホットプレート上で、100℃で60秒間プリベークして20nm膜厚のレジスト保護膜を作製した。EUVマイクロステッパー(NA0.3、クアドルポール照明)で露光した。その後OOB光の照射を仮定して、ArFエキシマレーザースキャナーで、ウェハー全面を1mJ/cmで露光し、次いでKrFエキシマレーザースキャナーでウェハーを全面1mJ/cmで露光し、ホットプレート上で、95℃で60秒間ポストエクスポージャベーク(PEB)を行い、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、ポジ型のフォトレジスト膜のパターンを得た(実施例1〜8、比較例1〜3)。なお、比較例4では、レジストの上に保護膜の作製を行わない例とした。比較例5では、レジストの上に保護膜の作製を行わず、更にはOOBを仮定したArFとKrFの露光も行わない例とした。
【化65】

【0183】
【表3】

PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
FC−4430:フッ素系界面活性剤、住友3M社製
【0184】
【表4】

【0185】
実施例1〜8で示されるように、本発明の保護膜は、溶媒としてレジストとのミキシングを防止できるエーテル系あるいは芳香族系の溶媒を多く含有しているためにレジスト膜へのダメージが少なく、レジスト膜と保護膜とのミキシングが少なく、従って現像後のレジストパターンが矩形である。EUV光透明性が高く、レジストに対して増感作用のあるフェノール基を多く含有しているためにレジストの感度を向上させる。更には、本発明の保護膜に用いられているフェノール基を有するトルクセンは、波長180〜250nmの幅広い吸収を持っているので、OOBの遮蔽効果が高い。これに対し、比較例1〜3で示されるように、比較例の保護膜は、アミルエーテルへの溶解性が高いものの、OOBの吸収が少ないためにArFとKrFの露光によって感光が進行し、パターンがテーパー形状になってしまっただけでなく、EUV光に吸収を有するフッ素原子を含有しているためにレジストの感度が低下してしまった。また、比較例4のように、保護膜を形成せずにArFとKrFの露光を行った場合はテーパー形状になってしまった。さらに、比較例5のように、保護膜を形成せずにOOBを仮定したArFとKrFの露光を行わない場合はパターンは矩形であるが、実際のEUVスキャナーでは、レーザーパワー不足によりOOBをカットするフィルターが装着されない可能性が高い。ArFやKrFによる疑似OOB照射の実験は、EUVスキャナー露光を模擬したものである。
【0186】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0187】
1…レジスト保護膜、 2…フォトレジスト膜、 3…ウエハー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハーに形成したフォトレジスト膜上にレジスト保護膜材料によりレジスト保護膜を形成し、露光を行った後、前記レジスト保護膜の剥離及び前記フォトレジスト膜の現像を行うことで前記フォトレジスト膜にパターンを形成する方法において用いる前記レジスト保護膜材料であって、
下記一般式(1)に記載のフェノール基を含有するトルクセン化合物を含むものであることを特徴とするレジスト保護膜材料。
【化1】

(一般式(1)中、R、R、Rは、同一又は異種の、水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、又は、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルコキシ基、若しくはアシロキシ基であり、R、R、Rはそれぞれ水素原子、ヒドロキシ基、又は、置換若しくは非置換のフェノール基、若しくはナフトール基であり、p、q、及びrは1〜5の整数であり、s、t、及びuは1〜4の整数である。)
【請求項2】
前記レジスト保護膜材料は、アルカリ現像液に可溶なものであることを特徴とする請求項1に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項3】
更に、アルコール溶媒と、エーテル溶媒又は芳香族溶媒とを混合した有機溶媒を含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスト保護膜材料。
【請求項4】
少なくとも、ウエハー上にフォトレジスト膜を形成し、該フォトレジスト膜上に請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のレジスト保護膜材料を用いてレジスト保護膜を形成し、露光を行った後、前記フォトレジスト膜の現像を行うことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
前記露光は真空中で行うことを特徴とする請求項4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記露光において、波長が3〜15nmの範囲の光、又は電子線を用いることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記現像において、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の現像と前記レジスト保護膜の剥離とを行うことを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記フォトレジスト膜の形成において、前記ウエハー上に、下記一般式(2)に記載の繰り返し単位a1、a2と、下記一般式(3)に記載の繰り返し単位b1、b2からなり、平均分子量が1,000〜500,000の範囲の高分子化合物をベース樹脂とする前記フォトレジスト膜を形成することを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化2】

(上記一般式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R、R10は酸不安定基を表す。Xは単結合、エステル基、ラクトン環、フェニレン基、又はナフチレン基のいずれか1種又は2種以上を有する炭素数1〜14の連結基である。Xは単結合、エステル基、又はアミド基である。上記一般式(3)中、R11、R15はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を表し、R12、R13、R14、R16、R17、R18は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Zは単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R19−、又は−C(=O)−Z−R19−である。Zは酸素原子又はNH、R19は炭素数1〜13の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよく、フッ素置換されてもよい。0≦a1≦0.9、0≦a2≦0.9、0<a1+a2<1、0≦b1≦0.3、0≦b2≦0.3、0<b1+b2≦0.3、0<a1+a2+b1+b2≦1の範囲である。)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−83821(P2013−83821A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224132(P2011−224132)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】